JP2011038131A - 流電陽極方式によるコンクリート構造物の電気防食工法 - Google Patents

流電陽極方式によるコンクリート構造物の電気防食工法 Download PDF

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Abstract

【課題】コンクリート構造物における流電陽極方式の電気防食において、コンクリート表面に設置する金属溶射膜の膨れ、剥がれを無くし若しくは大幅に低減させて、金属溶射膜の劣化速度を抑制し、コンクリート構造物の防食を持続させ、構造物の延命化を図る。
【解決手段】コンクリート(7)表面に鉄よりイオン化傾向の大きい金属溶射膜(4)を形成することによりコンクリート内部の鋼材(6)に防食電流を供給する流電陽極方式の電気防食工法において、金属溶射膜(4)とコンクリート(7)表面の間にセメントモルタル(1)を設置する手段、金属溶射膜(4)とコンクリート(7)表面の間にイオン化傾向が鉄より大きく、亜鉛に比べて長期的に酸化反応しにくい(酸化物の生成が少ない)金属の薄膜(3)を設置する手段、排流端子(8)とコンクリート(7)内部の鋼材(6)との間に電気抵抗材を設置する手段、のいずれか一つ、もしくは複数の手段を講じることにより、防食電流密度をコンクリート面積当たり80mA/m2以下とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、主に、土木・建築のコンクリート構造物において使用される流電陽極方式の電気防食工法において、コンクリート表面の下地処理、溶射金属の吹き付け構成および電気回路の工夫により、流電陽極方式の防食電流量を一定値以下に抑制し、金属溶射膜の早期の膨れや剥がれをなくす若しくは低減させる技術である。
近年、コンクリート構造物の延命化や耐久性の向上対策として、コンクリート内の鉄筋、PC鋼材および鉄骨の腐食抑制を目的とした電気化学的防食工法の要望がある。
従来より電気化学的防食工法の一つとして、コンクリート内部の鋼材より電位が卑な金属をコンクリート表面に吹き付け、イオン化傾向の差を利用して、吹き付けた金属からコンクリート内部の鋼材に防食電流を供給し、コンクリート内部の鋼材の発錆を防ぐ、あるいは腐食速度を大幅に抑制する流電陽極方式がある。
コンクリート構造物の流電陽極方式は、コンクリート表面に設置した亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、インジニウム、およびこれらの合金、擬合金等の鉄とのイオン化傾向の差を利用して、コンクリート内部の鋼材に防食電流を供給する。そのため、コンクリート構造物の環境、コンクリートの水分量、かぶり等の性状により、防食電流量を制御することができない。
この課題を改善するため、DCコンバーターで昇圧または減圧して任意の値の出力電圧を得て、有効電位差を確保し、流電陽極方式における防食電流を増加させる方法が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、この方法では、流電陽極方式の防食電流を増加させるための方法であり、流電陽極方式の防食電流を抑制する対策は実施されておらず、陽極となる金属溶射膜が施工後早期に膨れや剥がれといった問題が発生する課題があった。
また、流電陽極方式の溶射金属膜の膨れや剥がれを抑制する対策として、金属溶射膜を吹き付けるコンクリート面に、骨材を含有するプライマーを予め塗布することにより粗い表面を有するプライマー層を形成させ、金属溶射膜の付着強度を向上する方法が提案されている(特許文献2参照)。
しかし、この方法では、付着強度は向上するものの、金属溶射膜からコンクリート内部へ流れる防食電流を制御することが出来ず、流れやすい環境やコンクリート表面に塩化物イオンが含まれる場合においては、ガスの発生やイオン化した金属の水酸化物による体積膨張の影響で、施工後早期に金属溶射膜の膨れや剥がれが生じる課題があった。
他方、導電性ポリマーセメントモルタルといわれる電気抵抗を抑制させる亜硝酸リチウムを含有するモルタルを塗布することにより、長期的に陽極の抵抗の低減や不活性化を抑制する対策が提案されている(特許文献3参照)。
しかし、この導電性ポリマーセメントモルタルは、陽極を設置した後に、陽極周辺を被覆するものであり(段落[0003]参照)、陽極である金属溶射膜を吹き付けるコンクリート面に予め塗布するものではなく、これを上記のように予め塗布する場合は、金属溶射膜からコンクリート内部へ流れる防食電流が必要以上に大きくなり、逆に金属溶射膜部分のガスの発生やイオン化した金属の酸化物による体積膨張により、施工後早期に金属溶射膜の膨れや剥がれが発生する課題がある。
また、特許文献3には、「電気防食工法では、コンクリート構造物のコンクリート表面に陽極を設けて、当該陽極を設置保護するため、コンクリートとの付着性に優れた保護材が要求される。かかるコンクリートとの付着性のよい保護材としては、ポリマーセメントモルタルが用いられるが、通常のセメントモルタルよりも、導電性が低いという欠点があり、電気防食工法に使用するには問題がある。」(段落[0004]参照)と記載されているから、陽極である金属溶射膜からコンクリート内部へ流れる防食電流を抑制するために、ポリマーセメントモルタルを用いることは、意図されていない。
さらに、電気防食法に用いる導電性ポリマーセメントモルタルとして、炭素繊維を含有するモルタルも提案されている(特許文献4参照)。
しかし、この炭素繊維を含有する導電性ポリマーセメントモルタルは、電気防食法において、施工性、耐久性に優れた対極(陽極)として利用するものであり(段落[0001]及び[0002]参照)、陽極である金属溶射膜からコンクリート内部へ流れる防食電流を制御するために利用することは示唆されていない。
また、コンクリート表面にリチウム塩を含有する表面処理材を塗布し、コンクリートの通電性を向上させて、均一かつ効率的に防食電流を供給させる方法が提案されている(特許文献5参照)。
しかし、このコンクリート表面にリチウム塩を含有する表面処理材を塗布する方法においても、金属溶射膜からコンクリート内部へ流れる防食電流が必要以上に大きくなり、逆に金属溶射膜部分のガスの発生やイオン化した金属の水酸化物による体積膨張により、施工後早期に金属溶射膜の膨れや剥がれといった問題が発生する課題がある。
特開平9−31673号公報 特開平5−331922号公報 特開2005−281037号公報 特開平7−206502号公報 特開2006−232559号公報
本発明は、上記のような課題を解決しようとするものであり、コンクリート構造物における流電陽極方式の電気防食において、コンクリート表面に設置する金属溶射膜の膨れ、剥がれを無くし若しくは大幅に低減させて、金属溶射膜の劣化速度を抑制し、コンクリート構造物の防食を持続させ、構造物の延命化を図ることを課題とする。
コンクリート表面に鉄よりイオン化傾向の大きい金属を溶射して金属溶射膜を形成することによりコンクリート内部の鋼材に防食電流を供給する流電陽極方式の電気防食工法において、(1)前記金属溶射膜とコンクリート表面の間にセメントモルタルを設置する手段、(2)前記金属溶射膜とコンクリート表面の間にイオン化傾向が鉄より大きく亜鉛に比べて長期的に酸化反応しにくい(酸化物の生成が少ない)金属(たとえばアルミニウムなど)の薄膜を設置する手段、(3)排流端子とコンクリート内部の鋼材との間に電気抵抗材を設置する手段、のいずれか一つ、もしくは、複数の手段を講じることにより、防食電流量を抑制することを特徴とするコンクリート構造物の電気防食工法である。また、該電気防食工法において、前記セメントモルタルが、ポリマーセメントモルタル、繊維入りセメントモルタル、並びに、ポリマー及び繊維を含有しないセメントモルタルから選択された一種以上であることを特徴とする。さらに、該電気防食工法において、防食電流密度がコンクリート面積当たり80mA/m2以下であることを特徴とする。
本発明によれば、コンクリート表面に設置した陽極となる金属溶射膜からコンクリート内部に流れる防食電流量を抑制させ、陽極面で発生するガス量および陽極材の酸化物の生成量について抑制し、金属溶射膜の膨れ・剥がれを抑制することにより、長期に渡って、コンクリート構造物の防食を図ることができる。
金属溶射膜とコンクリート表面の間にセメントモルタルを設置する手段を講じた電気防食工法の例を示す概略図である。 金属溶射膜とコンクリート表面の間にイオン化傾向が鉄より大きく亜鉛に比べて長期的に酸化反応しにくい(酸化物の生成が少ない)金属(たとえばアルミニウムなど)の薄膜を設置する手段を講じた電気防食工法の例を示す概略図である。 排流端子とコンクリート内部の鋼材との間に電気抵抗材を設置する手段を講じた電気防食工法の例を示す概略図である。
(符号の説明)
1:セメントモルタル
2:粗面形成剤
3:アルミニウム単独の金属薄膜
4:亜鉛・アルミニウム擬合金の金属溶射膜
5:封孔処理剤
6:異形鉄筋
7:コンクリート
8:IV線
9:排流端子
10:無抵抗電流計
11:電気抵抗材
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、流電陽極方式の電気防食工法において、鉄よりイオン化傾向の大きい金属を溶射して形成される陽極となる金属溶射膜の早期の膨れ、剥がれおよび陽極の消耗対策として、(1)金属溶射膜とコンクリート表面の間にセメントモルタル(ポリマーセメントモルタル、繊維入りセメントモルタル、並びにポリマー及び繊維を含有しないセメントモルタルから選択された一種以上)を設置(塗布)することにより、防食電流を抑制すること、(2)陽極となる金属のなかで亜鉛に比べて長期的に酸化反応しにくい(酸化物の生成が少ない)金属の薄膜をコンクリート側の界面に1層設けることで、防食電流を抑制すること、(3)コンクリート表面に設置した陽極となる金属溶射膜とコンクリート内部の鋼材間を電気的に接続する回路部分(排流端子)に電気抵抗材を設置し、防食電流を抑制すること、これらいずれかの方法およびこれらの方法を組み合わせることにより、金属溶射膜の膨れや剥がれをなくすか、若しくは大幅に低減させて、金属溶射膜の劣化速度を抑制する。
本発明において、第1の手段として採用されるコンクリート表面に塗布するポリマーセメントモルタルは、セメント、砂、ポリマー、短繊維、混和材(混和剤)等が含有されており、適切な付着強度があり、ひび割れ抵抗性が高い材料である。セメント、砂、ポリマー、短繊維、混和材(混和剤)の配合の割合や種類については特に制限されないが、以下のようなものを用いることができる。
セメントとしては、特に限定されるものでなく、JIS R 5210に規定されている各種ポルトランドセメント、JIS R 5211、JIS R 5212、およびJIS R 5213に規定されている各種混合セメント、JISに規定された以上の混和材混入率で製造した高炉セメント、フライアッシュセメント、およびシリカセメント、石灰石粉末等を混合したフィラーセメント、アルミナセメントから選ばれる1種又は2種以上が使用可能である。
ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、通常セメント混和用と使用されるもので、粉末状および液体の何れも使用可能である。ポリマーエマルジョンの種類としては、例えば、JIS A 6203で規定されているセメント混和用のポリマー(ポリマーディスパージョン)が使用でき、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、および天然ゴム等のゴムラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、酢酸ビニルビニルバーサテート系共重合体、およびスチレン・アクリル酸エステル共重合体やアクリルニトリル・アクリル酸エステルに代表されるアクリル酸エステル系共重合体、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂に代表される液状ポリマー等が挙げられる。これらから選ばれる1種又は2種以上が使用可能である。
短繊維としては、特に限定されるものではないが、通常セメント混和用と使用されるもので、市販されている有機繊維や無機繊維が使用可能である。繊維の種類としては、ビニロン繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリチレン繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ロックウール、アルミナ繊維、玄武岩繊維、鋼繊維等が挙げられる。
これらから選ばれる1種又は2種以上が使用可能である。
なかでも、ビニロン繊維、ナイロン繊維などの有機繊維が好ましい。
混和材(剤)としては、収縮低減剤、膨張材である。収縮低減剤は、モルタルの乾燥収縮を抑制するものであり、特に限定されるものではなく、市販されているものが使用可能である。例えば、アルコール系、低級アルコールアルキレンオキシド誘導体系、グリコール系、グリコールエーテル・アミノアルコール誘導体系、ポリエーテル系等の界面活性作用を有する化合物を使用することができる。膨張剤は、硬化収縮量の低減やケミカルプレストレスを与えるもので、特に限定されるものではなく、カルシウムサルホアルミネート系や石灰系およびこれらカルシウムサルホアルミネート系と石灰系の複合型を使用することができる。
本発明では、性能に悪影響を与えない範囲で、流動化剤、空気連行剤、防錆剤、増粘剤、粘土鉱物、ポゾラン物質、潜在水硬性物質、急硬剤、急結剤、消泡剤、抗菌剤、ロジン誘導体等の各種セメント混和材を添加することができる。
繊維入りセメントモルタルは、ポリマーが添加されていないものであるが、ポリマーセメントモルタルと同様に、成分の配合や種類については特に制限を受けない。セメント、繊維および混和剤(剤)は上記と同様のものを用いることができる。また、上記と同様に、性能に悪影響を与えない範囲で、流動化剤、空気連行剤、防錆剤、増粘剤、粘土鉱物、ポゾラン物質、潜在水硬性物質、急硬剤、急結剤、消泡剤、抗菌剤、ロジン誘導体等の各種セメント混和材を添加することができる。
ポリマー及び繊維を含有しないセメントモルタル(以下、これを「セメントモルタル」と省略する。)は、ポリマーセメントモルタルや繊維入りセメントモルタルと同様に、成分の配合の割合や種類については特に制限を受けない。セメントおよび混和剤(剤)は上記と同様のものを用いることができる。また、上記と同様に、性能に悪影響を与えない範囲で、流動化剤、空気連行剤、防錆剤、増粘剤、粘土鉱物、ポゾラン物質、潜在水硬性物質、急硬剤、急結剤、消泡剤、抗菌剤、ロジン誘導体等の各種セメント混和材を添加することができる。
セメント、砂、ポリマー、短繊維等の配合の割合は、セメント100質量部に対して砂が40〜300質量部、ポリマー0〜5質量部、短繊維0〜5質量部とすることができる。
流電陽極方式の電気防食の工程に入る前に、これらポリマーセメントモルタル、繊維入りセメントモルタル、セメントモルタルから選択された一種以上をコンクリート面に塗布し、下地処理を行う。
ポリマーセメントモルタル、繊維入りセメントモルタル、セメントモルタルの塗布厚は、1mm程度〜100mm程度であり、コンクリート表面を覆うことで、防食電流の集中を防ぐ。コンクリートとの付着強度は、0.5N/mm2以上であることが重要で、適切な付着強度を有する必要がある。
本発明においては、第2の手段として、鉄よりイオン化傾向の大きい金属を溶射して形成される金属溶射膜とコンクリート表面の間にイオン化傾向が鉄より大きく、亜鉛に比べて長期的に酸化反応しにくい(酸化物の生成が少ない)金属の薄膜を設置する。
鉄よりイオン化傾向の大きい金属は特に限定されない。一般に使用される金属を挙げると、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、インジウム、銅、銅合金などがある。ここで亜鉛合金とは、Znを主成分とし、Al、Cu、Mg、Fe、Inなどのうち少なくとも1種の金属を混入して得られた合金をいい、アルミニウム合金とは、Alを主成分とし、Zn、Mg、Cr、Si、Inなどのうち少なくとも1種の金属を混入して得られた合金をいい、銅合金とは、Cuを主成分とし、Ni、Zn、Sn、Al、Inなどのうち少なくとも1種の金属を混入して得られた合金をいう。さらに本発明においては、Zn/Al=90/10〜50/50(重量比)の亜鉛・アルミニウム擬合金により溶射被膜層を形成するのが好ましい。その理由は、亜鉛・アルミニウム擬合金で形成された溶射被膜層が防食性に優れ、かつ凝集破壊力が大きく、緻密でブリスターなどが生じにくいからである。この亜鉛・アルミニウム擬合金とは、亜鉛とアルミニウムが合金組織を形成しておらず、亜鉛の微粒子とアルミニウム微粒子が不規則に重なり合い外見的に亜鉛・アルミニウム合金を形成している状態をいう。この亜鉛・アルミニウム擬合金被膜は、亜鉛とアルミニウムの溶射線材を使用し、減圧内アーク溶射法などの低温溶射法により、アーク溶射を行って形成することができる。
金属溶射膜の厚さは限定されないが、50μm〜1000μmとすることができる。
金属溶射膜とコンクリート表面の間に設置される薄膜に用いられる金属は、亜鉛に比べて長期的に酸化反応しにくい(酸化物の生成が少ない)金属であり、溶射される陽極の金属が亜鉛、亜鉛・アルミニウム合金、亜鉛・アルミニウム擬合金の場合には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金などがある。これらの金属の薄膜の厚さは限定されないが、10μm〜300μmとすることができる。例えば、アルミニウムを数十μm程度、溶射することで、防食電流量を抑制する。
本発明においては、第3の手段として、コンクリート表面に設置した金属溶射膜とコンクリート内部の鋼材間を電気的に接続する回路部分(排流端子)に電気抵抗材を設置し、防食電流量を抑制させる。
いずれの方法においても、単独若しくは組み合わせすることが可能で、コンクリート中の塩化物イオン量、コンクリート中の水分量およびコンクリート構造物の周辺環境に応じて判断する。
以下、実験例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実験例1)
表1に示す配合でコンクリート供試体(7)を作製し、異形鉄筋(6)を埋め込んだ。その上にポリマーセメントモルタルまたは繊維入りセメントモルタルまたはセメントモルタル(電気化学工業(株)製)(1)を3mm(付着強度1.0N/mm2)を塗布し、粗面形成剤(大日本塗料(株)(2)を設け、亜鉛・アルミニウム擬合金を溶射して金属溶射膜(4)を形成し、封孔処理剤(大日本塗料(株)製)(5)で処理した供試体を作製した(図1参照)。この供試体を用いて、流電陽極方式の電気防食を実施し、陽極となる金属溶射膜の膨れや剥がれを比較検討した。
<使用材料>
・ セメント(C):ポルトランドセメント(電気化学工業(株)製)
・ 細骨材(S):北陸石産協業組合
・ 粗骨材(G):北陸石産協業組合
・ 水:水道水
・ 混和剤:減水剤
・ NaCl:工業用
・ ポリマーセメントモルタル(電気化学工業(株)製)、
(セメント:100質量部、ポリアクリル酸エステルポリマー:0.1質量部、ビニロン繊維:0.02質量部、砂:50質量部)
・ 繊維入りセメントモルタル(電気化学工業(株)製)
(セメント:100質量部、ナイロン繊維:0.06質量部、砂:180質量部)
・ セメントモルタル(電気化学工業(株)製)
(セメント:100質量部、砂:200質量部)
<測定方法>
IV線(8)を介して排流端子部分(9)に無抵抗電流計(北斗電工(株)製)(10)を設置し、金属溶射膜(4)と鉄筋(6)間に流れる防食電流を計測した。また、金属溶射膜の膨れ・剥がれの状態を目視観察した。供試体は、海洋環境下に2年間暴露した。
防食電流量の結果と膨れ・剥がれの結果を表2に示す。試験体番号No.1−1とNo.1-2、No.1-3とNo.1-4、No.1-5とNo.1-6、No.1-7とNo.1-8の防食電流密度の相違は、温度、湿度の条件の相違による。
表2の結果から、流電陽極による電気防食の工程の前に実施した、ポリマーセメントモルタルの塗布または繊維入りセメントモルタルの塗布またはセメントモルタルの塗布により、防食電流密度は80mA/m2以下に抑制され、金属溶射膜の膨れ・剥がれの発生は抑えられているのがわかる。
(実験例2)
実験例1と同じ材料を使用して表3に示す配合でコンクリート供試体(7)を作製し、異形鉄筋(6)を埋め込んだ。粗面形成剤(2)の上に50μmのアルミニウム単独の金属溶射膜(3)を設け、その上に亜鉛・アルミニウムの擬合金の金属溶射膜(4)を形成し、封孔処理剤(5)で処理した供試体を作製した(図2参照)。この供試体を用いて、防食電流量と金属溶射膜の膨れや剥がれを比較検討した。測定は実験例1と同様の方法で行った。
防食電流量の結果と膨れ・剥がれの結果を表4に示す。試験体番号No.2-1とNo.2-2、No.2‐3とNo.2‐4及びNo.2−5の防食電流密度の相違は、温度、湿度の条件の相違による。
表4の試験結果から、粗面形成剤を塗布した後にコンクリート面側にアルミニウム単独の金属溶射膜を設置することで、防食電流密度は80mA/m2以下に抑制され、金属溶射膜の膨れ・剥がれは抑えられているのがわかる。
(実験例3)
実験例1と同じ材料を使用して表5に示す配合でコンクリート供試体(7)を作製し、異形鉄筋(6)を埋め込んだ(図3参照)。コンクリート表面に設置した陽極側の金属溶射膜(4)とコンクリート(7)内部の鋼材(6)間を電気的に接続する回路部分(排流端子)(9)に電気抵抗材(11)を設置し、防食電流量と金属溶射膜の膨れ・剥がれを目視調査した。測定は、実験例1と同様の方法で行った。
防食電流量の結果と膨れ・剥がれの結果を表6に示す。試験体番号No.3−1とNo.3−2、No.3−3とNo.3-4およびNo.3-5の防食電流密度の相違は、温度、湿度の条件の相違による。
表6の試験結果から、排流端子部分に電気抵抗材を設置することで、流電陽極方式による防食電流密度は80mA/m2以下に抑制され、金属溶射膜の膨れ・剥がれは抑えられているのがわかる。
本発明のコンクリート面の下地処理、溶射金属の層構成および電気回路を工夫した技術は、上記効果を有するため、流電陽極方式の電気防食工法に有用に用いることができ、流電陽極の金属溶射膜の膨れ・剥がれ対策とする技術として利用できる。

Claims (3)

  1. コンクリート表面に鉄よりイオン化傾向の大きい金属を溶射して金属溶射膜を形成することによりコンクリート内部の鋼材に防食電流を供給する流電陽極方式の電気防食工法において、前記金属溶射膜とコンクリート表面の間にセメントモルタルを設置する手段、前記金属溶射膜とコンクリート表面の間にイオン化傾向が鉄より大きく亜鉛に比べて長期的に酸化反応しにくい(酸化物の生成が少ない)金属の薄膜を設置する手段、排流端子とコンクリート内部の鋼材との間に電気抵抗材を設置する手段、のいずれか一つ、もしくは、複数の手段を講じることにより、防食電流を抑制することを特徴とするコンクリート構造物の電気防食工法。
  2. 前記セメントモルタルが、ポリマーセメントモルタル、繊維入りセメントモルタル、並びに、ポリマー及び繊維を含有しないセメントモルタルから選択された一種以上であることを特徴とする請求項1記載の電気防食工法。
  3. 防食電流密度がコンクリート面積当たり80mA/m2以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の電気防食工法。
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