JP5052881B2 - コンクリートの防食工法およびそれを実施してなるコンクリート構造物 - Google Patents
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Description
このようにコンクリート構造物の耐久性の課題は、コンクリートそのものの耐久性のみでなく、併用するコンクリート内部の鋼材の耐久性(耐腐食性)の課題であることも多い。
この流電陽極方式としては、切り溝埋設方式、切り溝埋設覆装方式、亜鉛板取り付け方式、及び流電陽極部材取り付け方式等が代表的であるが、いずれの方式も垂直面や天井面、形状が複雑な箇所あるいは狭いところへの施工は困難であり、作業性が悪いという課題があった。
この課題を解決する方法として、鉄筋コンクリート構造物の表面に、コンクリート内部の鋼材より標準電極電位の低い金属又は合金を溶射して、この溶射被膜層を陽極部材として付設する方法が提案されている。(特許文献1〜特許文献5参照)
なお、本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
また、本発明におけるコンクリートとは、モルタルを含む場合もある。
具体的には、金属溶射装置等のノズル先端で溶融した陽極金属の不定形なうろこ状のものが溶射された面に積層された、ポーラスな金属皮膜層となる。
亜鉛−アルミニウム擬合金とは、亜鉛とアルミニウムが合金組成を形成しておらず、亜鉛微粒子とアルミニウム微粒子が不規則に重なり合い、外見的に亜鉛−アルミニウム合金を形成している状態をいう。
亜鉛−アルミニウム擬合金の陽極金属層は、亜鉛とアルミニウムの溶射線材を使用し、減圧内アーク溶射法等の低温溶射法によりアーク溶射で形成することが可能である。
例えば、金属アルミニウムと金属亜鉛を体積比が1:1になるように、アルミニウム線材と亜鉛線材の口径、送り速度を調整し、アーク溶射法によって亜鉛−アルミニウム擬合金を溶射して、陽極金属層を形成することが可能である。
常温アーク式溶射装置とは、低温の空気又は不活性気体を高速で噴射し、噴射された気流により発生する減圧部において、金属ワイアを溶融させ、溶融した金属を、高速の噴射気流で射出し、急激に過冷却し、微粒化しつつ下地祖面にブリスター状金属を溶着することができるものである。一回で溶射できる膜厚は、通常、70μm程度であり、複数回溶射することにより膜厚を厚くすることが可能である。
陽極金属層Aは、コンクリート構造物の表面に形成し、陽極金属層Bは、端子と陽極金属層Aの表面に形成する。
陽極金属層Aの厚みは特に限定されるものではないが、100〜200μmが好ましい。100μm未満では、陽極を形成する金属量が少なく、防食できる期間に対する費用が割高となるおそれがあり、200μmを超えると溶射時の熱ひずみなどにより、割れや剥離が発生する可能性が高くなるおそれがある。
陽極金属層Bの厚みは特に限定されるものではないが、50〜150μmが好ましい。50μm未満では、陽極を形成する金属量が少なく、防食できる期間に対する費用が割高となるおそれがあり、150μmを超えると溶射時の熱ひずみなどにより、割れや剥離が発生する可能性が高くなるおそれがある。
端子はコンクリート内部の鋼材にできるだけ近づけるように、例えば、コンクリート内部の鋼材の真上に設置することが好ましい。
端子の長さは、長いほうが好ましいが、防食されるコンクリート内部の鋼材のうち端子から最も遠い位置と、端子を結ぶ直線のうち最も短い直線と、金属層面がなす角度のうち、もっとも小さい角度が10度〜90度となる長さであることが好ましい。
コンクリート内部の鋼材に、それより標準電極電位の低い金属を電気的に接続すると、コンクリート内部の鋼材自体の自然電位が低くなる。そのため、自然電位を測定することで、その数値から、陽極電極層の有効性が判断できる。
自然電位の測定は、溶射面と直角をなす150mm×530mmの一面(側面)のコンクリート内部の鋼材の真横の3点を測定点とし、銅照合電極を用い測定した。また、インスタントオフ電位と通電を停止してから24時間後のオフ電位を測定し復極量を算出した。
Ecse :鉛照合電極で測定した値(mV)
EM :飽和硫酸銅電極基準換算値(mV)
復極量(mV)=[Eio(mV)]−[Eof(mV)]
Eio :インスタントオフ電位
Eof :24時間後、オフ電位
150×150×530mmの直方体のコンクリートの試験体の150×150mmの面に垂直かつ中心となるように、長さ600mmのD19異型鋼棒を、両端部がそれぞれ35mmづつコンクリートから出るように配置して、コンクリート内部の鋼材とし、成形体を作製した。
作製した成形体を4週間屋外で養生し、コンクリート構造物を模したコンクリートの試験体を作製した。
作製した試験体の150mm×530mmの1面を溶射面とした。
溶射面に、粗面形成剤をエアスプレーにて塗布したのち、金属アルミニウムと金属亜鉛を体積比が1:1になるように、アルミニウム線材と亜鉛線材の口径、送り速度を調整し、アーク溶射法によって、亜鉛−アルミニウム擬合金を溶射して、150μmの陽極金属層Aを形成した。
陽極金属層Aの上にステンレス製で、40mm×40mm、厚さ2mmの板状の端子を、溶射面の長手方向中央に、両端部が5mmづつ出るように設置した。
設置した板状の端子表面に、粗面形成剤を塗布し、さらに、陽極金属層Aと同様に、100μmの陽極金属層Bを形成し、その表面に、封孔処理剤をエアスプレーにて塗布し封孔処理をした。
コンクリート内部の鋼材の片端部に、導線を圧着端子と木ねじを用いて電気的に接続し、導線のもう一方の端部は、ワニ口クリップを介し、陽極金属層AB間に設置した板状の端子に接続し、防食回路をつくった。
600mm×160mmで深さ20mmのプラスチック製バットに約10mm程度水を張り、溶射面と反対側の面が水と接するように配置し、コンクリート内部の鋼材が直接水に接するこがないように、試験体に2週間以上給水し、腐食環境下に放置した。その後、自然電位を測定するとともに、所定期間後、端子と陽極金属層との境界面の腐食状況を目視で確認した。
自然電位の測定は、溶射面と直角をなす150mm×530mmの一面(側面)のコンクリート内部の鋼材の真横で、端部より等間隔の3点(1、2、及び3)を測定位置とし、銅照合電極を用い測定した。また、インスタントオフ電位と通電を停止してから24時間後のオフ電位を測定し復極量を算出した。自然電位測定結果を、表1に示し、腐食状況の結果を表2に示す。
粗面形成剤:エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、及び炭化珪素よりなる市販品
金属アルミニウムと金属亜鉛を体積比が1:1になるように、アルミニウム線材と亜鉛線材の口径、送り速度を調整し、アーク溶射法によって、亜鉛−アルミニウム擬合金を溶射して、厚さ150μmに形成した陽極金属層Aの上に、ステンレス製で、30mm×30mm、厚さ2mmの板を端子として、溶射面の長手方向端部に端部が5mm程度出るように配置し、その表面に、封孔処理剤をエアスプレーにて塗布し封孔処理をして防食回路をつくったこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表1に併記する。
試験体の150mm×530mmの1面を溶射面とし、ステンレス製で、30mm×30mm、厚さ2mmの板を端子として、溶射面の長手方向端部に端部が5mm程度出るように設置して、その上に金属アルミニウムと金属亜鉛を体積比が1:1になるように、アルミニウム線材と亜鉛線材の口径、送り速度を調整し、アーク溶射法によって、亜鉛−アルミニウム擬合金を溶射して、厚さ100μmの陽極金属層Aを形成し、自然電位を測定したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表1に併記する。
表3に示す厚さの陽極金属層Aと陽極金属層Bを形成したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に示す。
Claims (8)
- コンクリート構造物の表面に、コンクリート内部の鋼材よりも標準電極電位の低い金属層である陽極金属層Aを形成し、その上に、板状、線状、及び点状のいずれかである端子を設置し、さらにその上に、コンクリート内部の鋼材よりも標準電極電位の低い金属層である陽極金属層Bを形成し、コンクリート内部の鋼材と陽極金属層とを、該端子を用いて接続してなるコンクリートの防食工法。
- コンクリート構造物の表面を粗面とし、その上に、コンクリート内部の鋼材よりも標準電極電位の低い金属の層である陽極金属層Aを形成してなる請求項1に記載のコンクリートの防食工法。
- 陽極金属層Bの上に、表面保護層を形成してなる請求項1又は請求項2に記載のコンクリートの防食工法。
- 陽極金属層Aと陽極金属層Bが、コンクリート内部の鋼材よりも標準電極電位の低い金属の溶射により形成されるものである請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載のコンクリートの防食工法。
- コンクリート内部の鋼材よりも標準電極電位の低い金属が、亜鉛−アルミニウム擬合金である請求項4に記載のコンクリートの防食工法。
- 陽極金属層Aの厚さが、100〜200μmである請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項に記載のコンクリートの防食工法。
- 陽極金属層Bの厚さが、50〜150μmである請求項1〜請求項6のうちのいずれか一項に記載のコンクリートの防食工法。
- 請求項1〜請求項7のうちのいずれか一項に記載のコンクリートの防食工法を実施してなるコンクリート構造物。
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