JP2019177681A - 成形用化粧シート - Google Patents

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勝二 中村
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Abstract

【課題】少なくとも成形時において絵柄層の割れや層間の剥離が生じにくい化粧シートを提供する。【解決手段】ポリ塩化ビニル系樹脂基材、及び当該ポリ塩化ビニル系樹脂基材の少なくとも一方の面側に絵柄層を備える成形用化粧シートであって、前記ポリ塩化ビニル系樹脂基材は、当該ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたとき、可塑剤として、フタル酸ジイソノニルを12質量部以上含有することを特徴とする成形用化粧シート。【選択図】図1C

Description

本開示は、主に車載用部材、家具等の立体の表面装飾に使用されるものであって、ポリ塩化ビニル系樹脂基材及び絵柄層を備える成形用化粧シートに関する。
車載用部材等の立体成形部材に、絵柄層を備える化粧シートを当該立体成形部材の表面形状に追従させて貼り合わせ、立体成形部材の表面の意匠外観を向上せしめるべく装飾することが行われている。
かかる貼り合せの際に、化粧シートを立体成形部材の表面形状に追従させる成形法としては、例えば、インサート射出成形、インサート押出成形等が知られているが、複雑な三次元立体形状を有する部材の加飾に当たっては、いわゆる真空成形法が広く採用されている。真空成形法とは、例えば以下の手順により行われる。まず、樹脂材料を、目的とする部材の三次元立体形状となるように成形する。次に、得られた立体成形部材の表面に、化粧シートを加熱軟化させつつ伸ばし広げる。続いて、図2Aに示すように、化粧シート20の立体成形部材30側の空間を減圧し(矢印40)、必要に応じ反対側の空間を加圧することにより(矢印50)、当該化粧シート20を立体成形部材30表面の三次元立体形状に沿って成形しつつ貼着積層し、真空成形が完了する(図2B)。
真空成形用に、これまでにも様々な化粧シートが開発されてきた。
特許文献1には、基材上に装飾層、接着層、及び透明樹脂層をこの順に有する真空成形用化粧シートであって、該基材がポリオレフィンフィルムからなり、該透明樹脂層がポリエステルフィルムからなり、かつ該装飾層が所定の粒径のパール顔料を含む真空成形用化粧シートが開示されている。当該文献には、パール顔料の粒径を制御することによって、成形加工性に優れ、成形加工後に層間剥離が生じず、かつ高輝度意匠性に優れる真空成形用化粧シートが得られることが記載されている。
特許文献2には、熱可塑性樹脂を主体とする化粧シート本体の裏面に、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系フィルム層を積層してなることを特徴とする真空成形用化粧シートが開示されている。当該文献には、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系フィルム層の働き等により、オレフィン系樹脂のように真空成形適性が十分でない熱可塑性樹脂からなる化粧シート本体を使用しても、局部的な伸びやそれに伴う白化などを効果的に防止できるとの記載がある。
特許文献3には、ポリ塩化ビニル樹脂に対し、α−メチルスチレンにN−フェニルマレイミドおよび無水マレイン酸を共重合させてなる耐熱スチレン系樹脂を添加してなる、真空成型時の加熱収縮の課題の解決を目指した真空成形用化粧シートの記載がある。
ところで、真空成形用途に限らず一般に、ある特定用途に使用可能な樹脂は複数種類選択可能である。樹脂ごとに特質が異なり、また樹脂ごとに長所及び短所があるため、複数選択可能な樹脂の中から特定用途及び製品設計思想上で最適な樹脂が場合に応じて選択されている。真空成形用化粧シートの基材の場合も同様であり、真空成形した製品の用途、成形加工条件、製品価格、及び要求性能によっては、基材としてポリ塩化ビニル系樹脂が選択される場合がある。ポリ塩化ビニル系樹脂の基材は通常、可塑剤を含有する。
可塑剤を含むポリ塩化ビニル系樹脂基材を使用する化粧シートの技術として、例えば特許文献4に、表面側から順に、表面保護層、透明樹脂層、透明樹脂フィルムの層、印刷層、及び樹脂フィルムの層を備える所定の化粧シートが開示されている。当該文献には、透明樹脂フィルムの層に使用される可塑剤として、フタル酸ジイソノニルが例示されている。
また、特許文献5には、熱可塑性樹脂基材の少なくとも一面に絵柄層を設けてなる所定の化粧シートが開示されている。当該文献には、絵柄層に使用される可塑剤として、フタル酸ジイソノニルが例示されている。
特開2013−67094号公報 特開2001−322163号公報 特許第3052435号公報 特開2017−205874号公報 特開2009−196288号公報
近年、高精細な絵柄層を備える化粧シートの需要が高まっている。特に、立体表面をムラなく高精細に加飾でき、かつ発色性に優れた化粧シートは、立体成形部材の多様なニーズに応える材料として、注目を集めている。しかし、発色性向上のため絵柄層中の顔料濃度を濃くしすぎると、絵柄層中で割れが生じやすい、あるいは、基材と絵柄層との層間で剥離が生じやすいという問題がある。
特許文献1には、真空成形加工時に、貼り合わせる立体成形部材の形状に沿って化粧シートが過度に伸ばされることに起因した、化粧シートの層間剥離防止を目的とする絵柄層のインキ組成物が提案されている。このような特許文献1の技術を、ポリ塩化ビニル系樹脂基材を有する化粧シートに転用すること自体は不可能ではない。しかし、特許文献1で提案されるインキ組成物は顔料の種類が特定粒径分布のパール顔料という特殊な材料に限定されるため、原材料費も高騰する上、自ずと使用可能なポリ塩化ビニル系樹脂基材の種類や発現可能な意匠外観も限定される。特許文献2の技術は、主に樹脂層の局部的な伸びや白化を防ぐ技術であって、当該文献には絵柄層の割れに関する記載は一切ない。特許文献3〜特許文献5にも、絵柄層の割れに関する記載は一切ない。このように、従来技術の化粧シートは、ポリ塩化ビニル系樹脂を基材とする化粧シートにおける絵柄層の割れや層間剥離の防止を目的としないものであったり、ポリ塩化ビニル系樹脂を基材とする化粧シートの層間剥離防止のために技術の転用が不可能でなかったとしても、高価であったり、使用できる材料や発現できる意匠外観や物性に制限があったりして汎用性に欠けるものであった。
本開示は、絵柄層の割れに関する上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、ポリ塩化ビニル系樹脂基材及び絵柄層を備え、成形時における当該絵柄層の割れや層間の剥離が生じにくいと共に意匠外觀の制約の無い化粧シートを提供することを目的とする。
本開示の成形用化粧シートは、ポリ塩化ビニル系樹脂基材、及び当該ポリ塩化ビニル系樹脂基材の少なくとも一方の面側に絵柄層を備える成形用化粧シートであって、前記ポリ塩化ビニル系樹脂基材は、当該ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたとき、可塑剤として、フタル酸ジイソノニルを12質量部以上含有することを特徴とする。
本開示において、絵柄層の割れ防止の点と共に、可塑剤の移行防止の点で、前記ポリ塩化ビニル系樹脂基材は、当該ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたとき、可塑剤として、フタル酸ジイソノニルを12〜21質量部含有していてもよい。
本開示は、前記絵柄層における、当該絵柄層が前記ポリ塩化ビニル系樹脂基材と向き合う面とは反対側の面の側に、さらに透明樹脂層を備えていてもよい。
本開示の成形用化粧シートは、立体表面の装飾に用いられてもよい。
本開示の成形用化粧シートは、真空成形に用いられてもよい。
本開示によれば、ポリ塩化ビニル系樹脂基材が、可塑剤としてフタル酸ジイソノニルを特定量含有するため、少なくとも成形時における、絵柄層に対するポリ塩化ビニル系樹脂基材の追従性が従来よりも高い結果、絵柄層の割れ、及び絵柄層と隣接する層との層間剥離を抑えると共に意匠外観の制約を無くすことができる。
本開示の成形用化粧シートの第1の実施形態の断面模式図である。 本開示の成形用化粧シートの第2の実施形態の断面模式図である。 本開示の成形用化粧シートの第3の実施形態の断面模式図である。 従来の成形用化粧シートの成形時の様子を示した断面模式図である。 従来の成形用化粧シートの成形後の様子を示した断面模式図である。 従来の成形用化粧シートの成形後、絵柄層12がポリ塩化ビニル系樹脂基材11から剥離した様子を示した断面模式図である。 従来の成形用化粧シートの成形後、絵柄層12が透明樹脂層13から剥離した様子を示した断面模式図である。 従来の成形用化粧シートの成形後、絵柄層が割れ、材料破壊した様子を示した断面模式図である。
次に、本開示の実施の態様について詳細に説明するが、本開示は以下の実施の態様に限定されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本開示の成形用化粧シートは、ポリ塩化ビニル系樹脂基材、及び当該ポリ塩化ビニル系樹脂基材の少なくとも一方の面側に絵柄層を備える成形用化粧シートであって、前記ポリ塩化ビニル系樹脂基材は、当該ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたとき、可塑剤として、フタル酸ジイソノニルを12質量部以上含有することを特徴とする。
着色剤濃度の高い絵柄層を用いた場合に、絵柄層中の割れや層間剥離が生じる推定メカニズムは、以下の通りである。以降の説明は真空成形を例にとる。しかし、他の成形方法、例えば、少なくとも成形時に化粧シートの幅方向に沿って引っ張り応力が付与されるような成形法においても、以降の説明が当てはまる。また、以下の図2A〜図3Cの説明では、従来の成形用化粧シート20として、ポリ塩化ビニル系樹脂基材11と透明樹脂層13との間に絵柄層12が介在する三層構成の化粧シートを例にとる。
上述したように、真空成形は、立体成形部材30の表面に成形用化粧シート20を貼りつけ積層することにより行う(図2A)。その際に圧力を調整するため、成形後の化粧シート20は、成形前よりも全体的に引き延ばされた状態となる。延伸の度合いは立体成形部材30の部位によって異なる。例えば、立体成形部材30の凹曲面上や平面上の化粧シート積層部分よりも、立体成形部材30の凸曲面上や角に当たる化粧シート積層部分の方が、立体形状への追従の要請からより強く引っ張り伸ばされるため、歪みが大きい。
着色剤を繋ぎ止めるため、絵柄層は通常、樹脂バインダーを含有する。絵柄層の発色性を高めるため着色剤濃度を濃くすると、その背反として、絵柄層を支持する樹脂バインダーの含有割合が低減する。すると、絵柄層中の着色剤同士の連結が弱まり、絵柄層中にクラックが生じる結果、絵柄層に隣接する層(例えば図2Bにおけるポリ塩化ビニル系樹脂基材11や透明樹脂層13等)と絵柄層との密着性が弱まると共に、絵柄層自体の絵柄パターンを維持することも困難になる。
図3A〜図3Cは、いずれも、従来の成形用化粧シートの成形後の層間剥離又は絵柄層12の破断の様子を示した断面模式図である。なお、説明の簡便の為、図3B及び図3Cは、欠陥が生じた部分のみを抜粋して描いている。
特に、絵柄層12中の着色剤濃度が高い場合、層間の密着性が低下して絵柄層12がポリ塩化ビニル系樹脂基材11から剥離したり(図3A)、絵柄層12が透明樹脂層13から剥離したり(図3B)、パターンを維持できずに材料破壊した絵柄層12aが、ポリ塩化ビニル系樹脂基材11及び/又は透明樹脂層13の表面に残ったりする(図3C)。
以上の図2A〜図3Cに関する説明では、ポリ塩化ビニル系樹脂基材11、透明樹脂層13、及び絵柄層12を備える三層構成の化粧シートを例にとった。しかし、絵柄層の割れや層間剥離は、ポリ塩化ビニル系樹脂基材及びその一方の面側に絵柄層を備える二層構成の成形用化粧シートの場合にも、ポリ塩化ビニル系樹脂基材及びその両方の面側に絵柄層を備える三層構成の成形用化粧シートの場合にも、同様に生じる。
すると、絵柄層を支持する樹脂バインダーの含有割合を一定以上確保するために着色剤濃度を抑え、その替わりに、絵柄層を従来よりも分厚く形成することにより、絵柄層中の着色剤の量を従来と同程度に保ち、それによって絵柄層の発色性を確保する、という方法が考えられる。
しかし、低濃度の着色剤インキを1回で厚く印刷すると、形成される網点(印刷面を拡大することにより観察可能なインキの印刷点)が絵柄層の層方向に対し平行に流れ出し、色がぼやけて十分な発色が得られないというデメリットがある。また、得られる絵柄層が従来よりも厚いため、インキ乾燥に比較的長い時間を要するというデメリットもある。
特に、グラビア印刷法において高精細な絵柄パターンを厚く形成することは、技術上非常に困難である。グラビア印刷法の概要は、例えば以下の通りである。まず、彫刻やレーザー腐食等により、シリンダ状のグラビア版を作製する。得られるグラビア版表面のくぼみ(セル)にインキを載せた後、グラビア版表面に印刷対象を押しつけることによりインキを転移させ、印刷物を仕上げる。グラビア印刷法は、グラビア版表面のくぼみの深さによりインキの量、すなわちインキの濃度を調節することができる。しかし、くぼみの深さにも限界がある上に、グラビア版表面から転移するインキの量は、グラビア版表面のくぼみに載せたインキの量よりも少ない。グラビア印刷法に使用される着色剤インキの中には、粘度が低いものもあるため、印刷後のインキの表面が平滑化(レベリング)し、形成される網点がぼやけ易くなる(ダレ易くなる)傾向となる場合がある。絵柄層が厚いほどダレ易くなるため、繊細な絵柄を表現することがより困難となる場合がある。このように、グラビア印刷法は、その性質上、高精細な絵柄パターンを厚く形成することが困難な場合のある印刷法であるといえる。
以下説明する通り、本開示は、可塑剤として、フタル酸ジイソノニルを特定量用いることにより、低顔料濃度のインキで絵柄パターンを厚く形成する手段を用いること無く、発色濃度が高く高精細な絵柄を得ながら、絵柄層の割れ、及び絵柄層と隣接する層との層間剥離を抑えることができる。
1.ポリ塩化ビニル系樹脂基材
ポリ塩化ビニル系樹脂基材は、成形用化粧シートの形状を保持するために設けられる。
本開示において「ポリ塩化ビニル系樹脂」とは、塩化ビニルモノマー単位を50mol%以上有する樹脂を意味する。ポリ塩化ビニル系樹脂として、例えば、ポリ塩化ビニル(単独重合体)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−ビニルブチラール共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
ポリ塩化ビニル系樹脂基材は、可塑剤としてフタル酸ジイソノニル(DINP)を含有する。可塑剤は、当該樹脂基材に柔軟性を付与し、その硬さを制御することを目的として用いられる。
フタル酸ジイソノニルは、他のフタル酸系可塑剤よりも一般的に安価である。また、フタル酸ジイソノニルは、例えばフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DEHP)等の他のフタル酸エステル系可塑剤と比較して規制物質に指定されていない国が多いため、比較的制限なく自由に使用できるというメリットもある。
フタル酸ジイソノニルは、フタル酸とC9アルコールとのエステル体であるが、そのアルコール側鎖は2以上の異性体を含む場合が多く、通常は2以上の異性体の混合物として製造、販売、使用されている。フタル酸ジイソノニルにはCAS番号が主に2つ与えられており、製品としては主に3種類が知られている。
CAS No.68515−48−0の化合物は、DINP−1と呼ばれる製品として知られている。DINP−1は、主に3,4−ジメチルヘプタノール、4,6−ジメチルヘプタノール、3,6−ジメチルヘプタノール、3,5−ジメチルヘプタノール、4,5−ジメチルヘプタノール及び5,6−ジメチルヘプタノール、並びに、少量のメチルオクタノール及びイソデカノールと、フタル酸とのエステル体である。
CAS No.28553−12−0の化合物には、DINP−2と呼ばれる製品、及びDINP−3と呼ばれる製品が知られている。DINP−2は、主にジメチルヘプタノール及びメチルオクタノール、並びに少量のメチルエチルヘキサノール及びn−ノナノールと、フタル酸とのエステル体である。DINP−3は、トリメチルヘキサノールとジメチルヘプタノールの比が約3:1の混合物と、フタル酸とのエステル体である。
本開示においては、上記2つのCAS番号の化合物、及び3種類の製品をいずれもフタル酸ジイソノニルとして使用できる。また、フタル酸ジイソノニルの純物質も使用できる。
フタル酸ジイソノニルの含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたとき、12質量部以上である。フタル酸ジイソノニルの当該含有量を12質量部未満とすると、ポリ塩化ビニル系樹脂基材の柔軟性が低下する結果、ポリ塩化ビニル系樹脂基材が変形する際にひずみが生じ、絵柄層に対するポリ塩化ビニル系樹脂基材の追従性が低減し、絵柄層の割れ、及び絵柄層と隣接する層との層間剥離を抑制することができない。
また、フタル酸ジイソノニルの含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたとき、12〜21質量部含有することが好ましい。当該含有量が21質量部を超えると、フタル酸ジイソノニルが、ポリ塩化ビニル系樹脂基材に隣接する層(例えば、裏面プライマー層等)や立体成形部材等にブリードアウト(移行)する結果、成形用化粧シートと立体成形部材との密着性が低下するおそれがある。
ポリ塩化ビニル系樹脂基材は、フタル酸ジイソノニル以外の他の可塑剤を含有していてもよい。
使用される他の可塑剤としては、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステル系、トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル系、アジピン酸エステル系、アジピン酸ポリエステル系、フタル酸ポリエステル系、リン酸エステル系、クエン酸エステル系、安息香酸エステル系、テレフタル酸エステル系、エポキシ化植物油系、塩素化パラフィン系などが挙げられる。
他の可塑剤の含有量には特に制限はない。ただし、フタル酸ジイソノニルの効果を十分に発揮させる観点から、他の可塑剤の含有量は、フタル酸ジイソノニルの含有量よりも少ないことが好ましい。他の可塑剤の含有量は、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたとき、0〜3質量部であってもよく、0〜1質量部であってもよい。
ポリ塩化ビニル系樹脂基材は、着色剤を含有していてもよい。着色剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂基材の少なくとも一方の面を、所望の色相に着色させる。着色剤としては、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾ化合物、ペリレン系化合物等の有機顔料あるいは染料、アルミニウム、真鍮等の金属の箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等の従来公知の着色顔料が用いられる。着色は透明着色、不透明(隠蔽)着色いずれでも良いが、一般的には、被着体を隠蔽するために不透明着色が良い。
着色剤の含有量には特に制限はなく、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたとき、1〜40質量部であってもよく、5〜20質量部であることが好ましい。
さらに、必要に応じて、熱安定剤、難燃剤、ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤等を添加する。熱安定剤は、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フォスファイト系、アミン系等公知のものであリ、熱加工時の熱変色等の劣化の防止性をより向上させる場合に用いられる。難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の粉末が用いられ、これらは、難燃性を付与する必要がある場合に添加する。ラジカル捕捉剤としては、例えば、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤が用いられる。紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン等のトリアジン系、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系等が用いられる。
これら添加剤の含有量は、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたとき、1〜50質量部であってもよく、10〜25質量部であることが好ましい。
ポリ塩化ビニル系樹脂、可塑剤、及び必要な場合には着色剤等の添加剤を混合したものをカレンダー製法等の常用の方法により製膜することにより、ポリ塩化ビニル系樹脂基材が得られる。
得られるポリ塩化ビニル系樹脂基材の平均厚さは、その強度及び耐熱性が適切になるように材料に応じて適宜設定することができ、1μm〜1,000μm程度が一般的で、好ましくは10μm〜500μmである。
本開示の成形用化粧シートを構成する各層(ポリ塩化ビニル系樹脂基材、絵柄層、及び必要な場合には透明樹脂層、トップコート層等)の平均厚さの測定方法は以下の通りである。まず、成形用化粧シートの断面を光学顕微鏡又は電子顕微鏡などで観察する。測定対象となる層の厚さを3か所〜10か所程度測定し、算出される厚さの平均を、その層の平均厚さとする。
2.絵柄層
絵柄層は、ポリ塩化ビニル系樹脂基材の少なくともいずれか一方の面の側に配置される。
絵柄層によりポリ塩化ビニル系樹脂基材表面に形成される模様としては、例えば立体的模様や平面的模様等が挙げられる。
立体的模様としては、単純な凹凸模様、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が例示できる。立体的模様の凹部に着色剤を充填しても良い。充填は従来公知のワイピング法等によれば良い。着色剤は上述した材料が使用できる。
平面的模様としては、木目、石目、布目等の天然物の表面外観を模した絵柄模様、水玉模様、縞模様、幾何学模様等の抽象柄模様、文字又は数字を含む模様等が例示できる。
絵柄層によりポリ塩化ビニル系樹脂基材表面に付与される色彩としては、例えば単色全面ベタ、複数の色彩の組み合わせ等が挙げられる。絵柄層は、複数の色彩の組み合わせによって写真や絵画を再現するものであったり、それ自体が絵画であったりしてもよい。
絵柄層を形成する材料としては、例えば、金属薄膜や、バインダーに上述した着色剤を分散させたインク等が挙げられる。
金属薄膜としては、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属の薄膜が例示できる。これらの金属薄膜は、真空蒸着やスパッタリング等の方法で成膜される。
インクに用いられるバインダーとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂等が挙げられる。これらバインダーは、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。2種類以上の樹脂を混合したバインダーの例としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とを、アクリル樹脂の質量/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の質量=80/20〜20/80の質量比の範囲で適宜混合して成るバインダーが挙げられる。このようなバインダーに、上述した着色剤を添加した材料が、絵柄層用インクとして用いられる。
ポリ塩化ビニル系樹脂基材に絵柄層用インクを直接印刷する場合は、バインダーとして、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物やウレタン樹脂を採用することが、接着性の点で好ましい。
絵柄層は、ポリ塩化ビニル系樹脂基材表面の全面に設けられていてもよいし、一部に設けられていてもよい。絵柄層は、模様部分と色彩部分が混在していてもよい。絵柄層は、上記インクにより形成される部分と、金属薄膜の部分が混在していてもよい。
絵柄層は、ポリ塩化ビニル系樹脂基材の一方の面の側のみに設けられていてもよく、両面側に設けられていてもよい。
絵柄層の平均厚さは、装飾の内容や色柄の種類に応じて適宜設定することができ、0.1μm〜20μm程度が一般的で、好ましくは0.5μm〜10μmである。
3.層構成
本開示の成形用化粧シートは、ポリ塩化ビニル系樹脂基材と絵柄層とを備えていれば、その層構成は特に限定されない。図1A〜図1Cは、本開示の層構成の例である。
図1Aは、本開示の成形用化粧シートの第1の実施形態の断面模式図である。図1Aに示すように、成形用化粧シート100Aにおいては、ポリ塩化ビニル系樹脂基材1の一方の面に絵柄層2が設けられる。
図1Bは、本開示の成形用化粧シートの第2の実施形態の断面模式図である。図1Bに示すように、成形用化粧シート100Bにおいては、ポリ塩化ビニル系樹脂基材1と透明樹脂層3との間に絵柄層2が設けられる。
図1Cは、本開示の成形用化粧シートの第3の実施形態の断面模式図である。成形用化粧シート100Cにおいては、ポリ塩化ビニル系樹脂基材1の一方の面に絵柄層2及び透明樹脂層3がこの順に設けられ、透明樹脂層3が面する側にさらにトップコート層4が、ポリ塩化ビニル系樹脂基材1が面する側にさらに裏面プライマー層5が、それぞれ設けられる。
なお、本開示の成形用化粧シートは、図1A〜図1Cに示す層構成に限定されるものではない。
図1Cに示すように、本開示の成形用化粧シートは、上述したポリ塩化ビニル系樹脂基材、及び絵柄層を備える積層体の一面側に、さらに透明樹脂層を備えていてもよい。
絵柄層が大気に露出すると、水(雨)、空気(特に酸素)、紫外線、熱により絵柄層が劣化し、剥げ、落ちる場合がある。また、着色剤を含有するポリ塩化ビニル系樹脂基材が大気に露出する場合についても、同様の問題が生じるおそれがある。したがって、絵柄層の劣化やポリ塩化ビニル系樹脂基材の色あせを防ぎ、積層体全体を保護するために、透明樹脂層により積層体表面を覆うことが好ましい。
透明樹脂層に使用される材料としては、上述した積層体の物理的損傷や化学的劣化を防止できるものであれば特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂や、オレフィン系樹脂等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、ポリアクリル酸エステル(ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル、ポリアクリル酸ブチル、等)、ポリメタクリル酸エステル(ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、等)、及びこれらの共重合体等が例示できる。また、オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体等が例示できる。
透明樹脂層には、化粧シートの表面層として求められる機能を補強するために、所望により、各種添加剤、補強剤、充填剤、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤等が添加される。
可塑剤としては、上述したフタル酸ジイソノニルを用いてもよい。この場合、透明樹脂フィルムの質量を100質量部としたとき、可塑剤の添加量は2〜10質量部であることが好ましい。当該添加量が10質量部を超えると、白化するおそれがある。一方、当該添加量が2質量部未満であると、絵柄層に対する追従性が低下し、絵柄層の割れや層間剥離が生じるおそれがある。
紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤は、樹脂により良好な耐候性(耐光性)を付与するためのものであり、その添加量は紫外線吸収剤、光安定剤とも通常0.1〜5質量%程度である。一般的には、紫外線吸収剤と光安定剤とを併用するのが好ましい。紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン等のトリアジン系、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系等の有機系の紫外線吸収剤の他、粒径0.2μm以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機系の紫外線吸収剤も用いることができる。光安定剤としては、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を用いることができる。
これらの材料を混合したものをカレンダー製法等の常用の方法により製膜して透明樹脂フィルムが得られる。この透明樹脂フィルムが透明樹脂層の形成に用いられる。透明樹脂フィルムの厚みは50〜100μm程度、好ましくは80μm程度である。
透明樹脂層の形成方法は特に限定されない。例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂基材及び絵柄層を備える積層体の一面側に、接着剤等を用いて透明樹脂フィルムを貼る方法が挙げられる。また、透明樹脂フィルムの一面側に絵柄層を塗布形成したものを、ポリ塩化ビニル系樹脂基材の一面側に貼る方法も挙げられる。
図1Cに示すように、上記透明樹脂層の上から、さらにトップコート層を設けてもよい。トップコート層は、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等により形成される層である。これらの樹脂を透明樹脂層の上から塗布した後、熱付与または電離放射線照射により樹脂を硬化させて、トップコート層を形成してもよい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリシロキサン系樹脂等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線等が挙げられる。
図1Cに示すように、ポリ塩化ビニル系樹脂基材の表面に、さらに裏面プライマー層を設けてもよい。
裏面プライマー層は、通常、本開示の成形用化粧シートを立体成形部材表面に貼り合わせる際、ポリ塩化ビニル系樹脂基材と立体成形部材表面との密着性を向上させるための下地として機能する層である。
裏面プライマー層は、三次元成形の様々な成形法、例えば、真空成形法や、インサート成形法及びサーモジェクト成形法(射出成形同時加飾法)等の各種射出成形法に対応しうる。
裏面プライマー層に用いられる樹脂としては、ポリエステル/ウレタン樹脂混合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合体樹脂(ABS系樹脂)、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を好ましく挙げることができ、これらのうち1種又は2種以上を組み合せて用いることができる。裏面プライマー層に用いられる樹脂としては、これらの樹脂の内、ポリエステル/ウレタン樹脂混合樹脂、塩化ビニル系樹脂を含むことが特に好ましく、ポリエステル/ウレタン樹脂混合樹脂を含むことが最も好ましい。
接着性を確保する観点から、裏面プライマー層の平均厚さとしては0.1〜10.0μmが好ましく、0.5〜3.0μmがより好ましい。
裏面プライマー層の形成方法としては、例えば、グラビア印刷法等の公知の方法が使用できる。
成形用化粧シートの平均厚さは特に限定されない。成形用化粧シートの平均厚さは、例えば10μm〜1,000μmであってもよく、好適には50μm〜300μmである。
成形用化粧シートの密着性の評価は、例えば、引張試験及び剥離試験等により行われる。
引張試験の試験方法の例は以下の通りである。まず、成形用化粧シートを、縦15cm×横5cmのサイズに切り出し、縦方向に間隔が5cmとなるように印をつける。印をつけた5cm間隔の部分が伸ばされるように上記各シートを引張試験器(例えば、ORIENTEC社製、RTC―1250A(商品名)等)に取り付け、70℃条件下で伸長率300%になるよう30mm/minの速度で引張試験を行う。この引張試験は、特に、真空成形条件下における化粧シートの状態を模擬するものである。
剥離試験の試験方法の例は以下の通りである。まず、上記引張試験等により300%伸長させた成形用化粧シートにつき、異なる2層の間(例えば、透明樹脂層と着色原反との間や、ポリ塩化ビニル系樹脂基材と絵柄層との間等)で剥離の起点を作製し、引張試験器(例えば、ORIENTEC社製、RTC―1250A(商品名)等)にて剥離速度100mm/minで剥離試験を行うことで密着強度を測定する。
特に、引張試験の後に剥離試験を行うことにより、真空成形条件下における化粧シートの密着性を正確に評価することができる。
以下の基準に基づき密着性評価を行ってもよい。評価Aであれば、優れた密着性を有すると評価することができる。
A:密着強度が20N以上であるか、又はシートに材料破壊が生じる。
F:密着強度が20N以下である。
以上の試験は、公知の試験方法に基づいて行ってもよい。例えば、引張試験は、JISH 8504:1999 20(引張試験方法)、又は対応するISO2819(引張試験)に準拠して行ってもよい。剥離試験は、JISH 8504:1999 15.1(テープ試験方法)、又は対応するISO2819(剥離試験)に準拠して行ってもよい。
成形用化粧シートの意匠性評価は、例えば、以下の通り行われる。
まず、比較対象となる成形用化粧シート(例えば、従来技術により作製した成形用化粧シート)について、上記引張試験を行う。次に、意匠性評価対象である上記引張試験後の成形用化粧シートと、引張試験後の比較対象とを目視にて比較する。
以下の基準に基づき意匠性評価を行ってもよい。評価Aであれば、意匠性に優れると評価することができる。
A:引張試験後の比較対象と比較して遜色ない外見であった。
F:引張試験後の比較対象と比較して見劣りした。
本開示の成形用化粧シートは、優れた成形性を有し、絵柄層が割れにくく、かつ層間剥離が生じにくい。そのため、具体的用途としては、主に立体表面の装飾の用途が挙げられ、例えば、自動車等の車両の内装材用又は外装材用;窓枠、扉枠等の建具用;壁、床、天井等の建築物の内装材用;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体用;容器用等が挙げられる。
本開示の化粧シートを用いた成形方法は、立体的形状を有する物体の表面に当該化粧シートを貼りつけ、かつ当該化粧シートを成形し得る方法であれば、特に限定されない。本開示の化粧シートは、幅広い成形方法へ適用可能である。
特に、本開示の化粧シートは、少なくとも成形時に当該化粧シートの幅方向に沿って引っ張り応力が付与されるような方法で成形する際の絵柄層の割れ、絵柄層と隣接する層との層間剥離、及び絵柄層の視覚的な歪みを阻止できるという点から、成形方法の典型例として、真空成形、射出成形同時積層、及びラッピング加工等が例示できる。これらの中でも、特に高い引っ張り応力が化粧シートに対し付与されるという点で、真空成形用であることが好ましい。なお、化粧シートを貼りつける物体の表面形状は、平面、凸曲面、凹曲面及び角部分のいずれであってもよい。
1.成形用化粧シートの製造
[実施例1]
フタル酸ジイソノニルの添加量と効果との関係を調べるため、ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂中に特定量のフタル酸ジイソノニルを含む成形用化粧シートを製造した。
(1)積層体Aの作製
平均厚さ100μmの着色PVCフィルム(リケンテクノス社製、BS−R(商品名)、ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたときのフタル酸ジイソノニル含有量が8質量部)をポリ塩化ビニル系樹脂基材のモデルとした。このモデルを参考に、当該フタル酸ジイソノニル含有量を8質量部から21質量部に変更し、他の組成及び平均厚さはそのままとした着色PVCフィルムを別途作製し、これをポリ塩化ビニル系樹脂基材とした。
得られたポリ塩化ビニル系樹脂基材の片面上に、グラビア印刷法で塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体/アクリル混合樹脂(昭和インク工業社製、化X(NT)(商品名))を含む絵柄層用インクを塗工して乾燥させ、これを絵柄層とし、ポリ塩化ビニル系樹脂基材と絵柄層との積層体Aを作製した。
(2)成形用化粧シートの製造
上記積層体Aの絵柄層側と、透明樹脂層としての透明PVCフィルム(リケンテクノス社製、CLEAR G−5カイ2(商品名)、透明樹脂層100質量部に対するフタル酸ジイソノニル含有量が4質量部、平均厚さ:200μm)とを、EM機にてライン速度5m/min、EM版温度80℃、EM圧4.5kgf、シート温度185℃の条件下で貼り合わせることにより、ポリ塩化ビニル系樹脂基材、絵柄層及び透明樹脂層からなる積層体Bを作製した。
次に、上記積層体Bのポリ塩化ビニル系樹脂基材側の面上に、グラビア印刷法で、ポリエステル/ウレタン樹脂混合樹脂(DIC−G PUC−3(商品名))を塗工し、裏面プライマー層を形成した。
続いて、上記積層体Bの透明樹脂層側の面上に、グラビア印刷法で、塩ビ変性アクリルポリオール樹脂(昭和インク工業社製、OP No.81(NT)(商品名)」を塗工してトップコート層を形成することにより、実施例1の成形用化粧シートを製造した。
[実施例2]
ポリ塩化ビニル系樹脂基材中のフタル酸ジイソノニル含有量を表1に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様に、実施例2の成形用化粧シートを製造した。
[比較例1]
フタル酸ジイソノニル含有量が21質量部の着色PVCフィルムを用いる代わりに、平均厚さ100μmの着色PVCフィルム(リケンテクノス社製、BS−R(商品名)、ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたときのフタル酸ジイソノニル含有量が8質量部)を用いたこと以外は、実施例1と同様に、比較例1の成形用化粧シートを製造した。
2.評価方法
(1)密着強度の測定及び密着性評価
実施例1〜実施例2及び比較例1の成形用化粧シートを、縦15cm×横5cmのサイズに切り出し、縦方向に間隔が5cmとなるように印をつけた。印をつけた5cm間隔の部分が伸ばされるように上記各シートを引張試験器(ORIENTEC社製、RTC―1250A(商品名))に取り付け、70℃条件下で伸長率300%になるよう30mm/minの速度で引張試験を行った。この引張試験は、真空成形条件下における化粧シートの状態を模擬するものである。
引張試験後、300%伸長させた成形用化粧シートにつき、透明PVCフィルムと着色PVCフィルム間で剥離の起点を作製し、再度、引張試験器にて剥離速度100mm/minで剥離試験を行うことで密着強度を測定した。
以下の基準に基づき密着性評価を行った。評価Aであれば、対象となる成形用化粧シートが優れた密着性を有すると評価する。
A:密着強度が20N以上であるか、又はシートに材料破壊が生じる。
F:密着強度が20N以下である。
(2)意匠性評価
引張試験後の実施例1〜実施例2の各成形用化粧シートと、引張試験後の比較例1の成形用化粧シートとを目視にて比較した。
以下の基準に基づき、引張試験後の実施例1〜実施例2について、意匠性評価を行った。評価Aであれば、対象となる成形用化粧シートが意匠性に優れると評価する。
A:引張試験後の比較例1の成形用化粧シートと比較して遜色ない外見であった。
F:引張試験後の比較例1の成形用化粧シートと比較して見劣りした。
下記表1は、実施例1〜実施例2及び比較例1の実験結果をまとめた表である。下記表1中、「可塑剤含有量(質量部)」とは、ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたときのフタル酸ジイソノニル含有量(質量部)を意味する。
3.考察
上記表1より、実施例1と比較例1を比較すると、可塑剤添加量を8質量部から21質量部に増やすことによって、密着強度を1.7倍も高められることが分かる。また、上記表1より、実施例2と比較例1を比較すると、可塑剤添加量を8質量部から12質量部に増やすことによって、密着強度を1.5倍も高められることが分かる。
表1より、実施例1及び実施例2の密着性評価及び意匠性評価は、いずれもAである。したがって、ポリ塩化ビニル系樹脂基材が、当該ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたとき、可塑剤としてフタル酸ジイソノニルを12質量部以上含有する実施例1及び実施例2の成形用化粧シートは、少なくとも成形時において、絵柄層中の樹脂バインダーが着色剤を繋ぎ止める結果、絵柄層の割れ、絵柄層と隣接する層との層間剥離、及び絵柄層の歪みを抑えることができ、優れた密着性及び意匠性を発揮することが実証された。
1,11 ポリ塩化ビニル系樹脂基材
2,12 絵柄層
3 透明樹脂層
4 トップコート層
5 裏面プライマー層
20 従来の成形用化粧シート
30 立体成形部材
40 減圧を示す矢印
50 加圧を示す矢印
100A,100B,100C 成形用化粧シートの実施形態
200A 成形途中の従来品
200B 成形後の従来品
300A,300B,300C 割れ又は層間剥離が生じた従来品

Claims (5)

  1. ポリ塩化ビニル系樹脂基材、及び当該ポリ塩化ビニル系樹脂基材の少なくとも一方の面側に絵柄層を備える成形用化粧シートであって、
    前記ポリ塩化ビニル系樹脂基材は、当該ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたとき、可塑剤として、フタル酸ジイソノニルを12質量部以上含有することを特徴とする成形用化粧シート。
  2. 前記ポリ塩化ビニル系樹脂基材は、当該ポリ塩化ビニル系樹脂基材を構成するポリ塩化ビニル系樹脂の質量を100質量部としたとき、可塑剤として、フタル酸ジイソノニルを12〜21質量部含有する、請求項1に記載の成形用化粧シート。
  3. 前記絵柄層における、当該絵柄層が前記ポリ塩化ビニル系樹脂基材と向き合う面とは反対側の面の側に、さらに透明樹脂層を備える、請求項1又は2に記載の成形用化粧シート。
  4. 立体表面の装飾に用いられる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成形用化粧シート。
  5. 真空成形に用いられる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の成形用化粧シート。
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