JP2019177671A - 樹脂硬化層付き基板およびその製造方法 - Google Patents

樹脂硬化層付き基板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリカーボネート樹脂のような傷つきやすい材料であっても、十分な耐摩耗性を備える樹脂硬化層付き基板、および製造コストの上昇を抑制することができる樹脂硬化層付き基板の製造方法を提供する。【解決手段】樹脂硬化層付き基板100は、基板1と、基板1の一方の面に設けられた樹脂硬化層2とを有する。樹脂硬化層2の表面に対して法線方向から0.5mNの荷重をかけた時のマルテンス硬度が150N/mm2以上800N/mm2以下であり、かつ同条件下における弾性仕事率が80%以上であり、かつ樹脂硬化層2の表面から厚さ方向10nmの範囲内においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)とが式(1)の関係である。Y/X≧5.0・・・(1)【選択図】図1

Description

本発明は、優れた耐摩耗性を備える樹脂硬化層付き基板、およびその製造方法に関する。
ポリカーボネート樹脂は、透明性に優れ、軽量で耐衝撃性が高いことから、各種の建築物、自動車等の窓材や構造材等として、広く応用展開されてきた。
しかしながら、耐摩耗性・耐侯性・耐薬品性の観点でガラスに大幅に劣るという欠点がある。そのため、これらの性能をカバーする機能を有するハードコート層をポリカーボネート上に形成する方法(例えば特許文献1)が提案されている。
このようなハードコート層としては、有機珪素化合物の加水分解縮合物を主成分として含んだ下地ハードコート層と、その上層にPE−CVD法で形成した酸化珪素層を積層させる方法が用いられている。
特許第5944069号公報
しかしながら、上記の方法でハードコート層を形成しようとする場合には、成膜速度が遅いために生産性が悪い、あるいは湿式塗工装置と乾式塗工装置の両装置を導入する必要があるといった点で製造コストが高くなるという欠点がある。
本発明は、これらの欠点を解決するためになされたものであり、その目的は、ポリカーボネート樹脂のような傷つきやすい材料であっても、十分な耐摩耗性を備える樹脂硬化層付き基板を提供することにある。
更に、本発明の他の目的は、生産性の悪化や設備導入による製造コストの上昇を抑制することができる樹脂硬化層付き基板の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明のある態様に係る樹脂硬化層付き基板は、基板と、該基板の少なくとも一方の面に、樹脂硬化層とを有し、上記樹脂硬化層の表面に対して法線方向から0.5mNの荷重をかけた時のマルテンス硬度が150N/mm以上800N/mm以下であり、かつ同条件下における弾性仕事率が80%以上であり、かつ上記樹脂硬化層の表面から厚さ方向10nmの範囲内においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)が式(1)の関係である。
Y/X≧5.0・・・(1)
また、上記樹脂硬化層付き基板においては、上記基板が、有機樹脂を主成分としても良い。
また、上記樹脂硬化層付き基板においては、上記樹脂硬化層が、紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含む硬化層としても良い。
また、上記樹脂硬化層付き基板においては、上記樹脂硬化層が、酸化珪素を主成分とする微粒子を含んでも良い。
また、上記樹脂硬化層付き基板においては、上記樹脂硬化層の膜厚が、3μm以上20μm以下であるとしても良い。
また、本発明のある態様の樹脂硬化層付き基板の製造方法は、上記基板の少なくとも一方の面に樹脂硬化層を形成する工程と、上記樹脂硬化層にXeエキシマ光照射処理を施す工程とを含み、光照射処理後の樹脂硬化層が下記(a)および(b)の要件を満たす。
(a)樹脂硬化層の表面に対して法線方向から0.5mNの荷重をかけた時のマルテンス硬度が150N/mm以上800N/mm以下であり、かつ同条件下における弾性仕事率が80%以上である。
(b)樹脂硬化層の表面から厚さ方向10nmの範囲内においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)が下記式(1)の関係である。
Y/X≧5.0・・・(1)
本発明のある態様の樹脂硬化層付き基板によれば、十分な耐摩耗性を備える樹脂硬化層付き基板を提供することができる。また、本発明のある態様の樹脂硬化層付き基板の製造方法によれば、樹脂硬化層を形成する際にCVD法などの乾式塗工を使用しないため、生産性の悪化や設備導入による製造コストの上昇を抑制することができる樹脂硬化層付き基板の製造方法を提供することができる。
本発明のある態様の樹脂硬化層付き基板の積層構造の一例を示す断面図である。 本発明のある態様の樹脂硬化層付き基板の製造に使用されるフィルム積層体の積層構造の一例を示す断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることがある。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定されるものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。また、以下の記載において、「○○〜○○」の表記は、「○○以上○○以下」を示す。
<樹脂硬化層付き基板の構成>
図1は、樹脂硬化層付き基板のある実施形態における積層構造を示す断面図である。本実施形態の樹脂硬化層付き基板100は、基板1の少なくとも一方の面に樹脂硬化層2を有する樹脂硬化層付き基板である。基板1は、有機樹脂を主成分としてもよい。ここでいう主成分は重量としての主成分である。樹脂硬化層2の表面に対して法線方向から0.5mNの荷重をかけた時のマルテンス硬度が150N/mm以上800N/mm以下であり、かつ同条件下における弾性仕事率が80%以上であり、かつ樹脂硬化層の表面から厚さ方向10nmの範囲内においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)が下記式(1)の関係である。
Y/X≧5.0・・・(1)
樹脂硬化層付き基板100は、以下に示す特定範囲の硬度、復元力、化学組成を充足する。このような物性値を充足することによって、基板1に対して、優れた耐摩耗性を備えることが可能になる。
<硬度>
樹脂硬化層付き基板100は、樹脂硬化層2側から測定したマルテンス硬度が150N/mm以上800N/mm以下を充足すればよいが、好ましくは200N/mm以上600N/mm以下が挙げられる。このようなマルテンス硬度を備えることにより、基板1に対して、優れた耐摩耗性を備えさせることができる。
上記マルテンス硬度は、試料表面に最大荷重0.5mNの荷重でダイヤモンドの圧子を押し込み、その時の押し込み深さから、最大荷重(A)と圧子の表面積(B)を用いて以下の式(2)の通りに算出する。
マルテンス硬度=A/B・・・(2)
なお、上記マルテンス硬度は、ISO14577に記載の方法に従って測定される値である。樹脂硬化層付き基板10に上記マルテンス硬度を備えさせるには、樹脂硬化層2の組成や厚さ等を適宜調整すればよい。
<復元力>
また、樹脂硬化層付き基板100は、上記マルテンス硬度の測定条件下における弾性仕事率が80%以上であることを充足する。このような弾性仕事率を備えることにより、基板1に対して、優れた耐摩耗性を備えさせることができる。
上記弾性仕事率について、以下説明する。固体材料に荷重が負荷された場合、押し込み中に費やされる機械的仕事量Wtotalは、その一部だけが塑性変形仕事量Wplastとして使われ、残りは荷重除去時の弾性回復仕事量(弾性変形仕事量)Welastとして解放される。上記弾性仕事率は材料の粘弾性を表し、特に弾性回復に寄与するパラメータである。上記弾性仕事率は、(Welast/Wtotal)×100によって表される。なお、弾性仕事率の測定条件は、上述したマルテンス硬度の測定条件と同じである。樹脂硬化層付き基板10に前記弾性仕事率を備えさせるには、樹脂硬化層2の組成や厚さ等を適宜調整すればよい。
<化学組成>
樹脂硬化層付き基板100は、樹脂硬化層2の表面から厚さ方向10nmの範囲内において測定した炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)の比(珪素/炭素比)が5.0以上を充足すればよいが、好ましくは7.0以上が挙げられる。このような化学組成を備えることにより、基板1に対して、優れた耐摩耗性を備えさせることができる。
当該化学組成は、試料表面にX線光電子分光法を用いて測定を行った場合の炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)を用いて以下の式(3)の通りに算出する。
珪素/炭素比=Y/X・・・(3)
樹脂硬化層付き基板100に対して、上記化学組成を備えさせるには、樹脂硬化層2の組成や厚さ等を適宜調整すればよく、その具体的条件については後述する。
以下に、本実施形態の樹脂硬化層付き基板を構成する各層の組成や厚さ等について説明する。樹脂硬化層付き基板100において、基板1の材質は特に制限されず、樹脂、ガラス、紙、木材、金属など様々な材質のものを用いることができる。この中でも、樹脂の射出成形により基材を成形する場合、後述する熱可塑性樹脂あるいは、熱硬化性樹脂(1液又は2液硬化性樹脂を含む)を用いることができる。熱可塑性樹脂材料としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン系共重合体、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。また、上記熱硬化性樹脂としては、1液又は2液反応硬化型のポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独でも良いし、二種以上混合して用いても良い。これらの中でも、ポリカーボネートは耐衝撃性や透明性に優れており、好適に使用される。
また、これらの樹脂には、必要に応じて各種添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、可塑剤、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどの無機物粉末、木粉、ガラス繊維などの充填剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤などを添加することができる。なお、射出樹脂は、用途に応じて適宜、着色剤を添加して着色した樹脂を使用しても良い。基板1の厚みについては特に制限はなく、当該基板の用途に応じて選定される。
ここで、基板1と樹脂硬化層2との密着性を向上させる目的で、界面に接着層を設けても良く、公知のヒートシール性接着剤又は粘着剤を使用できる。例えば、接着層としては、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、塩酢ビ樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などが挙げられる。また、紫外線遮蔽機能を付与するために耐候性改善剤を添加しても良い。接着層の厚みとしては、0.5μm〜10μmの範囲が好適である。
樹脂硬化層2は、基板1に耐摩耗性等の機械強度を付与するために設けられる層であり、紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物からなる。樹脂硬化層2に使用される紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂の種類については、前述するマルテンス硬度、弾性仕事率、及び炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)の比を充足できるように適宜設定すればよく、これらの物性値を充足できることを限度として特に制限されない。
本実施形態において、紫外線硬化性樹脂とは、紫外線(UV)によって硬化する樹脂をいう。代表的なラジカル重合反応する樹脂としては、分子中にアクリロイル基を有する樹脂であり、アクリル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどのモノマー、オリゴマー、ポリマーなどの混合物が使用される。なお、シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンを(メタ)アクリル酸で変性させることにより得ることができ、本樹脂を含有することで式(3)の化学組成の珪素含有率を向上させることができる。これらの樹脂は単独の組成で用いても、数種の混合組成で用いても良く、又、後述する熱硬化性樹脂と組み合わせて使用しても良い。
なお、紫外線照射に伴い樹脂の硬化を円滑に進行させる為に、公知の光重合開始剤を適量添加することが好ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
また、光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
本実施形態において、熱硬化性樹脂とは、熱によって硬化する樹脂をいう。中でも、式(3)の化学組成の珪素含有率を向上させるためには、シリコーン系の熱硬化性樹脂を使用することが好ましく、2〜4官能性、更に好ましくは3〜4官能性のケイ素アルコキシドを加熱により硬化させるものが好ましい。また、これらをあらかじめ溶液中で適度に加水分解ならびに脱水縮合を行なって適度にオリゴマー化あるいはポリマー化させたものも好ましく用いられる。使用可能なケイ素アルコキシドの例としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの樹脂は単独の組成で用いても、数種の混合組成で用いても良く、又、先述した紫外線硬化性樹脂と組み合わせて使用しても良い。
ここで、樹脂硬化層2を転写によって基板1に積層する場合、転写前はタックフリー状態であり、基板1に転写後、紫外線を照射することで架橋できる樹脂からなるものが好ましい。転写後に架橋する理由としては、フィルム積層体10は射出成形や加熱転写法で使用される場合、予め架橋すると転写の延伸時にクラックが生じやすく、外観不良となるためである。
本実施形態では、樹脂硬化層2が平均粒子径10nm以上100nm以下の無機微粒子を含有することが好ましい。該無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、五酸化アンチモンといった酸化物やアンチモンドープ酸化スズ、リンドープ酸化スズ等複合酸化物が挙げられる他、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、カオリン、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等も使用することができる。これら無機微粒子は2種類以上を混合して用いてもよい。中でも酸化珪素を用いることが好ましい。酸化珪素を含有することで式(3)の化学組成の珪素/炭素比を向上させることができる。微粒子として、酸化珪素を主成分としてもよい。ここでいう主成分は重量としての主成分である。
なお、上記無機微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定される微粒子の平均粒子径であり、粒径分布を累積分布で表したときの50%粒径(d50メジアン径)である。例えば、市販の米国Microtrac社製のNanotracUPA−EX150と呼ばれる装置により測定できる。
上記無機微粒子を添加することにより、樹脂硬化層中の空隙を微粒子が埋めるため、硬度がアップする。また、上記無機微粒子の平均粒子径を10nm以上にすることにより、微粒子の製造が容易となり、100nm以下にすることにより、樹脂硬化層の光線透過性を付与することができる。さらに好ましい該無機微粒子の平均粒子径は、10nm以上50nm以下である。該無機微粒子の添加量は、粒子の種類、粒径により異なるが、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して20〜500重量部、より好ましくは50〜300重量部である。
また、諸物性を向上させるため、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、滑剤等を添加しても構わない。特に、耐候性能を付与するためには、紫外線吸収剤や光安定剤を添加することで、紫外線や風雨に晒されることによる樹脂の変色や劣化等を効果的に抑制することが可能になる。
樹脂硬化層2の厚さについては、当該樹脂硬化層2の組成に応じて、前述する硬度、化学組成を充足できる範囲に適宜設定すればよいが、通常3〜20μm、好ましくは5〜15μmが挙げられる。このような厚さを満たすことによって、前述する硬度、復元力、化学組成を充足させつつ、より一層効果的に優れた耐摩耗性を備えさせることが可能になる。
支持フィルム3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネートフィルム、ナイロンフィルム、セロファンフィルム、アクリルフィルムといった基材が使用可能である。使用可能な支持フィルム3の厚みとしては、25μm〜150μmであるが、好ましくは、38μm〜50μmである。
離型層4は、樹脂硬化層2からの剥離性が最も重要であり、耐熱性、耐溶剤性及び延伸性も必要とされる。このため、離型層4は、硬化系であることが好ましく、例えば、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、酢酸セルロースなどの硬化物が使用可能である。硬化架橋系としては、エポキシ樹脂/アミン類、アルキド樹脂/酸触媒、アクリルポリオール樹脂/イソシアネート化合物、アクリルオリゴマー/光開始剤を使用できる。離型層4の厚みは、特に制限はないが、0.1μm〜3μmが好適である。
<樹脂硬化層付き基板の製造方法>
本実施形態の樹脂硬化層付き基板の製造方法については、特に制限されないが、例えば、基板以外の各層を予め積層させたフィルム積層体を作製しておき、当該フィルム積層体を用いて基板に各層を積層させる方法が挙げられる。
図2は、本発明のある態様の樹脂硬化層付き基板の製造方法に使用されるフィルム積層体の積層構造の一例を示す断面図である。
本実施形態のフィルム積層体10は、支持フィルム3の少なくとも一方の面に、離型層4、樹脂硬化層2をこの順に有するフィルム積層体である。
本実施形態の製造方法は、基板1の少なくとも一方の面に樹脂硬化層2を形成する工程と、樹脂硬化層2にXeエキシマ光照射処理を施す工程とを含む。
そして、樹脂硬化層2にXeエキシマ光照射処理を施す工程では、光照射処理後の樹脂硬化層2が下記(a)および(b)の要件を満たすようにXeエキシマ光照射処理した。
(a)樹脂硬化層2の表面に対して法線方向から0.5mNの荷重をかけた時のマルテンス硬度が150N/mm以上800N/mm以下であり、かつ同条件下における弾性仕事率が80%以上である。
(b)樹脂硬化層2の表面から厚さ方向10nmの範囲内においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)が式(1)の関係である。
Y/X≧5.0・・・(1)
具体的には、支持フィルム3上に、少なくとも離型層4および樹脂硬化層2をこの順に積層させたフィルム積層体10を基板1に積層させた後に、当該支持フィルム3および離型層4を剥離し、紫外線を照射して樹脂硬化層2を硬化する方法によって、樹脂硬化層付き基板100を製造することができる。
また、本実施形態の樹脂硬化層付き基板の製造方法においては、上記の通り形成された樹脂硬化層2に対して、Xeエキシマ光による照射処理を施しても良い。
ここで、Xeエキシマ光は、波長172nmの紫外線であり、上記の通り形成された樹脂硬化層2の表面にXeエキシマ光を照射することにより、樹脂硬化層2の表面構造を変化させることができる。具体的には、樹脂硬化層2の表面に存在する珪素原子と炭素原子の結合あるいは炭素原子と炭素原子の結合を特異的に切断することが可能である。このような処理を行うことにより、式(3)の化学組成の珪素/炭素比を向上させることができる。
(実施例1)
支持フィルム3である、厚み50μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂株式会社;G440E50)上に、アクリルメラミン樹脂(日立化成ポリマー株式会社;テスファイン)をグラビア法でDry0.2μm厚で形成して離型層4を得た。ここで、「Dry0.2μm厚」とは、乾燥後に0.2μm厚になるということを意味している。これと同様に、以下に記載される「Dry○○μm厚」とは、乾燥後に○○μm厚になるということを意味している。
続いて、離型層4上に、下記の組成で攪拌、混合した紫外線硬化性樹脂組成物をグラビア法でDry10μm厚で塗布して樹脂硬化層2を形成した。
<紫外線硬化性樹脂組成物>
・アクリルアクリレート(DIC;RC29−120)・・・・・20重量部
・シリコーンアクリレート(信越化学工業;KR−513)・・・80重量部
・コロイダルシリカ(日産化学工業;MEK−ST−ZL)・・150重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン;イルガキュアー184)・・・4重量部
・メチルイソブチルケトン ・・・・・・・・・・・・・・・・・50重量部
次に、樹脂硬化層2上に、接着層として塩酢ビ樹脂(日信化学工業株式会社;ソルバインA)をトルエン及びメチルエチルケトンに溶かしたインキをグラビア法でDry1μm厚で塗布し、フィルム積層体10を得た。
更に、射出成形機の金型内にこのフィルム積層体10をセットして、基板1となるポリカーボネート樹脂で射出成形を行った。得られた成形品は支持フィルム3および離型層4が取り除かれた状態であり、成形品の樹脂硬化層面に120W/cmの高圧水銀灯で露光量1000mJ/cmの紫外線を照射し、完全硬化させた。その後、樹脂硬化層に対して5000mJ/cmのXeエキシマ光を照射することで、樹脂硬化層付き基板100を得た。
(実施例2)
実施例1で用いた樹脂硬化層2としての紫外線硬化性樹脂組成物を、下記の通りに変更した以外は、実施例1と同様の手順で、実施例2の樹脂硬化層付き基板100を得た。
<紫外線硬化性樹脂組成物>
・アクリルアクリレート(DIC;RC29−120)・・・・・20重量部
・シリコーンアクリレート(信越化学工業;KR−513)・・・80重量部
・コロイダルシリカ(日産化学工業;MEK−ST−ZL)・・・50重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン;イルガキュアー184)・・・4重量部
・メチルイソブチルケトン ・・・・・・・・・・・・・・・・・50重量部
(実施例3)
実施例1で用いた樹脂硬化層2としての紫外線硬化性樹脂組成物を、下記の通りに変更した以外は、実施例1と同様の手順で、実施例3の樹脂硬化層付き基板100を得た。
<紫外線硬化性樹脂組成物>
・アクリルアクリレート(DIC;RC29−120)・・・・・50重量部
・シリコーンアクリレート(信越化学工業;KR−513)・・・50重量部
・コロイダルシリカ(日産化学工業;MEK−ST−ZL)・・300重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン;イルガキュアー184)・・・4重量部
・メチルイソブチルケトン ・・・・・・・・・・・・・・・・50重量部
(実施例4)
実施例1で用いた樹脂硬化層2としての紫外線硬化性樹脂組成物を、下記の通りに変更した以外は、実施例1と同様の手順で、実施例4の樹脂硬化層付き基板100を得た。
<紫外線硬化性樹脂組成物>
・アクリルアクリレート(DIC;RC29−120)・・・・・80重量部
・シリコーンアクリレート(信越化学工業;KR−513)・・・20重量部
・コロイダルシリカ(日産化学工業;MEK−ST−ZL)・・150重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン;イルガキュアー184)・・・4重量部
・メチルイソブチルケトン ・・・・・・・・・・・・・・・・50重量部
(実施例5)
実施例1で用いた基板1としてガラスを使用した。樹脂硬化層2として実施例1と同様の紫外線硬化性樹脂組成物を、実施例1と同様の手順で作製し、実施例5の樹脂硬化層付き基板100を得た。
(実施例6)
実施例1で用いた樹脂硬化層2としての紫外線硬化性樹脂組成物を、下記の通りに変更した以外は、実施例1と同様の手順で、実施例6の樹脂硬化層付き基板100を得た。
<紫外線硬化性樹脂組成物>
・アクリルアクリレート(DIC;RC29−120)・・・・・20重量部
・シリコーンアクリレート(信越化学工業;KR−513)・・・80重量部
・酸化チタン微粒子(石原産業;TTO−51)・・・・・・・150重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン;イルガキュアー184)・・・4重量部
・メチルイソブチルケトン ・・・・・・・・・・・・・・・・・50重量部
(実施例7)
実施例1で用いた樹脂硬化層2としての紫外線硬化性樹脂組成物を、グラビア法でDry2μm厚で塗布して樹脂硬化層2を形成した。それ以外は実施例1と同様の手順で、実施例7の樹脂硬化層付き基板100を得た。
(実施例8)
実施例1で用いた樹脂硬化層2としての紫外線硬化性樹脂組成物を、グラビア法でDry30μm厚で塗布して樹脂硬化層2を形成した。それ以外は実施例1と同様の手順で、実施例8の樹脂硬化層付き基板100を得た。
(比較例1)
実施例1で用いた樹脂硬化層2としての紫外線硬化性樹脂組成物を、下記の通りに変更した以外は、実施例1と同様の手順で、比較例1の樹脂硬化層付き基板100を得た。
<紫外線硬化性樹脂組成物>
・アクリルアクリレート(DIC;RC29−120)・・・・・100重量部
・コロイダルシリカ(日産化学工業;MEK−ST−ZL)・・・150重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン;イルガキュアー184)・・・・4重量部
・メチルイソブチルケトン ・・・・・・・・・・・・・・・・・50重量部
(比較例2)
実施例1で用いた樹脂硬化層2としての紫外線硬化性樹脂組成物を、下記の通りに変更した以外は、実施例1と同様の手順で、比較例2の樹脂硬化層付き基板100を得た。
<紫外線硬化性樹脂組成物>
・シリコーンアクリレート(信越化学工業;KR−513)・・・100重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン;イルガキュアー184)・・・・4重量部
・メチルイソブチルケトン ・・・・・・・・・・・・・・・・・50重量部
(比較例3)
実施例1で用いた樹脂硬化層2としての紫外線硬化性樹脂組成物を、下記の通りに変更した以外は、実施例1と同様の手順で、比較例3の樹脂硬化層付き基板100を得た。
<紫外線硬化性樹脂組成物>
・アクリルアクリレート(DIC;RC29−120)・・・・100重量部
・コロイダルシリカ(日産化学工業;MEK−ST−ZL)・・400重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン;イルガキュアー184)・・・4重量部
・メチルイソブチルケトン ・・・・・・・・・・・・・・・・50重量部
(比較例4)
実施例1で用いた樹脂硬化層2としての紫外線硬化性樹脂組成物を、下記の通りに変更した以外は、実施例1と同様の手順で、比較例4の樹脂硬化層付き基板100を得た。
<紫外線硬化性樹脂組成物>
・シリコーンアクリレート(信越化学工業;KR−513)・・・100重量部
・コロイダルシリカ(日産化学工業;MEK−ST−ZL)・・・300重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン;イルガキュアー184)・・・・4重量部
・メチルイソブチルケトン ・・・・・・・・・・・・・・・・・50重量部
実施例1〜8および比較例1〜4で得られた樹脂硬化層付き基板の評価項目と評価基準を下記に示す。
(硬度)
樹脂硬化層付き基板の樹脂硬化層の表面に対して法線方向から0.5mNの荷重でダイヤモンドの圧子を押し込み、その時の押し込み深さから、最大荷重(A)と圧子の表面積(B)を用いて、ISO14577に記載の方法に従って、以下の式(2)の通りにマルテンス硬度を算出した。マルテンス硬度は、150N/mm以上800N/mm以下を「適正」とした。
マルテンス硬度=A/B・・・(2)
(復元力)
上記マルテンス硬度の測定において、ISO14577に記載の方法に従って、弾性仕事率を算出した。
(化学組成)
樹脂硬化層付き基板の樹脂硬化層の表面から厚さ方向10nmの範囲内において、X線光電子分光法を用いて測定を行った場合の炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)を用いて以下の式(3)の通りに珪素/炭素比を算出した。
珪素/炭素比=Y/X・・・(3)
(耐摩耗性)
摩耗輪にCS−10Fを用い、1000回転、60rpm、500g荷重の条件でテーバー摩耗試験を行った。テーバー摩耗試験前後の樹脂硬化層付き基板の4カ所について、ヘーズメータ(日本電色工業製NDH−2000)を用いてJISK7136に記載の方法に従ってヘイズを測定し、その平均値を求めた。上記テーバー摩耗試験後のヘイズからテーバー摩耗試験前のヘイズを差し引くことにより、テーバー摩耗試験前後のヘイズ差(ΔHz)を求めた。ヘイズ差(ΔHz)は、2.0%以下を「適正」とした。
各実施例及び各比較例の評価結果を表1に示す。
Figure 2019177671
実施例1〜8及び比較例1〜4で得た樹脂硬化層付き基板の硬度、復元力、化学組成および耐摩耗性を評価したところ、マルテンス硬度が150N/mm以上800N/mm以下で、かつ弾性仕事率が80%以上で、かつ珪素/炭素比が5.0以上である実施例1〜8については、耐摩耗性が良好であり、ΔHzがすべて3.0%以下であった。その中でも、基板が有機樹脂で、かつ樹脂硬化層に酸化珪素の微粒子を含み、膜厚が3μm以上20μm以下である実施例1〜4については、耐摩耗性が特に良好であり、ΔHzがすべて2.0%以下であった。
一方、珪素/炭素比が4.4と低い比較例1では、耐摩耗性が向上せずΔHzが4.5%であった。また、マルテンス硬度が130N/mmと低い比較例2では、耐摩耗性が向上せずΔHzが7.8%であった。そして、マルテンス硬度が1040N/mmと高い比較例3では、耐摩耗性が向上せずΔHzが3.5%であった。さらに、弾性仕事率が75%と低い比較例4では、耐摩耗性が向上せずΔHzが3.1%であった。
本実施形態の樹脂硬化層付き基板によれば、ポリカーボネート樹脂のような傷つきやすい材料であっても、十分な耐摩耗性を備える樹脂硬化層付き基板を提供することができる。また、本実施形態の樹脂硬化層付き基板の製造方法によれば、ハードコートとなる樹脂硬化層を形成する際にCVD法などの乾式塗工を使用しないため、生産性の悪化や設備導入による製造コストの上昇を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、実際には、上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。
1 基板
2 樹脂硬化層
3 支持フィルム
4 離型層
10 フィルム積層体
100 樹脂硬化層付き基板

Claims (7)

  1. 基板と、該基板の少なくとも一方の面に、樹脂硬化層とを有し、前記樹脂硬化層の表面に対して法線方向から0.5mNの荷重をかけた時のマルテンス硬度が150N/mm以上800N/mm以下であり、かつ同条件下における弾性仕事率が80%以上であり、かつ前記樹脂硬化層の表面から厚さ方向10nmの領域においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)が式(1)の関係である、ことを特徴とする樹脂硬化層付き基板。
    Y/X≧5.0・・・(1)
  2. 前記基板が、有機樹脂を主成分とする、ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂硬化層付き基板。
  3. 前記樹脂硬化層が、紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含む硬化層である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂硬化層付き基板。
  4. 前記樹脂硬化層が、酸化珪素を主成分とする微粒子を含む、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂硬化層付き基板。
  5. 前記樹脂硬化層の膜厚が、3μm以上20μm以下である、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂硬化層付き基板。
  6. 基板の少なくとも一方の面に樹脂硬化層を形成する工程と、前記樹脂硬化層にXeエキシマ光照射処理を施す工程とを含み、光照射処理後の樹脂硬化層が下記(a)および(b)の要件を満たすようにXeエキシマ光照射処理したことを特徴とする樹脂硬化層付き基板の製造方法。
    (a)樹脂硬化層の表面に対して法線方向から0.5mNの荷重をかけた時のマルテンス硬度が150N/mm以上800N/mm以下であり、かつ同条件下における弾性仕事率が80%以上である。
    (b)樹脂硬化層の表面から厚さ方向10nmの領域においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)が式(1)の関係である。
    Y/X≧5.0・・・(1)
  7. 前記基板の少なくとも一方の面に樹脂硬化層を形成する工程は、
    支持フィルム上に、少なくとも離型層および樹脂硬化層をこの順に積層させたフィルム積層体を前記基板に積層させた後に、前記支持フィルムおよび前記離型層を剥離することを特徴とする請求項6に記載の樹脂硬化層付き基板の製造方法。
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