JP2019209671A - 樹脂硬化層付基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐摩耗性に優れた樹脂硬化層付基板を提供する。【解決手段】樹脂層2が、下記(a)、(b)等の、所定の要件を満たすようにした。(a)樹脂硬化層2の法線方向に0.5mNの荷重を負荷して測定した場合の樹脂硬化層2のマルテンス硬度が150N/mm2以上800N/mm2以下である。(b)フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、樹脂硬化層2に対して基板1に接している面側から赤外分光分析を行って測定した場合のSi−CH3結合に起因するスペクトルのピーク高さH1とSi−O−Si結合に起因するスペクトルのピーク高さH2との比H1/H2である値Xと、樹脂硬化層2に対して基板1に接していない面側から赤外分光分析を行って測定した場合のSi−CH3結合に起因するスペクトルのピーク高さH3とSi−O−Si結合に起因するスペクトルのピーク高さH4との比H3/H4である値Yとの関係が、X/Y≧1.2を満たす。【選択図】図1

Description

本発明は、優れた耐摩耗性を備える樹脂硬化層付基板に関する。
例えば、ポリカーボネート樹脂等の樹脂成形材は、透明性に優れ、軽量で耐衝撃性が高いことから、各種の建築物、自動車等の窓材、構造材等として、広く用いられてきた。ただし、ガラスに比べ、耐摩耗性に劣ることから、耐摩耗性向上のための樹脂硬化層を積層した、樹脂硬化層付基板として用いられる場合が多い(例えば、特許文献1参照。)。
特許第5944069号公報
このような樹脂硬化層付基板では、耐摩耗性等のさらなる特性向上が求められている。
本発明は、耐摩耗性に優れた樹脂硬化層付基板を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る樹脂硬化層付基板は、基板と、前記基板の少なくとも一方の面に形成された樹脂硬化層とを備え、
前記樹脂硬化層が、下記(a)〜(c)の要件を満たし、かつ(d)の要件を満たす微粒子を含む樹脂硬化層付基板。
(a)前記樹脂硬化層の法線方向に0.5mNの荷重を負荷して測定した場合の前記樹脂硬化層のマルテンス硬度が150N/mm2以上800N/mm2以下である。
(b)フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、前記樹脂硬化層に対して前記基板に接している面側から赤外分光分析を行って測定した場合のSi−CH3結合に起因するスペクトルのピーク高さH1とSi−O−Si結合に起因するスペクトルのピーク高さH2との比H1/H2である値Xと、前記樹脂硬化層に対して前記基板に接していない面側から赤外分光分析を行って測定した場合のSi−CH3結合に起因するスペクトルのピーク高さH3とSi−O−Si結合に起因するスペクトルのピーク高さH4との比H3/H4である値Yとの関係が、下記式(2)を満たす。
X/Y≧1.2 ・・・(2)
(c)前記樹脂硬化層を構成する樹脂が、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、スルホ基、イソシアネート基、ビニル基、アクリル基から選ばれる少なくとも1つの反応性官能基を持つ。
(d)前記微粒子の表面にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、スルホ基、イソシアネート基、ビニル基、アクリル基から選ばれる少なくとも1つの反応性官能基を持つ。
本発明によれば、耐摩耗性に優れた樹脂硬化層付基板を提供できる。
本発明の実施形態に係る樹脂硬化層付基板の積層構造を示す断面図である。 フィルム積層体の積層構造を示す断面図である。
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
本実施形態の樹脂硬化層付基板100は、図1に示すように、基板1と、基板1の少なくとも一方の面に形成された樹脂硬化層2とを備え、樹脂硬化層2が、下記(a)〜(c)の要件を満たし、かつ(d)の要件を満たす微粒子を含む。
(a)樹脂硬化層2の法線方向に0.5mNの荷重を負荷して測定した場合の樹脂硬化層2のマルテンス硬度が150N/mm2以上800N/mm2以下である。
(b)フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、樹脂硬化層2に対して基板1に接している面側から赤外分光分析を行って測定した場合のSi−CH3結合に起因するスペクトルのピーク高さH1とSi−O−Si結合に起因するスペクトルのピーク高さH2との比H1/H2である値Xと、樹脂硬化層2に対して基板1に接していない面側から赤外分光分析を行って測定した場合のSi−CH3結合に起因するスペクトルのピーク高さH3とSi−O−Si結合に起因するスペクトルのピーク高さH4との比H3/H4である値Yとの関係が、下記式(3)を満たす。
X/Y≧1.2 ・・・(3)
(c)樹脂硬化層を構成する樹脂が、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、スルホ基、イソシアネート基、ビニル基、アクリル基から選ばれる少なくとも1つの反応性官能基を持つ。
(d)微粒子の表面にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、スルホ基、イソシアネート基、ビニル基、アクリル基から選ばれる少なくとも1つの反応性官能基を持つ。
なお、Si−CH3結合に起因するスペクトルのピーク高さH1、H3としては、例えば、1280cm-1±20cm-1の範囲のスペクトルのピーク高さが好ましく、1280cm-1±10cm-1の範囲のスペクトルのピーク高さがより好ましい。また、Si−O−Si結合に起因するスペクトルのピーク高さH2、H4としては、例えば、1020cm-1±20cm-1の範囲のスペクトルのピーク高さが好ましく、1020cm-1±10cm-1の範囲のスペクトルのピーク高さがより好ましい。
また、本実施形態の樹脂硬化層付基板100の製造方法は、基板1の少なくとも一方の面に樹脂硬化層2を形成する工程を有し、樹脂硬化層2が、上記(a)〜(c)の要件を満たし、かつ(d)の要件を満たす微粒子を含む。
このような構成により、本実施形態の樹脂硬化層付基板100によれば、例えば、ポリカーボネート樹脂のような傷つきやすい材料で基板1が形成されていたとしても、樹脂硬化層2によって十分な耐摩耗性を備えることができる。
また、本実施形態の樹脂硬化層付基板100の製造方法によれば、樹脂硬化層2を形成する際にCVD法等の乾式塗工を使用せずに済むため、生産性の低下を抑制でき、また乾式塗工装置導入による製造コストの上昇を抑制できる。
以下、本実施形態の樹脂硬化層付基板100及びその製造方法について、さらに詳細に説明する。
<基板>
基板1の材質は、特に制限されず、樹脂、ガラス、紙、木材、金属等様々な材質のものを採用できる。樹脂としては、例えば、有機樹脂を主成分とするものを採用できる。なお、本実施形態における主成分とは、対象物(例えば、基板1)を構成する材料の70質量%以上、好ましくは90質量%以上を指す。特に、樹脂の射出成形により基板1を成形する場合、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂(1液又は2液硬化性樹脂を含む)を採用できる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン系共重合体、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)等のスチレン系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂等を採用することができる。また、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂等を採用することもできる。
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、1液又は2液反応硬化型のポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等を採用できる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。特に、耐衝撃性や透明性の点から、ポリカーボネートが好ましい。
また、これらの樹脂には、必要に応じて各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、可塑剤、無機物粉末(シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等)、充填剤(木粉、ガラス繊維等)、滑剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤を採用できる。なお、樹脂は、用途に応じて適宜、着色剤を添加して着色した樹脂を使用してもよい。
基板1の厚さは、特に限定されるものではなく、樹脂硬化層付基板100の用途に応じて適宜決定すればよい。
基板1と樹脂硬化層2との界面には、基板1と樹脂硬化層2との密着性を向上させるための接着層を設けてもよい。接着層の材質としては、例えば、公知のヒートシール性接着剤又は粘着剤を採用できる。例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、塩酢ビ樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等を採用できる。また、接着層には、紫外線遮蔽機能を付与するために、耐候性改善剤を添加してもよい。接着層の厚さは、例えば、0.5μm〜10μmの範囲が好ましい。
<樹脂硬化層>
樹脂硬化層2は、基板1に耐摩耗性等の機械強度を付与するために設けられる層であり、湿気硬化性樹脂、熱硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂の少なくともいずれかを含む樹脂組成物の硬化物と微粒子とを含んでいる。湿気硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の樹脂組成物の種類については、後述するマルテンス硬度及びフーリエ変換赤外分光光度計で測定した値で規定する分子構造を充足し、かつ後述する反応性官能基を持つように適宜設定すればよく、これらの物性値を充足できるものであれば特に制限されない。
ここで、湿気硬化性樹脂とは、空気中の湿気によって硬化する樹脂である。湿気硬化性樹脂の中でも、上記式(3)の吸光度ピーク比(X/Y)を増大させるためには、シリコーン系の湿気硬化性樹脂を使用することが好ましく、好ましくは2〜4官能性、より好ましくは3〜4官能性のケイ素アルコキシドを湿気により硬化させるものが好ましい。
また、これらをあらかじめ溶液中で適度に加水分解ならびに脱水縮合して適度にオリゴマー化あるいはポリマー化させたものも、好ましく用いられる。ケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等を採用できる。これらの樹脂は、単独の組成で用いてもよく、二種以上の混合組成で用いてもよく、後述する熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂と組み合わせて用いてもよい。
また、熱硬化性樹脂とは、熱によって硬化する樹脂である。熱硬化性樹脂の中でも、上記式(3)の吸光度ピーク比(X/Y)を増大させるためには、シリコーン系の熱硬化性樹脂を使用することが好ましく、好ましくは2〜4官能性、より好ましくは3〜4官能性のケイ素アルコキシドを加熱により硬化させるものが好ましい。
また、これらをあらかじめ溶液中で適度に加水分解ならびに脱水縮合して適度にオリゴマー化あるいはポリマー化させたものも好ましく用いられる。熱硬化性樹脂に用いられるケイ素アルコキシドとしては、例えば、湿気硬化性樹脂に用いられるケイ素アルコキシドと同様のものを採用できる。これらの樹脂は、単独の組成で用いてもよく、二種以上の混合組成で用いてもよく、上述した湿気硬化性樹脂と組み合わせて用いてもよい。
また、紫外線硬化性樹脂とは、紫外線(UV)によって硬化する樹脂である。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、分子中にアクリロイル基を有する樹脂であって、アクリル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のモノマー、オリゴマー、ポリマー等の混合物が使用される。
紫外線硬化性樹脂の中でも、上記式(3)の吸光度ピーク比(X/Y)を増大させるためには、シリコーン(メタ)アクリレート、つまり、シリコーン系の紫外線硬化性樹脂を使用することが好ましい。これらの樹脂は、単独の組成で用いてもよく、数種の混合組成で用いてもよく、上述した湿気硬化性樹脂または熱硬化性樹脂と組み合わせて用いてもよい。
なお、樹脂硬化層2には、紫外線照射に伴う樹脂の硬化を円滑に進行させるために、公知の光重合開始剤を適量添加することが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等を採用できる。
また、樹脂硬化層2には、光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等を混合することもできる。
(マルテンス硬度)
本実施形態の樹脂硬化層付基板100では、樹脂硬化層2のマルテンス硬度は、150N/mm2以上800N/mm2以下が好ましく、200N/mm2以上600N/mm2以下がより好ましい。マルテンス硬度が上記の下限値(150N)未満では樹脂硬化層2の耐摩耗性が不十分となる可能性がある。また、上記の上限値(800N)よりも高いと、樹脂硬化層2にクラックが発生しやすくなる可能性がある。
このマルテンス硬度は、試料表面に最大荷重0.5mNの荷重でダイヤモンド製の圧子を押し込んだ際の押し込み深さから、最大荷重(A)と圧子の表面積(B)を用いて下記式(4)により算出する。すなわち、樹脂硬化層2の法線方向に0.5mNの荷重を負荷して測定した場合の樹脂硬化層2のマルテンス硬度である。
マルテンス硬度=A/B ・・・(4)
なお、本実施形態のマルテンス硬度は、ISO14577に規定の方法に従って測定される値である。本実施形態の樹脂硬化層付基板100に150N/mm2以上800N/mm2以下のマルテンス硬度を備えさせるには、樹脂硬化層2の組成、厚さ等を適宜調整すればよい。
(分子構造)
本実施形態の樹脂硬化層付基板100は、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、樹脂硬化層2に対して基板1に接している面側から赤外分光分析を行って測定した場合のSi−CH3結合に起因するスペクトルのピーク高さH1とSi−O−Si結合に起因するスペクトルのピーク高さH2との比H1/H2である値Xと、樹脂硬化層2に対して基板1に接していない面側から赤外分光分析を行って測定した場合のSi−CH3結合に起因するスペクトルのピーク高さH3とSi−O−Si結合に起因するスペクトルのピーク高さH4との比H3/H4である値Yとの関係が、上記式(3)、つまりX/Y≧1.2を満たす。赤外分光分析は、ゲルマニウムクリスタル製のプリズムを用いた顕微全反射減衰法(顕微ATR法)にて行ってもよい。なお、Xを求める際には、基板1と接している面側から測定する以外にも、基板1と接していない面側から表面を削り測定する方法を採用できる。
本実施形態の樹脂硬化層付基板100では、X/Yは1.2以上である必要があるが、2以上であることがより好ましい。X/Yが上記の下限値(1.2)以上であると、樹脂硬化層2の基板1と接していない面に無機硬質皮膜が形成され、優れた耐摩耗性が得られる。X/Yが上記の要件(X/Y≧1.2)を満たすような分子構造を樹脂硬化層2が備えることにより、本実施形態の樹脂硬化層付基板100に対して優れた耐摩耗性を備えさせることができる。本実施形態の樹脂硬化層付基板100に対して、上記分子構造を備えさせるには、樹脂硬化層2の組成や厚さ等を適宜調整すればよく、その具体的条件について以下に詳述する。
(反応性官能基)
樹脂硬化層2を構成する樹脂は、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、スルホ基、イソシアネート基、ビニル基、アクリル基から選ばれる少なくとも1つの反応性官能基を持つ。これらの反応性官能基を含むことにより、他の物質との化学反応が可能となるため、基板1表面、微粒子表面、その他の添加剤と化学結合を形成し、それぞれとの強固な密着性を得ることができる。特に、反応性の高さの点から、反応性官能基としてエポキシ基を用いることが好ましい。
基板1への樹脂硬化層2の形成方法としては、例えば、樹脂硬化層2が積層されたフィルム積層体10から基板1に樹脂硬化層2を転写する方法を採用できる。樹脂硬化層2をフィルム積層体10から転写によって基板1に積層する場合、樹脂硬化層2は、転写前はタックフリー状態であり、基板1に転写後に紫外線を照射することで架橋できる樹脂からなるものが好ましい。フィルム積層体10は、図2に示す通り、支持フィルム3の少なくとも一方の面に、離型層4と樹脂硬化層2とをこの順に積層したものである。転写後に架橋する理由としては、フィルム積層体10は射出成形法や加熱転写法で使用される場合、予め架橋すると転写の延伸時にクラックが生じやすく、外観不良となるためである。
(微粒子)
樹脂硬化層2は、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、スルホ基、イソシアネート基、ビニル基、アクリル基から選ばれる少なくとも1つの反応性官能基を表面に持つ微粒子を含む。これらの微粒子を含むことにより、樹脂硬化層2の硬度が上がるため、耐傷性を向上できる。また微粒子の周囲の樹脂、基板1表面、その他の添加剤と化学結合を形成し、それぞれとの強固な密着性を得ることができる。特に、反応性の高さの点から、微粒子表面の官能基としてアミノ基を用いることが好ましい。
微粒子の材質としては、硬度が高い無機微粒子が好ましい。無機微粒子としては、例えば、酸化珪素(SiO2)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、五酸化アンチモンといった酸化物、アンチモンドープ酸化スズ、リンドープ酸化スズ等の複合酸化物の微粒子を採用することができる。また、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、カオリン、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の微粒子を採用することもできる。これらの無機微粒子は、単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。特に、酸化珪素を用いることが好ましい。酸化珪素を含有することで、上記式(3)の吸光度ピーク比(X/Y)を増大させることができる。微粒子としては、例えば、酸化珪素を主成分とするものを用いてもよい。ここでいう主成分は、重量としての主成分である。
微粒子の大きさは、メジアン径で5nm以上5μm以下が好ましく、10nm以上300nm以下がより好ましい。微粒子の大きさが下限値(5nm)未満では、微粒子の製造が困難となる。また、上限値(5nm)よりも大きいと、樹脂硬化層2のヘイズが上がり、外観上好ましくない。
なお、本実施形態の微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定される微粒子の平均粒子径であり、粒径分布を累積分布で表したときの50%粒径(d50 メジアン径)である。例えば、市販の米国Microtrac社製のNanotrac UPA−EX150と呼ばれる装置により測定できる。
微粒子の添加量は、樹脂100質量部に対して、10質量部以上300質量部以下が好ましく、20質量部以上100質量部以下がより好ましい。微粒子の添加量が下限値(10質量部)未満では、樹脂硬化層2の耐傷性向上効果が得られない。また、上限値(300質量部)よりも多いと、樹脂硬化層2の可撓性が低下し、取扱いによってクラックが発生しやすくなる。
また、樹脂硬化層2には、諸物性を向上させるため、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、滑剤等を樹脂硬化層2に添加してもよい。特に、耐候性能を付与するためには、紫外線吸収剤や光安定剤を添加することが好ましく、紫外線や風雨に晒されることによる樹脂の変色や劣化等を効果的に抑制することが可能になる。
樹脂硬化層2の厚さは、樹脂硬化層2の組成に応じて上述のマルテンス硬度、化学組成を充足できる範囲に適宜設定すればよいが、1μm以上20μm以下が好ましく、3μm以上15μm以下がより好ましい。このような厚さの範囲を満たすことにより、上述のマルテンス硬度、化学組成を充足させつつ、より一層効果的に優れた耐摩耗性を備えさせることが可能になる。
(フィルム積層体)
フィルム積層体10の支持フィルム3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネートフィルム、ナイロンフィルム、セロファンフィルム、アクリルフィルム等の基材を採用できる。支持フィルム3の厚さは、25μm〜150μmが好ましく、38μm〜50μmがより好ましい。
フィルム積層体10の離型層4は、樹脂硬化層2からの剥離性が最も重要であるが、耐熱性、耐溶剤性及び延伸性も必要とされるため、硬化系であることが好ましい。硬化系としては、例えば、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、酢酸セルロース等の硬化物を採用できる。硬化架橋系としては、エポキシ樹脂/アミン類、アルキド樹脂/酸触媒、アクリルポリオール樹脂/イソシアネート化合物、アクリルオリゴマー/光開始剤を採用できる。離型層4の厚さは、特に制限はないが0.1μm〜3μmが好ましい。
本実施形態の樹脂硬化層付基板100の製造方法については、特に制限されないが、例えば、基板1以外の各層を予め積層させたフィルム積層体10を作製しておき、作製しておいたフィルム積層体10を用いて、基板1に各層を積層させる方法を採用できる。
具体的には、少なくとも離型層4及び樹脂硬化層2をこの順に支持フィルム3上に積層させたフィルム積層体10を、樹脂硬化層2の一方の面が基板1の一方の面と接するように、基板1に積層させた後に、支持フィルム3及び離型層4を剥離し、紫外線を照射して樹脂硬化層2を硬化させて、本実施形態の樹脂硬化層付基板100を製造できる。
また、本実施形態の樹脂硬化層付基板100の製造方法においては、上記の通り形成された樹脂硬化層2に対して、真空紫外光(VUV)の照射処理を施してもよい。VUVは波長200nm以下の紫外線であり、これを照射することにより樹脂硬化層2の表面構造を変化させることができる。具体的には、樹脂硬化層2の表面に存在する珪素原子と炭素原子の結合あるいは炭素原子と炭素原子の結合を特異的に切断することが可能である。
このような処理を行うことにより、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、樹脂硬化層2に対して基板1に接している面側から赤外分光分析を行って測定した場合のSi−CH3結合に起因するスペクトルのピーク高さH1とSi−O−Si結合に起因するスペクトルのピーク高さH2との比H1/H2である値Xと、樹脂硬化層2に対して基板1に接していない面側から赤外分光分析を行って測定した場合のSi−CH3結合に起因するスペクトルのピーク高さH3とSi−O−Si結合に起因するスペクトルのピーク高さH4との比H3/H4である値Yとの比X/Yを、増大させることができる。VUVの光源としては、例えば、重水素ランプ、ヘリウムランプ、カーボンアークランプ、低圧水銀ランプ、エキシマランプ等を採用できる。エキシマランプのエキシマ源としては、例えば、NaF、Ar2、Kr2、F2、ArBr、Xe2、ArCl、KrCl、ArF等を採用できる。
以下に、本発明の実施形態に係る樹脂硬化層付基板100の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
実施例1では、以下のようにして、図2と同様の構成のフィルム積層体10を製造した。支持フィルム3である厚さ50μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂株式会社製のG440E50)上に、アクリルメラミン樹脂(日立化成ポリマー株式会社製のテスファイン)をグラビア法により塗布してアクリルメラミン樹脂層を形成して、離型層4とした。アクリルメラミン樹脂層の厚さは、Dry厚で0.2μmとした。ここで、「Dry厚で0.2μm」とは、アクリルメラミン樹脂層の厚さが乾燥後に0.2μmになるということを意味している。以下に記載される「Dry厚」の意味も同様である。
次に、エポキシ基含有の湿気硬化性シリコーンオリゴマー(Mw=400)100質量部と、チタン系触媒4質量部と、表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子(メジアン径15nm)30質量部と、メチルイソブチルケトン30質量部とを混合して湿気硬化性樹脂組成物を得た。そして、離型層4上に湿気硬化性樹脂組成物をグラビア法により塗布して、温度25℃、相対湿度50%の室内に1時間静置させることで湿気硬化性樹脂組成物層(樹脂硬化層2)をタックフリーにした。湿気硬化性樹脂組成物の厚さは、Dry厚で6μmとした。
続いて、塩酢ビ樹脂(日信化学工業株式会社製のソルバインA)をトルエン及びメチルエチルケトンに溶かしてインキを得た。そして、湿気硬化性樹脂組成物層上にインキをグラビア法により塗布してインキ層を形成して、接着層とした。インキ層の厚さは、Dry厚で1μmとした。これにより、フィルム積層体10を得た。
さらに、射出成形機の金型内にこのフィルム積層体10を装着した上で、金型内に溶融したポリカーボネート樹脂を充填し、射出成形を行った。ポリカーボネート樹脂により基板1が形成され、基板1上にフィルム積層体10の湿気硬化性樹脂組成物層が積層された射出成形品が得られた。得られた射出成形品から支持フィルム3及び離型層4を取り除き、再び温度25℃、相対湿度50%の室内に今度は1週間静置させることで完全に硬化させた。その後、樹脂硬化層2に対して3000mJ/cm2のXe2エキシマ光を照射することにより、樹脂硬化層付基板100を得た。
〔実施例2〕
実施例2では、エポキシ基含有の湿気硬化性シリコーンオリゴマーの代わりに、エポキシ基含有の熱硬化性シリコーンポリマーを用い、1時間静置させてタックフリーにする代わりに120℃のオーブン内で120分間熱処理することにより熱硬化させ、熱硬化性樹脂層2を設けた点以外は、実施例1と同様にしてフィルム積層体10を得た。その後は、すでに熱硬化が済んでいるため湿気硬化を行わなかった以外は実施例1と同様にして樹脂硬化層付基板100を得た。
なお、実施例3の硬化性樹脂組成物の組成は以下の通りである。
エポキシ基含有熱硬化性シリコーンポリマー(Mw=1000) 100質量部
チタン系触媒 4質量部
表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子(メジアン径15nm) 30質量部
メチルイソブチルケトン 30質量部
〔実施例3〕
実施例3では、エポキシ基含有の湿気硬化性シリコーンオリゴマーの代わりに、アクリル基含有の紫外線硬化性シリコーンオリゴマーを用い、1時間静置させてタックフリーにする代わりに100℃のオーブン内で3分間熱処理することによりタックフリーにした点以外は、実施例1と同様にしてフィルム積層体10を得た。その後は、温度25℃、相対湿度50%の室内に今度は1週間静置させる代わりに120W/cmの高圧水銀灯で露光量1000mJ/cm2の紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂層を完全に硬化させた以外は実施例1と同様にして樹脂硬化層付基板100を得た。
なお、実施例3の硬化性樹脂組成物の組成は以下の通りである。
アクリル基含有紫外線硬化性シリコーンオリゴマー(Mw=550) 100質量部
チタン系触媒 4質量部
表面にビニル基が付与されたシリカ微粒子(メジアン径30nm) 15質量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 4質量部
メチルイソブチルケトン 20質量部
〔実施例4〕
実施例4では、エポキシ基含有の湿気硬化性シリコーンオリゴマーの代わりにカルボキシル基含有の湿気硬化性シリコーンオリゴマーを、表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子の代わりに表面にイソシアネート基が付与されたシリカ微粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂硬化層付基板100を得た。
なお、実施例4の硬化性樹脂組成物の組成は以下の通りである。
カルボキシル基含有熱硬化性シリコーンオリゴマー(Mw=610) 100質量部
チタン系触媒 4質量部
表面にイソシアネート基が付与されたシリカ微粒子(メジアン径10nm)
30質量部
メチルイソブチルケトン 30質量部
〔実施例5〕
実施例5では、表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子のメジアン径を5nm、添加量を15質量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂硬化層付基板100を得た。
なお、実施例5の硬化性樹脂組成物の組成は以下の通りである。
エポキシ基含有湿気硬化性シリコーンオリゴマー(Mw=400) 100質量部
チタン系触媒 4質量部
表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子(メジアン径5nm) 15質量部
メチルイソブチルケトン 30質量部
〔実施例6〕
実施例6では、表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子の添加量を10質量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂硬化層付基板100を得た。
なお、実施例6の硬化性樹脂組成物の組成は以下の通りである。
エポキシ基含有湿気硬化性シリコーンオリゴマー(Mw=400) 100質量部
チタン系触媒 4質量部
表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子(メジアン径15nm) 10質量部
メチルイソブチルケトン 30質量部
〔実施例7〕
実施例7では、表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子の添加量を280質量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂硬化層付基板100を得た。
なお、実施例7の硬化性樹脂組成物の組成は以下の通りである。
エポキシ基含有湿気硬化性シリコーンオリゴマー(Mw=400) 100質量部
チタン系触媒 4質量部
表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子(メジアン径15nm) 280質量部
メチルイソブチルケトン 30質量部
〔実施例8〕
実施例8では、樹脂硬化層の膜厚をDry膜厚2μmとした以外は、実施例1と同様にして樹脂硬化層付基板100を得た。
なお、実施例8の硬化性樹脂組成物の組成は以下の通りである。
エポキシ基含有湿気硬化性シリコーンオリゴマー(Mw=400) 100質量部
チタン系触媒 4質量部
表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子(メジアン径15nm) 30質量部
メチルイソブチルケトン 30質量部
〔実施例9〕
実施例9では、樹脂硬化層の膜厚をDry膜厚18μmとした以外は、実施例1と同様にして樹脂硬化層付基板100を得た。
なお、実施例9の硬化性樹脂組成物の組成は以下の通りである。
エポキシ基含有湿気硬化性シリコーンオリゴマー(Mw=400) 100質量部
チタン系触媒 4質量部
表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子(メジアン径15nm) 30質量部
メチルイソブチルケトン 30質量部
〔比較例1〕
比較例1では、表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子の添加量を450質量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂硬化層付基板100を得た。
なお、比較例1の硬化性樹脂組成物の組成は以下の通りである。
エポキシ基含有湿気硬化性シリコーンオリゴマー(Mw=400) 100質量部
チタン系触媒 4質量部
表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子(メジアン径15nm) 450質量部
メチルイソブチルケトン 30質量部
〔比較例2〕
比較例2では、樹脂硬化層の膜厚をDry膜厚900nmとした以外は実施例1と同様にして樹脂硬化層付基板100を得た。
なお、比較例2の硬化性樹脂組成物の組成は以下の通りである。
エポキシ基含有湿気硬化性シリコーンオリゴマー(Mw=400) 100質量部
チタン系触媒 4質量部
表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子(メジアン径15nm) 30質量部
メチルイソブチルケトン 30質量部
〔比較例3〕
比較例3では、樹脂硬化層に対するXe2エキシマ光の照射を、500mJ/cm2とした以外は、実施例1と同様にして樹脂硬化層付基板100を得た。
なお、前記硬化性樹脂組成物の組成は以下の通りである。
エポキシ基含有湿気硬化性シリコーンオリゴマー(Mw=400) 100質量部
チタン系触媒 4質量部
表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子(メジアン径15nm) 30質量部
メチルイソブチルケトン 30質量部
〔比較例4〕
比較例4では、エポキシ基含有湿気硬化性シリコーンオリゴマーの代わりに、反応性官能基のないメチル/フェニル系の湿気硬化性シリコーンオリゴマーとした以外は、実施例1と同様にして樹脂硬化層付基板100を得た。
なお、比較例4の硬化性樹脂組成物の組成は以下の通りである。
メチル/フェニル系湿気硬化性シリコーンオリゴマー(Mw=480)100質量部
チタン系触媒 4質量部
表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子(メジアン径20nm) 30質量部
メチルイソブチルケトン 30質量部
〔比較例5〕
比較例5では、表面にアミノ基が付与されたシリカ微粒子の代わりに、表面をメチル基で被覆したシリカ微粒子とした以外は、実施例1と同様にして樹脂硬化層付基板100を得た。
なお、前記硬化性樹脂組成物の組成は以下の通りである。
エポキシ基含有湿気硬化性シリコーンオリゴマー(Mw=480) 100質量部
チタン系触媒 4質量部
表面にメチル基が付与されたシリカ微粒子(メジアン径15nm) 30質量部
メチルイソブチルケトン 30質量部
(評価)
実施例1〜6及び比較例1〜5の樹脂硬化層付基板を評価した。その評価項目と評価基準を下記に示す。
(マルテンス硬度)
樹脂硬化層付基板100の樹脂硬化層2の表面に0.5mNの荷重でダイヤモンド製の圧子を押し込んだ際の押し込み深さから、最大荷重(A)及び圧子の表面積(B)を用いて、ISO14577に規定の方法に従って、上記式(4)によりマルテンス硬度を算出した。なお、荷重は、樹脂硬化層2の法線方向に沿って負荷した。
(分子構造)
フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、樹脂硬化層2に対して基板1に接している面側から赤外分光分析を行って測定した場合のSi−CH3結合に起因するスペクトルのピーク高さH1とSi−O−Si結合に起因するスペクトルのピーク高さH2との比H1/H2である値Xと、樹脂硬化層2に対して基板1に接していない面側から赤外分光分析を行って測定した場合のSi−CH3結合に起因するスペクトルのピーク高さH3とSi−O−Si結合に起因するスペクトルのピーク高さH4との比H3/H4である値Yとの比であるピーク強度比X/Yを算出した。赤外分光分析は、ゲルマニウムクリスタル製のプリズムを用いた顕微ATR法にて行った。
(耐摩耗性)
摩耗輪としてCS−10Fを用いて、樹脂硬化層付基板100の樹脂硬化層2のテーバー摩耗試験を行った。テーバー摩耗試験の条件は、摩耗輪の回転回数1000回転、摩耗輪の回転速度60rpm、摩耗輪の負荷荷重500gfである。
テーバー摩耗試験前後において、樹脂硬化層付基板100の樹脂硬化層2の表面の4カ所についてヘイズを測定し、その平均値を求めた。ヘイズの測定は、日本電色工業株式会社製のヘーズメータNDH−2000を用い、JIS K7136に規定の方法に従って行った。そして、テーバー摩耗試験後のヘイズからテーバー摩耗試験前のヘイズを差し引くことにより、テーバー摩耗試験前後のヘイズ差(ΔHz)を求めた。
(クラック)
10倍の対物レンズを備えたレーザー顕微鏡にて樹脂硬化層2の表面を観察し、クラックの有無を確認した。クラックが発生していなければ〇、発生していていれば×とした。
各実施例及び各比較例の評価結果を表1に示す。
Figure 2019209671
実施例1〜9及び比較例1〜5の樹脂硬化層付基板100の樹脂硬化層2の硬度、化学組成及び耐摩耗性、クラックの有無を評価したところ、規定の反応性官能基を持った硬化性樹脂と微粒子を含み、マルテンス硬度が150N/mm2以上800N/mm2以下で、かつ、ピーク強度比X/Yが1.2以上である実施例1〜9については、耐摩耗性が良好でΔHzがすべて2.0%以下となり、クラックも見られなかった。
一方、マルテンス硬度が高すぎる(800N/mm2より大きい)比較例1は、ΔHzが1.2%であり、耐摩耗性は良好だが、クラックが発生した。逆に、マルテンス硬度が低すぎる(150N/mm2より小さい)比較例2は、耐摩耗性が向上せず、ΔHzが4.8%であった。また、ピーク強度比X/Yが1.2未満である比較例3は、耐摩耗性が向上せず、ΔHzが5.1%であった。さらに、規定の反応性官能基を持たない硬化性樹脂を用いた比較例4及び反応性官能基を持たない微粒子を用いた比較例5は、微粒子が脱落しやすく、ΔHzが高くなり、また、樹脂と微粒子との界面でクラックが発生した。
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂のような傷つきやすい材料で基板が形成されていても、十分な耐摩耗性を備える樹脂硬化層付基板を提供できる。なお、本発明の樹脂硬化層付基板は、ハードコートとなる樹脂硬化層を形成する際にCVD法等の乾式塗工を使用しないため、生産性の低下や設備導入による製造コストの上昇を抑制できる。
1…基板、2…樹脂硬化層、3…支持フィルム、4…離型層、10…フィルム積層体、100…樹脂硬化層付基板

Claims (5)

  1. 基板と、前記基板の少なくとも一方の面に形成された樹脂硬化層とを備え、
    前記樹脂硬化層が、下記(a)〜(c)の要件を満たし、かつ(d)の要件を満たす微粒子を含む樹脂硬化層付基板。
    (a)前記樹脂硬化層の法線方向に0.5mNの荷重を負荷して測定した場合の前記樹脂硬化層のマルテンス硬度が150N/mm2以上800N/mm2以下である。
    (b)フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、前記樹脂硬化層に対して前記基板に接している面側から赤外分光分析を行って測定した場合のSi−CH3結合に起因するスペクトルのピーク高さH1とSi−O−Si結合に起因するスペクトルのピーク高さH2との比H1/H2である値Xと、前記樹脂硬化層に対して前記基板に接していない面側から赤外分光分析を行って測定した場合のSi−CH3結合に起因するスペクトルのピーク高さH3とSi−O−Si結合に起因するスペクトルのピーク高さH4との比H3/H4である値Yとの関係が、下記式(1)を満たす。
    X/Y≧1.2 ・・・(1)
    (c)前記樹脂硬化層を構成する樹脂が、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、スルホ基、イソシアネート基、ビニル基、アクリル基から選ばれる少なくとも1つの反応性官能基を持つ。
    (d)前記微粒子の表面にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、スルホ基、イソシアネート基、ビニル基、アクリル基から選ばれる少なくとも1つの反応性官能基を持つ。
  2. 前記基板が、有機樹脂を主成分とする請求項1に記載の樹脂硬化層付基板。
  3. 前記樹脂硬化層が、湿気硬化性樹脂、熱硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂の少なくともいずれかを含有する請求項1又は2に記載の樹脂硬化層付基板。
  4. 前記樹脂硬化層が、シリコーン樹脂を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂硬化層付基板。
  5. 前記微粒子が、酸化珪素を主成分とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂硬化層付基板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020209181A1 (ja) * 2019-04-10 2020-10-15 株式会社小糸製作所 車両用の樹脂製部材

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