本開示に係る第1の態様のインバータ装置は、電源部と、前記電源部の電圧を安定化させるコンデンサと、前記コンデンサの充電電圧を検出する電力検出部と、前記コンデンサの電力を高周波コイルに供給するスイッチング素子を含んで構成される複数のインバータと、前記複数のインバータを駆動制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記複数のインバータを構成するそれぞれのスイッチング素子において、前記スイッチング素子のオン状態が重なるとき、オン状態が重なったスイッチング素子のオン時間を、オン状態の重なり状態に応じて制御するよう構成されている。
上記のように構成された第1の態様のインバータ装置は、複数のインバータを共通の電源で動作させる場合であっても、インバータの動作状態に応じてオン時間を変更することにより、負荷に供給する電力を安定させることができる。
本開示に係る第2の態様のインバータ装置は、前記の第1の態様における前記インバータのスイッチング素子において、オン状態が重なったときのオン時間は、前記スイッチング素子のオン状態が重ならないときのオン時間より長くなるよう設定してもよい。
インバータ装置においては、インバータのオン状態が重なった場合には、コンデンサに充電されている電力値が満充電時よりも減少した状態になっている。このため、オン状態が重なっていないときの導通比と同じ導通比でインバータを動作させた場合には供給できる電力が減ってしまう。したがって、第2の態様のインバータ装置においては、インバータのオン状態が重なった場合には、オン時間を延ばすことによって、継続して同じ電力を高周波コイルに供給し、負荷に供給する電力を安定させている。
本開示に係る第3の態様のインバータ装置は、前記の第2の態様において、前記インバータのスイッチング素子のオン時間が、前記コンデンサの電圧に応じて制御されるよう構成してもよい。
インバータ装置においては、インバータのオン状態が重なっている場合、後でオン状態となるスイッチング素子では、先にオン状態となるスイッチング素子のオン時間に応じてコンデンサにおける充電状態が満充電時よりも減った状態になっている。このため、第3の態様のインバータ装置においては、インバータが同時にオン状態となっているときのコンデンサの充電電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を決定して、継続して同じ電力を供給することを可能とし、負荷に供給する電力を安定させている。
本開示に係る第4の態様のインバータ装置は、前記の第2の態様の前記インバータのスイッチング素子において、オン状態が重なったときのオン時間が、前記スイッチング素子のオン状態が重なっている時間に応じて制御されるよう構成されてもよい。
インバータ装置は、インバータのオン状態が重なっている場合、後でオン状態となったインバータにおいては、先にオン状態となっているインバータのオン時間に応じてコンデンサにおける充電状態が満充電時よりも減った状態になっている。このため、第4の態様のインバータ装置においては、コンデンサにおける充電状態に合わせて、それぞれのインバータのオン時間を延ばしており、スイッチング素子のオン状態が重なっている時間に応じてオン時間を制御することによって、継続して同じ電力を高周波コイルに供給することを可能として、負荷に供給する電力を安定させている。
本開示に係る第5の態様のインバータ装置は、前記の第1の態様の前記制御部が、前記複数のインバータを駆動するそれぞれの駆動周波数における各周期で前記高周波コイルに供給されるエネルギを同一となるように、各周期の導通比を制御するよう構成してもよい。
このように構成された第5の態様のインバータ装置は、インバータを駆動する駆動周波数における各周期で略同一のエネルギを高周波コイルに供給することができ、負荷に供給する電力を安定させることができる。
本開示に係る第6の態様のインバータ装置は、前記の第1の態様の前記制御部が、前記複数のインバータを駆動するそれぞれの駆動周波数における各周期で前記高周波コイルに供給されるエネルギを同一となるように、前記電力検出部が検出した充電電圧に基づいて制御するよう構成してもよい。
このように構成された第6の態様のインバータ装置は、インバータを駆動する駆動周波数における各周期で略同一のエネルギを高周波コイルに供給することができ、負荷に供給する電力を安定させることができる。
本開示に係る第7の態様のインバータ装置は、前記の第1の態様の前記制御部が、前記複数のインバータを駆動するそれぞれの駆動周波数における各周期で前記高周波コイルに供給されるエネルギを同一となるように、各周期の導通比を前記複数のインバータのスイッチング素子のオン状態の重なる期間に応じて制御するよう構成してもよい。
このように構成された第7の態様のインバータ装置は、インバータを駆動する駆動周波数における各周期で略同一のエネルギを高周波コイルに供給することができ、負荷に供給する電力を安定させることができる。
本開示に係る第8の態様のインバータ装置の制御方法は、複数のインバータを構成するそれぞれのスイッチング素子において、前記スイッチング素子のオン状態が重なり、電源部の電圧を安定化させるコンデンサの充電電圧が複数の負荷に供給されるとき、前記複数のインバータを駆動するそれぞれの駆動周波数における各周期で負荷に供給されるエネルギが、前記スイッチング素子が単独でオン状態のときに負荷に供給するエネルギと同一となるように、各周期の導通比を制御する、ことを含む。
インバータのオン状態が重なっている場合、後でオン状態となるスイッチング素子においては、先にオン状態となるスイッチング素子のオン時間に応じてコンデンサにおける充電状態が満充電時よりも減った状態になっている。このため、第8の態様のインバータ装置の制御方法においては、複数のインバータを駆動の駆動周波数における各周期で負荷に供給されるエネルギを略同一とするために、インバータが同時にオン状態となっているときのコンデンサの電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を決定して、継続して同じ電力を負荷に供給しており、負荷に供給する電力を安定化させている。
本開示に係る第9の態様のインバータ装置の制御方法は、前記の第8の態様における前記スイッチング素子のオン状態が重なり、電源部の電圧を安定化させるコンデンサの充電電圧が複数の負荷に供給されるとき、前記複数のインバータを駆動するそれぞれの駆動周波数における各周期で負荷に供給されるエネルギが、前記スイッチング素子が単独でオン状態のときに負荷に供給するエネルギと同一となるように、前記コンデンサの充電電圧に基づいて制御する、ことを含むものでもよい。
上記の第9の態様のインバータ装置の制御方法においては、複数のインバータを駆動の駆動周波数における各周期で負荷に供給されるエネルギを略同一とするために、コンデンサの充電電圧に基づいて制御して、継続して略同じ電力を負荷に対して供給することが可能となり、負荷に供給する電力を安定化させている。
本開示に係る第10の態様のインバータ装置の制御方法は、前記の第8の態様における複数のインバータを構成するそれぞれのスイッチング素子において、前記スイッチング素子のオン状態が重なり、電源部の電圧を安定化させるコンデンサの充電電圧が複数の負荷に供給されるとき、前記複数のインバータを駆動するそれぞれの駆動周波数における各周期で負荷に供給されるエネルギが、前記スイッチング素子が単独でオン状態のときに負荷に供給するエネルギと同一となるように、各周期の導通比を前記複数のインバータのスイッチング素子のオン状態の重なる期間に応じて制御する、ことを含むものでもよい。
上記の第10の態様のインバータ装置の制御方法においては、複数のインバータを駆動する駆動周波数における各周期で負荷に供給されるエネルギを略同一とするために、インバータを駆動するそれぞれの駆動周波数における各周期の導通比をスイッチング素子のオン状態の重なる期間に応じて制御し、継続して略同じ電力を負荷に対して供給することが可能となり、負荷に供給する電力を安定化させている。
以下、本開示に係るインバータ装置およびその制御方法の一実施の形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。実施の形態の説明においては、例えば、既に良く知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するものであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
以下の実施の形態のインバータ装置およびその制御方法においては、インバータ装置を誘導加熱調理器に用いた構成について説明するが、この構成は例示であり、本開示は、以下の実施の形態において説明する構成に限定されるものではなく、本開示の技術的特徴を有するインバータ装置を含むものである。また、本開示には、以下に述べる各実施の形態において説明する任意の構成を適宜組み合わせることを含むものであり、組み合わされた構成においてはそれぞれの効果を奏するものである。
(実施の形態1)
図1は、本開示に係る実施の形態1のインバータ装置の構成を示す制御ブロック図である。図1に示すように、実施の形態1のインバータ装置は、電力を供給する電源部1と、電源部1の電圧を平滑して安定化させるコンデンサ2と、コンデンサ2の電力を複数の高周波コイル3a、3bに供給するスイッチング素子等で構成される複数のインバータ4a、4bと、コンデンサ2の電圧から各高周波コイル3a、3bで消費された電力を検知する電力検出部6と、電力検出部6で検知された電力に基づいてそれぞれのインバータ4a、4bの電力を制御する制御部7と、を有して構成されている。
なお、実施の形態1のインバータ装置においては、1つの電源部1から2つの負荷5a、5bに対して、それぞれのインバータ4a、4bおよび高周波コイル3a、3bにより電力供給可能な構成で説明するが、本開示のインバータ装置としては2つ以上の複数の負荷のそれぞれに対してインバータおよび高周波コイルを複数設けて電力供給可能な構成とすることを含むものである。
以下、上記のように構成された実施の形態1のインバータ装置における駆動動作について説明する。
[インバータ装置の駆動動作]
電源部1としては、商用の単相100Vまたは200Vの交流電源をダイオードブリッジで直流化した直流電源を用いている。なお、実施の形態1においては、交流電源をダイオードブリッジで直流化した直流電源を用いた例で説明するが、本開示はこのような構成に限定されるものではない。電源部1によって直流化された電力は、コンデンサ2によって平滑化され安定化されている。
コンデンサ2に蓄えられた充電電力は、インバータ4a、4bに送られる。それぞれのインバータ4a、4bは、スイッチング素子、ダイオード、コンデンサ等で構成されている。それぞれのインバータ4a、4bにおいては、スイッチング素子によって電流経路を切り替えることによって直流の電源を任意の周波数の交流に変換して、交流電源を形成する。
それぞれのインバータ4a、4bにおいて変換された交流電源は、高周波コイル3a、3bにそれぞれ供給され、高周波コイル3a、3bには高周波電流が流れる。高周波電流が流れた高周波コイル3a、3bにおいては高周波磁界が発生し、高周波コイル3a、3bの直上のトッププレートに載置された調理用鍋等の負荷5a、5bには電磁誘導による渦電流が流れる。その結果、負荷5a、5bである調理用鍋等においては、渦電流が流れることにより生じるジュール熱のために発熱し、調理動作等が行われている。
上記のように、複数の負荷5a、5bに対して電力を供給して調理動作等を実行させるためには、それぞれの負荷5a、5bに電気的に接続(磁界結合を含む)された高周波コイル3a、3bおよびインバータ4a、4bが必要となる。複数のインバータ4a、4bに電力を供給する電源部1とコンデンサ2の構成としては、それぞれのインバータ4a、4bに対応する複数の電源部と複数のコンデンサをそれぞれ設けて対応することは可能である。しかしながら、このような構成では部品点数が多く、大型化するため、装置の小型化および低廉化という重要な課題に逆行するものである。そのため、実施の形態1のインバータ装置においては、図1に示すように1組の電源部1とコンデンサ2で構成される1つの直流電源に対して、複数のインバータ4a、4bを並列接続して設け、複数の負荷5a、5bに対して電力を供給するよう構成されている。
実施の形態1のインバータ装置において、それぞれの負荷5a、5bに対する電力制御は、電力検出部6によってインバータ4a、4bを介してコンデンサ2から高周波コイル3a、3bに供給された電力を検知し、その検知された電力に基づいて制御部7によって行われる。
[電力検出部による電力検知]
以下、実施の形態1のインバータ装置において、電力検出部6がコンデンサ2の充電電圧を検出して、その検出電圧からインバータ4a、4bに供給された電力を検知する方法について説明する。
先ず始めに、それぞれのインバータ4a、4bが同じ周期で駆動し、オン状態が重ならないように動作している場合について説明する。インバータ4a、4bの周期T[sec]、コンデンサ2の容量C[F]、コンデンサ2の充電電圧V0[V]、インバータ4aのオン状態によるコンデンサ2の放電後電圧V1[V]、負荷5aで消費された電力Pa[W]とすると、インバータ4aを構成するスイッチング素子がオン状態となり、コンデンサ2の電力が高周波コイル3aに流れて、コンデンサ2の電圧がV0からV1まで降下したときのエネルギ差Eは、以下の(式1)で示される。
なお、実施の形態1の説明において、インバータ4a、4bを構成するスイッチング素子がオン状態とは、コンデンサ2の電力が高周波コイル3に流れる電流経路が確保された電力供給状態を示し、この電力供給状態をインバータ4a、4bのオン状態として説明する。
(式1)に示したエネルギ差Eは、所定の周期Tで発生するため、負荷5aで消費された電力Pは、下記の(式2)で算出される。
上記の(式2)を用いることにより、負荷5aで消費された電力Pを検知することが可能であり、高価であり、かつ形状が大きい部品である電流センサを用いることなく、負荷5aで消費された電力検知が可能な構成となる。
図2は、それぞれのインバータ4a、4bが一定の周期Tで駆動しており、かつオン状態が重ならないように動作しているときのコンデンサ2の電圧Vcの変位を示す波形図である。図2に示すように、1組の電源部1とコンデンサ2に対して複数のインバータ4a、4bが一定周期Tで駆動し、重ならないように動作している場合には、例えば、一方のインバータ4aがオン状態となると、コンデンサ2の電圧VcはV0からV1まで降下する。次に、インバータ4aがオフ状態に移行するとコンデンサ2が充電されて電圧VcはV1からV0に回復する。
他方のインバータ4bがオン状態に移行するときには、コンデンサ2の電圧VcはV0まで回復している。他方のインバータ4bがオン状態になると、コンデンサ2の電圧VcはV0からV2まで降下する。次に、インバータ4bがオフ状態に移行するとコンデンサ2の電圧VcはV2からV0に回復する。図2に示す波形図においては、一方のインバータ4aのオン状態の時間(オン時間)が、他方のインバータ4bのオン時間に比べて短く設定されており、コンデンサ2おける電圧降下した電圧値は異なっている(V1>V2)。
上記のように、それぞれのインバータ4a、4bが一定の周期Tで駆動し、かつオン状態が重ならないように動作している場合には、それぞれのインバータ4a、4bのオン時間とコンデンサ2の電圧Vcの降下状態が対応し、前述の(式2)により負荷5a又は5bで消費された電力Pを検知することが可能となる。
なお、上記の説明は、インバータ4a、4bが同じ周期Tで駆動し、オン状態が重ならないように動作している場合についての説明であるが、インバータ4a、4bが異なる周期で駆動していても、オン状態が重ならない動作であれば適用される。
一方、それぞれのインバータ4a、4bが異なる周期T1、T2で駆動し、且つインバータ4a、4bのオン状態が重なる場合には、インバータ4a、4bのオン時間におけるコンデンサ2の電圧Vcの降下状態が変化し、即ちインバータ4a、4bのオン時間と負荷5a又は5bで消費された電力Pとの関係が変動する。
図3は、それぞれのインバータ4a、4bが異なる周期T1、T2で駆動し、インバータ4a、4bのオン状態が重なる場合が生じるときのコンデンサ2の電圧Vcの変位を示す波形図である。図3に示す波形図において、インバータ4a、4bのそれぞれの周期T1、T2における導通比(デューティ比)は同じであり、オン状態が重なる場合であっても同じ導通比で推移するよう設定されている。
図3の波形図において、時間t1は、一方のインバータ4aを構成するスイッチング素子がオン状態、即ちインバータ4aがオン状態である期間(オン時間)を示している。この時間t1においては、他方のインバータ4bを構成するスイッチング素子がオフ状態、即ちインバータ4bがオフ状態である期間(オフ時間)を示している。また、この時間t1においては、コンデンサ2の電圧VcはV0からV1まで降下している。このとき、インバータ4aで時間t1の期間に供給されるエネルギE1は、下記の(式3)により算出することができる。
従って、時間t1の期間においては、図2の波形図で示した場合と同様に、当該インバータ装置は、一方のインバータ4aにより所定の電力を供給している状態である。そして、時間t1の期間が終了すると、インバータ4aおよびインバータ4bは共にオフ状態となり、電源部1から供給される電力によりコンデンサ2の電圧はV0まで回復する。
次に、時間t2の期間は、一方のインバータ4aがオフ状態であり、他方のインバータ4bがオン状態である期間を示している。この時間t2においては、コンデンサ2の電圧VcはV0からV2まで降下する。このときインバータ4bで時間t2の期間に供給されるエネルギE2は、下記の(式4)により算出することができる。
従って、時間t2の期間においては、図2の波形図で示した場合と同様に、当該インバータ装置は、他方のインバータ4bにより所定の電力を供給している状態である。そして、時間t2の期間が終了すると、インバータ4aおよびインバータ4bは共にオフ状態となり、電源部1から供給される電力によりコンデンサ2の電圧はV0まで回復する。
上記のように、一方のインバータ4aと他方のインバータ4bが交互にオン状態となる場合には、それぞれのインバータ4a、4bにより供給される電力はお互いのインバータ4a、4bにより供給された電力の影響を受けることなく、コンデンサ2における充電電力に対して所定の電力を消費することができる。
しかしながら、一方のインバータ4aと他方のインバータ4bが同時にオン状態となり、コンデンサ2からの電力が供給されるオン状態が重なる場合には、コンデンサ2における電圧変位が大きく変動する。
図3の波形図において、時間t3の期間は一方のインバータ4aがオン状態であり、他方のインバータ4bがオフ状態を示している。そして、時間t3に続く時間t4の期間になると、インバータ4aとインバータ4bの両方がオン状態となるため、コンデンサ2の電圧は、2つのインバータ4a、4bが同時に動作している状況であり、急激に電圧が降下する。更に、時間t4に続くt5の時間は、インバータ4aがオフ状態であり、インバータ4bがオン状態であり、コンデンサ2の電圧がV5まで降下する。
図3の波形図に示すように、一方のインバータ4aのオン状態と、他方のインバータ4bのオン状態が重なっている場合、一方のインバータ4aによる供給電力は、時間t3の期間が開始したタイミングから、時間t4が終了したタイミングまでとなる。しかしながら、時間t4の期間は他方のインバータ4bも動作しているため、コンデンサ2においては、一方のインバータ4aと他方のインバータ4bの両方に電力を供給することになり、コンデンサ2は大きく電圧降下する。従って、時間t4の期間においては、一方のインバータ4aに対しては、所定の電力よりも少ない電力しか供給されていないことになる。
また、他方のインバータ4bも同様に、時間t4の期間が開始したタイミングでオン状態となるが、そのときのコンデンサ2の電圧は、一方のインバータ4aに対する電力供給により電圧V3まで低下している。このため、他方のインバータ4bは、時間t4の期間と時間t5の期間とを合わせた期間は、時間t2と同じ期間だけオン状態となっているにもかかわらず、時間t2の期間よりもインバータ4bに供給される電力は少なくなる。
そこで、本開示のインバータ装置においては、複数のインバータにおいて、インバータのオン状態が重なっている場合と、重なっていない場合とで、インバータのオン時間を変更する制御を行うように構成されている。このように構成することにより、オン状態における供給電力の減少分を補填し、オン状態において同じ電力が負荷に対して供給することが可能となり、電力を安定させることができる。このように構成された本開示のインバータ装置においては、負荷に供給される電力の変動を確実に抑制することが可能であり、安定した動作を行うことができる装置を実現することができる。
図4は、本開示のインバータ装置の構成を実現した一例である実施の形態1のインバータ装置による動作を示す波形図である。図4の波形図においては、それぞれのインバータ4a、4bが異なる周期T1、T2で駆動し、インバータ4a、4bのオン状態が重ならない場合と、重なる場合とにおけるコンデンサ2の電圧Vcの変位を示している。
図4の波形図において、一方のインバータ4aと他方のインバータ4bが同時にオン状態の時間t4’の期間は、前述の図3に示した波形図における時間t4の期間と比べて長くなっている(t4’>t4)。従って、インバータ4aのオン時間は、図3に示した波形図においては、時間t1=時間(t3+t4)であったが、図4に示す波形図においては、時間t1<時間(t3+t4’)となる。
一方に、他方のインバータ4bのオン時間は、図3に示した波形図においては、時間t2=時間(t4+t5)であったが、図4に示した波形図においては、時間t2<時間(t4’+t5’)となる。それぞれのインバータ4a、4bにおける周期は一定で推移するため、オン時間が増えることは導通比(デューティ比)が上昇したことを意味する。
また、図3に示した波形図においては、時間t4の期間が終了したときのコンデンサ2の電圧VcはV4であるが、図4に示した波形図において時間t4’の期間が終了したときのコンデンサ2の電圧VcはV4’であり、その電圧Vcの関係は、V4>V4’となる。更に、図3に示した波形図において時間t5の期間が終了したときのコンデンサ2の電圧VcはV5であるが、図4に示した波形図において時間t5’の期間が終了したときのコンデンサ2の電圧VcはV5’であり、その電圧Vcの関係は、V5>V5’となる。
上記のように実施の形態1のインバータ装置においては、インバータのオン状態が重なった場合には、コンデンサ2の電圧Vcに応じてインバータのオン時間を変更するよう制御して、オン状態における供給電力の減少分を補填し、オン状態において同じ電力を負荷に対して供給することが可能な構成となっている。その結果、実施の形態1のインバータ装置は、負荷に供給する電力の変動を抑制することが可能となり、安定した動作を行うことができる。
また、実施の形態1のインバータ装置においては、負荷として調理用鍋を誘導加熱する場合について説明したが、インバータ装置としては同じ構成により、負荷として受電コイルを設けて電力を受電して、その電力で動作する非接触給電装置の電力供給源として動作させることが可能である。更に、実施の形態1のインバータ装置の構成においては、一方のインバータにより誘導加熱を行い、他方のインバータにより非接触給電を行う場合においても同様の制御を行って対応することが可能である。
(実施の形態2)
以下、本開示に係る実施の形態2のインバータ装置について説明する。実施の形態2のインバータ装置は、実施の形態1のインバータ装置と実質的に同様の構成(図1参照)を有するものであるが、実施の形態1のインバータ装置との相違点は、インバータのオン状態が重なった場合におけるインバータのオン時間の割合(導通比)を変更する制御について更に具体的な構成を有する点である。なお、実施の形態2の説明において、前述の実施の形態1と同様の作用、構成、および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
実施の形態2のインバータ装置における構成においても、前述の実施の形態1の構成と同様に、1つの電源部1から2つの負荷5a、5bに対して、それぞれのインバータ4a、4bおよび高周波コイル3a、3bにより電力供給可能な構成で説明するが、本開示のインバータ装置としては2つ以上の複数の負荷のそれぞれに対してインバータおよび高周波コイルを設けて電力供給可能な構成とすることを含むものである。
実施の形態1で説明したように、共通の電源で複数のインバータが同時に動作すると、コンデンサ2に蓄えられたエネルギを取り合うこととなる。それぞれのインバータを構成するスイッチング素子は、導通比(デューティ比)により制御されており、即ち、スイッチング素子のオン時間と、オフ時間により制御されている。このため、同じオン時間であっても元の電源電圧であるコンデンサ2の電圧Vcが異なると、高周波コイル3a、3bに供給される電力も変わってしまう。従って、インバータを構成するスイッチング素子のオン状態が重なっているか否かで、スイッチング素子のオン時間を変更することによって、継続して同じ電力を高周波コイル3a、3bに供給することが可能となり、インバータ装置における出力電力の変動を抑えることができる構成となる。
なお、実施の形態2のインバータ装置における説明においても、インバータ4a、4bを構成するスイッチング素子がオン状態とは、コンデンサ2の電力が高周波コイル3a、3bに流れる電流経路が確保された電力供給状態を示し、この電力供給状態をインバータ4a、4bのオン状態とする。
実施の形態1において図3を用いて説明したように、インバータ4a、4bのオン状態が重なったとき(時間t4)には、両方のインバータ4a、4bによってコンデンサ2に蓄えられたエネルギが供給される。このため、インバータ4a、4bのオン状態が重なったときのコンデンサ2の電圧Vcは、1つのインバータ4a又は4bがオン状態のときのコンデンサの電圧(V1又はV2)よりも低い電圧(例えば、V4)となる。従って、インバータ4a、4bのオン状態が重なっているときには、インバータ4a、4bのオン時間を重なっていないときのオン時間に比べて長くすることにより、各周期におけるオン状態において電力の変動を抑えて負荷に対して安定した電力供給を行うことができる。
上記のようにインバータ4a、4bのオン時間の割合については、コンデンサ2の電圧によって決める方法と、オン状態が重なるインバータのオン時間に基づいて決める方法があるが、本開示はそれらの方法に限定されるものではない。インバータ4a、4bのオン時間の割合は、インバータ4a、4bを構成するスイッチング素子の導通比(デューティ比)に対応し、以下の説明ではインバータの導通比として説明する。
[インバータの導通比の決定方法]
以下、インバータ4a、4bのオン時間の割合である導通比(デューティ比)をコンデンサ2の電圧によって決める導通比決定方法の一例について図4を用いて説明する。
図4に示す波形図において、インバータ4aが時間t1の期間にコンデンサ2の電力を高周波コイルに供給するエネルギE1は、前述の(式3)により表される。従って、時間t3の期間に供給するエネルギは、コンデンサ2の電圧VcがV0からV3に降下しているため、下記の(式5)により表される。
このため、時間t3の期間に続く時間t4’の期間において、インバータ4aにより高周波コイル3aに供給すべきエネルギは、下記の(式6)となる。
時間t4’の期間のエネルギは、図4に示すように、コンデンサ2の電圧VcがV3からV4’に降下しているため、下記の(式7)により表される。
しかし、この時間t4’の期間においては、一方のインバータ4aと他方のインバータ4bが同時にエネルギを供給している。このため、時間t4’の期間において一方のインバータ4aで供給しているエネルギE4aは、E1およびE2の関係から、下記の(式8)で表される。
前述の(式6)の(E1−E3)は、時間t4’の期間において一方のインバータ4aで供給しているエネルギE4aであるため、(式6)=(式8)となる。このため、電圧V4’は、下記の(式9)で算出することができる。
他方のインバータ4bにおいて、時間t2の期間に高周波コイル3bに供給するエネルギは、前述の(式4)で表すことができる。また、時間t4’の期間において他方のインバータ4bで供給しているエネルギE4bは、E1およびE2の関係から、下記の(式10)で表される。
また、時間t5’の期間において高周波コイル3bに供給されるエネルギは、コンデンサ2の電圧VcがV4’からV5’に降下しているため、下記の(式11)で表される。
更に、E5=E2−E4bで表されるため、(式11)=(式4)−(式10)となる。従って、電圧V5’は、下記の(式12)により算出することができる。
上記のように、一方のインバータ4aのオン時間をコンデンサ2の電圧VcがV4’となるまで、そして、他方のインバータ4bのオン時間をコンデンサ2の電圧VcがV5’となるまで延長することにより、オン状態が重なったときでも所定の電力をそれぞれの高周波コイル3a、3bに供給することができる。
上記のように、実施の形態2のインバータ装置においては、インバータ4a、4bのオン時間の割合(導通比)をコンデンサ2の電圧によって決めることにより、インバータ4a、4bのオン状態が重なっている場合のオン時間を重なっていないときのオン時間に比べて長くすることが可能となり、各周期におけるオン状態において電力の変動を抑えて負荷に対して安定した電力供給を行うことができる。
(実施の形態3)
以下、本開示に係る実施の形態3のインバータ装置について説明する。実施の形態3のインバータ装置は、実施の形態1のインバータ装置と実質的に同様の構成(図1参照)を有するものであるが、実施の形態1のインバータ装置との相違点は、インバータのオン状態が重なった場合におけるインバータのオン時間の割合(導通比)を変更する制御方法が異なっている。なお、実施の形態3の説明において、前述の実施の形態1と同様の作用、構成、および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
実施の形態3のインバータ装置における構成においても、前述の実施の形態1および実施の形態2の構成と同様に、1つの電源部1から2つの負荷5a、5bに対して、それぞれのインバータ4a、4bおよび高周波コイル3a、3bにより電力供給可能な構成で説明するが、本開示のインバータ装置としては2つ以上の複数の負荷のそれぞれに対してインバータおよび高周波コイルを設けて電力供給可能な構成とすることを含むものである。
前述の実施の形態2で説明したように、他のインバータを構成するスイッチング素子がオンしているか否かでオン時間の割合(導通比)を変更することによって、高周波コイル(負荷)に対して同じ電力を供給するように制御して、負荷に対する供給電力の変動を抑えることができる構成となる。
その導通比決定方法の一例として、前述の実施の形態2においては、コンデンサ2の電圧Vcによって決める方法について説明したが、実施の形態3においては、オン状態が重なるそれぞれのインバータのオン時間に基づいて決定している。
前述の実施の形態2における導通比決定方法では、(式9)および(式12)により電圧V4’およびV5’を算出して制御しており、複雑な計算が必要となる。実施の形態3における導通比決定方法においては、簡便な方法の一例であり、他のスイッチング素子のオン時間に基づいて決定している。
実施の形態3における他のスイッチング素子のオン時間に基づいて決定する方法について図3を参照して説明する。図3の波形図は、インバータ4a、4bは異なる駆動周期で動作し、それぞれのインバータ4a、4bにおいては一定の導通比で動作している場合を示している。
一方のインバータ4aにおいては、時間t3のオン時間後に時間t4のオン時間が開始するが、時間t4の期間においては他方のインバータ4bがオン状態となるため、インバータ4aのオン時間(t4=t1−t3)ではコンデンサ2の電圧Vcが本来供給すべき電圧より低下している。その結果、インバータ4aのオン時間における供給電力は少なくなる。
時間t4の期間においては、コンデンサ2に蓄えられているエネルギをインバータ4aとインバータ4bで取り合うことになるため、このときに供給するエネルギが減少している。このようなエネルギの不足分を補うために、オン時間を長くする、例えば倍にするといった方法が考えられる。即ち、インバータ4aおよびインバータ4bのオン状態が重なっている場合には、そのときのオン時間t4’を、t4’=(t1−t3)*2とすることによって、一方のインバータ4aに供給される電力が所定の電力に近い値に制御することができる。
また、他方のインバータ4bにおいて、時間t2では本来供給すべき電力(E2)が供給されるが、インバータ4aおよびインバータ4bのオン状態が重なっている時間t4’の期間はコンデンサ2の電圧が低下しており供給電力が少ない期間となる。このため、この時間t4’においては、インバータ4bに供給される電力が、例えば所定の半分であるとして、時間t4’に続く時間t5’を、例えばt5’=t2と設定する。このように設定されたインバータ4bのオン時間は、例えば図4に示した波形図と同様に、(t4’+t5’)とする。即ち、インバータ4aおよびインバータ4bのオン状態が重なっている場合においては、重なっているオン時間の長さに応じて、それぞれのインバータ4aおよびインバータ4bのオン時間が設定される。
上記のように、実施の形態3のインバータ装置においては、オン状態が重なるそれぞれのインバータのオン時間に基づいて、各インバータの導通比が決定されている。このように導通比を決定することにより、実施の形態3のインバータ装置は、煩雑な計算を行う必要がなく所望の電力を安定して負荷に供給することができる構成となる。
本開示のインバータ装置においては、前述の各実施の形態において具体的に説明したように、同一の電源部により複数のインバータを駆動する構成においては、インバータのオン状態が重なる期間では、インバータが単独で駆動する場合に比べて本来供給すべき電力を供給できないため、その不足分に対してオン時間を長くする調整を行うことによって、本来意図した電力を負荷に対して安定的に供給できる構成となる。
本開示のインバータ装置は、機器の小型化と低廉化を図り、負荷に必要な電力を十分に供給することができる装置を提供することが可能となり、誘導加熱調理器に用いた場合には思い通りの調理性能を示す構成となる。