本開示に係る第1の態様のインバータ装置は、電源部と、前記電源部の電圧を安定化させるコンデンサと、前記コンデンサの充電電圧を検出する電力検出部と、前記コンデンサの電力を高周波コイルに供給するスイッチング素子を含んで構成される複数のインバータと、前記インバータを駆動制御する制御部と、を有し、
前記複数のインバータは前記制御部によって異なる周波数で駆動されるよう構成され、
前記電力検出部は前記コンデンサの電圧減少値から前記高周波コイルで消費された電力を検知するよう構成され、
前記電力検出部による電力検知のタイミングは、前記複数のインバータを構成するスイッチング素子のオン状態が重ならないときのオン時間で行うよう構成されている。
上記のように構成された第1の態様のインバータ装置は、高価で機器の大型化を招く電流センサを用いることなく電力を検知することができ、さらには複数のインバータが異なる周波数で駆動することが可能なために電力の制御範囲が広く機器の性能を引き出すことができる装置となる。
本開示に係る第2の態様のインバータ装置においては、前記の第1の態様における前記制御部は、前記複数のインバータにおける1つのインバータの駆動周波数を固定して駆動制御し、他のインバータの駆動周波数を前記1つのインバータの駆動周波数と同期がとれる離散的な値に設定するよう構成してもよい。
上記のように構成された第2の態様のインバータ装置は、電力を正しく検知することができるタイミングを定期的に発生させるように、インバータの駆動周波数を制御することにより、電力検知の検知頻度を一定とし、安定した電力に制御することが可能となる。
本開示に係る第3の態様のインバータ装置は、前記の第2の態様において、前記1つのインバータの固定された駆動周波数が、前記他のインバータの駆動周波数よりも低い周波数に設定されてもよい。
上記のように構成された第3の態様のインバータ装置は、周波数の変更が必要な負荷を高い駆動周波数で駆動することでより自由度の高い制御が可能となる。
本開示に係る第4の態様のインバータ装置は、前記の第1の態様における前記制御部が、前記複数のインバータにおける一方のインバータの駆動周波数を他方のインバータの駆動周波数の倍数となるように制御するよう構成してもよい。
上記のように構成された第4の態様のインバータ装置は、電力を正しく検出することができるタイミングが発生しやすい周波数で電力制御を行うことによって電力検知を実施できる回数を増やすことができ、安定した電力に制御することが可能となる。
本開示に係る第5の態様のインバータ装置の制御方法は、電源部と、前記電源部の電圧を安定化させるコンデンサと、前記コンデンサの充電電圧を検出する電力検出部と、前記コンデンサの電力を高周波コイルに供給するスイッチング素子を含んで構成される複数のインバータと、前記インバータを駆動制御する制御部と、を有して構成されるインバータ装置の制御方法であって、
前記複数のインバータが異なる周波数で駆動され、
前記電力検出部が前記コンデンサの電圧減少値から前記高周波コイルで消費された電力を検知し、
前記電力検出部による電力検知のタイミングが、前記複数のインバータを構成するスイッチング素子のオン状態が重ならないときのオン時間で行う、ことを含む。
上記の第5の態様のインバータ装置の制御方法は、高価で機器の大型化を招く電流センサを用いることなく電力を検知することができ、さらには複数のインバータが異なる周波数で駆動することが可能なために電力の制御範囲が広く機器の性能を引き出すことができる。
本開示に係る第6の態様のインバータ装置の制御方法は、前記の第5の態様において、前記複数のインバータにおける1つのインバータの駆動周波数を固定して駆動制御し、他のインバータの駆動周波数を前記1つのインバータの駆動周波数と同期がとれる離散的な値に設定する、ことを含むものでもよい。
上記の第6の態様のインバータ装置の制御方法は、電力を正しく検知することができるタイミングを定期的に発生させるように、インバータの駆動周波数を制御することにより、電力検知の検知頻度を一定とし、安定した電力に制御することが可能となる。
本開示に係る第7の態様のインバータ装置の制御方法は、前記の第6の態様において、前記1つのインバータの固定された駆動周波数を、前記他のインバータの駆動周波数よりも低い周波数に設定してもよい。
上記のように構成された第7の態様のインバータ装置の制御方法は、周波数の変更が必要な負荷を高い駆動周波数で駆動することでより自由度の高い制御が可能となる。
本開示に係る第8の態様のインバータ装置の制御方法は、前記の第5の態様において、前記複数のインバータにおける一方のインバータの駆動周波数を他方のインバータの駆動周波数の倍数となるように制御してもよい。
上記のように構成された第8の態様のインバータ装置の制御方法は、電力を正しく検出することができるタイミングが発生しやすい周波数で電力制御を行うことによって電力検知を実施できる回数を増やすことができ、安定した電力に制御することが可能となる。
以下、本開示に係るインバータ装置およびその制御方法の一実施の形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。実施の形態の説明においては、例えば、既に良く知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するものであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
以下の実施の形態のインバータ装置およびその制御方法においては、インバータ装置を誘導加熱調理器に用いた構成について説明するが、この構成は例示であり、本開示は、以下の実施の形態において説明する構成に限定されるものではなく、本開示の技術的特徴を有するインバータ装置を含むものである。また、本開示には、以下に述べる各実施の形態において説明する任意の構成を適宜組み合わせることを含むものであり、組み合わされた構成においてはそれぞれの効果を奏するものである。
(実施の形態1)
図1は、本開示に係る実施の形態1のインバータ装置の構成を示す制御ブロック図である。図1に示すように、実施の形態1のインバータ装置は、電力を供給する電源部1と、電源部1の電圧を平滑して安定化させるコンデンサ2と、コンデンサ2の電力を複数の高周波コイル3a、3bに供給するスイッチング素子等で構成される複数のインバータ4a、4bと、コンデンサ2の電圧から各高周波コイル3a、3bで消費された電力を検知する電力検出部6と、電力検出部6で検知された電力に基づいてそれぞれのインバータ4a、4bを制御するマイクロコンピュータ等で構成された制御部7と、を有して構成されている。
なお、実施の形態1のインバータ装置においては、1つの電源部1から2つの負荷5a、5bに対して、それぞれのインバータ4a、4bおよび高周波コイル3a、3bにより電力供給可能な構成で説明するが、本開示のインバータ装置としては2つ以上の複数の負荷のそれぞれに対してインバータおよび高周波コイルを複数設けて電力供給可能な構成とすることを含むものである。
以下、上記のように構成された実施の形態1のインバータ装置における駆動動作について説明する。
[インバータ装置の駆動動作]
電源部1としては、商用の単相100Vまたは200Vの交流電源をダイオードブリッジで直流化した直流電源を用いている。なお、実施の形態1においては、交流電源をダイオードブリッジで直流化した直流電源を用いた例で説明するが、本開示はこのような構成に限定されるものではない。電源部1によって直流化された電力は、コンデンサ2によって平滑化され安定化されている。
コンデンサ2に蓄えられた電力は、インバータ4a、4bに送られる。それぞれのインバータ4a、4bは、スイッチング素子、ダイオード、コンデンサ等で構成されている。それぞれのインバータ4a、4bにおいては、スイッチング素子によって電流経路を切り替えることによって直流の電源を任意の周波数の交流に変換して、交流電源を形成する。
それぞれのインバータ4a、4bにおいて変換された交流電源は、高周波コイル3a、3bにそれぞれ供給され、高周波コイル3a、3bには高周波電流が流れる。高周波電流が流れた高周波コイル3a、3bにおいては高周波磁界が発生し、高周波コイル3a、3bの直上のトッププレートに載置された調理用鍋等の負荷5a、5bには電磁誘導による渦電流が流れる。その結果、負荷5a、5bである調理用鍋等においては、渦電流が流れることにより生じるジュール熱のために発熱し、調理動作等が行われている。
上記のように、複数の負荷5a、5bに対して電力を供給して調理動作等を実行させるためには、それぞれの負荷5a、5bに電気的に接続(磁界結合を含む)された高周波コイル3a、3bおよびインバータ4a、4bが必要となる。複数のインバータ4a、4bに電力を供給する電源部1とコンデンサ2の構成としては、それぞれのインバータ4a、4bに対応する複数の電源部と複数のコンデンサをそれぞれ設けて対応することは可能である。しかしながら、このような構成では部品点数が多く、大型化するため、装置の小型化および低廉化という重要な課題に逆行するものである。そのため、実施の形態1のインバータ装置においては、図1に示すように1組の電源部1とコンデンサ2で構成される1つの直流電源に対して、複数のインバータ4a、4bを並列接続して設け、複数の負荷5a、5bに対して電力を供給するよう構成されている。
実施の形態1のインバータ装置において、それぞれの負荷5a、5bに対する電力制御は、電力検出部6によってインバータ4a、4bにおいてコンデンサ2から高周波コイル3a、3bに供給された電力を検知し、その検知された電力に基づいて制御部7によって行われる。
なお、制御部7としては、マイクロコンピュータ、DSP、カスタムIC等で構成されるが、本開示はそれらに限定されるものではない。また、制御部7の制御動作としては、インバータ4a、4bを構成するスイッチング素子の導通比(デューティ比)の制御、又は駆動周波数の制御を行ってインバータ4a、4bを制御しているが、本開示はこのようなインバータ制御に限定されるものではなく、他のインバータ制御を行ってもよい。
[電力検出部による電力検知]
以下、実施の形態1のインバータ装置において、電力検出部6がコンデンサ2の充電電圧を検出して、その検出電圧からインバータ4a、4bにより供給された電力を検知する方法について説明する。
前述のように、従来のインバータ装置においては、同一の電源から複数の負荷へ電力を供給する場合、複数のインバータのそれぞれに電流センサを設けて、それぞれの電流センサによる検出電流に基づいて制御部がそれぞれのインバータに対する制御を行っていた。
図2は、同一の電源から複数の負荷へ電力を供給するインバータ装置において、複数のインバータのそれぞれに電流センサ8a、8bを設けた構成を比較例として示す制御ブロック図である。図2に示すインバータ装置においては、それぞれのインバータ4a、4bに対してコンデンサ2から供給される電流を検出する電流センサ8a、8bがそれぞれ設けられている。
図2に示すインバータ装置において、それぞれの負荷5a、5bに供給される電力の制御は、それぞれのインバータ4a、4bに供給される電流が電流センサ8a、8bにより検出されて、それらの電流センサ8a、8bによる検出された電流値に基づいて制御部7がインバータ4a、4bを構成するスイッチング素子を駆動制御することにより実現している。
前述のように、同一の電源に対して複数のインバータ4a、4bを設けた構成の場合、電流センサ8a、8bをそれぞれのインバータ4a、4bに対して設けることにより、それぞれのインバータ4a、4bを駆動制御することが可能となり、それぞれの負荷5a、5bに対する電力制御を行うことができる。
しかしながら、インバータ4a、4bへの入力電流を検出する電流センサ8a、8bは、高価であり、かつ形状の大きい部品であるため、機器の低廉化と小型化においては阻害要因となっていた。そこで、本開示においては、図1に示した実施の形態1のインバータ装置の構成のように、電流センサを設けることなく、コンデンサ2からインバータ4a、4bに供給される電力を検出する電力検出部6を設ける構成を提案するものである。
電力検出部6は、コンデンサ2の電圧から高周波コイル3、3bに供給される電力を検知する方法である。周期T[sec]、コンデンサ容量C[F]、充電電圧V0[V]、放電後電圧V1[V]、電力P[W]とすると、インバータ4a、4bを構成するスイッチング素子がオン状態となり、コンデンサ2の電力が高周波コイル3a、3bに供給されてコンデンサ2の電圧がV0からV1まで低下したことを検出すると、そのときにインバータ4a、4bから高周波コイル3、3bに供給された電力Pは、下記の(式1)で算出される。
このようにコンデンサ2の電圧を検出することにより、インバータ4a、4bから高周波コイル3a、3bに供給された電力Pを検知することができ、電流センサを用いることなく電力検出を行うことが可能となる。
上記のように、1組の電源部1とコンデンサ2に対して並列に複数のインバータ4a、4bを接続して構成された場合、それぞれのインバータ4a、4bの駆動周波数を同一として、それぞれのインバータ4a、4bを構成するスイッチング素子のオン状態(オン時間)が重ならないように動作させることにより、それぞれの負荷5a、5bで消費される電力Pを検出することが可能である。
なお、実施の形態1の説明において、インバータ4a、4bを構成するスイッチング素子がオン状態(オン時間)とは、コンデンサ2の電力が高周波コイル3に流れる電流経路が確保された電力供給状態を示し、この電力供給状態をインバータ4a、4bのオン状態(オン時間)として説明する。
図3は、それぞれのインバータ4a、4bが一定の周期T(同一の駆動周波数)で駆動しており、かつオン状態が重ならないように動作しているときのコンデンサ2の電圧Vcの変位を示す波形図である。図3に示すように、1組の電源部1とコンデンサ2に対して複数のインバータ4a、4bが一定周期Tで駆動し、重ならないように動作している場合には、例えば、一方のインバータ4aがオン状態となると、コンデンサ2の電圧VcはV0からV1まで降下する。次に、インバータ4aがオフ状態に移行するとコンデンサ2が充電されて電圧VcはV1からV0に回復する。
他方のインバータ4bがオン状態に移行するときには、コンデンサ2の電圧VcはV0まで回復している。他方のインバータ4bがオン状態になると、コンデンサ2の電圧VcはV0からV2まで降下する。次に、インバータ4bがオフ状態に移行するとコンデンサ2の電圧VcはV2からV0に回復する。図3に示す波形図においては、一方のインバータ4aのオン状態の時間(オン時間)が、他方のインバータ4bのオン時間に比べて短く設定されており、コンデンサ2おける電圧降下した電圧値は異なっている(V1>V2)。
上記のように、それぞれのインバータ4a、4bが一定の周期Tで駆動し、かつオン状態が重ならないように動作している場合には、それぞれのインバータ4a、4bのオン時間とコンデンサ2の電圧Vcの降下状態が対応し、前述の(式1)により負荷5a又は5bで消費された電力Pを検知することが可能となる。
なお、上記の説明は、インバータ4a、4bが同じ周期Tで駆動し、オン状態が重ならないように動作している場合についての説明であるが、インバータ4a、4bが異なる周期で駆動していても、オン状態が重ならない動作であれば、実施の形態1の構成が適用される。
しかしながら、上記のようにインバータ4a、4bのオン状態(オン時間)が重ならないように動作している構成においては、インバータ4の駆動周波数を変更して電力を制御することができないため、スイッチング素子の導通比等で制御することになり、インバータ4a、4bの構成によっては電力の制御範囲が限定される。その結果、このような構成では負荷5に対して必要な電力を十分に供給することができない場合があった。また、高周波コイル3a、3bや、インバータ4a、4bを構成するコンデンサ等の部品のばらつきによって共振周波数がずれた場合には、制御しようとした電力と実際に供給される電力にずれが生じてしまい、当該インバータ装置を誘導加熱調理器に用いた場合には思い通りの調理性能が得られないという課題を有していた。
そこで、複数のインバータ4a、4bのそれぞれが異なる駆動周波数で動作させて、電力制御を行う場合について、図4を用いて説明する。
図4は、実施の形態1のインバータ装置における動作を示す波形図である。図4の波形図においては、それぞれのインバータ4a、4bが異なる周期T1、T2で駆動し、インバータ4a、4bのオン状態が重ならない場合と、重なる場合とにおけるコンデンサ2の電圧Vcの変位を示している。
図4において、t1の時間は一方のインバータ4aを構成するスイッチング素子がオン状態、即ちインバータ4aがオン状態である期間(オン時間)を示している。この時間t1においては、他方のインバータ4bを構成するスイッチング素子がオフ状態、即ちインバータ4bがオフ状態である期間(オフ時間)を示している。なお、この時間t1においては、コンデンサ2の電圧VcはV0からV1まで降下している。このとき、インバータ4aで時間t1の期間に供給された電力P1は、下記の(式2)により算出することができる。
(式2)において、T1は、インバータ4aの周期である。そして、時間t1の期間が終了すると、インバータ4aおよびインバータ4bは共にオフ状態となり、電源部1から供給される電力によりコンデンサ2の電圧VcはV0まで回復する。
次に、時間t2の期間は、一方のインバータ4aがオフ状態であり、他方のインバータ4bがオン状態である期間を示している。この時間t2においては、コンデンサ2の電圧VcはV0からV2まで降下する。このとき、インバータ4bで時間t2の期間に供給された電力P2は、下記の(式3)により算出することができる。
(式2)において、T2は、インバータ4bの周期である。そして、時間t2の期間が終了すると、インバータ4aおよびインバータ4bは共にオフ状態となり、電源1から供給される電力によりコンデンサ2の電圧VcはV0まで回復する。
このように、インバータ4aおよびインバータ4bが交互にオン状態となる場合には、コンデンサ2の電圧変化からインバータ4aおよびインバータ4bの供給する電力を検知することができる。
しかしながら、インバータ4aおよびインバータ4bの駆動周波数が異なる場合には、それぞれのインバータ4aおよびインバータ4bが同時にオン状態となる場合が発生する。図4の波形図に示すように、時間t3の期間はインバータ4aがオン状態であり、インバータ4bがオフ状態である。そして時間t3に続く時間t4の期間になると、インバータ4aおよびインバータ4bの両方がオン状態となるため、コンデンサ2の電圧は急激に低下する。更に、時間t4に続く時間t5の期間はインバータ4aがオフ状態であり、インバータ4bがオン状態である。時間t4に続く時間t5の期間においてもインバータ4bはオン状態を継続しているため、コンデンサ2の電圧Vcはさらに低下して、V5まで降下する。
もし、一方のインバータ4aが供給した電力を時間t4が終了した時点で算出するように構成した場合には、時間t4の期間においては他方のインバータ4bが供給した電力も含まれるため、インバータ4aのみが供給した電力を正しく検知することができず、正しい制御ができなくなる。また同様に、他方のインバータ4bが供給した電力を時間t5が終了した時点で算出するように構成した場合には、時間t4の期間においては一方のインバータ4aが供給した電力が含まれるため、インバータ4bのみが供給した電力を正しく検知することができず、正しい制御ができなくなる。
上記のように、同時にインバータ4aおよびインバータ4bがオン状態となる状況が生じると、何れのインバータ4aおよびインバータ4bによる消費電力を正しく検知することができなくなり、正しい制御ができなくなるという課題があった。
そこで、本開示のインバータ装置においては、インバータ4aおよびインバータ4bが同時にオン状態(オン時間)とならないときにそれぞれの消費電力を検知するように構成している。即ち、本開示に係る実施の形態1のインバータ装置においては、図4の波形図においては、時間t1の期間が終了した時点でインバータ4aによる供給電力を検知し、時間t2の期間が終了した時点でインバータ4bによる供給電力を検知するように構成している。
実施の形態1のインバータ装置においては、上記のように構成することにより、それぞれのインバータ4a、4bで供給する電力、即ち高周波コイルに供給する電力を検知することができる。したがって、実施の形態1のインバータ装置の構成においては、電流センサを使用することなく、それぞれのインバータ4a、4bにより負荷に供給される電力を確実に検知することができる。このため、実施の形態1のインバータ装置の構成によれば、低廉で小型のインバータ装置を実現することができる。
(実施の形態2)
以下、本開示に係る実施の形態2のインバータ装置について説明する。実施の形態2のインバータ装置は、実施の形態1のインバータ装置と実質的に同様の構成(図1参照)を有するものであるが、実施の形態1のインバータ装置との相違点は、複数のインバータのオン状態が重ならないように駆動周波数を特定するように構成した点である。なお、実施の形態2の説明において、前述の実施の形態1と同様の作用、構成、および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
実施の形態2のインバータ装置における構成においても、前述の実施の形態1の構成と同様に、1つの電源部1から2つの負荷5a、5bに対して、それぞれのインバータ4a、4bおよび高周波コイル3a、3bにより電力供給可能な構成で説明するが、本開示のインバータ装置としては2つ以上の複数の負荷のそれぞれに対してインバータおよび高周波コイルを設けて電力供給可能な構成とすることを含むものである。
実施の形態1で説明したように、単一の電源となるコンデンサ2の電圧から複数のインバータ4a、4bの消費電力を検知する方法においては、インバータ4a、4bを構成するスイッチング素子が同時にオン状態となっていないときに、当該消費電力を検知するように構成すればよいことを示した。
なお、実施の形態2の説明においても、実施の形態1の説明と同様に、インバータ4a、4bを構成するスイッチング素子がオン状態とは、コンデンサ2の電力が高周波コイル3に流れる電流経路が確保された電力供給状態を示しており、この電力供給状態がインバータ4a、4bのオン状態として説明する。
複数のインバータ4a、4bの駆動周波数を同一とした場合には、それぞれのインバータ4a、4bが同時にオン状態とならないタイミングで動作を開始すれば、それぞれのインバータ4a、4bは同時にオン時間となることはない。
しかしながら、複数のインバータ4a、4bのそれぞれの駆動周波数が異なる場合には、設定された駆動周波数によっては同時にオン時間となるタイミングが発生し、また同時にオン時間とならないタイミングも発生する。インバータ4a、4bのそれぞれが同時にオン時間とならないタイミングがどのような頻度で発生するかは、それぞれの駆動周波数の関係性に依存する。即ち、インバータ4a、4bのそれぞれが同時にオン時間とならないタイミングで常に電力検知を行う構成とした場合には、電力検知を行えるタイミングがほとんど発生しない場合が起こりうる。或いは、電力検知が行えるタイミングに偏りが出て、頻繁に電力検知を行える期間と、電力検知を行うことができない期間とに分かれてしまう場合が発生する。その結果、インバータ4a、4bのそれぞれが同時にオン時間とならないタイミングで常に電力検知を行うインバータ装置においては、安定的に電流を制御することが難しくなる。
そこで、本開示のインバータ装置においては、一方のインバータ4aの駆動周波数を変更せずに固定して、一定の駆動周波数で電力制御を行うように構成し、他方のインバータ4bの駆動周波数を一方のインバータ4aの固定した駆動周波数と同期がとれる周波数であり、且つ離散的な値に変更する構成とすることにより、周期的に電力検知を行うタイミングを形成することができる。
例えば、インバータ4aの駆動周波数を23kHzとし、他方のインバータ4bの駆動周波数を1kHz刻み、例えば24kHz、25kHz、26kHz、・・・で変更する場合には、インバータ4aとインバータ4bのオン状態とオフ状態との関係は、1秒間隔で同じ関係に戻る。また、インバータ4bの駆動周波数を0.5kHz刻み、例えば23.5kHz、24.0kHz、24.5kHz、・・・で変更する場合には、インバータ4aとインバータ4bのオン状態とオフ状態との関係は、2秒間隔で同じ関係に戻り、同時にオン時間とならないタイミングが所定時間間隔で確実に生じる。このように、本開示に係る実施の形態2のインバータ装置においては、一定のタイミングで電力検知を行うことができるように、意図的に駆動周波数を選択することにより、周期的に電力検知を行うことができ、安定的な電力制御を行うことができる構成となる。
上記の具体例からも理解できるように、電力検知のタイミングを早くしたい場合には駆動周波数の変更幅は大きくし、電力検知のタイミングが遅くてもよい場合には駆動周波数の変更幅は小さくすることにより、状況に応じた対応が可能となる。また、このような対応は、駆動周波数の変更幅が大きい場合には電流の変化量も大きいため、早く検知する必要があることに合致するため都合がよいものとなる。したがって、本開示に係る実施の形態2のインバータ装置においては、制御の安定性を考慮して、必要な電力検出のタイミングから駆動周波数の変更幅を設定することが可能な構成となる。
また、周波数を離散的な値に変更するとは、制御部が駆動周波数の変更可能な最小分解能よりも大きい値で変更するようにすることを意味しており、マイクロコンピュータなどのデジタルで制御するもの全てを意味するわけではない。
(実施の形態3)
以下、本開示に係る実施の形態3のインバータ装置について説明する。実施の形態3のインバータ装置としては、実施の形態1のインバータ装置と実質的に同様の構成(図1参照)を有するものであり、実施の形態3においては当該インバータ装置により電力が供給される負荷側の構成に応じて駆動周波数を制御する構成を有するものである。なお、実施の形態3の説明において、前述の実施の形態1と同様の作用、構成、および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
インバータ装置を設けた誘導加熱装置においては、高周波コイルに高周波電流を供給することにより高周波磁界を発生させて、負荷となる調理用鍋等に発生する渦電流で誘導加熱する。この原理は、接点を有することなく非接触で電力を供給する非接触給電の誘導方式と全く同じである。このため、誘導加熱装置では、同一の高周波コイルにより誘導加熱および非接触給電を行うことが可能である。このときの非接触給電においては、インバータ装置における高周波コイルが、電力を送電する側のコイルとなるため、送電コイルとして機能する。
図5は、本開示に係る実施の形態3のインバータ装置および負荷側の構成を示すブロック図である。図5は、実施の形態3のインバータ装置において、非接触給電を行う場合の構成を示している。
図5に示す実施の形態3のインバータ装置の構成は、実施の形態1の構成と実質的に同じであり、負荷側に非接触給電を行うための構成を有している。実施の形態3のインバータ装置における構成においても、1つの電源部1から2つの負荷5a、5bに対して、それぞれのインバータ4a、4bおよび高周波コイル3a、3bにより電力供給可能な構成で説明するが、本開示のインバータ装置としては2つ以上の複数の負荷のそれぞれに対してインバータおよび高周波コイルを設けて電力供給可能な構成とすることを含むものである。
図5に示すように、実施の形態3における負荷側には高周波コイル3a、3bに対向して磁気的に結合する受電コイル9a、9bと、各受電コイル9a、9bからの電力が供給される負荷5a、5bと、が設けられている。なお、負荷5a、5bとしては、例えばモータ、ヒータ等の電気機器である。
高周波コイル3a、3bによって発生する高周波磁界は、受電コイル9a、9bと磁気的に結合する状態で配置される受電コイル9a、9bにおいても高周波電圧と電流が発生する。この受電コイル9a、9bに流れる電流を電源として、負荷5a、5bを駆動することが可能となる。実際には、受電コイル9a、9bにおいて発生した電圧を整流して直流として使用する場合が多いが、そのような構成に本開示は限定されるものではない。なお、負荷5a、5bとしてヒータを使用する場合であれば、高周波電流をそのままヒータに供給する構成としても負荷として機能させることが可能である。
上記のように、実施の形態3のインバータ装置において、インバータ4a、4bを非接触給電のために動作させる場合、高周波コイル3a、3bから送電した電力と、負荷5a、5bで消費する電力との比率(給電効率)を考慮すると、インバータ4a、4bを構成するスイッチング素子の駆動周波数(スイッチング周波数)は高い方が効率がよい。非接触給電に使用される駆動周波数は方式によって様々ではあるが、数十kHz〜数MHzといった周波数が使われることが多い。それに対して、誘導加熱に使用される周波数は20kHz〜60kHz程度であり、非接触給電よりも低い周波数が適している。
一方、負荷5a、5bが非接触給電の場合と、誘導加熱の場合とでの特性において、非接触給電は誘導加熱よりもQ値が高い傾向にある。Q値が高いということは、送電側のインバータ4a、4bの駆動周波数が負荷5a、5bの特性に合致しないと効率よく送電することができないことを意味する。
実施の形態3のインバータ装置のように、誘導加熱および非接触給電の何れの負荷であっても動作可能な複数のインバータ4a、4bを備えている構成では、一方のインバータ4aで誘導加熱、他方のインバータ4bで非接触給電を行うことが可能である。本開示に係るインバータ装置は、実施の形態1から実施の形態3において説明したように、1つの電源から複数のインバータ4a、4bを動作させて、それらのインバータ4a、4bにおいて消費される電力が、電源を平滑化し安定化するコンデンサ2の電圧を検出して検知する構成である。このような構成において、例えば、一方のインバータ4aにより負荷5aに対する誘導加熱を行い、他方のインバータ4bにより負荷5bに対する非接触給電を行う場合がある。このような場合においては、誘導加熱を行うインバータ4aの駆動周波数を固定とし、非接触給電の負荷5bに合わせて駆動周波数を変更する必要があるインバータ4bの駆動周波数は、インバータ4aの駆動周波数よりも高く設定することが望ましい。
上記のように、実施の形態3のインバータ装置においては、それぞれのインバータ4a、4bの駆動周波数を、負荷5a、5bに応じて設定して、前述の実施の形態1および実施の形態2において説明したように、コンデンサ2の電圧を所望のタイミングで検出して電力検知を行うことができる構成となる。このように構成された実施の形態3のインバータ装置においては、誘導加熱および非接触給電の何れの負荷であっても安定的な電力制御を行うことができる構成となる。
(実施の形態4)
以下、本開示に係る実施の形態4のインバータ装置について説明する。実施の形態4のインバータ装置としては、実施の形態1のインバータ装置と実質的に同様の構成(図1参照)を有するものであり、実施の形態4においては当該インバータ装置により電力が供給される負荷の特性に応じて駆動周波数を制御する構成を有するものである。なお、実施の形態4の説明において、前述の実施の形態1と同様の作用、構成、および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
前述の実施の形態3のインバータ装置においては、非接触給電を行う場合には負荷5a、5bに応じて駆動周波数を設定する必要性が高いことを説明した。しかしながら、誘導加熱を行う場合であっても負荷5a、5bによって特性が異なっている。
例えば、負荷5a、5bである調理用鍋を誘導加熱する場合、調理用鍋の材質によって共振周波数が異なる。そのため、インバータ4a、4bの駆動周波数を負荷5a、5b、例えば磁性材料でできた調理用鍋に合わせて設定し、それらのインバータ4a、4bにより非磁性材料でできた調理用鍋を加熱する場合には、十分な発熱が得られない場合が生じる。したがって、インバータ4a、4bの駆動周波数は、調理用鍋の材質に対応して設定することが望ましい。
しかしながら、上記のようにインバータ4a、4bの駆動周波数を負荷5a、5bに応じて制御する場合には、前述の実施の形態1で示したようなそれぞれのインバータ4a、4bを構成するスイッチング素子が同時にオン状態とならないタイミングがどの程度の頻度で発生するかが不明である。さらには、それぞれのインバータ4a、4bにおいて負荷5a、5bの加熱電力を制御するために時々刻々と駆動周波数が変更された場合には、そのような各インバータ4a、4bを構成するスイッチング素子が同時にオン状態とならないタイミングがほとんど発生しないような状況も起こりうる。
そこで、実施の形態4のインバータ装置においては、インバータ4a、4bの駆動周波数における一方の駆動周波数を他方の駆動周波数の倍数となるように設定することで、定期的にコンデンサ2の電圧を検出して電力検知を行うことができる構成となる。このように構成された実施の形態4のインバータ装置においては、特性の異なる負荷5a、5bに対して誘導加熱を行う場合であっても安定的な電力制御を行うことができる構成となる。
具体的には、一方のインバータ4aの駆動周波数を25kHzとした場合に、他方のインバータ4bの駆動周波数を50kHzまたは75kHzとすることにより、一方のインバータ4aと他方のインバータ4bを構成するそれぞれのスイッチング素子のオンオフの関係を周期的に同じ関係に戻すことができるものとなる。したがって、実施の形態4のインバータ装置においては、電源となるコンデンサ2の電圧を検出して電力検知を周期的に行うことが可能となり、その電力検知に基づいて高周波コイルに流れる電流を制御することにより、インバータ装置において安定した制御を行うことが可能となる。
上記のようにインバータ装置における制御を安定的に行う場合には、例えば一方のインバータ4aの駆動周波数が変化したとしても、他方のインバータ4bの駆動周波数を一方のインバータ4aの駆動周波数の常に2倍または3倍となるように制御することにより対応することができる。
実施の形態4のインバータ装置においては、上記のようにインバータ4a、4bを制御することによって、電流センサを使用することなく、電源となるコンデンサ2の電圧を検出してインバータによる供給電力を検知することができる。このため、実施の形態4のように構成することにより、低廉で小型のインバータ装置を実現することができる。
本開示のインバータ装置およびその制御方法においては、前述の各実施の形態において具体的に説明したように、同一の電源部により複数のインバータを駆動する構成においては、インバータのオン状態が重なる期間ではインバータによる供給電力を検知することができないため、それぞれのインバータの駆動周波数を負荷に応じて所望の値に設定することにより、インバータによる供給電力を検知することができる。このように構成された本開示に係るインバータ装置およびその制御方法においては、どのような負荷に対しても安定的な電力制御を行うことが可能となる。
本開示におけるインバータ装置およびその制御方法は、インバータの駆動周波数を自由に変更することで電力制御領域が狭くなることがなく、同一電源の電圧を安定化させるコンデンサの電圧減少値を検出することにより、複数の負荷に供給される各電力を容易に算出することができ、機器の小型化と低廉化が可能となる。