A.実施形態:
A−1.加熱装置100の構成:
図1は、実施形態における加熱装置100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2から図6は、実施形態における加熱装置100の断面構成を概略的に示す説明図である。図2には、図3から図6のII−IIの位置における加熱装置100のXZ断面構成が示されており、図3には、図2のIII−IIIの位置における加熱装置100のXY断面構成が示されており、図4には、図2のIV−IVの位置における加熱装置100のXY断面構成が示されており、図5には、図2のV−Vの位置における加熱装置100のXY断面構成が示されており、図6には、図2のVI−VIの位置における加熱装置100のXY断面構成が示されている。また、図7は、図2のX1部における加熱装置100の断面構成を拡大して示す説明図であり、図8は、図2のX2部における加熱装置100の断面構成を拡大して示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、加熱装置100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図9以降についても同様である。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を、面方向ともいう。
加熱装置100は、対象物(例えば、半導体ウェハW)を保持しつつ所定の処理温度(例えば、400〜650℃程度)に加熱する装置であり、サセプタとも呼ばれる。加熱装置100は、例えば、成膜装置(CVD成膜装置やスパッタリング成膜装置等)やエッチング装置(プラズマエッチング装置等)といった半導体製造装置の一部として使用される。図1および図2に示すように、加熱装置100は、保持体10と支持体20とを備える。
保持体10は、Z軸方向(上下方向)に略直交する表面(以下、「保持面」という)S1と、保持面S1とは反対側の表面(以下、「裏面S2」という)とを有する略円板状の部材であり、例えばAlN(窒化アルミニウム)やAl2O3(アルミナ)を主成分とするセラミックス等の絶縁体により構成されている。なお、本明細書では、主成分とは、含有割合(重量割合)の最も多い成分を意味する。保持体10の直径は、例えば100mm以上、500mm以下程度であり、保持体10の厚さ(Z軸方向における寸法)は、例えば3mm以上、20mm以下程度である。Z軸方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当し、保持体10の保持面S1は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、保持体10の裏面S2は、特許請求の範囲における第2の表面に相当する。
支持体20は、Z略方向に延びる略円管状の部材であり、保持体10と同様に、例えばAlNやAl2O3を主成分とするセラミックス等の絶縁体により構成されている。図2に示すように、支持体20には、支持体20の上面S3から下面S4までZ軸方向に延びる貫通孔22が形成さている。貫通孔22のZ軸方向に直交する断面(XY断面)の形状は、略円形である(図4等参照)。支持体20に形成された貫通孔22は、Z軸方向の略全体にわたって略一定の内径を有するが、図8に示すように、下端部において内径が拡大された拡径部23を構成している。支持体20の外径は、例えば30mm以上、90mm以下程度であり、支持体20の高さ(Z軸方向における寸法)は、例えば100mm以上、300mm以下程度である。支持体20に形成された貫通孔22は、特許請求の範囲における第1の貫通孔に相当する。
図2および図7に示すように、保持体10と支持体20とは、保持体10の裏面S2と支持体20の上面S3とがZ軸方向に互いに対向するように配置されている。支持体20は、保持体10の裏面S2の中心部付近に、公知の接合材料により形成された接合部30を介して接合されている。
図2および図3に示すように、保持体10の内部には、保持体10を加熱するヒータとしての2つの抵抗発熱体50が配置されている。各抵抗発熱体50は、例えば、タングステンやモリブデン等の導電性材料により構成されている。本実施形態では、各抵抗発熱体50は、Z軸方向視で、略同心半円状に延びる線状のパターンを構成している。
また、図7に示すように、保持体10の裏面S2の内、Z軸方向視で支持体20に形成された貫通孔22に重なる位置には、複数の(本実施形態では4つの)第1の凹部11が形成されている。本実施形態では、Z軸方向視での各第1の凹部11の形状は、略円形である。各第1の凹部11内には、抵抗発熱体50への給電のための受電電極(電極パッド)54が設けられている。すなわち、本実施形態では、保持体10の裏面S2の内、Z軸方向視で支持体20に形成された貫通孔22に重なる位置に、複数の(本実施形態では4つの)受電電極54が配置されている。本実施形態では、Z軸方向視での各受電電極54の形状は、略円形である。
図2および図3に示すように、各抵抗発熱体50の一方の端部は、Z軸方向視で保持体10の中心部付近に配置されており、該一方の端部には、保持体10の中心部付近に配置されたビア導体52の上端部が接続されている。また、図2および図7に示すように、各抵抗発熱体50の上記一方の端部に接続されたビア導体52の下端部は、保持体10の裏面S2に配置された受電電極54に接続されている。また、各抵抗発熱体50の他方の端部は、保持体10の外周部付近に配置されており、該他方の端部は、図示しないが、保持体10に配置されたビア導体52やドライバ電極(不図示)を介して、保持体10の裏面S2に配置された受電電極54に接続されている。その結果、各抵抗発熱体50は、ビア導体52等を介して、受電電極54と電気的に接続された状態となっている。
図2に示すように、支持体20に形成された貫通孔22内には、複数の(本実施形態では4つの)電極端子ユニット70が収容されている。各電極端子ユニット70は、第1の柱状部材71と、第2の柱状部材72と、金属撚り線73とから構成されている。電極端子ユニット70は、特許請求の範囲における電極端子に相当する。
電極端子ユニット70を構成する第1の柱状部材71は、金属撚り線73に対して保持体10側(すなわち、上側)に配置された略円柱状の導電性部材であり、例えばニッケルにより形成されている。図7に示すように、第1の柱状部材71の保持体10側の端部(すなわち、上端部)の径は、他の部分の径(例えば5mm以上、8mm以下)より細くなっている。第1の柱状部材71の上端部は、金属ろう材56(例えば、金ろう材)を介して受電電極54に接合されている。また、図2に示すように、第1の柱状部材71の他方の(下側の)端部は、例えばかしめにより、金属撚り線73に接合されている。
電極端子ユニット70を構成する第2の柱状部材72は、金属撚り線73に対して保持体10から離れた側(すなわち、下側)に配置された略円柱状の導電性部材であり、例えばニッケルにより形成されている。図2に示すように、第2の柱状部材72の保持体10側の端部(すなわち、上端部)は、例えばかしめにより、金属撚り線73に接合されている。また、図2および図8に示すように、第2の柱状部材72の他方の(下側の)端部は、支持体20の貫通孔22から下方に突出している。第2の柱状部材72の下端部の径は、他の部分の径(例えば5mm以上、8mm以下)より細くなっている。また、第2の柱状部材72の下端部中間には、雄ネジ79が形成されている。
電極端子ユニット70を構成する金属撚り線73は、ある程度の可撓性を有する撚り線であり、例えばニッケルにより形成されている。金属撚り線73の径は、例えば1mm以上、3mm以下である。加熱装置100の使用中には、抵抗発熱体50の発熱によって保持体10の温度が高くなるため、保持体10と支持体20との間や、保持体10に比較的近い第1の柱状部材71と保持体10から比較的遠い第2の柱状部材72との間に、熱膨張差が発生することがある。このような熱膨張差が発生すると、電極端子ユニット70には応力が生ずる。電極端子ユニット70を構成する金属撚り線73は、ある程度の可撓性を有するため、電極端子ユニット70に生ずる応力を吸収・緩和することができる。
電極端子ユニット70を構成する第2の柱状部材72の下端部は、直接、または、コネクタ(不図示)等を介して、電源(不図示)と接続される。電源から各電極端子ユニット70、各受電電極54、各ビア導体52等を介して各抵抗発熱体50に電圧が印加されると、各抵抗発熱体50が発熱し、保持体10の保持面S1上に保持された対象物(例えば、半導体ウェハW)が所定の温度(例えば、400〜650℃程度)に加熱される。
図2、図4および図5に示すように、支持体20に形成された貫通孔22内には、複数の(本実施形態では4つの)絶縁管40が収容されている。各絶縁管40は、Z軸方向に延びる略円管状の部材であり、例えばAlN(窒化アルミニウム)やAl2O3(アルミナ)を主成分とするセラミックス等の絶縁体により構成されている。図7および図8に示すように、各絶縁管40には、Z軸方向に延びる貫通孔42が形成されている。貫通孔42のZ軸方向に直交する断面(XY断面)の形状は、略円形である。
図7に示すように、保持体10の裏面S2には、複数の(4つの)第2の凹部12が形成されている。各第2の凹部12は、第1の凹部11を取り囲むような(すなわち、受電電極54を取り囲むような)略円環状の溝(スリット)である。各第2の凹部12の形状は、絶縁管40の形状に対応しており、各第2の凹部12には、絶縁管40における保持体10に対向する側の先端部(すなわち、上端部)が挿入されている。第2の凹部12の溝幅は、絶縁管40の上端部の肉厚と略同一となっている。そのため、各第2の凹部12は、該第2の凹部12に挿入された絶縁管40の上端部における外周面OSと内周面ISとの両方と係合している。絶縁管40と第2の凹部12とがこのような構成であるため、保持体10に対する絶縁管40(特に、絶縁管40の上端部)の面方向(Z軸方向に直交する方向)への相対移動が規制されている。なお、保持体10の裏面S2に形成された第2の凹部12(第2の凹部12の一部分)は、面方向において、絶縁管40の上端部と係合している段差部であると言える。また、本明細書において、2つの寸法(例えば、上述した第2の凹部12の溝幅と、絶縁管40の肉厚)が略同一であるとは、2つの寸法の差の絶対値が、2つの寸法の内の大きい方の値の30%以下であることを意味する。なお、2つの寸法が略同一である場合において、2つの寸法の差の絶対値が2つの寸法の内の大きい方の値の20%以下であることがより好ましく、2つの寸法の差の絶対値が2つの寸法の内の大きい方の値の10%以下であることが一層好ましい。また、本明細書において、2つの部材が係合しているとは、該2つの部材が接触している態様に限られず、該2つの部材の間の距離の最小値が2mm以下であることを意味する。なお、2つの部材が係合している場合において、該2つの部材の間の距離の最小値が1.5mm以下であることがより好ましく、該2つの部材の間の距離の最小値が1mm以下であることが一層好ましい。
図2、図7および図8に示すように、各絶縁管40に形成された貫通孔42内には、電極端子ユニット70が収容されている。より詳細には、各絶縁管40に形成された貫通孔42内には、電極端子ユニット70の一部分(以下、「第1の部分P1」という)が収容されている。本実施形態では、電極端子ユニット70の第1の部分P1は、電極端子ユニット70の内、第2の柱状部材72の下端部分を除く部分である。図7に示すように、絶縁管40に形成された貫通孔42の内径R1は、電極端子ユニット70における第1の部分P1の最大外径R2と略同一となっている。そのため、絶縁管40に対する電極端子ユニット70の面方向(Z軸方向に直交する方向)への相対移動が規制されている。
また、図2、図5および図8に示すように、支持体20に形成された貫通孔22内における拡径部23の位置(すなわち、下端に近い位置)には、キャップ部材(以下、後述する他のキャップ部材と区別するために「上側キャップ部材80」という)が収容されている。上側キャップ部材80は、Z軸方向視で略円形の板状部材であり、例えばAlN(窒化アルミニウム)やAl2O3(アルミナ)を主成分とするセラミックス等の絶縁体により構成されている。上側キャップ部材80は、リテーナとも呼ばれる。
図8に示すように、上側キャップ部材80の外径は、支持体20に形成された貫通孔22における拡径部23の内径と略同一となっている。そのため、上側キャップ部材80は、支持体20に対する面方向への相対移動が規制されるように、支持体20に支持された状態となっている。なお、例えば無機系の接着剤により、上側キャップ部材80の外周面と支持体20に形成された貫通孔22の拡径部23の内周面とが接合されていてもよい。また、本実施形態では、Z軸方向において、上側キャップ部材80の外周部の上面が、支持体20に形成された貫通孔22の段差(拡径部23とその他の部分との境界)に係合しており、これにより、上側キャップ部材80の上側への移動が規制されている。
また、図5に示すように、上側キャップ部材80の外周面には、面方向(径方向)に突出する2つの凸部84が形成されている。上側キャップ部材80に形成された2つの凸部84は、支持体20に形成された貫通孔22(の拡径部23)の内周面に形成された2つの凹部(スリット)24と嵌合している。これにより、支持体20に対する上側キャップ部材80の相対回転(Z軸を中心とした回転)が規制されている。
また、図5および図8に示すように、上側キャップ部材80には、Z軸方向に延びる複数の(4つの)貫通孔82が形成されている。各貫通孔82のZ軸方向に直交する断面の形状は、略円形である。上側キャップ部材80に形成された貫通孔82内には、絶縁管40の下端部が収容されている。図8に示すように、上側キャップ部材80に形成された貫通孔82の内径R4は、絶縁管40の下端部の外径R3と略同一となっている。そのため、上側キャップ部材80に対する絶縁管40(特に、絶縁管40の下端部)の面方向(Z軸方向に直交する方向)への相対移動が規制され、その結果、上側キャップ部材80を支持する支持体20に対する絶縁管40の面方向への相対移動が規制されている。
図2、図6および図8に示すように、支持体20に形成された貫通孔22内における拡径部23の位置(すなわち、下端に近い位置)であって、上側キャップ部材80よりも下側の位置には、キャップ部材(以下、上述した上側キャップ部材80と区別するために「下側キャップ部材90」という)が収容されている。下側キャップ部材90は、Z軸方向視で略円形の板状部材であり、例えばAlN(窒化アルミニウム)やAl2O3(アルミナ)を主成分とするセラミックス等の絶縁体により構成されている。下側キャップ部材90は、リテーナとも呼ばれる。下側キャップ部材90は、特許請求の範囲におけるキャップ部材に相当する。
図8に示すように、下側キャップ部材90の外径は、支持体20に形成された貫通孔22における拡径部23の内径と略同一となっている。そのため、下側キャップ部材90は、支持体20に対する面方向への相対移動が規制されるように、支持体20に支持された状態となっている。なお、例えば無機系の接着剤により、下側キャップ部材90の外周面と支持体20に形成された貫通孔22の拡径部23の内周面とが接合されていてもよい。また、本実施形態では、Z軸方向において、下側キャップ部材90の上面が、上側キャップ部材80の下面に当接しており、これにより、下側キャップ部材90の上側への移動が規制されている。
また、図6に示すように、下側キャップ部材90の外周面には、面方向(径方向)に突出する2つの凸部94が形成されている。下側キャップ部材90に形成された2つの凸部94は、支持体20に形成された貫通孔22(の拡径部23)の内周面に形成された上述の2つの凹部(スリット)24と嵌合している。これにより、支持体20に対する下側キャップ部材90の相対回転(Z軸を中心とした回転)が規制されている。
また、図6および図8に示すように、下側キャップ部材90には、Z軸方向に延びる複数の(4つの)貫通孔92が形成されている。各貫通孔92のZ軸方向に直交する断面の形状は、非円形である。より具体的には、図6における一部拡大図に示すように、各貫通孔92のZ軸方向に直交する断面の形状は、略D字形状(すなわち、円を、該円の中心点を通らない直線により2つの部分に分割したときの大きい方の部分の形状)である。下側キャップ部材90に形成された貫通孔92内には、電極端子ユニット70の一部分(以下、「第2の部分P2」という)が収容されている。本実施形態では、電極端子ユニット70の第2の部分P2は、電極端子ユニット70の内、上述した第1の部分P1(絶縁管40に形成された貫通孔42内に収容された部分)の下側に隣接する部分である。すなわち、電極端子ユニット70の第2の部分P2は、第2の柱状部材72における径が縮小された部分の一部分である。電極端子ユニット70における第2の部分P2のZ軸方向に直交する断面の形状は、下側キャップ部材90に形成された貫通孔92の断面形状と略同一となっている。すなわち、電極端子ユニット70における第2の部分P2の断面形状は、非円形であり、より具体的には、略D字形状である。下側キャップ部材90と電極端子ユニット70の第2の部分P2とがこのような構成であるため、電極端子ユニット70における第2の部分P2は、下側キャップ部材90に対して、Z軸方向に平行な軸を中心として相対回転(Z軸を中心とした回転)することが規制されている。
なお、電極端子ユニット70の第2の部分P2が、下側キャップ部材90に対して、Z軸方向に平行な軸を中心として相対回転することが規制されていることは、例えば、以下のように表現することもできる。すなわち、図6に示すように、本実施形態の加熱装置100では、電極端子ユニット70の第2の部分P2のZ軸方向に直交する断面(XY断面)において、最大径R5を取る部分(線分)の一端を、下側キャップ部材90の貫通孔92の内周面に接触させた状態において、該一端を始点とする貫通孔92の径R6として、第2の部分P2の最大径R5より小さい径R6が存在している。この条件が満たされていると、第2の部分P2が下側キャップ部材90に対して相対回転することが規制されていると言える。
図2および図8に示すように、電極端子ユニット70の下端側の一部分(以下、「第3の部分P3」という)には、雄ネジ79が形成されており、この第3の部分P3にナット68が螺合している。ナット68の上面は、下側キャップ部材90の下面に当接している。このように、電極端子ユニット70は、ネジ止めにより、下側キャップ部材90に対するZ軸方向への移動が規制されるように、下側キャップ部材90に固定されている。
A−2.加熱装置100の製造方法:
本実施形態の加熱装置100の製造方法は、例えば以下の通りである。初めに、保持体10と支持体20とを作製する。
保持体10の作製方法は、例えば以下の通りである。まず、窒化アルミニウム粉末100重量部に、酸化イットリウム(Y2O3)粉末1重量部と、アクリル系バインダ20重量部と、適量の分散剤および可塑剤とを加えた混合物に、トルエン等の有機溶剤を加え、ボールミルにて混合し、グリーンシート用スラリーを作製する。このグリーンシート用スラリーをキャスティング装置でシート状に成形した後に乾燥させ、グリーンシートを複数枚作製する。
また、窒化アルミニウム粉末、アクリル系バインダ、テルピネオール等の有機溶剤の混合物に、タングステンやモリブデン等の導電性粉末を添加して混練することにより、メタライズペーストを作製する。このメタライズペーストを例えばスクリーン印刷装置を用いて印刷することにより、特定のグリーンシートに、後に抵抗発熱体50や受電電極54等となる未焼結導体層を形成する。また、グリーンシートにあらかじめビア孔を設けた状態で印刷することにより、後にビア導体52となる未焼結導体部を形成する。
次に、これらのグリーンシートを複数枚(例えば20枚)熱圧着し、必要に応じて外周を切断して、グリーンシート積層体を作製する。このグリーンシート積層体をマシニングによって切削加工して略円板状の成形体を作製し、この成形体を脱脂し、さらにこの脱脂体を焼成して焼成体を作製する。この焼成体の表面を研磨加工する。以上の工程により、保持体10が作製される。
また、支持体20の作製方法、例えば以下の通りである。まず、窒化アルミニウム粉末100重量部に、酸化イットリウム粉末1重量部と、PVAバインダ3重量部と、適量の分散剤および可塑剤とを加えた混合物に、メタノール等の有機溶剤を加え、ボールミルにて混合し、スラリーを得る。このスラリーをスプレードライヤーにて顆粒化し、原料粉末を作製する。次に、貫通孔22に対応する中子が配置されたゴム型に原料粉末を充填し、冷間静水圧プレスして成形体を得る。得られた成形体を脱脂し、さらにこの脱脂体を焼成する。以上の工程により、支持体20が作製される。
次に、保持体10と支持体20とを接合する。保持体10の裏面S2および支持体20の上面S3に対して必要によりラッピング加工を行った後、保持体10の裏面S2と支持体20の上面S3との少なくとも一方に、例えば希土類や有機溶剤等を混合してペースト状にした公知の接合剤を均一に塗布した後、脱脂処理する。次いで、保持体10の裏面S2と支持体20の上面S3とを重ね合わせ、荷重を掛けながら常圧焼成を行うことにより、保持体10と支持体20とを接合する。
保持体10と支持体20との接合の後、支持体20の各貫通孔22内に絶縁管40を挿入する。このとき、絶縁管40の先端部を、保持体10の裏面S2に形成された第2の凹部12に嵌合させることにより、絶縁管40を面方向への移動が規制された状態(すなわち、面方向に位置決めされた状態)とする。この状態で、各絶縁管40に形成された貫通孔42内に電極端子ユニット70(の第1の部分P1)を挿入し、その後、上側キャップ部材80を設置する。このとき、上側キャップ部材80に形成された各貫通孔82に、絶縁管40の下端部が挿入されるようにする。次に、下側キャップ部材90を設置する。このとき、下側キャップ部材90に形成された各貫通孔92に、電極端子ユニット70(の第2の部分P2)が挿入されるようにする。その後、電極端子ユニット70(具体的には、第1の柱状部材71)の上端部を受電電極54に、例えば金ろう材によりろう付けする。
その後、必要により、上側キャップ部材80および下側キャップ部材90を、無機系の接着剤によって支持体20に接着する。最後に、電極端子ユニット70(の第3の部分P3)に形成された雄ネジ79にナット68を螺合する。以上の製造方法により、上述した構成の加熱装置100が製造される。
A−3.実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の加熱装置100は、保持体10と支持体20とを備える。保持体10は、Z軸方向に略直交する略平面状の保持面S1と、保持面S1とは反対側の裏面S2とを有する板状の部材である。支持体20は、保持体10の裏面S2に接合され、Z軸方向に延びる貫通孔22が形成された管状の部材である。また、保持体10の内部には、抵抗発熱体50が配置されている。Z軸方向視で、保持体10の裏面S2における支持体20の貫通孔22に重なる位置には、抵抗発熱体50に電気的に接続された受電電極54が配置されている。また、本実施形態の加熱装置100は、少なくとも一部分が支持体20の貫通孔22内に配置された電極端子ユニット70を備える。電極端子ユニット70は、金属ろう材56を介して受電電極54に接合されている。また、本実施形態の加熱装置100は、さらに、支持体20に対するZ軸方向への相対移動が規制されるように支持体20に支持された下側キャップ部材90を備える。下側キャップ部材90には、Z軸方向に延びる貫通孔92が形成されている。電極端子ユニット70は、電極端子ユニット70の一部分(第2の部分P2)が下側キャップ部材90の貫通孔92内に収容された状態で、電極端子ユニット70に対するZ軸方向への移動が規制されるように下側キャップ部材90に固定されている。本実施形態の加熱装置100は、このような構成であるため、以下に説明するように、電極端子ユニット70と受電電極54との接合部が損傷することを抑制することができる、という効果を奏する。
加熱装置100では、電極端子ユニット70が金属ろう材56を介して受電電極54と接合されているため、例えば加熱装置100のろう付け後の組み立ての際や、加熱装置100を使用するためのコネクタの接続の際に、電極端子ユニット70に対してZ軸方向の荷重が作用すると、電極端子ユニット70と受電電極54との接合部にZ軸方向の応力(引張応力または圧縮応力)が集中し、この応力集中を原因として該接合部が破損するおそれがある。
しかしながら、本実施形態の加熱装置100は、支持体20に対するZ軸方向への相対移動が規制されるように支持体20に支持された下側キャップ部材90を備える。支持体20は保持体10と接合されているため、下側キャップ部材90は、保持体10に対するZ軸方向への相対移動が規制されていると言える。また、下側キャップ部材90には、Z軸方向に延びる貫通孔92が形成されており、電極端子ユニット70は、その一部分(第2の部分P2)が下側キャップ部材90の貫通孔92内に収容された状態で、下側キャップ部材90に対するZ軸方向への移動が規制されるように下側キャップ部材90に固定されている。そのため、本実施形態他の加熱装置100では、下側キャップ部材90の存在により、保持体10に対する電極端子ユニット70のZ軸方向への相対移動が規制される。換言すれば、保持体10の裏面S2に形成された受電電極54に対する電極端子ユニット70のZ軸方向への相対移動が規制される。従って、本実施形態の加熱装置100によれば、電極端子ユニット70に対してZ軸方向の荷重が作用しても、下側キャップ部材90の存在によって受電電極54に対する電極端子ユニット70のZ軸方向への相対移動が規制されるために、電極端子ユニット70と受電電極54との接合部にZ軸方向の応力(引張応力または圧縮応力)が集中することを抑制することができ、電極端子ユニット70と受電電極54との接合部が破損することを抑制することができる。
また、本実施形態の加熱装置100では、電極端子ユニット70は、ネジ止めにより、下側キャップ部材90に対するZ軸方向への移動が規制されるように下側キャップ部材90に固定されている。そのため、本実施形態の加熱装置100によれば、容易にかつ強固に、電極端子ユニット70を下側キャップ部材90に固定することができる。
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態における加熱装置100の構成は、あくまで例示であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態において、必ずしも加熱装置100に、面方向において絶縁管40と係合している段差部(第2の凹部12)が形成されている必要はない。
また、上記実施形態では、電極端子ユニット70が、第1の柱状部材71と第2の柱状部材72と金属撚り線73との3つの部材から構成されているが、電極端子ユニット70が、1つまたは2つの部材から構成されるとしてもよいし、4つ以上の部材から構成されるとしてもよい。
また、上記実施形態では、電極端子ユニット70の下端部が、支持体20の貫通孔22や絶縁管40の貫通孔42から外に突出しているが、電極端子ユニット70の全体が、支持体20の貫通孔22や絶縁管40の貫通孔42内に収容されるとしてもよい。また、上記実施形態では、加熱装置100が絶縁管40を備えているが、加熱装置100が絶縁管40を備えないとしてもよい。この場合において、加熱装置100が備える各電極端子ユニット70は、例えば、支持体20に形成された個別の貫通孔内に収容されるとしてもよい。
また、上記実施形態における下側キャップ部材90に形成された貫通孔92のZ軸方向に直交する断面(XY断面)の形状と、電極端子ユニット70における下側キャップ部材90の貫通孔92内に収容された部分である第2の部分P2のZ軸方向に直交する断面(XY断面)の形状とは、あくまで一例である。これらの形状は、下側キャップ部材90の貫通孔92のXY断面の形状が非円形であり、電極端子ユニット70の第2の部分P2のXY断面の形状が、非円形であり、かつ、第2の部分P2が下側キャップ部材90に対してZ軸方向に平行な軸を中心として相対回転することが規制される形状である限りにおいて、任意に変形可能である。例えば、下側キャップ部材90の貫通孔92のXY断面の形状が、五角形や六角形等の多角形であり、電極端子ユニット70の第2の部分P2のXY断面の形状が、貫通孔92の形状と略同一の多角形であるとしてもよい。また、下側キャップ部材90の貫通孔92のXY断面の形状と、電極端子ユニット70の第2の部分P2のXY断面の形状とが必ずしも略同一である必要はない。
また、上記実施形態では、上側キャップ部材80および下側キャップ部材90が、支持体20の貫通孔22内に収容されているが、上側キャップ部材80と下側キャップ部材90との少なくとも一方が、支持体20の貫通孔22内ではなく、貫通孔22の外に配置されるとしてもよい。このような構成であっても、上側キャップ部材80および/または下側キャップ部材90を、例えば接着剤や接合部材等を用いて支持体20の他の部分(例えば、支持体20の下面S4)に固定することは可能である。
また、上記実施形態では、上側キャップ部材80の外周面に凸部84が形成されており、該凸部84が、支持体20の貫通孔22の内周面に形成された凹部24と嵌合しているが、反対に、上側キャップ部材80の外周面に凹部が形成されており、該凹部が、支持体20の貫通孔22の内周面に形成された凸部と嵌合するとしてもよい。同様に、上記実施形態では、下側キャップ部材90の外周面に凸部94が形成されており、該凸部94が、支持体20の貫通孔22の内周面に形成された凹部24と嵌合しているが、反対に、下側キャップ部材90の外周面に凹部が形成されており、該凹部が、支持体20の貫通孔22の内周面に形成された凸部と嵌合するとしてもよい。なお、各部材に形成される凸部または凹部の個数は、任意に変更可能である。また、必ずしも、各部材にこれらの凸部または凹部が形成されている必要はない。
また、上記実施形態では、加熱装置100が、上側キャップ部材80と下側キャップ部材90とを備えているが、加熱装置100が、上側キャップ部材80と下側キャップ部材90との少なくとも一方を備えないとしてもよい。また、上記実施形態では、電極端子ユニット70がネジ止めにより、下側キャップ部材90に対するZ軸方向への移動が規制されるように下側キャップ部材90に固定されているが、電極端子ユニット70は、ネジ止めに限られず、他の手段(例えば、固定用部材を用いた手段)により固定されていてもよい。
また、上記実施形態の加熱装置100を構成する各部材の形状や個数は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、加熱装置100に、電極端子ユニット70と電極端子ユニット70に接合される受電電極54との組合せが、4つ設けられているが、加熱装置100に設けられる該組合せの個数は任意に設定可能である。なお、上記実施形態では、該組合せのすべてが同様の構成となっているが、該組合せの少なくとも1つが上記実施形態の構成となっていれば、残りの組合せについては他の構成となっていてもよい。
また、上記実施形態の加熱装置100が、さらに、熱電対や白金抵抗体等の測温体や、高周波電極等の他の構成部材を備えるとしてもよい。
また、上記実施形態における加熱装置100を構成する各部材の形成材料は、あくまで一例であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。例えば、上記実施形態において、保持体10および支持体20は、窒化アルミニウムまたはアルミナを主成分とするセラミックス製であるとしてもよいし、他のセラミックス製であるとしてもよいし、セラミックス以外の絶縁材料製であるとしてもよい。
また、上記実施形態における加熱装置100の製造方法はあくまで一例であり、種々変形可能である。