以下、本発明の各実施形態に係る建設機械の一態様として、油圧ショベルについて説明する。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る油圧ショベル1について、図1〜8を参照して説明する。
(油圧ショベル1の構成)
まず、油圧ショベル1の全体構成及びその動作について、図1を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧ショベル1の一構成例を示す外観側面図である。
油圧ショベル1は、路面を走行するための下部走行体11と、下部走行体11の上方に旋回装置12を介して旋回可能に取り付けられた上部旋回体13と、上部旋回体13の前部において俯仰動可能に連結されて掘削等の作業を行うフロント作業機14と、を備えている。
下部走行体11は、その左右(車幅方向の両端)にクローラ111がそれぞれ配置されている。左右のクローラ111はそれぞれ、下部走行体11の左右それぞれに設けられた走行モータ112の駆動力によって独立して回転駆動する。これにより、油圧ショベル1は、左右それぞれのクローラ111を地面に接触させた状態で前後方向に走行する。なお、図1では、クローラ111及び走行モータ112はそれぞれ、左右のうちの一方側のみを図示している。
上部旋回体13は、オペレータが搭乗する運転室131と、フロント作業機14とのバランスを保つためのカウンタウェイト132と、エンジンや油圧ポンプ等の機器類を内部に収容する機械室133と、を備えている。上部旋回体13において、運転室131は前部に、カウンタウェイト132は後部に、機械室133は運転室131とカウンタウェイト132との間に、それぞれ配置されている。上部旋回体13は、旋回装置12内に設けられた旋回モータ120(図2参照)の駆動力によって下部走行体11に対して旋回する。
フロント作業機14は、基端部が上部旋回体13に回動可能に取り付けられて、上部旋回体13に対して上下方向に回動(俯仰)するブーム41と、ブーム41の先端部に回動可能に取り付けられてブーム41に対して前後方向に回動するアーム42と、アーム42の先端部に回動可能に取り付けられてアーム42に対して前後方向に回動するバケット43と、を備えている。
バケット43は、例えば土砂等を掘削したり、均したり、あるいは地面を締め固めたりするものである。このバケット43は、例えば、木材や岩石、廃棄物等を掴むグラップルや、岩盤を掘削するブレーカ等のアタッチメントに変更することが可能である。これにより、油圧ショベル1は、作業内容に適したアタッチメントを用いて、掘削や破砕等を含む様々な作業を行うことができる。
また、フロント作業機14は、上部旋回体13とブーム41とを連結するブームシリンダ410と、ブーム41とアーム42とを連結するアームシリンダ420と、アーム42とバケット43とを連結するバケットシリンダ430と、これらの各油圧シリンダ410,420,430へ作動油を導くための複数の配管(不図示)と、を有している。
ブームシリンダ410は、ロッド410Cが伸縮することによってブーム41を上部旋回体13に対して回動させる。アームシリンダ420は、ロッド420Cが伸縮することによってアーム42をブーム41に対して回動させる。バケットシリンダ430は、ロッド430Cが伸縮することによってバケット43をアーム42に対して回動させる。
これらブームシリンダ410、アームシリンダ420、及びバケットシリンダ430、ならびに走行モータ112及び旋回モータ120はそれぞれ、油圧ポンプから吐出された作動油によって駆動される油圧アクチュエータの一態様である。なお、以下の説明において、「ブームシリンダ410、アームシリンダ420、バケットシリンダ430、走行モータ112、及び旋回モータ120」を「各油圧アクチュエータ410,420,430,112,120」とする場合がある。
(油圧回路5の構成)
次に、油圧ショベル1における油圧回路5の構成について、図2を参照して説明する。
図2は、油圧ショベル1に搭載された油圧回路5の一構成例を示す図である。
ブームシリンダ410、アームシリンダ420、及びバケットシリンダ430は、いずれも油圧シリンダとして同様の構成を有しているため、以下ではブームシリンダ410を例に挙げて説明し、アームシリンダ420及びバケットシリンダ430についてはその説明を割愛する。同様に、走行モータ112及び旋回モータ120は、いずれも油圧モータとして同様の構成を有しているため、以下では旋回モータ120を例に挙げて説明し、走行モータ112についてはその説明を割愛する。したがって、図2では、ブームシリンダ410及び旋回モータ120に係る回路構成のみを図示しており、その他の油圧アクチュエータや方向制御弁、操作装置等の図示を省略している。
油圧回路5は、油圧ポンプであるメインポンプ51及びパイロットポンプ52と、作動油を貯蔵する作動油タンク53と、旋回モータ120と、旋回モータ120に係る作動油の流れを制御する第1方向制御弁54と、第1操作レバー131Aの操作量に応じたパイロット圧を生成する第1パイロット弁540と、ブームシリンダ410と、ブームシリンダ410に係る作動油の流れを制御する第2方向制御弁55と、第2操作レバー131Bの操作量に応じたパイロット圧を生成する第2パイロット弁550と、メインポンプ51の吐出圧の上限を規定するメインリリーフ弁56と、パイロットポンプ52の吐出圧の上限を規定するパイロットリリーフ弁57と、第2方向制御弁55と作動油タンク53との間の管路を開閉する開閉弁58と、を含んで構成されている。
メインポンプ51は、エンジン50によって駆動される可変容量型の油圧ポンプである。このメインポンプ51は、作動油タンク53から作動油を吸入し、第1方向制御弁54及び第2方向制御弁55を介して旋回モータ120及びブームシリンダ410にそれぞれ作動油を供給する。なお、本実施形態では、メインポンプ51には可変容量型の油圧ポンプが用いられているが、これに限らず、固定容量型の油圧ポンプを用いてもよい。
パイロットポンプ52は、エンジン50によって駆動される固定容量型の油圧ポンプである。このパイロットポンプ52は、作動油タンク53から作動油を吸入し、第1方向制御弁54の一対の受圧室54A,54B及び第2方向制御弁55の一対の受圧室55A,55Bにそれぞれ供給する。
第1方向制御弁54は、センターバイパス型の方向制御弁であり、旋回モータ120を正回転させる第1切換位置54Lと、メインポンプ51と作動油タンク53とを連通させて作動油を作動油タンク53へ直接戻す中立位置54Nと、旋回モータ120を逆回転させる第2切換位置54Rと、を有している。
第1方向制御弁54は、一対の受圧室54A,54Bにそれぞれ作用するパイロット圧に応じて内部のスプールがストロークすることにより、第1切換位置54L、中立位置54N、及び第2切換位置54Rのいずれかに切り換わる構成になっている。これにより、メインポンプ51から旋回モータ120へ供給される作動油の流量及び方向(流れ)が制御される。
第1切換位置54Lは、旋回モータ120の第1油室120Aとメインポンプ51とを連通させ、かつ旋回モータ120の第2油室120Bと作動油タンク53とを連通させる。これにより、メインポンプ51から旋回モータ120の第1油室120Aに導かれた作動油は第2油室120Bから作動油タンク53へ流出し、旋回モータ120は正回転する。
第2切換位置54Rは、旋回モータ120の第2油室120Bとメインポンプ51とを連通させ、かつ旋回モータ120の第1油室120Aと作動油タンク53とを連通させる。これにより、メインポンプ51から旋回モータ120の第2油室120Bに導かれた作動油は第1油室120Aから作動油タンク53へ流出し、旋回モータ120は逆回転する。
第2方向制御弁55は、第1方向制御弁54と同様にセンターバイパス型の方向制御弁であり、ブームシリンダ410のロッド410Cを縮ませる第1切換位置55Lと、メインポンプ51と作動油タンク53とを連通させて作動油を作動油タンク53へ直接戻す中立位置55Nと、ブームシリンダ410のロッド410Cを伸長させる第2切換位置55Rと、を有している。
第2方向制御弁55は、第1方向制御弁54と同様に、一対の受圧室55A,55Bにそれぞれ作用するパイロット圧に応じて内部のスプールがストロークすることにより、第1切換位置55L、中立位置55N、及び第2切換位置55Rのいずれかに切り換わる構成になっている。これにより、メインポンプ51からブームシリンダ410へ供給される作動油の流量及び方向(流れ)が制御される。
第1切換位置55Lは、ブームシリンダ410のロッド室410Aとメインポンプ51とを連通させ、かつブームシリンダ410のボトム室410Bと作動油タンク53とを連通させる。これにより、作動油は、メインポンプ51からブームシリンダ410のロッド室410Aに供給されると共に、ブームシリンダ410のボトム室410Bから作動油タンク53へ流出する。
第2切換位置55Rは、ブームシリンダ410のボトム室410Bとメインポンプ51とを連通させ、かつブームシリンダ410のロッド室410Aと作動油タンク53とを連通させる。これにより、作動油は、メインポンプ51からブームシリンダ410のボトム室410Bに供給されると共に、ブームシリンダ410のロッド室410Aから作動油タンク53へ流出する。
第1パイロット弁540は、第1操作レバー131Aを一方側(図2における左側)へ操作した場合にパイロット圧X1を生成する。そして、生成されたパイロット圧X1は、第1方向制御弁54の一方の受圧室54A(図2における右側の受圧室)に作用する。また、第1パイロット弁540は、第1操作レバー131Aを他方側(図2における右側)へ操作した場合にパイロット圧Y1を生成する。そして、生成されたパイロット圧Y1は、第1方向制御弁54の他方の受圧室54B(図2における左側の受圧室)に作用する。
第2パイロット弁550は、第2操作レバー131Bを一方側(図2における左側)へ操作した場合にパイロット圧X2を生成する。そして、生成されたパイロット圧X2は、第2方向制御弁55の一方の受圧室55A(図2における右側の受圧室)に作用する。また、第2パイロット弁550は、第2操作レバー131Bを他方側(図2における右側)へ操作した場合にパイロット圧Y2を生成する。そして、生成されたパイロット圧Y2は、第2方向制御弁55の他方の受圧室(図2における左側の受圧室)に作用する。
ここで、第1操作レバー131A及び第2操作レバー131Bはそれぞれ、油圧ショベル1を操作するための操作装置の一態様であり、運転室131(図1参照)に設けられている。第1操作レバー131Aは、上部旋回体13の旋回操作及びアーム42の操作を行うための操作レバーである。第2操作レバー131Bは、ブーム41の操作及びバケット43の操作を行うための操作レバーである。図2では図示が省略されているが、その他の操作装置として、運転室131には、車体を走行させるための走行用操作装置131C(図4参照)が設けられている。
開閉弁58は、本実施形態ではいわゆるオン・オフ弁であり、後述するコントローラ90(図3参照)からの信号に基づいて全開位置58L(オン)又は全閉位置58R(オフ)に切り換わる。なお、この開閉弁58は、必ずしもオン・オフ弁である必要はなく、例えば指令電流の大きさに比例して開度が調整される電磁比例弁であってもよい。開閉弁58として電磁比例弁を用いる場合については、第2実施形態において具体的に説明する。
図2において、第1方向制御弁54が中立位置54N、かつ第2方向制御弁55が中立位置55Nであって、開閉弁58が全開位置58Lである場合、メインポンプ51から吐出した作動油は作動油タンク53に流出する。一方、第1方向制御弁54が中立位置54N、かつ第2方向制御弁55が中立位置55Nであって、開閉弁58が全閉位置58Rである場合、メインポンプ51から吐出した作動油は作動油タンク53に流出することができず、メインポンプ51の吐出圧はメインリリーフ弁56の設定圧力まで上昇し、エンジン50に掛かる負荷が増大する。
実際には、開閉弁58は、各油圧アクチュエータ410,420,430,112,120に係る方向制御弁がいずれも中立位置にある場合(第1操作レバー131A、第2操作レバー131B、及び走行用操作装置131Cにおける操作位置がいずれも中立位置にある場合)、すなわち各油圧アクチュエータ410,420,430,112,120が動作しない状態において、全開位置58Lと全閉位置58Rとを切り換えることによってエンジン50に掛かる油圧負荷を調整している(負荷掛け処理)。
ここで、油圧ショベル1では、エンジン50の排気ガスに含まれる粒子状物質(以下、「PM」とする)をパティキュレートフィルタ(以下、「DPF」とする)で捕集して排気ガスを浄化し、車体の外部に排出されるPM量を低減する排気ガス浄化システム10が適用されている。この排気ガス浄化システム10では、DPFを再生させるための再生制御処理と、エンジン50に油圧負荷を掛けて再生制御処理を補助する負荷掛け処理と、が行われる。
(排気ガス浄化システム10の全体構成)
次に、排気ガス浄化システム10の全体構成について、図3を参照して説明する。
図3は、油圧ショベル1に搭載された排気ガス浄化システム10の一構成例を示す図である。
油圧ショベル1は、エンジン50から排出された排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置60と、燃料を噴射する燃料噴射装置70と、排気ガス浄化装置60における圧力を検出する第1圧力センサ81A及び第2圧力センサ81Bと、排気ガス浄化装置60内の排気ガスの温度を検出する温度センサ82と、前述した開閉弁58と、燃料噴射装置70及び開閉弁58をそれぞれ制御するコントローラ90と、を有しており、これらの機器で排気ガス浄化システム10が構成されている。
排気ガス浄化装置60は、エンジン50の排気管500に設けられており、エンジン50から排出された排気ガスに含まれるPMを捕集するDPFとしてのフィルタ600と、フィルタ600の上流側(エンジン50側)に配置された触媒(不図示)と、を含む。なお、本実施形態では、図3に示すように、排気ガス浄化装置60には、2つのフィルタ600A,600Bが設けられているが、フィルタ600の数については特に制限はない。
燃料噴射装置70は、排気管500においてエンジン50と排気ガス浄化装置60との間に設けられており、燃料を噴射することにより排気ガスの温度を上昇させてフィルタ600に堆積したPMを焼却除去し、フィルタ600を再生する(再生制御処理)。
第1圧力センサ81Aは、フィルタ600の上流に設けられ、フィルタ600の上流側における圧力を検出する。第2圧力センサ81Bは、フィルタ600の下流に設けられ、フィルタ600の下流側における圧力を検出する。なお、後述するコントローラ90では、第1圧力センサ81Aで検出された圧力及び第2圧力センサ81Bで検出された圧力に基づき、フィルタ600の上流側と下流側との差圧(前後差圧)が演算される。本実施形態では、図3に示すように、2つのフィルタ600A,600Bのうち下流側に配置されたフィルタ600Bの上流に第1圧力センサ81Aが、下流に第2圧力センサ81Bが、それぞれ設けられている。
温度センサ82は、本実施形態では、図3に示すように、2つのフィルタ600A,600Bの間(上流側に配置されたフィルタ600Aと下流側に配置されたフィルタ600Bとの間)に配置されている。
開閉弁58は、前述したように、開弁と閉弁とを切り換えてエンジン50に掛かる油圧負荷を調整することによって、排気ガスの温度をより上昇させる(負荷掛け処理)。このように、排気ガス浄化システム10では、燃料噴射装置70による燃料の噴射に加えて開閉弁58の開口面積を調整することで、フィルタ600に堆積したPMを効率よく焼却除去している。
コントローラ90は、CPU、RAM、ROM、入力I/F、及び出力I/Fがバスを介して互いに接続されて構成される。そして、第1圧力センサ81A、第2圧力センサ81B、及び温度センサ82といった検出器や、第1操作レバー131A、第2操作レバー131B、及び走行用操作装置131Cといった操作装置等が入力I/Fに接続され、燃料噴射装置70や開閉弁58等が出力I/Fに接続されている。
このようなハードウェア構成において、ROMや光学ディスク等の記録媒体に格納された演算プログラム(ソフトウェア)をCPUが読み出してRAM上に展開し、展開された演算プログラムを実行することにより、演算プログラムとハードウェアとが協働して、コントローラ90の機能を実現する。
なお、本実施形態では、コントローラ90をソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成されるコンピュータとして説明しているが、これに限らず、他のコンピュータの構成の一例として、油圧ショベル1の側で実行される演算プログラムの機能を実現する集積回路を用いてもよい。
(コントローラ90の機能)
次に、コントローラ90の機能構成、及びコントローラ90内で実行される排気ガス浄化処理について、図4〜8を参照して説明する。
図4は、コントローラ90周辺の接続構成及びコントローラ90が有する機能構成を示す図である。
図4に示すように、コントローラ90は、データ取得部91と、比較判定部92と、閾値記憶部93と、指令部94と、を含む。
データ取得部91は、第1操作レバー131Aの操作位置、第2操作レバー131Bの操作位置、走行用操作装置131Cの操作位置、第1圧力センサ81Aで検出された圧力センサ値P1、第2圧力センサ81Bで検出された圧力センサ値P2、及び温度センサ82で検出された温度センサ値Tに関するデータをそれぞれ取得する。
比較判定部92は、再生要否判定部92Aと、温度比較部92Bと、を含む。再生要否判定部92Aは、各油圧アクチュエータ410,420,430,112,120に係る方向制御弁がいずれも中立位置(例えば、図2では、第1方向制御弁54が中立位置54Nであり、かつ第2方向制御弁55が中立位置55N)であること、及びデータ取得部91で取得された圧力センサ値P1,P2に基づいて、フィルタ600の再生が必要か否かを判定する。
具体的には、再生要否判定部92Aは、データ取得部91で取得された第1操作レバー131Aの操作位置、第2操作レバー131Bの操作位置、及び走行用操作装置131Cの操作位置に基づいて、各方向制御弁がいずれも中立位置であるか否かを判定すると共に、データ取得部91で取得された圧力センサ値P1,P2に基づいて演算された差圧(P1−P2)が所定の差圧閾値Pth(以下、単に「差圧閾値Pth」とする)よりも大きいか否かを判定する。
温度比較部92Bは、データ取得部91で取得された温度センサ値Tに基づいて、温度センサ値Tと所定の第1温度閾値T1(以下、単に「第1温度閾値T1」とする)とを比較すると共に、温度センサ値Tと所定の第2温度閾値T2(以下、単に「第2温度閾値T2」とする)とを比較する。
ここで、「第1温度閾値T1」は、燃料噴射装置70による燃料の噴射を開始する温度に対応する第1温度のことである。「第2温度閾値T2」は、予め設定された第1温度(第1温度閾値T1)に比べて高く設定された温度であり、PMを捕集するDPF(フィルタ600)の劣化が最小限に抑制されることが事前に確認された負荷掛け時の最高温度(図8(b)参照)である。この「第2温度閾値T2」は、第1温度に比べて高く設定された「第2温度」の一態様である。
閾値記憶部93は、第1温度閾値T1、第2温度閾値T2、及びフィルタ600の前後差圧に関する閾値である差圧閾値Pth等の各種の閾値を記憶している。すなわち、閾値記憶部93は、第1温度及び第2温度を閾値としてそれぞれ記憶している。
指令部94は、燃料噴射装置70に対して燃料の噴射又は噴射停止を指令する燃料噴射指令部94Aと、開閉弁58に対して開閉動作を指令する弁指令部94Bと、を含む。
燃料噴射指令部94Aは、再生要否判定部92Aにおいてフィルタ600の再生が必要であると判定されて再生フラグがONになると共に、温度比較部92Bにおいて温度センサ値Tが第1温度閾値T1以上であって第2温度閾値T2以下(T1≦T≦T2)であると判定されたとき、燃料噴射装置70に対して燃料の噴射を指令する。そして、継続して再生フラグがONの状態であって、かつ温度比較部92Bにおいて温度センサ値Tが第1温度閾値T1よりも低い(T<T1)と判定されたとき、燃料噴射装置70に対して燃料噴射の停止を指令する。
弁指令部94Bは、再生要否判定部92Aによりフィルタ600の再生が必要であると判定された場合に、開閉弁58を閉じる(全閉位置58Rへの切り換え)指令を出力する。そして、開閉弁58を閉じる指令が出力されている状態で、温度比較部92Bにより温度センサ値Tが第2温度閾値T2よりも高い(T>T2)と判定された場合に、開閉弁58の開口面積を増大させる(全開位置58Lへの切り換え)指令を出力する。
次に、コントローラ90内で実行される排気ガス浄化処理の流れについて、図5〜8を参照して説明する。
図5は、コントローラ90内で実行される排気ガス浄化処理の全体の流れを示すフローチャートである。図6は、コントローラ90で実行される再生制御処理(ステップS905)の流れを示すフローチャートである。図7は、コントローラ90で実行される負荷掛け処理(ステップS906)の流れを示すフローチャートである。図8(a)は、排気ガスの温度Tと燃料噴射装置70における燃料の噴射との関係を示すグラフであり、図8(b)は、排気ガスの温度Tとメインポンプの吐出圧Paとの関係を示すグラフである。
図5に示すように、コントローラ90では、まず、データ取得部91が、第1操作レバー131Aからの操作信号、第2操作レバー131Bからの操作信号、走行用操作装置131Cからの操作信号、第1圧力センサ81Aからの圧力センサ値P1、及び第2圧力センサ81Bからの圧力センサ値P2をそれぞれ取得する(ステップS901)。
次に、比較判定部92の再生要否判定部92Aは、ステップS901で取得した各操作信号に基づいて、第1操作レバー131A、第2操作レバー131B、及び走行用操作装置131Cがいずれも中立位置であるか否かを判定する(ステップS902)。第1操作レバー131A、第2操作レバー131B、及び走行用操作装置131Cがそれぞれ中立位置であるとき、各パイロット圧は生成されないことから、各油圧アクチュエータ410,420,430,112,120に係る方向制御弁はいずれも中立位置となる。すなわち、再生要否判定部92Aは、ステップS902において、各油圧アクチュエータ410,420,430,112,120に係る方向制御弁がいずれも中立位置であるか否かを判定する。
ステップS902において各方向制御弁が中立位置であると判定された場合(ステップS902/YES)、再生要否判定部92Aは、ステップS901で取得した圧力センサ値P1,P2に基づいて演算された差圧(P1−P2)が差圧閾値Pthよりも大きいか否かを判定する(ステップS903)。
ステップS903において差圧(P1−P2)が差圧閾値Pthよりも大きい(P>Pth)と判定された場合(ステップS903/YES)、すなわちフィルタ600の再生が必要であると判定された場合、コントローラ90は、再生制御処理及び負荷掛け処理を実行するための条件フラグである再生フラグをONにする(ステップS904)。
一方、ステップS902において各方向制御弁のうち少なくとも1つが中立位置でないと判定された場合(ステップS902/NO)、及びステップS903において差圧(P1−P2)が差圧閾値Pth以下である(P≦Pth)と判定された場合(ステップS903/NO)、ステップS901に戻る。
ステップS904において再生フラグがONになると、コントローラ90は、再生制御処理(ステップS905)及び負荷掛け処理(ステップS906)をそれぞれ実行する。
続いて、コントローラ90内で実行される再生制御処理(ステップS905)について、図6及び図8(a)を参照して説明する。
ステップS904において再生フラグがONになると、図6に示すように、データ取得部91は、温度センサ82からの温度センサ値Tを取得する(ステップS951)。次に、比較判定部92の温度比較部92Bが、ステップS951で取得した温度センサ値Tが第1温度閾値T1以上であって、かつ第2温度閾値T2以下であるか否かを比較する(ステップS952)。
ステップS952において温度センサ値Tが第1温度閾値T1以上であって、かつ第2温度閾値T2以下である(T1≦T≦T2)と判定された場合(ステップS952/YES)、指令部94の燃料噴射指令部94Aは、燃料噴射装置70に対して燃料の噴射を指令する(ステップS953)。図8(a)に示すように、燃料噴射装置70は、排気ガスの温度(温度センサ値)Tが第1温度閾値T1に到達した時点で燃料を噴射する。したがって、ステップS952において温度センサ値Tが第1温度閾値T1よりも低い(T<T1)と判定された場合(ステップS952/NO)、ステップS951に戻る。
なお、本実施形態では、温度センサ値Tが第2温度閾値T2よりも大きくなってしまうと後述する負荷掛け処理が終了してしまい(図7参照)、それに伴ってコントローラ90内で実行される処理も終了することから(図5参照)、温度比較部92Bは、ステップS952において、温度センサ値Tが第2温度閾値T2以下であるか否かについても判定している。
ステップS953において燃料噴射指令部94Aが燃料噴射装置70に対して燃料の噴射を指令すると、再生要否判定部92Aは、再生フラグが継続してONの状態にあるか否か、すなわち継続してフィルタ600の再生が必要か否かを判定する(ステップS954)。
ステップS954において再生フラグが継続してONの状態にあると判定された場合(ステップS954/YES)、データ取得部91は、再び温度センサ82からの温度センサ値Tを取得する(ステップS955)。そして、温度比較部92Bは、ステップS955で再び取得した温度センサ値Tが第1温度閾値T1よりも低いか否かを比較する(ステップS956)。
ステップS956において温度センサ値Tが第1温度閾値T1よりも低い(T<T1)と判定された場合(ステップS956/YES)、燃料噴射指令部94Aは、燃料噴射装置70に対して燃料の噴射停止を指令し(ステップS957)、コントローラ90内における再生制御処理(ステップS905)が終了する。
一方、ステップS956において温度センサ値Tが第1温度閾値T1よりも低くないと判定された場合(ステップS956/NO)、ステップS955に戻る。また、ステップS954において再生フラグが継続してONの状態にない場合、すなわち再生フラグがOFFとなりフィルタ600の再生が必要なくなった場合(ステップS954/NO)、ステップS957へ進んで燃料噴射指令部94Aが燃料噴射装置70に対して燃料の噴射停止を指令する。
続いて、コントローラ90内で実行される負荷掛け処理(ステップS906)について、図7及び図8(b)を参照して説明する。
ステップS904において再生フラグがONになると、図7に示すように、指令部94の弁指令部94Bは、開閉弁58に対して閉弁(全閉位置58Rへの切り換え)を指令する(ステップS961)。
これにより、図8(b)に示すように、メインポンプ51の吐出圧がPmaxまで上昇してエンジン50に掛かる油圧負荷が増大し、排気ガス浄化装置60内の排気ガスの温度Tが上昇する。排気ガスの温度Tが第1温度閾値T1に到達したときに、燃料噴射装置70は燃料を噴射する(図8(a)参照)。そして、排気ガスの温度Tは第2温度閾値T2に到達する。本実施形態では、第2温度閾値T2が油圧負荷Pmaxを維持する最高温度である。
次に、再生要否判定部92Aは、再生フラグが継続してONの状態にあるか否か、すなわち継続してフィルタ600の再生が必要か否かを判定する(ステップS962)。ステップS962において再生フラグが継続してONの状態にあると判定された場合(ステップS962/YES)、データ取得部91は温度センサ82からの温度センサ値Tを取得する(ステップS963)。
次に、温度比較部92Bは、ステップS963で取得した温度センサ値Tが第2温度閾値T2よりも大きいか否かを比較する(ステップS964)。ステップS964において温度センサ値Tが第2温度閾値T2よりも大きい(T>T2)と判定された場合(ステップS964/YES)、弁指令部94Bは、開閉弁58に対して開弁(全開位置58Lへの切り換え)を指令し(ステップS965)、コントローラ90内における負荷掛け処理(ステップS906)が終了する。
すなわち、弁指令部94Bは、開閉弁58を閉じる指令(全閉指令)が出力されている(ステップS961)状態で、温度センサ値Tが第2温度閾値T2よりも高い場合に(T>T2)、開閉弁58を全開させる指令を出力する。そして、本実施形態では、第2温度の一態様である第2温度閾値T2は、開閉弁58の開口面積を最小面積(全閉)から最大面積(全開)に切り換える温度である。
一方、ステップS964においてステップS963で取得した温度センサ値Tが第2温度閾値T2よりも大きいと判定されなかった場合(ステップS964/NO)、ステップS963に戻る。
また、ステップS962において再生フラグが継続してONの状態にない場合、すなわち再生フラグがOFFとなりフィルタ600の再生が必要なくなった場合(ステップS962/NO)、ステップS965へ進んで弁指令部94Bが開閉弁58に対して開弁(全開位置58Lへの切り換え)を指令する。
このように、コントローラ90における負荷掛け処理(ステップS906)では、再生フラグがONとなり弁指令部94Bが開閉弁58に対して閉弁を指令し、エンジン50への負荷掛けが開始された後、排気ガス浄化装置60内の排気ガスの温度T(ステップS963で取得した温度センサ値T)が第2温度閾値T2よりも大きくなった場合に(T>T2)、弁指令部94Bが開閉弁58に対し開弁を指令してエンジン50への負荷掛けを停止させる。すなわち、コントローラ90では、排気ガス浄化装置60内の排気ガスの温度条件を負荷掛け処理(ステップS906)の終了条件としている。
仮に、コントローラ90が、所定時間の経過又はフィルタ600の前後差圧を条件として、再生制御処理(ステップS905)を停止させるまで負荷掛け処理(ステップS906)を実行し続けた場合には、排気ガス浄化装置60内の排気ガスの温度が必要以上に上昇し過ぎてしまう。
しかしながら、本実施形態では、排気ガス浄化装置60内の排気ガスの温度が必要以上に上昇する前に負荷掛けを停止させるため、フィルタ600の劣化を抑制することができると共に、不要な燃料の消費を抑制して燃費の向上を図ることが可能となる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る排気ガス浄化システム10Aについて、図9〜11を参照して説明する。なお、図9〜11において、第1実施形態における排気ガス浄化システム10について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図9は、第2実施形態における排気ガス浄化システム10Aの一構成例を示す図である。図10は、第2実施形態におけるコントローラ90A内で実行される負荷掛け処理の流れを示すフローチャートである。図11は、第2実施形態における排気ガスの温度Tとメインポンプ51の吐出圧Paとの関係を示すグラフである。
第1実施形態における排気ガス浄化システム10では、開閉弁58がいわゆるオン・オフ弁であったのに対し、本実施形態における排気ガス浄化システム10Aでは、図9に示すように、開閉弁59が電磁比例弁である。この開閉弁59は、コントローラ90Aの弁指令部94Bからの指令電流の大きさに比例して開口面積が調整される。
したがって、本実施形態におけるコントローラ90Aは、排気ガス浄化装置60内における排気ガスの温度Tが高いほど開閉弁59の開口面積が増大するように開閉弁59に対して開弁の指令をすることにより、エンジン50に掛ける油圧負荷の調整をより細かく行う。
図10に示すように、コントローラ90A内で実行される負荷掛け処理では、まず、再生フラグがONになると(図5のステップS904参照)、弁指令部94Bは、開閉弁59に対して閉弁を指令する(ステップS971)。
なお、ステップS971において、開閉弁59は、必ずしも全開位置59L(開度100%)から全閉位置59R(開度0%)に切り換わる必要はなく、全開位置59Lから予め設定された開度(開口面積)に切り換わってもよい。この場合、予め設定された開度は、排気ガス浄化装置60内の排気ガスの温度Tが第1温度閾値T1に到達する温度(T≧T1)まで上昇するようにエンジン50に負荷が掛かる開度である必要がある。
次に、再生要否判定部92Aは、再生フラグが継続してONの状態にあるか否かを判定する(ステップS972)。ステップS972において再生フラグが継続してONの状態にあると判定された場合(ステップS972/YES)、データ取得部91は温度センサ82からの温度センサ値Tを取得する(ステップS973)。一方、ステップS972において再生フラグが継続してONの状態にない場合(ステップS972/NO)、ステップS977へ進む。
次に、温度比較部92Bは、ステップS973で取得した温度センサ値Tが、所定の第3温度閾値T3(以下、単に「第3温度閾値T3」とする)以上であって、かつ第2温度閾値T2以下であるか否かを比較する(ステップS974)。
ここで、「第3温度閾値T3」は、第1温度閾値T1よりも高く第2温度閾値T2よりも低い温度であり(T1<T3<T2)、PMを捕集するDPF(フィルタ600)の劣化が抑制されることが事前に確認された負荷掛け時の温度であって、開閉弁59の開口面積の増大を開始させるタイミングに対応付けられた温度である。この第3温度閾値T3は、第1温度(第1温度閾値T1)に比べて高く設定された第2温度の他の一態様であり、閾値記憶部93(図4参照)に記憶されている。
ステップS974において温度センサ値Tが第3温度閾値T3以上であり、かつ第2温度閾値T2以下である(T3≦T≦T2)と判定された場合(ステップS974/YES)、弁指令部94Bは、開閉弁59に対して温度センサ値Tに比例した開口面積で開く指令を出力し(ステップS975)、コントローラ90A内における負荷掛け処理が終了する。
具体的には、温度センサ値Tが大きくなるにつれて開閉弁59の開口面積も増大するように、開閉弁59の開口面積が調整される。これにより、図11に示すように、排気ガスの温度Tが、油圧負荷Pmaxを維持する第3温度閾値T3に到達して、第3温度閾値T3以上第2温度閾値T2以下の間においては(T3≦T≦T2)、排気ガス浄化装置60内の排気ガスの温度Tが高くなればなるほどメインポンプ51の吐出圧Paは低くなり、エンジン50に掛かる油圧負荷も小さくなる。したがって、本実施形態では、第2温度の他の一態様である第3温度閾値T3は、開閉弁59の開口面積を最小面積(全閉)から増大させることを開始する温度である。
一方、ステップS974において温度センサ値Tが第3温度閾値T3以上であり、かつ第2温度閾値T2以下でないと判定された場合(ステップS974/NO)、温度比較部92Bは、さらにステップS973で取得した温度センサ値Tが第2温度閾値T2よりも大きいか否かを判定する(ステップS976)。
ステップS976において温度センサ値Tが第2温度閾値T2よりも大きい(T>T2)と判定された場合(ステップS976/YES)、弁指令部94Bは、開閉弁59に対して全開(全開位置58Lへの切り換え)を指令し(ステップS977)、コントローラ90A内における負荷掛け処理が終了する。
一方、ステップS976において温度センサ値Tが第2温度閾値T2よりも大きいと判定されなかった場合、すなわち温度センサ値Tが第3温度よりも小さい(T<T3)と判定された場合(ステップS976/NO)、ステップS973へ戻る。
このように、本実施形態では、開閉弁59に電磁比例弁を用い、排気ガス浄化装置60内における排気ガスの温度Tが第3温度閾値T3(第2温度)に到達すると、コントローラ90が排気ガスの温度Tの大きさに応じて開閉弁59の開口面積を調整するため、エンジン50に掛かる油圧負荷をより細かく調整することができる。これにより、燃料の消費を最小限に抑えることが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
例えば、上記実施形態では、コントローラ90,90Aは、第1操作レバー131A、第2操作レバー131B、及び走行用操作装置131Cからの操作信号に基づいて、各油圧アクチュエータ410,420,430,112,120に係る方向制御弁の中立位置を判定していたが(図5のステップS902参照)、これに限らず、例えばゲートロックレバーからの操作信号に基づいて各方向制御弁が中立位置であることを判定してもよい。
また、上記実施形態では、油圧ショベル1に排気ガス浄化システム10,10Aを適用した場合について説明したが、必ずしも油圧ショベル1である必要はなく、他の建設機械に適用してもよい。