以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
<第1の実施の形態>
〜構成〜
図1は本発明の第1の実施の形態における油圧駆動システムの構成を示す図である。本実施の形態は、本発明をフロントスイング式の油圧ショベルの油圧駆動システムに適用した場合のものである。
図1において、本実施の形態に係わる油圧駆動システムは、エンジン1と、このエンジン1により駆動されるメインポンプとしての可変容量型の油圧ポンプ(以下メインポンプという)2a及び固定容量型のパイロットポンプ2bと、メインポンプ2aから吐出された圧油により駆動される複数のアクチュエータ3a,3b,3c…と、メインポンプ2aの圧油供給油路5に接続されたアクチュエータ3b,3c…に対応する油路8a,8b,8c…に接続され、メインポンプ2aからアクチュエータ3a,3b,3c…に供給される圧油の流量と方向をそれぞれ制御するクローズドセンタ型の複数の流量・方向制御弁6a,6b,6c…と、流量・方向制御弁6a,6b,6c…の上流側において油路8a,8b,8c…に接続され、流量・方向制御弁6a,6b,6c…のメータイン通路の前後差圧を制御する圧力補償弁7a,7b,7c…と、複数のアクチュエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧を検出する、シャトル弁9a,9b,9c…を含む最高負荷圧検出回路9と、メインポンプ2aの吐出圧と最高負荷圧検出回路9によって検出された最高負荷圧との差圧を絶対圧として油路12に出力する差圧減圧弁11と、メインポンプ2aの圧油供給油路5に接続され、圧油供給油路5の圧力(メインポンプ2aの吐出圧)が設定圧力以上にならないように制限するメインリリーフ弁14と、メインポンプ2aの圧油供給油路5に接続され、圧油供給油路5の圧力(メインポンプ2aの吐出圧)が上記最高負荷圧にバネ15aで設定されたクラッキング圧(設定圧)Punを加算した圧力よりも高くなると、開状態になって圧油供給油路5の圧油をタンクTに戻し、メインポンプ2aの吐出圧の上昇を制限するアンロード弁15と、複数の流量・方向制御弁6a,6b,6c…のいずれかが中立位置から操作されたかどうかを検出する操作検出装置16と、メインポンプ2aの傾転角(容量)を制御するポンプ制御装置17と、パイロットポンプ2bに接続されたパイロット圧供給油路31aと、パイロット圧供給油路31aに接続され、パイロット圧供給油路31aの圧力を一定に保つパイロットリリーフ弁32と、ゲートロックレバー24によって操作され、パイロット圧供給油路31aの下流側のパイロット圧供給油路31bをパイロット圧供給油路31a及びタンクTの一方に選択的に連通させる安全弁としてのゲートロック弁100と、パイロット圧供給油路31bに接続され、流量・方向制御弁6a,6b,6c…を操作して対応するアクチュエータ3a,3b,3c…を動作させるための指令パイロット圧(指令信号)を生成する操作レバー装置122,123(図3参照)を含む操作手段とを備えている。
エンジン1はディーゼルエンジンであり、燃料噴射量を調整する電子ガバナ48を備えている。
アクチュエータ3a,3b,3cは例えば油圧ショベルの旋回モータ、ブームシリンダ及びアームシリンダであり、流量・方向制御弁6a,6b,6cはそれぞれ例えば旋回用、ブーム用、アーム用の流量・方向制御弁である。図示の都合上、バケットシリンダ、ブームスイングシリンダ、走行モータ等のその他のアクチュエータ及びこれらアクチュエータに係わる流量・方向制御弁の図示は省略している。
圧力補償弁7a,7b,7c…は、その目標補償差圧として差圧減圧弁11の出力圧が油路12を介して導かれる開方向作動の受圧部21a,21b,21c…と、流量・方向制御弁6a,6b,6c…のメータイン通路の前後差圧を検出する受圧部22a,23a、22b,23b,22c,23c…を有し、流量・方向制御弁6a,6b,6c…のメータイン通路の前後差圧が差圧減圧弁11の出力圧(メインポンプ2aの吐出圧とアクチュエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧との差圧)に等しくなるように制御する。
最高負荷圧検出回路9は、前述したシャトル弁9a,9b,9c…と、流量・方向制御弁6a,6b,6c…のそれぞれに設けられた負荷ポート26a,26b,26c…とを有し、シャトル弁9a,9b,9c…は負荷ポート26a,26b,26c…にトーナメント形式に接続され、アクチュエータ3a,3b,3c…の負荷圧のうちの最高圧力を選択して出力する。負荷ポート26a,26b,26c…は、流量・方向制御弁6a,6b,6c…が中立位置にあるときはタンクTに連通し、負荷圧としてタンク圧を出力し、流量・方向制御弁6a,6b,6c…が中立位置から図示左右の操作位置に切り換えられたときは、それぞれのアクチュエータ3a,3b,3c…に連通し、アクチュエータ3a,3b,3c…の負荷圧を出力する。
シャトル弁9aは、流量・方向制御弁6aの負荷ポート26aの圧力と流量・方向制御弁6bの負荷ポート26bの圧力との高圧側を選択して出力し、シャトル弁9bは、シャトル弁9bの出力圧と流量・方向制御弁6cの負荷ポート26cの圧力との高圧側を選択して出力し、シャトル弁9cは、シャトル弁9bの出力圧と図示しない他の同様なシャトル弁の出力圧との高圧側を選択して出力する。シャトル弁9cは最後段のシャトル弁であり、その出力圧は最高負荷圧として信号油路27を介して差圧減圧弁11及びアンロード弁15とポンプ制御装置17(後述)とに導かれる。
差圧減圧弁11は、メインポンプ2aの吐出圧が導かれる受圧部11aと、最高負荷圧が導かれる受圧部11bと、自身の出力圧が導かれる受圧部11cとを有し、パイロット圧供給油路31aの圧力が油路34を介して導かれ、その圧力を元圧としてメインポンプ2aの吐出圧と最高負荷圧との差圧を絶対圧として生成する。
アンロード弁15は、クラッキング圧Punを設定する閉方向作動の上述したバネ15aと、圧油供給油路5の圧力(メインポンプ2aの吐出圧)が導かれる開方向作動の受圧部15bと、信号油路27からの最高負荷圧が信号油路27aを介して導かれる閉方向作動の受圧部15cとを有し、メインポンプ2aの吐出圧が最高負荷圧にバネ15aの設定圧であるクラッキング圧Punを加算した圧力よりも高くなると、開状態になって圧油供給油路5の圧油をタンクTに戻し、メインポンプ2aの吐出圧の上昇を制限する。アンロード弁15のバネ15aの設定圧(クラッキング圧Pun)は、一般的に、エンジン1の目標回転数が定格最高回転数にあるときのロードセンシング制御の目標差圧(後述)と概ね同じ値か、それよりも少し高い圧力に設定されており、本実施の形態では、エンジン1の目標回転数が定格最高回転数にあるときの通常のロードセンシング制御用の目標差圧と同じ値(例えば2.0MPa)に設定されている。
操作検出装置16は流量・方向制御弁6a,6b,6c…を直列に貫通して伸びる操作検出油路35を有し、操作検出油路35の上流側は絞り36及び油路34を介してパイロット圧供給油路31aに接続され、下流側はタンクTに接続されている。流量・方向制御弁6a,6b,6c…が中立位置にあるとき操作検出油路35の上流側は流量・方向制御弁6a,6b,6c…を介してタンクTに連通し、操作検出油路35の上流側の圧力はタンク圧となる。流量・方向制御弁6a,6b,6c…が中立位置から切り換えられたときは操作検出油路35の上流側とタンクTとの連通が遮断され、操作検出油路35の上流側の圧力は油路34の圧力(パイロット圧供給油路31aの圧力)と同じ圧力に上昇する。操作検出油路35の上流側に圧力センサ45が接続されており、圧力センサ45によって操作検出油路35の上流側の圧力を検出することで、流量・方向制御弁6a,6b,6c…が中立位置にあるか中立位置から切り換えられたかを判別することができる。
流量・方向制御弁6a,6c,6c…と、圧力補償弁7a,7b,7c…と、シャトル弁9a,9b,9c…と、差圧減圧弁11と、メインリリーフ弁14と、アンロード弁15と、操作検出油路35は、コントロールバルブ4内に配置されている。
メインポンプ2aとパイロットポンプ2bとポンプ制御装置17とはポンプ装置2内に配置されている。ポンプ制御装置17はトルク制御部51とロードセンシング制御部52とを有している。
トルク制御部51はメインポンプ2aの吐出圧が導かれるトルク制御ピストン17aと、最大トルクを設定するバネ17uとを有し、トルク制御ピストン17aはメインポンプ2aの吐出圧が高くなるにしたがってメインポンプ2aの傾転角(容量)を減らして、メインポンプ2aの吸収トルクがバネ17uによって設定した最大トルクを超えないように制御する。これによりメインポンプ2aの吸収トルクがエンジン1の制限トルク(図2の制限トルクTEL)を越えないように制御され、過負荷によるエンジン1の停止(エンジンストール)が防止される。
図2はトルク制御部51の制御によって得られるメインポンプ2aの吐出圧と容量(傾転角)との関係(Pq特性)を示す図である。図2の縦軸はメインポンプ2aの容量(傾転角)qであり、縦軸はメインポンプ2aの容量qである。
図2において、メインポンプ2aのPq特性は、最大容量一定特性Tp0と最大吸収トルク一定特性Tp1,Tp2とで構成されている。
メインポンプ2aの吐出圧Pが、最大容量一定の特性線Tp0から最大吸収トルク一定の特性Tp1,Tp2に移行する折れ点(移行点)の圧力である第1の値P0以下にあるとき、メインポンプ2aの吐出圧Pが上昇してもメインポンプ2aの最大容量はq0で一定である。このとき、メインポンプ2aの吐出圧Pが上昇するにしたがって、ポンプ吐出圧とポンプ容量との積で表されるメインポンプ2aの吸収トルクは増加する。メインポンプ2aの吐出圧Pが第1の値P0を超えて更に上昇すると、メインポンプ2aの最大容量は最大吸収トルク一定の特性線TP1,TP2に沿って減少し、メインポンプ2aの吸収トルクは特性線TP1,TP2によって決まる最大トルクTmaxに保たれる。特性線TP1,TP2は吸収トルク一定曲線(双曲線)を近似するよう2つのバネ(図1では1つのバネ17uのみを示す)によって設定されている。また、その最大トルクTmaxはエンジン1の制限トルクTELよりも小さくなるように設定されている。これによりメインポンプ2aの吐出圧Pが第1の値P0を超えて上昇するとメインポンプ2aの最大容量を減らして、メインポンプ2aの吸収トルク(入力トルク)が最大トルクTmaxを超えないように制御し、メインポンプ2aの吸収トルクがエンジン1の制限トルクTELを越えないように制御される。
図2中、A点は、全操作レバーが中立でかつ通常ロードセンシング制御(後述)が選択されているときのメインポンプ2aの動作点であり、B点は、全操作レバーが中立でかつポンプ出力上昇制御(後述)が選択されているときのメインポンプ2aの動作点である。Tminは動作点Aにおけるメインポンプ2aの吸収トルクであり、Tupは動作点Bにおけるメインポンプ2aの吸収トルクである。
図1に戻り、ロードセンシング制御部52は、メインポンプ2aの吐出圧が複数のアクチュエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧より目標差圧(2.0MPa)だけ高くなるようメインポンプ2aの容量をロードセンシング制御するものであり、LS制御弁17bとLS制御ピストン17cを有している。
LS制御弁17bは対向する受圧部17d,17eを有し、受圧部17eと同じ側にはバネ17fが配置されている。受圧部17dにはメインポンプ2aの吐出圧が導かれ、受圧部17eに最高負荷圧検出回路9によって検出された最高負荷圧が信号油路27,27aを介して導かれる。また、LS制御弁17bはバネ17fと対向する側にソレノイド17gを有する比例電磁弁として構成されている。
ここで、バネ17fの付勢力は、その圧力換算値がアンロード弁15のクラッキング圧Pun(2.0MPa)よりも大きく、ポンプ出力上昇制御を選択したときに設定されるロードセンシング制御の目標差圧と等しい値(例えば3.0MPa)に設定されている。LS制御弁17bは、メインポンプ2aの吐出圧とソレノイド17gの付勢力の圧力換算値の和がアクチュエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧とバネ17fの付勢力の圧力換算値の和よりも大きくなると図示右方向(メインポンプ2aの容量を減少させる方向)にストロークし、メインポンプ2aの吐出圧を油路33を介してLS制御ピストン17cに導いてメインポンプ2aの傾転角を減らし、メインポンプ2aの吐出圧とソレノイド17gの付勢力の圧力換算値の和がアクチュエータ3a,3b,3c…の最高負荷圧とバネ17fの付勢力の圧力換算値の和よりも小さくなると図示左方向(メインポンプ2aの容量を増加させる方向)にストロークし、LS制御ピストン17cをタンクTに連通してメインポンプ2aの傾転角を増やす。これによりメインポンプ2aの吐出圧が最高負荷圧よりもバネ17fの付勢力の圧力換算値とソレノイド17gの付勢力の圧力換算値との差圧だけ高くなるようにメインポンプ2aの傾転角が制御される。つまり、バネ17fとソレノイド17gとによってロードセンシング制御の目標差圧が設定され、ソレノイド17gに与えられる電気信号を制御することでロードセンシング制御の目標差圧を変更することができる。
本実施の形態において、ソレノイド17gの付勢力の圧力換算値は、コントローラ49(後述)により、通常時はロードセンシング制御の目標差圧(バネ17fの付勢力の圧力換算値とソレノイド17gの付勢力の圧力換算値との差圧)がエンジン1の回転数に依存して変化するように制御される。エンジン1の目標回転数が定格最高回転数にあるとき、ロードセンシング制御の目標差圧は例えば2.0MPaとなるように制御される。
図3は、本実施の形態における油圧駆動システムが搭載される油圧ショベルの外観を示す図である。
油圧ショベルは、下部走行体101と、この下部走行体101上に旋回可能に搭載された上部旋回体102と、この上部旋回体102の先端部分にスイングポスト103を介して上下及び左右方向に回動可能に連結されたフロント作業機104とを備えている。下部走行体101はクローラ式であり、トラックフレーム105の前方側に上下動可能な排土用のブレード106が設けられている。上部旋回体102は基礎下部構造をなす旋回台107と、旋回台107上に設けられたキャノピタイプの運転室108とを備えている。フロント作業機104はブーム111と、アーム112と、バケット113とを備え、ブーム111の基端はスイングポスト103にピン結合され、ブーム111の先端はアーム112の基端にピン結合され、アーム112の先端はバケット113にピン結合されている。
上部旋回体102は下部走行体101に対して旋回モータ3aにより旋回駆動され、ブーム111、アーム112、バケット113は、それぞれ、ブームシリンダ3b、アームシリンダ3c、バケットシリンダ3dを伸縮することにより回動する。下部走行体101は左右の走行モータ3f,3gにより駆動される。ブレード106はブレードシリンダ3hにより上下に駆動される。図1ではバケットシリンダ3d、左右の走行モータ3f,3g、ブレードシリンダ3hやそれらの回路要素の図示を省略している。
運転室108には、運転席121、操作レバー装置122、123(図2では右側のみ図示)及びゲートロックレバー24が設けられている。
再び図1に戻り、本実施の形態の油圧駆動システムは、上述した構成に加えて、エンジン1の排気系を構成する排気管路41に配置された排気ガス浄化装置42と、排気ガス浄化装置42内の排気抵抗を検出する排気抵抗センサ43と、オペレータによって操作され、排気ガス浄化装置42の再生の開始を指示する強制再生スイッチ44(再生指示装置)と、操作検出油路35の上流側に接続され、操作検出油路35の上流側の圧力を検出する前述した圧力センサ45と、オペレータによって操作され、エンジン1の目標回転数を指示する回転数指示装置46と、ゲートロックレバー24が下げ位置(ロック解除位置)にあるか上げ位置(ロック位置)にあるかを検出するゲートロックスイッチ47(操作ロック検出装置)と、これら排気抵抗センサ43、圧力センサ45、ゲートロックスイッチ47のそれぞれの検出信号と、強制再生スイッチ44の指令信号、回転数指示装置46の指示信号を入力し、所定の演算処理を行い、電子ガバナ48とLS制御弁17bのソレノイド17gにそれぞれを制御するための電気信号を出力するコントローラ49(制御装置)とを備えている。
排気ガス浄化装置42はエンジン1の排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集するフィルタ42aと、このフィルタ42aに捕集された堆積したPMを燃焼除去し、フィルタ42aを再生する酸化触媒42bとを有している。酸化触媒4bは排気ガス温度が所定温度以上になると活性化し、排気ガス中に添加された未燃燃料を燃焼させることで排気ガス温度を上昇させ、フィルタに捕集され堆積したPMを燃焼処理する。
排気抵抗センサ43は、例えば、排気ガス浄化装置42のフィルタの上流側と下流側の前後差圧(排気ガス浄化装置42の排気抵抗)を検出する差圧検出装置である。
図4は、排気ガス浄化装置42内のPM堆積量と排気抵抗センサ43によって検出される排気抵抗(フィルタの前後差圧)との関係を示す図である。
図4において、排気ガス浄化装置42内のPM堆積量Wが増加するにしたがって排気ガス浄化装置42の排気抵抗は上昇する。図中、Wbは自動再生制御が必要となるPM堆積量であり、ΔPbはPM堆積量がWbであるときの排気抵抗である。Waは再生制御を終了させてもよいPM堆積量であり、ΔPaはPM堆積量がWaであるときの排気抵抗である。
コントローラ49の記憶装置(図示せず)には、ΔPbが自動再生制御を開始するためのしきい値として記憶され、ΔPaが再生制御を終了させるためのしきい値として記憶されている。
ゲートロックレバー22は図3に示すように運転席121の入口側に設けられており、図3に実線で示される下げ位置(ロック解除位置)と破線で示される上げ位置(ロック位置)とに選択的に操作可能である。ゲートロックレバー22は、下げ位置にあるとき、運転室108の入口通路を制限し、上げ位置にあるとき運転室108の入口通路を開放する。また、ゲートロックレバー22が下げ位置に操作されるとき、ゲートロック弁100は図1に示す右位置から左位置に切り換わり、下流側のパイロット圧供給油路31bを上流側のパイロット圧供給油路31aに連通させる。これにより操作レバー装置122,123(図3参照)を含む操作手段による指令パイロット圧の生成が可能となり(アクチュエータの動作指令が有効となり)、操作手段の操作によりアクチュエータを動作させることができる。ゲートロックレバー22が上げ位置に操作されるとき、ゲートロック弁100は図1に示す右位置に切り換わり、下流側のパイロット圧供給油路31bをタンクTに連通させる。これにより操作レバー装置122,123(図3参照)を含む操作手段による指令パイロット圧の生成が不能となり(アクチュエータの動作指令が無効となり)、操作手段を操作してもアクチュエータを動作させることができなくなる。また、ゲートロックレバー22が下げ位置に操作されるときゲートロックスイッチ47はON信号を出力し、ゲートロックレバー22が上げ位置に操作されるときゲートロックスイッチ47はOFF信号を出力する。ゲートロックスイッチ47は、複数の流量・方向制御弁6a,6b,6c…が中立位置にロックされているか否かを検出する操作ロック検出装置を構成している。
コントローラ49は以下の機能を有している。
機能1.
回転数指示装置46の指示信号を入力しエンジン1の回転数と出力を制御する。
機能2.
排気ガス浄化装置42のフィルタ42aの再生が必要になったかどうかと、再生が必要になったときに複数の流量・方向制御弁6a,6b,6c…のいずれも中立位置から切り換えられていないかどうかを判定し、再生が必要でない場合と、再生が必要になった場合でも複数の流量・方向制御弁6a,6b,6c…のいずれかが中立位置から切り換えられていた場合は通常ロードセンシング制御を選択し、再生が必要となりかつ複数の流量・方向制御弁6a,6b,6c…のいずれも中立位置から切り換えられていない場合はポンプ出力上昇制御を選択する。
機能3.
通常ロード制御を選択したときは、ロードセンシング制御の目標差圧としてエンジン回転数に依存する通常ロードセンシング制御用の目標差圧(定格最高回転数のとき2.0MPa)を設定し、この目標差圧に対応する電気信号をLS制御弁17b(比例電磁弁)のソレノイド17gに出力してロードセンシング制御部52を制御する。
機能4.
ポンプ出力上昇制御を選択したときは、ロードセンシング制御の目標差圧として通常ロードセンシング制御用の目標差圧よりも大きく、複数の流量・方向制御弁6a,6b,6c…のいずれも中立位置から切り換えられていない場合であってもメインポンプ2aの容量を増加させることが可能なポンプ出力上昇制御用の目標差圧(3.0MPa)を設定し、この目標差圧に対応する電気信号をLS制御弁17b(比例電磁弁)のソレノイド17gに出力してメインポンプ2aの容量が増加するようロードセンシング制御部52を制御する。
機能5.
再生が必要となった場合は、合わせて電子ガバナ48にポスト噴射を指令する電気信号を出力し、未燃燃料供給制御を行う。
図5は、コントローラ49の機能2〜5を実行する処理手順の詳細を示すフローチャートである。
エンジン1の稼働によって図5の処理動作がスタートすると、まず、コントローラ49は、ステップS1において、排気抵抗センサ43からの検出信号と強制再生スイッチ44からの指示信号に基づいて、排気ガス浄化装置42内の排気抵抗ΔPと自動再生制御を開始するためのしきい値ΔPbとを比較し、ΔP>ΔPbかどうかを判定するとともに、強制再生スイッチ44がOFFからONに切り換わったかどうかを判定する。これらの判定は排気ガス浄化装置42のフィルタ42aの再生が必要か否かを判定するものであり、ΔP>ΔPbでなくかつ強制再生スイッチ91がONでない場合(判定結果がNOの場合)は「再生不要」の場合であり、ステップS8に進み、通常ロードセンシング制御を選択する。通常ロードセンシング制御では、ロードセンシング制御の目標差圧としてエンジン回転数に依存する通常ロードセンシング制御用の目標差圧(定格最高回転数のとき2.0MPa)が設定されるようソレノイド17gを制御する。
ステップS1においてΔP>ΔPbの場合或いは強制再生スイッチ44がONの場合(判定結果がYESの場合)は「再生必要」の場合であり、ステップS2に進む。
ステップS2では、ゲートロックスイッチ47からの信号に基づいてゲートロックレバー24が上げ位置(ロック位置)にあるか否か、即ちゲートロック弁100が図1に示す右位置にあるか否かを判定する。この判定はフィルタの再生を実行するために排気ガスの昇温が必要か否かを判定するものであり、ゲートロックスイッチ47からの信号がOFFでゲートロックレバー24が上げ位置(ロック位置)にある場合(判定結果がYESの場合)は「昇温が必要」の場合であり、ステップS3に進み、コントローラ49はポンプ出力上昇制御を選択する。このポンプ出力上昇制御では、ロードセンシング制御の目標差圧を通常ロードセンシング制御用の目標差圧(定格最高回転数のとき2.0MPa)よりも大きいポンプ出力上昇制御用の目標差圧(3.0MPa)に設定し、LS制御弁17bのソレノイド17gに出力する電気信号を切り換えてポンプ出力上昇制御を実行する。また、コントローラ49は排気ガス中に未燃燃料を供給する制御を行う。この制御は、例えば、エンジン1の電子ガバナ48を制御して、エンジン主噴射後の膨張行程におけるポスト噴射(追加噴射)を実施することにより行う。
ポンプ出力上昇制御はメインポンプ2aの容量を増加させてメインポンプ2aの吸収トルクを増加させる制御である。ポンプ出力上昇制御が行われるとエンジン1の油圧負荷が高くなり、エンジン1の排気ガスの温度が上昇する。これにより排気ガス浄化装置42に設けられた酸化触媒が活性化する。このような状況下で、排気ガス中に未燃燃料を供給することにより、未燃燃料が活性化した酸化触媒によって燃焼して排気ガスの温度を上昇させ、その高温の排気ガスによりフィルタに堆積したPMを燃焼除去する。
なお、未燃燃料の供給は、排気管に再生制御用の燃料噴射装置を設け、この燃料噴射装置を作動させることにより行ってもよい。
ポンプ出力上昇制御の間、コントローラ49は、ステップS4において、排気ガス浄化装置42に設けられた排気抵抗センサ43からの検出信号に基づいて、排気ガス浄化装置42内の排気抵抗ΔPと自動再生制御を終了するためのしきい値ΔPaとを比較し、ΔP<ΔPaとなったかどうかを判定し、ΔP<ΔPaでない場合(判定結果がNOの場合)は、ステップS2に戻り、ステップS3におけるポンプ出力上昇制御を継続する。ΔP<ΔPaとなると(判定結果がYESとなると)、ステップS5に進む。ステップS5において、コントローラ49は通常ロードセンシング制御を選択し、ソレノイド17gに出力する電気信号を切り換えてポンプ出力上昇制御を停止し、通常のロードセンシング制御を行う。また、これと同時に未燃燃料の供給を停止する。
ステップS2においてゲートロックスイッチ47がONでゲートロックレバー24が下げ位置(ロック解除位置)にある場合(判定結果がNOの場合)は、ステップS7に進む。ステップS7において、コントローラ49は、オペレータが操作レバーを操作しているか否か、すなわち流量・方向制御弁6a,6c,6c…のいずれか中立位置から切り換えられたか否かを圧力センサ45からの検出信号により判定する。
前述したように、流量・方向制御弁6a,6b,6c…が中立位置にあるとき操作検出油路35の上流側の圧力はタンク圧となり、流量・方向制御弁6a,6b,6c…が中立位置から切り換えられたときは操作検出油路35の上流側の圧力はパイロット圧供給油路31aの圧力に上昇する。コントローラ49は、圧力センサ45がタンク圧を検出した場合は、流量・方向制御弁6a,6b,6c…のいずれも中立位置から切り換えられておらず(操作されておらず)アクチュエータが駆動していない場合であると判定し、圧力センサ45がパイロット圧供給油路31aの圧力(パイロットリリーフ圧)を検出した場合は、流量・方向制御弁6a,6b,6c…のいずれかが操作されて中立位置から切り換えられ、いずれかのアクチュエータが駆動している場合であると判定する。
ステップS7において、いずれの流量・方向制御弁6a,6b,6c…も中立位置から切り換えられておらずアクチュエータが駆動していない場合(判定結果がYESの場合)は、「昇温必要」の場合であり、ステップS3に進む。ステップS3では上述したように、コントローラ49はコントローラ49はポンプ出力上昇制御を選択し、LS制御弁17bのソレノイド17gに出力する電気信号を切り換えてポンプ出力上昇制御を行う。また、コントローラ49は排気ガス中に未燃燃料を供給する制御を行う。
ステップS7において、流量・方向制御弁6a,6b,6c…のいずれかが中立位置から切り換えられいずれかのアクチュエータが駆動している場合(判定結果がNOの場合)は、「昇温不要」の場合であり、ステップS5に進む。ステップS5では通常ロードセンシング制御を選択しかつ未燃燃料供給制御を行う。すなわち、アクチュエータ駆動に伴いメインポンプ2aの吐出圧と吐出流量は増加しており、エンジン1にはアクチュエータ駆動に伴うポンプ負荷(回転負荷)が作用している。この結果、通常ロードセンシング制御のままであっても(ポンプ出力上昇制御を行わなくても)エンジン1の排気ガス温度は上昇しており、排気ガス浄化装置42に設けられた酸化触媒が活性化する。このような状況下で、コントローラは49は電子ガバナ48を制御して排気ガス中に未燃燃料を供給することにより、未燃燃料が活性化した酸化触媒によって燃焼して排気ガスの温度を上昇させ、その高温の排気ガスによりフィルタに堆積したPMを燃焼除去する。
図6は、コントローラ49におけるソレノイド17gに出力する電気信号(ロードセンシング制御の目標差圧)の生成処理の詳細を示すブロック図である。
コントローラ49は、通常ロードセンシング制御用の第1目標差圧生成ブロック49aと、ポンプ出力上昇制御用の第2目標差圧生成ブロック49bと、ソレノイド駆動電流生成ブロック49cとを有している。
第1目標差圧生成ブロック49aは、エンジン回転数が低下するにしたがって目標差圧が小さくなるようにエンジン回転数と目標差圧との関係を設定している。コントローラ49は通常ロードセンシング制御を選択したとき、この第1目標差圧生成ブロック49aを用いて回転数指示装置46が指示するエンジン1の目標回転数に対応する通常ロードセンシング用の目標差圧を生成する(第3機能)。第2目標差圧生成ブロック49bはエンジン回転数に係わらず一定の目標差圧を設定している。コントローラ49はポンプ出力上昇制御を選択したとき、この第2目標差圧生成ブロック49bを用いて回転数指示装置46が指示するエンジン1の目標回転数に係わらず、ポンプ出力上昇制御用の一定の目標差圧を生成する(第4機能)。第1及び第2目標差圧生成ブロック49a,49bにおいて、回転数指示装置46が指示する目標回転数に代え、エンジン1の回転数を検出し、その回転数(実回転数)を用いてもよい。
ソレノイド駆動電流生成ブロック49cは、ブロック49a,49bで生成された目標差圧からソレノイド17gの駆動電流値を生成するブロックであり、目標差圧が増加するにしたがって駆動電流値が比例的に小さくなるように目標差圧と駆動電流値との関係が設定されている。コントローラ49はこのソレノイド駆動電流生成ブロック49cを用いて、ブロック49a,49bで生成された目標差圧に対応する駆動電流値を算出する。この駆動電流値は適宜増幅され、ソレノイド17gに電気信号として出力される。
図7は、第1目標差圧生成ブロック49aで生成される通常ロードセンシング制御用の目標差圧と第2目標差圧生成ブロック49bで生成されるポンプ出力上昇制御用の目標差圧との関係を示す図であり、図8は、これら第1及び第2目標差圧生成ブロック49a,49bで生成される目標差圧とソレノイド駆動電流生成ブロック49cで生成されるソレノイド駆動電流値との関係を示す図である。
図7において、エンジン1の目標回転数が定格最高回転数にあるときに第1目標差圧生成ブロック49aに設定される通常ロードセンシング制御用の目標差圧は、例えばアンロード弁15のバネ15aの設定圧と同じ2.0MPaであり、エンジン1の目標回転数が定格最高回転数から低下するにしたがって通常ロードセンシング制御用の目標差圧は2.0MPaから小さくなってゆく。第2目標差圧生成ブロック49bに設定されるポンプ出力上昇制御用の一定の目標差圧は、エンジン1の目標回転数が定格最高回転数にあるときの通常ロードセンシング制御用の目標差圧(2.0MPa)よりも大きく、複数の流量・方向制御弁6a,6b,6c…のいずれも中立位置から切り換えられていない場合であってもメインポンプ2aの容量を増加させることが可能な目標差圧であり、例えば3.0MPaである。また、このポンプ出力上昇制御用の一定の目標差圧はエンジン1の目標回転数が定格最高回転数にあり、複数の流量・方向制御弁6a,6b,6c…のいずれも操作されていない状態で、メインポンプ2aの容量(吐出流量)を最大に増加させたときにアンロード弁15によって決まるメインポンプ2aの吐出圧Prb(図2のB点)よりも大きい値である。ここで、当該メインポンプ2aの吐出圧Prbは、アンロード弁15のバネ15aの設定圧2.0MPaに、エンジン1の目標回転数が定格最高回転数にあり全流量・方向制御弁6a,6b,6c…が操作されていない状態で、メインポンプ2aの容量(吐出流量)を最大に増加させたときのアンロード弁15のオーバーライド特性の圧力を加算した圧力である。
図8において、ソレノイド駆動電流生成ブロック49cは、目標差圧が定格最高回転数時における通常ロードセンシング制御の目標回転数である2.0MPaであるとき、LS制御弁17bに設定されるロードセンシング制御の目標差圧が2.0MPaとなるようにソレノイド17gの駆動電流値を生成する。また、目標回転数がポンプ出力上昇制御用の目標差圧である3.0MPaにあるとき、ソレノイド17gが消磁されるように駆動電流値を0にする。
なお、第2目標差圧生成ブロック49bに設定されるポンプ出力上昇制御用の一定の目標差圧は上述したPrbよりも大きければ、3.0MPaよりも大きくても小さくてもよい。第2目標差圧生成ブロック49bに設定されるポンプ出力上昇制御用の一定の目標差圧がPrbよりも大きければ、全流量・方向制御弁6a,6b,6c…が中立位置から切り換えられていなくても(中立位置にあっても)、LS制御弁17bは図示左方向(メインポンプ2aの容量を増加させる方向)にストロークし、ポンプ出力上昇制御を行うことができる。
〜作動〜
次に、ポンプ出力上昇制御(ポンプ出力上昇制御)の詳細を含め本実施の形態の動作を説明する。
<1.全操作レバー中立かつ通常ロードセンシング制御時の場合>
まず、全ての操作レバー(操作レバー装置122,123等の操作レバー)が中立にあり、コントローラ49において図5のステップS1の判定が否定され「再生不要」と判定されるとき、コントローラ49はステップS8において通常ロードセンシング制御を選択する。このときソレノイド17gは図6の第1目標差圧生成ブロック49aの通常ロードセンシング制御用の目標差圧に基づいてLS制御弁17bに設定される目標差圧がエンジン回転数に依存して変化するように制御される。
全ての操作レバーが中立にあるときは、流量・方向制御弁6a,6b,6c…は図示の中立位置に保持され、それらの負荷ポート26a,26b,26c…の圧力もタンク圧となる。このため、シャトル弁9a,9b,9c…によって検出される最高負荷圧はタンク圧となる。このため、LS制御弁17bの受圧部17eに導かれる圧力はタンク圧となる。また、メインポンプ2aの吐出圧はアンロード弁15により制御される。このとき、エンジン1の目標回転数が定格最高回転数であるとすると、メインポンプ2aの吐出圧はアンロード弁15のバネ15aの設定圧(クラッキング圧)にアンロード弁15のオーバーライド特性の圧力を加算した圧力Pra(図2のA点)となる。そのため、LS制御弁17bの受圧部17dに導かれる圧力は圧力Praとなる。また、LS制御弁17bに設定されるロードセンシング制御の目標差圧は2.0MPaである。エンジン1の目標回転数が定格最高回転数よりも低いときは、LS制御弁17bに設定されるロードセンシング制御の目標差圧は2.0MPaよりも小さくなる。その結果、いずれの場合も、メインポンプ2aの吐出圧のPraはロードセンシング制御の目標差圧より大きくなり、LS制御弁17bは図示左位置に切り換わり、メインポンプ2aのLS制御ピストン17cに導かれる圧力が上昇し、メインポンプ2aの傾転角が小さくなるよう制御される。しかし、メインポンプ2aには、その最小傾転角qmin(qa)を規定するストッパが設けられるため、メインポンプ2aはストッパにより規定される最小傾転角qminに保持され、最少流量を吐出する。その結果、メインポンプ2aの吸収トルクも図2のA点で示すように最小Tminとなる。
<2.通常ロードセンシング制御時に操作レバーを操作した場合>
上記1の通常ロードセンシング制御時に操作レバーを操作した場合について説明する。
この場合も、コントローラ49はステップS5において通常ロードセンシング制御を選択し、ソレノイド17gは図6の第1目標差圧生成ブロック49aの通常ロードセンシング制御用の目標差圧に基づいてLS制御弁17bに設定される目標差圧がエンジン回転数に依存して変化するように制御される。
また、例えばブーム操作レバーをブームシリンダ3bが伸長する方向にフルに操作した場合、ブームシリンダ3b駆動用の流量・方向制御弁6bが図中で右方向に切り換わり、流量・方向制御弁6bのメータイン通路の開口面積は最大となる。
ブームシリンダ3bのボトム側の負荷圧は最高負荷圧検出回路9によって検出され、アンロード弁15と差圧減圧弁11に導かれる。最高負荷圧がアンロード弁15に導かれることによって、アンロード弁15は圧油供給油路5の圧油をタンクTに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧が差圧減圧弁11に導かれることによって、差圧減圧弁11は圧油供給油路5の圧力(メインポンプ2aの吐出圧)と最高負荷圧との差圧(LS差圧)を絶対圧として出力する。この圧力は圧力補償弁7bに導かれ、流量・方向制御弁6bのメータイン通路の前後差圧をメインポンプ2aの吐出圧と最高負荷圧との差圧に維持するように制御する。
一方、メインポンプ2aの吐出圧と最高負荷圧はそれぞれLS制御弁17bの受圧部17d,17eに導かれる。LS制御弁212bは、上記のようにソレノイド17gが制御されることによりLS制御弁17bに設定されたロードセンシング制御の目標差圧と、受圧部17d,17eに導かれたメインポンプ2aの吐出圧と最高負荷圧との差圧を比較する。
ブーム上げ起動時の操作レバー入力直後は、圧油供給油路5の圧力とブームシリンダ3bの負荷圧はほぼ等しくメインポンプ2aの吐出圧と最高負荷圧との差圧はほぼ0であり、LS制御弁17bは図中で左方向に切り換わり、LS制御ピストン17cの圧油をタンクTに放出する。このためメインポンプ2aの容量(流量)は増加してゆき、その流量増加はメインポンプ2aの吐出圧と最高負荷圧との差圧がLS制御弁17bに設定されたロードセンシング制御の目標差圧と等しくなるまで継続する。これによりブーム操作レバーの入力に応じた流量の圧油がブームシリンダ3bのボトム側に供給され、ブームシリンダ3bは伸長方向に駆動される。
また、このようにブームシリンダ3bをメインポンプ2aの吐出流量によって駆動するとき、メインポンプ2aの吸収トルクはトルク制御部51によってエンジン1の制限トルク(図2の制限トルクTEL)を越えないように制御され、過負荷によるエンジン1の停止(エンジンストール)を防止することができる。
更に、ロードセンシング制御の目標差圧はエンジン回転数に応じて変化するため、エンジン回転数に応じてメインポンプ2aの吐出流量を変化させることができる。これにより微操作作業の場合は、回転数指示装置46により低速の目標回転数を指示することで、ブームシリンダ3bの駆動速度を低速にすることができ、エンジン回転数に応じた良好な操作性を確保することができる。しかも、パイロットポンプの吐出流量を利用したエンジン回転数検出弁を使用せず、エンジン回転数に依存するロードセンシング制御の目標差圧を電子的に生成するため、パイロットポンプ2bの吐出圧は増大せず、エネルギ損失を低減し、エンジン1の出力馬力をアクチュエータの駆動に有効利用することができる。
<3.全操作レバー中立かつポンプ出力上昇制御時の場合>
全ての操作レバー(操作レバー装置122,123等の操作レバー)が中立にあるときに、排気ガス浄化装置42の再生が必要となり、オペレータが強制再生スイッチ44をONに操作した場合、或いはコントローラ49において排気ガス浄化装置42内の排気抵抗ΔPと自動再生制御を開始するためのしきい値ΔPbとが比較され、ΔP>ΔPbとなった場合、図5のステップS1の判定が肯定され、「再生必要」の場合となる。また、ゲートロックレバー24が上げ位置(ロック位置)にある場合は図5のステップS2の判定が肯定され、「昇温必要」の場合となる。ゲートロックレバー24が下げ位置(ロック解除位置)にあり図5のステップS2の判定が否定された場合でも、全操作レバーが中立にあるためステップS7の判定が肯定され、「昇温必要」の場合となる。このためコントローラ49はステップS3においてポンプ出力上昇制御を選択し、ソレノイド17gの制御は図6の第2目標差圧生成ブロック49bによるポンプ出力上昇制御に切り換えられる。
ソレノイド17gの制御がポンプ出力上昇制御に切り換えられると、図6のソレノイド駆動電流生成ブロック49cによって演算される駆動電流値は0となり、ソレノイド17gを消磁する。
前述したように、全ての操作レバーが中立にあるときは、流量・方向制御弁6a,6b,6c…は図示の中立位置に保持され、LS制御弁17bの受圧部17eに導かれる圧力はタンク圧となる。また、メインポンプ2aの吐出圧はアンロード弁15により制御され、LS制御弁17bの受圧部17dに導かれる圧力はアンロード弁15のバネ15aの設定圧(クラッキング圧)にアンロード弁15のオーバーライド特性の圧力を加算した圧力Prb(図2のB点)となる。その結果、バネ17fの付勢力の圧力換算値(3.0PMa)はメインポンプ2aの吐出圧のPrbより大きいため、LS制御弁17bは図示右位置に切り換わり、メインポンプ2aのLS制御ピストン17cに導かれる圧力はタンク圧となり、メインポンプ2aの傾転角が大きくなるよう制御される。したがって、このときメインポンプ2aの傾転角(容量)は最大q0となり、吐出流量も最大となる。その結果、メインポンプ2aの吸収トルクは図2のB点に示すTupへと増加する。
このようにソレノイド17gの制御が切り換えられることでメインポンプ2aのポンプ出力上昇制御を行うことができる。
このようにメインポンプ2aの吸収トルクが上昇すると、それに応じてエンジン1の負荷が高くなり、排気温度が上昇する。これにより排気ガス浄化装置42に設けられた酸化触媒が活性化するため、前述したように、排気ガス中に未燃燃料を供給することにより、未燃燃料が活性化した酸化触媒によって燃焼して排気ガスの温度が上昇し、その高温の排気ガスによりフィルタに堆積したPMが燃焼除去される。
このポンプ出力上昇制御は、排気ガス浄化装置42に設けられた排気抵抗センサ43で検出した排気ガス浄化装置42内の排気抵抗ΔPがしきい値ΔPaより小さくなるまで継続される。
<4.ポンプ出力上昇制御時に操作レバーを操作した場合>
次に、上記3のポンプ出力上昇制御状態の再生中に操作レバーを操作した場合について説明する。
まず、ゲートロックレバー24が上げ位置(ロック位置)から下げ位置(ロック解除位置)に操作された場合、コントローラ49はゲートロックスイッチ47の信号がONになることによりゲートロックレバー24がロック解除位置に切り換えられたことを認識し、図5のフローチャートにおいてステップS7に移行する。次いで、いずれかの操作レバーを操作すると、圧力センサ45が操作検出油路35の圧力上昇を検知し、コントローラ49は操作レバーが中立でないことを認識する(「昇温不要」)。このときコントローラ49は図5のフローチャートにおいてステップS5に移行し、ソレノイド17gの制御を通常ロードセンシング制御に切り換える。これによりメインポンプ2aはメインポンプ2aの吐出圧が最高負荷圧より、エンジン回転数に依存して増減される目標差圧分高くなるように制御され、エンジン1の負荷を増加させて排気温度を上昇させることができる。その結果、排気ガス浄化装置42に設けられた酸化触媒が活性化するため、前述したように、排気ガス中に未燃燃料を供給することにより、未燃燃料が活性化した酸化触媒によって燃焼して排気ガスの温度が上昇し、その高温の排気ガスによりフィルタに堆積したPMが燃焼除去される。
〜効果〜
以上のように構成した本実施の形態によれば、次の効果が得られる。
1.アクチュエータが動作していない場合に、排気ガス浄化装置42のフィルタのPM堆積量が増加し、排気ガス浄化装置42が再生を必要とする状態になると、コントローラ49はソレノイド17gの制御をポンプ出力上昇制御に切り換え、ロードセンシング制御の目標差圧を通常ロードセンシング制御用の目標差圧からそれよりも大きいポンプ出力上昇制御用の目標差圧に切り換える。これによりロードセンシング制御の目標差圧がアンロード弁15で決まるメインポンプ2aの吐出圧より大きくなり、ロードセンシング制御は無効となる。これにより前述したように、アクチュエータが動作していない場合であっても、メインポンプ2aの吐出流量が増加し、ポンプ出力上昇制御(ポンプ出力上昇制御)が行われる。このようにメインポンプ2aの吸収トルクが上昇すると、エンジン1の負荷が高くなり、排気温度が上昇し、排気ガス浄化装置42内のフィルタ堆積物を効率的に燃焼除去することができる。
2.アクチュエータを動作させるときは、コントローラ49はソレノイド17gの制御を通常ロードセンシング制御に切り換え、パイロットポンプの吐出流量を利用したエンジン回転数検出弁を使用せず、エンジン回転数に依存するロードセンシング制御の目標差圧を電子的に生成し、エンジン回転数に応じて油圧ポンプの吐出流量を変化させる。これによりパイロットポンプの吐出圧を増大させずにエンジン回転数に応じた良好な操作性を確保することができる。
3.コントローラ49は、ポンプ出力上昇制御を選択したときも、通常ロードセンシング制御を選択したときも、同じパラメータであるロードセンシング制御圧の値を変えて対応する電気信号をLS制御弁17b(比例電磁弁)のソレノイド17gに出力し、ロードセンシング制御によって油圧ポンプの容量を変化させる。これによりコントローラ49内の演算が簡素化されかつソレノイドを備えた比例電磁弁は1つで済むので、コントローラ49や油圧回路の構成が簡素化され、油圧駆動システムの製作コストを低減することができる。
<第2の実施の形態>
〜構成〜
図9は本発明の第2の実施の形態における油圧駆動システムの構成を示す図である。
図9において、本実施の形態に係わる油圧駆動システムは、LS制御弁117bと比例電磁弁118を備え、LS制御弁117bを通常の油圧切換弁としたものである。
すなわち、LS制御弁117bは、第1の実施の形態のソレノイド17gに代え受圧部117gを有し、受圧部117gに比例電磁弁118の出力圧が導かれる。比例電磁弁118はソレノイド118aを備え、このソレノイド118aにコントローラ49の電気信号が出力される。比例電磁弁118は、パイロットポンプ2bによって生成されるパイロット圧供給油路31aの圧力を元圧として、コントローラ49から出力された電気信号に応じた制御圧を生成し、LS制御弁117bの受圧部117gに出力する。受圧部117gは、コントローラ49が出力する電気信号に対し、第1の実施の形態のソレノイド17gと同じ付勢力を生成するように構成されている。
〜効果〜
このように構成した本実施の形態においても、LS制御弁117bと比例電磁弁118aの組み合わせは第1の実施の形態におけるソレノイド17gを備えたLS制御弁17bと同様に機能し、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態においては、LS制御弁を比例電磁弁に改造する必要が無く、LS制御弁117bを従来と同様の油圧切換弁で構成し、比例電磁弁118を既存の比例電磁弁で構成できるため、更なるコスト低減が可能となる。
<第3の実施の形態>
〜構成〜
図10は本発明の第3の実施の形態における油圧駆動システムの構成を示す図である。
図10において、本実施の形態に係わる油圧駆動システムは、LS制御弁217bを備え、LS制御弁217bは、第1の実施の形態の対向する2つの受圧部17d,17eに代え、LS制御弁217bを図示右方向(メインポンプ2aの容量を減少させる方向)にストロークさせる側(ソレノイド17gと同じ側)に1つの受圧部217hを有し、受圧部217hに差圧減圧弁11の出力圧が導かれる。
差圧減圧弁11はメインポンプ2aの吐出圧と最高負荷圧との差圧を絶対圧として生成するものであり、差圧減圧弁11の出力圧を受圧部217hに導くことにより、第1の実施の形態において受圧部17d,17eにメインポンプ2aの吐出圧とシャトル弁9a,9b,9c…によって検出された最高負荷圧とを別々に導いた場合と同様の作用が得られる。
〜効果〜
したがって、本実施の形態においても、LS制御弁217bは第1の実施の形態におけるLS制御弁17bと同様に機能し、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態においては、LS制御弁の受圧部が1つ減り、受圧部に導かれる油路が1つになるで、回路構成がより簡素化され、更なるコスト低減が可能となる。
<第4の実施の形態>
〜構成〜
図11は本発明の第4の実施の形態における油圧駆動システムの構成を示す図である。
図11において、本実施の形態に係わる油圧駆動システムは、LS制御弁317bを備え、LS制御弁317bは、第1の実施の形態の対向するバネ17fとソレノイド17gに代え、LS制御弁317bを図示左方向(メインポンプ2aの容量を増加させる方向)にストロークさせる側(第1の実施の形態におけるソレノイド17gと反対側)にソレノイド317gを有し、LS制御弁317bを図示右方向(メインポンプ2aの容量を減少させる方向)にストロークさせる側にバネ317hを有し、ソレノイド317gにコントローラ349の電気信号が出力される。バネ317hは油圧駆動システムの非作動時(エンジン1の停止時)にLS制御弁317bを所定位置に保持するための弱いバネであり、その付勢力はソレノイド317gが発生する付勢力に対し無視できる程度である。
図12は、コントローラ349におけるソレノイド317gに出力する電気信号(ロードセンシング制御の目標差圧)の生成処理の詳細を示すブロック図である。
コントローラ349は、第1の実施の形態におけるコントローラ49のソレノイド駆動電流生成ブロック49cに代えソレノイド駆動電流生成ブロック349cを有している。
ソレノイド駆動電流生成ブロック349cは、ブロック49a,49bで生成された目標差圧からソレノイド317gの駆動電流値を生成するブロックであり、目標差圧が増加するにしたがって駆動電流値が比例的に大きくなるように目標差圧と駆動電流値との関係が設定されている。コントローラ349はこのソレノイド駆動電流生成ブロック349cを用いて、ブロック49a,49bで生成された目標差圧に対応する駆動電流値を算出する。この駆動電流値は適宜増幅され、ソレノイド317gに出力される。
図13は、第1目標差圧生成ブロック49aで生成される通常ロードセンシング制御用の目標差圧と第2目標差圧生成ブロック49bで生成されるポンプ出力上昇制御用の目標差圧とソレノイド駆動電流生成ブロック349cで生成されるソレノイド駆動電流値との関係を示す図である。
図13において、ソレノイド駆動電流生成ブロック349cは、目標差圧が定格最高回転数時における通常ロードセンシング制御の目標回転数である2.0MPaであるとき、LS制御弁317bに設定されるロードセンシング制御の目標差圧が2.0MPaとなるようにソレノイド317gの駆動電流値を生成する。また、目標回転数がポンプ出力上昇制御用の目標差圧である3.0MPaにあるとき、ソレノイド317gの付勢力が最大で、その付勢力の圧力換算値が全操作レバーの中立時に受圧部17dに導かれるアンロード弁15で決まるメインポンプ2aの吐出圧よりも大きくなるようにソレノイド317gの駆動電流値を生成する。
〜効果〜
このように構成した本実施の形態においても、LS制御弁317bは第1の実施の形態におけるLS制御弁17bと同様に機能し、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
<その他の実施の形態>
以上の実施の形態は本発明の精神の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、差圧減圧弁11の出力圧(メインポンプ2aの吐出圧と最高負荷圧との差圧の絶対圧)を圧力補償弁7a,7b,7c…とLS制御弁17bに導いたが、メインポンプ2aの吐出圧と最高負荷圧を別々に圧力補償弁7a,7b,7c…とLS制御弁17bに導いてもよい。
また、上記実施の形態は、建設機械が油圧ショベルである場合について説明したが、油圧ショベル以外建設機械(例えば油圧クレーン、ホイール式ショベル等)であっても、ディーゼルエンジンと排気ガス浄化装置を備え、かつロードセンシング制御を行う油圧駆動システムを搭載するものであれば、上記実施の形態と同様に本発明を適用し、同様の効果が得られる。