JP2019173228A - 印刷用紙 - Google Patents

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泰洋 相澤
Yasuhiro Aizawa
泰洋 相澤
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Abstract

【課題】一般的な商業印刷であるオフセット印刷適性を有すると共に、高速インクジェット印刷適性を有する印刷用紙を提供する。【解決手段】上記課題は、原紙と、該原紙の少なくとも片面に1層以上の塗工層とを有し、カレンダー処理してなる印刷用紙であって、該塗工層中、原紙を基準として最も外側に位置する最表塗工層が、顔料、ラテックス、及び澱粉を含有して滑剤を含まず、該ラテックスのガラス転移温度が5〜40℃であることを特徴とする印刷用紙によって達成される。上記ラテックスの粒径は120〜250nmの範囲が好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、オフセット印刷機に対する適性を有する印刷用紙でありながら、インクジェット印刷機に対する適性をも有する印刷用紙に関する。
商業印刷の主体は、キャスト紙、アート紙、コート紙、微塗工紙、非塗工の普通紙、塗工板紙等を用いたオフセット印刷であるが、近年は多品種小ロット印刷に対応するため、乾式や湿式の電子写真方式、インクジェット方式といった可変情報を扱えるオンデマンド印刷方式が開発されている。これらの印刷方式の中でも、インクジェット方式は幅広の印刷に対応可能で、高速印刷に対応可能であることから、オフセット印刷機の中にインクジェットプリントヘッドを搭載し、固定情報はオフセット印刷で行ない、可変情報はインクジェット印刷で行なう方式が進展している。
インクジェットプリンターは、ラインヘッドを採用することによって高速化が進み、印刷速度は巻取印刷では20m/分以上、速いものでは120m/分以上に達している。印刷速度が20m/分以上であるような高速水性インクジェットプリンターは、水性インクを乾燥させるために機内にドライヤーを有している。最近は、オフセット印刷の代替として、インクジェット印刷方式だけでカラー印刷を行なう要望が高まっている。商業印刷分野においてインクジェット印刷方式が今後成長するためには、オフセット印刷並みの印刷上がりとインク乾燥不良による汚れを発生させない高速水性インクジェット印刷に適応したインク吸収性とを有し、かつ安価で入手し易く、一般商業印刷で多量に使用されているキャスト紙、アート紙、コート紙、微塗工紙等の汎用塗工紙や塗工板紙の外観を有し、オフセット印刷や凸版印刷等の一般商業印刷適性も有する印刷用紙の出現が重要となる。
インクジェット印刷方式は、ノズルから染料インクや顔料インクを記録用紙の表面へ吐出させ、画像を形成させて印刷する方式であるが、ランニングコスト面から、溶剤インクやUVインクに比較して安価な水性インクを使用する傾向が強くなってきている。
従来の塗工紙タイプのインクジェット専用紙は、非晶質シリカ、アルミナ等の比表面積の大きな顔料とポリビニルアルコール等の水溶性接着剤とを主成分とするインク吸収性に富んだインク受容層を有している。そのため、高速インクジェットプリンターで印刷してもインク吸収性は良好であり、滲み、濃度ムラ、乾燥不良による紙面汚れ等の問題は発生しないが、インク受容層の層強度が弱いためにオフセット印刷すると塗工層等が落剥したり、それが後続のインク受容層に再転写したりして印刷物としての商業的価値を著しく損なうばかりか、高価であるため汎用印刷用紙としては使用に適さないのが現状である。
一方、一般的な商業印刷で使用される印刷用紙は、高速インクジェット方式でカラー印刷した場合にはインク吐出量と印刷速度とが相俟って相対的に吸収速度が遅くなり、画像の滲み、紙面上で吸収できないインクが集まることによる濃度ムラの発生、乾燥不良による紙面汚れの発生等の問題が生じる。高速水性インクジェットプリンターは、ドライヤーを有しているとはいえ、一般的な商業印刷で使用される印刷用紙を用いると、インクの乾燥が間に合わないのが現状である。この理由は、そのような印刷用紙の塗工層が炭酸カルシウムやカオリン等のインク吸収性に比較的乏しい顔料を主成分とすることもあるが、タック性の高いオフセット印刷用インキを用いた印刷によっても塗工層等が落剥しないよう、バインダーにより塗工層強度を向上させる結果、顔料同士の隙間をバインダーが塞いでしまうことにもよる。
そこで、特許文献1には、安価でありながら高速インクジェット印刷適性を有すると共に、一般的な商業印刷であるオフセット印刷適性及び凸版印刷適性を有するオンデマンド印刷用塗工紙として、基紙の少なくとも片面にインク受理層を設け、カレンダー処理してなる印刷用塗工紙であって、前記基紙が内添サイズ剤及び外添サイズ剤を含有せず、かつ、内添紙力増強剤を含有し、前記インク受理層が、顔料とスチレン−ブタジエンラテックスと潤滑剤とを含有し、前記顔料の40質量%以上が炭酸カルシウムであり、枚葉紙では14.85m/分以上、ロール紙では20m/分以上の水性インクを用いた高速インクジェット印刷用であるオンデマンド印刷用塗工紙が開示されている。
ところで、一般の印刷用紙は、通常その平滑性及び光沢度を高めるためにスーパーカレンダー処理されるが、カレンダー処理ではロール汚れ(ダスティング)が発生し易く、その抑制のために特許文献1の如く塗工層に潤滑剤を使用する。ところが、スーパーカレンダー処理を行なうと塗工層の空隙構造が緻密になり、印刷品質、特にインキ受理性、インキ吸収性等が低下するという問題点があった。
特開2016−147398号公報
オンデマンド印刷機の普及に伴い、印刷用紙は、刷版印刷機だけでなくオンデマンド印刷機に対応する必要がある。特に、商業印刷物の生産に多く用いられるオフセット印刷機と、インクジェット印刷機とに適用できる必要がある。
オフセット印刷機は、刷版に付着したインキがブランケットを介して印刷用紙に接触して転写され、印刷物を生産する。インクジェット印刷機は、用紙と非接触である微細なノズルからインク滴を印刷用紙に吐出して、印刷物を生産する。このような印刷機構の違いから、オフセット印刷機のインキは、粘着性を有し、かつ色材含有濃度が高い。インクジェット印刷機のインクは、流動性を有し、かつ色材含有濃度が低い。
従来のオフセット印刷機向けの印刷用紙は、インクジェット印刷機に使用すると、特にカラー印刷の場合は、画像の滲み、紙面上で吸収できないインクが集まることによる濃度ムラ(ビーディング)の発生、乾燥不良による紙面汚れの発生等の問題が生じる。この原因は、インクジェットインクが流動性を有し、かつ色材含有濃度が低いためもあるが、上述したように印刷用紙の塗工層がインク吸収性に比較的乏しい顔料を主成分とすることや、平滑性及び光沢度を高めるためのカレンダー処理が、塗工層の空隙構造を緻密にしてしまうことによる。
そこで、カレンダー処理によって塗工層が潰されないように、可能な限り低い線圧で塗工層表面の平滑化を図ると共に高光沢を得る方法が考えられ、その一つに熱カレンダーによる平滑化処理が知られている。熱カレンダーは、従来のスーパーカレンダーと比較して、少ないニップ数で高い表面平滑及び高光沢を得ることができると共に、塗工層の空隙構造が比較的保持される利点を有している。これは紙基材を比較的嵩高に保持したまま、加熱金属ロールと弾性ロールからなるニップを通過する間に、塗工層に接着剤として使用されている共重合体ラテックス等の熱可塑性物質が高熱と圧力によって可塑化され、塗工層中の顔料を効果的に配向させて塗工層表面の平滑化が行なわれると考えられている。したがって、ラテックスのガラス転移温度が低いと塗工層に滑剤を併用しても高温処理によりカレンダーロール表面に付着汚れが発生することがあり、ガラス転移温度が高いと塗工層が硬くなって熱カレンダーによる平滑化効果が低下する。
また、インク吸収性等は、塗工層中に滑剤を含むことも大きな要因であると考えられる。すなわち、一般に、印刷用紙は光沢感や平滑性を付与するためにカレンダー処理を行なうが、カレンダーのロール汚れを抑止するために塗工層に滑剤を使用する。しかし、滑剤は総じて撥水性を有するため、インクジェット用インクの吸収性が低下すると共に塗工層表面に留まる量が増える結果、インクの乾燥が間に合わなくなる。また、一般に塗工層における滑剤の使用量は少量であるとはいえ、滑剤の大部分は塗工表面に局在し、かつ上述したようにインクジェット印刷機のインクは流動性を有するので、滑剤上もしくは滑剤の一部にかかって着弾したインクは、たとえ一旦は正常形状のドットを形成しても、滑剤の撥水性とインクジェットインクの流動性とが相俟って滑剤によって弾かれ、ベタ部では白抜けが発生すると共に白抜け近傍の色濃度が増し、細線部では用紙表面の滑剤にかかった部分の細線の途切れや歪みを誘発し、画質の低下を誘発するといった問題があった。
本発明の目的は、オフセット印刷機に対する適性を有する印刷用紙でありながらインクジェット印刷機で印刷できることを目指し、インクジェット印刷機に対して下記の品質を有する印刷用紙を提供することである。
(1)表面平滑性に優れ、光沢ムラがなく、最表塗工層に滑剤を併用しなくても熱カレンダー処理においてダスティング(ロール汚れ)の発生が抑止されること。
(2)インク吸収性に優れ、ドットの歪み、濃度ムラ(ビーディング)、インク乾燥不良による紙面汚れの発生がないこと。
(3)印刷部分のベタ部では白抜けや微細な濃度ムラがなく、細線部では細線の途切れや歪みがないこと。
本発明者は鋭意研究を行なった結果、本発明の目的は以下により達成される。
[1]原紙と、該原紙の少なくとも片面に1層以上の塗工層とを有し、熱カレンダー処理してなる印刷用紙であって、該塗工層中、原紙を基準として最も外側に位置する最表塗工層が、顔料、ラテックス、及び澱粉を含有して滑剤を含まず、該ラテックスのガラス転移温度が5〜40℃であることを特徴とする印刷用紙。
[2]上記ラテックスの粒子径が120〜250nmである上記[1]記載の印刷用紙。
本発明により、平滑度及び白紙光沢が高く、熱カレンダー処理においてロール汚れの発生が抑止され、一般的な商業印刷であるオフセット印刷適性を有すると共に、高速インクジェット印刷機に対するインク吸収性及び画像均一再現性を有する印刷用紙を提供することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の印刷用紙は、原紙と、この原紙の少なくとも片面に塗工層とを有する。塗工層において、原紙を基準として最も外側に位置する最表塗工層は、顔料、ラテックス、及び澱粉を含有し、滑剤を含有しない。
本発明において、「塗工層を有する」とは、用紙の断面を電子顕微鏡によって観察した場合に、原紙と区別し得る明確な塗工層を有する用紙を指す。例えば、樹脂成分やポリマー成分を塗工し、塗工された前記成分が少量であって原紙に吸収され、結果として、印刷用紙の断面を電子顕微鏡によって観察した際に原紙と区別できる明確な層を有しない場合、「塗工層を有する」に該当しない。したがって、例えば後述する水溶性カチオン性化合物を本発明に係る原紙に含浸させたり、水溶性カチオン性化合物含有塗工液を原紙や最表塗工層を包含する塗工層上に塗布した場合、当該水溶性カチオン性化合物含有層が明確な層を有しなければ、水溶性カチオン性化合物塗工層と呼称しない。
原紙は、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、及びDIP等の古紙パルプから選ばれる少なくとも1種のパルプに、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン等の各種填料、更に、サイズ剤、定着剤、歩留まり剤、カチオン性樹脂や多価陽イオン塩等のカチオン化剤、紙力剤等の各種添加剤を必要に応じて配合した紙料を抄造した抄造紙である。更に原紙には、抄造紙にカレンダー処理、澱粉やポリビニルアルコール等で表面サイズ処理、あるいは表面処理等を施した上質紙が含まれる。更に原紙には、表面サイズ処理あるいは表面処理を施した後にカレンダー処理した上質紙が含まれる。
紙料中には、その他の添加剤として顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤等の1種または2種以上を、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、適宜配合することができる。
塗工層は、塗工層塗工液を塗工及び乾燥することによって原紙の少なくとも片面に設けることができる。塗工層は1層または2層以上である。塗工層中、原紙を基準として最も外側に位置する塗工層を最表塗工層という。塗工層が1層の場合はその塗工層が最表塗工層になる。最表塗工層は顔料、ラテックス、及び澱粉を少なくとも含有する。尚、原紙と最表塗工層との間に存在する塗工層または層は、顔料、ラテックス、及び澱粉の夫々の有無及び種類について特に限定しない。また、本発明に係る最表塗工層上には、顔料等を含まない「層」を設けても良いが、そのような「層」にも滑剤は含有させない。
塗工層の各塗工量は特に限定されない。好ましい塗工量は、乾燥固形分量で片面あたり4g/m以上30g/m以下の範囲である。塗工層が2層以上の場合は、それらの合計の値である。塗工層が2層以上の場合、最表塗工層が乾燥固形分量で片面あたり塗工量の70質量%を占めることが好ましい。
本発明に係る最表塗工層は、原紙の少なくとも片面に有していれば良く、両面に有しても良い。原紙の両面に塗工層を有する場合、少なくとも片面の最表塗工層には顔料、ラテックス、及び澱粉を少なくとも含有していれば良く、両面の最表塗工層とも顔料、ラテックス、及び澱粉を含有する場合であっても、その成分比や夫々の成分の種類は異なっていても良い。但し、顔料、ラテックス、及び澱粉を含有する最表塗工層には滑剤を含有しない。一方、最表塗工層が原紙の片面の場合、すなわち塗工層を有しても少なくとも顔料、ラテックス、または澱粉の何れかを含有しない場合は、原紙において最表塗工層を有する側とは反対面に従来公知のバックコート層を有しても良く、このバックコート層には滑剤を含有していても良い。
原紙に塗工層を設ける方法は特に限定されない。例えば、製紙分野で従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いて、塗工層塗工液を塗工及び乾燥する方法を挙げることができる。塗工装置の例としては、コンマコーター、フィルムプレスコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、Eバーコーター、フィルムトランスファーコーター等を挙げることができる。乾燥装置の例としては、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等の各種乾燥装置を挙げることができる。
本発明に係る塗工層は熱カレンダー処理を施す。熱カレンダーは、従来のスーパーカレンダーと比較して、少ないニップ数で高い表面平滑及び高光沢を得ることができる利点を有している。これは原紙を比較的嵩高に保持したまま、加熱金属ロールと弾性ロールからなるニップを通過する間に、塗工層に接着剤として使用されているラテックス等の熱可塑性物質が高熱と圧力によって可塑化され、塗工層中の顔料を効果的に配向させて塗工層表面の平滑化を行なうことができ、表面平滑及び高光沢を得ることができると共に、塗工層の空隙構造が大きく損なうことがないため、インク吸収性の悪化を抑止することができる。本発明において、熱カレンダーの温度は130℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。
本発明の印刷用紙には、最表塗工層がキャスト処理された印刷用紙を含めない。
本発明の印刷用紙に係る最表塗工層は、少なくとも顔料、ガラス転移温度が5〜40℃であるラテックス及び澱粉を含有する。
最表塗工層に含有させる顔料としては、従来公知の印刷塗工紙に使用される白色顔料使用することが可能である。白色顔料は、例えば炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム)、カオリン、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化チタン、タルク、サチンホワイト、リトポン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、活性白土、珪藻土等の無機顔料、及びプラスチック顔料等の有機顔料を挙げることができ、単独または併用して用いられる。これらの中でも炭酸カルシウム及びカオリンが好ましく、炭酸カルシウムがより好ましく、インクジェット印刷機に対する印刷適性の点から軽質炭酸カルシウムが好適である。本発明においては、少なくとも最表塗工層は層中の全顔料の40質量%以上が炭酸カルシウムであることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることが好適である。
最表塗工層の顔料として2種以上併用する場合は、軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムとカオリン、重質炭酸カルシウムとカオリン、軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムとカオリンの各組合せで、最表塗工層の顔料中80質量%以上であることが好ましい。最表塗工層中の炭酸カルシウムとカオリンとの含有質量比は、炭酸カルシウム:カオリン=9:1〜5:5が好ましい。
最表塗工層と原紙との間に塗工層を設ける場合、その塗工層には顔料を含んでいてもいなくても良いが、含量を含ませる場合は最表塗工層と同一顔料種(複数種であればその比率)でなくても良い。
本発明において、ラテックスとは、水中に安定して分散することができる(共)重合体の樹脂を指す。ラテックスの例としては、従来公知の水分散性バインダであって、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体またはメチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系樹脂、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの重合体あるいはこれら単量体とスチレン、アクリル酸、メタクリル酸等との共重合体等のアクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、またはこれらの各種共重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性樹脂、あるいはメラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂、天然ゴム等を挙げることができる。
これらのうち、少なくとも本発明に係る最表塗工層にはラテックスとしてガラス転移温度が5〜40℃の共重合体を用いる。ガラス転移温度が5〜40℃のラテックスとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系樹脂、酢酸ビニル系共重合体等のビニル系樹脂、あるいはこれらの各種重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ溶解性あるいは非アルカリ溶解性の重合体ラテックス等の重合体ラテックスが挙げられる。
尚、重合体のガラス転移温度は重合に供する単量体の種類により決定され、数種の単量体を共重合させる共重合体にあっては、重合に供する単量体の種類及びその配合率を適宜調節して共重合させることにより、ガラス転移温度を5〜40℃の範囲に保持させることができる。
本発明では、少なくとも最表塗工層塗工液を塗工、乾燥後に熱カレンダーで平滑化処理を施すが、ラテックスのガラス転移温度が5℃末満であると、塗工層表面の粘着性が高まり、熱カレンダーを構成する金属ロール(加熱手段を有する金属ロール)の表面に塗工層の一部が捉えられ、少なくとも滑剤なしでは時間の経過と共にロール汚れが顕著になって連続操業が困難になる。また、ガラス転移温度が40℃を超えると、塗工層が硬くなり、熱カレンダーによる平滑化効果が低下する。
本発明に係る最表塗工層には、ラテックスの1種としてガラス転移温度が5〜40℃の共重合体を2種以上組み合わせて用いることができる。また、ガラス転移温度が5〜40℃のラテックスにガラス転移温度が5℃未満または40℃より高いラテックスを併用するのは差し支えないが、その場合であっても、最表塗工層中の全ラテックス量の60質量%以上、より好ましくは80質量%以上がガラス転移温度が5〜40℃の範囲のものであり、かつ2種以上のラテックスの夫々のガラス転移温度に配合比率を掛けた総和のガラス転移温度が5〜40℃の範囲内であることが好ましい。
本発明に係る最表塗工層に用いるラテックスの粒子径は120〜250nmが好ましい。ラテックスの粒子径が120nm未満になると、顔料間の空隙をあまり潰すことなくインクジェットインクの吸収性等には悪影響が少ないが、顔料間の間隙にラテックス粒子が入り込んで接着点が少なくなることから、接着強度が低下する傾向にあり、オフセット印刷機に対する適性が低下する傾向にあり、特にガラス転移温度が低いラテックスは使用に適さない。一方、粒子径が250nmより大きくなると、顔料接着強度すなわちオフセット印刷機に対する適性には問題ないが、顔料間の隙間をラテックス粒子が塞いでしまうことからインク吸収性等に悪影響が発現しやすくなる傾向にある。
ラテックスの粒子径調整方法は、公知の方法で行なうことができる。例えば、シード重合においては、用いるシードラテックスの粒子径、または使用量を調整すれば良い。また、シードを用いない重合法では、乳化剤種類、乳化剤量、重合開始剤量、重合温度等の条件を適度に設定すれば良い。通常、乳化剤の量、及び重合開始剤量が多いほど得られるラテックスの粒子径は小さくなる。尚、本発明において、ラテックスの粒子径はレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置により求めた数平均ラテックス粒子径である。
最表塗工層以外の塗工層にラテックスを用いる場合であっても、ガラス転移温度が5〜40℃のラテックスを用いるのが好ましいが、ガラス転移温度が5〜40℃の範囲外のラテックスを用いる場合、ガラス転移温度は5℃未満のものが好ましく、特に当該塗工層にも熱カレンダーを掛けるのであれば、滑剤を併用することが好ましい。
本発明に係る最表塗工層には顔料及びガラス転移温度が5〜40℃のラテックスに加えて澱粉を用いる。澱粉類は、グルコースがグリコシド結合によって重合した多糖類、及びグルコースがグリコシド結合によって重合した多糖類においてグルコースが有する水酸基を種々置換基によって変性した多糖類である。本発明に係る澱粉の例としては、澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉、ジアルデヒド澱粉、燐酸エステル化澱粉及び尿素燐酸エステル化澱粉等のエステル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、並びにヒドロキシブチル化澱粉等を挙げることができる。
本発明に係る最表塗工層は、澱粉の少なくとも1種が尿素燐酸エステル化澱粉であることが好ましい。尿素燐酸エステル化澱粉は、燐酸エステル基とカルバミン酸エステル基とをグルコースに有する澱粉である。燐酸エステル基を導入する方法の例としては、トリポリ燐酸ナトリウム等の燐酸塩を単独で添加して焙焼反応させる方法、燐酸エステル基とカルバミン酸エステル基とを導入する方法の例としては、無機燐酸類と共に尿素を添加して焙焼反応させる方法を挙げることができる。尿素燐酸エステル化澱粉は、主に、後者の無機燐酸類と尿素を焙焼反応させる方法によって各種尿素置換度のものを得ることができる。尿素燐酸エステル化澱粉は最表塗工層の澱粉中60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
尿素燐酸エステル化澱粉は尿素置換度平均値が0.005以上0.05以下であることが好ましい。「尿素置換度」とは、澱粉を構成するグルコース単位が有する水酸基におけるカルバミン酸エステル基の置換度である。例えば、尿素置換度=0.02は、澱粉を構成するグルコース単位100個当たり置換基が2個有することを意味する。尿素置換度は、澱粉において従来から知られた値であって公知の方法で求められる。例えば、熱分解GC法またはCHN元素分析計を用いた窒素含有量から求めることができる。また、「澱粉科学実験法」鈴木繁男・中村道徳編集、1979年第1刷発行、朝倉書店発行を参考にすることができる。
本発明に係る最表塗工層には、ラテックス及び澱粉以外に従来公知のバインダーを含有することができる。バインダーの例としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン及び大豆蛋白等の天然高分子樹脂またはその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及びその各種変性ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコール、及びポリエチレングリコール等を挙げることができる。
最表塗工層において、ラテックス及び澱粉は最表塗工層のバインダー中の80質量%以上を占めることが好ましい。また、最表塗工層のバインダー(ラテックス、澱粉、及び場合によりこれら以外のバインダー)の含有量は、最表塗工層中の顔料100質量部に対して3質量部以上40質量部以下が好ましく、5質量部以上25質量部以下がより好ましい。
また、最表塗工層中におけるラテックスと澱粉との含有質量比は乾燥固形分量としてラテックス:澱粉=9:1〜6:4であることが好ましい。
本発明の印刷用紙には、水溶性カチオン性樹脂及び水溶性多価陽イオン塩から選ばれる少なくとも1種の水溶性カチオン性化合物を含有させることが好ましい。これにより、オフセット印刷適性を有しつつ、インクジェット印刷機に対するインク吸収性がより良好になり、高速インクジェット方式によるカラー印刷に充分に対応し得る印刷用紙を得ることができる。
本発明において、水溶性カチオン性樹脂は、カチオン性ポリマーまたはカチオン性オリゴマーであり、従来公知のものを使用することができる。好ましい水溶性カチオン性樹脂は、プロトンが配位し易く、水に溶解したとき解離してカチオン性を呈する1級〜3級アミンまたは4級アンモニウム塩を含有するポリマーまたはオリゴマーである。水溶性カチオン性樹脂の具体例としては、ポリエチレンイミン、ポリアミン及び変性ポリアミン、ポリビニルピリジン、ポリアミドアミン、ポリビニルアミン、変性ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリアリルアミン、ポリジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリジアルキルアミノエチルアクリレート、ポリジアルキルアミノエチルメタクリルアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミド等との共重合物、ジメチルアミン−エピクロルヒドリン重縮合物等の脂肪族モノアミンとエピハロヒドリン化合物との重縮合物もしくはジエチレントリアミン−エピクロルヒドリン重縮合物等の脂肪族ポリアミンとエピハロヒドリン化合物との重縮合物、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物、ジシアンジアミドジエチレントリアミン重縮合物、ポリエポキシアミン、ポリアミド−エポキシ樹脂、メラミン樹脂、並びに尿素系樹脂を挙げることができる。これらのうちで、変性ポリアミンまたは変性ポリアミドが好ましい。また、本発明に用いる水溶性カチオン性樹脂の平均分子量は特に限定されないが、平均分子量は500以上10万以下が好ましく、1000以上6万以下がより好ましい。
また、水溶性多価陽イオン塩は、金属の多価陽イオンを含む水溶性塩である。好ましい多価陽イオン塩は、金属の多価陽イオンを含み、20℃の水に1質量%以上溶解し得る塩である。金属の多価陽イオンの例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ニッケル、亜鉛、銅、鉄、コバルト、スズ、マンガン等の二価陽イオン;アルミニウム、鉄、クロム等の三価陽イオン;またはチタン、ジルコニウム等の四価陽イオン;並びにそれらの錯イオンである。金属の多価陽イオンと塩を形成する陰イオンとしては、無機酸及び有機酸のいずれでもよく、特に限定されない。無機酸の例としては、塩酸、硝酸、燐酸、硫酸等を挙げることができる。有機酸の例としては、蟻酸、酢酸、乳酸、枸櫞酸、蓚酸、琥珀酸、有機スルホン酸等を挙げることができる。本発明において、水溶性多価陽イオン塩としては、塩化カルシウム、蟻酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム等のカルシウム塩が好ましく、塩化カルシウム及び硝酸カルシウムがより好ましい。
本発明の印刷用紙に用いる水溶性カチオン性化合物は、原紙に付与するか、最表塗工層を含む1層以上の塗工層の何れか一層中に含有させるか、水溶性カチオン性化合物単独またはバインダー共存溶液を最表塗工層を包含する塗工層上に塗布すれば良い。
水溶性カチオン性化合物を原紙に付与する方法としては、紙料中に添加して抄造する方法や原紙抄造後に原紙表層に付与する方法があり、後者は更にサイズプレス液に添加してサイズプレスを用いて付与する方法や、表面処理液に添加してサイズプレス以外のカーテンコーターやエアナイフコーター等の公知の塗工手段を用いて付与する方法等がある。本発明において、水溶性カチオン性化合物は原紙表層に付与することが好ましい。これにより、水溶性カチオン性化合物を効率良く原紙に付与することができると共に、インクジェットインクの裏抜けを抑制しつつインク吸収性を向上させることができる。
また、最表塗工層を含む1層以上の塗工層の何れか一層に含有させる方法は、最表塗工層を含む1層以上の塗工層を形成させる塗工液中に添加して、公知の塗工手段を用いて塗布する方法がある。更に、水溶性カチオン性化合物単独またはバインダー共存溶液を最表塗工層を包含する塗工層上に塗布する方法は、水溶性カチオン性化合物含有溶液を公知の塗工手段を用いて塗布する方法がある。これらのうち、最表塗工層を含む1層以上の塗工層を形成するための塗工液中の成分が水溶性カチオン性化合物と作用して凝集等双方成分の目的性能の発揮を阻碍するようなことがなければ、最表塗工層を含む1層以上の塗工層を形成させる塗工液中に添加して塗布する方法が好ましく、目的性能の発揮を阻碍するようであれば、水溶性カチオン性化合物含有溶液を最表塗工層を包含する塗工層上に塗布する方法が好ましい。
本発明の印刷用紙に用いる水溶性カチオン性化合物は、1種または2種以上を併用しても良い。1種のみ用いる場合は水溶性カチオン性樹脂が好ましい。また、2種以上併用する場合はその少なくとも1種は水溶性カチオン性樹脂が好ましい。
また、原紙、最表塗工層を含む1層以上の塗工層の何れか一層中、最表塗工層を包含する塗工層上、の何れか2箇所以上に水溶性カチオン性化合物を付与する場合、付与する箇所により水溶性カチオン性化合物の種類や量を変えても良い。
本発明の印刷用紙中の水溶性カチオン性化合物の含有量は、片面あたり0.01g/m以上1g/m以下が好ましく、0.05g/m以上0.5g/m以下がより好ましい。
本発明に係る最表塗工層には分散剤を併用することが好ましい。本発明に用いる分散剤は、顔料等の水に不溶性物質を水性液中で分散するための材料であって、従来公知の分散剤を用いることできる。本発明に用いる分散剤の例としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム等のアクリル系樹脂、アクリル酸やメタクリル酸にこれらのアルキルエステル、(ポリ)エチレンオキシドエステル等を共重合させたポリカルボン酸のナトリウム塩等のポリカルボン酸系樹脂、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、イソブチレン−マレイン酸系樹脂、スルホン化ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、縮合リン酸塩等を挙げることができる。本発明に用いる分散剤は、ポリカルボン酸系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上が好ましい。
本発明に係る最表塗工層には、以上の成分組成物加えて必要に応じて塗工紙分野で従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤の例としては、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、抑泡剤、浸透剤、流動性改良剤、湿潤剤、耐水化剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤等を挙げることができる。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。ここで「質量部」及び「質量%」は、乾燥固形分量あるいは実質成分量の各々「質量部」及び「質量%」を表す。塗工層の塗工量は乾燥固形分量を表す。
<原紙>
濾水度400mlcsfのLBKP100質量部からなるパルプスラリーに、填料として炭酸カルシウム8質量部、両性澱粉1.0質量部、硫酸バンド0.8質量部、内添サイズ剤を添加して紙料を調成し、該紙料を長網抄紙機で抄造し、得られた抄造紙の両面にサイズプレス装置で両面に澱粉を付着させ、マシンカレンダー処理をして原紙を作製した。
<最表塗工層塗工液>
最表塗工層塗工液は、下記の内容により調製した。
炭酸カルシウム 部数は表1に記載
カオリン 部数は表1に記載
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス
ガラス転移温度、粒子径、部数は表1に記載
燐酸エステル化澱粉 部数は表1に記載
滑剤(ステアリン酸カルシウム) 部数は表1に記載
水溶性カチオン性化合物 種類及び部数は表1に記載
上記の内容で配合し、水で混合・分散して、濃度50質量%に調整した。尚、炭酸カルシウム及びカオリンは夫々別個にポリアクリル酸ナトリウムを添加して分散させた後、最表塗工層塗工液の調製に用いた。
尚、本発明において、ラテックスの粒子径はレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910(堀場製作所製)により求めた数平均ラテックス粒子径(単位;nm)である。
<印刷用紙>
印刷用紙を以下の手順にて作製した。
原紙上に最表塗工層塗工液をブレードコーターにて両面塗工し、その後に乾燥した。塗工量は、片面あたり12g/mとした。更に乾燥後に、熱カレンダー処理を施した。熱カレンダーはオンコーター仕様の2ユニットの熱カレンダーに塗工面が金属ロール(表面温度250℃)に接触するように通紙を行なって印刷用塗工紙を得た。
Figure 2019173228
<耐ロール汚れの評価>
熱カレンダーのロール汚れ(ダスティング)を目視にて観察し、下記の基準にて評価した。本発明において、3以上の評価であれば印刷用紙は耐ロール汚れが良好であるとする。
5:カレンダーロール表面に汚れが全くなく、非常に良好である。
4:カレンダーロール表面にごく僅かに汚れが発生するが、良好である。
3:カレンダーロール表面に僅かに汚れが発生するが、実用上問題ない。
2:カレンダーロール表面の汚れが多く、劣る。
1:カレンダーロール表面の汚れがかなり多く、著しく劣る。
<オフセット印刷適性の評価>
オフセット印刷機として、小森社製リスロン40(L−40)を使用し、墨、藍、紅及び黄インキにて4色印刷を8500枚/時の印刷速度で印刷し、耐刷力を評価した。本発明において、3以上の評価であればオフセット印刷適性を有するものとする。
4:ブランケットの汚れが殆どなく、良好である。
3:ブランケットの汚れが多少あるが、画線部の抜けが殆どなく、良好である。
2:ブランケットの汚れが多く、画線部の抜けがある。
1:ブランケットの汚れが酷く、画線部の抜けも多い。
<インク吸収性1の評価>
ミヤコシ社のインクジェット印刷機MJP20MX−7000を用い、水性顔料インクにて印刷速度:150m/分の条件で1000m、評価画像を印刷した。評価画像は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各単色及びブラックを除く他の3色インクによる2重色(レッド、グリーン、ブルー)の計7色のベタ画像部パターンを、3cm×3cm四方で横一列に隙間なく配置する画像とした。各色ベタ部画像の印刷部分を10mごとに印刷用紙全幅にわたって俯瞰し、濃度ムラ及び乾燥不良による紙面汚れの発生を下記の基準にて評価した。本発明において、3以上の評価であれば、印刷用紙はインク吸収性1を有するものとする。
5:濃度ムラ及び乾燥不良による紙面汚れの発生が全くない。
4:色によってはごく僅かに濃度ムラがあるが、紙面汚れはない。
3:色濃度が僅かに不均一であり、紙面汚れが僅かに発生している。
2:色濃度が部分的に不均一であり、紙面汚れが多少発生している。
1:全体に色濃度が不均一であり、紙面汚れが著しく発生している。
<インク吸収性2の評価>
ミヤコシ社のインクジェット印刷機MJP20MX−7000を用い、水性顔料インクにて印刷速度:150m/分の条件で1000m、日本規格協会発行の標準画像データ(画像ネーム:N5A)を用いた評価画像を印刷した。画像の滲み及びドットの歪みを目視にて観察し、下記の基準にて評価した。本発明において、3以上の評価であれば、印刷用紙はインク吸収性2を有するものとする。
5:滲みが全くなく、ドットは正常の形状を有している。
4:滲みが僅かに発生するが、ドットは正常の形状を有している。
3:滲みが少々発生すると共に、ドットは正常の形状から若干崩れている。
2:滲みが多少発生すると共に、ドットは正常の形状から崩れ、幾分鮮鋭さに欠ける。
1:滲みが著しく発生すると共にドット形状が乱れ、鮮鋭さに欠ける。
<画像均一再現性1の評価>
インク吸収性1評価用に印刷した印刷部分を100mごとに印刷用紙全幅にわたって詳細に白抜けや微細な濃度ムラを観察し、下記の基準にて評価した。本発明において、3以上の評価であれば、印刷用紙は画像均一再現性1を有するものとする。
5:微細部分で白抜けが全くなく、色濃度が均一である。
4:微細部分で白抜けはないが、僅かに色濃度が不均一部分がある。
3:微細な僅かに白抜けがあり、当該白抜け部分の周囲は色濃度が僅かに不均一である。
2:微細な白抜けがあり、当該白抜け部分の周囲は色濃度が多少不均一である。
1:評価2より大きな白抜けがあり、当該白抜け部分の周囲は色濃度が不均一である。
<画像均一再現性2の評価>
インク吸収性2評価用に印刷した印刷部分を100mごとに印刷用紙全幅にわたって詳細に細線の途切れや弾きに起因する歪みを観察し、下記の基準にて評価した。本発明において、3以上の評価であれば、印刷用紙は画像均一再現性2を有するものとする。
5:細線の途切れや歪みが全くない。
4:ごく僅かに細線の途切れや歪みが発生ししいるが、一瞥では目立たない。
3:少々細線の途切れや歪みが発生しているが、一瞥では殆ど目立たない。
2:細線の途切れや歪みが発生しており、一瞥でも分かる。
1:細線の途切れや歪みが発生しており、一瞥でも目立っている。
評価結果を表2に示す。
Figure 2019173228
表2から、本発明に該当する実施例1〜18は、カレンダーロール汚れがなく、オフセット印刷適性に優れると共に、画像の滲み、ドットの歪み、濃度ムラ、乾燥不良による紙面汚れの発生がなくインク吸収性に優れ、印刷部分のベタ部では白抜けや微細な濃度ムラがなく、細線部では細線の途切れや歪みがないこと高品位な印刷画質が得られることが分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1〜5は、これらの効果の何れかが得られないと分かる。

Claims (2)

  1. 原紙と、該原紙の少なくとも片面に1層以上の塗工層とを有し、熱カレンダー処理してなる印刷用紙であって、該塗工層中、原紙を基準として最も外側に位置する最表塗工層が、顔料、ラテックス、及び澱粉を含有して滑剤を含まず、該ラテックスのガラス転移温度が5〜40℃であることを特徴とする印刷用紙。
  2. 上記ラテックスの粒径が120〜250nmである請求項1記載の印刷用紙。
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