JP2019173076A - フェライト系ステンレス鋼溶接接手および燃料電池用部材 - Google Patents
フェライト系ステンレス鋼溶接接手および燃料電池用部材 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2019173076A JP2019173076A JP2018060887A JP2018060887A JP2019173076A JP 2019173076 A JP2019173076 A JP 2019173076A JP 2018060887 A JP2018060887 A JP 2018060887A JP 2018060887 A JP2018060887 A JP 2018060887A JP 2019173076 A JP2019173076 A JP 2019173076A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- less
- stainless steel
- ferritic stainless
- weld metal
- metal part
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E60/00—Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
- Y02E60/30—Hydrogen technology
- Y02E60/50—Fuel cells
Landscapes
- Fuel Cell (AREA)
Abstract
Description
更に、このような高温運転下の燃料電池において、多量の水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素に加え、多量の水素や、炭化水素系燃料由来の硫化水素を微量含んだ雰囲気(以下、浸炭性/還元性/硫化性環境、という。)の下に曝されることとなる。このような雰囲気中に、例えば鋼材料が曝されると、材料表面の浸炭、硫化による腐食が進行する状況になり、動作環境としては過酷な状況となる。
さらに、将来、燃料電池システムの普及拡大に向けて、コスト低減は必要不可欠であり、使用材料の最適化による合金コストの低減は重要な課題である。
また、SOFCシステムやPEFCシステムの場合、燃料電池の運転温度が高温となるため、高温強度のさらなる向上が求められる。
さらには、燃料電池用部材として溶接構造を採用する場合には、475℃脆性やσ脆性に起因した溶接部の脆性破壊が回避可能な溶接構造であることも求められる。
[1]フェライト系ステンレス鋼母材と溶接金属部とからなる溶接継手であって、
前記溶接金属部の化学成分が、質量%にて、
Cr:12.0〜16.0%、
C:0.030%以下、
Si:2.50%以下、
Mn:1.00%以下、
P:0.050%以下、
S:0.0030%以下、
Al:1.00〜2.50%、
N:0.030%以下、
Nb:1.00%以下、
V:0〜1.00%、
Ni:0〜1.0%、
Cu:0〜1.0%、
Mo:0〜1.0%、
W:0〜1.0%、
Co:0〜0.50%、
As:0〜0.05%、
Pb:0〜0.005%、
Zr:0〜0.10%、
Zn:0〜0.03%、
Y:0〜0.10%、
La:0〜0.10%、
Hf:0〜0.10%、
Sb:0〜0.10%、
Ta:0〜0.5%
REM:0〜0.10%
を含み、更に、
B:0.0200%以下、
Sn:0.20%以下、
Ga:0.0200%以下、
Mg:0.0200%以下、
Ca:0.0100%以下
の1種または2種以上を含み、且つ下記式(1)を満たし、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼溶接継手。
10(B+Ga)+Sn+Mg+Ca>0.020 ・・・(1)
なお、式(1)中の各元素記号は、溶接金属部中の各元素の含有量(質量%)を示す。
[2]前記溶接金属部の化学成分が、Nb:0.001〜1.0%、およびV:0.001〜1.0%を含み、かつ下記式(2)を満たすことを特徴とする上記[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接継手。
(Nb+V)/{2×(C+N)}≧5.0 ・・・(2)
なお、式(2)中の各元素記号は、溶接金属部中の各元素の含有量(質量%)を示す。
[3]前記溶接金属部の化学成分が、更に、質量%にて、
Ni:0.02〜1.0%、Cu:0.02〜1.0%、Mo:0.02〜1.0%、W:0.02〜1.0%の1種または2種以上からなる第1群、および、
Co:0.10〜0.50%、As:0.001〜0.05%、Pb:0.0001〜0.005%、Zr:0.0001〜0.10%、Zn:0.01〜0.03%、Y:0.0001〜0.10%、La:0.0001〜0.10%、Hf:0.0001〜0.10%、Sb:0.003〜0.10%、Ta:0.002〜0.5%、REM:0.001〜0.10%の1種または2種以上からなる第2群のうち、少なくともいずれかの群を含有することを特徴とする上記[1]または[2]に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接継手。
[4]前記溶接金属部における結晶粒径の大きさが600μm以下であることを特徴とする上記[1]〜[3]の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接継手。
[5]燃料改質器、熱交換器あるいは燃料電池部材に適用されることを特徴とする上記[1]〜[4]の何れか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接継手。
[6]燃焼器、あるいはバーナーの部材に適用されること特徴とする上記[1]〜[5]の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接継手。
以下に本発明で得られた知見について説明する。
(a)母材部に対し、溶接部では結晶粒径が大きくなるため、475℃脆性やσ脆性に起因した破壊が生じやすくなる。この破壊の場合、へき開破面を呈する。Al含有フェライト系ステンレス鋼では、Alを含有していないフェライト系ステンレス鋼と比較し溶接時の結晶粒径が粗大化しやすい傾向にある。溶接継手における溶接金属部(本実施形態では溶接施工時に溶融して凝固した領域のことを意味する)の結晶粒径は600μm以下であることが好ましい。
(h)通常、750〜800℃付近の高温域で運転中の構造体で課題となる変形を抑止するには、材料であるフェライト系ステンレス鋼の高温強度、特に750℃付近における0.2%耐力を高め、かつ800℃付近における0.2%耐力の低下を抑制することが有効である。
(m)また、前述した水素および硫化成分を含む改質ガス環境下の耐酸化性を高めるにはSi、Al、Nb、Mnの含有量を所定の範囲内に調整することで、Al系酸化皮膜の形成の促進と、当該皮膜の保護性を高めることが効果的である。さらに、フェライト系ステンレス鋼におけるB、Nb、Sn、Mg、Ca、Gaの添加は、改質ガス環境下の耐酸化性を損なわせるおそれはなく、むしろMg、Snの微量添加はAl系酸化皮膜の保護性をより高め耐酸化性の効果も奏する。なお、SiはAlと同様に、溶接組織の柱状晶化を促進させる元素でもあるため、Al系酸化皮膜の形成促進の観点からSi量を高めると、一方で溶接金属部の粗大化が懸念される。しかし、Nb、Sn、Mg、Ca、Gaの微量添加によって、溶接組織の柱状晶化を十分に抑制できることから、本実施形態のように、Si量の比較的高い場合でも、Al系酸化皮膜の形成促進と、溶接金属部の粗大化の抑制を両立させることが可能となる。ここで、本実施形態においては、高温の改質ガス環境下に曝される前の表面皮膜を「不働態皮膜」、高温の改質ガス環境下に曝され不働態皮膜が種々の反応によって組成が変化したものを「Al系酸化皮膜」と区別し説明する。
まず、溶接金属部の化学成分の限定理由を以下に説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
Crは、耐食性に加えて、高温強度の向上や表面酸化皮膜の保護性を確保する上で基本となる構成元素であり、これら効果を得るためには12.0%以上のCr量が必要である。好ましくは13.0%以上である。一方、過度にCrを含有させることは、475℃脆性起因の著しい材料硬化に加え、高温雰囲気に曝された際、脆化相であるσ相の生成を助長する。また、合金コストの上昇とCr蒸発を助長する場合があるため上限は16.0%以下とする。好ましくは、15.0%以下とする。
Cは、フェライト相に固溶あるいはCr炭化物を形成して耐酸化性を阻害する。また、溶接時の粒界におけるCr炭化物形成を促進させる。このため、C量は少ないほどよく、上限を0.030%以下とする。好ましくは0.020%以下である。但し、過度な低減は精錬コストの上昇に繋がるため、C量の下限は0.001%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.002%以上である。
Siは、耐酸化性を確保する上で重要な元素である。Siは、Al系酸化皮膜中へ僅かに固溶するとともに、酸化皮膜直下/鋼界面にも濃化し、改質ガス環境下の耐酸化性を向上させる。これら効果を得るためには0.50%以上とすることが好ましい。一方、Siを過度に含有させることは、Crのスピノーダル分解を助長させ、耐475℃脆性を低下させる。またSiは、溶接組織の柱状晶化を促進させる元素でもあるため、多量に含有させると溶接金属部の粗大化を招くおそれもある。さらに、鋼の靭性や加工性の低下ならびにAl系酸化皮膜の形成を阻害する場合もあるため、上限は2.50%以下とする。好ましい上限は1.70%以下である。
Mnは、改質ガス環境下でSiとともにAl系酸化皮膜中またはその直下に固溶して保護性を高め耐酸化性の向上に寄与しうる。これら効果を得るために下限は0.10%とすることが好ましい。一方、過度に含有させることは、鋼の耐食性やAl系酸化皮膜の形成を阻害するため、上限は1.00%以下とする。耐酸化性と基本特性の点から、0.90%以下が好ましい。
Pは、製造性や溶接性を阻害し、溶接部における粒界強度を低下させる元素である。その含有量は少ないほどよいため、上限は0.050%以下とする。但し、過度な低減は精錬コストの上昇に繋がるため、下限は0.003%以上とすることが好ましい。製造性と溶接性の点から、好ましい範囲は0.005〜0.040%である。
Sは、鋼中に不可避に含まれる不純物元素であり、Al系酸化皮膜の保護性を低下させる。特に、Mn系介在物や固溶Sの存在は、高温・長時間使用におけるAl系酸化皮膜の破壊起点としても作用する。また、溶接部における粒界強度を低下させる元素でもある。従って、S量は低いほどよいため、上限は0.0030%以下とする。但し、過度の低減は原料や精錬コストの上昇に繋がるため、下限は0.0001%以上とすることが好ましい。製造性と耐酸化性、耐475℃脆性の観点から、好ましい範囲は0.0001〜0.0020%である。
Alは、脱酸元素であることに加えて、Al系酸化皮膜を形成して耐酸化性の向上に寄与するために必須の元素である。また、溶接部における双晶変形発現を抑制し脆化特性の向上に有効な元素でもある。本実施形態においては、Al量が1.00%未満ではこれら効果が得られないため、下限は1.00%以上とする。好ましくは1.50%以上である。しかし、AlはSiと同様に溶接組織の柱状晶化を促進させる元素でもあるため、多量に含有させると溶接金属部の粗大化を招くおそれもある。さらに過度にAlを含有させることは、鋼の靭性の低下や溶接部における脆性破壊を助長するため、上限は、2.50%以下とする。好ましくは2.30%以下である。
Nは、Cと同様に耐酸化性を阻害する元素である。このため、N量は少ないほどよく、上限を0.030%以下とする。但し、過度な低減は精錬コストの上昇に繋がるため、下限は0.002%以上とすることが好ましい。耐酸化性と製造性の点から、好ましい範囲は0.005〜0.020%である。
Nbは、C,Nを固定する安定化元素であり、溶接時のCr炭化物生成抑制に寄与する。さらに、σ脆性と475℃脆性の要因となる金属間化合物は、主に結晶粒界を生成サイトとして析出が進行するが、Nbが結晶粒界へ偏析することによってこの生成サイトが低減されるため、組織の安定性が増し、結果、σ脆性と475℃脆性を抑制することができる。これら効果を得るためにNbの下限は0.001%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.15%以上とする。一方、Nbを過度に含有させることは合金コストの上昇に加え、脆性破壊を助長するため、Nbの上限は1.00%以下とする。好ましくはともに0.60%以下とする。
B、Sn、Ga、Mg、Caは、上述したように、高温強度を高める効果をより発現させることができる元素である。またこれらの元素は、Al系酸化皮膜の形成を促進して耐酸化性の向上に寄与する元素でもある。また、Sn、Ga、Mg、Caは、表面近傍に濃化してAlの選択酸化を促進する作用がある。そのため、上記成分組成に加え、B、Sn、Ga、Mg、Caのうちの1種または2種以上を含有する。
Bは、粒界偏析することによって粒界すべりを遅延させるとともに、結晶粒内において転位密度の上昇に伴う内部応力を高め0.2%耐力を向上させることができる。Mg、Caは鋼の清浄度や熱間加工性を高めるのに有効な元素である。また、溶接時にMgO、CaOなどから成る介在物を生成させることで等軸晶の形成が助長され、溶接組織の微細化に寄与する元素でもある。これら効果を得るため、Snは0.005%以上、B、Ga、Mg、Caはそれぞれ0.0002%以上含むことが好ましい。一方、これらの元素を過度に含有させることは、鋼の精錬コスト上昇を招くほか、製造性の低下を招くため、Snは0.20%以下、B、Ga、Mgは0.0200%以下、Caは0.0100%以下とする。
また、本実施形態に係る溶接継手では、B、Sn、Ga、Mg、Caが上記で限定した化学組成を満たしつつ、溶接金属部のB、Sn、Ga、Mg、Caの含有量(質量%)が以下の式(1)を満たすものとする。
式(1)の左辺が0.020以下の場合、結晶粒の粗大化を招くおそれがある。そのため、溶接金属部中のB、Sn、Ga、Mg、Caの含有量は、式(1)を満足することものとし、好ましくは、式(1)の左辺は0.035以上とする。
なお、式(1)の上限は、B、Sn、Ga、Mg、Caの上限値で特に規定するものでないが、高温強度と製造性の視点から0.2以下とすることが好ましい。
ここで、式(1)中のB、Sn、Ga、Mg、Caは、溶接金属部におけるそれぞれの元素の含有量(質量%)を示す。
なお、本実施形態における「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に鉱石やスクラップ等のような原料をはじめとして製造工程の種々の要因によって混入する成分であり、不可避的に混入する成分も含む。
本実施形態に係る溶接継手では、Nb:0.001〜1.0%、およびV:0.001〜1.0%を含み、かつ、溶接金属部のNb、V、C、Nの含有量(質量%)が以下の式(2)を満たすことが好ましい。
溶接金属部のNb、V、C、N量が式(2)を満足することにより、炭窒化物が形成されても、高温強度の確保に必要なNb量を十分に確保できる。しかし、上記式(2)の左辺が5.0%未満の場合、高温強度の低下を招くおそれがある。そのため、溶接金属部中のNb、V、C、Nの含有量は、式(2)を満足することが好ましく、より好ましくは、式(2)の左辺は10.0以上とする。
ここで、式(2)中のNb、V、C、Nは、溶接金属部におけるそれぞれの元素の含有量(質量%)を示すが、含有しない場合(含有量が0%の場合)は0を代入して計算する。
Ni、Cu、Mo、Wは高温強度と耐食性を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて少なくとも1種を含有してもよい。但し、過度に含有させると合金コストの上昇や製造性を阻害することに繋がるため、Ni、Cu、Mo、Wの各含有量の上限は1.0%以下とする。前記効果を発現させるためには、Ni,Co,Mo,Wはそれぞれ0.02%以上が好ましい。更に好ましくは0.08%以上である。
これらの元素は粒界に偏析して溶接時の結晶粒の粗大化を抑制する。また、Zr、La、Y、Hf、Ta、REMは、熱間加工性や鋼の清浄度の向上ならびに耐酸化性改善に対しても、有効な元素である。Zn、Sbは鋼表面近傍に濃化してAlの選択酸化を促進しCrの酸化を抑制する。
これらの効果を得るため、Co:0.005%以上、As:0.001%以上、Pb:0.0001%以上、Zr:0.0001%以上、Zn:0.01%以上、Y:0.0001%以上、La:0.0001%以上、Hf:0.0001%以上、Sb:0.003%以上、Ta:0.002%以上、REM:0.001%以上のうちの1種類または2種類以上含有し、さらにその合計量が0.010%以上であることが好ましい。本実施形態のAl含有フェライト系ステンレス鋼溶接継手は、その溶接金属部が、前記第1群とともに、或いは、前記第1群の代わりに、第2群を前述の含有量の範囲で含有してもよい。
一方、これらの元素の過度な添加は粒界強度低下による粒界破壊を助長するため、前記第2群は、Co:0.50%以下、As:0.05%以下、Pb:0.005%以下、Zr:0.10%以下、Zn:0.03%以下、Y:0.10%以下、La:0.10%以下、Hf:0.10%以下、Sb:0.10%以下、Ta:0.5%以下、REM:0.10%以下の1種類または2種類以上からなる元素群とする必要がある。
なお、REMはLa、Yを除く原子番号58〜71に帰属する元素およびSc(スカンジウム)とし、例えば、Ce、Pr、Nd等である。また本実施形態でいうREMとは、原子番号58〜71に帰属する元素およびScから選択される1種以上で構成されるものであり、REM量とは、これらの合計量である。
溶接継手の溶接部より試料を切り出し、エッチングを行った後、光学顕微鏡により撮影した溶接金属部において、溶接金属部中心の厚さ800μm×幅1600μmの領域内の結晶粒の数をカウントする。なお当該測定領域の1辺をまたいだ結晶粒は0.5個、2辺をまたいだ場合は0.25個とする。そして、(測定領域の面積)/(測定領域内の結晶粒の数)の平方根をその溶接金属部の結晶粒径と定義する。
すなわち、本実施形態の好適な母材部の化学組成は、質量%で、C:0.020%以下、Si:2.50%以下、Mn:1.00%以下、Cr:12.0〜16.0%、Al:2.50%以下、N:0.030%以下、更にNb:1.00%以下、V:1.00%以下を含有し、さらにB:0.0200%以下、Sn:0.20%以下、Ga:0.0200%以下、Mg:0.0200%以下、Ca:0.0100%以下の1種または2種以上を含み、かつ下記式(1´)を満足し、残部がFeおよび不純物である。
なお、式(1´)中の各元素記号は、母材部中の各元素の含有量(質量%)を示す。
次に、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法について説明する。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼溶接継手は、フェライト系ステンレス鋼をなめ付けあるいは溶接棒を使用した溶接により作製される。本実施形態の溶接継手は、後述する溶接材料を用いて製造することで、実現が容易になるが、当該製造条件に限定されるものでないことは言うまでもない。つまり、溶接する母鋼材、用いる溶接材料、溶接手法、さらに溶接条件を適切に選択することで、最終的な溶接継手における溶接金属の化学組成を本実施形態の範囲内に制御することができる。
溶接材料を使用する場合、燃料電池システム用途では良好な耐酸化性、高温強度、耐脆化特性が求められるため、これら特性を兼ね備えたAl含有フェライト系ステンレス鋼を母材として溶接継手を製造することが好ましく、具体的には上述した化学組成を有するステンレス鋼を母材とすることがより好ましい。また、溶接継手の成分制御を容易にする意味では、母材や溶接材料が本実施形態の溶接継手に近い成分系であることはさらに好ましい。
そのため、本実施形態の溶接継手は、都市ガス、メタン、天然ガス、プロパン、灯油、ガソリン等の炭化水素系燃料を水素に改質する際に使用される燃料改質器、熱交換器などの燃料電池部材に好適であり、特に、運転温度が高温となる固体酸化物型燃料電池(SOFC)や固体高分子型燃料電池(PEFC)の高温部材に好適である。さらに、燃料電池の周辺部材、例えばバーナーや当該バーナーを格納する燃焼器等、改質ガスに接しかつ高温の環境下で使用される部材全般において好適に用いることができる。
なお、下記にて示す表中の下線は、本発明の範囲から外れているものを示す。
次に、得られた溶接継手BW、CWの溶接金属部から化学分析用試料を採取し、成分分析を行った。表3に各溶接継手の溶接金属部の化学成分を示す。ここで、表3の記号について、「BW」は母材として鋼種Bを使用して製造した溶接継手であることを意味し、「CW」は母材として鋼種Cを使用して製造した溶接継手であることを意味する。
各溶接継手の溶接金属部より試料を切り出し、樹脂埋めを行った後、王水によるエッチングを行った。エッチング後の試料に対し、光学顕微鏡により撮影した溶接金属部において、溶接金属部中心の厚さ800μm×幅800μmの領域内の結晶粒の数をカウントした。測定領域の1辺をまたいだ結晶粒は0.5個、2辺をまたいだ場合は0.25個とした。(測定領域の面積)/(測定領域内の結晶粒の数)の平方根をその溶接金属部の結晶粒径と定義した。
各溶接継手の溶接部から幅20mm、長さ25mmの酸化試験片を切り出した。このとき、酸化試験片の幅中央に溶接線が配置されるよう、すなわち試験片長手方向とビード方向が平行となるよう切り出した。酸化試験の雰囲気は、都市ガスを燃料とした改質ガスを想定し、28体積%H2O−10%体積%CO−8体積%CO2−0.01%H2S−bal.H2の雰囲気とした。当該雰囲気において、酸化試験片を650℃に加熱し、1000時間保持した後に室温まで冷却し、酸化増量ΔW(mg/cm2)を測定した。
耐酸化性の評価は以下の通りとした。
◎:重量増加ΔWが0.2mg/cm2未満。
〇:重量増加ΔWが0.2〜0.3mg/cm2。
×:重量増加ΔWが0.3mg/cm2超。
なお、耐酸化性は「◎」および「〇」の場合を合格とした。
各溶接継手から板状の高温引張試験片(板厚:0.8mm、平行部幅:10.5mm、平行部長さ:35mm)を切り出した。このとき、引張試験片の長手方向中央(平行部中央)に溶接金属部が配置されるよう切り出した。750℃、および800℃それぞれにて、ひずみ速度は、0.2%耐力まで0.3%/min、以降3mm/minとして高温引張試験を行い、各温度における0.2%耐力(750℃耐力、800℃耐力)を測定した(JIS G 0567に準拠)。
高温強度の評価は、750℃耐力が120MPa超、かつ800℃耐力が40MPa超の場合を合格(「〇」)として評価し、いずか一方でも満たさない場合は不合格(「×」)として評価した。なお、750℃耐力が150MPa超、かつ800℃耐力が60MPa超の場合は高温強度が特に優れているものとして評価した(表中で「◎」表記)。
溶接継手の溶接金属部から、板面と垂直な断面上の中心(板厚中心部:t/2付近)を観察できるよう試料を2つ採取して、一方は、500℃×1000時間の熱処理(500℃熱処理)、もう一方は650℃×1000時間の熱処理(600℃熱処理)を行った。これら熱処理の雰囲気はともに大気中とした。次に、熱処理後の各試料を樹脂に埋め研磨した後、500℃熱処理後のビッカース硬さHv500℃、650℃熱処理後のビッカース硬さHv650℃それぞれをJIS Z 2244に準拠して荷重9.8Nで測定し、熱処理前に予め測定しておいた熱処理前ビッカース硬さからの硬さ上昇量ΔHv500℃、ΔHv650℃を算出した。
組織安定性(σ脆性/475℃脆性)の評価は、ΔHv500℃、ΔHv650℃ともに20未満のものを合格(「〇」)として評価し、いずか一方でも20以上であった場合は熱処理後の硬さ上昇が大きく組織が不安定であるとして不合格(「×」)とした。
Claims (7)
- フェライト系ステンレス鋼母材と溶接金属部とからなる溶接継手であって、
前記溶接金属部の化学成分が、質量%にて、
Cr:12.0〜16.0%、
C:0.030%以下、
Si:2.50%以下、
Mn:1.00%以下、
P:0.050%以下、
S:0.0030%以下、
Al:1.00〜2.50%、
N:0.030%以下、
Nb:1.00%以下、
V:0〜1.00%、
Ni:0〜1.0%、
Cu:0〜1.0%、
Mo:0〜1.0%、
W:0〜1.0%、
Co:0〜0.50%、
As:0〜0.05%、
Pb:0〜0.005%、
Zr:0〜0.10%、
Zn:0〜0.03%、
Y:0〜0.10%、
La:0〜0.10%、
Hf:0〜0.10%、
Sb:0〜0.10%、
Ta:0〜0.5%
REM:0〜0.10%
を含み、更に、
B:0.0200%以下、
Sn:0.20%以下、
Ga:0.0200%以下、
Mg:0.0200%以下、
Ca:0.0100%以下
の1種または2種以上を含み、且つ下記式(1)を満たし、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼溶接継手。
10(B+Ga)+Sn+Mg+Ca>0.020 ・・・(1)
なお、式(1)中の各元素記号は、溶接金属部中の各元素の含有量(質量%)を示す。 - 前記溶接金属部の化学成分が、Nb:0.001〜1.0%、およびV:0.001〜1.0%を含み、かつ下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接継手。
(Nb+V)/{2×(C+N)}≧5.0 ・・・(2)
なお、式(2)中の各元素記号は、溶接金属部中の各元素の含有量(質量%)を示す。 - 前記溶接金属部の化学成分が、更に、質量%にて、
Ni:0.02〜1.0%、Cu:0.02〜1.0%、Mo:0.02〜1.0%、W:0.02〜1.0%の1種または2種以上からなる第1群、および、
Co:0.10〜0.50%、As:0.001〜0.05%、Pb:0.0001〜0.005%、Zr:0.0001〜0.10%、Zn:0.01〜0.03%、Y:0.0001〜0.10%、La:0.0001〜0.10%、Hf:0.0001〜0.10%、Sb:0.003〜0.10%、Ta:0.002〜0.5%、REM:0.001〜0.10%の1種または2種以上からなる第2群のうち、少なくともいずれかの群を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接継手。 - 前記溶接金属部における結晶粒径の大きさが600μm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接継手。
- 燃料改質器、熱交換器あるいは燃料電池部材に適用されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接継手。
- 燃焼器、あるいはバーナーの部材に適用されること特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接継手。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼溶接継手を用いた燃料電池用部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018060887A JP6971185B2 (ja) | 2018-03-27 | 2018-03-27 | フェライト系ステンレス鋼溶接接手および燃料電池用部材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018060887A JP6971185B2 (ja) | 2018-03-27 | 2018-03-27 | フェライト系ステンレス鋼溶接接手および燃料電池用部材 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2019173076A true JP2019173076A (ja) | 2019-10-10 |
JP6971185B2 JP6971185B2 (ja) | 2021-11-24 |
Family
ID=68166518
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018060887A Active JP6971185B2 (ja) | 2018-03-27 | 2018-03-27 | フェライト系ステンレス鋼溶接接手および燃料電池用部材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6971185B2 (ja) |
Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH02310345A (ja) * | 1989-05-22 | 1990-12-26 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 電磁気特性の優れた冷間鍛造用フェライト系ステンレス鋼 |
JP2011179088A (ja) * | 2010-03-02 | 2011-09-15 | Nisshin Steel Co Ltd | 耐酸化性、耐二次加工脆性及び溶接性に優れたフェライト系ステンレス鋼 |
JP2016030855A (ja) * | 2014-07-29 | 2016-03-07 | 新日鐵住金ステンレス株式会社 | 燃料電池用フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 |
JP2017095786A (ja) * | 2015-11-27 | 2017-06-01 | 新日鐵住金ステンレス株式会社 | 耐475℃脆性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼溶接継手 |
JP2017133075A (ja) * | 2016-01-28 | 2017-08-03 | 新日鐵住金ステンレス株式会社 | 高温強度に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼 |
JP2017160494A (ja) * | 2016-03-09 | 2017-09-14 | 日新製鋼株式会社 | Al含有フェライト系ステンレス鋼 |
-
2018
- 2018-03-27 JP JP2018060887A patent/JP6971185B2/ja active Active
Patent Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH02310345A (ja) * | 1989-05-22 | 1990-12-26 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 電磁気特性の優れた冷間鍛造用フェライト系ステンレス鋼 |
JP2011179088A (ja) * | 2010-03-02 | 2011-09-15 | Nisshin Steel Co Ltd | 耐酸化性、耐二次加工脆性及び溶接性に優れたフェライト系ステンレス鋼 |
JP2016030855A (ja) * | 2014-07-29 | 2016-03-07 | 新日鐵住金ステンレス株式会社 | 燃料電池用フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 |
JP2017095786A (ja) * | 2015-11-27 | 2017-06-01 | 新日鐵住金ステンレス株式会社 | 耐475℃脆性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼溶接継手 |
JP2017133075A (ja) * | 2016-01-28 | 2017-08-03 | 新日鐵住金ステンレス株式会社 | 高温強度に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼 |
JP2017160494A (ja) * | 2016-03-09 | 2017-09-14 | 日新製鋼株式会社 | Al含有フェライト系ステンレス鋼 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP6971185B2 (ja) | 2021-11-24 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5208354B2 (ja) | オーステナイト系ステンレス鋼 | |
US10233523B2 (en) | Carburization resistant metal material | |
KR102444640B1 (ko) | 페라이트계 스테인리스강 및 그의 제조 방법, 페라이트계 스테인리스 강판 및 그의 제조 방법, 그리고 연료 전지용 부재 | |
KR102141291B1 (ko) | 페라이트계 스테인리스강과, 그의 강판 및 그들의 제조 방법 | |
JP5902253B2 (ja) | 燃料電池用フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 | |
WO2016017692A1 (ja) | 燃料電池用フェライト系ステンレス鋼材およびその製造方法 | |
JP6190498B2 (ja) | フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 | |
JP7224141B2 (ja) | フェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法、並びに燃料電池用部材 | |
JP6300841B2 (ja) | 高温強度に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼 | |
WO2017073093A1 (ja) | 耐クリープ強さに優れた燃料電池用フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 | |
JP6006759B2 (ja) | 燃料電池の燃料改質器用または燃料電池の熱交換器用フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 | |
JP6765287B2 (ja) | フェライト系ステンレス鋼とその製造方法、及び燃料電池部材 | |
JP6006893B2 (ja) | 燃料電池用フェライト系ステンレス鋼 | |
JP6971184B2 (ja) | フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法、ならびに燃料電池用部材 | |
JP7233195B2 (ja) | フェライト系ステンレス鋼及びその製造方法、並びに燃料電池用部材 | |
JP6767831B2 (ja) | 高温疲労特性に優れた溶接構造体用フェライト系ステンレス鋼および溶接構造体 | |
JP6971185B2 (ja) | フェライト系ステンレス鋼溶接接手および燃料電池用部材 | |
JP6655962B2 (ja) | 耐475℃脆性に優れたAl含有フェライト系ステンレス鋼溶接継手 | |
JP7076258B2 (ja) | フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法、ならびに燃料電池用部材 | |
JP6937717B2 (ja) | フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法、ならびに燃料電池用部材 | |
JP2019031717A (ja) | オーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法、ならびに燃料改質器および燃焼器の部材 | |
JP6937716B2 (ja) | フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法、ならびに燃料電池用部材 | |
JP7055050B2 (ja) | フェライト系ステンレス鋼溶接用溶加材 | |
JP6053994B1 (ja) | 耐クリープ強さに優れた燃料電池用フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 | |
JP6873020B2 (ja) | フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法、ならびに燃料改質器および燃焼器の部材 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20201113 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20210930 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20211005 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20211101 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6971185 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |