JP2019172940A - ポリカーボネートジオール、ポリウレタンおよびポリウレタンの製造方法 - Google Patents

ポリカーボネートジオール、ポリウレタンおよびポリウレタンの製造方法 Download PDF

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宏美 林
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Abstract

【課題】新規なポリカーボネートジオール、ならびに、ポリカーボネートジオールを用いたポリウレタンおよびポリウレタンの製造方法の提供。【解決手段】下記式[I]で表される繰り返し単位を有するポリカーボネートジオール;式[I]中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R3は、それぞれ独立に、水素原子、ヘテロ原子を含む基、ハロゲン原子を含む基、炭素数1〜6の直鎖のアルキル基、炭素数3〜6の分岐したアルキル基または、アリール基を含む炭素数が6〜12である基を表す。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリカーボネートジオール、ポリウレタンおよびポリウレタンの製造方法に関する。
従来、熱可塑性エラストマーなどのポリウレタンに用いられるソフトセグメントには、主に分子末端が水酸基であるポリエステルやポリエーテルが用いられている。このうち、アジペートに代表されるポリエステルは耐加水分解性に劣るため、例えば、これを用いたポリウレタンは比較的短期間に表面に亀裂などを生じたり、表面に黴が生えたりすることがある。したがって、そのようなポリウレタンはその使用が限定されてしまう。一方、ポリエーテルを用いたポリウレタンは、耐加水分解性は良好であるが、耐候性、耐熱性に劣る場合がある。さらに、ポリエステル系の熱可塑性エラストマー等についても、近年、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、耐黴性および耐油性などの要求が高度化してきているため、ポリウレタンと同様の問題点を有している。
これらの問題を解決するため、ポリマー鎖中のカーボネート結合が極めて安定である観点から、ソフトセグメントとして分子末端が水酸基であるポリカーボネートジオールが用いられている。具体的には、特許文献1には、下記に表される繰り返し単位を有するポリカーボネートジオールが開示されている。
Figure 2019172940
特開2017−186553号公報
上述のとおり、ポリウレタンの原料となるポリカーボネートジオールは検討されている。しかしながら、ポリウレタンの需要は高まっており、それに応じ、色々な要求に耐えるため、さらに新たなポリカーボネートジオールが求められる傾向にある。特に、より耐熱性に優れたポリカーボネートジオールが求められる。
本発明は、上記課題を解決することを目的とするものであって、新規なポリカーボネートジオール、ならびに、前記ポリカーボネートジオールを用いたポリウレタンおよびポリウレタンの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題のもと、本発明者は、新規化合物であるジスピログリコール(DSG)をポリカーボネートジオールの原料に用いることにより、新規なポリカーボネートジオールを提供できることを見出した。そして、かかる新規なポリカーボネートジオールは、耐熱性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>〜<13>により、上記課題は解決された。
<1>下記式[I]で表される繰り返し単位を有するポリカーボネートジオール;
Figure 2019172940
式[I]中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R3は、それぞれ独立に、水素原子、ヘテロ原子を含む基、ハロゲン原子を含む基、炭素数1〜6の直鎖のアルキル基、炭素数3〜6の分岐したアルキル基または、アリール基を含む炭素数が6〜12である基を表す。
<2>前記式[I]におけるR3が、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基である、<1>に記載のジオールのポリカーボネートジオール。
<3>前記式[I]におけるR1およびR2が、それぞれ独立に、炭素数1〜7の直鎖のアルキル基、炭素数3〜7の分岐したアルキル基またはアリール基を表す、<1>または<2>に記載のポリカーボネートジオール。
<4>前記式[I]におけるR1およびR2が、それぞれ独立に、炭素数1〜7の直鎖のアルキル基またはアリール基である、<1>または<2>に記載のポリカーボネートジオール。
<5>前記式[I]におけるR3が、水素原子であり、R1およびR2が、それぞれ独立にエチル基、メチル基またはフェニル基である、<1>に記載のポリカーボネートジオール。
<6>前記式[I]におけるR3が、水素原子であり、R1およびR2がエチル基である、<1>に記載のポリカーボネートジオール。
<7>前記式[I]で表される繰り返し単位を、前記ポリカーボネートジオールが有する全繰り返し単位中、1〜70mol%有する、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオール。
<8>前記繰り返し単位以外に含まれる成分として、下記式[II]で表される繰り返し単位を有するポリカーボネートジオール;
Figure 2019172940
<9>前記式[II]で表される繰り返し単位を、前記ポリカーボネートジオールが有する全繰り返し単位中、30〜99mol%有する、<8>に記載のポリカーボネートジオール。
<10>数平均分子量が400以上6,000未満である、<1>〜<9>のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオール。
<11><1>〜<10>のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオールを原料として得られるポリウレタン。
<12><1>〜<10>のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオールとポリイソシアネートとを反応させる工程を含む、ポリウレタンの製造方法。
<13><1>〜<10>のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオールとポリイソシアネートとを反応させてプレポリマーを得る工程と、前記プレポリマーと鎖延長剤とを反応させる工程と、を有するか、
<1>〜<10>のいずれか1つに記載のポリカーボネートジオールと、ポリイソシアネートと、鎖延長剤とを一括に混合した後に反応させる工程を有する、<12>に記載のポリウレタンの製造方法。
本発明により、新規なポリカーボネートジオール、ならびに、前記ポリカーボネートジオールを用いたポリウレタンおよびポリウレタンの製造方法を提供可能になった。特に、耐熱性に優れたポリカーボネートジオールを提供可能になった。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明のポリカーボネートジオールは、下記式[I]で表される繰り返し単位を有するポリカーボネートジオールであることを特徴とする。
Figure 2019172940
式[I]中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R3は、それぞれ独立に、水素原子、ヘテロ原子を含む基、ハロゲン原子を含む基、炭素数1〜6の直鎖のアルキル基、炭素数3〜6の分岐したアルキル基または、アリール基を含む炭素数が6〜12である基を表す。
このような構成とすることにより、耐熱性に優れたポリカーボネートジオールとすることができる。
式[I]におけるR1およびR2としては、それぞれ独立に、炭化水素基であり、好ましくは、炭素数1〜7の直鎖のアルキル基、炭素数3〜7の分岐したアルキル基またはアリール基を表し、より好ましくは、炭素数1〜7の直鎖のアルキル基またはアリール基を表し、炭素数1〜7の直鎖のアルキル基がさらに好ましい。
本発明におけるR1およびR2の好ましい実施形態の一例は、エチル基、メチル基またはフェニル基である。
炭素数1〜7の直鎖のアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3の直鎖のアルキル基であることがより好ましく、メチル基またはエチル基であることがさらに好ましい。
炭素数3〜7の分岐したアルキル基は、炭素数3〜5の分岐したアルキル基であることが好ましく、炭素数3または4の分岐したアルキル基であることがより好ましく、炭素数3の分岐したアルキル基であることがさらに好ましい。
アリール基は、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、炭素数6〜14のアリール基がより好ましく、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基がさらに好ましく、フェニル基が一層好ましい。
式[I]におけるR1およびR2としては、それぞれ独立に、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基(tert−ブチル基)、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、1,2−ジメチルペンチル基、1,3−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、1,5−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1―エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、1−プロピルブチル基、2−プロピルブチル基、3−プロピルブチル基、1−エチル−1−メチルブチル基、1−エチル−2−メチルブチル基、1−エチル−3−メチルブチル基、2−エチル−1−メチルブチル基、2−エチル−2−メチルブチル基、2−エチル−3−メチルブチル基、および1,2,3−トリメチルブチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などが挙げられる。
これらの中ではR1およびR2が、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、フェニル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基またはフェニル基がさらに好ましく、メチル基またはエチル基であることが一層好ましく、エチル基であることがより一層好ましい。
式[I]におけるR3は、それぞれ独立に、水素原子、ヘテロ原子を含む基、ハロゲン原子を含む基(好ましくはハロゲン原子)、炭素数1〜6の直鎖のアルキル基、炭素数3〜6の分岐したアルキル基または、アリール基を含む炭素数が6〜12である基を表し、水素原子、炭素数1〜6の直鎖のアルキル基、炭素数3〜6の分岐したアルキル基または、アリール基を含む炭素数が6〜12である基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜6の直鎖のアルキル基または炭素数3〜6の分岐したアルキル基であることがより好ましく、水素原子またはメチル基であることがさらに好ましく、水素原子が一層好ましい。
ヘテロ原子を含む基に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が例示される。
ヘテロ原子を含む基は、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、アミノ基、ニトロ基が好ましい例として挙げられる。また、アルコキシ基またはアルキルチオエーテル基を構成するアルキル鎖は、炭素数1〜6の直鎖のアルキル鎖が好ましく、炭素数1〜3の直鎖のアルキル鎖がより好ましい。
炭素数1〜6の直鎖のアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3の直鎖のアルキル基であることがより好ましく、メチル基またはエチル基であることがさらに好ましい。
炭素数3〜6の分岐したアルキル基は、炭素数3〜5の分岐したアルキル基であることが好ましく、炭素数3または4の分岐したアルキル基であることがより好ましく、炭素数3の分岐したアルキル基であることがさらに好ましい。
アリール基を含む炭素数が6〜12である基は、フェニル基、フェニル基で置換されたアルキル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。フェニル基で置換されたアルキル基を構成するアルキル基の炭素数は、1〜3が好ましく、1または2がより好ましく、1がさらに好ましい。
上記式[I]におけるR3としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基(tert−ブチル基)、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、メチルチオエーテル基、エチルチオエーテル基、アミノ基、ニトロ基、フェニル基、およびベンジル基が挙げられる。
これらの中ではR3は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基であるとより好ましい。また、工業的に入手が容易であるという観点から、R3が水素原子である場合が特に好ましい。
式[I]で表される繰り返し単位の好ましい実施形態として、式[I]におけるR1およびR2が、それぞれ独立に、エチル基、メチル基またはフェニル基であり、R3が水素原子であるジオールが例示される。また、式[I]で表される繰り返し単位の好ましい他の実施形態として、式[I]におけるR1およびR2が、それぞれ独立に、エチル基またはメチル基であり、R3が水素原子である繰り返し単位が例示される。
式[I]で表される繰り返し単位のうち、アルコール残基の部分は、下記式[I−I]で表される化合物(以下、「DSG」ということがある)に由来する。
Figure 2019172940
式[I−I]における、R1、R2およびR3は、式[I]におけるR1、R2およびR3と同義であり、好ましい範囲も同様である。
以下に、本発明で好ましく用いられる式[I−I]で表される化合物を示す。本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。なお、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Prはプロピル基を、Buはブチル基を表す。
Figure 2019172940
Figure 2019172940
Figure 2019172940
Figure 2019172940
Figure 2019172940
式[I−I]で表されるジオールの分子量は、300〜550が好ましく、300〜500がより好ましい。
式[I−I]で表されるジオールは、下記式(2)で表される1,4−シクロヘキサンジオン誘導体と、下記式(3)で表されるトリオールを脱水環化反応させることによって得られる。式(2)で表される1,4−シクロヘキサンジオン誘導体および式(3)で表されるトリオールは、それぞれ、1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
Figure 2019172940
式(2)中、R4は、それぞれ独立に、水素原子、ヘテロ原子を含む基、ハロゲン原子を含む基、炭素数1〜6の直鎖のアルキル基、炭素数3〜6の分岐したアルキル基または、アリール基を含む炭素数が6〜12である基を表す。
式(2)におけるR4は、式[I−I]におけるR3と同義であり、好ましい範囲も同様である。
Figure 2019172940
式(3)中、R5は、炭化水素基を表す。
炭化水素基は、炭素数1〜7の直鎖のアルキル基、炭素数3〜7の分岐したアルキル基またはアリール基を表す。一実施形態としては、R5は、炭素数1〜7の直鎖のアルキル基または炭素数3〜7の分岐したアルキル基を表す。但し、R5としての炭化水素基は、エーテル結合を含まない。
式(3)におけるR5としては、式[I−I]におけるR1およびR2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
本発明では、式(2)で表される1,4−シクロヘキサンジオン誘導体が、1,4−シクロヘキサンジオンであり、式(3)で表されるトリオールが、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンおよびトリス(ヒドロキシメチル)トルエンの少なくとも1種(好ましくは、トリメチロールプロパンおよびトリメチロールエタンの少なくとも1種)である場合が特に好ましい。
本発明のポリカーボネートジオールは、式[I]で表される繰り返し単位を、そのポリカーボネートジオールが有する全繰り返し単位(100mol%)中、1〜70mol%有することが好ましい。上記式[I]で表される繰り返し単位を1mol%以上有することにより、耐候性および耐熱性にさらに優れたポリウレタンを得ることができる。同様の観点から、式[I]で表される繰り返し単位を、上記全繰り返し単位中、5mol%以上含むことがより好ましく、10mol%以上含んでいてもよい。一方、式[I]で表される繰り返し単位を70mol%以下有することにより、ポリカーボネートジオールの溶媒への溶解性が低下するのを一層抑制したり、その融点が高くなるのを防いで操作性がより良好になったりする。同様の観点から、式[I]で表される繰り返し単位を、上記全繰り返し単位中、50mol%以下有することがより好ましく、30mol%以下含むことがより好ましい。式[I]で表される繰り返し単位は、1種から構成されても、2種以上から構成されてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明のポリカーボネートジオールは、式[I]で表される繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を含んでいてもよい。他の繰り返し単位は、全繰り返し単位の30mol%以上であることが好ましく、50mol%以上であってもよく、70mol%以上であってもよい。また、他の繰り返し単位は、全繰り返し単位の99mol%以下であることが好ましく、95mol%以下であることがより好ましく、90mol%以下であってもよい。他の繰り返し単位は、1種から構成されても、2種以上から構成されてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
他の繰り返し単位の割合を上記範囲とすることにより、より機械的強度に優れたものが得られる。
本発明のポリカーボネートジオールで用いられる式[I]で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位の種類には特に制限はなく、本発明の目的を損なわない範囲で、必要な特性に応じて、ポリカーボネートジオールの原料として使用できる全てのジオールを原料とした繰り返し単位を用いることができる。
式[I]で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位の原料となるジオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ヘキサンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、メタキシリレングリコール、パラキシリレングリコール、オルトキシリレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリブチレングリコールなどの脂肪族ジオール類;1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン、ペンタシクロドデカンジメタノールおよび3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンなどの脂環族ジオール類;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシドおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどのビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノンなどの芳香族ジオール類が挙げられる。また、本発明のポリカーボネートジオールは、3官能以上のポリオールを原料とした繰り返し単位を、少量有してもよい。3官能以上のポリオールの例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールが挙げられる。
これらの中でも、本発明のよる作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、脂肪族ジオール(好ましくは、炭素数1〜10の直鎖または分岐の脂肪族ジオールであり、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖脂肪族ジオールである。)および脂環族ジオールが好ましい。脂肪族ジオールは、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖または分岐の脂肪族ジオールであり、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖脂肪族ジオールである。
脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ヘキサンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび1,3−シクロヘキサンジメタノールが例示される。
さらに、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオールおよび2−メチル−1,8−オクタンジオールがさらに好ましく、1,6−ヘキサンジオールが一層好ましい。
すなわち、本発明のポリカーボネートジオールは、式[I]で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位として、脂肪族ジオール由来の構成単位を有することが一層好ましく、下記式[II]で表される繰り返し単位を有することがより一層好ましい。
Figure 2019172940
本発明のポリカーボネートジオールは、さらに、本発明の効果を逸脱しない範囲で他の繰り返し単位を有していてもよい。具体的には、3価以上の多価アルコールと炭酸エステルに由来する構造を含む繰り返し単位が例示される。よって、本発明のポリカーボネートジオールは、末端が3つ以上ある場合もあろう。尚、ポリカーボネートジオールは、その末端がすべて、水酸基を有することを意味するものではない。通常、原料モノマーの97モル%以上がジオールと炭酸ジエステルから合成されるポリカーボネートをポリカーボネートジオールと称する。
本発明のポリカーボネートジオールを製造する方法に特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。一般的には、ジオール化合物と炭酸エステルとのエステル交換により製造することができる。
ジオール化合物と炭酸エステルは、仕込み比(モル比)で、1:0.50〜2.00であることが好ましく、1:0.50〜1.00であることがより好ましい。
本発明のポリカーボネートジオールを製造する際には、原料(モノマー)として上記式[I−I]で表されるジオール化合物(DSG)を用いることができる。これに加えて、本発明のポリカーボネートジオールが、式[I]で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有する場合は、その繰り返し単位を与える化合物(モノマー)も用いることができる。
本発明のポリカーボネートジオールを製造する際に用いられる炭酸エステルとしては、例えば、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネートおよびジアリールカーボネートが挙げられる。このうち、アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5,5−ジエチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−メチル−5−プロピル−1,3−ジオキサン−2−オンおよび5−ブチル−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オンが挙げられる。また、ジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジ−n−ブチルカーボネートが挙げられ、ジアリールカーボネートとしては、例えば、ジフェニルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸エステルのなかでも、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネートおよびジフェニルカーボネートを用いるのが好ましい。
本発明のポリカーボネートジオールを製造する際の反応温度は、120℃〜280℃であると好ましく、190℃〜280℃であるとより好ましい。また、反応圧力は、常圧で行うこともできるが、副生するアルコール成分を留去させる必要があるため、反応後半には減圧条件とすることが望ましい。減圧条件は常圧〜0.1Paであると好ましいが、ポリカーボネートジオールの原料となる炭酸エステルおよびジオール化合物の沸点および分解性によって適宜調整される。本発明のポリカーボネートジオールを製造する際に、反応速度を高めるために触媒を用いることができる。触媒としては、例えば、テトライソプロポキシチタンおよびテトラ−n−ブトキシチタンなどのチタン化合物、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジ−n−ブチルスズオキサイドおよびジブチルスズジアセテートなどのスズ化合物、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛および酢酸鉛などの酢酸の金属塩、並びに、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドおよびカリウムメトキシドなどの金属アルコキシドが挙げられる。
本発明のポリカーボネートジオールを製造する際の触媒が、後の反応に影響を与えないように、必要に応じて触媒失活剤を反応系内に添加することができる。触媒失活剤としては、特に制限はなく、従来公知の物質を用いることができる。触媒失活剤としては、例えば、リン酸および亜リン酸などの無機リン酸、リン酸ジブチル、リン酸トリブチルおよび亜リン酸トリフェニルなどの有機リン酸エステル、スルホン酸、並びにスルホン酸エステルが挙げられる、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリカーボネートジオールは、未反応モノマー、副生する環状カーボネート、または添加した触媒などを除去する目的で、製造後に必要に応じて精製してもよい。精製の方法としては、例えば蒸留のような、従来公知の一般的な方法を用いることができる。例えば、軽沸化合物については、蒸留で留去する方法が採用でき、水溶性の不純物を除くためには、反応生成物を水やアルカリ性水、酸性水などで洗浄してもよい。
本発明のポリカーボネートジオールは、特に両末端に水酸基を有するので、ポリウレタンの製造原料として有用である。すなわち、末端に水酸基を有するポリマーまたはオリゴマー(例えば、数平均分子量500〜50,000程度のもの)、ポリイソシアネートおよび必要に応じて鎖延長剤を反応させてポリウレタンを製造する際に、末端が水酸基のポリマーまたはオリゴマーの少なくとも一部に本発明のポリカーボネートジオールを採用することにより、両末端に位置する水酸基中のそれぞれ1個の水素原子を除いた形の構成単位を主鎖中に含むポリウレタンが製造される。また、ポリウレタンの製造原料において、末端に水酸基を有するポリマーまたはオリゴマーのうちの5質量%以上、より好ましくは10質量%以上が本発明のポリカーボネートジオールであることが望ましい。
本発明のポリカーボネートジオールと併用できる末端に水酸基を有するポリマーまたはオリゴマーとしては、通常のポリウレタンの製造原料として用いられるものを採用でき、例えば、両末端に水酸基を有する2官能のポリマーまたはオリゴマー、3つ以上の末端に水酸基を有する3官能以上のポリマーまたはオリゴマーを用いることができる。より具体的には、末端に水酸基を有するポリエステルとして、例えば、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリトリメチレンアジペート、ポリネオペンチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、ポリエチレンセバケート、ポリトリメチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリネオペンチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリネオペンチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンイソフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリネオペンチレンイソフタレート、ポリヘキサメチレンイソフタレート、およびポリカプロラクトンジオール等の公知のポリエステルが挙げられる。また、市販品としては、豊国製油社製あるいは伊藤製油製のポリエステルポリオールなども例示される。一方、末端に水酸基を有するその他のポリカーボネートジオールとして、例えば、1,9−ノナンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび1,3−シクロヘキサンジメタノールを直鎖、分岐または環状アルキレングリコール成分とするポリアルキレンカーボネートジオールが挙げられる。さらに、末端に水酸基を有するポリエーテルとして、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。また、市販品として、旭化成せんい社製、高性能ポリエーテルグリコール PTXGも例示される。
本発明のポリカーボネートジオールの数平均分子量は、下限値としては、400以上であることが好ましく、600以上であることがより好ましく、1000以上であることがさらに好ましく、1500以上であってもよい。上限値は、10000以下であることが好ましく、6000未満であることがより好ましく、5000以下、さらには4000以下であってもよい。
本発明のポリカーボネートジオールの重量平均分子量は、下限値としては、好ましくは400以上であり、より好ましくは500以上であり、さらに好ましくは800以上であり、一層好ましくは1,000以上であり、より一層好ましくは1,500以上であり、2,000以上であってもよい。上限値としては、好ましくは、20,000以下であり、より好ましくは15,000以下であり、さらに好ましくは10,000未満であり、8,000以下、7,000以下、6,000以下であってもよい。
上記平均分子量は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
本発明のポリカーボネートジオールの分散度(Mw/Mn)は、2.0以下が好ましく、1.9以下がより好ましく、1.7以下であってもよい。下限値は、1.0が理想であるが、1.1以上であっても実用レベルである。
ポリカーボネートジオールの分子量は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。実施例で用いている機器等が廃番等の理由により入手困難な場合は、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。以下、他の測定方法について同じである。
本発明のポリカーボネートジオールは、ガラス転移温度を−60℃以上とすることができ、また、25℃以下とすることができる。
ガラス転移温度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
本発明のポリカーボネートジオールは、水酸基価が40mgKOH/g以上であることが好ましく、70mgKOH/g以上であってもよい。水酸基価の上限は、160mgKOH/g以下であることが好ましく、140mgKOH/g以下であることがより好ましく、100mgKOH/g以下であってもよい。
本発明のポリウレタンの製造方法に特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。
好ましくは、本発明のポリカーボネートジオールとポリイソシアネートとを反応させる工程を含む、ポリウレタンの製造方法が挙げられる。
より好ましくは、本発明のポリカーボネートジオールとポリイソシアネートとを反応させてプレポリマーを得る工程と、前記プレポリマーと鎖延長剤とを反応させる工程と、を有するか、本発明のポリカーボネートジオールと、ポリイソシアネートと、鎖延長剤とを一括に混合した後に反応させる工程を有する、ポリウレタンの製造方法が挙げられる。
さらに好ましくは、本発明のポリカーボネートジオールと、ポリイソシアネートと、鎖延長剤とを一括に混合した後に反応させる、ポリウレタンの製造方法が挙げられる。
具体的には、本発明のポリカーボネートジオールを含む両末端が水酸基のポリカーボネートジオールと、必要に応じて2個以上の活性水素原子を有する低分子化合物(鎖延長剤)等とを均一に混合して、約60〜120℃に予熱した後、これら混合物中の活性水素原子とイソシアネート基とのモル比が1:0.95〜1:1.05になる量のポリイソシアネートを加え、回転ミキサーで短時間撹拌しながら二軸スクリューを有する連続重合装置に供給し、連続的に反応させることによりポリウレタンを製造することができる。また、本発明のポリカーボネートジオールを含む両末端が水酸基のポリカーボネートジオールとポリイソシアネートとを予め反応させ、末端イソシアネート基のプレポリマーを製造し、その後、鎖延長剤を反応させることにより、ポリウレタンを製造することもできる。
これらの製造においては、三級アミンや錫、チタンなどの有機金属塩等に代表される公知の重合触媒を用いることも可能である。また、これらの反応は、通常、無溶媒で行われるが、溶媒を用いて行ってもよい。好ましい溶剤として、例えば、ジメチルホルムアミド(N,N’−ジメチルホルムアミド)、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、およびエチルグライムが挙げられる。
本発明のポリウレタンを製造するに当たり、イソシアネート基に反応する活性水素を1つだけ含有する化合物、例えば、エチルアルコールおよびプロピルアルコール等の1価のアルコール、並びに、ジエチルアミンおよびジn−プロピルアミン等の二級アミン等を末端停止剤として用いることができる。
ポリウレタンには、熱安定剤(例えば酸化防止剤)や光安定剤などの安定剤を添加することが望ましい。また、ポリウレタンに、可塑剤、無機充填剤、滑剤、着色剤、シリコンオイル、発泡剤および難燃剤等の各種添加剤を添加してもよい。
ポリイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−ジイソシアン酸メチレンジフェニル)、および2,4−トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、並びに、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートを挙げることができる。本発明の一実施形態は、芳香族ジイソシアネートを用いる形態である。これらのポリイソシアネートは1種を単独で用いても、または2種以上を併用してもよい。
鎖延長剤としては、特に限定されず、例えば、2個以上の活性水素原子を有するジオールまたはジアミン等の低分子化合物を用いることができる。鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールなどの炭素数2〜10のジオール類、並びに、ブロピレンジアミンおよびイソホロンジアミン等の炭素数2〜10のジアミン類が挙げられる。鎖延長剤は、1種を単独で用いても、または2種以上を併用してもよい。鎖延長剤として、ジオールまたはジアミンのような活性水素原子を2個有する化合物を用いると、熱可塑性ポリウレタンをより製造しやすい点で好ましい。
鎖延長剤の使用量は、特には限定されないが、本発明のポリカーボネートジオールを含む末端に水酸基を有するポリマーの使用量に対して、好ましくは、0.1〜20倍(モル比)である。さらに、必要により、メタノールおよびエタノール等の1価の低分子アルコール、並びに、メチルアミンおよびエチルアミン等の1価の低分子アミンを変性剤として用いてもよい。
ポリウレタンを製造する際の反応温度および反応圧力は、ポリウレタンを合成できる範囲であれば特に限定されず、例えば、反応温度は40〜150℃であってもよく、反応圧力は、常圧〜0.1hPaであってもよい。
本発明のポリウレタンの重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは、10,000〜1,000,000であり、より好ましくは、50,000〜500,000であり、さらに好ましくは100,000〜300,000である。重量平均分子量は、後述の実施例における数平均分子量の測定と同様にして測定することができる。
本発明のポリウレタンの数平均分子量は特に限定されないが、好ましくは、10,000〜1,000,000であり、より好ましくは、50,000〜500,000であり、さらに好ましくは100,000〜300,000である。数平均分子量は、後述の実施例における数平均分子量の測定と同様にして測定することができる。
本発明のポリウレタンの分散度(Mw/Mn)は、1.5〜3.5であることが好ましく、1.8〜2.5であることがより好ましく、1.9〜2.3であることがさらに好ましい。
ポリウレタンを得るための重合反応を無溶媒で行った場合、得られたポリウレタンは、重合後、直ちに成形加工に付すことができる。重合条件により、ポリウレタン中に未反応のポリイソシアネートが0.2質量%以上存在する場合、必要により60〜120℃で4〜30時間の熟成を行い、反応を完結させた後、成形加工に付すことができる。
ポリウレタンを得るための重合反応を溶媒中で行った場合、重合溶媒を留去させて回収すること、または、そのまま型に流し込んで乾燥させることで目的の形に成形することができる。あるいは、反応溶液をポリウレタンの貧溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の炭素数6〜10の脂肪族飽和炭化水素、または、メタノール、エタノール等を添加混合してポリウレタンを凝集析出させ、ろ過分離し、乾燥した後、成形加工に付すことができる。
本発明のポリウレタンを種々の方法で成形加工することにより、成形加工品を得ることができる。成形加工の方法としては、例えば、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法およびブロー成形法が挙げられる。
本発明のポリカーボネートジオールを用いて得られた本発明のポリウレタンは、適正温度の融点を有し、柔軟性、耐加水分解性、低温特性、耐寒性および機械物性のような力学的性質等に優れた特性を保持すると共に、特に耐候性および耐熱性に優れており、ポリウレタンエラストマー、塗料、接着剤、コーティング剤、フォーム、バインダー、弾性繊維、合成皮革、人工皮革、シーリング材、防水材および床材等に利用することができる。
本発明のポリカーボネートジオールは、塗料、接着剤、粘着剤、インキ、被覆材および封止材などの構成材料の他、高分子改質剤および高分子可塑剤などとして用いることもできる。
本発明のポリウレタンは、柔軟性、耐熱性(特に、耐熱老化性)、機械物性等に優れており、ポリウレタンエラストマー、塗料、接着剤、コーティング剤、フォーム、バインダー、弾性繊維、合成皮革、人工皮革、シーリング材、防水材、床材等に利用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例中の物性等の分析方法は以下の通りである。
(1)DSGの反応収率および生成物の純度
DSGの反応収率および生成物の純度はガスクロマトグラフィー(装置名:Agilent 6850、アジレント社製)もしくは高速液体クロマトグラフィー(装置名:Chromaster、日立ハイテクサイエンス社製)にて、内部標準法で定量した。
(2)核磁気共鳴装置(NMR)
DSGの構造決定にはNMRを使用した(日本電子社製、型式:JNM−ECA500)。使用した重溶媒および測定周波数は各化合物の帰属中に記載した。
(3)DSGの高分解能質量分析
DSGの高分解能質量(ミリマス、MS)分析は、LC−MSのダイレクトインジェクション法、もしくはDART(Direct Analysis in Real Time)法にて行った。
HPLC(High-performance liquid chromatography)装置:U3000(Thermo Fisher Scientific社製)
DART装置:DART−Os(エーエムアール社製)
MS装置:LTQ Orbitrap Discovery(Thermo Fisher Scientific社製)
HPLC使用時の測定条件
カラム:なし
移動相:0.1質量%のギ酸水溶液:アセトニトリル(体積比50:50)の混合液
流速:0.2mL/分
試料濃度:100質量ppm
注入量:10μL
MS測定条件(LC−MSダイレクトインジェクション時)
イオン化法:Positive ESI
キャピラリ−温度:300℃
キャピラリ−電圧:22V
チューブレンズ電圧:100V
DART使用時の測定条件
イオン源温度:400℃
MS測定条件(DART時)
イオン化法:DART
キャピラリ−温度:200℃
キャピラリ−電圧:35V
チューブレンズ電圧:100V
(4)ガラス転移温度(Tmg)および融点(Tm)
ポリカーボネートジオールおよびポリウレタンのガラス転移温度(Tmg)は示差走査型熱量計を使用し、試料約5mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30mL/分)気流中昇温速度10℃/分で250℃まで昇温して溶融した後、−100℃まで、−10℃/分の速度で降温し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温して測定した。DSC曲線の転移前後における基線の差の1/2だけ変化した温度をガラス転移温度とした。
示差走査型熱量計は、株式会社島津製作所製、型式:DSC/TA−60WSを用いた。
ポリウレタンの融点(Tm)は、示差走査型熱量計を用いて、上記と同条件で測定し、DSC曲線の吸熱ピークのトップを融点とした。
(5)水酸基価
ポリカーボネートジオールの水酸基価は、JIS K 1557に準拠して測定した。
測定装置は、平沼産業社製の自動滴定装置(型式:COM−1600)を用いた。
(6)共重合ポリカーボネートジオールの共重合モル比および末端水酸基割合
ポリカーボネートジオールの共重合比は、核磁気共鳴装置を使用して、重クロロホルム溶媒中でプロトンの核磁気共鳴を測定し、各モノマーのメチレンプロトンシグナルの積分値より求めた。また、同様にして、合成して得られたポリカーボネートにおける末端の水酸基の割合を測定して求めた。
核磁気共鳴装置は、日本電子株式会社製、型式:JNM−ECA500を使用した。
(7)ポリカーボネートジオールの分子量の測定
ポリカーボネートジオールの分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)装置を用いて、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とし、示差屈折率(RI)検出器で測定した。ポリスチレンを標準物質として数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。
GPC装置は、Waters社製ACQUITY APC、カラム:XT125 2.5μm 1本、XT45 1.7μm 2本を用いた。
(8)引張物性
ポリウレタンの引張試験は、精密万能試験機を用いて、JIS K6251:2010に準じて行った。フィルムをダンベル3号の打抜き刃型で打ち抜き、23±2℃で24時間静置後、引張速度5mm/分で引張強さ(MPa)および引張弾性率(MPa)を測定した。
精密万能試験機は、島津製作所社製、オートグラフAG−Xplusを用いた。
引張強度については、以下の通り評価した。
A:3MPa以上
B:3MPa未満
また、引張弾性率については、以下の通り評価した。
A:100MPa以上
B:100MPa未満
(実施例A 化合物Aの合成)
1,4−シクロヘキサンジオン(東京化成工業社製、試薬)10.0gと、トリメチロールプロパン(三菱ガス化学社製)25.1gと、トルエン(和光純薬工業社製、特級試薬)300gと、メタンスルホン酸(東京化成工業社製、試薬)0.26gとを、300mLの丸底フラスコに収容し、常圧下で釜内温度が90℃〜112℃となるように加熱して脱水環化反応を行った。その温度にて、反応によって生成した水をトルエンと共沸させながらディーン・スターク・トラップを用いて系内から系外へ除去して、水の留出が止まるまで10時間反応させた。水を除去した後の反応系内は生成物がスラリー状になっていた。反応スラリー液を25℃まで冷却したのち、生成物をろ過、苛性ソーダ水にて中和洗浄、水にて洗浄、減圧乾燥をすることで化合物A30.3gを得た(GC純度98.4%、単離収率97%)。
下記に実施例Aの反応スキームを示す。
Figure 2019172940
実施例Aで得られた化合物Aの構造は1HNMR、13CNMR、DEPT、H−HCOSY、HMQCの各種スペクトルから同定した。
Figure 2019172940
13C NMRのδ25.7と30.4は、DEPT135およびHMQCスペクトルから、シクロヘキサン環の4つのメチレン基が2つずつ非等価に観測されていると帰属した。
さらにLC−MS分析(エレクトロスプレー法[ESIポジティブモード]、高分解能質量分析[ミリマス])を用いて、化合物Aの分子量を測定した。エレクトロスプレー法に従った質量分析では、分子をほとんどフラグメント化させずにイオン化して質量分析するため、分子量の情報を得ることができ、同時に高分解能質量分析することで組成式として検証することができる。分子構造が保持されたままプロトン化された[M+H]+の質量数(分子量M+1)が345.22620(C18336)であったことから、化合物Aの組成式はC18326と求められた。
(実施例B 化合物Bの合成)
トリメチロールプロパン25.1gをトリメチロールエタン(三菱ガス化学社製)22.5gに変更した以外は実施例Aと同様の条件にて、釜内温度95℃〜112で脱水環化反応を行った。減圧乾燥後に得られた化合物Bは27.1g(GC純度98.2%、単離収率94%)であった。
下記に実施例Bの反応スキームを示す。
Figure 2019172940
実施例Bで得られた化合物Bの構造は1HNMR、13CNMR、DEPT、H−HCOSY、HMQCの各種スペクトルから同定した。
Figure 2019172940
13C NMRのδ25.8と30.3は、DEPT135およびHMQCスペクトルから、シクロヘキサン環の4つのメチレン基が2つずつ非等価に観測されていると帰属した。
さらにLC−MS分析を用いて、化合物Bの分子量を測定した。プロトン化された[M+H]+の質量数(分子量M+1)が317.19489(C16296)であったことから、化合物Bの組成式はC16286と求められた。
(実施例C 化合物Cの合成)
1,4−シクロヘキサンジオン(東京化成工業社製、試薬)1.47gと、α、α、α−トリス(ヒドロキシメチル)トルエン(TORONTO RESEACH CHEMICALS社製)5.0gと、トルエン(和光純薬工業社製、特級試薬)100gと、パラトルエンスルホン酸1水和物(和光純薬工業社製、特級試薬)0.08gとを、300mLの丸底フラスコに収容し、常圧下で釜内の設定温度が90℃〜112℃となるように加熱して脱水環化反応を行った。その温度にて、反応によって生成した水をトルエンと共沸させながらディーン・スターク・トラップを用いて系内から系外へ除去して、水の留出が止まるまで4時間反応させた。水を除去した後の反応系内は生成物がスラリー状になっていた。反応スラリー液を25℃まで冷却したのち、生成物をろ過、苛性ソーダ水にて中和洗浄、水にて洗浄、減圧乾燥をすることで化合物C5.0gを得た(HPLC純度98.5%、単離収率86%)。
下記に実施例Cの反応スキームを示す。
Figure 2019172940
実施例Cで得られた化合物Cの構造は1HNMR、13CNMR、DEPT、H−HCOSY、HMQCの各種スペクトルから同定した。
Figure 2019172940
13C NMRのδ25.1と31.3は、DEPT135およびHMQCスペクトルから、シクロヘキサン環の4つのメチレン基が2つずつ非等価に観測されていると帰属した。
実施例Cで得られた化合物Cは、DART−MS分析を用いて、ミリマスを測定することによって同定した。プロトン化された[M+H]+の質量数(分子量M+1)が441.22717(C26336)であったことから、化合物Cの組成式はC26326と求められた。
(実施例1 ポリカーボネートジオールの合成)
DSG由来の単位として化合物Aと1,6−ヘキサンジオール(1,6−HD)を用い、ポリカーボネートジオールを合成した。
撹拌翼、コールドトラップ、温度計、加熱装置及び窒素ガス導入管を備えた内容積500mLのセパラブルフラスコに、炭酸ジフェニル(ジフェニルカーボネート、三菱ケミカル社製)171.4g(0.800mol)、DSG35.83g(0.104mol)、1,6−ヘキサンジオール(和光純薬工業社製)110.6g(0.936mol)、及び酢酸マグネシウム四水和物(和光純薬工業社製)5.2mg(0.0240mmol)を仕込んだ。次いで、フラスコ内を窒素置換後、窒素雰囲気下で、205℃で1時間エステル交換反応を行った。その後、系内を徐々に減圧しながら昇温し、反応温度を240℃まで昇温しつつ徐々に減圧し、最終的には1kPa以下で留出液量より大概の分子量を判断し、目標分子量になったと判断した時点で反応を終了し、ポリカーボネートジオール(1)を得た。得られたポリカーボネートジオールの物性等を表1に示す。なお、得られたポリカーボネートジオール(1)を含む混合物において、末端に水酸基が90%以上存在することを確認した。得られたポリカーボネートジオールの物性等を表1に示す。なお、得られたポリカーボネートジオール(1)を含む混合物において、NMRで、末端に水酸基が90%以上存在することを確認した。
得られたポリカーボネートジオールについて、ガラス転移温度(Tmg)、Mn、Mw、分散度(Mw/Mn)を求めた。
上記で得られたポリカーボネートジオールと、4,4’−ジイソシアン酸メチレンジフェニル(MDI、和光純薬工業社製)を用いてポリウレタンを合成した。
具体的には、攪拌翼、及び窒素ガス導入管を備えた500mLフラスコに、実施例1で得られたポリカーボネートジオール(1)47.2gを仕込み、80℃、減圧下で2時間、水分を除いた。次いで、超脱水N,N’-ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製) 80gを加えて溶解後、4,4’−ジイソシアン酸メチレンジフェニル(和光純薬工業社製)26.4g、鎖延長剤として1,4−ブタンジオール(和光純薬工業社製をモレキュラーシーブスで脱水)6.4gを添加し、適度な粘度となったところで生成物を取り出した。
バーコーターにて、ウェット状態で厚みが約150μmのフィルムを作製後、一晩室温で乾燥させ、さらに70℃に熱した真空乾燥機(ADVANTEC社製、型式:DRV623DA)内で一晩乾燥させてポリウレタンフィルムを得た。得られたフィルムについて、引張強度および弾性率を測定した。
(実施例2)
撹拌翼、コールドトラップ、温度計、精留塔、加熱装置及び窒素ガス導入管を備えた内容積500mLのセパラブルフラスコに、炭酸ジエチル(和光純薬工業社製)118.3g(1.00mol)、DSG37.54g(0.109mol)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(和光純薬工業社製)164.4g(1.39mol)、及びチタン(IV)テトラブトキシド, モノマー(和光純薬工業社製)3.2mg(0.0950mmol)を仕込んだ。次いで、フラスコ内を窒素置換後、窒素雰囲気下で徐々に160℃まで昇温した後、200℃まで徐々に昇温しながらエタノールと炭酸ジエチルを共沸させ、9時間後、留出がなくなったところで系内を徐々に減圧しながら反応温度を213℃まで昇温し、最終的には1kPa以下で留出液量より大概の分子量を判断し、目標分子量になったと判断した時点で反応を終了し、ポリカーボネートジオール(2)を得た。得られたポリカーボネートジオールの物性等を表1に示す。なお、得られたポリカーボネートジオール(2)を含む混合物において、NMRで、末端に水酸基が90%以上存在することを確認した。
得られたポリカーボネートジオールを用いて、ガラス転移温度(Tmg)、Mn、Mw、分散度(Mw/Mn)を求めた。また、ポリウレタンを合成した。
(比較例1、実施例3〜実施例5 ポリカーボネートジオールの合成)
実施例1において、表1に示す通りジオールの種類を変更し、他は同様に行ってポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカートートジオールについて、ガラス転移温度(Tmg)、Mn、Mw、分散度(Mw/Mn)を求めた。得られたポリカーボネートジオールのいずれについても、ポリカーボネートを含む混合物において、NMRで、末端に水酸基が90%以上存在することを確認した。
なお、表1および表2において、SPGは、スピログリコール(三菱ガス化学社製)を、1,6−HDは、1,6−ヘキサンジオール(和光純薬工業社製)を、MPDは、3−メチル−1,5−ペンタンジオール)(和光純薬工業社製)を、DEGは、ジエチレングリコール(和光純薬工業社製)を示している。また、ポリウレタンを合成した。
なお、弾性率は一部の例のみ測定した。
Figure 2019172940
上記実施例1と比較例1の比較から明らかなとおり、スピログリコールを化合物として用いた場合と比較して、ジスピログリコール(DSG)を化合物として用いた場合、得られるポリカーボネートジオールは、ガラス転移温度が高かった。さらに、かかるポリカーボネートジオールから得られたポリウレタンは、引張強度および弾性率に優れていた。
また、実施例2〜5に示す通り、ジオールの種類やDSGと他のジオールの比率を変えても、ガラス転移温度が高いポリカーボネートジオールが得られた。さらに、引張強度などの機械的強度にも優れたポリウレタンが得られた。
また、実施例1において、DSGとしての化合物Aを、それぞれ、化合物Bまたは化合物Cに変えた場合も、優れたポリカーボネートジオール、さらには、ポリウレタンが製造できた。
本発明のポリウレタンは、塗料、接着剤、コーティング剤、フォーム、バインダー、弾性繊維、合成皮革、人工皮革、シーリング材、防水材、床材等に利用することができる。

Claims (13)

  1. 下記式[I]で表される繰り返し単位を有するポリカーボネートジオール;
    Figure 2019172940
    式[I]中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R3は、それぞれ独立に、水素原子、ヘテロ原子を含む基、ハロゲン原子を含む基、炭素数1〜6の直鎖のアルキル基、炭素数3〜6の分岐したアルキル基または、アリール基を含む炭素数が6〜12である基を表す。
  2. 前記式[I]におけるR3が、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基である、請求項1に記載のポリカーボネートジオール。
  3. 前記式[I]におけるR1およびR2が、それぞれ独立に、炭素数1〜7の直鎖のアルキル基、炭素数3〜7の分岐したアルキル基またはアリール基を表す、請求項1または2に記載のポリカーボネートジオール。
  4. 前記式[I]におけるR1およびR2が、それぞれ独立に、炭素数1〜7の直鎖のアルキル基またはアリール基である、請求項1または2に記載のポリカーボネートジオール。
  5. 前記式[I]におけるR3が、水素原子であり、R1およびR2が、それぞれ独立にエチル基、メチル基またはフェニル基である、請求項1に記載のポリカーボネートジオール。
  6. 前記式[I]におけるR3が、水素原子であり、R1およびR2がエチル基である、請求項1に記載のポリカーボネートジオール。
  7. 前記式[I]で表される繰り返し単位を、前記ポリカーボネートジオールが有する全繰り返し単位中、1〜70mol%有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール。
  8. 前記繰り返し単位以外に含まれる成分として、下記式[II]で表される繰り返し単位を有するポリカーボネートジオール;
    Figure 2019172940
  9. 前記式[II]で表される繰り返し単位を、前記ポリカーボネートジオールが有する全繰り返し単位中、30〜99mol%有する、請求項8に記載のポリカーボネートジオール。
  10. 数平均分子量が400以上6,000未満である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールを原料として得られるポリウレタン。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールとポリイソシアネートとを反応させる工程を含む、ポリウレタンの製造方法。
  13. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールとポリイソシアネートとを反応させてプレポリマーを得る工程と、該プレポリマーと鎖延長剤とを反応させる工程と、を有するか、
    請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールと、ポリイソシアネートと、鎖延長剤とを一括に混合した後に反応させる工程を有する、請求項12に記載のポリウレタンの製造方法。
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