JP2019172837A - 人工木材製造用フェノール樹脂、人工木材製造用組成物、および、人工木材の製造方法 - Google Patents

人工木材製造用フェノール樹脂、人工木材製造用組成物、および、人工木材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】人工木材の強度の向上が可能な樹脂を提供する。【解決手段】−CH2−O−Rで表される基(Rは、炭素数1〜6のアルキル基を表す)で置換されたフェノール構造単位を有する、人工木材製造用フェノール樹脂。この人工木材製造用フェノール樹脂は、好ましくは、さらに、ジメチレンエーテル構造を含む構造単位を有する。また、この人工木材製造用フェノール樹脂中の、−CH2−O−Rで表される基(Rの定義は同上)のモル量をMRとし、フェノール樹脂中のヒドロキシメチル基のモル量をMHとしたとき、MR/(MR+MH)の値は、好ましくは0.3以上である。この人工木材製造用フェノール樹脂と、木粉、熱可塑性樹脂、相溶化剤等を混練し成形することで、強度が良好な人工木材を得ることができる。【選択図】なし

Description

本発明は、人工木材製造用フェノール樹脂、人工木材製造用組成物、および、人工木材の製造方法に関する。
樹脂や木粉などを混合または混練して得られた樹脂組成物を、所望の形状に成形して得られる人工木材の研究開発が行われている。
人工木材は、木材の風合いを持ちつつも、天然の木材と比較して耐久性が高い(腐食に強い)、耐水性、耐候性、寸法安定性などが高い、プラスチックのように成形が可能である、等の特徴がある。また、一度使用した人工木材を粉砕して再度成形体を製造するマテリアルリサイクルも可能である。
人工木材は、これまで木材が用いられてきた各種エクステリア製品、住宅用内装材等の建材、各種構造材、例えばデッキ材、手すり、枕木等として使用することができる。人工木材は、木材・プラスチック複合材(Wood Plastic Composite:WPC)と呼ばれることもある。
例えば、特許文献1には、ポリオレフィン樹脂を、木粉などと配合して樹脂組成物を調製し、その樹脂組成物を用いて人工木材を得たことが記載されている。
特開2006−131729号公報
従来の人工木材には、なお様々な改善の余地がある。特に、強度については更なる改善の余地がある。人工木材は建材や構造材などとしてしばしば用いられるため、強度の向上は重要である。
今回、本発明者は、木粉などと混合する樹脂として新たなものを用いることで、人工木材の強度を向上させられないかと考えた。
つまり、本発明者は、人工木材の強度の向上が可能な樹脂を提供することを課題として、新たな発明を検討した。
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を達成できることを見出した。
本発明によれば、
以下一般式(1)で表される構造単位を含む人工木材製造用フェノール樹脂
が提供される。
Figure 2019172837
一般式(1)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
また、本発明によれば、
上記の人工木材製造用フェノール樹脂、木粉、熱可塑性樹脂および相溶化剤を含む、人工木材製造用組成物
が提供される。
また、本発明によれば、
上記の人工木材製造用組成物により製造された人工木材
が提供される。
また、本発明によれば、
上記の人工木材製造用フェノール樹脂、木粉、熱可塑性樹脂および相溶化剤を加熱しながら混練して混練物を得る混練工程と、
前記混練物を金型に入れて成形する成形工程と
を含む人工木材の製造方法
が提供される。
本発明によれば、人工木材の強度の向上が可能な樹脂が提供される。また、そのような樹脂を用いて人工木材を製造することで、高強度の人工木材を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書中、数値範囲の説明における「a〜b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1〜5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」の意である。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
<人工木材製造用フェノール樹脂>
本実施形態の人工木材製造用フェノール樹脂は、以下一般式(1)で表される構造単位を含む。
Figure 2019172837
一般式(1)において、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
なお、以下では、「人工木材製造用フェノール樹脂」を、単に「フェノール樹脂」とも表記する。
本実施形態のフェノール樹脂は、主として−CH−O−Rの構造を含むことにより、人工木材の製造で通常用いられる相溶化剤(例えば、無水カルボン酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる)と相溶しやすくなると考えられる。そのため、木粉や相溶化剤などと混練して硬化させたときに、フェノール樹脂が従来よりも均質に混合されたうえで硬化すると考えられる。よって、人工木材の強度を高めることができると考えられる。
なお、上記の説明は推測を含むものであり、また、上記説明の内容により本発明が限定されるものではない。
フェノール樹脂は、さらに、以下一般式(2)で表される構造単位を含むことが好ましい。
Figure 2019172837
一般式(2)において、R’は、水素原子または一価の置換基を表す。
一般式(2)の構造単位中のエーテル構造は、加熱により、ジメチレンエーテル部分が解離してヒドロキシメチル基を生じると考えられる。このため、相溶化剤が溶融して、後述する熱可塑性樹脂や木粉との密着性を十分に高めた後に、発生したヒドロキシメチル基と他成分が反応して人工木材が形成されると考えられる。このため、熱可塑性樹脂、木粉及び相溶化剤間の密着性をより高めることができ、結果として、人工木材の強度をより向上させることができると考えられる。
R’が1価の置換基である場合、その置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。1価の置換基の炭素数は、例えば1〜10、好ましくは1〜6である。
R’は、好ましくは水素原子である。換言すると、一般式(2)で表される構造単位は、好ましくは、式に明示されている原子団以外の原子団により置換されていない。
フェノール樹脂中の、一般式(1)で表される構造単位の量を適切に調整することで、一層、人工木材の強度を高めることができる(相溶化剤などとの相溶性が最適になるものと考えられる)。具体的には、
・フェノール樹脂中の−CH−O−Rで表される基(Rの定義は一般式(1)のものと同様である)のモル量をMとし、
・フェノール樹脂中のヒドロキシメチル基のモル量をMとしたとき、
/(M+M)は、例えば0.1以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.7以上である。
なお、理想的には、M/(M+M)の値は、1である(これは、M/(M+M)の上限値でもある)。換言すると、フェノール樹脂は、特に好ましくは、ヒドロキシメチル基を有しない。
ここで、本実施形態の人工木材製造用フェノール樹脂中に、アルコキシメチル基(具体的には、一般式(1)中の−CH−O−Rで表される基)やヒドロキシメチル基(−CHOH)が存在していることの確認や、これら基の量比については、例えば、プロトン核磁気共鳴分光法(H−NMR)での測定により知ることができる。具体的な測定については、以下のように行うことができる。
まず、フェノール樹脂にアセチル化処理をして、ヒドロキシメチル基をアセチルオキシメチル基(−CH−OC(O)CH)に置換する。この樹脂をフラスコの中に入れて、フラスコに重アセトン、重クロロホルム、重水などの重溶媒で溶解させる。この樹脂溶解液をNMR用試験管へ入れ、H−NMR装置(例えばJEOL社製、共鳴周波数300MHzのもの)によりH−NMRスペクトルを得る。
得られたスペクトルにおいて、シフト値が4.9ppm以上5.5ppm以下にあるアセチルオキシメチル基(−CH−OC(O)CH)中のメチレン基由来のピークの有無やその面積(積分値)、シフト値が4.3ppm以上4.9ppm未満であるアルコキシメチル基(−CH−OR)中のメチレン基由来のピークの有無やその面積(積分値)から、各基の存在や量比を知ることができる。
なお、シフト値が3.8ppm以上4.3ppm未満であるピークは、フェニレン基(−Ph−)間のメチレン基(−Ph−CH−Ph−)に対応するシグナルである。
特に、本実施形態では、アセチル化処理したフェノール樹脂を、重アセトン溶媒で測定した場合のH−NMRスペクトルにおいて、シフト値が4.9ppm以上5.5ppm以下であるピークの積分値を(a)、シフト値が4.3ppm以上4.9ppm未満であるピークの積分値を(b)としたとき、(b)/{(a)+(b)}の値が、前述のM/(M+M)の値に対応する。つまり、本実施形態では、(b)/{(a)+(b)}の値が0.3以上であることが好ましい。このことは、フェノール樹脂中の全ての置換基に対して、アルコキシメチル基中のメチレン基(−CH−OR)の割合が適当な範囲にあることを表す。
本実施形態のフェノール樹脂は、典型的には、レゾール型フェノール樹脂が有するヒドロキシメチル基をエーテル化することで得ることができる。換言すると、原料樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を準備し、その樹脂が有するヒドロキシメチル基と、炭素数1〜6のアルコールとを脱水反応させることで得ることができる。
ここでの原料樹脂としてのレゾール樹脂については、特に限定されず、フェノール、クレゾール、ビスフェノールA等をフェノール源として、苛性ソーダ、水酸化バリウム、消石灰等の塩基性触媒や酢酸亜鉛等の二価金属塩触媒の存在下でアルデヒド源と反応して得られるメチロールレゾール型フェノール樹脂及びジメチレンエーテルレゾール型フェノール樹脂、あるいは桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性のレゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、後述する熱可塑性樹脂、木粉及び相溶化剤間の密着性をより高める観点から、フェノールをフェノール源としたジメチレンエーテルレゾール型フェノール樹脂(すなわち、上記一般式(2)に該当する構造単位が含まれている樹脂)が特に好ましい。
なお、ジメチレンエーテルレゾール型フェノール樹脂は、合成により得てもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば住友ベークライト株式会社のもの(品番:PR−53529など)が挙げられる。また、合成法については、特開平5−148334号公報などの記載を参考にすることができる。
本実施形態のフェノール樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば300〜10000、好ましくは500〜8000である。また、本実施形態のフェノール樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、例えば1〜10、好ましくは2〜8である。これらの値は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めることができる。
本実施形態のフェノール樹脂の形態、形状については、特に限定されない。つまり、固形、粉末、液状いずれの状態であってもよい。また、これらは1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
相溶性という観点では、液状が好ましいと考えられる。一方、混練の際の扱いやすさの観点からは、フェノール樹脂は固形状であることが好ましい。
<人工木材製造用組成物>
本実施形態の人工木材製造用組成物は、上述の人工木材製造用フェノール樹脂、木粉、熱可塑性樹脂および相溶化剤を含む。また、人工木材を製造可能な限りにおいて、これら以外に任意の成分を含んでいてもよい。
人工木材製造用組成物の全体を基準としたときの、上述の人工木材製造用フェノール樹脂の含有量は、典型的には0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。
以下、フェノール樹脂以外の成分について説明する。
・木粉
本実施形態の人工木材製造用組成物は、木粉を含む。
使用可能な木粉については、特に限定されず、他の成分と混合または混練できる形状および大きさであればよい。具体的には、製材工場から排出されるノコギリ屑(木屑、オガ屑)、木材チップ、廃木材の粉砕チップなどが挙げられる。
木粉の粒度は、10〜200メッシュパス程度のもの、粒径にして20〜150μmのものが好ましい。
木粉は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、木粉の原料は、バージン原料である必要はなく、建築廃材等から再生されたリサイクル原料であってもよい。
人工木材製造用組成物の全体を基準としたときの、木粉の含有量は、典型的には20〜95質量%、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは50〜70質量%である。
・熱可塑性樹脂
本実施形態の人工木材製造用組成物は、熱可塑性樹脂を含む。
使用可能な熱可塑性樹脂については、特に限定されない。
具体的には、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ABS、EVA、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、アクリル系樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフイド、ポリアセタール等が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、具体的には、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)等のポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体等が挙げられる。
なかでも、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS等が好ましく、ポリオレフィンがより好ましい。
熱可塑性樹脂は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、熱可塑性樹脂はバージン原料である必要はなく、容器包装廃棄物、家電廃棄物、産業廃棄物から再生されたリサイクル原料であってもよい。
人工木材製造用組成物の全体を基準としたときの、熱可塑性樹脂の含有量は、典型的には5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%である。
・相溶化剤
本実施形態の人工木材製造用組成物は、相溶化剤を含む。
使用可能な相溶化剤については、特に限定されない。人工木材に通常用いられるものは、いずれも用いることができる。
具体的には、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンベースポリマーとして、これを不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体(単量体)の一種又は二種以上の混合物によって変性した変性ポリオレフィンが挙げられる。不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和カルボン酸、又はその誘導体、例えば、無水物、アミド、イミド、エステルなどが挙げられる。なかでも、ポリオレフィンをベースポリマーとする無水カルボン酸変性ポリオレフィンが好ましく、より好ましくは、無水マレイン酸変性ポリエチレン又は無水マレイン酸変性ポリプロピレンである。
相溶化剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
相溶化剤を、上述した本実施形態のフェノール樹脂等と組み合わせて用いることにより、人工木材成形品の強度を向上させることができる。
人工木材製造用組成物の全体を基準としたときの、相溶化剤の含有量は、典型的には0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
・その他成分
本実施形態の人工木材製造用組成物は、種々の目的のために、上記以外の任意成分を含んでもよい。例えば、滑剤や充填材などを含んでもよい。
例えば、成形性向上のために、滑剤を用いてもよい。使用可能な滑剤については特に限定されない。具体的には、ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリルアルコール等の高級アルコール、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩が挙げられる。滑剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、人工木材としたときの特性を改善するために、充填材を用いてもよい。使用可能な充填材としては特に限定されない。例えば、一般に樹脂組成物に配合されるタルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウォラストナイト、ガラス繊維、水酸化マグネシウム、高炉スラグ、フライアッシュ等の無機充填材を挙げることができる。充填材は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<人工木材の製造方法および人工木材>
本実施形態の人工木材の製造方法は、上記のフェノール樹脂、木粉、熱可塑性樹脂および相溶化剤(または、上記の人工木材製造用組成物)を加熱しながら混練して混練物を得る混練工程と、その混練物を金型に入れて成形する成形工程とを含む。また、これら以外の任意の工程を含んでもよいし、含まなくてもよい。
混練工程で用いる混練装置については、特に限定されない。例えば、ヘンシェルミキサー等の高速アジテート式混練機、ニーダー等の高粘性用ブレード型混練機、単軸または多軸押出機等、通常の人工木材組成物の製造で用いられる混練装置を用いることができる。また、これらの混練装置は、回分式混練装置であっても連続式混練装置であってもよい。
なお、各成分は、一括して混練されてもよいし、まず一部の成分のみを混練し、その後他の成分を追添して混練してもよい。例えば、熱可塑性樹脂、木粉及び相溶化剤を含む配合物を混練し、その後、本実施形態のフェノール樹脂を添加してさらに混練してもよい。
人工木材成形品の耐水性や強度を向上させる観点からは、熱可塑性樹脂、木粉及び相溶化剤を含む配合物を混練し、その後、本実施形態のフェノール樹脂を添加してさらに混練する方法が好ましい。
回分式混練装置を用いる場合は、例えば、熱可塑性樹脂、木粉及び相溶化剤を含む配合物を回分式混練装置に投入して混練し、その後で、フェノール樹脂を回分式混練装置に添加してさらに混練することによって、人工木材組成物を得ることができる。また、連続式混練装置を用いる場合は、例えば、連続式混練装置の原料投入口と組成物排出口との間に中間フィード口を設置して、熱可塑性樹脂、木粉及び相溶化剤を含む配合物を原料投入口から投入して混練した後に、フェノール樹脂を中間フィード口から添加し、さらに混練することによって、人工木材組成物(混練物)を得ることができる。
混練温度は特に限定されるものではなく、好ましくは、熱可塑性樹脂、相溶化剤およびフェノール樹脂の融点以上、木粉の分解温度以下である。具体的には、通常、130〜230℃が好ましく、より好ましくは150〜220℃以下である。混練温度を下限値以上とすることにより、熱可塑性樹脂や相溶化剤が溶融し、十分な混練を実現することができる。また、混練温度を上限値以下とすることにより、木粉が分解することによって人工木材の特性が低下するのを抑制することができる。
混練時間は特に限定されるものではなく、各原料が十分に混練された状態を確保できればよい。通常は1〜60分が好ましく、より好ましくは、5〜30分の範囲である。
成形工程については、典型的には、所望の金型に、上記で得られた混練物を注入するなどして行うことができる。
金型に混練物を注入する方法については特に限定されず、押出成形、射出成形等、公知の成形方法を適用することができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
<フェノール樹脂の製造(合成)>
・合成例1
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置を準備した。
この装置内に、フェノール1000質量部、37質量%ホルマリン水溶液250質量部、92質量%パラホルムアルデヒド750質量部、30質量%アンモニア水溶液を84質量部添加した。これを80℃に加熱昇温させ、2時間撹拌し反応させた。以上によりレゾール型フェノール樹脂を合成した。(なお、このレゾール型フェノール樹脂の中には、レゾール型フェノール樹脂が通常有するヒドロキシメチル基と、2つ以上のヒドロキシメチル基が脱水して形成された一般式(2)に該当する構造が含まれる。)
その後、リン酸を35質量部入れて中和した。さらにその後、91kPaの減圧下で脱水を行い系内の温度が65℃に達したところで、n−ブタノール1500質量部を投入し、110℃で脱水しながら還流反応を11時間反応させて、そして冷却した。
以上により、不揮発分58質量%の、レゾール型フェノール樹脂のヒドロキシメチル基がブチルエーテル化された構造(一般式(1)に該当する構造)を含む樹脂を2000質量部得た。
この樹脂を、フェノール樹脂1とする。
・合成例2
n−ブタノール投入後の還流時間を11時間ではなく8時間にした以外は、合成例1と同様にしてフェノール樹脂を得た。
このフェノール樹脂を「フェノール樹脂2」とする。
・合成例3
n−ブタノール投入後の還流時間を11時間ではなく4時間にした以外は、合成例1と同様にしてフェノール樹脂を得た。
このフェノール樹脂を「フェノール樹脂3」とする。
・合成例4
n−ブタノール投入後の還流時間を11時間ではなく2時間にした以外は、合成例1と同様にしてフェノール樹脂を得た。
このフェノール樹脂を「フェノール樹脂4」とする。
・合成例5(比較)
n−ブタノールを用いた脱水反応を全く行わなかった以外は、合成例1と同様にして、フェノール樹脂を得た。
このフェノール樹脂を「比較フェノール樹脂」とする。
フェノール樹脂1〜4および比較フェノール樹脂については、前述の方法に準じて、H−NMRを用いて、M/(M+M)の値を求めた。なお、アセチル化処理の方法は、以下のようにした。
まず、各フェノール樹脂をナス型フラスコに入れて、冷エタノールに浸漬して減圧凍結乾燥を行い、水分、アルコールを除去した。
上記の凍結乾燥処理した樹脂1gを、20ml三角フラスコに入れて、三角フラスコを氷水中に浸漬し、これにピリジン10gを添加して樹脂を溶かした。その後、無水酢酸10gを添加した。これを、三角フラスコに入れ、光が当たらないようにして、5℃で24時間放置した。その後、200mlの純水中に三角フラスコ内容物を入れた。ろ紙を用いて沈殿物を取り出し、ろ紙上で沈殿物を純水でよく洗浄した。沈殿物をアセトンに溶かして、ナス型フラスコに入れて、冷エタノールに浸漬して減圧凍結乾燥を行い、溶剤、水分を除去して、樹脂のアセチル化を行った。
<実施例1:人工木材の製造>
まず、以下の原料を準備した。
・木粉:粒径150μm以下に調整された木粉
・熱可塑性樹脂:低密度ポリエチレン(LDPE、日本ポリエチレン株式会社製、品番:ノバテックLF443)
・相溶化剤:マレイン酸変性直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(マレイン酸変性LLDPE、三菱ケミカル株式会社製、モディックM545)
・フェノール樹脂:上記のフェノール樹脂1
・滑剤:ステアリン酸亜鉛
上記の木粉60質量部、熱可塑性樹脂36質量部、相溶化剤4質量部、フェノール樹脂2.5質量部および滑剤3.5質量部を乾式混合した。
その後、連続式混練機を用い、190℃で6分加熱混練して混練物を得た。この混練物を、押出機を用いて、長さ80mm、幅10mm、厚み40mmの金型に注入した。これを冷却して、評価用の人工木材を得た。
<実施例2〜4および比較例:人工木材の製造>
フェノール樹脂として、フェノール樹脂1の代わりにフェノール樹脂2〜4または比較フェノール樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、評価用の人工木材を得た。
<曲げ強度の評価>
得られた評価用の人工木材を用いて、プラスチック−曲げ特性の求め方(JIS K 7171 2008)に基づき、曲げ強度を測定した。支点間距離は64mm、試験速度は2mm/minとした。
各実施例および比較例について、用いたフェノール樹脂、そのフェノール樹脂のM/(M+M)、および曲げ強度をまとめて表1に示す。なお、曲げ強度については、比較例を100に規格化した値を掲載している。
Figure 2019172837
表1より、一般式(1)に該当する構造を含むフェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂のヒドロキシメチル基がアルキルエーテル化された構造)を用いることで、人工木材の強度の向上が可能であることが示された。
特に、実施例4と1〜3の対比からわかるとおり、M/(M+M)が0.3以上である(レゾール型フェノール樹脂中のヒドロキシメチル基のエーテル化率が0.3以上である)ことにより、比較例に対して顕著に曲げ強度が向上していることがわかる。

Claims (6)

  1. 以下一般式(1)で表される構造単位を含む人工木材製造用フェノール樹脂。
    Figure 2019172837
    一般式(1)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
  2. 請求項1に記載の人工木材製造用フェノール樹脂であって、
    さらに、以下一般式(2)で表される構造単位を含むフェノール樹脂。
    Figure 2019172837
    一般式(2)中、R’は、水素原子または一価の置換基を表す。
  3. 請求項1または2に記載の人工木材製造用フェノール樹脂であって、
    当該フェノール樹脂中の−CH−O−Rで表される基(Rの定義は一般式(1)のものと同様である)のモル量をMとし、
    当該フェノール樹脂中のヒドロキシメチル基のモル量をMとしたとき、
    /(M+M)が0.3以上であるフェノール樹脂。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工木材製造用フェノール樹脂、木粉、熱可塑性樹脂および相溶化剤を含む、人工木材製造用組成物。
  5. 請求項4に記載の人工木材製造用組成物により製造された人工木材。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工木材製造用フェノール樹脂、木粉、熱可塑性樹脂および相溶化剤を加熱しながら混練して混練物を得る混練工程と、
    前記混練物を金型に入れて成形する成形工程と
    を含む人工木材の製造方法。
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