JP2019171297A - 半透膜支持体 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、半透膜形成後にピンホール等の欠点が少ない半透膜支持体を提供することにある。【解決手段】主体合成繊維とバインダー合成繊維とを少なくとも含有してなる不織布からなり、16質量%濃度のポリスルホン溶液(ポリスルホン:コーデル(登録商標) P−3500LCD MB−7(商品名)、ソルベイ社製、溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド)を半透膜支持体表面に塗布した際に、ポリスルホン溶液の該半透膜支持体への浸透面積率が18%〜35%であることを特徴とする半透膜支持体。【選択図】なし
Description
本発明は、半透膜支持体に関する。
海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液濾過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造等の分野で、半透膜が広く用いられている。半透膜は、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の合成樹脂で構成されている。しかしながら、半透膜単体では機械的強度に劣るため、不織布や織布等の繊維基材からなる半透膜支持体の片面に半透膜が設けられた「濾過膜」の形態で使用されている。以下、半透膜支持体の半透膜が設けられる面を「塗布面」と称し、逆面を「非塗布面」と称する場合がある。
半透膜支持体に要求される性能としては、半透膜が均一に形成されること(半透膜均一性)、半透膜にピンホール等の欠点の発生が少ないこと(ピンホール抑制能)等が挙げられる。半透膜均一性や、ピンホール抑制能のために、半透膜支持体の通気性を制御することが開示されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
特許文献1には、半透膜支持体を構成する不織布のフラジール形通気度(JIS L 1079−1966)が0.2〜10.0cm3/cm2・sであることが必要であると記載されている。そして、通気度が0.2cm3/cm2・s未満であると、半透膜を形成するための半透膜液が低濃度、低粘度であっても、不織布中に充分に浸透せず、膜が不織布に強固に接着しなくなり、一方、通気度が10.0cm3/cm2・sを超えると、半透膜液が高濃度、高粘度であっても、不織布の裏面にまで滲出しやすくなり(裏抜けが生じやすくなり)、その際に不織布の空隙内に存在する空気を巻き込んで膜構造にピンホールが発生しやすくなることが記載されている。
特許文献2には、半透膜支持体の通気度(JIS L 1913)としては、0.1〜5cm3/cm2・sであることが好ましいことが記載されている。そして、0.1cm3/cm2・s未満では、通気度が低すぎて膜が不織布に接着しにくくなり、加工性が低下するおそれがあり、逆に、通気度が5cm3/cm2・sを超えた場合、半透膜液が不織布の裏面にまで滲出しやすくなり、膜構造にピンホールが発生しやすくなるおそれがあることが記載されている。
しかしながら、上記の従来技術のように通気度が0.1〜10.0cm3/cm2・sの範囲内の半透膜支持体を使用した場合でも、半透膜塗布後に半透膜にピンホールが多く発生してしまう場合があるという課題があった。
上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、下記発明を見出した。
主体合成繊維とバインダー合成繊維とを少なくとも含有してなる不織布からなり、16質量%濃度のポリスルホン溶液(ポリスルホン:コーデル(登録商標) P−3500LCD MB−7(商品名)、ソルベイ社製、溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド)を半透膜支持体表面に塗布した際に、ポリスルホン溶液の該半透膜支持体への浸透面積率が18%〜35%であることを特徴とする半透膜支持体。
本発明の半透膜支持体に半透膜液を塗布することで、ピンホール欠点の少ない半透膜を提供することができる。
本発明の半透膜支持体は、海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液濾過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造等の分野で使用することができる。半透膜としては、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の合成樹脂で構成された半透膜が挙げられる。半透膜支持体の片面(塗布面)に、半透膜の原料となる合成樹脂を溶かした半透膜液が塗布され、凝固浴中でゲル化された後に水洗されて、微多孔膜が形成され、半透膜支持体の塗布面に半透膜が設けられた複合体の形態(濾過膜)となる。
本発明の半透膜支持体は、主体合成繊維とバインダー合成繊維とを少なくとも含有してなる不織布である。該半透膜支持体を微視的に観察した場合、目が詰まり、フィルム化に近い状態の部分は、半透膜支持体中のバインダー合成繊維の溶融が進行している箇所(溶融箇所)である。この溶融箇所に半透膜液を塗布した際に、溶融箇所と半透膜液間に空気が残存し、該半透膜支持体表面と半塗膜層の界面に空気が閉じ込められた状態になり、ピンホールになると考えられる。
図1は、ピンホールが発生した濾過膜の表面に透過光を当てて撮影した顕微鏡写真である。ピンホール発生部の半透膜が薄くなり、透けて見えることが分かる。
図2は、図1のピンホール発生部に関して、半透膜支持体から半透膜表面を剥離して、半透膜支持体に接していた面から、半透膜のピンホール発生部に透過光を当てて撮影した顕微鏡写真である。ピンホール発生部には、半透膜成分が無い。また、ピンホール発生部以外の部分には微小な気泡が見える。
半透膜のピンホール発生を抑えるためには、16質量%濃度のポリスルホン溶液(ポリスルホン:コーデル(登録商標) P−3500LCD MB−7(商品名)、ソルベイ社製、溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド)を半透膜支持体表面に塗布した際に、ポリスルホン溶液の浸透面積率が18%〜35%の範囲である半透膜支持体を用いるのがよい。
本発明の半透膜支持体の「浸透面積率」は、以下に説明する方法によって、測定することができる。
(1)半透膜液の調整
ポリスルホン(商品名:コーデル(登録商標) P−3500LCD MB−7、ソルベイ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド(純正化学社製、特級)に、140℃で加温しながら濃度16質量%になるように溶解後、温度設定25℃にて半日撹拌してポリスルホン溶液を作製する。
ポリスルホン(商品名:コーデル(登録商標) P−3500LCD MB−7、ソルベイ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド(純正化学社製、特級)に、140℃で加温しながら濃度16質量%になるように溶解後、温度設定25℃にて半日撹拌してポリスルホン溶液を作製する。
(2)半透膜の作製
定速塗工装置(商品名:Automatic Film Applicator、安田精機社製)上に、台紙をセットし、セットした台紙の上に、塗布幅100mm×塗布長さ180mmとなるようにカットした半透膜支持体を、塗布面を上にしてOPPテープ(3M社製、商品名:BK−24N)で留める。半透膜液5〜6gを、一定のクリアランスに調整できるベーカー式アプリケーター(安田精機社製、塗布幅100mm)を使用して、塗布量(乾燥質量)24±3g/m2となるように、塗布速度250mm/secにて塗布し、塗布開始後10秒後に20℃の水道水に浸漬して凝固する。3時間水洗した後、乾燥して半透膜を作製する。
定速塗工装置(商品名:Automatic Film Applicator、安田精機社製)上に、台紙をセットし、セットした台紙の上に、塗布幅100mm×塗布長さ180mmとなるようにカットした半透膜支持体を、塗布面を上にしてOPPテープ(3M社製、商品名:BK−24N)で留める。半透膜液5〜6gを、一定のクリアランスに調整できるベーカー式アプリケーター(安田精機社製、塗布幅100mm)を使用して、塗布量(乾燥質量)24±3g/m2となるように、塗布速度250mm/secにて塗布し、塗布開始後10秒後に20℃の水道水に浸漬して凝固する。3時間水洗した後、乾燥して半透膜を作製する。
(3)「浸透面積率」測定用サンプルの作製
作製した半透膜の中央部を幅60mm×長さ60mmにカットし、半透膜表面に透明梱包用テープ(ニトムズ社製、商品名:No.3303)を貼って、半透膜を半透膜支持体から剥離する。
作製した半透膜の中央部を幅60mm×長さ60mmにカットし、半透膜表面に透明梱包用テープ(ニトムズ社製、商品名:No.3303)を貼って、半透膜を半透膜支持体から剥離する。
(4)「浸透面積率」の測定
半透膜を剥離した半透膜支持体の透過光イメージを、キーエンス社製デジタルマイクロスコープDHX−5000(製品名)を用いて、以下の条件で観察・計測する。
半透膜を剥離した半透膜支持体の透過光イメージを、キーエンス社製デジタルマイクロスコープDHX−5000(製品名)を用いて、以下の条件で観察・計測する。
透過光イメージの観察:半透膜に接していた面から、透過照明で半透膜支持体を照らし、ハレーション除去モードで、撮影倍率20倍で透過光イメージを観察する。透過照明の光源の強さは、本機械では、最低照度0から最大照度255の256階調で別れているが、本測定においては、光源の強さを97に設定して観察を行った。なお、ハレーション除去モード中の設定条件である明るさ調整は、0から100に調整可能であるが、50にて実施する。
二値化処理:得られた透過光イメージに関して、自動面積計測モードでポリスルホンが浸透している暗い部分の計測を行う。計測を実施するに際しては、領域同士をうまく分離するために、しきい値を−15に設定して、暗い領域(ポリスルホンがよく浸透している部分)の「総面積」を測定する。
二値化処理の詳細設定条件を表1に記載する。
本発明では、透過光イメージ全体の面積(今回の測定の場合は、245mm2)に対する上記の手順で得られた総面積の比率(総面積/透過光イメージ全体の面積×100)が、「浸透面積率」と定義される。一つの半透膜支持体について、5箇所で本測定を実施し、5箇所の平均値を「浸透面積率」とする。
浸透面積率が18%〜35%の場合、ピンホールの発生が少なく、商品価値や性能の低下を招くことがない。好ましくは20%〜33%であり、更に好ましくは22%〜30%である。浸透面積率が18%より低い場合は、半透膜支持体内の溶融箇所により、半透膜支持体の内部に半透膜液が浸透せずに、半透膜が剥離する場合がある。また、気泡が半透膜支持体の非塗布面側にスムーズに抜けることができず、ピンホールの発生する確率が高くなる場合がある。逆に、浸透面積率が35%を超えた場合は、半透膜支持体の内部に過剰に半透膜液が浸透し、半透膜支持体の非塗布面に半透膜液が染み出す「裏抜け」が生じてしまい、裏抜けした半透膜液が多いと、半透膜塗布面側に十分な量の半透膜が形成されず、膜性能の低下を招く場合がある。
半透膜支持体の浸透面積率を18%〜35%にする方法として、
(I)主体合成繊維とバインダー合成繊維の繊維径の選定
(II)主体合成繊維とバインダー合成繊維の配合比率の調整
(III)半透膜支持体原紙の抄紙条件の最適化
(IV)熱ロールによる熱圧加工条件の調整
等が挙げられる。(IV)として、より具体的には、
(IV−1)熱圧加工前の半透膜支持体原紙と熱ロールとの接触長さ
(IV−2)熱ロールによる熱圧加工時の熱ロール温度
(IV−3)熱圧加工時のニップ圧力の調整
(IV−4)熱ロール、樹脂ロール、コットンロールの組み合わせの最適化
(IV−5)熱圧加工時の加工速度
をコントロールすることによって達成できる。
(I)主体合成繊維とバインダー合成繊維の繊維径の選定
(II)主体合成繊維とバインダー合成繊維の配合比率の調整
(III)半透膜支持体原紙の抄紙条件の最適化
(IV)熱ロールによる熱圧加工条件の調整
等が挙げられる。(IV)として、より具体的には、
(IV−1)熱圧加工前の半透膜支持体原紙と熱ロールとの接触長さ
(IV−2)熱ロールによる熱圧加工時の熱ロール温度
(IV−3)熱圧加工時のニップ圧力の調整
(IV−4)熱ロール、樹脂ロール、コットンロールの組み合わせの最適化
(IV−5)熱圧加工時の加工速度
をコントロールすることによって達成できる。
本発明において、主体合成繊維は、半透膜支持体の骨格を形成する繊維である。主体合成繊維としては、例えば、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ベンゾエート系、ポリクラール(polychlal)系、フェノール系等の繊維が挙げられるが、耐熱性の高いポリエステル系の繊維が好ましい。また、半合成繊維のアセテートやトリアセテートなどのセルロース誘導体、またはプロミックスや、再生繊維のレーヨン、キュプラ、リヨセル繊維、天然物由来のポリ乳酸、ポリ酪酸、ポリ琥珀酸繊維等は性能を阻害しない範囲で含有しても良い。
主体合成繊維の繊維径は、特に限定しないが、好ましくは5〜20μmであり、より好ましくは5〜15μm、更に好ましくは5〜13μmである。5μm未満の場合には、半透膜液が半透膜支持体に浸透し難くなって、半透膜と半透膜支持体の接着性が悪くなる場合や、浸透面積率が18%未満となり、ピンホールが発生しやすくなる場合がある。主体合成繊維の繊維径が20μmを超えると、浸透面積率が35%を超えてしまう場合や、非塗布面に裏抜けした半透膜液の量が多くなり、膜性能が低下する場合がある。また、半透膜支持体の表面に、主体合成繊維が立ちやすくなり、半透膜を貫通して半透膜の性能が低下する場合がある。
主体合成繊維の繊維長は、特に限定しないが、好ましくは1〜12mmであり、より好ましくは3〜10mmであり、更に好ましくは4〜7mmである。主体合成繊維の断面形状は円形が好ましく、湿式抄造工程における水への分散前の繊維における断面アスペクト比(繊維断面長径/繊維断面短径)は、1.0〜1.2未満であることが好ましい。繊維断面アスペクト比が1.2以上になると、繊維分散性が低下する場合や、繊維の絡まりやもつれの発生によって、不織布の均一性や塗布面の平滑性に悪影響を及ぼす場合がある。ただし、T型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も、裏抜け防止、表面平滑性のために、繊維分散性等の他の特性を阻害しない範囲内で含有できる。
主体合成繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径)は、200〜2000であることが好ましく、より好ましくは200〜1500であり、更に好ましくは280〜1000である。アスペクト比が200未満の場合は、繊維の分散性は良好となるが、抄紙の際に繊維が抄紙ワイヤーから脱落する場合や、抄紙ワイヤーに繊維が刺さってワイヤーからの剥離性が悪化する場合がある。一方、2000を超えた場合、繊維の三次元ネットワーク形成に寄与はするものの、繊維の絡まりやもつれの発生によって、半透膜支持体の均一性や塗布面の平滑性に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明の半透膜支持体は、バインダー合成繊維を含有している。バインダー合成繊維の軟化点又は溶融温度(融点)以上まで温度を上げる工程を、半透膜支持体の製造方法に組み入れることで、バインダー合成繊維が半透膜支持体の強度を向上させることができる。この温度を上げる工程において、主体合成繊維は軟化又は溶融しにくく、断面形状が変化することはあるものの、繊維としての形状が損なわれることがなく、主体繊維として、半透膜支持体の骨格を形成する。例えば、不織布を湿式抄造法で製造した後の乾燥工程や熱圧加工の際に、バインダー合成繊維を軟化又は溶融させることができる。
バインダー合成繊維としては、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維等の複合繊維、未延伸繊維等が挙げられる。複合繊維は、皮膜を形成しにくいので、半透膜支持体の空間を保持したまま、機械的強度を向上させることができる。より具体的には、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ、ポリエステル等の未延伸繊維が挙げられる。また、ポリエチレンやポリプロピレン等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)や、ポリビニルアルコール系のような熱水可溶性バインダーは、半透膜支持体の乾燥工程で皮膜を形成しやすいが、特性を阻害しない範囲で使用することができる。本発明においては、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ、ポリエステルの未延伸繊維を好ましく用いることができる。
バインダー合成繊維の繊維径は特に限定されないが、好ましくは5〜15μmであり、より好ましくは6〜14μmであり、更に好ましくは7〜13μmである。5μm未満の場合には、半透膜液が半透膜支持体に浸透し難くなって、半透膜と半透膜支持体の接着性が悪くなる場合や、浸透面積率が18%未満となる場合や、ピンホールが発生しやすくなる場合がある。バインダー合成繊維の繊維径が15μmを超えると、浸透面積率が35%を超えてしまう場合や、非塗布面に裏抜けした半透膜液の量が多くなり、膜性能が低下する場合がある。バインダー合成繊維の軟化温度又は溶融温度以上まで温度を上げる工程では、半透膜支持体表面の平滑性を向上させることができ、該工程では加圧が伴っているとより効果的である。
バインダー合成繊維の繊維長は、特に限定しないが、好ましくは1〜12mmであり、より好ましくは3〜10mmであり、更に好ましくは4〜7mmである。バインダー合成繊維の断面形状は円形が好ましいが、T型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も、裏抜け防止、塗布面の平滑性、非塗布面同士の接着性のために、他の特性を阻害しない範囲内で含有できる。
バインダー合成繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径)は、200〜2000であることが好ましく、より好ましくは200〜1500であり、更に好ましくは300〜1000である。アスペクト比が200未満の場合は、繊維の分散性は良好となるが、抄紙の際に繊維が抄紙ワイヤーから脱落する恐れや、抄紙ワイヤーに繊維が刺さってワイヤーからの剥離性が悪化する恐れがある。一方、2000を超えた場合、バインダー合成繊維は三次元ネットワーク形成に寄与はするものの、繊維が絡まる恐れや、もつれの発生によって、不織布の均一性や塗布面の平滑性に悪影響を及ぼす恐れがある。
本発明の半透膜支持体に係わる不織布に対するバインダー合成繊維の含有量は、20〜40質量%が好ましく、23〜37質量%がより好ましく、25〜35質量%が更に好ましい。バインダー合成繊維の含有量が20質量%未満の場合、強度不足により破れる恐れがある。また、非塗布面に裏抜けした半透膜液の量が多くなり、膜性能が低下する場合がある。40質量%を超えた場合、熱圧加工時にフィルム化が進み、浸透面積率が18%未満となる場合や、気泡が半透膜支持体の非塗布面側にスムーズに抜けることができず、ピンホールが発生しやすくなる場合や、通液性が低下する恐れがある。
本発明の半透膜支持体の製造方法について説明する。本発明の半透膜支持体は、湿式抄造法によって半透膜支持体原紙が作製された後に、この半透膜支持体原紙が熱ロールによって熱圧加工される。
湿式抄造法では、まず、少なくとも主体合成繊維とバインダー合成繊維を均一に水中に分散させ、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を通り、最終の繊維濃度を0.01〜0.50質量%に調製されたスラリーが抄紙機で抄き上げられ、湿紙が得られる。繊維の分散性を均一にするために、工程中で分散剤、消泡剤、親水剤、帯電防止剤、高分子粘剤、離型剤、抗菌剤、殺菌剤等の薬品を添加する場合もある。
抄紙方式としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー式等の抄紙方式を用いることができる。これらの抄紙方式の群から選ばれる少なくとも一つの抄紙方式を有する抄紙機、これらの抄紙方式の群から選ばれる同種又は異種の2機以上の抄紙方式がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機を使用することができる。また、2層以上の多層構造の不織布を製造する場合には、各々の抄紙機で抄き上げた湿紙を積層する抄き合わせ法や、一方のシートを形成した後に、該シートの上に繊維を分散したスラリーを流延する方法等を用いることができる。
抄紙機で製造された湿紙を、ヤンキードライヤー、エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等で乾燥することによって、半透膜支持体原紙を得る。湿紙の乾燥の際に、ヤンキードライヤー等の熱ロールに密着させて熱圧乾燥させることによって、密着させた面の平滑性が向上する。熱圧乾燥とは、タッチロール等で熱ロールに湿紙を押しつけて乾燥させることをいう。熱ロールの表面温度は、100〜180℃が好ましく、105〜170℃がより好ましく、110〜160℃が更に好ましい。湿紙の熱ロールへの押しつけ圧力は、300〜1000N/cmが好ましい。
半透膜支持体の浸透面積率を18%〜35%にするためには、抄紙条件の最適化が重要である。半透膜支持体の浸透面積率は、半透膜支持体原紙の紙層構造によって、大きな影響を受ける。そのため、抄紙方式によって、熱圧乾燥時の湿紙の熱ロールへの押しつけ圧力を調整する必要がある。円網抄紙機によって形成される紙層構造は、主体合成繊維の配向がランダムになりやすく、半透膜液が浸透しやすい傾向がある。一方、傾斜ワイヤー抄紙機によって形成される紙層構造は、主体合成繊維の配向が揃いやすく、半透膜液が浸透しにくい傾向がある。抄紙方法の異なる半透膜支持体原紙では、繊維の配列具合が異なり、ドライヤー温度、湿紙の熱ロールへの押しつけ圧等で原紙の密度を調整することで、半透膜支持体の浸透面積率を調整することもできる。熱圧乾燥時の湿紙の熱ロールへの押しつけ圧力を低めにして、半透膜液が半透膜支持体に浸透しやすく、ピンホールが発生するのを抑えるように制御する必要があり、押しつけ圧力は、300〜800N/cmがより好ましい。
次に、熱ロールによる熱圧加工について説明するが、本発明は下記のものに特定されない。熱圧加工装置(カレンダー装置)のロール間をニップしながら、半透膜支持体原紙を通過させて熱圧加工を行う。
ロールの組み合わせとしては、金属ロールと樹脂ロール、金属ロールとコットンロール等が挙げられる。2本の金属ロールの組み合わせの場合、浸透面積率が18%未満となる場合や、気泡が半透膜支持体の非塗布面側にスムーズに抜けることができずピンホールが発生しやすくなる場合がある。熱ロールによる熱圧加工は2回以上行うことも可能であり、その場合、直列に配置された2組以上の上記のロール組み合わせを使用しても良いし、1組のロール組み合わせを用いて、2回以上加工しても良い。必要に応じて、半透膜支持体原紙の表裏を逆にしても良い。2本のロールは、一方を加熱して、熱ロールとして使用する。その際に、熱加工前の半透膜支持体原紙と熱ロールとの接触長さ、熱ロールの表面温度、ロール間のニップ圧力、加工速度を制御することによって、所望の半透膜支持体を得る。
熱加工前の半透膜支持体原紙と熱ロールとの接触長さは、好ましくは0〜80cmであり、より好ましくは0〜70cmである。80cmを超える場合、浸透面積率が18%未満となる場合や、気泡が半透膜支持体の非塗布面側にスムーズに抜けることができず、ピンホールが発生しやすくなる場合がある。
熱ロールの表面温度は、好ましくは150〜250℃であり、半透膜支持体を構成する繊維の種類によって適宜調整する。水処理膜用途として主に使用されるポリエステル系繊維においては、熱ロールの表面温度は200〜250℃が好ましく、205〜245℃がより好ましい。200℃未満の場合、不織布の表面に、主体合成繊維が立ちやすくなり、半透膜を貫通して半透膜の性能が低下する場合や、非塗布面に裏抜けした半透膜液の量が多くなり、膜性能が低下する場合がある。250℃を超えた場合、浸透面積率が18%未満となる場合や、気泡が半透膜支持体の非塗布面側にスムーズに抜けることができずピンホールが発生しやすくなる場合がある。
ロールのニップ圧力は、好ましくは500〜1200N/cmであり、より好ましくは600〜1100N/cmである。500N/cm未満の場合、浸透面積率が35%を超えてしまう場合や、非塗布面に裏抜けした半透膜液の量が多くなり、膜性能が低下する場合がある。1200N/cmを超えた場合、浸透面積率が18%未満となる場合や、ピンホールが発生しやすくなる場合がある。加工速度は、好ましくは10〜150m/minであり、より好ましくは20〜130m/minである。10m/min未満の場合、浸透面積率が18%未満となる場合や、ピンホールが発生しやすくなる場合がある。150m/minを超えた場合、浸透面積率が35%を超えてしまう場合や、非塗布面に裏抜けした半透膜液の量が多くなり、膜性能が低下する場合がある。
半透膜支持体の坪量は、特に限定しないが、20〜150g/m2が好ましく、より好ましくは50〜100g/m2である。20g/m2未満の場合は、十分な引張強度が得られない場合がある。また、150g/m2を超えた場合、通液抵抗が高くなる場合や厚みが増してユニットやモジュール内に規定量の半透膜を収納できない場合がある。
また、半透膜支持体の密度は、0.5〜1.0g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.6〜0.95g/cm3である。半透膜支持体の密度が0.5g/cm3未満の場合は、厚みが厚くなるため、ユニットに組み込める半透膜の面積が小さくなってしまい、結果として、半透膜の寿命が短くなってしまうことがある。一方、1.0g/cm3を超える場合は、通液性が低くなることがあり、半透膜の寿命が短くなる場合がある。
半透膜支持体の厚みは、50〜150μmであることが好ましく、60〜130μmであることがより好ましく、70〜120μmであることが更に好ましい。半透膜支持体の厚みが150μmを超えると、ユニットに組み込める半透膜の面積が小さくなってしまい、結果として、半透膜の寿命が短くなってしまうことがある。一方、50μm未満の場合、十分な引張強度が得られない場合や通液性が低くなって、半透膜の寿命が短くなる場合がある。
本発明を実施例により更に詳細に説明する。以下、特にことわりのないかぎり、実施例に記載される部及び比率は質量を基準とする。
<延伸PET繊維1>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径3.0μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維1とした。
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径3.0μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維1とした。
<延伸PET繊維2>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径5.3μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維2とした。
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径5.3μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維2とした。
<延伸PET繊維3>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径7.4μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維3とした。
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径7.4μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維3とした。
<延伸PET繊維4>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径17.5μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維4とした。
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径17.5μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維4とした。
<延伸PET繊維5>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径24.7μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維5とした。
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径24.7μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維5とした。
<未延伸PET繊維1>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径4.3μm、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維(融点:260℃)を未延伸PET繊維1とした。
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径4.3μm、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維(融点:260℃)を未延伸PET繊維1とした。
<未延伸PET繊維2>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径11.8μm、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維(融点:260℃)を未延伸PET繊維2とした。
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径11.8μm、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維(融点:260℃)を未延伸PET繊維2とした。
<未延伸PET繊維3>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径17μm、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維(融点:260℃)を未延伸PET繊維3とした。
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径17μm、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維(融点:260℃)を未延伸PET繊維3とした。
<未延伸PET繊維4>
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径11.8μm、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維(融点:230℃)を未延伸PET繊維4とした。
ポリエチレンテレフタレートからなる、繊維径11.8μm、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維(融点:230℃)を未延伸PET繊維4とした。
実施例1〜19及び比較例1〜16の半透膜用支持体を、以下の条件で製造した。
(原紙の製造)
2m3の分散タンクに水を投入後、表2に示す原料配合比率(%)で配合し、分散濃度0.2質量%で5分間分散して、表2に示す抄紙方式の抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、130℃に設定されたヤンキードライヤーにより表2に示すタッチロールの押しつけ圧力(タッチロール圧)にて熱圧乾燥させ、表2に示す坪量の実施例1〜19及び比較例1〜16の半透膜支持体原紙を得た。
2m3の分散タンクに水を投入後、表2に示す原料配合比率(%)で配合し、分散濃度0.2質量%で5分間分散して、表2に示す抄紙方式の抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、130℃に設定されたヤンキードライヤーにより表2に示すタッチロールの押しつけ圧力(タッチロール圧)にて熱圧乾燥させ、表2に示す坪量の実施例1〜19及び比較例1〜16の半透膜支持体原紙を得た。
(熱カレンダー処理1)
得られた実施例1〜19及び比較例1〜15の半透膜支持体原紙を、第1ステージの加熱金属ロール(JR)と樹脂ロール(弾)の組み合わせのカレンダー装置を用いて、表3に示すニップ前の加熱金属ロールと半透膜支持体半透膜支持体原紙の接触長さ(ニップ前JR接触長さ)、加熱金属ロール表面温度(JR温度)、ニップ圧力、加工速度の条件で熱圧加工し、連続して、半透膜支持体原紙の第1ステージの加熱金属ロールに接した面が第2ステージの樹脂ロールに接するように、第2ステージの樹脂ロールと加熱金属ロールの組み合わせのカレンダー装置を用いて、表3に示すニップ前の加熱金属ロールと半透膜支持体半透膜支持体原紙の接触長さ(ニップ前JR接触長さ)、加熱金属ロール表面温度(JR温度)、ニップ圧力、加工速度の条件で熱圧加工を行い、半透膜支持体を得た。なお、第1ステージの処理で加熱金属ロールに当たった面を塗布面とし、第2ステージの処理で金属ロールに当たった面を非塗布面とした。
得られた実施例1〜19及び比較例1〜15の半透膜支持体原紙を、第1ステージの加熱金属ロール(JR)と樹脂ロール(弾)の組み合わせのカレンダー装置を用いて、表3に示すニップ前の加熱金属ロールと半透膜支持体半透膜支持体原紙の接触長さ(ニップ前JR接触長さ)、加熱金属ロール表面温度(JR温度)、ニップ圧力、加工速度の条件で熱圧加工し、連続して、半透膜支持体原紙の第1ステージの加熱金属ロールに接した面が第2ステージの樹脂ロールに接するように、第2ステージの樹脂ロールと加熱金属ロールの組み合わせのカレンダー装置を用いて、表3に示すニップ前の加熱金属ロールと半透膜支持体半透膜支持体原紙の接触長さ(ニップ前JR接触長さ)、加熱金属ロール表面温度(JR温度)、ニップ圧力、加工速度の条件で熱圧加工を行い、半透膜支持体を得た。なお、第1ステージの処理で加熱金属ロールに当たった面を塗布面とし、第2ステージの処理で金属ロールに当たった面を非塗布面とした。
(熱カレンダー処理2)
得られた比較例16の半透膜支持体原紙を、第1ステージの加熱金属ロール(JR)と加熱金属ロール(JR)の組み合わせのカレンダー装置を用いて、表3に示すニップ前の加熱金属ロールと半透膜支持体原紙の接触長さ(ニップ前JR接触長さ)、両加熱金属ロール表面温度(JR温度)、ニップ圧力、加工速度の条件で熱圧加工し、連続して、第2ステージの樹脂ロールと加熱金属ロールの組み合わせのカレンダー装置を用いて、表3に示すニップ前の加熱金属ロールと半透膜支持体原紙の接触長さ(ニップ前JR接触長さ)、加熱金属ロール表面温度(JR温度)、ニップ圧力、加工速度の条件で熱圧加工を行い、半透膜支持体を得た。なお、第2ステージの処理で金属ロールに当たった面を非塗布面とし、反対面を塗布面とした。
得られた比較例16の半透膜支持体原紙を、第1ステージの加熱金属ロール(JR)と加熱金属ロール(JR)の組み合わせのカレンダー装置を用いて、表3に示すニップ前の加熱金属ロールと半透膜支持体原紙の接触長さ(ニップ前JR接触長さ)、両加熱金属ロール表面温度(JR温度)、ニップ圧力、加工速度の条件で熱圧加工し、連続して、第2ステージの樹脂ロールと加熱金属ロールの組み合わせのカレンダー装置を用いて、表3に示すニップ前の加熱金属ロールと半透膜支持体原紙の接触長さ(ニップ前JR接触長さ)、加熱金属ロール表面温度(JR温度)、ニップ圧力、加工速度の条件で熱圧加工を行い、半透膜支持体を得た。なお、第2ステージの処理で金属ロールに当たった面を非塗布面とし、反対面を塗布面とした。
実施例及び比較例で得られた半透膜支持体に対して、以下の測定及び評価を行い、結果を表4に示した。
測定1(通気度)
JIS L1913(2010) 一般不織布試験法に基づいて通気度(フラジール形法)を計測した。結果を表4に示した。
JIS L1913(2010) 一般不織布試験法に基づいて通気度(フラジール形法)を計測した。結果を表4に示した。
測定2(浸透面積率)
(1)半透膜液の調整
ポリスルホン(商品名:コーデル(登録商標) P−3500LCD MB−7、ソルベイ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド(純正化学社製、特級)に、140℃で加温しながら濃度16質量%になるように溶解後、温度設定25℃にて半日撹拌して、ポリスルホン溶液を作製した。
ポリスルホン(商品名:コーデル(登録商標) P−3500LCD MB−7、ソルベイ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド(純正化学社製、特級)に、140℃で加温しながら濃度16質量%になるように溶解後、温度設定25℃にて半日撹拌して、ポリスルホン溶液を作製した。
(2)半透膜の作製
定速塗工装置(商品名:Automatic Film Applicator、安田精機社製)上に、台紙をセットし、セットした台紙の上に、塗布幅100mm×塗布長さ180mmとなるようにカットした半透膜支持体を、塗布面を上にしてOPPテープ(3M社製、商品名:BK−24N)で留めた。半透膜液5〜6gを、一定のクリアランスに調整できるベーカー式アプリケーター(安田精機社製、塗布幅100mm)を使用して、塗布量(乾燥質量)24±3g/m2となるように、塗布速度250mm/secにて塗布し、塗布開始後10秒後に20℃の水道水に浸漬して凝固した。3時間水洗した後、乾燥して半透膜を作製した。
定速塗工装置(商品名:Automatic Film Applicator、安田精機社製)上に、台紙をセットし、セットした台紙の上に、塗布幅100mm×塗布長さ180mmとなるようにカットした半透膜支持体を、塗布面を上にしてOPPテープ(3M社製、商品名:BK−24N)で留めた。半透膜液5〜6gを、一定のクリアランスに調整できるベーカー式アプリケーター(安田精機社製、塗布幅100mm)を使用して、塗布量(乾燥質量)24±3g/m2となるように、塗布速度250mm/secにて塗布し、塗布開始後10秒後に20℃の水道水に浸漬して凝固した。3時間水洗した後、乾燥して半透膜を作製した。
(3)「浸透面積率」測定用サンプルの作製
作製した半透膜の中央部を幅60mm×長さ60mmにカットし、半透膜表面に透明梱包用テープ(ニトムズ社製、商品名:No.3303)を貼って、半透膜を半透膜支持体から剥離した。
作製した半透膜の中央部を幅60mm×長さ60mmにカットし、半透膜表面に透明梱包用テープ(ニトムズ社製、商品名:No.3303)を貼って、半透膜を半透膜支持体から剥離した。
(4)「浸透面積率」の測定
半透膜を剥離した半透膜支持体の透過光イメージを、キーエンス社製デジタルマイクロスコープDHX−5000(製品名)を用いて、以下の条件で観察・計測した。
半透膜を剥離した半透膜支持体の透過光イメージを、キーエンス社製デジタルマイクロスコープDHX−5000(製品名)を用いて、以下の条件で観察・計測した。
透過光イメージの観察:半透膜に接していた面から、透過照明で半透膜支持体を照らし、ハレーション除去モードで、撮影倍率20倍で透過光イメージを観察した。透過照明の光源の強さは、本機械では、最低照度0から最大照度255の256階調で別れているが、本測定においては、光源の強さを97に設定して観察を行った。なお、ハレーション除去モード中の設定条件である明るさ調整は、0から100に調整可能であるが、50にて実施した。
二値化処理:得られた透過光イメージに関して、自動面積計測モードでポリスルホンが浸透している暗い部分の計測を行った。計測を実施するに際しては、領域同士をうまく分離するために、しきい値を−15に設定して、暗い領域(ポリスルホンがよく浸透している部分)の「総面積」を測定した。
二値化処理の詳細設定条件を表1に記載した。
透過光イメージ全体の面積(今回の測定の場合は、245mm2)に対する上記の手順で得られた総面積の比率(総面積/透過光イメージ全体の面積×100)が、「浸透面積率」と定義される。一つの半透膜支持体について、5箇所で本測定を実施し、5箇所の平均値を「浸透面積率」とした。結果を表4に示した。
評価1(ピンホール数)
測定2(浸透面積率)と同様の方法で作製した半透膜の幅90mm×長さ90mmの正方形内に存在するピンホールの個数を倍率10倍のルーペで観察して計測した。同様の計測を3回繰り返し、ピンホールの個数の合計をピンホール数とした。結果を表4に示した。
測定2(浸透面積率)と同様の方法で作製した半透膜の幅90mm×長さ90mmの正方形内に存在するピンホールの個数を倍率10倍のルーペで観察して計測した。同様の計測を3回繰り返し、ピンホールの個数の合計をピンホール数とした。結果を表4に示した。
ピンホールの個数
0個:良好なレベル。
1〜3個:問題が発生する可能性があるが、実用上使用可能なレベル。
4個以上:問題が発生するレベル。
0個:良好なレベル。
1〜3個:問題が発生する可能性があるが、実用上使用可能なレベル。
4個以上:問題が発生するレベル。
評価2(裏抜け評価)
測定2(浸透面積率)と同様の方法で半透膜を作製し、半透膜の裏面(半透膜支持体の非塗布面)に染み出して形成されているポリスルホン膜の様子を観察した。結果を表4に示した。
測定2(浸透面積率)と同様の方法で半透膜を作製し、半透膜の裏面(半透膜支持体の非塗布面)に染み出して形成されているポリスルホン膜の様子を観察した。結果を表4に示した。
裏抜けの度合い
◎:非塗布面に染み出したポリスルホン膜が全くなく、良好なレベル。
○:非塗布面に染み出したポリスルホン膜が細かい点状にまばらに少しみられたものの、良好なレベル。
△:非塗布面に染み出したポリスルホン膜が細かい点状にほぼ全面にみられた。実用上使用可能なレベル。
×:非塗布面に染み出したポリスルホン膜が大粒の点状にほぼ全面にみられた。実用上使用不可なレベル。
◎:非塗布面に染み出したポリスルホン膜が全くなく、良好なレベル。
○:非塗布面に染み出したポリスルホン膜が細かい点状にまばらに少しみられたものの、良好なレベル。
△:非塗布面に染み出したポリスルホン膜が細かい点状にほぼ全面にみられた。実用上使用可能なレベル。
×:非塗布面に染み出したポリスルホン膜が大粒の点状にほぼ全面にみられた。実用上使用不可なレベル。
表4に示すとおり、実施例1〜19の半透膜支持体は、浸透面積率が18%〜35%であるため、半透膜液の裏抜けと半透膜のピンホールの発生の少なく、良好な結果が得られた。
円網抄紙機にてタッチロール圧1100N/cmで抄造した比較例1の半透膜支持体の半透膜用支持体は、浸透面積率が18%未満であり、円網抄紙機にてタッチロール圧300〜1000N/cmに調整して抄造した実施例1〜4の半透膜支持体と比較して、半透膜のピンホールの発生が多かった。
傾斜ワイヤー抄紙機にてタッチロール圧200N/cmで抄造した比較例2の半透膜用支持体は、浸透面積率が35%を超えており、傾斜ワイヤー抄紙機にてタッチロール圧300〜1000N/cmに調整して抄造した実施例5〜7の半透膜支持体と比較して、半透膜液の裏抜けが悪かった。
熱カレンダー処理条件のニップ前JR接触長さが80cmを超える比較例3の半透膜用支持体は、浸透面積率が18%未満となり、実施例9の半透膜用支持体と比較して、半透膜のピンホールの発生が多かった。
熱カレンダー処理条件のニップ圧が500N/cm未満の比較例4の半透膜用支持体は、浸透面積率が35%を超えており、実施例10の半透膜用支持体と比較して、半透膜の裏抜けが悪かった。
熱カレンダー処理条件のニップ圧が1200N/cmを超える比較例5の半透膜用支持体は、浸透面積率が18%未満となり、実施例11の半透膜用支持体と比較して、半透膜のピンホールの発生が多かった。
熱カレンダー処理条件の加熱金属ロール表面温度が200℃未満の比較例6の半透膜用支持体は、浸透面積率が35%を超えており、実施例12の半透膜用支持体と比較して、半透膜の裏抜けが悪かった。
熱カレンダー処理条件の加熱金属ロール表面温度が250℃を超える比較例7の半透膜用支持体は、浸透面積率が18%未満となり、実施例13の半透膜用支持体と比較して、半透膜のピンホールの発生が多かった。
熱カレンダー処理条件の加工速度が10m/min未満の比較例8の半透膜用支持体は、浸透面積率が18%未満となり、実施例14の半透膜用支持体と比較して、半透膜のピンホールの発生が多かった。
熱カレンダー処理条件の加工速度が150m/minを超える比較例9の半透膜用支持体は、浸透面積率が35%を超えており、実施例15の半透膜用支持体と比較して、半透膜の裏抜けが悪かった。
半透膜支持体を構成する主体合成繊維の繊維径が5μm未満の比較例10の半透膜用支持体は、浸透面積率が18%未満となり、実施例16の半透膜用支持体と比較して、半透膜のピンホールの発生が多かった。
半透膜支持体を構成する主体合成繊維の繊維径が20μmを超える比較例11の半透膜用支持体は、浸透面積率が35%を超えており、実施例17の半透膜用支持体と比較して、半透膜の裏抜けが悪かった。
半透膜支持体を構成するバインダー合成繊維の繊維径が5μm未満の比較例12の半透膜用支持体は、浸透面積率が18%未満となり、実施例1の半透膜用支持体と比較して、半透膜のピンホールの発生が多かった。
半透膜支持体を構成するバインダー合成繊維の繊維径が15μmを超える比較例13の半透膜用支持体は、浸透面積率が35%を超えており、実施例1の半透膜用支持体と比較して、半透膜の裏抜けが悪かった。
半透膜支持体を構成する主体合成繊維とバインダー合成繊維の配合比率において、バインダー合成繊維の占める割合が20質量%未満の比較例14の半透膜用支持体は、浸透面積率が35%を超えており、実施例18の半透膜用支持体と比較して、半透膜の裏抜けが悪かった。
半透膜支持体を構成する主体合成繊維とバインダー合成繊維の配合比率において、バインダー合成繊維の占める割合が40質量%を超える比較例15の半透膜用支持体は、浸透面積率が18%未満となり、実施例19の半透膜用支持体と比較して、半透膜のピンホールの発生が多かった。
熱カレンダー処理で2本の金属ロールの組み合わせを使用した比較例16の半透膜用支持体は、浸透面積率が18%未満となり、金属ロールと樹脂ロールの組み合わせのみを使用した実施例1の半透膜用支持体と比較して、半透膜のピンホールの発生が多かった。
なお、実施例1〜19の半透膜支持体における通気度は、1.8〜4.8cm3/cm2・sであり、比較例1〜16の半透膜支持体における通気度は、1.7〜4.2cm3/cm2・sであり、通気度だけを調整しても、ピンホールの発生が多くなる場合があり、本発明のように、ポリスルホン溶液の該半透膜支持体への浸透面積率が18%〜35%であることによって、半透膜の裏抜けが発生しにくく、ピンホールの発生も抑制できることが分かる。
本発明の半透膜支持体は、海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液濾過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造等の分野で利用することができる。
Claims (1)
- 主体合成繊維とバインダー合成繊維とを少なくとも含有してなる不織布からなり、16質量%濃度のポリスルホン溶液(ポリスルホン:コーデル(登録商標) P−3500LCD MB−7(商品名)、ソルベイ社製、溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド)を半透膜支持体表面に塗布した際に、ポリスルホン溶液の該半透膜支持体への浸透面積率が18%〜35%であることを特徴とする半透膜支持体。
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20210323 |
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20210928 |