JP2019170262A - バタークリーム用油脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
これらバタークリーム用油脂組成物に求められる性能としては、バタークリームとしてホイップし成形されるため、液状、固体状ではなく、適度な硬さを有する可塑性が必要である。また、空気を十分に抱き込むことのできるホイップ性、形状を保つことができる保型性が求められる。さらに、バタークリームとして口当たりや口どけ等の良好な食感が求められる。バタークリーム用油脂組成物は室温での作業性が良好であり、かつ体温近くですぐに溶ける物性を求められるため、トレードオフの関係となっている保型性と口どけの両立は困難な課題である。
上記の通り、バタークリームとなして口どけがよく、かつ可塑性、ホイップ性能、および保型性に優れたバタークリーム用油脂組成物が求められているのである。
すなわち、本発明は下記の〔1〕である。
エステル交換油(A):融点が26〜36℃であり、20℃における固体脂含量が14〜24%であり、35℃における固体脂含量が0〜5%であるエステル交換油
エステル交換油(B):融点が37〜43℃であり、20℃における固体脂含量が54〜69%であり、35℃における固体脂含量が7〜17%であるエステル交換油
液状油脂(C):融点が0℃以下の液状油脂
本発明のバタークリーム油脂組成物は、エステル交換油(A)、エステル交換油(B)および液状油脂(C)を含有する。各成分について下記に順に説明する。
[エステル交換油(A)]
本発明に用いるエステル交換油(A)は、融点が26〜36℃であり、下限値としては、好ましくは28℃以上であり、より好ましくは30℃以上である。上限値としては、好ましくは36℃以下であり、より好ましくは34℃以下である。20℃における固体脂含量は14〜24%であり、下限値としては、好ましくは16%以上であり、より好ましくは18%以上である。上限値としては、好ましくは22%以下であり、より好ましくは20%以下である。35℃における固体脂含量が0〜5%であり、下限値としては、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上である。上限値としては、好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下である。
エステル交換油(A)の固体脂含量(SFC)が上記の範囲を外れる場合、得られたバタークリーム用油脂組成物は充分なホイップ性や保型性を持たないものとなってしまったり、製造されるバタークリームの口どけが悪くなってしまったりする。
本発明に用いるエステル交換油(A)は、好ましくは脂肪酸組成において、ラウリン酸(C12:0)の含有量は5〜16質量%であり、好ましくは10〜15質量%である。パルミチン酸(C16:0)の含有量は20〜40質量%であり、好ましくは25〜35質量%である。オレイン酸(C18:1)の含有量は25〜45質量%であり、好ましくは30〜40質量%である。脂肪酸組成がこの範囲にあれば、良好な可塑性、ホイップ性能、および保型性が得られる。
本発明に用いるエステル交換油(B)は、融点が37〜43℃であり、下限値としては、好ましくは38℃以上であり、より好ましくは39℃以上である。上限値としては、好ましくは42℃以下であり、より好ましくは41℃以下である。20℃における固体脂含量は54〜69%であり、下限値としては、好ましくは56%以上であり、より好ましくは58%以上である。上限値としては、好ましくは66%以下であり、より好ましくは63%以下である。35℃における固体脂含量が7〜17%であり、下限値としては、好ましくは8%以上であり、より好ましくは9%以上である。上限値としては、好ましくは15%以下であり、より好ましくは13%以下である。
エステル交換油(B)の融点が低すぎたり、固体脂含量が低すぎると、バタークリーム用油脂組成物の保型性、ホイップ性能が悪くなってしまう。エステル交換油(B)の融点が高すぎると、口どけが悪くなってしまう。
本発明に用いる液状油脂(C)は、融点が0℃以下の液状油脂である。例えば、菜種油、大豆油、ヒマワリ油、紅花油、コーン油、ゴマ油、綿実油、米油、落花生油、亜麻仁油等、および、これらの油脂を複数種類配合した混合油などが挙げられる。
液状油脂(C)の含有量は、バタークリーム用油脂組成物の全質量中に、5〜55質量%であり、下限値としては、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。上限値としては、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下である。液状油脂(C)の含有量が低すぎると、可塑性、ホイップ性が十分でなく、高すぎると保型性が悪くなってしまう。
本発明のバタークリーム用油脂組成物は、上記エステル交換油(A)、(B)および液状油脂(C)以外のその他の油脂を添加してもよい。
ショートニング形態のバタークリーム用油脂組成物の場合は、まず、連続相となる油脂成分(この場合はすなわち本発明のバタークリーム用油脂組成物である)を加熱溶解し、これに各種乳化剤を溶解もしくは分散させる。これをボテーター、コンビネーター、パーフェクター等により急冷捏和処理し、さらに場合によっては熟成(テンパリング)することによって得ることができる。さらに、油相にはトコフェロール、香料、着色料等、その他油溶性の添加物を添加することができる。
ショートニングおよびマーガリンは、加熱後、急冷捏和処理して製造されるが、この際の加熱条件は60〜70℃で、10〜25℃まで急冷し捏和することが好ましい。
本発明のバタークリーム用油脂組成物は、上記の通りショートニングまたはマーガリン形態であり、これに水溶性成分や呈味成分等を加えて、これを起泡することにより、バタークリームを製造することができる。水溶性成分や呈味成分としては、例えば、砂糖等の結晶状態の糖類、シロップ、水飴等の液状の糖類、粉乳や練乳等の乳製品類、粉末卵黄等の卵類、ココアパウダー等のカカオ製品類、果肉ジャム類、果汁類、チーズ類、ピーナッツペースト等のナッツ類を挙げることができる。
また、バタークリームを製造する場合、原料となる本発明のバタークリーム用油脂組成物はバタークリーム100質量部中30〜90質量部含有させることが好ましい。バタークリーム用油脂組成物の質量がこの範囲内であれば、バタークリームの乳化状態が反転したり、バタークリームの保型性が悪くなったりすることがなく、バタークリームが油っぽくなり、風味が悪化することもない。
〔製造例:本発明に用いるエステル交換油(A)およびその類似物〕
本発明に用いるエステル交換油(A)、およびこれとは異なるエステル交換油を以下の製造例および比較製造例において製造した。
製造例A1
:パーム油63質量部、パーム核油27質量部、および菜種油10質量部のエステル交換油
製造例A2
:パーム油50質量部、パーム核油17質量部、および菜種油33質量部のエステル交換油
製造例A3
:パーム油60質量部、パームオレイン10質量部、菜種油5質量部、およびヤシ極度硬化油25質量部のエステル交換油
比較製造例A’1
:パーム油35質量部、ヤシ油40質量部、および菜種油25質量部のエステル交換油
本発明に用いるエステル交換油(B)、およびこれとは異なるエステル交換油を以下の製造例および比較製造例において製造した。
製造例B1
:ヤシ極度硬化油75質量部とハイエルシン菜種極度硬化油25質量部のエステル交換油
製造例B2
:ヤシ極度硬化油60質量部、パーム核油20質量部、およびハイエルシン菜種極度硬化油20質量部のエステル交換油
製造例B3
:ヤシ油35質量部、パーム核油40質量部、およびハイエルシン菜種極度硬化油25質量部のエステル交換油
比較製造例B’1
:ヤシ油50質量部とハイエルシン菜種極度硬化油50質量部のエステル交換油
比較製造例B’2
:ヤシ極度硬化油45質量部、ヤシ油20質量部、およびハイエルシン菜種極度硬化油35質量部のエステル交換油
得られたエステル交換油について、上昇融点、固体脂含量、および、脂肪酸組成を測定した。各項目の測定方法は、以下のとおりである。
融点:基準油脂分析試験法「2.2.4.2 融点(上昇融点)」に準じて測定した。
固体脂含量:基準油脂分析試験法「2.2.9 固体脂含量(NMR法)」に 準じて測定した。測定装置は、「SFC−2000R」(アステック(株)製)を用いた。
脂肪酸組成:基準油脂分析試験法「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成」に準じて測定した。ガスクロマトグラフィー装置は、「Agilent 6850」(アジレント・テクノロジー(株)製)を用い、カラムは、「DB−WAX」(アジレント・テクノロジー(株)製)を用いた。
〔実施例1〜10〕
上記の製造例で得られたエステル交換油(A)とエステル交換油(B)、および液状油脂(C)を表2の割合で配合し、実施例1〜10のバタークリーム用油脂組成物を製造した。
また、実施例1〜10の油脂組成物を用いてマーガリン、ショートニングおよびバタークリームを製造し、得られたマーガリンの可塑性およびホイップ性、バタークリームの口どけについて評価を行ない、その結果を表2に示した。
また、液状油脂Cは、下記のものを使用した。
〔液状油脂(C)〕
C1:菜種油
C2:コーン油
上記の製造例で得られたエステル交換油(A)ないしその類似物、エステル交換油(B)ないしその類似物、および液状油脂(C)を表3の割合で配合し、比較例1〜9のバタークリーム用油脂組成物を製造した。
また、比較例1〜9の油脂組成物を用いてマーガリン、ショートニングおよびバタークリームを製造し、得られたマーガリンの可塑性およびホイップ性、バタークリームの口どけについて評価を行ない、その結果を表3に示した。
まず、各油脂組成物84.6質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.1質量部を混合し、70℃に過熱し撹拌して溶解し、油相部を準備した。次に、βカロチン0.05質量部およびバターフレーバー0.05質量部を水15.2質量部に加熱溶解し、水相部を準備した。その後、上記油相部に水相部を添加し、混合して乳化し、これをコンビネーター(シュレーダー社製)に通し、18℃に急冷捏和した後、25℃で24時間テンパリングし、マーガリンを得た。
上記の方法で得られたマーガリン43.5質量部に対し、異性化糖43.5質量部および水13質量部を混合して、縦型ミキサー(カントーミキサー)でホイッパーを使用し、20℃で高速で撹拌し起泡させ、バタークリームを得た。
次に、各例における評価法を示す。
(評価方法)
(a)可塑性:得られたマーガリンを硬度測定用の缶(内径6.0cm、高さ4.8cm)にヘラを用いて充填し、そのマーガリンの配合油の上昇融点より8〜10℃低い温度で24時間保管し熟成した。その後、冷蔵で7日間保管後その缶を20℃の恒温水槽に24時間浸漬させレオメーター((株)サン科学製)にてマーガリンの硬度を測定した。その硬度の値から可塑性を以下の評価基準で評価した。○以上を実使用に適う合格範囲とした。
◎:75〜100g(0.74〜0.98N)
○:50〜75g(0.49〜0.74N)
△:100〜150g(0.98〜1.47N)
×:50g(0.49N)未満および150g(1.47N)超
(b)ホイップ性:得られたマーガリンを品温20℃に調整し、縦型ミキサー(カントーミキサー)にてホイッパーを使用し、高速で10分間撹拌した。撹拌後のマーガリンを計量カップ(内径10cm、容量113mL)にヘラを用いて充填し、質量を測定した。マーガリンのホイップ性は以下の式で示される比重を求め、以下の評価基準にて評価した。○以上を実使用に適う合格範囲とした。
比重=(撹拌後のマーガリンの質量)/(撹拌前のマーガリンの質量)
○:0.30〜0.35
△:0.36〜0.40
×:0.40超
(c)口どけ:バタークリームを上記の方法で製造し、得られたクリームを口に含んだときに感じる口溶けを以下の評価基準で評価した。○以上を実使用に適う合格範囲とした。
◎:最良
○:良好
△:やや良好
×:不良
(d)保型性:比重0.35に調製したバタークリームを、約10gずつ絞り、これを25℃で一晩保存した後、クリームの高さを測定した。以下の式を用いて高さの変化を算出し、以下の評価基準で評価した。○以上を実使用に適う合格範囲とした。
高さの変化=保存前のクリームの高さ(mm)−保存後のクリームの高さ(mm)
○:高さの変化が5mm以下
△:高さの変化が5mm超〜10mm以下
×:高さの変化が10mm超
Claims (1)
- 下記のエステル交換油(A)、エステル交換油(B)および液状油脂(C)を含有し、エステル交換油(A)の含有量が15〜77質量%、エステル交換油(B)の含有量が5〜30質量%および液状油脂(C)の含有量が5〜55質量%である、バタークリーム用油脂組成物。
エステル交換油(A):融点が26〜36℃であり、20℃における固体脂含量が14〜24%であり、35℃における固体脂含量が0〜5%であるエステル交換油
エステル交換油(B):融点が37〜43℃であり、20℃における固体脂含量が54〜69%であり、35℃における固体脂含量が7〜17%であるエステル交換油
液状油脂(C):融点が0℃以下の液状油脂
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