以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
(1)画像形成装置の全体説明
図1には、実施形態に係る画像形成装置の概略的な構成が示されている。X方向は第1水平方向であり、Z方向は垂直方向(鉛直方向)である。X方向及びZ方向に直交する方向が第2水平方向としてのY方向である。
図示された画像形成装置10は、コピー機、プリンタ、スキャナ等として機能する多機能装置であり、それは複合機とも呼ばれる。画像形成装置10は、X方向に連結された画像形成ユニット12及び後処理ユニット14により構成される。画像形成ユニット12は、記録材である用紙上に画像を形成するものである。後処理ユニット14は、画像形成後の用紙に対して後処理を施すものである。図示の構成例では、後処理ユニット14は、針無し綴じを行う機能を備えている。後処理としては、針無し綴じ以外に、針有り綴じ(ステープル)、穴空け(パンチ)、中折り等が知られている。後処理ユニット14において、針無し綴じ以外の1又は複数の後処理が実行されてもよい。画像形成ユニット12において針無し綴じやそれを含む複数の後処理が実行されてもよい。その場合、画像形成ユニット12単体が画像形成装置を構成する。
画像形成ユニット12は、図示の例において、本体部16と上部18とからなるものである。上部18は本体部16に対して開閉可能に設けられ、その中には自動原稿送り装置(ADF)が組み込まれている。本体部16は筐体を有し、その内部には以下に説明する構成が収容されている。
給紙カセット19,20には、それぞれ、積層された複数の用紙が収容される。各給紙カセット19,20は引き出し可能に設けられている。いずれかの給紙カセット19,20から順次取り出される用紙が用紙搬送路22に沿って搬送される。用紙搬送路22上には必要に応じて用紙反転器が設けられる。なお、用紙の流れを基準として用紙搬送路22において上流側及び下流側が相対的に定義される。
図1に示された画像形成ユニット12は中間転写部24を備えている。中間転写部24は、回転運動する中間転写ベルト26を有する。中間転写ベルト26上には、画像形成部により、複数色に対応した複数のトナー像が転写(一次転写)される。画像形成部は、複数色に対応した複数の感光体ドラム等を有する。中間転写ベルト26上の複数のトナー像が用紙上に転写(二次転写)される。二次転写後の用紙が定着部28に送られ、そこで定着処理が施される。画像形成後の用紙が用紙搬送路22の下流側へ送られる。例えば、その途中の部分22aに後処理部を設けるようにしてもよい。後処理部を筐体の外側に組み付けてもよい。画像形成ユニット12から後処理ユニット14へ画像形成後の用紙がわたされる。上記で挙げた画像形成方式以外の画像形成方式が採用されてもよい。
本体部16内には制御部38が設けられている。制御部38はプログラム動作するプロセッサ等を含むものであり、それは制御手段として機能する。制御部38は、画像形成装置10に含まれる各構成要素の動作を制御するものである。制御部38にはユーザーインターフェイス(UI)40が接続されている。UI40は例えばパッチパネル付き液晶表示器により構成される。その画面上には必要な操作ボタン(仮想ボタン)が表示され、またメッセージ等が表示される。UI40を利用してユーザーにより画像処理条件及び後処理条件が指定される。画像形成装置10に対してネットワークを介してパーソナルコンピュータ(PC)が接続されている場合、そのPC上において画像処理条件及び後処理条件が指定されてもよい。
制御部38は、後述するように、後処理ユニット14内の制御基板56を介して、針無し綴じ機構44の動作を制御する。針無し綴じ機構44を制御する手段が後処理ユニット14内に設けられてもよく、あるいは、かかる手段が画像形成ユニット12と後処理ユニット14とに跨がって設けられてもよい。
制御部38には、環境センサ部を構成する温度センサ34及び湿度センサ36の各検出値が入力されている。図示された構成例では、温度センサ34及び湿度センサ36が定着部28付近に設けられているが、それらが筐体内の他の位置又は筐体外に設けられてもよい。あるいは、外部から環境検出値が入力されてもよい(符号42を参照)。用紙の紙質を測定するセンサ、用紙の含水率を測定するセンサ等を設けて、それらのセンサからの出力信号が制御部38での制御で利用されてもよい。
後処理ユニット14について説明する。後処理ユニット14は筐体43を有し、その内部には針無し綴じ機構44が設けられている。画像形成ユニット12から渡された用紙が用紙搬送路32に沿って搬送される。後処理として針無し綴じが指定されている場合、その用紙が針無し綴じ機構44へ送られる。
針無し綴じ機構44は、用紙束に対して、圧着方式により、凹凸痕としての綴じ部を形成する機構である。実施形態においては、針無し綴じ機構44は、例えば10枚あるいは10数枚の用紙からなる用紙束に対して綴じ部を形成する高い綴じ能力を有する。用紙束を揃えるために、針無し綴じ機構44は傾斜した状態で設けられている。針無し綴じ機構44は、傾斜姿勢を有する積載板46、及び、その下端部側に設けられた針無し綴じ器50、を有する。積載板46上に用紙束48が載せられ、その用紙束48の端部に対して針無し綴じ器50が針無し綴じ処理を実施する。これにより、凹凸痕としての綴じ部が形成され、綴じ部の結着作用によって用紙相互が結合する。結着作用は、用紙相互間における用紙繊維の絡み合いにより生じるものである。
後処理ユニット14は、制御基板56を有している。後述するように、制御基板56は、針無し綴じ器50が有するモータに対して駆動信号を供給するPWM(Pulse Width Modulation)コントローラ等を備えている。画像形成ユニット12内の制御部38は、制御基板56を介して、モータの動作を制御している。また、制御部38は、針無し綴じ機構44が有する各種の可動部の動作を制御している。後処理後の用紙束は排出トレイ54上に排出される。
(2)針無し綴じ機構の構成及び動作
図2には、針無し綴じ機構44の具体的な構成が示されている。図示された構成は例示であり、針無し綴じ機構44として多様な機構を採用し得る。図2において、x方向はトレイとして機能する積載板46上において用紙が進退運動する方向であり、z方向はx方向に垂直な方向であり、それは積載板46に直交する方向である。x方向及びz方向は、図1に示したX方向及びZ方向に対して、反時計回り方向に一定角度回転している。x方向とz方向に直交する方向がy方向であり、それは上記Y方向に一致する。
用紙搬送路32の下流端付近にはローラ対57が設けられ、ローラ対57から順次繰り出された用紙が積載板46上に積み上げられる。それらの用紙により用紙束48が構成される。用紙束48を構成する用紙枚数は例えば2〜10の範囲内であり、用紙枚数は事前に指定される。それ以上の枚数で用紙束48が構成されてもよい。用紙束48を揃える際、パドル58がR1方向に回転し、この回転により個々の用紙に−x方向つまりS1方向への力が及ぶ。積載板46における−x方向の端部近傍にはエンドガイド62が設けられており、エンドガイド62への各用紙の衝突により、各用紙のx方向の位置が揃えられる。タンパ部64は、用紙束48におけるy方向の両端を押さえる一対のタンパ部材を有し、一対のタンパ部材の近接運動により各用紙のy方向の位置が揃えられる。用紙束48を整列させる方式としては上記で説明した方式以外の方式を採用し得る。
図2において、針無し綴じ器50はやや誇張して模式的に表現されている。針無し綴じ器50は、用紙束48の整列状態が形成された後、用紙束48において選択された箇所に対して、針無し綴じ処理を実施するものである。針無し綴じ器50は、一対の歯列、具体的には、上歯列66及び下歯列68を有し、それらによって一定荷重をもって用紙束48の端部が挟まれる。その際、上歯列66と下歯列68の噛み合い状態が形成される。これにより、凹凸痕としての綴じ部(針無し綴じ部)が形成される。針無し綴じ処理の実行後、用紙束48は+x方向つまりS2方向へ搬送される。その際には、用紙束48を挟むローラ対60が回転運動する。
図3には、針無し綴じ器の要部が模式的に示されている。図3は綴じ動作前の待機状態を示すものである。針無し綴じ器は、上側可動ベース70、下側可動ベース72、上歯列66及び下歯列68を有する。上歯列66は上側可動ベース70の下面に下向きで配置されており、下歯列68は下側可動ベース72の上面に上向きで配置されている。待機状態において、上側可動ベース70と下側可動ベース72は互いに離れた位置にある。
上歯列66と下歯列68の間に用紙束の端部が差し込まれた状態において、上側可動ベース70と下側可動ベース72が互いに近接する方向へ運動する(綴じ動作)。これにより、上歯列66と下歯列68の噛み合い状態つまり一種の衝突状態が生じ、その結果として、綴じ部が形成される。その後、上側可動ベース70と下側可動ベース72が互いに離間する方向へ運動し(戻り動作)、待機状態に戻る。この動作が綴じ部形成単位で繰り返される。
なお、上歯列66及び下歯列68は例えば10数個の歯(凸部)を有する。実施形態においては、製造コストの低減のため及び上下の歯並びを整合させるため、上歯列66及び下歯列68として同一のものが利用されている。図3に示した一対の歯列は例示に過ぎず、一対の歯列として多様なものを用いることが可能である。上歯列66及び下歯列68の内の一方だけを運動させてもよい。
図4には、噛み合い状態が示されている。紙面上、横方向がw方向であり、縦方向がz方向である。針無し綴じ器は、後述するように、用紙束の縁に沿ってその周囲を運動する機能を備えており、針無し綴じ器の向きによっては、w方向がy方向に一致する。
上歯列66は、w方向に一定間隔で並んだ複数の凸部(下向き山部)76を有する。隣接する凸部76間には凹部(下向き谷部)77が存在している。すなわち、w方向に一定間隔をもって複数の凹部77が並んでいる。より詳しくは凸部76と凹部77が交互に並んでいる。これと同様に、下歯列68は、w方向に一定間隔で並んだ複数の凸部(上向き山部)78を有する。隣接する凸部78間には凹部(谷部)79が存在している。すなわち、w方向に一定間隔をもって複数の凹部79が並んでいる。
図示されるように、噛み合い状態において、上歯列66における各凸部76が下歯列68における各凹部79内に入り込み、同時に、下歯列68における各凸部78が上歯列66における各凹部77内に入り込む。これにより、用紙束の一部が凹凸形又は波形に塑性変形し、用紙間において繊維に絡み合いが生じる。特に伸ばされた部分において絡み合いが生じ易い。このような圧着処理の結果、自己結着性をもった綴じ部74が形成される。
図5には、針無し綴じ器50の電気的構成が概略的に示されている。針無し綴じ器50は、駆動源としてのモータ84を有している。また、荷重センサ86及びエンコーダ88を有している。荷重センサ86は、綴じ部形成過程において荷重をモニタリングするためのものであり、それは必要に応じて設けられる。エンコーダ88は、モータの回転数をモニタリングするためのものである。荷重センサ86の検出信号及びエンコーダ88の検出信号が制御基板56に送られている。制御基板56はローカルコントローラとして機能するものであり、制御基板56は、図示の構成例において、PWMコントローラ82を搭載している。PWMコントローラ82からモータ84へ駆動信号が供給されている。なお、図5においてはドライバ等のデバイスが図示省略されている。制御基板56が画像形成ユニット内に設けられてもよい。
PWMコントローラ82は、パルス幅の可変により、すなわちデューティの可変により、モータ84の回転速度を制御するものである。モータ84の回転数はエンコーダ88によって検出されており、PWMコントローラ82は、指定された回転速度になるように、モータ84の回転速度をフィードバック制御する。その際の回転速度は画像形成ユニット内の制御部により指定される。もちろん、回転速度が後処理ユニット内で自律的に決定されてもよい。綴じ荷重の大小は、例えばパルス数により制御される。なお、PWM制御は例示であり、モータ84のタイプに適合した回転速度制御方式を採用し得る。例えば、電圧、電流、周波数その他によってモータの回転速度が制御されてもよい。
モータ84の回転速度が後述するカム部材の回転速度を規定し、それを通じて、上歯列及び下歯列の相対的な近接速度(綴じ動作速度)並びに上歯列及び下歯列の相対的な離間速度(戻り動作速度)が規定される。換言すれば、モータ84の回転速度、カム部材の回転速度及び一対の歯列の動作速度は互いに対応関係にある。
図6には、積載板46の上面が示されている。積載板46上には整列後の用紙束48が載せられている。用紙束48におけるy方向の両端が一対のタンパ部材64a,64bによって押さえられている。用紙束48における−x方向の端部がエンドガイド62に突き当てられている。図示された構成例では、針無し綴じ器50は、レール90に沿って運動可能であり、指定された場所において、針無し綴じ動作を行う。例えば、用紙束48のコーナー部分(左上隅部分)に対して綴じ部74を形成する場合、図示の位置に針無し綴じ器50がセットされ、その位置で針無し綴じが実行される。符号74A,74Bで例示されるように、他の位置において針無し綴じを実行することも可能である。なお、針無し綴じ器50と針有り綴じ器(図示せず)の両方を設ける場合、それらの物理的な干渉を避けるための仕組み(例えば退避機構)が設けられる。
次に、図7乃至図9を用いて、針無し綴じ器についての具体的な構成例及び動作例を説明する。図示された針無し綴じ器100は、図1乃至図6に示した針無し綴じ器50と基本的に同じ構成を有するものである。図7には待機状態が示され、図8には近接状態が示され、図9には噛み合い状態が示されている。噛み合い状態の後、近接状態及び待機状態が順次生じる。なお、図7乃至図9においては、特徴事項の明確化のため、針無し綴じ器100の内の一部分が示されており、他の部分については図示省略されている。
図7において、モータ120は駆動源であり、その動作は上記のようにPWM制御方式により制御される。モータ120は回転軸122を有し、その回転運動がギア部124に伝達される。ギア部124は複数の歯車126,128からなるものである。図7においては、ギア部124が簡略的に示されている。図示の構成例では、ギア部124の内の歯車128に対してカム軸130が固定的に連結されている。カム軸130にはカム板132が固定的に連結されている。モータ120で生じた回転運動力により、カム板132が回転運動する。カム板132は複数の当たり面134,136a,136bを有する。
針無し綴じ器100は、リンク機構101を有する。リンク機構101は、カム板132の回転運動を上歯列102及び下歯列104の開閉運動(近接離間運動)に転換し、同時に、カム板132の回転運動を一対の押さえ片110,112の開閉運動(近接離間運動)に転換するものである。図7においては、リンク機構101に含まれる一部の部材が示されている。具体的には、リンク部材140、リンク部材142、アーム部材106、アーム部材108、アーム部材114及びアーム部材116が示されている。リンク部材140にはローラ138が回転自在に設けられており、そのローラ138がカム板132の当たり面136aに当たっている。リンク機構101の働きについては図7乃至図9を参照しながら順を追って説明する。
図7に示す待機状態においては、2つのアーム部材106,108は開いた状態にあり、同じく、2つのアーム部材114,116も開いた状態にある。2つのアーム部材106,108は図3に示した可動ベース70,72に相当するものである。図7において、アーム部材106の下面には上歯列102が下向きで固定されており、アーム部材108の上面には下歯列104が上向きで固定されている。アーム部材114の先端には押さえ片110が設けられており、アーム部材116の先端には押さえ片112が設けられている。それらの押さえ片110,112は押さえ部材を構成するものである。必要な押さえ機能が発揮される限りにおいて、押さえ片110,112の内の一方のみを設けるようにしてもよい。
図7に示す待機状態において、上歯列102と下歯列104の間には用紙束受け入れ空間が生じ、そこに用紙束118の端部が差し込まれる。図7において用紙束118は模式的に表現されており、実際には、用紙束118はそれを構成する用紙の枚数に応じた厚みを有している。
図7においては、上歯列102及び下歯列104の運動が破線で示されており、同様に、押さえ片110,112の運動が破線で示されている。+x方向を前方とし、−x方向を後方とした場合、綴じ運動過程において、上歯列102は前方斜め下方へ運動し、下歯列104は前方斜め上方へ運動する。押さえ片110は、下方へ倒れ込み運動し、押さえ片112は上方へ浮上運動する。この過程において、上歯列102は押さえ片110に対して水平方向にスライド運動し、下歯列104は押さえ片112に対して水平方向にスライド運動する。
以上のように、カム板132が反時計回り方向に回転することにより、上記リンク機構101の作用により、上歯列102、下歯列104、押さえ片110,112が運動する。なお、それらの運動は例示であり、針無し綴じ処理を適切に実行できる限りにおいて、各部材が上記以外の運動を行うようにしてもよい。
図8には、近接状態が示されている。なお、図7に示した構成要素と同一の構成要素には同一符号を付してある。このことは次に示す図9においても同様である。
カム板132の回転により、ローラ138が当たり面136bまで転がっており、これに伴ってリンク部材140の姿勢及び位置に変化が生じている。カム板132にはリンク機構101を構成する他の部材も当たっている。このようなカム板132の回転運動に伴う複数のリンク部材の位置及び姿勢の変化により、つまりリンク機構101の働きにより、上歯列102及び下歯列104が互いに近付けられる。それに先行して、押さえ片110,112が用紙束118にその上下から接しており、つまり用紙束118が挟まれる。なお、この近接状態は、綴じ動作過程後の戻り動作過程においても生じ、当該状態において、押さえ片110,112の作用によって、上歯列102及び下歯列104から用紙束が確実に引き離される。
図9には、噛み合い状態が示されている。カム板132が更に回転しており、ローラ138が当たり面136bの奥側まで到達している。リンク部材142の先端が当たり面134に当接し、その先端が跳ね上げられている。それらのリンク部材の位置及び姿勢の変化により、つまりリンク機構101の働きにより、上歯列102と下歯列104が用紙束118を間において噛み合っている。その際、押さえ片110、112は、上歯列102と下歯列104の噛み合いに影響を与えないように、それぞれ用紙束118から若干退避した位置にある。但し、適正荷重をもって噛み合いを形成できる限りにおいて、噛み合い状態において、押さえ片110、112が用紙束118に接触していてもよい。噛み合い状態が形成された後、戻り動作が実行される。その過程で図8に示した近接状態が生じ、最終的に図7に示した待機状態に戻る。
図7乃至図9に示した構成は例示に過ぎず、針無し綴じ器100を構成する機構として多様なものを採用し得る。なお、図7及び図9に示した構成では、単一の駆動源によるカム軸の回転運動だけで上述した複数のアーム部材の運動が実現されており、電気的な構成に着目した場合に低コストで当該構成が実現されている。
なお、回転数を検出するエンコーダはモータ軸又は他の回転軸に設けられる。荷重センサは、例えば、上歯列102と下歯列104の近傍であって綴じ荷重を受ける位置に設けられる。その他、必要に応じて、原点センサ、リミットスイッチ等が設けられる。
(3)綴じ動作速度の制御
以下、針無し綴じ器の動作の制御について詳述する。本実施形態においては、画像形成ユニット内の制御部により、針無し綴じ器の動作、特に綴じ動作速度及び戻り動作速度が制御される。
本発明者らの実験によれば、低湿環境(低温低湿環境)においては、通常環境(高温高湿環境又は一般的な環境)に比べて、綴じ部内において破断箇所が生じ易いことが判明している。破断箇所が生じると、結着力が低下し、綴じ部の品質が大きく低下してしまう。ある程度の枚数からなる用紙束を前提として、それに対して綴じ部を安定的に形成するためには相応の綴じ荷重をかける必要があるが、同時に、破断箇所ができるだけ生じないようにすることが求められる。本実施形態においては、環境に応じて、針無し綴じ器の動作、特に綴じ動作速度が制御されている。以下にそれを具体的に説明する。
図10には、第1の動作例(第1の制御例)が示されている。S10では、湿度センサにより検出した湿度に基づいて、画像形成ユニット内の制御部により、現在の環境が通常環境か低湿環境かが判断される。例えば、検出された湿度を閾値と比較することにより、通常環境か低湿環境かが判断される。湿度は、用紙の伸び易さに関わる情報の1つである。低湿環境は用紙が伸びにくい状況(第1状況)に相当し、通常環境は用紙が伸び易い状況(第2状況)に相当する。用紙の伸び易さを示す他の情報に基づいて、用紙がおかれている環境が判断されてもよい。環境情報として、湿度に代えて温度が参照されてもよく、あるいは、湿度と温度の両方が参照されてもよい。
S10において通常環境であると判断された場合、S12において、制御部により、通常速度モードが選択される。通常速度モードは、用紙束に対して所定の荷重(例えば6000N)をかけることを前提として、規定の綴じ動作速度で綴じ動作を行うものである。一方、S10において低湿環境であると判断された場合、S12において、制御部により、低速度モードが選択される。低速度モードは、用紙束に対して所定の荷重をかけることを前提として、規定の綴じ動作速度よりも遅い綴じ動作速度で、綴じ動作を行うものである。
S16では、S12又はS14で選択された速度モードに従って、針無し綴じが実行される。すなわち、通常環境である場合、規定の綴じ動作速度で綴じ動作が実行される。低湿環境である場合、低減された綴じ動作速度で綴じ動作が実行される。ここで、不良箇所発生の防止又は軽減の観点から見て、制御されるべき綴じ動作速度は、綴じ動作過程全体の中で、実際に綴じ部を形成する際の綴じ動作速度であり、より具体的には、綴じ部形成開始時点における上歯列及び下歯列の相対的な近接運動速度である。
上記の制御によれば、用紙が伸びにくい低湿環境では、綴じ動作速度が規定の動作速度よりも下げられるので、綴じ部内において不良箇所(破断箇所)が生じにくくなる。つまり、低湿環境において綴じ部品質を高められる。一方、上記の制御によれば、環境によらず常に綴じ動作速度を低く設定しておく場合に比べて、通常環境において綴じ動作時間を短縮できる。
図11を用いて、以上説明した第1の動作例をより具体的に説明する。図11において、(A)には、通常速度モードが選択された場合における速度プロファイル150と、低速度モードが選択された場合における速度プロファイル152と、が示されている。制御部は、環境に従って選択された速度プロファイルに従って綴じ動作速度及び戻り動作速度を制御する。縦軸に示されている速度は、一対の歯列間での相対運動速度を示しており、それはカム板の回転速度及びモータの回転速度に対応するものである。なお、図7乃至図9に示したように、各歯列がz方向に運動すると共にx方向にも運動する場合、図11の(A)における縦軸の速度はz方向の速度成分に対応する。
図11において、(B)には、通常速度モードが選択された場合における一対の歯列間の距離の変化を表す距離グラフ154と、低速度モードが適用された場合における一対の歯列間の距離の変化を表す距離グラフ156と、が示されている。図7乃至図9に示したように、各歯列がz方向に運動すると共にx方向にも運動する場合、(B)における縦軸の距離はz方向の距離に対応する。なお、噛み合い状態が生じて一対の歯列の近接運動が停止した時点での距離を0としている。(A)及び(B)において、各プロファイル及び各グラフはその特徴又はその傾向が明確になるように模式的に示されている。
通常速度モードでの速度プロファイル150において、T1は綴じ処理の全体期間を示しており、T2は綴じ動作期間を示しており、T3は戻り動作期間を示している。T4は綴じ部形成開始時点から綴じ部形成終了時点(噛み合い停止時点)までの綴じ部形成期間を示している。綴じ部形成開始時点よりも前のタイミングt1において一対の押さえ片が用紙束に接する。その後、一対の歯列が用紙束に接する前に、あるいは、噛み合い停止時点よりも前に、一対の押さえ片は用紙束から退避する。一対の押さえ片が綴じ荷重に影響を与えない限りにおいて、一対の押さえ片が用紙束に接したままとされてもよい。戻り動作開始後のタイミングt2において一対の押さえ片が再び用紙束に接する。その押さえ状態で、一対の歯列が退避運動する。
低速度モードでの速度プロファイル152において、T5は綴じ処理の全体期間を示しており、T6は綴じ動作期間を示しており、T7は戻り動作期間を示している。T8は綴じ部形成開始時点から綴じ部形成終了時点(噛み合い停止時点)までの綴じ部形成期間を示している。綴じ部形成開始時点よりも前のタイミングt3において一対の押さえ片が用紙束に接する。戻り動作開始後のタイミングt4において、一対の押さえ片が用紙束に再び接する。
速度プロファイル150と速度プロファイル152を対比した場合、綴じ動作期間T2,T6において、特に綴じ部形成期間T4,T8において、通常環境に比べて低湿環境では綴じ動作速度が低減されている。図示の例では、低湿環境において、綴じ動作速度がほぼ半減されており、綴じ部がかなりゆっくり形成されている。用紙に対して急激に押圧力を加えた場合、用紙の伸びが追い付かず、特定の箇所に応力が集中して破れが生じ易いが、用紙に対してゆっくりと押圧力を加えた場合、用紙が伸び易くなるので破れが生じにくくなるものと考えられる。一定の保持力又は結着力を得るためには一定の荷重をかける必要があるが、同じ用紙束に対して同じ荷重をかける場合でも、環境に応じて綴じ速度を遅くすれば、綴じ部内での不良箇所発生の可能性を低減することが可能である。
綴じ動作期間T2と綴じ動作期間T6とを対比すると、後者は前者よりも長く、図示の例では、後者は前者の約2倍である。同じく綴じ部形成期間T4と綴じ部形成期間T8とを対比すると、後者は前者よりも長く、図示の例では、後者は前者の約2倍である。望ましくは、通常状態において、少なくとも綴じ部形成開始時点で、規定の綴じ動作速度となるように、綴じ動作速度が制御される。図示の例では、綴じ動作過程の前半において規定の綴じ動作速度となり、それが維持されている。低湿状態においては、少なくとも綴じ部形成開始時点で、低減された綴じ動作速度となるように、綴じ動作速度が制御される。
一方、戻り動作期間T3と戻り動作期間T7とを対比すると、それらはほぼ同一である。つまり、低湿環境においても通常環境と同じ戻り速度制御が適用されている。その結果、低湿環境下での全体期間T5は、通常環境下での全体期間T1よりも長くなるが、全体期間T5は全体期間T1の2倍よりも短く、つまり、低湿環境でも戻り動作期間T7を短くすることによって、処理時間の短縮化が図られている。綴じ動作期間T2と綴じ動作期間T6との間の時間差よりも、戻り動作期間T3と戻り動作期間T7との間の時間差の方が小さくなるように、動作シーケンスを定めれば、低湿環境下で針無し綴じ処理効率を高められる。処理効率をより高めるには、その時間差が実質的にゼロにすればよい。すなわち、綴じ動作期間T2と綴じ動作期間T6とをほぼ同一にすればよい。
なお、環境にかかわらず綴じ動作速度を一律に低減してしまうことも考えられるが、その場合には、通常環境において処理効率を高めることができなくなる。これに対し、上記第1動作例によれば、通常環境下において処理効率を高められる。
上記リンク機構は、一対の歯列の運動に連動させて一対の押さえ片を運動させるものであり、綴じ動作過程において、低湿環境では通常環境よりも、一対の押さえ片の動作速度が低減される。上記の例では、その動作速度が例えば半減される。これにより、低湿環境では高湿環境に比べて一対の押さえ片が用紙束に対して柔らかく接することになる。また、低湿環境では通常環境に比べて、綴じ部形成開始時点よりも、より前のタイミングで一対の押さえ片が用紙束に接することになる。なお、戻り動作開始後、一対の押さえ片が用紙束に接するまでの期間は環境によらず一定である。
図12には、第1の動作例についての第1の変形例が示されている。速度プロファイル158は通常環境において通常速度モードを適用した場合における綴じ動作速度の時間的な変化を示すものである。速度プロファイル158において、戻り動作速度の時間的な変化については図示省略されている。また、縦軸方向にプロファイル形態がやや誇張されている。以下に説明する速度プロファイル160、162においても、その一部の図示が省略されており、また縦軸方向にプロファイル形態が誇張されている。
速度プロファイル160は低湿環境において低速度モードを適用した場合における綴じ動作速度の時間的な変化を示すものである。T20,T21はそれぞれ綴じ部形成期間を示している。綴じ部形成期間T20,T21の後、つまり噛み合い後に一時停止期間T22,T23が設けられている。一時停止期間T22,T23は用紙束の塑性変形状態を安定化させる期間である。一時停止期間T22,T23の後に戻り動作が実行される。低湿状態での一時停止期間T23を高湿状態での一時停止期間T22よりも長くしてもよいし、それらを同じにしてもよい。なお、環境に応じて、綴じ動作速度の変更に加えて、他の制御パラメータが変更されてもよい。例えば綴じ荷重が変更されてもよい。
図13には、第1の動作例についての第2の変形例が示されている。速度プロファイル158は通常環境において通常速度モードを適用した場合における綴じ動作速度の時間的な変化を示すものであり、それは図12に示した速度プロファイル158と同じである。一方、速度プロファイル162は低湿環境において低速度モードを適用した場合における綴じ動作速度の時間的な変化を示すものである。T20,T24はそれぞれ綴じ部形成期間を示している。速度プロファイル162に着目すると、その初期においては、大きな綴じ動作速度が生じており、その部分162aは速度プロファイル158に一致している。その後、綴じ動作速度が低減されており(符号162bを参照)、綴じ部形成開始時点では、低減された綴じ動作速度となっている。つまり、綴じ部をゆっくり形成することを前提としつつも、初期の綴じ動作速度を高めて、綴じ動作期間全体として短縮化を図るものである。もっとも、このような第2の変形例によると、一般に、速度制御が複雑となる。これに対し、上記第1の動作例によれば速度制御が簡素化される。
図14には、第2の動作例が示されている。S20では、現環境下での用紙の伸び易さが評価される。例えば、用紙の伸び易さに関わる湿度、温度、紙質その他の情報に基づいて、用紙の伸び易さが判断される。湿度は、用紙の伸び易さに影響を与える外部ファクタといえる。紙質は、用紙の伸び易さを直接示す内部ファクタといえる。よって、第2の動作例では、湿度と紙質の組み合わせから、現環境下において画像形成対象となった特定の用紙(用紙束)について伸び易さの度合いが評価されている。その際の条件については後に図15を用いて説明する。
S20において、伸び易さの度合いとして「高」が判定された場合、図示の例では、S22において高速度モードが選択される。高速度モードは、綴じ部形成過程において、通常の綴じ動作速度を超える綴じ動作速度となるように、綴じ動作を制御するモードである。そのような高速度モードが許容されない場合、S22において、以下に説明する通常速度モードが選択される。S20において、伸び易さの度合いとして「中」が判定された場合、S24において、通常速度モードが選択される。通常速度モードでは、規定の綴じ動作速度で綴じ部が形成される。S20において、伸び易さの度合いとして「低」が判定された場合、S26において、第1の動作例と同様に、低速度モードが選択される。低速度モードは、綴じ部の形成時において通常綴じ動作速度よりも低い綴じ動作速度となるように、綴じ動作を制御するモードである。
S28においては、選択された速度モードに従って実際に針無し綴じ処理が実行される。高速度モードによれば、一定の綴じ部品質を確保しつつ綴じ処理時間をより短縮化できる。通常速度モードによれば、一定の綴じ部品質を確保しつつ綴じ処理時間を短縮化できる。低速度モードによれば、綴じ部内において不良箇所が生じる可能性を低減できる。通常速度モードにおいては、図11に示した速度プロファイル150に示したように綴じ動作速度が制御される。低速度モードにおいては、図11に示した速度プロファイル152に示したように綴じ動作速度が制御される。高速度モードにおいては、図11に示した速度プロファイル150よりも、より速い綴じ動作速度となるように、綴じ動作速度が制御される。
図15には、図14で示したS20において伸び易さを判断する際の条件が示されている。図示の例では、環境164が高湿(通常湿度)と低湿とに大別されている。紙質166は破れにくさの観点から高及び低に大別されている。総合評価168は、現環境下での用紙の伸び易さを示すものであり、それは高、中及び低に大別されている。低湿かつ伸びにくい用紙である場合、総合評価が「低」となり、低速モードが選択される(符号170を参照)。高湿かつ伸び易い用紙である場合、総合評価が「高」となり、高速モードが選択される(同)。それ以外の2つの組み合わせにおいては、総合評価が「中」となり、通常速度モードが選択される(同)。
第2の動作例では、湿度に加えて紙質を考慮して用紙の伸び易さが評価されているので、状況により相応しい速度モードが選択され易くなる。温度と湿度との間に相関関係が認められる場合、温度に基づいて高湿又は低湿を判断してもよい。また、用紙の含水率を測定できる場合、それに基づいて速度モードを選択してもよい。なお、第2の動作例において、用紙の伸び易さに応じて、綴じ動作速度及び綴じ荷重の両方を変化させてもよい。綴じ速度制御に際して用紙束を構成する用紙の枚数が更に考慮されてもよい。
ユーザーにより又は事前に紙質情報が画像形成ユニットに登録されてもよい。あるいは、画像形成ユニットに接続されている外部装置から紙質情報が画像形成ユニットへ与えられてもよい。画像形成ユニット内又は後処理ユニット内に紙質を測定するセンサを設け、それにより紙質情報を得てもよい。ユーザーに用紙の種類又は性質を問い合わせ、ユーザーから紙質に関する情報を得ることも考えられる。環境又は伸び易さをユーザーがマニュアルで指定する機能を付加するようにしてもよい。綴じ部に破れが生じてしまった場合、それが自動的に又はマニュアルで画像形成ユニットに登録されるようにし、そのように登録された情報に基づいて紙質情報が生成されてもよい。以上のように、多様な方法により紙質情報を取得できる。紙質情報を取得する部分が紙質情報取得部である。
(4)開示事項の整理
実施形態に係る画像形成装置は、針無し綴じ器及び制御部を有する。針無し綴じ器は、一対の歯列を有し、それらで用紙束を挟むことにより凹凸痕としての綴じ部を形成するものである。制御部は、用紙の伸び易さに関わる情報に従って、針無し綴じ器の動作を制御するものであり、用紙が伸びにくい第1状況では用紙が伸び易い第2状況よりも綴じ部がゆっくり形成されるように針無し綴じ器の綴じ動作を制御する。
この構成によれば、第1状況では綴じ部がゆっくりと形成されるので、凹凸痕としての綴じ部内において1又は複数の不良箇所(結着力低下を引き起こす破断箇所)が生じる可能性が低減される。すなわち、綴じ部の品質を維持又は向上できる。一方、第2状況では、第1状況に比べて、綴じ部が速く形成されるので、綴じ処理時間が短縮化される。
別の見方をすれば、制御部は、少なくとも検出された湿度に従って、針無し綴じ器の動作を制御するものであり、低湿状況では高湿状況に比べて長い時間をかけて前記綴じ部が形成されるように針無し綴じ器の綴じ動作を制御する。
このように、実施形態に係る画像形成装置によれば、綴じ動作が用紙の伸び易さに適するものとなり、第1状況又は低湿状況において綴じ部内に不良箇所が生じにくくなり、第2状況又は高湿状況において綴じ処理時間が短縮化される。
用紙の伸び易さに関わる情報は、以上の動作制御を行うための情報であり、それには、用紙の伸び易さを直接的に表す情報、用紙の伸び易さに影響を与える情報、用紙の伸び易さとの間に一定の相関を有する情報、等が含まれる。例えば、その情報は、環境検出値、用紙測定値、用紙の性質又は状態を示す情報、等である。第1状況と第2状況は相対的な概念であり、それらは個別的に厳密に定義されるものではない。一般に、用紙が伸びにくい第1状況は典型的には低湿状態又は低温低湿状態であるが、第2状況との比較において一般的に見て用紙が伸びにくい状況であればそれは第1状況たり得る。同様に、用紙が伸び易い第2状況は典型的には高湿状態(通常湿度状態を含む)又は高温高湿状態(室温且つ通常湿度の状態を含む)であるが、第1状況との比較において一般的に見て用紙が伸び易い状況であればそれは第1状況たり得る。
なお、3つ以上の状況に応じて綴じ部形成の速さが3段階以上に変更されてもよい。あるいは、状況の連続的な変化に応じて綴じ部形成の速さが連続的に変更されてもよい。それらの場合でも第1状況及び第2状況を観念しうる。用紙の伸び易さに関わる情報に加えて、用紙束を構成する用紙枚数等を考慮して、綴じ部形成速度が変更されてもよい。状況に応じて、綴じ部形成速度と共に綴じ荷重が変更されてもよい。
実施形態において、用紙の伸び易さに関わる情報には環境センサによって検出された検出値が含まれる。これによれば、綴じ動作が、環境が用紙に与える影響を踏まえたものとなる。環境センサは、典型的には、湿度及び温度の一方又は両方を検出するものである。検出された検出値及び用紙の紙質情報の両方を考慮して綴じ動作を制御すれば、その綴じ動作が、環境が用紙に与える影響及び用紙自体の性質を踏まえたものとなり、第1状況において綴じ部内に不良箇所がより生じにくくなる。
実施形態において、制御部は、用紙の伸び易さに関わる情報に従って綴じ動作における綴じ動作速度を制御し、これにより第1状況では綴じ部がゆっくり形成される。すなわち、針無し綴じ器の綴じ動作速度の制御により綴じ部を形成する速さが変更される。綴じ動作速度は、一般には、一対の歯列の相対的な運動における運動速度であるが、その運動を引き起こすカムやモータ等の回転速度として捉えることも可能である。綴じ動作速度が直接的に制御される態様ではなく、綴じ動作速度が間接的に又は結果として制御される態様が採用されてもよい。また、綴じ動作速度ではなく、押さえ力、ストローク長その他の動作条件の変更により、用紙が伸びにくい第1状況では用紙が伸び易い第2状況よりも綴じ部がゆっくり形成されるようにしてもよい。
実施形態においては、同じ用紙束に同じ荷重をかけることを前提とした場合、第1状況での綴じ動作時間の方が第2状況での綴じ動作時間よりも長くなるように、あるいは、第1状況での綴じ部形成開始時点での綴じ動作速度が第2状況での綴じ部形成開始時点での綴じ動作速度よりも遅くなるように、綴じ動作速度が制御される。既に説明したように、ゆっくりとした綴じ動作によれば、第1状況において綴じ部内に破断箇所が生じにくくなる。綴じ部形成時間は一般に短時間であり、綴じ部をゆっくりと形成するためには、形成開始時点での綴じ動作速度を遅くしておくのが通常であり、またその方が綴じ動作制御が確実かつ簡便となる。
実施形態において、針無し綴じ器は綴じ動作後に戻り動作を実行し、制御部は綴じ動作速度及び戻り動作速度を制御し、第1状況での綴じ動作時間が第1綴じ動作時間となり、第2状況での綴じ動作時間が第2綴じ動作時間となり、第1状況での戻り動作時間が第1戻り動作時間となり、第2状況での戻り動作時間が第2戻り動作時間となり、第1綴じ動作時間と第2綴じ動作時間との間の綴じ動作時間差よりも、第1戻り動作時間と前記第2戻り動作時間との間の戻り動作時間差の方が小さい。このような制御によれば、第1状況において、綴じ部の形成に時間をかけて破断箇所が生じることを防止又は軽減しつつ、綴じ処理に要する時間を短縮化できる。すなわち、戻り動作速度は破断箇所発生に直接には関係しないので、戻り動作速度を速めて綴じ処理時間を短縮するものである。戻り動作時間差は実質的にゼロであってもよく、例えば綴じ動作時間差を100%として戻り動作時間差がその5%以内であれば戻り動作時間差がゼロであると言いうる。例えば、第1状況での戻り動作過程での速度プロファイルと第2状況での戻り動作過程での速度プロファイルが実質的に同じであってもよい。
実施形態において、針無し綴じ器は、前記綴じ動作において前記用紙束に接する押さえ部材を有し、制御部は、用紙の伸び易さに関わる情報に従って押さえ部材の押さえ動作速度を制御し、これにより第1状況では第2状況に比べて一対の押さえ片の押さえ動作がゆっくりとなる。この構成によれば、第1状況において、第2状況に比べて、押さえ部材が用紙束に与える物理的作用が緩和される。押さえ部材は、単一の押さえ片、複数の押さえ片等により構成され得る。実施形態においては、単一の駆動源により一対の歯列と一対の押さえ片とが連動して動作する。