JP2019163594A - 鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】鉄骨梁近傍のコンクリートの圧潰を抑制し、かつ、せん断耐力を損なわずにコンクリートの充填性を向上可能な柱梁接合部を有する、鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造を提供する。
【解決手段】鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3の混合構造は、鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3が接合された柱梁接合部40を有し、柱梁接合部40は、鉄骨梁3の上下フランジ32a、32b間をふさぐふさぎ鋼板41、及びその内部に形成された接合本体部40Aと、接合本体部40Aの上方に形成される接合上端部40Bと、接合本体部40Aの下方に形成される接合下端部40Cと、で構成され、接合本体部40A、接合上端部40B、及び接合下端部40Cは、コンクリート24Jにより一体に構成され、柱梁接合部40のコンクリート強度は、鉄筋コンクリート柱2を形成するコンクリート強度に比べて、高強度である。
【選択図】図2

Description

本発明は、鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造に関する。
例えば特許文献1には、鉄筋コンクリート造の柱と鉄骨造の柱との接合部の補強を図るため、梁に溶接された塞ぎ板が柱を取り囲むように設けられた構成が開示されている。また、特許文献1には、塞ぎ板の代わりに、柱の中に配置されるせん断補強筋と、梁に溶接されて柱に当接する支圧板とを備える構成も開示されている。さらに、特許文献1には、梁に固定されて柱に当接する固定部材と、対向する梁にそれぞれ固定された2つの固定部材を連結する鋼棒材とを備える構成が開示されている。
特許文献1に開示されたような構成では、地震発生時等に大きな外力によって梁が撓み変形すると、梁の端部が柱に接合される部分において、梁の上下のフランジから柱を構成するコンクリートに上下方向の圧縮力が作用し、コンクリートが潰れて損傷する圧潰が生じる場合がある。また、柱と梁との接合部にせん断補強筋や鋼棒材が設けられていると、接合部へのコンクリートの充填性が低下する。
特許文献2には、柱梁接合部を覆う鋼板製の塞ぎ板と、鉄骨柱の外周を囲む鉄筋籠とを備える構成が開示されている。
特許文献2に開示されたような構成では、柱梁接合部に鉄筋籠が設けられているため、コンクリート充填性が低下する。
また、特許文献3には、柱の外形を形成するように梁が集束する部位を囲む塞ぎ板と、塞ぎ板で囲まれた空間に柱主筋貫通孔が配置され、コンクリートが充填された柱梁接合部と、柱梁接合部と一体製作され、ブレースの端部が柱の下端または上端の一部と干渉する範囲を含むコンクリート柱先打ち部と、を備えた構成が開示されている。
特許文献3に開示されたような構成では、地震発生時等に大きな外力によって梁が撓み変形すると、梁の上下のフランジからコンクリート柱先打ち部に上下方向の圧縮力が作用し、圧潰が生じる場合がある。また、柱と梁との接合部にせん断補強筋が設けられていれば、接合部へのコンクリートの充填性が低下する。一方、柱と梁との接合部にせん断補強筋が設けられていない場合には、柱梁接合部におけるせん断耐力が不足する場合がある。
特開2015−59408号公報 特開2017−95986号公報 特開2016−98586号公報
本発明が解決しようとする課題は、鉄骨梁近傍のコンクリートの圧潰を抑制し、かつ、せん断耐力を損なわずにコンクリートの充填性を向上可能な柱梁接合部を有する、鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造を提供することである。
本発明者らは、鉄筋コンクリート柱(RC柱)と鉄骨梁を接合させたRC柱・鉄骨梁混合構造として、柱梁接合部を構成する接合本体部を含む鉄骨梁の上下フランジ間をふさぎ鋼板を用いた角筒形状体で囲むとともに、当該角筒形状体を含む、上部フランジより上部の接合上端部、及び下部フランジより下部の接合下端部を高強度コンクリートで一体として形成することで、柱梁接合部の中央高さ位置にあたる接合本体部にせん断補強筋量を配筋することなく、高いせん断耐力を備えた柱梁接合部を実現できる点に着眼して、本発明に至った。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造は、鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁が接合された柱梁接合部を有する鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造であって、前記柱梁接合部は、前記鉄骨梁の上下フランジ間をふさぐふさぎ鋼板、及びその内部に形成された接合本体部と、前記接合本体部の上方に形成される接合上端部と、前記接合本体部の下方に形成される接合下端部と、で構成され、前記接合本体部、前記接合上端部、及び前記接合下端部は、コンクリートにより一体に構成され、前記柱梁接合部のコンクリート強度は、前記鉄筋コンクリート柱を形成するコンクリート強度に比べて、高強度であることを特徴とする。
このような構成によれば、鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁とが接合された柱梁接合部において、接合本体部、接合上端部、及び接合下端部のコンクリート強度を、鉄筋コンクリートを形成するコンクリート強度よりも高強度とすることで、特に、柱梁接合部のせん断強度やひびわれ発生強度を高めることができる。これにより、柱梁接合部に配するせん断補強筋の量を削減しながら、せん断耐力を確保することができる。
このようにせん断補強筋の量を削減できるため、接合本体部を貫通する柱主筋、及び梁主筋の其々の鉄筋間隔にあっては、コンクリートを形成する粗骨材が支障なく通り抜けていく十分な空き寸法が確保できるために、柱梁接合部におけるコンクリート充填性を高めることができる。
また、地震発生時には、RC柱や鉄骨梁に大きな外力が加わり、其々に変形が進むと、鉄骨梁の上下のフランジ面とその梁フランジの直下、及び直上のRC柱との間に、高い支圧力が作用することになるが、鉄骨梁のフランジを挟んだ接合本体部、及び接合上端部、接合下端部が高強度コンクリートで形成されていることで、鉄骨梁近傍のコンクリートに圧潰を発生させることなく、RC柱と鉄骨梁との間で外部荷重を伝達させることができる。
本発明の一態様においては、本発明の鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造は、前記柱梁接合部では、前記接合本体部にせん断補強筋が配筋されていないことを特徴とする。
このような構成によれば、柱梁接合部を構成する接合本体部にせん断補強筋が配筋されていない。よって、柱梁接合部において、柱主筋と梁主筋が交差する接合本体部内にせん断補強筋が配筋されていないことで、柱梁接合部内でのコンクリートの充填性を高めることができる。
本発明の一態様においては、本発明の鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造は、前記ふさぎ鋼板は、前記鉄骨梁のウェブと、前記上下フランジの各々に溶接され、前記ふさぎ鋼板同士の角部をR形状に接合させて、角筒形状体を形成する。具体的には、ふさぎ鋼板同士が溶接された角部が曲面加工された角筒形状体である。
このような構成によれば、柱梁接合部にコンクリートを打設する際、ふさぎ鋼板が、柱梁接合部の周囲を覆う型枠として機能する。このふさぎ鋼板は、角筒形状体であり、その角部がR形状(曲面加工)であるので、角筒形状体の内部に充填される接合本体部のコンクリートは、角部が曲面加工されたふさぎ鋼板が筒状の樽のように機能して3軸応力状態で拘束されることになる。よって、コンクリートの圧縮強度は、材料本来の1軸強度を上回り、破壊強度に達するまで増加されるために、柱梁接合部のせん断耐力を高めることができる。
本発明によれば、鉄骨梁近傍のコンクリートの圧潰を抑制し、かつ、せん断耐力を損なわずにコンクリートの充填性を向上可能な柱梁接合部を有することが可能となる。
本実施形態における鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造を適用した建物の一部を示す立面図である。 図1の建物における柱梁接合部の構成を示す立断面図である。 図1の柱梁接合部の構成を示す水平断面図である。 図1に示す建物の外周部に位置する柱梁接合部の構成を示す水平断面図である。 図1の柱梁接合部の構成を示す部分斜視図である。 図1の柱梁接合部の構築方法の説明図であり、鉄筋コンクリート柱の柱状部と柱主筋とを設けた状態を示す立断面図である。 図1の柱梁接合部の構築方法の説明図であり、柱梁接合部に梁接合ブラケットを設けた状態を示す立断面図である。 図1の柱梁接合部の実施例1を示す立断面図である。 図1の柱梁接合部の実施例2を示す水平断面図である。 図1の柱梁接合部の構築方法の変形例の説明図であり、柱梁接合部に高強度コンクリートを打設した状態を示す立断面図である。
本発明は、RC柱と鉄骨梁が接合された柱梁接合部を含むRC柱と鉄骨梁の混合構造である。本実施形態は、鉄骨梁の上下フランジ間に設ける接合本体部にせん断補筋が配筋されていなく、かつ接合本体部と、上部フランジの上部の接合上端部、及び下部フランジの下部の接合下端部がともに高強度コンクリートで形成されるRC柱と鉄骨梁の柱梁接合部を含む混合構造である(図1〜図7)。図8は、上記混合構造の実施例1であり、接合上端部及び接合下端部を、柱梁接合部に接合されるブレースのジョイントプレートを覆うような厚さで設けたものである。図9は、上記混合構造の実施例2であり、建物の外周隅部に設けるRC柱と鉄骨梁の柱梁接合部を実現するにあたり、柱梁接合部に埋設される鉄骨梁の材端面には閉塞板を設けることで、接合本体部にはふさぎ鋼板を設けることなく、柱梁接合部を閉塞板、及びせん断補強筋で囲んだものである。
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して、鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造を実施するための各形態を、図面に基づいて説明する。
本実施形態は、上述のとおり、接合本体部にせん断補筋を配筋することなく、接合本体部を含む鉄骨梁上の接合上端部、及び鉄骨梁下の接合下端部をともに、高強度コンクリートで形成する点が特徴である。
図1に、本実施形態における鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造を適用した建物の部分立面図を示す。図2に、図1に示す建物における柱梁接合部の立断面図を示す。また、図3に、図2に示す柱梁接合部の水平断面図を示す。図4に、建物の外周部に位置する柱梁接合部の構成を示す水平断面図を示す。図5に、柱梁接合部の斜視図を示す。
図1に示されるように、建物1は、上下方向に延びる複数本の鉄筋コンクリート柱2と、建物1の各階において互いに隣り合う鉄筋コンクリート柱2間に架設された鉄骨梁3と、を備えている。鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3とは、柱梁接合部40において互いに接合されている。
図1、図2に示されるように、鉄筋コンクリート柱2は、鉄筋コンクリート造であり、柱主筋21と、コンクリート24と、を主に備えている。柱主筋21は、上下方向に延びている。柱主筋21は、鉄筋コンクリート柱2の断面内において複数本が配設されている。コンクリート24は、例えば平断面視矩形で、柱主筋21を埋設するように設けられている。
鉄筋コンクリート柱2は、互いに上下に位置する柱梁接合部40の間に、鉄筋コンクリート柱2の本体部に相当する上下方向に延びる柱状部2Cを有している。柱状部2Cは、柱主筋21とコンクリート24とに加えて、せん断補強筋22を備えている。せん断補強筋22は、上下方向に間隔をあけて複数本が設けられている。それぞれのせん断補強筋22は、柱主筋21を取り囲むように配筋されている。柱状部2Cにおいて、コンクリート24は、これら柱主筋21及びせん断補強筋22を埋設するように設けられている。
設計例では、例えば、鉄筋コンクリート柱2は呼び強度42N/mmの普通強度コンクリートを使用したプレキャストコンクリート製であり、その鉄筋コンクリート柱2の形状及び外径寸法については、図3、4に示すように矩形形状で、外径寸法が900mm×900mmである。また、柱主筋21には異形鉄筋D35が12本均等に配置され、柱本体部には帯筋D16が100mm間隔で配筋されている。
鉄骨梁3は、図1に示すように鉄骨梁本体31と、柱梁接合部40に設けられた梁接合ブラケット32と、を備えている。
鉄骨梁本体31は、水平面内に設けられた上部フランジ31aと、上部フランジ31aの下方に平行に設けられた下部フランジ31bと、鉛直面内に位置して上部フランジ31aと下部フランジ31bとを連結するように設けられたウェブ31cと、を一体に有している。鉄骨梁本体31の端部は、梁接合ブラケット32に、ジョイントプレート34を介して接合されている。
梁接合ブラケット32は、鉄骨梁3が延びる方向に向けて、鉄筋コンクリート柱2から突出するように設けられている。図3に示すように、例えば、鉄筋コンクリート柱2が建物1の内部に配置されて、その四方に梁が接合される場合、梁接合ブラケット32は、鉄筋コンクリート柱2から四方に延びるように設けられている。ここで、鉄筋コンクリート柱2を挟んで互いに反対側に位置する梁接合ブラケット32同士は、一直線上に連続している。すなわち、四方に鉄骨梁3が接合される鉄筋コンクリート柱2の柱梁接合部40において、梁接合ブラケット32は、平面視十字状に設けられている。また、各梁接合ブラケット32は、その一部が柱梁接合部40のコンクリート24Jに埋設され、残部が、鉄筋コンクリート柱2に接合される四方の鉄骨梁3のそれぞれの延在方向に沿ってコンクリート24Jから突出して設けられている。
また、図4に示すように、鉄筋コンクリート柱2が、建物1の外周部に配置されるものである場合、建物1の外方を向く部分には、梁接合ブラケット32は、その先端部32sが後述するふさぎ鋼板41と同一位置となるよう設けられている。
図2に示すように、各梁接合ブラケット32は、水平面内に設けられた上部フランジ32aと、上部フランジ32aの下方に平行に設けられた下部フランジ32bと、鉛直面内に位置して上部フランジ32aと下部フランジ32bとを連結するように設けられたウェブ32cと、を一体に有している。
図3、図4に示されるように、柱梁接合部40には、ふさぎ鋼板41が設けられている。ふさぎ鋼板41は、鉄筋コンクリート柱2の周方向において互いに隣り合う梁接合ブラケット32の間に設けられている。各ふさぎ鋼板41は、平面視略L字状で、互いに隣り合う梁接合ブラケット32のうち一方の梁接合ブラケット32の延伸方向に直交する第一面41aと、他方の梁接合ブラケット32の延伸方向に直交する第二面41bと、を有している。
各ふさぎ鋼板41の第一面41a、第二面41bの端部は、図2に示すように鉄骨梁3を構成する梁接合ブラケット32の上部フランジ32aと下部フランジ32bとの間を塞ぐように設けられている。すなわち、ふさぎ鋼板41の第一面41a、第二面41bの端部は、梁接合ブラケット32の上部フランジ32aと下部フランジ32bとウェブ32cとに溶接されている。
また、ふさぎ鋼板41において、第一面41aと第二面41bとが交差する角部41cは、所定の曲率半径で湾曲して形成されている。
このような平面視略L字状のふさぎ鋼板41を、鉄筋コンクリート柱2から四方に延びる梁接合ブラケット32の間にそれぞれ設けることで、これらふさぎ鋼板41によって、平面視矩形で上下方向に延びる角筒形状体45が形成されている。
設計例では、例えば、ふさぎ鋼板41には溶接構造用圧延鋼材SM490Aを使用し、鋼板厚さは12mmで、角部41cにはR=10tの曲げ加工を行った後、柱梁接合部40の必要耐火性能を満足するように、当該ふさぎ鋼板41の表面に耐火被覆層を設けた。
図2に示されるように、柱梁接合部40は、接合本体部40Aと、接合上端部40Bと、接合下端部40Cと、を備えて構成されている。
接合本体部40Aは、ふさぎ鋼板41(角筒形状体45)の内部にコンクリート24Jが充填されることで形成されている。接合本体部40Aには、前記の柱主筋21が上下方向に延びて配筋されている。ここで、図3、図4に示されるように、柱主筋21は、鉄筋コンクリート柱2の外周部に、複数本配置されている。鉄筋コンクリート柱2の外周部に配置された柱主筋21は、互いに隣り合う梁接合ブラケット32同士の間に配置されている。図2に示されるように、接合本体部40Aにおいては、柱主筋21のみが設けられ、せん断補強筋は設けられていない。換言すると、ふさぎ鋼板41の内側の、梁接合ブラケット32の上部フランジ32aと下部フランジ32bとの間においては、せん断補強筋が設けられていない。
また、梁接合ブラケット32同士が交差する部分には、コンクリート打設時のエア抜き孔32hが、上部フランジ32aと下部フランジ32bとを貫通して形成されている。
接合上端部40Bは、接合本体部40Aの上方に設けられている。接合上端部40Bは、柱主筋21と、柱主筋21を取り囲むように設けられたせん断補強筋43と、柱梁接合部40のコンクリート24Jと一体に設けられたコンクリート24Kとによって形成されている。接合上端部40Bは、上下方向において、梁接合ブラケット32上に形成されるスラブ5と同等の厚さを有している。
接合下端部40Cは、接合本体部40Aの下方に設けられている。接合下端部40Cは、柱主筋21と、柱主筋21を取り囲むように設けられたせん断補強筋44と、柱梁接合部40のコンクリート24Jと一体に設けられたコンクリート24Lとによって形成されている。接合下端部40Cは、上下方向において、接合上端部40Bと同等の厚さを有している。
すなわち、柱梁接合部40では、接合本体部40Aの高さ分の間隔を空けて、接合下端部40C、及び接合上端部40Bに、柱主筋21を囲むようにせん断補強筋43,44が配筋されている。
接合下端部40C、及び接合上端部40Bに配筋されるせん断補強筋43,44は、鉄筋コンクリート柱2本体のせん断補強筋22の間隔よりも狭い間隔にて配筋される。または、せん断補強筋43,44を、鉄筋コンクリート柱2本体のせん断補強筋22に比べて、高強度鉄筋を使用する方法、或いは太径鉄筋を使用することも可能である。このようにすることで、接合下端部40C、または接合上端部40Bのコンクリートの拘束度を高めて、柱梁接合部40内のコンクリートの圧縮強度を増加されて、鉄骨梁3近傍でのコンクリートの圧潰を抑制する。
本実施形態においては、図2、図5に示されるように、接合下端部40Cは、下部ふさぎ鋼板42を備えている。
下部ふさぎ鋼板42は、接合下端部40Cのコンクリート24Lを覆うように、かつ、接合本体部40Aのふさぎ鋼板41が下方に延在するように、ふさぎ鋼板41に接合されて設けられている。
このように、下部ふさぎ鋼板42とふさぎ鋼板41とが一体となって、角筒形状体が形成されている。
柱梁接合部40において、接合本体部40Aのコンクリート24J、接合上端部40Bのコンクリート24K、及び接合下端部40Cのコンクリート24Lは、高強度コンクリートによって形成されている。この高強度コンクリートは、そのコンクリート強度が、鉄筋コンクリート柱2の柱状部2Cを形成するコンクリート24のコンクリート強度に比べて高い。
設計例では、例えば、接合上端部40B、及び接合下端部40Cの鉛直方向の高さは各180mmであり、接合本体部40Aの高さは800mmである。また、接合下端部40C、接合本体部40A、及び接合上端部40Bには、呼び強度60N/mmの高強度コンクリートを現場打設で構築し、下方側の柱本体の柱状部と連結する。よって、柱梁接合部40のコンクリート強度60N/mmは、柱状部のコンクリート強度42N/mmに対して、60倍/42≒1.4倍程度、増加させている。
また、接合上端部40Bに配筋するせん断補強筋43と、接合下端部40Cに配筋するせん断補強筋44の補強筋間隔は、柱状部の帯筋間隔より狭くし、最大間隔であっても100mm以下とし、80mmとした。また、接合上端部40B、及び接合下端部40Cは、鉄骨梁3のフランジ上面やフランジ下面に設けられる柱梁接合部40を構成する構造抵抗領域であり、施工性を考慮した一定ボリュームのコンクリート体をなす必要があり、接合上端部40Bや接合下端部40Cの最低高さは180mmとする。
図1に示されるように、互いに上下に位置する鉄骨梁3,3間には、ブレース50が設けられている。ブレース50は、例えば、鉄骨梁3の中間部と、柱梁接合部40とに両端部が接合されている。
ブレース50の端部は、ジョイントプレート51を介して柱梁接合部40に接合されている。ジョイントプレート51は、梁接合ブラケット32に溶接等によって接合されている。ジョイントプレート51は、その一部が、鉄筋コンクリート柱2のコンクリート24内に埋設され、残部が鉄筋コンクリート柱2の外側に露出して設けられている。
(柱梁接合部の構築方法)
次に、上記したような柱梁接合部40の構築方法について説明する。
上記柱梁接合部の構築方法を示す図であり、鉄筋コンクリート柱の柱状部と柱主筋とを設けた状態を示す立断面図を図6に示す。上記柱梁接合部の構築方法を示す図であり、柱梁接合部に梁接合ブラケットを設けた状態を示す立断面図を図7に示す。
図6に示すように、柱梁接合部40を構築するに先立ち、鉄筋コンクリート柱2の柱状部2Cを構築しておく。なお、この柱状部2Cのコンクリート24は、現場打ちしても良いし、予めコンクリート24を成形したプレキャストコンクリート造としてもよい。
柱梁接合部40を構築するには、まず、柱状部2Cの頭部から上方に突出した柱主筋21に、せん断補強筋44を配筋する。さらに、柱主筋21に、ナット80を用いて梁支持部材81を取り付ける。
次いで、図7及び図5に示すように、梁支持部材81上に、平面視十字状の梁接合ブラケット32を載せる。このとき、互いに隣り合う梁接合ブラケット32間には、接合本体部40A、及び接合下端部40Cにふさぎ鋼板41、下部ふさぎ鋼板42を予め溶接しておく。続いて、次に、梁接合ブラケット32の上側に、接合上端部40Bのせん断補強筋43を配筋する。その後、ふさぎ鋼板41、下部ふさぎ鋼板42で囲まれた接合本体部40Aと接合下端部40C、及び図示されない型枠材で囲まれた接合上端部40Bに高強度コンクリートを打設する。
打設した高強度コンクリートが硬化し、所定の強度を発現することで、接合本体部40Aのコンクリート24J、接合上端部40Bのコンクリート24K、及び接合下端部40Cのコンクリート24Lが形成される。
(作用効果)
上述したような鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3の混合構造によれば、鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3が接合された柱梁接合部40を有する鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3の混合構造であって、柱梁接合部40は、鉄骨梁3の上下フランジ32a、32b間をふさぐふさぎ鋼板41、及びその内部に形成された接合本体部40Aと、接合本体部40Aの上方に形成される接合上端部40Bと、接合本体部40Aの下方に形成される接合下端部40Cと、で構成され、接合本体部40A、接合上端部40B、及び接合下端部40Cは、コンクリート24Jにより一体に構成され、柱梁接合部40のコンクリート24J、24K、24Lの強度は、鉄筋コンクリート柱2を形成するコンクリート24の強度に比べて、高強度である。
このような構成によれば、鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3とが接合された柱梁接合部40において、接合本体部40A、接合上端部40B、及び接合下端部40Cのコンクリート24J、24K、24Lの強度を、鉄筋コンクリート柱2を形成するコンクリート24の強度よりも高強度とすることで、特に、柱梁接合部40のせん断強度やひびわれ発生強度を高めることができる。これにより、柱梁接合部40に配するせん断補強筋22の量を削減しながら、せん断耐力を確保することができる。
このようにせん断補強筋22の量を削減できるため、接合本体部40Aを貫通する柱主筋21、及び梁主筋の其々の鉄筋間隔にあっては、コンクリートを形成する粗骨材が支障なく通り抜けていく十分な空き寸法が確保できるために、柱梁接合部40におけるコンクリート充填性を高めることができる。
また、地震発生時には、鉄筋コンクリート柱2や鉄骨梁3に大きな外力が加わり、其々に変形が進むと、鉄骨梁3の上下のフランジ面とその梁フランジの直下、及び直上の鉄筋コンクリート柱との間に、高い支圧力が作用することになるが、鉄骨梁3のフランジを挟んだ接合本体部40A、及び接合上端部40B、接合下端部40Cが高強度コンクリートで形成されていることで、鉄骨梁3近傍のコンクリートに圧潰を発生させることなく、鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3との間で外部荷重を伝達させることができる。
また、上記した柱梁接合部40では、接合本体部40Aの高さ分の間隔を空けて、接合下端部40C、及び接合上端部40Bに、柱主筋21を囲むようにせん断補強筋43,44が配筋されている。また、接合本体部40Aにせん断補強筋が配筋されていない。
このような構成によれば、せん断補強筋43,44は、接合本体部40Aには配筋されていない。したがって、接合本体部40Aにおけるコンクリート充填性を向上させることができる。
また、ふさぎ鋼板41は、鉄骨梁3のウェブ32cと、上下フランジ32a、32bの各々に溶接され、ふさぎ鋼板41は角部41cが曲面加工された角筒形状体である。
このような構成によれば、柱梁接合部40にコンクリート24Jを打設する際、ふさぎ鋼板41が、柱梁接合部40の周囲を覆う型枠として機能する。このふさぎ鋼板41は、角筒形状体45であり、その角部41cがR形状(曲面加工)であるので、角筒形状体45の内部に充填される接合本体部40Aのコンクリートは、角部41cが曲面加工されたふさぎ鋼板41が筒状の樽のように機能して3軸応力状態で拘束されることになる。よって、コンクリートの圧縮強度は、材料本来の1軸強度を上回り、破壊強度に達するまで増加されるために、柱梁接合部40のせん断耐力を高めることができる。
また、接合下端部は、側方を下部ふさぎ鋼板42で囲われている。
このような構成によれば、接合下端部40Cのせん断耐力を向上させることができるとともに、柱梁接合部40構築する際の型枠としても使用することができるため、施工が容易である。
(実施形態の実施例)
上記実施形態では、接合上端部40Bのコンクリート24K、及び接合下端部40Cのコンクリート24Lを、スラブ5の同等の厚さで設けたが、これに限らない。
実施例1においては、図8に示されるように、接合上端部40B’のコンクリート24K’、及び接合下端部40C’のコンクリート24L’は、柱梁接合部40’に接合されるブレース50のジョイントプレート51を覆うような厚さで設ける。
また、上記実施形態では、接合本体部40Aのコンクリート24J、接合上端部40Bのコンクリート24K、及び接合下端部40Cのコンクリート24Lを高強度コンクリートにより形成するようにした。
また、実施例2として、建物1の外周部に位置して、外壁と鉄筋コンクリート柱2の外周面2fとが同一面となる場合、図9に示されるように、鉄筋コンクリート柱2の柱梁接合部60においては、ふさぎ鋼板41を廃し、代わりに、柱主筋21の周りにせん断補強筋63を設ける。この場合、建物1の外側に面する側においては、梁接合ブラケット32は、鉄筋コンクリート柱2の外周面2f、2gよりも所定寸法内側に位置するよう設けられている。また、梁接合ブラケット32の先端部32tには、上部フランジ32a、下部フランジ32b、及びウェブ32cとを塞ぐように、閉塞板66を溶接してもよい。
このような構成とすることで、上記実施形態で示したふさぎ鋼板41を用いた柱梁接合部40のように、ふさぎ鋼板41が外壁面に露出するのを抑えることができる。したがって、外観を損なったり、外壁を形成する壁パネルの設置の障害になるのを抑えることが可能となる。
(実施形態の変形例)
なお、本発明の鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、高強度コンクリートに代えて、多孔性の鋼繊維を混入させた高強度鋼繊維コンクリート、または普通強度の鋼繊維コンクリートを用いることで、上述の実施形態においては、接合本体部にふさぎ鋼板を配置し、かつ接合上端部、及び接合下端部にせん断補強筋を設けたが、鋼繊維材がふさぎ鋼板やせん断補強筋に替わってコンクリートを拘束するために、少なくともどちらか一方のみを設ける場合であっても、所定のせん断耐力を確保可能なRC柱と鉄骨梁の混合構造を実現できる。なお、本発明では、前記高強度鋼繊維コンクリートは、呼び強度が45N/mmを上回るコンクリートとし、前記普通強度の鋼繊維コンクリートは呼び強度が45N/mm以下のコンクリートとして柱梁接合部に必要な所定性能を満足するように鋼繊維コンクリートの調合設計を行い、RC柱と鉄骨梁の混合構造を実現する。
設計例では、例えば、鋼繊維にDRAMIX(登録商標)を使用し、鋼繊維の容積重量当たりの体積混入率は0.2〜2.0%とする。体積混入率の下限値0.2%は、出願人による構造物を対象とした鋼繊維補強コンクリートを使用した部材性能に関する技術開発で得られた知見(例えば、特開2017−014864号公報)に基づいたものである。また、体積混入率の上限値2.0%は、技術文献(堀口 至ほか3名:微小鋼繊維補強コンクリートのコンシステンシーについて、日本コンクリート工学年次論文集、第26巻、No.1、pp.279〜284、2004年)の知見、及び出願人が技術開発を進めてきた中で、柱主筋と梁主筋が配筋されている柱梁接合部に、現場打設により体積混入率2.0%の鋼繊維補強コンクリートを充填するのは、施工が困難であるという観点から限界値に設定している。
また、上記実施形態において、下部ふさぎ鋼板42は、ふさぎ鋼板41とは別に設けてふさぎ鋼板41に接合するように説明したが、これらが一体となるように、同一の鋼板を基にして形成しても構わないのは、言うまでもない。
また、接合下端部40Cのコンクリートの強度が十分であるならば、上記実施形態の構成から下部ふさぎ鋼板42を除去して、下部ふさぎ鋼板42を設けない構成としても構わない。
この場合においては、柱梁接合部を構築する際に、図10に示されるように、梁接合ブラケット32の上下に、接合下端部40C、接合上端部40Bを形成するための型枠82、83を設置する。この後、型枠83、ふさぎ鋼板41、及び型枠82の内側に高強度コンクリートを打設することにより、接合下端部40C、接合本体部40A、及び接合上端部40Bを構築する。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
1 建物 40 柱梁接合部
2 鉄筋コンクリート柱 40A 接合本体部
3 鉄骨梁 40B 接合上端部
5 スラブ 40C 接合下端部
21 柱主筋 41 ふさぎ鋼板
24 コンクリート 42 下部ふさぎ鋼板
24J、24K、24L コンクリート 41c 角部
32 梁接合ブラケット 43、44 せん断補強筋
32a 上部フランジ 45 角筒形状体
32b 下部フランジ 50 ブレース
32c ウェブ

Claims (3)

  1. 鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁が接合された柱梁接合部を有する鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造であって、
    前記柱梁接合部は、前記鉄骨梁の上下フランジ間をふさぐふさぎ鋼板、及びその内部に形成された接合本体部と、
    前記接合本体部の上方に形成される接合上端部と、
    前記接合本体部の下方に形成される接合下端部と、で構成され、
    前記接合本体部、前記接合上端部、及び前記接合下端部は、コンクリートにより一体に構成され、
    前記柱梁接合部のコンクリート強度は、前記鉄筋コンクリート柱を形成するコンクリート強度に比べて、高強度であることを特徴とする鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造。
  2. 前記柱梁接合部では、前記接合本体部にせん断補強筋が配筋されていないことを特徴とする請求項1に記載の鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造。
  3. 前記ふさぎ鋼板は、前記鉄骨梁のウェブと、前記上下フランジの各々に溶接され、前記ふさぎ鋼板は角部が曲面加工された角筒形状体であることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁の混合構造。
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