JP2019163537A - Co−Ni基合金ダイヤフラムおよびその製造方法 - Google Patents

Co−Ni基合金ダイヤフラムおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、用いられる半導体プロセスの化学的安定性を高めることのできるバルブ用などとして好適なメタルダイヤフラムおよびその製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明のCo−Ni基合金ダイヤフラムは、Co:30質量%以上40質量%以下、Ni:27質量%以上36質量%以下、Cr:12質量%以上26質量%以下、Mo:8質量%以上13質量%以下、Nb:0.5質量%以上3質量%以下、Ti:0.01質量%以下、残部不可避不純物の組成を有し、引張強度が1470MPa以上、伸びが1.5%以上、硬さが500±30Hvであることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、Co−Ni基合金ダイヤフラムおよびその製造方法に関する。
腐食性の高いガスが使用される半導体製造ガスプロセス等に用いられ、腐食性ガスの開閉弁として機能するダイヤフラムバルブとして、下記特許文献1、2に記載のように、Co−Ni基合金を用いたメタルダイヤフラムが採用されている。
このCo−Ni基合金に含まれる添加元素として、結晶粒微細化、脱酸等の効果を有するTiを用いる場合がある。
特開平09−031577号公報 特開2011−202681号公報
一方で、酸化チタン等のチタン化合物は触媒作用を有することが知られており、ダイヤフラムにチタン化合物が介在物として含まれ、チタン化合物が表面に析出すると、接触する半導体製造ガスに対し、ガスを分解するなどの化学反応を引き起こすおそれがある。
これに対し、Co−Ni基合金にTiを添加しないことによりTi介在物の析出を防止することができる。しかしながら、Tiを全く含んでいないCo−Ni基合金からなるダイヤフラムの場合、Tiを含むCo−Ni基合金からなるダイヤフラムと比較して耐腐食性の低下や、グレンサイズが大きくなることによる機械的特性の低下のおそれがある。
本発明は、このような問題に鑑み、用いられる半導体プロセスの化学的安定性を高めることのできるバルブ用などとして好適なメタルダイヤフラムおよびその製造方法を提供することを課題とする。
「1」前記課題を解決するため、本発明の一形態に係るCo−Ni基合金ダイヤフラムは、 Co:30質量%以上40質量%以下、Ni:27質量%以上36質量%以下、Cr:12質量%以上26質量%以下、Mo:8質量%以上13質量%以下、Nb:0.5質量%以上3質量%以下、Ti:0.01質量%以下、残部不可避不純物の組成を有し、引張強度が1470MPa以上、伸びが1.5%以上、硬さが500±30Hvであることを特徴とする。
本形態では、CoとNiとCrとMoとNbを規定量含む組成のCo−Ni基合金において0.01質量%以下のTiを含有しているため、耐腐食性が良好でありながら、引張強度1470MPa以上、伸び1.5%以上、硬さ500±30Hvである優れた機械特性のCo−Ni基合金からなるダイヤフラムを提供できる。
「2」前記一形態のCo−Ni基合金ダイヤフラムにおいて、疲労限が1100MPa以上を示すことが好ましい。
前記一形態のCo−Ni基合金ダイヤフラムでは、Ti含有量を低く抑え、Ti介在物の析出を抑制しているので、疲労限に優れる。
「3」前記一形態のCo−Ni基合金ダイヤフラムでは、金属組織中に0.1μm以上の大きさの微粒子まで判別可能な測定手段による観察でTi介在物が存在しないことが好ましい。
ダイヤフラムにおいて、金属組織中に0.1μm以上の大きさの微粒子まで判別可能な測定手段による観察でTi介在物が存在しないことにより、半導体プロセスで用いるようなガスを取り扱うバルブに適用されたとしても、半導体プロセスガスに対する影響がなく、化学的安定性に優れる。このため、本形態のダイヤフラムを備えたバルブを半導体製造プロセスに適用することにより、半導体プロセスの化学的安定性向上に寄与する。
「4」前記一形態のCo−Ni基合金ダイヤフラムの製造方法では、Co:30質量%以上40質量%以下、Ni:27質量%以上36質量%以下、Cr:12質量%以上26質量%以下、Mo:8質量%以上13質量%以下、Nb:0.5質量%以上3質量%以下、Ti:0.01質量%以下、残部不可避不純物の組成を有するCo−Ni基合金の圧延材を冷間圧延し、時効処理を施すことにより、引張強度1470MPa以上、伸び1.5%以上、硬さ500±30Hvとすることを特徴とする。
本形態のCo−Ni基合金ダイヤフラムの製造方法によれば、CoとNiとCrとMoとNbを規定量含み、Tiを0.01質量%以下含む組成の合金としているので、冷間加工後に時効処理を施すことで、機械的特性の向上を図ることができ、耐腐食性が良好でありながら、引張強度1470MPa以上、伸び1.5%以上、硬さ500±30Hvである優れた機械特性のダイヤフラムを得ることができる。
「5」前記一形態のCo−Ni基合金ダイヤフラムの製造方法において、0.1μm以上の大きさの微粒子まで判別可能な測定手段による観察でTi介在物が存在しない金属組織を得ることが好ましい。
金属組織中に0.1μm以上の大きさの微粒子まで判別可能な測定手段による観察でTi介在物が存在しないダイヤフラムを得ることにより、半導体プロセスで用いるようなガスを取り扱うバルブに適用したとしても、半導体プロセスガスに対する影響が無く、化学的安定性を向上できるダイヤフラムを提供できる。このため、本形態によるダイヤフラムを備えたバルブを半導体製造プロセスに適用することにより、半導体プロセスの化学的安定性向上に寄与する。
本形態によれば、CoとNiとCrとMoとNbを規定量含む組成のCo−Ni基合金において0.01質量%以下のTiを含有しているため、耐腐食性が良好でありながら、引張強度1470MPa以上、伸び1.5%以上、硬さ500±30Hvである優れた機械特性のCo−Ni基合金からなるダイヤフラムを提供できる。また、本形態のCo−Ni基合金であるならば、疲労特性にも優れる。
第1実施形態のダイヤフラムを示す断面図。 前記ダイヤフラムを圧力センサーに適用した実施形態を示す構成図。 前記ダイヤフラムをダイヤフラムバルブに適用した実施形態を示す構成図。 実施例に係るCo−Ni基合金試料のS−N曲線を示すグラフ。 比較例に係るCo−Ni基合金試料のS−N曲線を示すグラフ。 実施例試料と比較例試料に対し36%HClを用いて重量減少率を求めた腐食試験結果を示すグラフ。 実施例試料と比較例試料に対し10%HClを用いて重量減少率を求めた腐食試験結果を示すグラフ。 実施例試料と比較例試料に対し48%HBrを用いて重量減少率を求めた腐食試験結果を示すグラフ。 実施例試料と比較例試料に対し14%HBrを用いて重量減少率を求めた腐食試験結果を示すグラフ。
以下に本発明に係るCo−Ni基合金ダイヤフラムの一実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示す本実施形態のダイヤフラム1は、中央部が上部側へ膨出された曲率半径を有する部分球殻形状(ドーム形状)のドーム部2と、このドーム部2の周縁に境界部3を介し連続的に形成された鍔部4を備えてなる構造を1つの形態として採用できる。この形態のダイヤフラム1は、図示略のケーシング等に収容されて配管などに取り付けられ、配管の内部を流れる流体の圧力を受けて変形し、流体圧の計測などに使用される。
このようなダイヤフラムを圧力センサーに適用した一例を図2に示す。
また、前記ダイヤフラムは、図示略のケーシング等に収容されてケーシング内部の流路を開閉するダイヤフラムバルブなどに使用される。ダイヤフラムをダイヤフラムバルブに適用した一例を図3に示す。
本形態のダイヤフラム1を形成するCo−Ni基合金は、Co:30質量%以上40質量%以下、Ni:27質量%以上36質量%以下、Cr:12質量%以上26質量%以下、Mo:8質量%以上13質量%以下、Nb:0.5質量%以上3質量%以下、Ti:0.01質量%以下、残部不可避不純物の組成を有する。
Co(コバルト)はそれ自体加工硬化能が大きく、切り欠け脆さを減じ、疲労強度を高め、高温強度を高める効果があるが、30質量%未満ではその効果が弱く、本組成では40質量%を越えるとマトリクスが硬くなり過ぎて加工困難となると共に面心立方格子相が最密六方格子相に対して不安定になるため、30質量%以上40質量%以下とした。
Niは面心立方格子相を安定化し、加工性を維持し、耐食性を高める効果があるが、本形態の合金のCo、Cr、Mo、Nbの組成範囲において、Niが27質量%未満では安定した面心立方格子相を得ることが困難であり、36質量%を越えると機械的強度が低下することから、27質量%以上36質量%以下とした。
Crは耐食性を確保するのに不可欠な成分であり、またマトリクスを強化する効果があるが、12質量%未満では優れた耐食性を得る効果が弱く、26質量%を越えると加工性および靱性が低下することから、12質量%以上26質量%以下とした。
Moはマトリクスに固溶してこれを強化する効果、加工硬化能を増大させる効果、およびCrとの共存において耐食性を高める効果があるが、8質量%未満では所望する効果が得られず、13質量%を越えると加工性が低下すること、および脆いσ相が生成しやすくなることから、8質量%以上13質量%以下とした。
Nbはマトリクスに固溶してこれを強化し、加工硬化能を増大させる効果があるが、3質量%を越えるとσ相やδ相(NiNb)が析出して靭性が低下することから、Nbを含有させる場合は0.5質量%以上3質量%以下とした。
Tiは強い脱酸、脱窒、脱硫の効果、及び鋳塊組織の微細化の効果があるが、多く含ませるとマトリックス中にTi介在物として析出し、半導体プロセスガスと反応してプロセスガスに影響を及ぼすおそれがある。
このため、Ti含有量を0.01質量%以下とすることが好ましいが、0.001質量%〜0.01質量%の範囲であることがより好ましい。また、Ti介在物を抑制することにより、疲労特性に優れ、例えば、1100MPa以上の疲労限を得ることができる。
「製造方法」
前記組成のCo−Ni基合金を真空溶解により溶製し、鍛造、熱間圧延の後、常温で最終圧延加工度20〜90%で圧延加工することにより厚さ0.13mm程度の薄板材とすることができる。この薄板材をプレス加工により必要な直径に打ち抜くことでドーム形状のドーム部2と鍔部4を有するダイヤフラム1の基本形状を得ることができる。
このダイヤフラム1において凹面側が接ガス面となるので、ポリッシング等により鏡面加工することが望ましい。例えば、凹面側を面粗度Ra0.03μm以下に加工することが好ましい。
次いで、この鏡面加工後のダイヤフラム1に300℃〜650℃、例えば、520℃で0.5時間〜5時間、例えば、2時間程度の時効処理を施す。
この時効処理により、前記組成のCo−Ni基合金について、引張り強さを向上させ、優れた伸びを有し、硬度を高めるとともに、疲労限に優れたダイヤフラム1を得ることができる。
前記時効処理後の前述の組成のCo−Ni基合金からなるダイヤフラムであるならば、引張強度が1470MPa以上、伸びが1.5%以上、硬さが500±30HvであるCo−Ni基合金ダイヤフラムを得ることができる。即ち、例えば、引張強度が1800MPaレベル、伸びが3.8%レベル、硬さが660HvレベルのCo−Ni基合金ダイヤフラムを得ることができる。また、前記組成のCo−Ni基合金からなるダイヤフラムは塩酸あるいは臭化水素などに対する耐性に優れ、これらに触れても反応が少なく、これらに触れても重量減少が少ないという優れた耐薬品性を有する。
このCo−Ni基合金ダイヤフラムに含まれているTiは0.01質量%以下であり、少ないTi含有量に調整しているために、Ti介在物が析出していない金属組織を得ることができる。
ここで表記したTi介在物が析出していない金属組織とは、デジタルマイクロスコープなどの表面拡大観察装置を用いて1000倍〜10000倍などの倍率で金属組織の表面観察を行い、粒径0.1μm以上の介在物や析出物を観察可能な状態において、粒径0.1μm以上のTi介在物を確認できないことを意味する。より詳細には、1000倍などの倍率で金属組織の表面観察を行い、粒子状の析出物を確認できたならば、更に10000倍等に格段して粒子状の析出物であるか確認する。そして、粒子状の析出物がTi介在物であるか否かは、粒子状の析出物の部分をEDS(エネルギー分散型X線分析装置)にて6000〜8000倍にて同定すればよい。
なお、前述のCo−Ni基合金に対し仮にTiを0.3質量%〜0.7質量%程度含有させたCo−Ni基合金を用い、上述と同等の手段でダイヤフラムを作製すると、後述する比較例に示す如く、0.7μm〜3.2μm程度の粒径のTi介在物が金属組織中に平均で1.3×10−4個/μm程度析出した金属組織が得られる。
このように多数のTi介在物が存在するダイヤフラムであると、半導体製造などに用いるプロセスガスなどと接するとプロセスガスを分解するなどの、化学反応を引き起こすおそれがある。
この点において先に説明した組成のダイヤフラムであるならば、金属組織内に粒径0.1μm以上のTi介在物が存在しないため、半導体製造プロセスで用いるようなプロセスガスに触れたとしてもプロセスガスに影響を与えるおそれがないため、半導体プロセスの化学的安定性に寄与するダイヤフラムを提供できる。また、上述の粒径のTi介在物を抑制することにより、疲労特性に優れ、例えば、1100MPa以上の疲労限を得ることができる。
「圧力センサー」
図2は上述の組成のCo−Ni基合金からなるダイヤフラムを圧力センサーに適用した一実施形態の構造を示す。
図2に示す圧力センサー10は、圧力測定の対象流体を導入する導入路を備えたキャップ部材5とキャップ部材5の内部に一体化されたダイヤフラム6を備えている。このダイヤフラム6は、薄肉の受圧部6Aとその外周縁を囲むように延設された筒部6Bと該筒部6Bの外周に形成された鍔部6Cとからなり、筒部6Bの内部空間が圧力室6Dとされている。
キャップ部材5は、開口部5aを有したカップ状で、開口部5aの外周側にフランジ部5bを有し、開口部5aの内周がダイヤフラム6の鍔部6Cと接合されている。キャップ部材5は、例えば、金属あるいは金属と樹脂との複合材などから構成されている。キャップ部材5の内部にはキャップ部材5とダイヤフラム6とで仕切られるように基準圧力室8が形成されている。キャップ部材5には基準ガスを導入する導入口(図示略)が形成され、この導入口から基準ガスが導入され、基準圧力室8の内圧が制御される。
図2に示すように圧力センサー10が測定対象物の流路11を形成する配管12の周壁に形成した開口部12aの周囲に取り付けられ、ダイヤフラム6の圧力室6Dに配管12内の流体が導入されると、受圧部6Aが流体の圧力を受けて変形できる。
ダイヤフラム6の受圧部6Aにおいて基準圧力室8側は平滑面、例えば鏡面に加工され、シリコン酸化膜などの絶縁膜13とブリッジ回路15が形成されている。ブリッジ回路15は図示略の4つの歪ゲージにより構成され、各歪ゲージにはコネクタ用配線16a、16b、16c、16dなどの配線16が接続されている。
基準圧力室8に基準ガスを導入して圧力室6Dに配管12の流体圧が印加されるとダイヤフラム6の受圧部6Aが変形し、この変形により4つの歪ゲージの抵抗が変化するのでブリッジ回路15により抵抗変化を計測することができ、この計測結果を演算することにより圧力室6Dの圧力を検出することができる。しかし、受圧部6Aは薄肉であり、流体の圧力を直に受けるので、ダイヤフラム6の受圧部6Aを構成するCo−Ni基合金は強度が高く、耐食性に優れていることが必要とされる。
以上説明のように高強度が要望され、腐食環境下においても優れた耐食性を要求されるダイヤフラム6の受圧部6Aを構成するCo−Ni基合金は、上述した組成を有し、高強度かつ高耐食性であるCo−Ni基合金からなる。
前述のCo−Ni基合金からなることでダイヤフラム6は機械的強度に優れ、耐食性が高く、耐薬品性に優れているので、ダイヤフラム6が流路11を流れる流体に対し影響を及ぼすことがなく、また、流体から影響を受けるおそれも少ない。
「ダイヤフラムバルブ」
図3は本発明に係るダイヤフラムをダイヤフラムバルブに適用した実施形態を示すもので、この形態のダイヤフラムバルブ20は、内部に第1流路21と第2流路22とが形成された平板状の本体23と、本体23上に設置されたダイヤフラム26と、前記本体23とともにダイヤフラム26を挟み付けている蓋体25を備えてなる。本体23の内部には、本体23の一方の側面23aから本体23の上面23bの中央部に達する第1流路21と、本体23の他方の面23cから本体23の上面23bの中央部近くに達する第2流路22が形成されている。本体23において一方の側面23aに第1流路21が開口された部分が流入口27とされ、本体23において他方の側面23cに第2流路22が開口された部分が流出口28Aとされている。
本体23の上面中央側において第1流路21が連通した部分に周段部28が形成され、この周段部28に弁座29が取り付けられている。ダイヤフラム26は先に説明したダイヤフラム1と同等のCo−Ni基合金からなり、前述したダイヤフラム1と同様にドーム部26Aと境界部26Bと鍔部26Cからなる円盤ドーム状に形成されている。
このダイヤフラム26はドーム部26Aの膨出側を上にして本体23の上面23bとの間に圧力室26aを構成するように本体23と蓋体25の間に挟持されている。
また、蓋体25の上面中央部にステム24を挿通するための貫通孔25aが形成され、ステム24がダイヤフラム26の上面中央部に接するように配置されている。
以上構成のダイヤフラムバルブ20においても、ダイヤフラム26を上述のCo−Ni基合金から構成しているので、強度が高く、耐食性に優れ、耐薬品性に優れたダイヤフラム26を備えることで、優れたダイヤフラムバルブ20を提供できる効果がある。
また、ダイヤフラム6に接する流体に対し影響を及ぼすことがなく、また、流体が腐食性の高いものであっても影響を受けるおそれも少ない。
以下の表1〜表5に示す組成のCo−Ni基合金を真空溶解により溶製し、鍛造、熱間圧延の後、常温で圧延加工することで厚さ0.13mmの薄板材を得た。この薄板材をプレス加工により直径20mmに打ち抜くことでドーム形状のドーム部と鍔部を有する図1に示すダイヤフラムと同等構造のダイヤフラムを得た。
このダイヤフラムにおいて凹面側が接ガス面となるので、ポリッシングにより面粗度Ra0.03μm以下に鏡面加工した。
次いで、この鏡面加工後のダイヤフラムに対し、520℃×2時間の時効処理を施し、目的のダイヤフラムを得た。
以下の表1〜表5に示す組成のCo−Ni基合金はそれぞれ、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3の合金である。
Figure 2019163537
Figure 2019163537
Figure 2019163537
Figure 2019163537
Figure 2019163537
「引張強度、伸び、硬さ、疲労限の測定」
実施例1、2と比較例1〜3の合金から、上述の工程によりダイヤフラムを作製した。また、実施例1、2と比較例1〜3の合金からなる薄板材を用いて引張り強さ、伸び、硬さ、疲労限を求めるとともに、ダイヤフラムの凹面側の一部を切り出して表面観察を行った。
それらの結果を以下の表6にまとめて記載する。
Figure 2019163537
表6に示す結果が示すように、Tiを0.47〜0.53質量%含有する比較例1〜3のCo−Ni基合金に対し、Tiを0.002〜0.01質量%含有する実施例1〜2の合金は、引張強さ、伸び、硬さ、疲労限において同等またはそれ以上の性能を有している。
即ち、引張強さ1800MPaレベルで同等であり、伸び3.8〜4.6%程度で同等であり、時効前硬さ500〜520Hvで同等であり、時効後硬さ660〜670Hvレベルで同等である。一方で、実施例1、2の合金は、疲労限1100MPa程度であり、より優れた(50〜125MPaの上昇)特性を有する。
なお、比較例1〜3の合金は、引張強さ、伸び、硬さ、疲労限において優れているCo−Ni基合金であるので、実施例1、2の合金は、引張強さ、伸び、硬さにおいて同等に優れ、かつ、疲労限についてより優れていることがわかった。
また、比較例3の合金には清浄度の欄に示すように0.71%の割合でTi介在物の析出が認められたので、以下に説明する介在物観察を行い、詳細に分析した。
ここで、清浄度は、次のようにして測定した。
まず、金属顕微鏡を用いて、実施例1、2及び比較例3の合金の研磨面の30箇所を個々に500倍に拡大して観察した。観察は1マスあたり10μmとして19マス×19マス観察した。このとき観察された介在物の総計を、総格子点数(19マス×19マス)×30箇所(10830個)で除した値を百分率で表した割合を清浄度とした。
「介在物観察」
実施例1、2のダイヤフラムと比較例3のダイヤフラムの凹面側について、デジタルマイクロスコープを用いて10箇所を個々に1000倍に拡大して観察した。観察は1マスあたり10μmとして19マス×19マス観察した。観察面積は36100μmに相当する。
なお、観察により多数の介在物を確認した比較例3について、観察倍率を10000倍に拡大し、介在物の粒径を測定した。また、各介在物については、物質特定のため、EDS(エネルギー分散型X線分析装置)を用いて6000倍〜8000倍に拡大し、介在物がTi介在物であるか元素特定し、選別した。その結果を以下の表7に記載する。
Figure 2019163537
比較例3のダイヤフラムは、多数の介在物を確認できたのでEDSにより元素特定したところ、Ti介在物であることを確認できた。前述の観測方法によれば、0.1μm以上の粒径のTi介在物であればその存在を確認することができる。
観測の結果、表7に示すように比較例3のダイヤフラムには多数の微細なTi介在物の析出を確認することができた。しかし、実施例1、2のダイヤフラムでは粒径0.1μm以上の大きさの観測可能なTi介在物を確認することができなかった。即ち、実施例1、2のダイヤフラムでは0.1μm以上の粒径のTi介在物は析出していないとみなすことができる。
このことから、半導体製造プロセスガスなどのような腐食性ガスの環境下、あるいは、腐食性の流体の存在下で使用しても本形態のダイヤフラムであるならば、プロセスガスへの影響が無く、半導体製造プロセスへの影響の面で問題を生じないことがわかる。
「疲労強度」
次に、実施例1と比較例3のCo−Ni基合金からなる薄板材を用いてS−N曲線を求めた結果を図4、図5に示す。図4においては実施例1の合金を合金Aと表示している。
図4と図5の対比から実施例1の合金と比較例3の合金はほぼ同等のS−N曲線を示し、同等の疲労強度を有していることがわかる。
「腐食試験」
実施例1と比較例3のダイヤフラムについて、塩酸(HCl)に対する耐食性と臭化水素(HBr)に対する耐食性を試験した。
実施例1のダイヤフラムと比較例3のダイヤフラムを複数用意し、36%塩酸と、10%塩酸と、48%HBrと、14%HBrに浸漬した場合のそれぞれの重量減少率を測定した。
浸漬時間は9、24、48Hrの場合、試料数n=1、浸漬時間72Hrの場合は試料数n=5に設定して試験した。
図6に36%塩酸に浸漬した場合の重量減少率を示し、図7に10%塩酸に浸漬した場合の重量減少率を示し、図8に48%HBrに浸漬した場合の重量減少率を示し、図9に14%HBrに浸漬した場合の重量減少率を示す。
図6〜図9に示す結果から、実施例1のCo−Ni基合金からなるダイヤフラムは、塩酸と臭化水素に対し、比較例3のCo−Ni基合金からなるダイヤフラムと同等の耐食性を示した。従って、実施例1のCo−Ni基合金からなるダイヤフラムが耐食性に優れていることがわかる。なお、図9に示す結果では重量減少率について多少の相違を生じているが、実質的な重量減少率としての相違は1%程度と小さく、いずれも優れた耐食性を有するとみなすことができる。
以上説明の結果から、実施例1のCo−Ni基合金からなるダイヤフラムは、耐食性という面で定評のある比較例のCo−Ni基合金と同等の耐食性、換言すると耐薬品性を有することが明らかである。
1…ダイヤフラム、2…ドーム部、3…境界部、4…鍔部、6…ダイヤフラム、6A…受圧部、6B…筒部、6C…鍔部、6D…圧力室、10…圧力センサー、11…流路、12…配管、12a…開口部、20…ダイヤフラムバルブ、21…第1流路、22…第2流路、24…ステム、25…蓋体、26…ダイヤフラム。

Claims (5)

  1. Co:30質量%以上40質量%以下、Ni:27質量%以上36質量%以下、Cr:12質量%以上26質量%以下、Mo:8質量%以上13質量%以下、Nb:0.5質量%以上3質量%以下、Ti:0.01質量%以下、残部不可避不純物の組成を有し、
    引張強度が1470MPa以上、伸びが1.5%以上、硬さが500±30Hvであることを特徴とするCo−Ni基合金ダイヤフラム。
  2. 疲労限が1100MPa以上である請求項1に記載のCo−Ni基合金ダイヤフラム。
  3. 金属組織中に0.1μm以上の大きさの微粒子まで判別可能な測定手段による観察でTi介在物が存在しないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のCo−Ni基合金ダイヤフラム。
  4. Co:30質量%以上40質量%以下、Ni:27質量%以上36質量%以下、Cr:12質量%以上26質量%以下、Mo:8質量%以上13質量%以下、Nb:0.5質量%以上3質量%以下、Ti:0.01質量%以下、残部不可避不純物の組成を有するCo−Ni基合金の圧延材を冷間圧延し、時効処理を施すことにより、引張強度1470MPa以上、伸び1.5%以上、硬さ500±30Hvとすることを特徴とするCo−Ni基合金ダイヤフラムの製造方法。
  5. 0.1μm以上の大きさの微粒子まで判別可能な測定手段による観察でTi介在物が存在しない金属組織を得ることを特徴とする請求項4に記載のCo−Ni基合金ダイヤフラムの製造方法。
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