JP2019162888A - サスペンション制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】故障の誤検出(誤判断)を抑制することができるサスペンション制御装置を提供する。【解決手段】減衰力調整式緩衝器21内には、作動油として電気粘性流体22が封入されている。コントローラ61は、高電圧ドライバ41を介して電気粘性流体22に印加する電圧を制御する。この場合、コントローラ61は、ばね上加速度センサ11およびばね下加速度センサ12の検出結果に基づいて緩衝器21の電極筒36に印加する目標電圧値を求める乗り心地・操縦安定性制御部62を備えている。高電圧ドライバ41は、目標電圧値を印加したときの電流値を検出する電流検出回路45と、目標電圧値と電流値の故障範囲を求め、かつ、電流値が故障範囲のとき故障と判断する故障検出部42Bとを備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば自動車等の車両に搭載されるサスペンション制御装置に関する。
自動車等の車両には、車体(ばね上)側と各車輪(ばね下)側との間に緩衝器(ダンパ)が設けられている。ここで、例えば、特許文献1には、作動流体として電気粘性流体を用いた緩衝器において、電極間の静電容量を測定して電気粘性流体の温度を推定し、この推定温度に応じて電圧を補正する技術が記載されている。一方、特許文献2には、電気粘性流体を制御する高電圧電源ユニットにおいて、駆動電流の大きさにより電極間のショートを検知し、駆動電流の急激な上昇によりスパークを検知する技術が記載されている。
特開平10−2368号公報 独国特許発明第10110609号明細書(DE10110609B4)
従来技術によれば、ショート、スパーク等の故障を誤検出(誤判断)するおそれがある。
本発明の目的は、故障の誤検出(誤判断)を抑制することができるサスペンション制御装置を提供することにある。
上述した課題を解決するため、本発明のサスペンション制御装置は、車両の挙動を検出する車両挙動検出手段と、前記車両の相対移動する2部材間に設けられた減衰力調整式緩衝器と、前記車両挙動検出手段の検出結果に基づいて前記減衰力調整式緩衝器の減衰力を調整するよう制御する制御手段と、を有するサスペンション制御装置であって、前記減衰力調整式緩衝器は、電気粘性流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に挿入されたピストンと、該ピストンに連結されて前記シリンダの外部に延出するピストンロッドと、前記シリンダ内の前記ピストンの摺動によって前記電気粘性流体の流れが生じる部分に設けられ、前記電気粘性流体に電界をかける電極と、を備え、前記制御手段は、前記車両挙動検出手段の検出結果に基づいて前記電極に印加する目標電圧値を求める目標電圧値設定手段と、前記目標電圧値設定手段により求めた目標電圧値を印加したときの電流値を検出する電流検出手段と、前記目標電圧値と前記電流値の故障範囲を求める故障範囲算出手段と、前記電流値が前記故障範囲のとき、故障と判断する故障判断手段と、を含み、前記故障判断手段は、前記電流値が前記故障範囲になってからの時間を測定する時間計測手段を有し、該時間計測手段の計測値に応じて、前記目標電圧値を補正する構成としている。
本発明のサスペンション制御装置は、故障の誤検出(誤判断)を抑制することができる。
実施形態によるサスペンション制御装置を示す模式図。 図1中の減衰力調整式緩衝器を示す縦断面図。 図1中のコントローラを示すブロック図。 図1中の高電圧ドライバを示すブロック図。 図4中の電圧制御部を示すブロック図。 高電圧ドライバ(電圧制御部)による制御処理を示す流れ図。 図6中の故障検出の処理を示す流れ図。 コントローラによる制御処理を示す流れ図。 図8中の故障判定の処理を示す流れ図。 温度毎の駆動電流と駆動電圧との関係の一例を示す特性図。 故障の判定に用いる温度毎の故障範囲を示す図10と同様の特性図。 リザーバ圧力とピストン速度との関係の一例を示す特性線図。 電気粘性流体の粘度と温度との関係の一例を示す特性線図。 リザーバ圧力の低下の判定に用いるピストン速度の検出範囲を示す図12と同様の特性線図。 故障検出回数と累積ストロークとの関係を示す特性線図。 高電圧値と抵抗と温度との関係を示す特性線図。
以下、実施形態によるサスペンション制御装置について、当該サスペンション制御装置を4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って説明する。
図1において、車体1は、車両のボディを構成している。車体1の下側には、車体1と共に車両を構成する車輪、例えば左,右の前輪と左,右の後輪(以下、総称して車輪2という)が設けられている。車輪2は、タイヤ3を含んで構成され、タイヤ3は、路面の細かい凹凸を吸収するばねとして作用する。
サスペンション装置4は、車両の相対移動する2部材間となる車体1と車輪2との間に設けられている。サスペンション装置4は、懸架ばね5(以下、ばね5という)と、該ばね5と並列になって2部材間である車体1と車輪2との間に設けられた減衰力調整式緩衝器(以下、緩衝器21という)とにより構成されている。なお、図1中では、1組のサスペンション装置4を車体1と車輪2との間に設けた場合を例示している。しかし、サスペンション装置4は、例えば4輪の車輪2と車体1との間に個別に独立して合計4組設けられるもので、このうちの1組のみを図1では模式的に示している。
サスペンション装置4の緩衝器21は、車輪2の上下動を減衰させるものである。緩衝器21は、内部に封入する作動油(作動流体)として電気粘性流体22を用いた減衰力調整式緩衝器(セミアクティブダンパ)として構成されている。即ち、緩衝器21は、電気粘性流体22が封入されたシリンダとしての内筒23および外筒24と、内筒23内に摺動可能に挿入されたピストン27と、該ピストン27に連結されて内筒23および外筒24の外部に延出するピストンロッド30と、内筒23内のピストン27の摺動によって電気粘性流体22の流れが生じる部分に設けられ該電気粘性流体22に電界をかける電極としての電極筒36とを含んで構成されている。
電気粘性流体(ERF:Electro Rheological Fluid)22は、電界(電圧)により性状が変化する機能性流体である。電気粘性流体22(以下、ERF22という)は、例えば、シリコンオイル等からなる基油(ベースオイル)と、該基油に混ぜ込まれ(分散され)電界の変化に応じて粘性を可変にする粒子(微粒子)とにより構成されている。これにより、ERF22は、印加される電圧に応じて粘度が変化し、流通抵抗(減衰力)が変化する。即ち、緩衝器21は、ERF22の流れが生じる部分に設けられた電極筒36に印加する電圧に応じて、発生減衰力の特性(減衰力特性)をハード(Hard)な特性(硬特性)からソフト(soft)な特性(軟特性)に連続的に調整することができる。なお、緩衝器21は、減衰力特性を連続的でなくとも、2段階または複数段階に調整可能なものであってもよい。緩衝器21のより詳しい構成については、後で述べる。
図1に示すように、バッテリ6は、緩衝器21の電極筒36に印加するための電源となるものである。バッテリ6は、例えば、車両の補機用バッテリとなる12Vの車載バッテリ(および、必要に応じて車載バッテリの充電を行うオルタネータ)により構成されている。バッテリ6は、高電圧ドライバ41を介して緩衝器21(電極筒36およびダンパシェルとなる外筒24)に接続されている。なお、緩衝器21の電源は、例えば、走行用の電動モータ(駆動モータ)が搭載されたハイブリッド自動車や電気自動車の場合、車両駆動用の大容量バッテリ(図示せず)を用いることもできる。
高電圧ドライバ41は、緩衝器21のERF22に印加する高電圧を発生する。このために、高電圧ドライバ41は、(低電圧)直流電力線を構成するバッテリ線(batt線)7およびグランド線(GND線)8を介して電源となるバッテリ6に接続されている。これと共に、高電圧ドライバ41は、(高電圧)直流電力線を構成する高電圧出力線9およびグランド線(GND線)10を介して緩衝器21(電極筒36およびダンパシェルとなる外筒24)に接続されている。
高電圧ドライバ41は、マイクロコンピュータ、昇圧回路等を含んで構成されている。高電圧ドライバ41(の電圧制御部42)は、コントローラ61と共に制御手段を構成している。高電圧ドライバ41は、コントローラ61から出力される指令(高電圧指令)に基づいて、バッテリ6から出力される直流電圧を昇圧し、その昇圧した高電圧を緩衝器21に供給(出力)する。また、高電圧ドライバ41は、緩衝器21に供給される高電圧、即ち、高電圧ドライバ41で昇圧された後の電圧をモニタ(監視)し、その高電圧のモニタ信号(高電圧モニタ信号)を、高電圧モニタ値(高電圧値)としてコントローラ61に出力する。
また、高電圧ドライバ41は、緩衝器21に供給される電流、即ち、高電圧ドライバ41で昇圧された後の電流をモニタ(監視)し、その電流のモニタ信号(高電圧電流モニタ信号)を、高電圧電流モニタ値(高電圧電流値)としてコントローラ61に出力する。さらに、高電圧ドライバ41は、後述する故障情報信号も、コントローラ61に出力する。なお、高電圧ドライバ41の構成については、後で詳しく述べる。
ばね上加速度センサ11は、車体1側に設けられる。具体的には、ばね上加速度センサ11は、例えば緩衝器21の近傍となる位置で車体1に取付けられる。そして、ばね上加速度センサ11は、所謂ばね上側となる車体1側で上下方向の振動加速度を検出し、その検出信号(即ち、ばね上加速度)を後述のコントローラ61に出力する。
ばね下加速度センサ12は、車両の車輪2側に設けられる。ばね下加速度センサ12は、所謂ばね下側となる車輪2側で上下方向の振動加速度を検出し、その検出信号(即ち、ばね下加速度)を後述のコントローラ61に出力する。このとき、ばね上加速度センサ11およびばね下加速度センサ12は、車両の挙動(より具体的には、車両の上下方向の運動に関する状態量)を検出する車両挙動検出手段(より具体的には、上下運動検出手段)を構成している。
なお、車両挙動検出手段は、緩衝器21の近傍に設けたばね上加速度センサ11およびばね下加速度センサ12に限らず、例えば、ばね上加速度センサ11のみでもよく、また、車高センサ(図示せず)でもよい。さらには、車輪2の回転速度を検出する車輪速センサ(図示せず)等、加速度センサ11,12、車高センサ以外の車両の挙動(状態量)を検出する車両挙動検出センサでもよい。この場合に、例えば、1個のばね上加速度センサ11の情報(加速度)と車輪速センサの情報(車輪速)から各車輪2毎の上下運動を推定することで、車両の上下運動を検出する構成としてもよい。
コントローラ61は、例えばマイクロコンピュータ等からなり、高電圧ドライバ41(の電圧制御部42)と共に制御手段を構成している。コントローラ61は、ばね上加速度センサ11およびばね下加速度センサ12の検出結果に基づいて、緩衝器21の減衰力を調整するように制御する。即ち、コントローラ61は、ばね上加速度センサ11とばね下加速度センサ12より得た情報から、後述する演算処理に基づいて、高電圧ドライバ41に出力する指令、即ち、高電圧指令を算出し、減衰力可変ダンパである緩衝器21を制御する。
ここで、コントローラ61には、ばね上加速度センサ11から出力されるばね上加速度信号、ばね下加速度センサ12から出力されるばね下加速度信号に加え、高電圧ドライバ41から出力される高電圧モニタ信号、高電圧電流モニタ信号等が入力される。コントローラ61は、車両の挙動情報(車両挙動信号)となるばね上加速度信号およびばね下加速度信号と、緩衝器21の電力情報(緩衝器電力信号)となる高電圧モニタ信号および高電圧電流モニタ信号とに基づき、緩衝器21で出力すべき力(減衰力)に対応する高電圧指令を算出する。コントローラ61は、その算出した高電圧指令(高電圧指令信号)を高電圧ドライバ41へ出力する。
高電圧ドライバ41は、コントローラ61からの高電圧指令に基づき、その指令に応じた高電圧を緩衝器21の電極筒36に出力する。高電圧が入力された緩衝器21は、その電圧値(電極筒36と内筒23との間の電位差)の変化に応じてERF22の粘性が変化し、緩衝器21の減衰力特性を切換える(調整する)ことができる。コントローラ61の構成については、後で詳しく述べる。
次に、緩衝器21の構成について、図1に加え、図2も参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、緩衝器21の軸方向の一端側を「下端」側とし、軸方向の他端側を「上端」側として記載するが、緩衝器21の軸方向の一端側を「上端」側とし、軸方向の他端側を「下端」側としてもよい。
図2において、緩衝器21は、内筒23、外筒24、ピストン27、ピストンロッド30、ボトムバルブ32、電極筒36等を含んで構成されている。内筒23と外筒24はシリンダを構成し、該シリンダ内には、ERF22が封入されている。なお、図1および図2では、封入されているERF22を無色透明で表している。
内筒23は、軸方向に延びる円筒状の筒体として形成されている。内筒23の内部には、ピストンロッド30が挿入されている。内筒23の外側には、外筒24および電極筒36が同軸となるように設けられている。内筒23には、電極通路38に常時連通する油穴23Aが径方向の横孔として周方向に離間して複数(例えば、4個)形成されている。即ち、内筒23内のロッド側油室Bは、油穴23Aによって電極通路38と連通している。
外筒24は、緩衝器21の外殻をなすもので、円筒体として形成されている。外筒24は、電極筒36の外周に設けられており、該電極筒36との間に電極通路38と連通するリザーバ室Aを形成している。この場合、外筒24は、その下端側がボトムキャップ25により閉塞された閉塞端となっている。外筒24の上端側は、開口端となっている。外筒24の開口端側には、ピストンロッド30との間を液密、気密に封止(シール)するシール部材26が設けられている。
内筒23と外筒24との間、より具体的には、電極筒36と外筒24との間には、リザーバとなる環状のリザーバ室Aが形成されている。リザーバ室A内には、ERF22と共に、作動気体となるガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、また圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。リザーバ室A内のガスは、ピストンロッド30の縮小(縮み行程)時に、当該ピストンロッド30の進入体積分を補償すべく圧縮される。
ピストン27は、内筒23内に摺動可能に設けられている。ピストン27は、内筒23内を第1室となるロッド側油室Bと第2室となるボトム側油室Cとに分けている。ピストン27には、ロッド側油室Bとボトム側油室Cとを連通可能とする油路27A,27Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成されている。
ここで、実施形態による緩衝器21は、ユニフロー構造となっている。このため、内筒23内のERF22は、ピストンロッド30の縮み行程と伸び行程との両行程で、ロッド側油室B(即ち、内筒23の油穴23A)から電極通路38に向けて常に一方向(即ち、図2中に二点鎖線で示す矢印Fの方向)に流通する。
このようなユニフロー構造を実現するため、ピストン27の上端面には、ピストンロッド30の縮小行程(縮み行程)でピストン27が内筒23内を下向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する縮み側逆止弁28が設けられている。縮み側逆止弁28は、ボトム側油室C内の油液(ERF22)がロッド側油室Bに向けて各油路27A内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止する。
ピストン27の下端面には、伸長側のディスクバルブ29が設けられている。伸長側のディスクバルブ29は、ピストンロッド30の伸長行程(伸び行程)でピストン27が内筒23内を上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室B内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を、各油路27Bを介してボトム側油室C側にリリーフする。
ピストンロッド30は、その下端が内筒23内でピストン27に連結(固定)され、その上端がロッド側油室Bを通って内筒23および外筒24の外部へ延出されている。この場合、ピストンロッド30の上端側は、ロッドガイド31を介して外部に突出している。ロッドガイド31は、その内周側でピストンロッド30を軸方向に摺動可能に案内(ガイド)する。
内筒23の下端側には、ボトムバルブ32が設けられている。ボトムバルブ32は、ボトム側油室Cとリザーバ室Aとを連通・遮断するものである。このために、ボトムバルブ32は、バルブボディ33と、伸び側逆止弁34と、ディスクバルブ35とを含んで構成されている。
バルブボディ33は、ボトムキャップ25と内筒23との間でリザーバ室Aとボトム側油室Cとを画成する。バルブボディ33には、リザーバ室Aとボトム側油室Cとを連通可能とする油路33A,33Bがそれぞれ周方向に間隔をあけて形成されている。
伸び側逆止弁34は、例えば、バルブボディ33の上面側に設けられている。伸び側逆止弁34は、ピストンロッド30の伸長行程でピストン27が上向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する。伸び側逆止弁34は、リザーバ室A内の油液(ERF22)がボトム側油室Cに向けて各油路33A内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止する。
縮小側のディスクバルブ35は、バルブボディ33の下面側に設けられている。縮小側のディスクバルブ35は、ピストンロッド30の縮小行程でピストン27が下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室C内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を、各油路33Bを介してリザーバ室A側にリリーフする。
内筒23と外筒24との間には、軸方向に延びる圧力管からなる電極筒36が設けられている。電極筒36は、ロッドガイド31とバルブボディ33とに対して保持部材37,37を介して支持されている。保持部材37,37は、例えば電気絶縁性材料(アイソレータ)により形成されている。上側の保持部材37は、内筒23およびロッドガイド31と電極筒36との間を電気的に絶縁した状態に保っている。下側の保持部材37は、内筒23およびバルブボディ33と電極筒36との間を電気的に絶縁した状態に保っている。下側の保持部材37には、電極通路38をリザーバ室Aに対して連通させる複数の油路37Aが形成されている。
電極筒36は、内筒23と外筒24との間の中間筒となるものである。電極筒36は、導電性材料を用いて形成され、筒状の電極を構成している。即ち、電極筒36は、高電圧ドライバ41と高電圧出力線9を介して接続されている。電極筒36は、内筒23との間にロッド側油室Bと連通する電極通路38を形成している。即ち、電極筒36は、内筒23の外周側を全周にわたって取囲むことにより、電極筒36の内周側と内筒23の外周側との間に環状の電極通路38を形成している。電極通路38は、ERF22が流通する通路であり、ピストン27の摺動によってERF22の流れが生じる。
即ち、電極通路38内のERF22は、ピストンロッド30が内筒23内を進退動するとき(即ち、縮み行程と伸び行程を繰返す間)に、この進退動により電極通路38の軸方向の上端側から下端側に向けて流動する。そして、電極通路38内に流入したERF22は、電極筒36の下端側から保持部材37の油路37Aを介してリザーバ室Aへと流出する。このとき、電極通路38内には、電極筒36に印加される電圧に応じた電位差が発生し、ERF22の粘度が変化する。即ち、緩衝器21は、内筒23と電極筒36との間の電極通路38内に電位差を発生させ、該電極通路38を通過するERF22の粘度を制御することで、発生減衰力を制御(調整)することができる。
このように、緩衝器21は、シリコン系のオイルにポリウレタンが含有されたERF22に高電圧を印加することにより粘性を変化させ、減衰力を可変とするセミアクティブダンパである。一方、ERF22は、温度に対する特性変化が大きい。即ち、ERF22は、温度依存性が高い(温度に対して電気抵抗が指数関数的に減少する)ため、駆動電圧が一定でも、温度により駆動電流が変化する。
このため、例えば、緩衝器21の損傷やERF22へのコンタミ混入等に起因した緩衝器21内の電極間ショートやスパークの故障検出を行う場合に、単に駆動電圧や電流を用いるだけでは、誤検出する可能性がある。即ち、駆動電流を検出して故障検出(故障判定)を行う場合、ERF22は温度依存性が高く、駆動電圧が一定でも温度によって駆動電流が変化することから、故障の誤検出(故障の誤判定)をする可能性がある。
また、例えば、アンチロール制御を行っているときは、指令電圧を急激に上昇させるため、駆動電流が急変する。このとき、前述の特許文献2に記載された技術の場合は、駆動電流の急変をスパークの故障と誤検出(誤判定)するおそれがある。しかも、特許文献2に記載された技術は、スパーク検出後に出力を停止する。このため、例えば、経時によりスパークが増加したときに、頻繁に駆動が停止される可能性がある。即ち、気泡や水、埃、塵等のERF22へのコンタミ混入は、緩衝器21のシール性に起因し、経時、即ち、不可避的な経年劣化に伴って進行する。このため、スパーク検出後に出力を停止する処理を行うと、経時により頻繁に駆動が停止されることになる。
さらに、緩衝器21の上室(ロッド側油室B)と下室(ボトム側油室C)との体積補償のためにリザーバ室Aに低圧ガスを封入する場合、シール性に起因して、経時によりガス漏れが進行することがある。この場合、ガス漏れによりキャビテーションが促進され、キャビテーションによる気泡がERF22に混入し、スパークとして検出される。このとき、スパーク検出後に出力を停止する処理を行うと、この面からも、経時により頻繁に駆動が停止されることになる。また、キャビテーションが発生すると、減衰力の低下や部品の損傷に繋がる可能性もある。
そこで、実施形態では、後述するように、緩衝器21の制御範囲(駆動電流の範囲)以外を、故障の検出範囲(故障と判定する範囲)とすることで、緩衝器21内の電極間ショートやスパークを誤検出なく検出できるように構成している。これと共に、実施形態では、ショートやスパークの検出結果に応じて、制御量を段階的に低減する、または、0にするフェールセーフ機能(目標電圧値の補正)を備えている。即ち、実施形態では、故障(スパーク)を検出した場合に、段階的に検出閾値を変更すると共に、緩衝器21の制御量を低減し、最終的に0とすることにより、経時変化による誤検出、キャビテーション発生の抑制を図っている。換言すれば、実施形態では、減衰力特性の劣化や部品の損傷を抑制すると共に、経年劣化してもその経年劣化したダンパ性能の範囲内で作動を継続できるように構成している。
図10は、緩衝器21の制御範囲における駆動電圧と駆動電流との関係を示している。図10に示すように、ERF22は、温度に応じて駆動電圧と駆動電流との関係が異なる。実施形態では、制御範囲の上限以上の領域(図10でドットを付した領域)を電極間ショート、スパークが発生する故障範囲と設定し、駆動電圧と駆動電流が設定した故障範囲内の場合に故障と判定する。この場合、図11に示すように、ERF22の温度に応じて、故障と判断する故障範囲(ドットを付した範囲)を設定する。即ち、実施形態では、ERF22の温度が低下する程、故障範囲をAの領域からEの領域まで順次大きくする。例えば、ERF22の温度が60℃〜100℃のときは、故障範囲をAの領域とする。例えば、ERF22の温度が0℃のときは、故障範囲をA+B+C+D+Eの領域とする。このように、検出される電流値が、ERF22の温度に応じた故障範囲内のとき(故障範囲内に入ったとき)に、故障と判断することにより、誤検出、検出もれを抑制することができる。
一方、緩衝器21の電極間(例えば、電極筒36と内筒23との間)で高電流が発生する異常は、緩衝器21の損傷等に起因して電極間が接触(タッチ)することによる「ショート」と、気泡(キャビテーション)や水、埃、塵等のコンタミ(コンタミナント:汚染物質)がERF22に混入し高電圧の印加により放電する「スパーク」がある。コンタミに起因するスパークでは、高電流が発生する時間が短い。そこで、実施形態では、駆動電圧と電流が故障範囲内になっている時間を計測し、この時間が設定時間以上であればショート、それ以外は、スパークとすることで、故障要因を切り分ける。
次に、図2を参照しつつキャビテーションの発生状況を説明する。伸び行程において、ピストン27の下室となるボトム側油室Cには、リザーバ室AからのERF22がボトムバルブ32を通じて流入する。このとき、ボトム側油室Cの圧力が負圧になると、ボトムバルブ32付近から気泡が発生し、これをキャビテーションという。一方、リザーバ室Aには、ガスによって圧力が加えられている。リザーバ室Aの圧力(リザーバ圧力)を「Pr」とし、ボトム側油室Cの圧力を「P」とすると、ボトムバルブ32通過時のERF22の圧力差とピストン速度vの関係は、下記の数1式となる。この場合、「ρ」は粘度であり、「C」は流量係数であり、「Ar」はピストンロッド断面積であり、「a」はボトムバルブ32の流路面積である。
Figure 2019162888
そして、ボトム側油室Cの圧力Pが0のときは、数1式は、下記の数2式となる。
Figure 2019162888
数2式から明らかなように、ボトム側油室Cの圧力Pが0のときは、リザーバ圧力Prは、ピストン速度vの二乗に比例し、図12の「P−V特性」となる。図12は、ピストン速度Vとリザーバ圧力Pとの関係を示している。図12中、実線の特性線81は粘度が高いときのP−V特性であり、破線の特性線82は粘度が低いときのP−V特性である。そして、キャビテーションは、リザーバ圧力以上で、かつ、P−V特性の右側の領域、例えば、図12でドットを付した領域で発生することになる。この場合、経時変化によるガス漏れによってリザーバ圧力が低下すると、キャビテーションが発生する領域が広がる。
また、リザーバ圧力と粘度は比例関係である。ここで、図13は、ERF22の温度と粘度との関係を示している。この図13に示すように、ERF22に高電圧を印加すると高粘度となる。そして、高粘度となると、キャビテーションが発生する領域が広がる。
実施形態では、図14に示すように、P−V特性と圧力閾値との交点のピストン速度以下でスパークが検出された場合、即ち、図14でドットを付した領域(検出範囲)のピストン速度でスパークが検出された場合、ガス漏れが進行し、気泡のコンタミが混入したと判定する。この場合には、ERF22の低粘度化によるキャビテーションの発生の低減を図るべく、段階的に緩衝器21の制御量を低減する。即ち、高電圧指令の電圧を下げ、ERF22の低粘を低くすることにより、キャビテーションが発生するピストン速度を高くし、キャビテーションの発生を低減する。さらに、段階的に圧力閾値を低減する(検出範囲を低速側にする)ことで、誤検出を抑制する(経年劣化を考慮して、段階的に検出しにくくする)。一方、図14でドットを付した領域(検出範囲)よりも高速側のピストン速度でスパークが検出された場合は、高速でピストンが変位していることでキャビテーションが発生していると考えられる。そこで、例えば、キャビテーションを抑制すべく、一時的に制御量を0にする。これにより、キャビテーションによる減衰力の低下や部品の損傷を抑制することができる。
次に、図15は、緩衝器21の作動量(累積ストローク)とコンタミが電極間を通過する回数(故障検出回数)との関係を示している。ここで、この関係を、検出頻度確率とする。例えば、コンタミが1個の場合、故障検出回数が1のときの累積ストロークは、緩衝器21内の全ERF22を電極部(電極通路38)に流入させるためのダンパ作動量となる。経時変化によりコンタミが増加すると、検出頻度確率の傾きは増加し、同じ作動量では、故障検出回数が増えることになる。なお、キャビテーションによる気泡は、時間の経過とともに消滅し、気泡以外のコンタミ、例えば、埃、塵等の異物は、緩衝器21内に残存する。
実施形態では、図15に示す検出頻度確率の線図に基づいて、ある一定時間内の累積ストロークから故障検出回数を求め、同じ時間内にスパークが検出された回数と比較する。スパークの検出回数が故障検出回数以上の場合には、コンタミが増加、または、同じコンタミが電極間を通過していることになるため、コンタミが混入したと判定し、それ以外の場合は、コンタミによるスパークでないとして誤検出を抑制する。そして、スパークの検出回数が故障検出回数以上の場合(コンタミが混入したと判定した場合)は、スパークの発生低減を図るべく、段階的に緩衝器21の制御量を低減する。即ち、高電圧指令の電圧を下げ、スパークの発生を低減する。さらに、検出異頻度確率の傾きを段階的に増加することで、誤検出を抑制する(経年劣化を考慮して、段階的に検出しにくくする)。
次に、実施形態のコントローラ61について、図1および図2に加え、図3も参照しつつ説明する。
図3に示すように、コントローラ61は、乗り心地・操縦安定性制御部62と、相対速度算出部63と、相対変位算出部64と、温度算出部65と、故障判定部66と、指令値補正部67とを含んで構成されている。コントローラ61は、例えば、演算装置に加え、フラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなるメモリ(いずれも図示せず)を有し、メモリには、図16に示す温度算出マップ、図12ないし図14に示す検出範囲設定マップ、図15に示す検出頻度確率マップ、図8および図9に示す処理フローを実行するための処理プログラム等が格納されている。
乗り心地・操縦安定性制御部62には、ばね上加速度センサ11からのばね上加速度と、ばね下加速度センサ12からのばね下加速度と、必要に応じて温度算出部65からの温度とが入力される。乗り心地・操縦安定性制御部62は、ばね上加速度およびばね下加速度を用いて車両挙動を算出する。乗り心地・操縦安定性制御部62は、乗り心地と操縦安定性能の向上を図るべく、例えばスカイフック制御則を用いて目標減衰力を演算し、目標減衰力が発生するように目標電圧を算出する。乗り心地・操縦安定性制御部62は、算出した目標電圧(目標電圧信号)を指令値補正部67に出力する。
なお、目標減衰力を算出する制御則としては、スカイフック制御に限らず、例えば、最適制御、H∞制御等のフィードバック制御を用いることができる。また、制御指令として目標減衰力を用いているが、目標減衰係数を用いる構成としてもよい。さらに、目標電圧は、温度算出部65からの温度を用いて補正することもできる。例えば、目標電圧は、ERF22により実際に発生する減衰力がERF22の基準温度(例えば標準温度)において発生する基準減衰力に近付くように、そのとき(現在)の温度に応じて補正することができる。この場合には、ERF22の温度変化に伴う減衰力特性の変化(緩衝器21の特性変化)を考慮した目標電圧を、指令値補正部67に出力することができる。
相対速度算出部63には、ばね上加速度とばね下加速度が入力される。相対速度算出部63は、ばね下加速度とばね上加速度との差分から車体1と車輪2との間の上下方向の相対加速度を算出し、この相対加速度を積分することで車体1と車輪2との間の上下方向の相対速度(=緩衝器21のピストン速度)を算出する。相対速度算出部63は、算出したピストン速度(ピストン速度信号)を故障判定部66に出力する。
相対変位算出部64には、ばね上加速度とばね下加速度が入力される。相対変位算出部64は、ばね下加速度とばね上加速度との差分から車体1と車輪2との間の上下方向の相対加速度を算出し、この相対加速度を2階積分することで車体1と車輪2との間の上下方向の相対変位(=緩衝器21のストローク)を算出する。相対変位算出部64は、算出したストローク(ストローク信号)を故障判定部66に出力する。
温度算出部65は、ERF22の温度の算出(推定)を行う。温度算出部65には、高電圧ドライバ41からの高電圧モニタ値および高電圧電流モニタ値が入力される。温度算出部65は、高電圧モニタ値と高電圧電流モニタ値とに基づいて、ERF22の温度を算出(推定)する。即ち、温度算出部65は、高電圧モニタ値と高電圧電流モニタ値とに基づいてERF22の抵抗値を算出する。具体的には、高電圧モニタ値を高電圧電流モニタ値で除算することにより、ERF22の抵抗値を算出する。
温度算出部65は、ERF22の抵抗値と高電圧モニタ値とから温度算出マップに基づいて、ERF22の温度を推定する。温度算出マップは、例えば、図16に示すように、ERF22の「抵抗値」と「温度」と印加される「高電圧値」との関係(特性)に対応するマップとすることができる。温度算出マップは、予め実験、シミュレーション等により求めておき、コントローラ61のメモリに記憶しておく。温度算出部65は、温度算出マップを用いて、そのとき(現在)の抵抗値と高電圧値(高電圧モニタ値)とから、ERF22の温度を算出(推定)する。温度算出部65は、算出した温度(温度信号)を故障判定部66(および乗り心地・操縦安定性制御部62)に出力する。なお、実施形態では、温度の推定(算出)に、ERF22の抵抗値と温度と印加される高電圧値との関係(特性)に対応するマップを用いているが、マップに限定されるものではなく、例えば、抵抗値と温度と高電圧値の関係に対応する計算式(関数)、配列等を用いてもよい。
故障判定部66は、緩衝器21の故障判定、具体的には、スパーク故障に関するコンタミ混入とリザーバ室A内の気体の圧力の低下とについての故障判定を行う。故障判定部66には、相対速度算出部63からのピストン速度と、相対変位算出部64からのストロークと、温度算出部65からの温度と、高電圧ドライバ41からの高電圧モニタ値および故障情報とが入力される。故障判定部66は、ピストン速度とストロークと温度と高電圧モニタ値と故障情報とに基づいて故障を判定する。具体的には、故障判定部66は、故障の判定結果としての補正値(即ち、目標電圧に対する補正値であり、例えば、0以上1以下の数値)を算出する。故障判定部66は、算出された補正値(補正値信号)を指令値補正部67に出力する。なお、故障判定部66で行われる制御処理については、後で詳しく説明する。
指令値補正部67は、高電圧ドライバ41に出力する高電圧指令を算出する。指令値補正部67には、乗り心地・操縦安定性制御部62からの目標電圧と故障判定部66からの補正値が入力される。指令値補正部67は、目標電圧に補正値を乗算することにより高電圧指令を算出する。指令値補正部67は、算出された高電圧指令(高電圧指令信号)を高電圧ドライバ41に出力する。
次に、実施形態の高電圧ドライバ41について、図1ないし図3に加え、図4および図5も参照しつつ説明する。
図4に示すように、高電圧ドライバ41は、電圧制御部42と、電圧F/B回路43と、昇圧回路44と、電流検出回路45とを含んで構成されている。
電圧制御部42は、例えば、マイクロコンピュータにより構成されている。電圧制御部42は、例えば、演算装置に加え、フラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなるメモリ(いずれも図示せず)を有し、メモリには、図16に示す温度算出マップ、図11に示す故障範囲設定マップ、図6および図7に示す処理フローを実行するための処理プログラム等が格納されている。電圧制御部42には、コントローラ61(の指令値補正部67)から出力される高電圧指令と、電流検出回路45から出力される高電圧電流モニタ値と、昇圧回路44から出力される高電圧出力に対応する高電圧モニタ値が入力される。電圧制御部42は、コントローラ61からの高電圧指令に基づいて、昇圧回路44に出力する電圧制御量を算出する。また、電圧制御部42は、高電圧電流モニタ値と高電圧モニタ値とに基づいて、コントローラ61に出力する故障情報を検出する。
このために、図5に示すように、電圧制御部42は、温度算出部42Aと、故障検出部42Bと、制御量補正部42Cとを含んで構成されている。温度算出部42Aには、高電圧モニタ値と高電圧電流モニタ値とが入力される。温度算出部42Aは、コントローラ61の温度算出部65と同様に、高電圧モニタ値と高電圧電流モニタ値とに基づいて、ERF22の温度を算出(推定)する。即ち、温度算出部42Aは、高電圧モニタ値と高電圧電流モニタ値とに基づいてERF22の抵抗値を算出すると共に、電圧制御部42のメモリに記憶された温度算出マップ(図16)を用いて、そのとき(現在)の抵抗値と高電圧値(高電圧モニタ値)とからERF22の温度を算出(推定)する。温度算出部42Aは、算出した温度(温度信号)を故障検出部42Bに出力する。
故障検出部42Bは、緩衝器21の故障判定、具体的には、故障の検出と故障要因の切り分け(スパークとショートの切り分け)を行う。故障検出部42Bには、高電圧モニタ値と高電圧電流モニタ値とに加えて、温度算出部42Aからの温度が入力される。故障検出部42Bは、高電圧モニタ値と高電圧電流モニタ値と温度とに基づいて故障を検出する。具体的には、故障検出部42Bは、故障の検出結果としての故障情報と補正値(高電圧指令に対する補正値であり、例えば、0以上1以下の数値)とを算出する。故障検出部42Bは、算出された故障情報(故障情報信号)をコントローラ61に出力する。また、故障検出部42Bは、算出された補正値(補正値信号)を制御量補正部42Cに出力する。なお、故障検出部42Bで行われる制御処理については、後で詳しく説明する。
制御量補正部42Cは、昇圧回路44(より具体的には、電圧F/B回路43)に出力する電圧制御量を算出する。制御量補正部42Cには、コントローラ61(の指令値補正部67)からの高電圧指令と故障検出部42Bからの補正値が入力される。制御量補正部42Cは、高電圧指令に補正値を乗算することにより電圧制御量を算出する。制御量補正部42Cは、算出された電圧制御量(電圧制御量信号)を昇圧回路44(より具体的には、電圧F/B回路43)に出力する。
電圧フィードバック回路である電圧F/B回路43には、昇圧回路44から出力される高電圧出力に対応する高電圧モニタ値と、電圧制御部42(の制御量補正部42C)からの電圧制御量とが入力される。電圧F/B回路43は、例えば、高電圧モニタ値と電圧制御量とから、これらの偏差を算出する。電圧F/B回路43は、その偏差をなくすように、昇圧回路44に対して、緩衝器21の電極筒36に印加すべき高電圧に対応する昇圧指令(昇圧指令信号)を出力する。
昇圧回路44は、バッテリ6の直流電圧を昇圧して緩衝器21に出力する。昇圧回路44は、バッテリ線7およびグランド線8を介してバッテリ6に接続されており、高電圧出力線9およびグランド線10を介して緩衝器21(電極筒36およびダンパシェルとなる外筒24)に接続されている。昇圧回路44には、電圧制御部42(の制御量補正部42C)から出力された電圧制御量が、電圧F/B回路43を介して入力される。即ち、昇圧回路44には、緩衝器21の電極筒36に印加すべき高電圧に対応する昇圧指令が、電圧F/B回路43を介して入力される。昇圧回路44は、昇圧指令に応じた高電圧を電極筒36に印加する。
電流検出回路45は、昇圧回路44と緩衝器21との間(グランド線10側)に設けられている。電流検出回路45は、高電圧電流、即ち、昇圧回路44により昇圧された後の電流値を検出し、その電流値である高電圧電流モニタ値を、電圧制御部42とコントローラ61(の温度算出部65)とに出力する。さらに、高電圧ドライバ51は、昇圧回路44から出力される高電圧出力に対応する高電圧モニタ値を、コントローラ61(の温度算出部65および故障判定部66)に出力する。高電圧ドライバ41は、電圧制御部42で算出した電圧制御量に応じて、電圧F/B回路43と昇圧回路44とにより電圧を制御し、緩衝器21(の電極筒36)に出力する。
ここで、実施形態では、故障の検出と故障要因の切り分けを高電圧ドライバ41(の故障検出部42B)にて処理し、切り分けられたスパーク故障に関するコンタミ混入およびリザーバ室A内の気体の圧力の低下についての故障判定をコントローラ61(の故障判定部66)にて処理する構成としている。これは、スパークの検出およびショート検出後の処理には応答性が要求されるため、比較的演算負荷が少なく、緩衝器21の信号を直接やり取りする高電圧ドライバ41が適しているためである。しかし、これに限定されず、例えば、故障の検出と故障要因の切り分けをコントローラ61で処理し、故障判定を高電圧ドライバ41で処理する構成でもよい。また、故障の検出と故障要因の切り分けと故障判定とを、高電圧ドライバ41のみ、または、コントローラ61のみで処理する構成としてもよい。
次に、高電圧ドライバ41で行われる制御処理、即ち、故障の検出と故障要因の切り分けの処理を含む高電圧ドライバ41の処理フローについて、図6および図7を参照しつつ説明する。図6(および図7)の制御処理は、例えば、高電圧ドライバ41に通電している間、所定の制御周期で繰り返し実行される。
図6に示す制御処理が車両のエンジン始動に伴う電力供給を受けて開始されると、S1では、高電圧ドライバ41(より具体的には、電圧制御部42)の初期設定を行う。そして、S2では、例えば5−10ms程度の制御周期に達したか否かを判定し、「NO」と判定する間は制御周期に達するまで待機する。一方、S2で「YES」と判定し、制御周期に達したときには、S3に進み、前回の制御周期で演算された電圧制御量を出力する。即ち、S3では、電圧制御部42の制御量補正部42Cで演算された電圧制御量を電圧F/B回路43に出力する。続くS4では、前回の制御周期で演算された故障情報を出力する。即ち、S4では、電圧制御部42の故障検出部42Bで演算された故障情報をコントローラ61に出力する。S5では、ポート入力を行う。即ち、S5では、コントローラ61(の指令値補正部67)から出力された高電圧指令と、電流検出回路45から出力された高電圧電流モニタ値と、昇圧回路44から出力された高電圧出力に対応する高電圧モニタ値とが電圧制御部42に入力される。
S6では、ERF22の温度の算出を行う。即ち、S6では、S5で入力された高電圧電流モニタ値と高電圧モニタ値とに基づいて、温度算出部42AでERF22の温度の算出を行う。具体的には、高電圧モニタ値と高電圧電流モニタ値とに基づいてERF22の抵抗値を算出すると共に、この抵抗値と高電圧値(高電圧モニタ値)とから温度算出マップ(図16)を用いてERF22の温度を算出(推定)する。続くS7では、故障検出を行う。即ち、S7では、S5で入力された高電圧電流モニタ値と高電圧モニタ値とS6で算出した温度とに基づいて、故障検出部42Bで補正値および故障情報を演算する。S7の具体的な処理については後述する。
続くS8では、制御量の補正を行う。即ち、S8では、S5で入力された高電圧指令とS7で演算した補正値とに基づいて、電圧制御量を演算する。具体的には、制御量補正部42Cで、高電圧指令に補正値を乗算することにより電圧制御量を算出する。そして、S7で演算された故障情報とS8で演算された電圧制御量は、S2で「YES」と判定される制御周期に達する度毎に、次なるS3およびS4の処理で出力される。
次に、図7に示す故障検出の演算処理について説明する。図7に示す故障検出の演算処理は、図6のS7で行われる処理である。図6のS7で故障検出の処理が開始されると、図7のS11で、故障範囲を設定する。即ち、S11では、図6のS6で算出された温度から、図11に示す故障範囲設定マップの故障範囲を設定する。例えば、ERF22の温度が60℃〜100℃のときは、故障範囲をAとする。例えば、ERF22の温度が0℃のときは、故障範囲をA+B+C+D+Eとする。
続くS12では、図6のS5で入力された電圧値(高電圧モニタ値)と電流値(高電圧電流モニタ値)が、S11で設定した故障範囲内であるか否かを判定する。S12で「NO」、即ち、電圧値と電流値とが故障範囲外であると判定された場合は、S13に進む。S13では、時間計測中か否かを判定する。即ち、後述するS16の処理で時間計測が開始された後であり、かつ、S22の処理で時間計測が終了する前であるか否かを判定する。S13で「NO」、即ち、時間計測中でないと判定された場合は、故障が検出されていないため、S14,S15に進む。S14では、コントローラ61に出力する故障情報を「なし」とする。続くS15では、高電圧指令に乗算する補正値を「1」とし、故障検出終了を介して、図6のS8に進む。この場合は、S8で算出される電圧制御量は補正されない(電圧制御量=高電圧指令)。即ち、次の制御周期のS3では、高電圧指令がそのまま電圧制御量として電圧F/B回路43に出力される。また、次の制御周期のS4では、故障情報として「故障なし」がコントローラ61に出力される。
一方、S12で「YES」、即ち、電圧値と電流値とが故障範囲内であると判定された場合は、S16に進み、時間計測を開始する。すでに時間計測を開始している場合は、S12で「YES」と判定されてから前回の制御周期までの計測時間(経過時間)に、今回の制御周期の時間を加算することにより、電圧値と電流値とが故障範囲内になってからの経過時間を算出(計測)する。S16は、電流値が故障範囲になってからの時間を測定する時間計測手段に対応する。そして、S16で計測(算出)される計測時間に応じて、S17とS13の処理により、故障要因を判断する(スパークとショートとを切り分ける)。
S17では、S16で計測した計測時間が、ショート検出時間を経過したか否かを判定する。即ち、S17では、電流値が故障範囲内になってからの計測時間(経過時間)が、予め設定したショート検出時間を超えたか否かを判定する。ショート検出時間は、第1の所定時間(=第2の所定時間)に対応する。ショート検出時間は、スパークとショートとの切り分けを安定して行うことができる時間となるように、予め実験、シミュレーション等により求めておき、高電圧ドライバ41(の電圧制御部42)のメモリに記憶しておく。ショート検出時間は、例えば、1ms程度の短い時間とすることができる。
S17で「NO」、即ち、S16で計測した計測値(計測時間)がショート検出時間内の場合は、故障が検出されているが、その故障がスパークであるかショートであるかが現時点では判断できない。このため、続くS18では、故障情報を「なし」とし、S19では、高電圧指令に乗算する補正値を「1」とし、故障検出終了を介して、図6のS8に進む。この場合も、次の制御周期のS3およびS4で、高電圧指令がそのまま電圧制御量として電圧F/B回路43に出力され、かつ、故障情報として「故障なし」がコントローラ61に出力される。
一方、S17で「YES」、即ち、S16で計測した計測値(計測時間)がショート検出時間以上経過した場合は、ショートの可能性があると判断する。即ち、S20では、故障情報を「ショート」とし、S21では、高電圧指令に乗算する補正値を「0」とする。そして、続くS22で時間計測を終了し、故障検出終了を介して、図6のS8に進む。この場合は、S8で算出される電圧制御量が補正される(電圧制御量=0)。即ち、次の制御周期のS3では、コントローラ61から出力される高電圧指令に拘わらず、電圧制御量が0として電圧F/B回路43に出力される。実施形態では、故障がショートの可能性であると判断したときは、制御量を0にする。また、次の制御周期のS4では、故障情報として「ショート」がコントローラ61に出力される。
これに対して、S13で「YES」、即ち、時間計測中である判定された場合は、故障の検出により時間計測が開始されたが、ショート検出時間が経過する前に、電圧値と電流値とが故障範囲内になった場合に相当する。この場合は、S16で計測された計測値(計測時間)がショート検出時間内であるため、スパークの可能性があると判断する。即ち、S23では、故障情報を「スパーク」とし、S24では、高電圧指令に乗算する補正値を「1」とする。そして、続くS22で時間計測を終了し、故障検出終了を介して、図6のS8に進む。この場合は、次の制御周期のS3では、高電圧指令がそのまま電圧制御量として電圧F/B回路43に出力されるが、S4では、故障情報として「スパーク」がコントローラ61に出力される。即ち、実施形態では、故障がショートの可能性であると判断したときは、制御量を(補正)制限しない。
このように、図7の故障検出の処理では、電圧値と電流値とが温度に応じて設定された故障範囲内であれば、時間計測を開始し、電圧と電流とが故障範囲外になるまでの時間を計測する。そして、時間計測中にショート検出時間を経過したら、電圧と電流とが故障範囲外にならなくてもショートであるとする。この場合は、コントローラ61へ出力する故障情報を「ショート」とし、高電圧指令に乗算する補正値を0とし、制御量補正部42Cにて電圧制御量を0とする。一方、計測した時間がショート検出時間に達しない場合は、スパークであるとする。この場合は、コントローラ61へ出力する故障情報を「スパーク」とし、高電圧指令に乗算する補正値を1とし、制御量補正部42Cにて高電圧指令をそのまま電圧制御量とする。
次に、コントローラ61で行われる制御処理、即ち、リザーバ室A内の気体の圧力の低下とコンタミ混入とに関する故障判定の処理を含むコントローラ61の処理フローについて、図8および図9を参照しつつ説明する。図8(および図9)の制御処理は、例えば、コントローラ61に通電している間、所定の制御周期で繰り返し実行される。
図8に示す制御処理が車両のエンジン始動に伴う電力供給を受けて開始されると、S31では、コントローラ61の初期設定を行う。そして、S32では、例えば5−10ms程度の制御周期に達したか否かを判定し、「NO」と判定する間は制御周期に達するまで待機する。一方、S32で「YES」と判定し、制御周期に達したときには、S33に進み、前回の制御周期で演算された高電圧指令を出力する。即ち、S33では、指令値補正部67で演算された高電圧指令を高電圧ドライバ41(の電圧制御部42)に出力する。続くS34では、ポート入力を行う。即ち、S34では、ばね上加速度センサ11から出力されたばね上加速度と、ばね下加速度センサ12から出力されたばね下加速度と、高電圧ドライバ41から出力された高電圧電流モニタ値、高電圧モニタ値、故障情報とが、コントローラ61に入力される。S35では、相対速度と相対変位と温度の算出を行う。即ち、S35では、S34で入力されたばね上加速度とばね下加速度とに基づいて、相対速度算出部63で相対速度(ピストン速度)を算出し、相対変位算出部64で相対変位(ストローク)を算出する。また、S34で入力された高電圧電流モニタ値と高電圧モニタ値とに基づいて、温度算出部65でERF22の温度の算出を行う。続くS36では、乗り心地・操縦安定性制御を行う。即ち、S34で入力されたばね上加速度とばね下加速度と(必要に応じてS35で算出された温度と)に基づいて、乗り心地・操縦安定性制御部62で目標減衰力を発生させるために必要な目標電圧を算出する。続くS37では、故障判定を行う。即ち、S37では、S34で入力された高電圧モニタ値と故障情報とS35で算出したピストン速度とストロークと温度とに基づいて、故障判定部66で補正値を演算する。S37の具体的な処理については後述する。
続くS38では、指令値の補正を行う。即ち、S38では、S36で算出した目標電圧とS37で演算した補正値とに基づいて、高電圧指令を演算する。具体的には、指令値補正部67で目標電圧に補正値を乗算することにより高電圧指令を算出する。そして、S37で演算された高電圧指令は、S32で「YES」と判定される制御周期に達する度毎に、次なるS33の処理で出力される。
次に、図9に示す故障判定の演算処理について説明する。図9に示す故障判定の演算処理は、図8のS37で行われる処理である。図8のS37で故障判定の処理が開始されると、図9のS41で、故障情報がスパークであるか否かを判定する。即ち、S41では、図8のS34で高電圧ドライバ41から入力された故障情報がスパークであるか否かを判定する。S41で「NO」、即ち、故障情報がスパークでない(故障なし、または、ショートである)場合は、故障判定終了を介して、図8のS38に進む。一方、S41で「YES」、即ち、故障情報がスパークであると判定された場合は、S42に進み、検出範囲を設定する。即ち、S42では、図12のピストン速度とリザーバ圧力の関係と、図13の温度と粘度との関係と、図8のS35で算出された温度と、図8のS34で高電圧ドライバ41から入力された高電圧モニタ値とに基づいて、P−V特性を算出する。そして、P−V特性と圧力閾値から、キャビテーションを検出する範囲、即ち、リザーバ室Aの気体が減少している故障を判断するための検出範囲を設定する。この場合、例えば、圧力閾値は、初期値として、緩衝器21が新品のときの実際のリザーバ圧力とすることができる。そして、図14にドットを付して示すように、P−V特性と圧力閾値との交点のピストン速度以下の範囲を、検出範囲として設定する。
続くS43では、スパークが検出されたときのピストン速度が検出範囲内であるか否かを判定する。即ち、S43では、図8のS35で算出されたピストン速度が、S43で設定された検出範囲であるか否かを判定する。S43で「NO」、即ち、スパークが検出されたときのピストン速度が検出範囲外であると判定された場合は、S49に進む。この場合は、ピストン速度が速いことによりボトム側油室Cのボトムバルブ32付近でキャビテーションが発生したと考えられる。このため、S43で「NO」と判定された場合は、S61の処理を行ってもよい。即ち、S61では、目標電圧に乗算する補正値を一時的に0としてもよい。この場合には、補正値を所定時間0にして制御量を低減することにより、その時点でのキャビテーションの発生を抑制し、緩衝器21のダメージ(損傷)の低減を図ることができる。補正値を0とする所定時間は、キャビテーションの発生を抑制するために必要な時間として、予め実験、シミュレーション等により求めておき、コントローラ61のメモリに記憶しておく。
なお、実施形態では、S43のピストン速度として、スパークが検出されたときのピストン速度を用いている。しかし、これに限らず、例えば、キャビテーションによる気泡がボトム側油室Cで発生してから電極通路38でその気泡によるスパークが検出されるまでの時間を考慮して、スパークが検出された時点よりも所定時間前からスパークが検出されるまでの間のピストン速度の最大値を用いてもよい。
一方、S43で「YES」、即ち、スパークが検出されたときのピストン速度が検出範囲内であると判定された場合は、S44に進む。この場合は、リザーバ室Aの気体が減少している可能性があるため、S42の検出範囲の設定で用いる圧力閾値を、気体の減少の進行に伴って段階的に下げるか否かを判定するための処理に進む。即ち、S44では、キャビテーション判定回数(S44に進んだ回数、即ち、検出範囲内のピストン速度でスパークが検出された回数)が設定値以上か否かを判定する。
S44で「NO」、即ち、キャビテーション判定回数が設定値未満であると判定された場合は、S45を介することなく、S48に進む。この場合は、圧力閾値を下げない。一方、S44で「YES」、即ち、キャビテーション判定回数が設定値以上であると判定された場合は、S45に進み、圧力閾値を段階的に低減する。即ち、S45に進む毎に、圧力閾値を現時点の値(新品時であれば初期値)に対して所定量小さくする(圧力閾値を一段下げる)。キャビテーション判定回数の設定値(即ち、圧力閾値を一段下げるか否かの判定値)、および、圧力閾値を小さくする所定量(即ち、一段下げる程度)は、例えば、実際のリザーバ室Aの気体の減少の進行と同程度となるように、予め実験、シミュレーション等により求めておき、コントローラ61のメモリに記憶しておく。
S45に続くS46は、圧力閾値が設定値以下であるか否かを判定する。この判定は、S45で段階的に低減した圧力閾値が、緩衝器21の制御量を0にする必要がある程低くなったか否を判定するものである。S46で「NO」、即ち、圧力閾値が設定値以下でない(設定値を超えている)と判定された場合は、S48に進む。一方、S46で「YES」、即ち、圧力閾値が設定値以下であると判定された場合は、S47に進む。S47では、目標電圧に乗算する補正値を0とし、S49に進む。なお、設定値は、緩衝器21の制御量を0にするリザーバ圧力として、予め実験、シミュレーション等により求めておき、コントローラ61のメモリに記憶しておく。
S44で「NO」と判定され、または、S46で「NO」と判定され、S48に進むと、S48では、目標電圧に乗算する補正値を段階的に低減する。即ち、S48に進む毎に、目標電圧に乗算する補正値を現時点の値(新品時であれば1)に対して所定量小さくする(補正値を一段下げる)。補正値を小さくする所定量(即ち、一段下げる程度)は、例えば、リザーバ室Aの気体の減少の進行に伴うダンパ性能(減衰性能)の低減の範囲内で緩衝器21の制御を適正に継続できるように、予め実験、シミュレーション等により求めておき、コントローラ61のメモリに記憶しておく。
S43(S61)、S47またはS48に続くS49では、故障検出回数を算出する。即ち、S49では、図15に示す累積ストロークと故障検出回数との関係(検出頻度確率)を用いて、ある一定時間内の累積ストローク回数から故障検出回数を算出する。累積ストローク回数は、S35で算出したストロークからある一定時間内(即ち、予め設定した所定時間内)の累積ストローク回数として算出することができる。また、図15に示す検出頻度確率は、例えば、初期値として、緩衝器21が新品のときの検出頻度確率とすることができる。この新品のときの検出頻度確率は、予め実験、シミュレーション等により求めておき、コントローラ61のメモリに記憶しておく。
続くS50では、スパーク発生回数(スパーク検出回数)が故障検出回数よりも多いか否かを判定する。即ち、S50では、所定時間内のスパーク検出回数が、S49で算出した所定時間内の累積ストローク回数に応じた故障検出回数よりも多いか否かを判定する。S50で「NO」、即ち、スパーク検出回数が故障検出回数よりも多くない(故障検出回数以下である)と判定された場合は、コンタミが増大していないと考えられるため、故障判定終了を介して、図8のS38に進む。
一方、S50で「YES」、即ち、スパーク検出回数が故障検出回数よりも多い(故障検出回数を超えている)と判定された場合は、S51に進む。この場合は、コンタミが増大している可能性があるため、S49の故障検出回数の算出で用いる検出頻度確率の傾きを、コンタミの増大に伴って段階的に増加するか否かを判定するための処理に進む。即ち、S51では、コンタミ判定回数(S51に進んだ回数、即ち、コンタミ増加と判定された回数)が設定値以上か否かを判定する。S51で「NO」、即ち、コンタミ判定回数が設定値未満であると判定された場合は、S52を介することなく、S55に進む。この場合は、検出頻度確率の傾きを増大しない。一方、S51で「YES」、即ち、コンタミ判定回数が設定値以上であると判定された場合は、S52に進み、検出頻度確率の傾きを段階的に増加する。即ち、S52に進む毎に、検出頻度確率の傾きを現時点の傾き(新品時であれば初期値)に対して所定量大きくする(傾きを一段大きくする)。コンタミ判定回数の設定値(即ち、傾きを一段大きくするか否かの判定値)、および、傾きを大きくする所定量(即ち、一段大きくする程度)は、例えば、実際のコンタミの増大の進行と同程度となるように、予め実験、シミュレーション等により求めておき、コントローラ61のメモリに記憶しておく。
S52に続くS53は、検出頻度確率の傾きが設定値以上であるか否かを判定する。この判定は、S52で段階的に増大した傾きが、緩衝器21の制御量を0にする必要がある程大きくなったか否を判定するものである。S53で「NO」、即ち、検出頻度確率の傾きが設定値以上でない(設定値未満である)と判定された場合は、S55に進む。一方、S53で「YES」、即ち、検出頻度確率の傾きが設定値以上であると判定された場合は、S54に進む。S54では、目標電圧に乗算する補正値を0とし、故障判定終了を介して、図8のS38に進む。なお、設定値は、緩衝器21の制御量を0にする検出頻度確率の傾きとして、予め実験、シミュレーション等により求めておき、コントローラ61のメモリに記憶しておく。
S51で「NO」と判定され、または、S53で「NO」と判定され、S55に進むと、S55では、目標電圧に乗算する補正値を段階的に低減する。即ち、S55に進む毎に、目標電圧に乗算する補正値を現時点の値(新品時であれば1)に対して所定量小さくする(補正値を一段下げる)。補正値を小さくする所定量(即ち、一段下げる程度)は、例えば、コンタミの増大の進行に伴うダンパ性能(減衰性能)の低減の範囲内で緩衝器21の制御を適正に継続できるように、予め実験、シミュレーション等により求めておき、コントローラ61のメモリに記憶しておく。
このように、図9の故障判定の処理では、高電圧ドライバ41からの故障情報(スパーク、ショート、なし)に基づいて故障判定を行う。即ち、故障情報がスパークであると、図12のピストン速度とリザーバ圧力の関係と温度と高電圧モニタ値とに基づいてP−V特性を算出し、図14に示すように、P−V特性と圧力閾値とからキャビテーションを検出する範囲(図14でドットを付した範囲)を設定する。そして、ピストン速度が設定した検出範囲内であればキャビテーションであると判定し、目標電圧に乗算する補正値を段階的に低減する。また、キャビテーションであると判定した回数が設定値以上の場合は、ガス漏れ(リザーバ室A内の気体の圧力の低下)の可能性があるため、圧力閾値を段階的に低減する。この場合に、低減した圧力閾値が設定値以下になったときは、目標電圧に乗算する補正値を0とし、指令値補正部67にて高電圧ドライバ41への高電圧指令を0とする。
また、図9の故障判定の処理では、図15のコンタミ検出頻度(検出頻度確率)に基づいて、ある一定時間内の累積ストロークから故障検出回数を算出し、同じ時間内のスパークの故障情報の回数と比較する。スパークの検出回数が多い場合は、コンタミであると判定し、目標電圧に乗算する補正値を段階的に低減する。また、コンタミであると判定した回数が設定値以上の場合は、コンタミが増加した可能性があるため、検出頻度確率の傾きを段階的に増加する。この場合に、検出頻度確率の傾きが設定値以上になったときは、目標電圧に乗算する補正値を0とし、指令値補正部67にて高電圧ドライバ41への高電圧指令を0とする。
このように、実施形態では、故障(スパーク)を検出した場合に、段階的に検出閾値(圧力閾値、検出頻度確率)を変更すると共に、制御量を低減し、最終的に0とする。このため、経時変化による誤検出、検出もれ、キャビテーション発生の抑制を図ることができ、経年劣化したダンパ性能(減衰性能)の範囲内で作動を継続することができる。さらに、キャビテーションの発生を抑制できるため、減衰特性の劣化や部品の損傷を抑制することができる。
以上のように、実施形態では、制御手段としてのコントローラ61および高電圧ドライバ41は、目標電圧値設定手段と、電流検出手段と、故障範囲算出手段と、故障判断手段とを備えている。目標電圧値設定手段は、車両挙動検出手段(ばね上加速度センサ11およびばね下加速度センサ12)の検出結果に基づいて緩衝器21の電極筒36に印加する目標電圧値(目標電圧、高電圧指令)を求めるものである。目標電圧値設定手段は、例えば、コントローラ61の乗り心地・操縦安定性制御部62(および指令値補正部67)に対応する。また、目標電圧値設定手段は、例えば、図8のS33、S36、S38の処理に対応する。
電流検出手段は、目標電圧値設定手段により求めた目標電圧値を印加したときの電流値を検出する。電流検出手段は、例えば、高電圧ドライバ41の電流検出回路45に対応する。また、電流検出手段は、例えば、高電圧ドライバ41の電流検出回路45から出力された高電圧電流モニタ値をコントローラ61に入力する構成に対応する。また、電流検出手段は、例えば、図6のS5、図8のS34の処理に対応する。
故障範囲算出手段は、目標電圧値と電流値の故障範囲を求める。故障範囲算出手段は、例えば、高電圧ドライバ41の電圧制御部42(の故障検出部42B)に対応する。より具体的には、故障範囲算出手段は、例えば、図6のS7の処理(図7のS11の処理)に対応する。
故障判断手段は、電流値が故障範囲のとき、故障と判断する。故障判断手段は、例えば、高電圧ドライバ41の電圧制御部42(の故障検出部42B)に対応する。より具体的には、故障判断手段は、例えば、図6のS7の処理(図7のS12、S17、S20,S13,S23の処理)に対応する。この場合、故障判断手段は、電流値が故障範囲になってからの時間を測定する時間計測手段を有する。時間計測手段は、例えば、図7のS16の処理に対応する。そして、故障判断手段は、時間計測手段の計測値に応じて、目標電圧値を補正する。
具体的には、時間計測手段の計測値が第1の所定時間(=ショート検出時間)以上経過した場合、目標電圧値を0に補正する(図7のS17、S21の処理)。一方、時間計測手段の計測値が第2の所定時間(=ショート検出時間)内の場合、目標電圧値を低減させるように補正する(図7のS13、S23、図9のS41、S48、S55の処理)。なお、実施形態では、第1の所定時間と第2の所定時間とを等しくしている(即ち、第1の所定時間=第2の所定時間=ショート検出時間としている)。しかし、目標電圧値を0に補正するか否かを判定するための第1の所定時間と、目標電圧値を低減させるように補正するか否かを判定するための第2の所定時間とは、異ならせてもよい(第1の所定時間≠第2の所定時間、例えば、第1の所定時間>第2の所定時間)。
さらに、実施形態では、制御手段は、温度算出手段を備えている。温度算出手段は、ERF22の温度または該温度と相関関係を有する状態量を算出する。温度算出手段は、例えば、高電圧ドライバ41の温度検出部42Aに対応する。また、温度算出手段は、コントローラ61の温度検出部65に対応する。また、温度算出手段は、例えば、図6のS6、図8のS35の処理に対応する。この場合、温度算出手段は、例えば、電圧(高電圧モニタ値)と電流(高電圧電流モニタ値)とから、図16の温度算出マップを用いて温度を算出することができる。なお、温度算出手段は、ERF22の温度を直接算出せずに、温度と相関関係を有する状態量、例えば、ERF22の抵抗値を温度として用いてもよい。即ち、温度算出手段は、電圧(高電圧モニタ値)と電流(高電圧電流モニタ値)とからERF22の抵抗を算出する構成としてもよい。要するに、温度算出手段は、電流検出手段によって検出した電流値または電流値の関数に基づき、温度(または温度と相関関係を有する状態量)を算出することができる。さらに、温度算出手段は、ERF22の温度(または、ERF22の温度と対応関係を有する部材の温度)を直接的に検出する温度センサとしてもよい。
そして、故障範囲算出手段は、温度算出手段により求めた温度または該温度と相関関係を有する状態量に基づいて、目標電圧値と電流値の故障範囲を求める。故障範囲算出手段は、例えば、高電圧ドライバ41の電圧制御部42(の故障検出部42B)に対応する。より具体的には、故障範囲算出手段は、例えば、図6のS7の処理(図7のS11の処理)に対応する。
この場合、故障判断手段は、時間計測手段の計測値に応じて、故障要因を判断する。具体的には、時間計測手段の計測値が第1の所定時間(ショート検出時間)以上経過した場合、ショートの可能性があると判断する(図7のS17、S20の処理)。一方、時間計測手段の計測値が第1の所定時間内の場合、スパークの可能性があると判断する(図7のS13、S23の処理)。
さらに、制御手段としてのコントローラ61は、ピストン速度算出手段と、リザーバ内圧力算出手段とを備える。ピストン速度算出手段は、緩衝器21のピストン27の速度(ピストン速度)を求める。ピストン速度算出手段は、例えば、コントローラ61の相対速度算出部63に対応する。また、ピストン速度算出手段は、例えば、図8のS35の処理に対応する。リザーバ内圧力算出手段は、リザーバ室Aの圧力となるリザーバ内圧力(リザーバ圧力)を算出する。リザーバ内圧力算出手段は、例えば、図9のS42の処理に対応する。そして、故障判断手段は、ピストン速度とリザーバ内圧力とから、気体が減少している故障を判断する作動気体減少判断手段を有する。作動気体減少判定手段は、例えば、図9のS43の処理に対応する。
また、故障判断手段は、故障進行判断手段と、故障判断閾値変更手段とを備えている。故障進行判断手段は、故障と判断した回数に応じて故障の進行を判断する。故障進行判断手段は、例えば、図8のS44、S51の処理に対応する。故障判断閾値変更手段は、故障進行判断手段により判断された故障の進行の程度に応じて、故障を判断するときに用いる閾値(圧力閾値、検出頻度確率の傾き)を変化させる。故障判断閾値変更手段は、例えば、図8のS45、S52の処理に対応する。
本実施形態によるサスペンション制御装置は、上述のような構成を有するもので、次に、コントローラ61および高電圧ドライバ41を用いて緩衝器21の減衰力特性を可変に制御する処理について説明する。
コントローラ61には、車両の走行時にばね上加速度センサ11からばね上加速度に対応する検出信号が入力されると共に、ばね下加速度センサ12からばね下加速度に対応する検出信号が入力される。このとき、コントローラ61の乗り心地・操縦安定性制御部62では、ばね上加速度とばね下上速度とからスカイフック制御則等を用いて目標減衰力を演算し、目標減衰力を発生させるために必要な目標電圧を算出する。目標電圧は、コントローラ61の指令値補正部67で、コントローラ61の故障判定部66で算出された補正値と乗算され、高電圧指令としてコントローラ61から高電圧ドライバ41に出力される。
高電圧指令は、高電圧ドライバ41の電圧制御部42(の制御量補正部42C)で、高電圧ドライバ41の故障検出部42Bで算出された補正値と乗算され、電圧制御量として高電圧ドライバ41の昇圧回路44に電圧F/B回路43を介して出力される。高電圧ドライバ41の昇圧回路44は、電圧制御量に応じた電圧(高電圧)をERF22に印加(緩衝器21の電極筒36に出力)することにより、ERF22の粘性を制御する。これにより、緩衝器21の減衰力特性は、ハードな特性(硬特性)とソフトな特性(軟特性)との間で可変となって連続的に制御される。
ここで、高電圧ドライバ41の故障検出部42Bは、故障の検出と故障要因の切り分けを行う。具体的には、高電圧ドライバ41の故障検出部42Bは、温度に基づいて目標電圧値と電流値の故障範囲を設定し、電流値が故障範囲であるか否かにより故障を検出する。このとき、故障検出部42Bは、電流値が故障範囲内になってからの経過時間(計測時間)に応じて、故障がスパークであるかショートであるかを判断する。そして、故障検出部42Bがショートと判断したときは、高電圧指令に補正値として0が乗算され、制御量が0になる。
一方、コントローラ61では、高電圧ドライバ41(の故障検出部42B)にて切り分けられたスパークの故障情報から、リザーバ室A内の気体の圧力の低下とコンタミ混入についての故障判定を行う。コントローラ61の故障判定部66では、リザーバ室A内の気体の圧力の低下に伴って、目標電圧に乗算する補正値を段階的に低減することにより、制御量を段階的に低減し、最終的には制御量を0にする。このとき、故障判定部66では、リザーバ室A内の気体の圧力の低下の判定に用いる閾値(圧力閾値)を、段階的に変化(低減)させることにより、段階的に検出されにくくする。また、コントローラ61の故障判定部66では、コンタミの増加に伴って、目標電圧に乗算する補正値を段階的に低減することにより、制御量を段階的に低減し、最終的には制御量を0にする。このとき、故障判定部66では、コンタミの増加の判定に用いる閾値(検出頻度確率)を段階的に変化(増大)させることにより、段階的に検出されにくくする。
かくして、実施形態では、高電圧ドライバ41の故障検出部42Bは、図7のS16の処理により、電流値が故障範囲になってからの時間を測定し、この故障範囲になってからの経過時間となる計測時間(計測値)に応じて、目標電圧値を補正する。具体的には、図7のS17,S21の処理により、計測時間がショート検出時間(第1の所定時間)以上経過した場合は、目標電圧値を0に補正する。一方、図7のS13,S23および図9のS41,S48,S55の処理により、計測時間がショート検出時間(第2の所定時間)内の場合は、目標電圧値を低減させるように補正する。このため、故障検出部42Bは、計測時間から故障を適正に検出でき、かつ、その故障に応じた適正な目標電圧値を印加することができる。しかも、第1の所定時間および第2の所定時間に相当するショート検出時間に基づいて、即ち、計測時間がショート検出時間以上経過したか否かに基づいて、目標電圧値を適正に補正できる。
実施形態では、高電圧ドライバ41の故障検出部42Bは、温度算出部42Aで求めたERF22の温度に基づいて、目標電圧値と電流値の故障範囲(故障検出範囲)を求める。即ち、故障検出部42Bは、図7のS11の処理により、ERF22の温度(の変化に伴う特性変化)を考慮して故障範囲(図11の故障範囲)を求める。このため、故障検出部42Bは、この故障範囲から故障の判断を精度よく行うことができる。これにより、故障の誤検出(誤判断)を抑制することができる。換言すれば、温度に応じて故障範囲を設定することで、検出もれを抑制することができる。
実施形態では、高電圧ドライバ41の温度算出部42Aは、電流検出回路45によって検出した電流値に基づき温度を算出する。このため、電流値に基づいて温度の算出を精度よく行うことができる。この場合、温度の算出に温度センサを必要としないため、コストを低減することもできる。
実施形態では、高電圧ドライバ41の故障検出部42Bは、図7のS16の処理により、電流値が故障範囲になってからの時間を測定し、この故障範囲になってからの経過時間となる計測時間に応じて、故障要因を判断する。具体的には、図7のS12,S17,S20の処理により、計測時間がショート検出時間以上経過した場合は、ショートの可能性があると判断する。一方、図7のS12,S13,S23の処理により、計測時間がショート検出時間内の場合は、スパークの可能性があると判断する。このため、電流値が故障範囲になってからの時間に基づいて、故障要因の判断、即ち、故障がショートであるかスパークであるかの判断を精度よく行うことができる。
実施形態では、コントローラ61の故障判定部66は、図9のS42,S43の処理により、ピストン速度とリザーバ内圧力とから、気体が減少している故障を判断する。このため、ピストン速度とリザーバ内圧力とから、気体が減少している故障の判断を精度よく行うことができる。
実施形態では、コントローラ61の故障判定部66は、図9のS44,S45の処理により、気体が減少している故障の進行の程度に応じて、その故障を判断するときに用いる閾値(圧力閾値)を変化(低減)させる。また、コントローラ61の故障判定部66は、図9のS51,S52の処理により、コンタミが増加している故障の進行の程度に応じて、その故障を判断するときに用いる閾値(検出頻度確率の傾き)を変化(増大)させる。このため、経年劣化を考慮して故障の判定を行うことができる。
なお、実施形態では、温度算出手段(温度算出部42A,65)は、検出電流値(高電圧電流モニタ値)からERF22の温度を算出し、故障範囲算出手段(図7のS11の処理)は、ERF22の温度を用いて故障範囲を求める場合を例に挙げて説明した。即ち、実施形態では、温度を検出電流値(高電圧電流モニタ値)の関数として故障範囲を求める構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、検出電流値の関数(抵抗、電力、温度)を介することなく、検出電流値(高電圧電流モニタ値)に基づき故障範囲を求める構成としてもよい。
実施形態では、高電圧ドライバ41が昇圧する電圧を直流電圧とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、高電圧ドライバ41が昇圧する電圧を交流電圧としてもよい。
実施形態では、サスペンション装置4の緩衝器21を縦置き状態で自動車等の車両に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、緩衝器を横置き状態で鉄道車両等の車両に取付ける構成としてもよい。緩衝器21は、例えば、エアレーションを起こさない範囲で傾けて配置する等、取付対象に応じて所望の方向に配置することができる。
以上説明した実施形態に基づくサスペンション制御装置として、例えば、下記に述べる態様のものが考えられる。
(1).第1の態様としては、車両の挙動を検出する車両挙動検出手段と、車両の相対移動する2部材間に設けられた減衰力調整式緩衝器と、車両挙動検出手段の検出結果に基づいて減衰力調整式緩衝器の減衰力を調整するよう制御する制御手段と、を有するサスペンション制御装置であって、減衰力調整式緩衝器は、電気粘性流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に挿入されたピストンと、該ピストンに連結されてシリンダの外部に延出するピストンロッドと、シリンダ内のピストンの摺動によって電気粘性流体の流れが生じる部分に設けられ、電気粘性流体に電界をかける電極と、を備え、制御手段は、車両挙動検出手段の検出結果に基づいて電極に印加する目標電圧値を求める目標電圧値設定手段と、目標電圧値設定手段により求めた目標電圧値を印加したときの電流値を検出する電流検出手段と、目標電圧値と電流値の故障範囲を求める故障範囲算出手段と、電流値が故障範囲のとき、故障と判断する故障判断手段と、を含み、故障判断手段は、電流値が故障範囲になってからの時間を測定する時間計測手段を有し、該時間計測手段の計測値に応じて、目標電圧値を補正する。
この第1の態様によれば、制御手段の故障判断手段は、時間計測手段の計測値に応じて目標電圧値を補正するため、故障の誤検出(誤判断)を抑制することができる。即ち、時間計測手段の計測値から故障を適正に検出でき、かつ、その故障に応じた適正な目標電圧値を印加することができる。換言すれば、故障判断手段は、時間計測手段の計測値に応じて、故障要因を判断することができる。この場合、電流値が故障範囲になってからの時間に基づいて、故障要因の判断を精度よく行うことができる。
(2).第2の態様としては、第1の態様において、制御手段は、電気粘性流体の温度または該温度と相関関係を有する状態量を算出する温度算出手段を含み、故障範囲算出手段は、温度算出手段により求めた温度または該温度と相関関係を有する状態量に基づいて目標電圧値と電流値の故障範囲を求め、故障判断手段は、電流値が故障範囲のとき、故障と判断する。
この第2の態様によれば、制御手段の故障範囲算出手段は、電気粘性流体の温度(の変化に伴う特性変化)を考慮して目標電圧値と電流値の故障範囲を求めるため、故障判断手段は、この故障範囲から故障の判断を精度よく行うことができる。これにより、故障の誤検出(誤判断)を抑制することができる。換言すれば、温度に応じて故障範囲を設定することで、検出もれを抑制することができる。
(3).第3の態様としては、第2の態様において、温度算出手段は、電流検出手段によって検出した電流値または電流値の関数に基づき、温度を算出する。
この第3の態様によれば、電流値または電流値の関数に基づいて、温度の算出を精度よく行うことができる。この場合、温度の算出に温度センサを必要としないため、コストを低減することもできる。
(4).第4の態様としては、第1の態様乃至第3の態様の何れかにおいて、時間計測手段の計測値が第1の所定時間以上経過した場合、目標電圧値を0に補正する。この第4の態様によれば、第1の所定時間以上経過したか否かに基づいて、目標電圧値を0にすべきときに0に補正することができる。
(5).第5の態様としては、第1の態様乃至第3の態様の何れかにおいて、時間計測手段の計測値が第2の所定時間内の場合、目標電圧値を低減させるように補正する。この第5の態様によれば、第2の所定時間内であるか否かに基づいて、目標電圧値を低減すべきときに低減させるように補正することができる。
(6).第6の態様としては、第5の態様において、第1の所定時間と第2の所定時間とは等しい場合も含む。この第6の態様によれば、第1の所定時間(=第2の所定時間)以上経過したか否かに基づいて、目標電圧値を適正に補正できる。
(7).第7の態様としては、第1の態様乃至第3の態様の何れかにおいて、時間計測手段の計測値が第1の所定時間以上経過した場合、ショートの可能性があると判断する。
この第7の態様によれば、第1の所定時間以上経過したか否かに基づいて、故障要因がショートであるかそれ以外(スパーク)であるかを切り分けることができ、かつ、故障要因がショートであるとの判断を精度よく行うことができる。
(8).第8の態様としては、第1の態様乃至第3の態様の何れかにおいて、時間計測手段の計測値が第1の所定時間内の場合、スパークの可能性があると判断する。
この第8の態様によれば、第1の所定時間内であるか否かに基づいて、故障要因がスパークであるかそれ以外(ショート)であるかを切り分けることができ、かつ、故障要因がスパークであるとの判断を精度よく行うことができる。
(9).第9の態様としては、第1の態様乃至第8の態様の何れかにおいて、減衰力調整式緩衝器はリザーバを有し、該リザーバは、電気粘性流体と気体が封入されており、制御手段は、ピストン速度を求めるピストン速度算出手段と、リザーバ内圧力を算出するリザーバ内圧力算出手段とを備え、故障判断手段は、ピストン速度とリザーバ内圧力とから、気体が減少している故障を判断する作動気体減少判断手段を有する。
この第9の態様によれば、ピストン速度とリザーバ内圧力とから、気体が減少している故障の判断を精度よく行うことができる。
(10).第10の態様としては、第1の態様乃至第9の態様の何れかにおいて、故障判断手段は、故障と判断した回数に応じて故障の進行を判断する故障進行判断手段と、該故障進行判断手段により判断された故障の進行の程度に応じて、故障を判断するときに用いる閾値を変化させる故障判断閾値変更手段とを備える。
この第10の態様によれば、故障の進行の程度に応じて閾値を変化させることにより、経年劣化を考慮して故障の判定を行うことができる。
1 車体(車両の相対移動する部材)
2 車輪(車両の相対移動する部材)
11 ばね上加速度センサ(車両挙動検出手段)
12 ばね下加速度センサ(車両挙動検出手段)
21 緩衝器(減衰力調整式緩衝器)
22 ERF(電気粘性流体)
23 内筒(シリンダ)
24 外筒(シリンダ)
27 ピストン
30 ピストンロッド
36 電極筒(電極)
41 高電圧ドライバ(制御手段)
42 電圧制御部(制御手段)
42A 温度算出部(温度算出手段)
42B 故障検出部(故障範囲算出手段、故障判断手段、時間計測手段)
45 電流検出回路(電流検出手段)
61 コントローラ(制御手段)
62 乗り心地・操縦安定性制御部(目標電圧値設定手段)
63 相対速度算出部(ピストン速度算出手段)
65 温度算出部(温度算出手段)
66 故障判定部(故障判断手段、リザーバ内圧力算出手段、作動気体減少判断手段、故障進行判断手段、故障判断閾値変更手段)
A リザーバ室(リザーバ)

Claims (10)

  1. 車両の挙動を検出する車両挙動検出手段と、
    前記車両の相対移動する2部材間に設けられた減衰力調整式緩衝器と、
    前記車両挙動検出手段の検出結果に基づいて前記減衰力調整式緩衝器の減衰力を調整するよう制御する制御手段と、を有するサスペンション制御装置であって、
    前記減衰力調整式緩衝器は、
    電気粘性流体が封入されたシリンダと、
    該シリンダ内に摺動可能に挿入されたピストンと、
    該ピストンに連結されて前記シリンダの外部に延出するピストンロッドと、
    前記シリンダ内の前記ピストンの摺動によって前記電気粘性流体の流れが生じる部分に設けられ、前記電気粘性流体に電界をかける電極と、を備え、
    前記制御手段は、
    前記車両挙動検出手段の検出結果に基づいて前記電極に印加する目標電圧値を求める目標電圧値設定手段と、
    前記目標電圧値設定手段により求めた目標電圧値を印加したときの電流値を検出する電流検出手段と、
    前記目標電圧値と前記電流値の故障範囲を求める故障範囲算出手段と、
    前記電流値が前記故障範囲のとき、故障と判断する故障判断手段と、を含み、
    前記故障判断手段は、前記電流値が前記故障範囲になってからの時間を測定する時間計測手段を有し、該時間計測手段の計測値に応じて、前記目標電圧値を補正することを特徴とするサスペンション制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記電気粘性流体の温度または該温度と相関関係を有する状態量を算出する温度算出手段を含み、
    前記故障範囲算出手段は、前記温度算出手段により求めた温度または該温度と相関関係を有する状態量に基づいて前記目標電圧値と前記電流値の故障範囲を求め、
    前記故障判断手段は、前記電流値が前記故障範囲のとき、故障と判断すること特徴とする請求項1に記載のサスペンション制御装置。
  3. 前記温度算出手段は、前記電流検出手段によって検出した電流値または電流値の関数に基づき、温度を算出することを特徴とする請求項2に記載のサスペンション制御装置。
  4. 前記時間計測手段の計測値が第1の所定時間以上経過した場合、前記目標電圧値を0に補正することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のサスペンション制御装置。
  5. 前記時間計測手段の計測値が第2の所定時間内の場合、前記目標電圧値を低減させるように補正することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のサスペンション制御装置。
  6. 前記第1の所定時間と前記第2の所定時間とは等しい場合も含むことを特徴とする請求項5に記載のサスペンション制御装置。
  7. 前記時間計測手段の計測値が第1の所定時間以上経過した場合、ショートの可能性があると判断することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のサスペンション制御装置。
  8. 前記時間計測手段の計測値が第1の所定時間内の場合、スパークの可能性があると判断することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のサスペンション制御装置。
  9. 前記減衰力調整式緩衝器はリザーバを有し、該リザーバは、前記電気粘性流体と気体が封入されており、
    前記制御手段は、前記ピストン速度を求めるピストン速度算出手段と、前記リザーバ内圧力を算出するリザーバ内圧力算出手段とを備え、
    前記故障判断手段は、前記ピストン速度と前記リザーバ内圧力とから、前記気体が減少している故障を判断する作動気体減少判断手段を有することを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のサスペンション制御装置。
  10. 前記故障判断手段は、故障と判断した回数に応じて故障の進行を判断する故障進行判断手段と、該故障進行判断手段により判断された故障の進行の程度に応じて、前記故障を判断するときに用いる閾値を変化させる故障判断閾値変更手段とを備えることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載のサスペンション制御装置。
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