JP2018052203A - サスペンション制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電気粘性流体の推定温度の誤差を低減することができるサスペンション制御装置を提供する。
【解決手段】減衰力調整式緩衝器21内には、作動油として電気粘性流体であるERF22が封入されている。コントローラ14は、高電圧ドライバ7を介してERF22に印加する電圧を制御する。この場合、コントローラ14は、ERF22の温度を求める温度算出部17を備えている。温度算出部17は、目標電圧値と高電圧電流モニタ値とからERF22の温度を求める。この場合、温度算出部17は、ピストン速度が所定速度以下のときの目標電圧値と電流値とを用いてERF22の温度を求める。
【選択図】図3
【解決手段】減衰力調整式緩衝器21内には、作動油として電気粘性流体であるERF22が封入されている。コントローラ14は、高電圧ドライバ7を介してERF22に印加する電圧を制御する。この場合、コントローラ14は、ERF22の温度を求める温度算出部17を備えている。温度算出部17は、目標電圧値と高電圧電流モニタ値とからERF22の温度を求める。この場合、温度算出部17は、ピストン速度が所定速度以下のときの目標電圧値と電流値とを用いてERF22の温度を求める。
【選択図】図3
Description
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載されるサスペンション制御装置に関する。
自動車等の車両には、車体(ばね上)側と各車輪(ばね下)側との間に緩衝器(ダンパ)が設けられている。ここで、例えば、特許文献1には、作動流体として電気粘性流体を用いた緩衝器において、電極間の静電容量を測定して電気粘性流体の温度を推定し、この推定温度に応じて電圧を補正する技術が記載されている。
従来技術によれば、電気粘性流体の温度を推定するために、電気粘性流体の静電容量を測定する回路が必要になり、装置が複雑化するおそれがある。一方、電流と印加電圧と電気粘性流体の温度との関係に基づいて、電流と印加電圧とから電気粘性流体の温度を推定することが考えられる。しかし、単に電流と印加電圧と温度との関係を用いるだけでは、推定温度の精度を十分に確保できない可能性がある。
本発明の目的は、電気粘性流体の推定温度の誤差を低減することができるサスペンション制御装置を提供することにある。
上述した課題を解決するため、本発明のサスペンション制御装置は、車両の挙動を検出する車両挙動検出手段と、前記車両の相対移動する2部材間に設けられた減衰力調整式緩衝器と、前記車両挙動検出手段の検出結果に基づいて前記減衰力調整式緩衝器の減衰力を調整するよう制御するコントローラと、を有するサスペンション制御装置であって、前記減衰力調整式緩衝器は、電気粘性流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に挿入されたピストンと、該ピストンに連結されて前記シリンダの外部に延出するピストンロッドと、前記シリンダ内の前記ピストンの摺動によって前記電気粘性流体の流れが生じる部分に設けられ、前記電気粘性流体に電界をかける電極と、を備え、前記コントローラは、前記車両挙動検出手段の検出結果に基づいて前記電極に印加する目標電圧値を求める目標電圧値設定手段と、前記目標電圧値設定手段により求めた目標電圧値を印加したときの電流値を検出する電流検出手段と、前記目標電圧値と前記電流値とから前記電気粘性流体の温度を求める温度算出手段と、を有し、前記温度算出手段は、前記ピストンの速度であるピストン速度が所定速度以下のときの前記目標電圧値と前記電流値とを用いる構成としている。
本発明のサスペンション制御装置は、電気粘性流体の推定温度の誤差を低減することができる。
以下、実施形態によるサスペンション制御装置について、当該サスペンション制御装置を4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って説明する。
図1ないし図9は、第1の実施形態を示している。図1において、車体1は、車両のボディを構成している。車体1の下側には、車体1と共に車両を構成する車輪、例えば左,右の前輪と左,右の後輪(以下、総称して車輪2という)が設けられている。車輪2は、タイヤ3を含んで構成され、タイヤ3は、路面の細かい凹凸を吸収するばねとして作用する。
サスペンション装置4は、車両の相対移動する2部材間となる車体1と車輪2との間に設けられている。サスペンション装置4は、懸架ばね5(以下、ばね5という)と、該ばね5と並列になって2部材間である車体1と車輪2との間に設けられた減衰力調整式緩衝器(以下、緩衝器21という)とにより構成されている。なお、図1中では、1組のサスペンション装置4を車体1と車輪2との間に設けた場合を例示している。しかし、サスペンション装置4は、例えば4輪の車輪2と車体1との間に個別に独立して合計4組設けられるもので、このうちの1組のみを図1では模式的に示している。
サスペンション装置4の緩衝器21は、車輪2の上下動を減衰させるものである。緩衝器21は、内部に封入する作動油(作動流体)として電気粘性流体22を用いた減衰力調整式緩衝器(セミアクティブダンパ)として構成されている。即ち、緩衝器21は、電気粘性流体22が封入されたシリンダとしての内筒23および外筒24と、内筒23内に摺動可能に挿入されたピストン27と、該ピストン27に連結されて内筒23および外筒24の外部に延出するピストンロッド30と、内筒23内のピストン27の摺動によって電気粘性流体22の流れが生じる部分に設けられ該電気粘性流体22に電界をかける電極としての電極筒36とを含んで構成されている。
電気粘性流体(ERF:Electro Rheological Fluid)22は、電界(電圧)により性状が変化する機能性流体である。電気粘性流体22(以下、ERF22という)は、例えば、シリコンオイル等からなる基油(ベースオイル)と、該基油に混ぜ込まれ(分散され)電界の変化に応じて粘性を可変にする粒子(微粒子)とにより構成されている。これにより、ERF22は、印加される電圧に応じて粘度が変化し、流通抵抗(減衰力)が変化する。即ち、緩衝器21は、ERF22の流れが生じる部分に設けられた電極筒36に印加する電圧に応じて、発生減衰力の特性(減衰力特性)をハード(Hard)な特性(硬特性)からソフト(soft)な特性(軟特性)に連続的に調整することができる。なお、緩衝器21は、減衰力特性を連続的でなくとも、2段階または複数段階に調整可能なものであってもよい。緩衝器21のより詳しい構成については、後で述べる。
図1に示すように、バッテリ6は、緩衝器21の電極筒36に印加するための電源となるものである。バッテリ6は、例えば、車両の補機用バッテリとなる12Vの車載バッテリ(および、必要に応じて車載バッテリの充電を行うオルタネータ)により構成されている。バッテリ6は、高電圧ドライバ7を介して緩衝器21(電極筒36およびダンパシェルとなる外筒24)に接続されている。なお、緩衝器21の電源は、例えば、走行用の電動モータ(駆動モータ)が搭載されたハイブリッド自動車や電気自動車の場合、車両駆動用の大容量バッテリ(図示せず)を用いることもできる。
高電圧ドライバ7は、緩衝器21のERF22に印加する高電圧を発生する。このために、高電圧ドライバ7は、(低電圧)直流電力線を構成するバッテリ線(batt線)8およびグランド線(GND線)9を介して電源となるバッテリ6に接続されている。これと共に、高電圧ドライバ7は、(高電圧)直流電力線を構成する高電圧出力線10およびグランド線(GND線)11を介して緩衝器21(電極筒36およびダンパシェルとなる外筒24)に接続されている。
高電圧ドライバ7は、マイクロコンピュータ、昇圧回路、電流検出回路(いずれも図示せず)を含んで構成されている。高電圧ドライバ7は、コントローラ14から出力される指令(高電圧指令)に基づいて、バッテリ6から出力される直流電圧を昇圧し、その昇圧した高電圧を緩衝器21に供給(出力)する。
また、高電圧ドライバ7は、緩衝器21に供給される電流、即ち、高電圧ドライバ7で昇圧された後の電流をモニタ(監視)し、その電流のモニタ信号(高電圧電流モニタ信号)を、高電圧電流モニタ値(高電圧電流値)としてコントローラ14に出力する。なお、図1に仮想線(二点鎖線)で示すように、高電圧ドライバ7は、緩衝器21に供給される高電圧、即ち、高電圧ドライバ7で昇圧された後の電圧をモニタ(監視)し、その高電圧のモニタ信号(高電圧モニタ信号)を、高電圧モニタ値(高電圧値)としてコントローラ14に出力するようにしてもよい。
ばね上加速度センサ12は、車体1側に設けられる。具体的には、ばね上加速度センサ12は、例えば緩衝器21の近傍となる位置で車体1に取付けられる。そして、ばね上加速度センサ12は、所謂ばね上側となる車体1側で上下方向の振動加速度を検出し、その検出信号(即ち、ばね上加速度)をコントローラ14に出力する。
ばね下加速度センサ13は、車両の車輪2側に設けられる。ばね下加速度センサ13は、所謂ばね下側となる車輪2側で上下方向の振動加速度を検出し、その検出信号(即ち、ばね下加速度)をコントローラ14に出力する。このとき、ばね上加速度センサ12およびばね下加速度センサ13は、車両の挙動(より具体的には、車両の上下方向の運動に関する状態量)を検出する車両挙動検出手段(より具体的には、上下運動検出手段)を構成している。
なお、車両挙動検出手段は、緩衝器21の近傍に設けたばね上加速度センサ12およびばね下加速度センサ13に限らず、例えば、ばね上加速度センサ12のみでもよく、また、車高センサ(図示せず)でもよい。さらには、車輪2の回転速度を検出する車輪速センサ(図示せず)等、加速度センサ12,13、車高センサ以外の車両の挙動(状態量)を検出する車両挙動検出センサでもよい。この場合に、例えば、1個のばね上加速度センサ12の情報(加速度)と車輪速センサの情報(車輪速)から各車輪2毎の上下運動を推定することで、車両の上下運動を検出する構成としてもよい。
制御手段としてのコントローラ14は、サスペンション装置用のECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれるもので、例えばマイクロコンピュータを含んで構成されている。コントローラ14は、例えば、加速度センサ12,13および高電圧ドライバ7と通信線、例えば、データ通信に必要な回線網であるCAN(Controller Area Network)を介して接続されている。コントローラ14は、ばね上加速度センサ12およびばね下加速度センサ13の検出結果に基づいて、緩衝器21の減衰力を調整するように制御する。即ち、コントローラ14は、ばね上加速度センサ12とばね下加速度センサ13より得た情報から、後述する演算処理に基づいて、高電圧ドライバ7に出力する指令、即ち、高電圧指令を算出し、減衰力可変ダンパである緩衝器21を制御する。
ここで、コントローラ14には、ばね上加速度センサ12から出力されるばね上加速度信号、ばね下加速度センサ13から出力されるばね下加速度信号に加え、高電圧ドライバ7から出力される高電圧電流モニタ信号等が入力される。コントローラ14は、車両の挙動情報(車両挙動信号)となるばね上加速度信号およびばね下加速度信号と、緩衝器21の電力情報(緩衝器電力信号)となる高電圧電流モニタ信号(および必要に応じて高電圧モニタ信号)とに基づき、緩衝器21で出力すべき力(減衰力)に対応する高電圧指令を算出する。
コントローラ14は、その算出した高電圧指令(高電圧指令信号)を高電圧ドライバ7へ出力する。高電圧ドライバ7は、コントローラ14からの高電圧指令に基づき、その指令に応じた高電圧を緩衝器21の電極筒36に出力する。高電圧が入力された緩衝器21は、その電圧値(電極筒36と内筒23との間の電位差)の変化に応じてERF22の粘性が変化し、緩衝器21の減衰力特性を切換える(調整する)ことができる。コントローラ14の構成については、後で詳しく述べる。
次に、緩衝器21の構成について、図1に加え、図2も参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、緩衝器21の軸方向の一端側を「下端」側とし、軸方向の他端側を「上端」側として記載するが、緩衝器21の軸方向の一端側を「上端」側とし、軸方向の他端側を「下端」側としてもよい。
図2において、緩衝器21は、内筒23、外筒24、ピストン27、ピストンロッド30、ボトムバルブ32、電極筒36等を含んで構成されている。内筒23と外筒24はシリンダを構成し、該シリンダ内には、ERF22が封入されている。なお、図1および図2では、封入されているERF22を無色透明で表している。
内筒23は、軸方向に延びる円筒状の筒体として形成されている。内筒23の内部には、ピストンロッド30が挿入されている。内筒23の外側には、外筒24および電極筒36が同軸となるように設けられている。内筒23には、電極通路38に常時連通する油穴23Aが径方向の横孔として周方向に離間して複数(例えば、4個)形成されている。即ち、内筒23内のロッド側油室Bは、油穴23Aによって電極通路38と連通している。
外筒24は、緩衝器21の外殻をなすもので、円筒体として形成されている。外筒24は、電極筒36の外周に設けられており、該電極筒36との間に電極通路38と連通するリザーバ室Aを形成している。この場合、外筒24は、その下端側がボトムキャップ25により閉塞された閉塞端となっている。外筒24の上端側は、開口端となっている。外筒24の開口端側には、ピストンロッド30との間を液密、気密に封止(シール)するシール部材26が設けられている。
内筒23と外筒24との間、より具体的には、電極筒36と外筒24との間には、リザーバとなる環状のリザーバ室Aが形成されている。リザーバ室A内には、ERF22と共に、作動気体となるガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、また圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。リザーバ室A内のガスは、ピストンロッド30の縮小(縮み行程)時に、当該ピストンロッド30の進入体積分を補償すべく圧縮される。
ピストン27は、内筒23内に摺動可能に設けられている。ピストン27は、内筒23内を第1室となるロッド側油室Bと第2室となるボトム側油室Cとに分けている。ピストン27には、ロッド側油室Bとボトム側油室Cとを連通可能とする油路27A,27Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成されている。
ここで、実施形態による緩衝器21は、ユニフロー構造となっている。このため、内筒23内のERF22は、ピストンロッド30の縮み行程と伸び行程との両行程で、ロッド側油室B(即ち、内筒23の油穴23A)から電極通路38に向けて常に一方向(即ち、図2中に二点鎖線で示す矢印Fの方向)に流通する。
このようなユニフロー構造を実現するため、ピストン27の上端面には、ピストンロッド30の縮小行程(縮み行程)でピストン27が内筒23内を下向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する縮み側逆止弁28が設けられている。縮み側逆止弁28は、ボトム側油室C内の油液(ERF22)がロッド側油室Bに向けて各油路27A内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止する。
ピストン27の下端面には、伸長側のディスクバルブ29が設けられている。伸長側のディスクバルブ29は、ピストンロッド30の伸長行程(伸び行程)でピストン27が内筒23内を上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室B内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を、各油路27Bを介してボトム側油室C側にリリーフする。
ピストンロッド30は、その下端が内筒23内でピストン27に連結(固定)され、その上端がロッド側油室Bを通って内筒23および外筒24の外部へ延出されている。この場合、ピストンロッド30の上端側は、ロッドガイド31を介して外部に突出している。ロッドガイド31は、その内周側でピストンロッド30を軸方向に摺動可能に案内(ガイド)する。
内筒23の下端側には、ボトムバルブ32が設けられている。ボトムバルブ32は、ボトム側油室Cとリザーバ室Aとを連通・遮断するものである。このために、ボトムバルブ32は、バルブボディ33と、伸び側逆止弁34と、ディスクバルブ35とを含んで構成されている。
バルブボディ33は、ボトムキャップ25と内筒23との間でリザーバ室Aとボトム側油室Cとを画成する。バルブボディ33には、リザーバ室Aとボトム側油室Cとを連通可能とする油路33A,33Bがそれぞれ周方向に間隔をあけて形成されている。
伸び側逆止弁34は、例えば、バルブボディ33の上面側に設けられている。伸び側逆止弁34は、ピストンロッド30の伸長行程でピストン27が上向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する。伸び側逆止弁34は、リザーバ室A内の油液(ERF22)がボトム側油室Cに向けて各油路33A内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止する。
縮小側のディスクバルブ35は、バルブボディ33の下面側に設けられている。縮小側のディスクバルブ35は、ピストンロッド30の縮小行程でピストン27が下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室C内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を、各油路33Bを介してリザーバ室A側にリリーフする。
内筒23と外筒24との間には、軸方向に延びる圧力管からなる電極筒36が設けられている。電極筒36は、ロッドガイド31とバルブボディ33とに対して保持部材37,37を介して支持されている。保持部材37,37は、例えば電気絶縁性材料(アイソレータ)により形成されている。上側の保持部材37は、内筒23およびロッドガイド31と電極筒36との間を電気的に絶縁した状態に保っている。下側の保持部材37は、内筒23およびバルブボディ33と電極筒36との間を電気的に絶縁した状態に保っている。下側の保持部材37には、電極通路38をリザーバ室Aに対して連通させる複数の油路37Aが形成されている。
電極筒36は、内筒23と外筒24との間の中間筒となるものである。電極筒36は、導電性材料を用いて形成され、筒状の電極を構成している。即ち、電極筒36は、高電圧ドライバ7と高電圧出力線10を介して接続されている。電極筒36は、内筒23との間にロッド側油室Bと連通する電極通路38を形成している。即ち、電極筒36は、内筒23の外周側を全周にわたって取囲むことにより、電極筒36の内周側と内筒23の外周側との間に環状の電極通路38を形成している。電極通路38は、ERF22が流通する通路であり、ピストン27の摺動によってERF22の流れが生じる。
即ち、電極通路38内のERF22は、ピストンロッド30が内筒23内を進退動するとき(即ち、縮み行程と伸び行程を繰返す間)に、この進退動により電極通路38の軸方向の上端側から下端側に向けて流動する。そして、電極通路38内に流入したERF22は、電極筒36の下端側から保持部材37の油路37Aを介してリザーバ室Aへと流出する。このとき、電極通路38内には、電極筒36に印加される電圧に応じた電位差が発生し、ERF22の粘度が変化する。
即ち、緩衝器21は、内筒23と電極筒36との間の電極通路38内に電位差を発生させ、該電極通路38を通過するERF22の粘度を制御することで、発生減衰力を制御(調整)することができる。図6は、印加電圧毎のピストン速度と減衰力との関係の一例を示している。図6に示すように、減衰力は、印加電圧の大きさの違いにより変化する。この場合、印加電圧が大きい程、減衰力が大きくなる。
ところで、ERF22のベース油は、シリコン油であり、鉱物油に比べて温度に対する粘性変化(特性変化)が大きい。具体的には、低温では、高粘性となり(減衰力が高くなり)、高温では、低粘性となる(減衰力が低下する)。このため、低温時と高温時の車両性能変化を抑制すべく、緩衝器21の制御をERF22の温度に応じて補正(変更、調整)することが好ましい。ここで、特許文献1には、電極間の静電容量を測定して電気粘性流体の温度を推定し、この推定温度に応じて電圧を補正する技術が開示されている。しかし、この場合は、電気粘性流体の静電容量を測定する回路が必要になり、装置が複雑化するおそれがある。
一方、電流と印加電圧とERF22の温度(ERF温度)との関係に基づいて、電流と印加電圧とからERF温度を推定することが考えられる。即ち、図7は、印加電圧毎のERF温度と電流との関係の一例を示している。この図7に示すように、電極間(電極通路38)を流れるERF22は、電極間に印加する電圧毎に温度と電流との間に相関関係がある。そこで、図7の関係、即ち、「(電流,電圧)−ERF温度マップ」に基づいて、印加電圧と電流とからERF温度を推定することが考えられる。具体的には、電流と印加電圧とを入力とし、この入力から「(電流,電圧)−ERF温度マップ」に基づいて、ERF温度を出力する構成とすることが考えられる。
しかし、図8に示すように、ピストン27の速度(ピストン速度)と電流との間には線形関係があり、ピストン速度が大きくなると電流が大きくなる。このような線形関係は、ピストン運動に伴う帯電したERF22の運動に起因するものと推察される。実際、電流[A]は断面を単位時間[S]に通過する電気量[C]で表される。これにより、図9に示すように、一定の印加電圧の下でピストン速度が変化すると、ピストン速度の変化に応じて電流が変化する。
ここで、例えば、ピストン速度による影響をノイズと捉え、「(電流,電圧)−ERF温度マップ」による出力値に対してローパスフィルタ処理をすることが考えられる。しかし、ローパスフィルタの積分要素としての性質から、温度推定値が実際の温度より高くなる可能性がある。
一方、ERF温度推定誤差への対応策として、ピストン速度を考慮し、例えば、実験によりピストン速度と電流と印加電圧(または、電流と印加電圧から求まる抵抗とピストン速度)からERF温度へのマップを作成することが考えられる。即ち、入力を電流と印加電圧とピストン速度とし、この入力から「(電流,電圧,ピストン速度)−ERF温度マップ」に基づいて、ERF温度を出力する構成とすることが考えられる。しかし、この場合は、印加電圧毎およびピストン速度毎に、電流とERF温度との関係を実験で求める必要があり、実験のコストが増大する可能性がある。
そこで、実施形態では、コントローラ14(の温度算出部17)は、ピストン速度が0[m/s]、または、0[m/s]を含む0[m/s]付近のときの電流値(即ち、図9でAを付した電流値)を用いてERF温度を算出(推定)する。具体的には、コントローラ14は、ピストン速度が0[m/s]付近のときのみの電流と電圧を用いて、「(電流,電圧)−ERF温度マップ」からERF温度を求める。より詳しくは、コントローラ14は、ピストン速度(の絶対値)が所定速度以下、例えば、オリフィス領域と呼ばれる極微低速以下(−0.02[m/s]≦ピストン速度≦0.02[m/s])のときの電流値と電圧値とを用いて、ERF温度の算出を行う。これにより、ERF温度推定アルゴリズム開発に必要な実験コストを抑えつつ、ERF温度の推定誤差を低減することができる。
次に、ERF温度の推定処理を含む緩衝器21の制御処理を行うコントローラ14について、図1および図2に加え、図3および図4も参照しつつ説明する。
図3に示すように、コントローラ14は、乗り心地・操縦安定性制御部15と、相対速度算出部16と、温度算出部17とを含んで構成されている。コントローラ14は、例えば、演算装置(CPU)に加え、フラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなるメモリ(いずれも図示せず)を有している。メモリには、例えば、図5に示す処理フローを実行するための処理プログラム、図7に示すような「(電流,電圧)−ERF温度マップ」等が格納されている。
乗り心地・操縦安定性制御部15の入力側は、ばね上加速度センサ12、ばね下加速度センサ13、および、温度算出部17と接続されている。乗り心地・操縦安定性制御部15の出力側は、高電圧ドライバ7、および、温度算出部17と接続されている。乗り心地・操縦安定性制御部15には、ばね上加速度センサ12からのばね上加速度と、ばね下加速度センサ13からのばね下加速度と、温度算出部17からの温度とが入力される。乗り心地・操縦安定性制御部15は、ばね上加速度およびばね下加速度を用いて車両挙動を算出する。乗り心地・操縦安定性制御部15は、乗り心地と操縦安定性能の向上を図るべく、例えばスカイフック制御則を用いて目標減衰力を演算し、目標減衰力が発生するように目標電圧値を算出する。
このとき、乗り心地・操縦安定性制御部15では、温度算出部17から出力されたERF温度を用いて目標電圧値を補正する。例えば、乗り心地・操縦安定性制御部15は、ERF22により実際に発生する減衰力がERF22の基準温度(例えば標準温度)において発生する基準減衰力に近付くように、そのとき(現在)のERF温度に応じて目標電圧値を補正する。乗り心地・操縦安定性制御部15は、算出した目標電圧値、即ち、ERF温度を用いて補正された目標電圧値を、高電圧指令(高電圧指令信号)として高電圧ドライバ7および温度算出部17に出力する。
このように、乗り心地・操縦安定性制御部15は、ERF22の温度変化に伴う減衰力特性の変化(緩衝器21の特性変化)を考慮した目標電圧を、高電圧指令として高電圧ドライバ7に出力することができる。なお、目標減衰力を算出する制御則としては、スカイフック制御に限らず、例えば、最適制御、H∞制御等のフィードバック制御を用いることができる。また、制御指令として目標減衰力を用いているが、目標減衰係数を用いる構成としてもよい。
相対速度算出部16の入力側は、ばね上加速度センサ12、および、ばね下加速度センサ13と接続されている。相対速度算出部16の出力側は、温度算出部17と接続されている。相対速度算出部16には、ばね上加速度センサ12からのばね上加速度と、ばね下加速度センサ13からのばね下加速度が入力される。
相対速度算出部16は、ばね下加速度とばね上加速度との差分から車体1と車輪2との間の上下方向の相対加速度を算出する。相対速度算出部16は、相対加速度を積分することで、車体1と車輪2との間の上下方向の相対速度、即ち、緩衝器21のピストン速度を算出する。相対速度算出部16は、算出したピストン速度(ピストン速度信号)を温度算出部17に出力する。
なお、実施形態では、ばね上とばね下とにそれぞれ加速度センサ12,13を設置すると共に、ばね上加速度とばね下加速度との差を積分することにより、ピストン速度を算出する構成としている。しかし、ピストン速度の算出は、これに限るものではない。例えば、車両に車高センサを設置すると共に、車高センサから得られる車高を微分することにより、ピストン速度を算出する構成としてもよい。
温度算出部17は、ERF22の温度の算出(推定)を行う。即ち、温度算出部17は、目標電圧値と高電圧電流モニタ値とからERF22の温度を求める。このために、温度算出部17の入力側は、高電圧ドライバ7と乗り心地・操縦安定性制御部15が接続されている。さらに、第1の実施形態では、温度算出部17の入力側は、相対速度算出部16と接続されている。温度算出部17には、高電圧ドライバ7からの高電圧電流モニタ値と乗り心地・操縦安定性制御部15からの目標電圧値(高電圧指令)とが入力される。これに加えて、温度算出部17には、相対速度算出部16からのピストン速度が入力される。一方、温度算出部17の出力側は、乗り心地・操縦安定性制御部15と接続されている。
図4に示すように、温度算出部17は、温度マップ部17Aと、ERF温度更新部17Bとを有している。温度算出部17の入力側は、高電圧ドライバ7および乗り心地・操縦安定性制御部15と接続されている。温度算出部17の出力側は、ERF温度更新部17Bと接続されている。温度マップ部17Aには、高電圧ドライバ7からの高電圧電流モニタ値と乗り心地・操縦安定性制御部15からの目標電圧値(高電圧指令)とが入力される。温度マップ部17Aは、「(電流,電圧)−ERF温度マップ」を備えている。
前述したように、ERF22は、印加電圧毎に、温度と電流との間に相関関係がある(図7参照)。これを用いて、実験により、電流と印加電圧からERF温度へのマップ、即ち、入力を電流と印加電圧とすると共に出力をERF温度とした「(電流,電圧)−ERF温度マップ」を作成することができる。このマップは、ピストン速度が0[m/s]のときの電流と印加電圧とERF温度との関係(特性)に対応する。温度マップ部17Aは、このよう作成した「(電流,電圧)−ERF温度マップ」を備えている。
温度マップ部17Aは、高電圧電流モニタ値と目標電圧値とから「(電流,電圧)−ERF温度マップ」を用いてERF温度を算出する。なお、実施形態では、温度算出部17の温度マップ部17Aに、乗り心地・操縦安定性制御部15からの目標電圧値を入力する構成としている。即ち、温度マップ部17Aは、乗り心地・操縦安定性制御部15からの目標電圧値と高電圧電流モニタ値とを用いてERF温度を求める構成としている。しかし、これに限らず、例えば、高電圧ドライバ7からの高電圧モニタ値を温度マップ部17Aに入力する構成としてもよい。即ち、温度マップ部17Aは、高電圧ドライバ7からの高電圧モニタ値と高電圧電流モニタ値とを用いてERF温度を求める構成としてもよい。
ここで、温度マップ部17Aが算出したERF温度を常に用いると、ERF温度の精度を十分に確保できない可能性がある。即ち、図8に示すように、電流とピストン速度との間には線形関係があるため、図9に示すように、ピストン速度の振動(速度変化)が電流に現れ、ERF温度の推定誤差の原因となる。そこで、実施形態では、ピストン速度が0[m/s]付近(図9のA部)の電流が精度のよいERF温度を導くことができる点を利用する。即ち、実施形態では、温度マップ部17Aは、算出したERF温度をERF温度更新部17Bに出力する。そして、ERF温度更新部17Bは、温度マップ部17Aから出力されたERF温度のうち、ピストン速度が0[m/s]付近のときのERF温度を、乗り心地・操縦安定性制御部15に出力する。
このために、ERF温度更新部17Bの入力側は、温度マップ部17Aおよび相対速度算出部16と接続され、ERF温度更新部17Bの出力側は、乗り心地・操縦安定性制御部15に接続されている。そして、ERF温度更新部17Bは、ピストン速度(の絶対値)が所定速度以下である極微低速以下(例えば、−0.02[m/s]≦ピストン速度≦0.02[m/s])のときは、温度マップ部17Aから出力されたERF温度を、そのまま乗り心地・操縦安定性制御部15に出力する。一方、ERF温度更新部17Bは、ピストン速度(の絶対値)が所定速度を超えている(例えば、ピストン速度<−0.02[m/s]、0.02[m/s]<ピストン速度)ときは、温度マップ部17Aから出力されたERF温度を乗り心地・操縦安定性制御部15に出力しない。この場合、ERF温度更新部17Bは、前回の制御周期でERF温度更新部17Bが乗り心地・操縦安定性制御部15に出力したERF温度を乗り心地・操縦安定性制御部15に出力する。
図5は、ERF温度更新部17Bで行われる処理を示している。図5の制御処理は、例えば、コントローラ14に通電している間(温度マップ部17AでERF温度を算出している間)、所定の制御周期で繰り返し実行される。
図5に示す制御処理が開始されると、S1では、ピストン速度が0[m/s]付近であるか否かを判定する。即ち、S1では、ピストン速度が所定速度以下である極微低速以下(−0.02[m/s]≦ピストン速度≦0.02[m/s])であるか否かを判定する。S1で「YES」、即ち、ピストン速度が0[m/s]付近である(−0.02[m/s]≦ピストン速度≦0.02[m/s])と判定された場合は、S2に進む。S2では、温度マップ部17Aから出力されたERF温度を乗り心地・操縦安定性制御部15に出力する。S2でERF温度を出力したら、リターンを介してスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。
一方、S1で「NO」、即ち、ピストン速度が0[m/s]付近でない(ピストン速度<−0.02[m/s]、0.02[m/s]<ピストン速度)と判定された場合は、S3に進む。S3では、前回の制御周期で出力したERF温度を出力する。S3でERF温度を出力したら、リターンする。
なお、実施形態では、ピストン速度の所定速度を±0.02[m/s](絶対値で0.02[m/s])としている。即ち、実施形態では、温度算出部17は、オリフィス領域と呼ばれる極微低速以下のときの電流値と電圧値とを用いる(極微低速以下のときの電流値と電圧値とにより算出されるERF温度を用いる)構成としている。しかし、これに限らず、ピストン速度の所定速度を、例えば、±0.05[m/s](絶対値で0.05[m/s])としてもよい。即ち、バルブ開の微定速領域と呼ばれる微低速以下のときの電流値と電圧値とを用いる構成としてもよい。ピストン速度の所定速度は、ERF流体の特性、車両の種類、仕様等に応じて、温度推定の誤差を許容できる範囲の速度(できるだけ0[m/s]に近い速度)に設定することができる。
以上のように、実施形態では、コントローラ14は、目標電圧値設定手段と、電流検出手段と、温度算出手段と、ピストン速度推定手段とを備えている。目標電圧値設定手段は、車両挙動検出手段(ばね上加速度センサ12およびばね下加速度センサ13)の検出結果に基づいて緩衝器21の電極筒36に印加する目標電圧値(目標電圧、高電圧指令)を求めるものである。目標電圧値設定手段は、例えば、コントローラ14の乗り心地・操縦安定性制御部15に対応する。
電流検出手段は、目標電圧値設定手段により求めた目標電圧値を印加したときの電流値を検出する。電流検出手段は、例えば、高電圧ドライバ7の電流検出回路、より具体的には、高電圧ドライバ7の電流検出回路から出力された高電圧電流モニタ値をコントローラ14に入力する構成に対応する。
温度算出手段は、電圧値としての目標電圧値と電流値としての高電圧電流モニタ値とからERF22の温度(ERF温度)を求める。温度算出手段は、例えば、コントローラ14の温度算出部17に対応する。
ピストン速度推定手段は、ピストン27の速度であるピストン速度を求める。ピストン速度推定手段は、例えば、コントローラ14の相対速度算出部16に対応する。
そして、温度算出手段は、ピストン速度が所定速度以下(例えば、−0.02[m/s]≦ピストン速度≦0.02[m/s])のときの目標電圧値と電流値とを用いる。換言すれば、ピストン速度が所定速度を超えている(例えば、ピストン速度<−0.02[m/s]、0.02[m/s]<ピストン速度)ときの目標電圧値と電流値とを用いて求めたERF温度は、温度算出手段が求めたERF温度としない。このために、温度算出部17は、温度マップ部17Aが算出したERF温度のうちピストン速度が所定速度以下のときに算出したERF温度を選択(出力)する温度選択手段としてのERF温度更新部17Bを備えている。
本実施形態によるサスペンション制御装置は、上述のような構成を有するもので、次に、コントローラ14および高電圧ドライバ7を用いて緩衝器21の減衰力特性を可変に制御する処理について説明する。
コントローラ14には、車両の走行時にばね上加速度センサ12からばね上加速度に対応する検出信号が入力されると共に、ばね下加速度センサ13からばね下加速度に対応する検出信号が入力される。このとき、コントローラ14の乗り心地・操縦安定性制御部15では、ばね上加速度とばね下上速度とからスカイフック制御則等を用いて目標減衰力を演算し、目標減衰力を発生させるために必要な目標電圧を算出する。このとき、乗り心地・操縦安定性制御部15は、温度算出部17で算出されたERF温度を用いて目標減衰力(目標電圧)を補正(変更、調整)する。コントローラ14は、ERF温度に応じて補正された目標減衰力(目標電圧)を高電圧指令として高電圧ドライバ7に出力する。
高電圧ドライバ7は、コントローラ14からの高電圧指令に基づいて、バッテリ6から出力される直流電圧を昇圧回路で昇圧する。これにより、高電圧指令に応じた電圧(高電圧)がERF22に印加(緩衝器21の電極筒36に出力)され、ERF22の粘性を制御することができる。このとき、緩衝器21の減衰力特性は、ハードな特性(硬特性)とソフトな特性(軟特性)との間で可変となって連続的に制御される。
ここで、第1の実施形態では、温度算出部17は、ERF温度更新部17Bにより、ピストン速度が所定速度以下のときの目標電圧値と電流値とから求められたERF温度のみをERF温度として出力する。このため、ピストン速度に応じて変化する電流の影響に伴うERF温度の推定誤差を低減することができ、ERF温度の推定精度を向上できる。
次に、図10ないし図13は、第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、ピストン速度推定手段を省略したことにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
前述の図9に示すように、ピストン速度が0[m/s]のときに、電流は下のピーク値をとる。このため、電流が下のピーク値となった時点の電流を用いれば、精度のよいERF温度を導くことができる。第2の実施形態は、この点を利用する。即ち、第2の実施形態では、電流が下のピーク値を取った時点の電流と印加電圧とを用いて、「(電流,電圧)−ERF温度マップ」からERF温度を推定(算出)する。
ここで、図9に示すように、電流が下のピーク値を取るのは、電流が減少から増加に切換わる時点である。ただし、図7に示すように、電流は印加電圧により値が変化する。図13は、印加電圧と電流とピストン速度の時間変化の一例を示している。
図13中、電流の時間軸(t軸)に付した番号は、サンプルタイミングであり、かつ、本実施形態の説明では簡単のために制御タイミングとする。t=13における印加電圧の上昇により、電流は全体的に上昇する。また、t=26における印加電圧の下降により、電流は全体的に下降する。
まず、t=13の近傍において電流の下ピーク値を見つけるための方針を考える。ここで、I(n)をt=nにおける電流とする。t=13の近傍においては、電流は下記の数1式の増減を取っている。
ここで、I(13)に着目する。この時点は、I(12)からI(14)にかけて、電流が減少から増加に切換わる時点であるが、t=13においてピストン速度は0[m/s]でない。図8に示すピストン速度と電流の関係と、t=13の近傍におけるピストン速度の時系列により、I(14)からI(15)へと直ちに減少に転じる。そこで、次の方針1を得ることができる。
方針1:減少(>)から増加(<)に切換わっても、2回以上増加が続かない限り、減少から増加に切換わった時点を電流の下ピーク値と扱ってはならない。
方針1:減少(>)から増加(<)に切換わっても、2回以上増加が続かない限り、減少から増加に切換わった時点を電流の下ピーク値と扱ってはならない。
実際、I(16)は減少から増加に切換わる時点であり、t=16のピストン速度は0[m/s]であり、I(16)の後に「I(16)<I(17)<I(18)」と2回以上増加が続いている。
次に、t=26の近傍において電流の下ピーク値を見つけるための方針を考える。t=26の近傍においては、電流は下記の数2式の増減を取っている。
ここで、I(26)に着目する。この時点は、I(25)からI(27)にかけて、電流が減少から増加に切換わる時点であるが、t=26においてピストン速度は0[m/s]でない。図8に示すピストン速度と電流の関係と、t=24からt=25におけるピストン速度の時系列により、I(24)からI(25)に増加するが、t=26における印加電圧の下降に伴い、I(25)からI(26)に直ちに減少している。これにより、次の方針2を得ることができる。
方針2:減少(>)から増加(<)に切換わっても、2回以上減少が続いてから増加に切換わらない限り、減少から増加に切換わった時点を電流の下ピーク値と扱ってはならない。
方針2:減少(>)から増加(<)に切換わっても、2回以上減少が続いてから増加に切換わらない限り、減少から増加に切換わった時点を電流の下ピーク値と扱ってはならない。
実際、I(32)は減少から増加に切換わる時点であり、t=32のピストン速度は0[m/s]であり、I(32)の前に「I(30)>I(31)>I(32)」と2回連続して減少が続いている。
方針1と方針2をまとめると、次の大方針を得ることができる。
大方針:2回減少が続き、その直後で2回増加が続いた場合、減少から増加に切換わった時点を電流の下のピーク値として扱う。
大方針:2回減少が続き、その直後で2回増加が続いた場合、減少から増加に切換わった時点を電流の下のピーク値として扱う。
この大方針において、2回減少や2回増加に限る必要はなく、2回以上減少や2回以上増加であればよい。また、電流にはノイズが含まれるため、電流の減少や増加の判断の際に、一定のマージンを取ってもよい。第2の実施形態では、大方針を基に、電流が下のピーク値を取った時点の電流と印加電圧とを用いて、「(電流,電圧)−ERF温度マップ」からERF温度を推定(算出)する。
図10において、コントローラ41は、第1の実施形態のコントローラ14に代えて、第2の実施形態で用いるコントローラ(制御手段)である。第1の実施形態のコントローラ14は、相対速度算出部16を備えているのに対して、第2の実施形態のコントローラは、相対速度算出部16を備えていない。即ち、コントローラ41は、乗り心地・操縦安定性制御部15と、温度算出部42とを含んで構成されている。
温度算出部42は、ERF22の温度の算出(推定)を行う。温度算出部42の入力側は、高電圧ドライバ7と乗り心地・操縦安定性制御部15が接続されている。温度算出部42の出力側は、乗り心地・操縦安定性制御部15と接続されている。温度算出部42には、高電圧ドライバ7からの高電圧電流モニタ値と乗り心地・操縦安定性制御部15からの目標電圧値(高電圧指令)とが入力される。なお、温度算出部42は、乗り心地・操縦安定性制御部15からの目標電圧値(高電圧指令)に代えて、高電圧ドライバ7からの高電圧モニタ値を入力する構成としてもよい。この点は、第1の実施形態の温度算出部17も同様である。
図11に示すように、温度算出部42は、温度マップ部17Aと、ERF温度更新部43とを有している。温度マップ部17Aは、高電圧電流モニタ値と目標電圧値(または高電圧モニタ値)とから「(電流,電圧)−ERF温度マップ」を用いてERF温度を算出する。温度マップ部17Aのマップは、ピストン速度が0[m/s]のときの電流と印加電圧とERF温度との関係(特性)に対応する。温度算出部42で算出されたERF温度は、温度算出部42からERF温度更新部43に出力される。
ERF温度更新部43の入力側は、温度マップ部17Aおよび高電圧ドライバ7に接続され、ERF温度更新部43の出力側は、乗り心地・操縦安定性制御部15と接続されている。ERF温度更新部43は、温度マップ部17Aから出力されたERF温度のうち、ピストン速度が0[m/s]付近のときのERF温度を、乗り心地・操縦安定性制御部15に出力する。この場合、ERF温度更新部43は、温度マップ部17Aから出力されたERF温度のうち、電流の下のピーク値のときのERF温度を、乗り心地・操縦安定性制御部15に出力する。
図12は、ERF温度更新部43で行われる処理を示している。図12の制御処理は、例えば、コントローラ41に通電している間(温度マップ部17AでERF温度を算出している間)、所定の制御周期で繰り返し実行される。
図12に示す制御処理が開始されると、S11では、電流を格納するパラメータI0,I1,I2,I3,I4を設定する。この場合、「I0」には、現在時刻の電流を設定し、「I1」には、現在時刻よりも1つ前のタイミング(制御周期)の電流を設定し、「I2」には、現在時刻よりも2つ前のタイミングの電流を設定し、「I3」には、現在時刻よりも3つ前のタイミングの電流を設定し、「I4」には、現在時刻よりも4つ前のタイミングの電流を設定する。
続くS12では、「I4>I3>I2」かつ「I2<I1<I0」であるか否かを判定する。S12で「YES」、即ち、「I4>I3>I2」かつ「I2<I1<I0」であると判定された場合は、S13に進む。S13では、温度マップ部17Aが現在時刻よりも2つ前のタイミングに出力したERF温度を、乗り心地・操縦安定性制御部15に出力する。S13でERF温度を出力したら、リターンを介してスタートに戻り、S11以降の処理を繰り返す。
一方、S12で「NO」、即ち、「I4>I3>I2」でない、または、「I2<I1<I0」でないと判定された場合は、S14に進む。S14では、ERF温度更新部43が現在時刻よりも1つ前のタイミングに出力したERF温度を、乗り心地・操縦安定性制御部15に出力する。S14でERF温度を出力したら、リターンする。
第2の実施形態は、上述の如きコントローラ41によりERF温度の推定処理を含む緩衝器21の制御処理を行うもので、その基本的作用については、第1の実施形態によるものと格別差異はない。特に、第2の実施形態では、ピストン速度を求めるためのピストン速度推定手段(第1の実施形態の相対速度算出部16)を必要としない。このため、コントローラ41の処理の簡素化を図ることができる。また、例えば、ピストン速度を求めるために車高センサを設ける構成と比較して、車高センサを省略することができる分、部品点数を低減できる。
なお、実施形態では、コントローラ14,41が温度算出部17を備える構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、コントローラ(制御手段)としての高電圧ドライバ(のマイクロコンピュータ)が温度算出部(温度算出手段)を備える構成としてもよい。
実施形態では、高電圧ドライバ7が昇圧する電圧を直流電圧とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、高電圧ドライバ7が昇圧する電圧を交流電圧としてもよい。
実施形態では、サスペンション装置4の緩衝器21を縦置き状態で自動車等の車両に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、緩衝器を横置き状態で鉄道車両等の車両に取付ける構成としてもよい。緩衝器21は、例えば、エアレーションを起こさない範囲で傾けて配置する等、取付対象に応じて所望の方向に配置することができる。
以上説明した実施形態に基づくサスペンション制御装置として、例えば、下記に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、車両の挙動を検出する車両挙動検出手段と、前記車両の相対移動する2部材間に設けられた減衰力調整式緩衝器と、前記車両挙動検出手段の検出結果に基づいて前記減衰力調整式緩衝器の減衰力を調整するよう制御するコントローラと、を有するサスペンション制御装置であって、前記減衰力調整式緩衝器は、電気粘性流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に挿入されたピストンと、該ピストンに連結されて前記シリンダの外部に延出するピストンロッドと、前記シリンダ内の前記ピストンの摺動によって前記電気粘性流体の流れが生じる部分に設けられ、前記電気粘性流体に電界をかける電極と、を備え、前記コントローラは、前記車両挙動検出手段の検出結果に基づいて前記電極に印加する目標電圧値を求める目標電圧値設定手段と、前記目標電圧値設定手段により求めた目標電圧値を印加したときの電流値を検出する電流検出手段と、前記目標電圧値と前記電流値とから前記電気粘性流体の温度を求める温度算出手段と、を有し、前記温度算出手段は、前記ピストンの速度であるピストン速度が所定速度以下のときの前記目標電圧値と前記電流値とを用いる。
この第1の態様によれば、電気粘性流体の推定温度の誤差を低減することができる。即ち、温度算出手段は、ピストン速度が所定速度以下のときの目標電圧値と電流値とから電気粘性流体の温度を求めることができる。このため、ピストン速度に応じて変化する電流の影響に伴う推定温度の誤差を低減できる。これにより、推定温度の精度を向上することができる。
第2の態様としては、第1の態様において、前記コントローラは、前記ピストン速度を求めるピストン速度推定手段を有する。
この第2の態様によれば、温度算出手段は、ピストン速度推定手段が求めたピストン速度に基づいて、ピストン速度が所定速度以下であるか否かを判定することができる。
1 車体(車両の相対移動する部材)
2 車輪(車両の相対移動する部材)
12 ばね上加速度センサ(車両挙動検出手段)
13 ばね下加速度センサ(車両挙動検出手段)
14,41 コントローラ
15 乗り心地・操縦安定性制御部(目標電圧値設定手段)
16 相対速度算出部(ピストン速度推定手段)
17,42 温度算出部(温度算出手段)
21 緩衝器(減衰力調整式緩衝器)
22 ERF(電気粘性流体)
23 内筒(シリンダ)
24 外筒(シリンダ)
27 ピストン
30 ピストンロッド
36 電極筒(電極)
2 車輪(車両の相対移動する部材)
12 ばね上加速度センサ(車両挙動検出手段)
13 ばね下加速度センサ(車両挙動検出手段)
14,41 コントローラ
15 乗り心地・操縦安定性制御部(目標電圧値設定手段)
16 相対速度算出部(ピストン速度推定手段)
17,42 温度算出部(温度算出手段)
21 緩衝器(減衰力調整式緩衝器)
22 ERF(電気粘性流体)
23 内筒(シリンダ)
24 外筒(シリンダ)
27 ピストン
30 ピストンロッド
36 電極筒(電極)
Claims (2)
- 車両の挙動を検出する車両挙動検出手段と、
前記車両の相対移動する2部材間に設けられた減衰力調整式緩衝器と、
前記車両挙動検出手段の検出結果に基づいて前記減衰力調整式緩衝器の減衰力を調整するよう制御するコントローラと、を有するサスペンション制御装置であって、
前記減衰力調整式緩衝器は、
電気粘性流体が封入されたシリンダと、
該シリンダ内に摺動可能に挿入されたピストンと、
該ピストンに連結されて前記シリンダの外部に延出するピストンロッドと、
前記シリンダ内の前記ピストンの摺動によって前記電気粘性流体の流れが生じる部分に設けられ、前記電気粘性流体に電界をかける電極と、を備え、
前記コントローラは、
前記車両挙動検出手段の検出結果に基づいて前記電極に印加する目標電圧値を求める目標電圧値設定手段と、
前記目標電圧値設定手段により求めた目標電圧値を印加したときの電流値を検出する電流検出手段と、
前記目標電圧値と前記電流値とから前記電気粘性流体の温度を求める温度算出手段と、を有し、
前記温度算出手段は、前記ピストンの速度であるピストン速度が所定速度以下のときの前記目標電圧値と前記電流値とを用いることを特徴とするサスペンション制御装置。 - 前記コントローラは、前記ピストン速度を求めるピストン速度推定手段を有することを特徴とする請求項1に記載のサスペンション制御装置。
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