以下、本発明の実施の形態に係る高電圧発生器および緩衝器を、4輪自動車等の車両に設けられる緩衝器に適用した場合を例に挙げて、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし図5は、第1の実施形態を示している。図1において、シリンダ装置としての緩衝器1は、内部に封入する後述の作動流体12として機能性流体(即ち、電気粘性流体)を用いた減衰力調整式の油圧緩衝器(セミアクティブダンパ)として構成されている。緩衝器1は、例えば、コイルばねからなる懸架ばね(図示せず)と共に、車両用のサスペンション装置を構成する。
緩衝器1は、外筒2、内筒4、ピストン5、ピストンロッド6、電極筒9、流路10、作動流体12、高電圧発生器21等を含んで構成されている。外筒2は、緩衝器1の外殻をなすもので、円筒体として形成されている。外筒2は、その下端側がボトムキャップ3により溶接手段等を用いて閉塞された閉塞端となっている。
内筒4は、外筒2内に該外筒2と同軸に設けられ、軸方向に延びる円筒状の筒体として形成されている。この内筒4は、高電圧発生器21の出力側(負側)にバルブボディ8Aまたはロッドガイド7と外筒2とを介して接続され、減衰力調整回路13の一部を構成している。内筒4の内部には、後述のピストンロッド6が挿入されるとともに、作動流体12が封入されている。
内筒4と外筒2との間には、環状のリザーバ室Aが形成されている。具体的には、リザーバ室Aは、電極筒9と外筒2との間に形成されている。このリザーバ室A内には、作動流体12と共に作動気体となるガスが封入されている。リザーバ室A内のガスは、ピストンロッド6の縮小時に、当該ピストンロッド6の進入体積分を補償すべく圧縮される。
ピストン5は、内筒4内に摺動可能に挿嵌されている。ピストン5は、内筒4内をロッド側油室Bとボトム側油室Cとに画成している。また、ピストン5は、内筒4内でピストンロッド6の下端側に連結(固定)されている。このピストン5には、ボトム側油室Cからロッド側油室Bへの作動流体12の流通を許し、逆向きの流れを阻止する逆止弁5Aが設けられている。
ロッドガイド7は、内筒4と外筒2の上端側(一端側)に設けられている。ロッドガイド7は、内筒4と外筒2の上端側を閉塞するように、これら内筒4および外筒2に嵌合している。
ボトムバルブ8は、内筒4の下端側(他端側)に位置して該内筒4とボトムキャップ3との間に設けられている。このボトムバルブ8は、バルブボディ8Aと、リザーバ室A内の作動流体12が内筒4内のボトム側油室Cに向けて流通するのを許し、逆向きの流れを阻止する逆止弁8Bとを含んで構成されている。
電極筒9は、中間筒として、内筒4の外側に設けられている。即ち、電極筒9は、外筒2と内筒4との間で軸方向に延びる圧力管となっている。電極筒9は、ロッドガイド7とバルブボディ8Aとの間に、後述のアイソレータ14を介して支持されている。電極筒9は、高電圧発生器21の出力側(正側)に接続され、減衰力調整回路13の一部を構成している。この電極筒9は、内筒4の外周側を全周にわたって取囲むことにより、電極筒9の内部(電極筒9の内周側と内筒4の外周側との間)に、作動流体12が流通する流路10を形成している。この場合、電極筒9の内周側と内筒4の外周側との間には、流路形成部材11が設けられている。これにより、流路10は、流路形成部材11によって蛇行する流路となっている。
作動流体12は、高電圧発生器21の出力側に接続された減衰力調整回路13の一部として、電気粘性流体(ERF:Electro Rheological Fluid)を用いて、内筒4内に封入されている。この電気粘性流体は、電界(電圧)により流体の性状が変化する機能性流体の一種であり、印加される電圧に応じて流通抵抗(減衰力)が変化するものである。電気粘性流体は、例えば、シリコンオイル等からなる基油(ベースオイル)と、該基油に混ぜ込まれ電界の変化に応じて粘性を可変にする粒子とにより構成されている。
ここで、内筒4、電極筒9、流路10、流路形成部材11、作動流体12は、減衰力調整回路13を構成している。また、この減衰力調整回路13は、高電圧発生器21の出力側に接続された外部負荷を構成している。この場合、図2に示すように、減衰力調整回路13の等価回路は、可変抵抗器13Aと可変容量コンデンサ13Bとを有し、可変抵抗器13Aと可変容量コンデンサ13Bとの積である時定数τgを有する回路となる。そして、緩衝器1は、内筒4と電極筒9との間の流路10内(減衰力調整回路13)に電位差を発生させ、該流路10を通過する電気粘性流体(作動流体12)の粘度を制御することで、発生減衰力を制御(調整)する構成となっている。
アイソレータ14は、ロッドガイド7と電極筒9の上端側との間およびバルブボディ8Aと電極筒9の下端側との間に位置してそれぞれ設けられている。このアイソレータ14は、例えば電気絶縁性材料により形成され、内筒4、ロッドガイド7およびバルブボディ8Aと電極筒9との間を電気的に絶縁した状態に保っている。
次に、緩衝器1の減衰力調整回路13に電圧を印加する高電圧発生器21について、説明する。
高電圧発生器21は、例えば、外筒2の外周側に取付けられている。この高電圧発生器21は、バッテリ22、昇圧回路23、時定数回路24,25、制御ユニット28等により構成されている。高電圧発生器21の電圧印加線としての正側電源ライン21Aは、電極筒9に電気的に接続されている。一方、高電圧発生器21の負側電源ライン21Bは、外筒2を介して内筒4に電気的に接続されている。この高電圧発生器21は、緩衝器1の減衰力を可変に調整するための制御ユニット28から出力される指令(電圧指令)に基づいて、バッテリ22から出力される直流電圧を昇圧して電極筒9に供給(出力)する。
これにより、内筒4と電極筒9との間の流路10内には、電極筒9に印加される電圧に応じた電位差が発生し(電界が形成され)、作動流体12の粘度が変化する。この場合、緩衝器1は、電極筒9に印加される電圧に応じて、発生減衰力の特性(減衰力特性)をハード(Hard)な特性(硬特性)からソフト(Soft)な特性(軟特性)に連続的に調整することができる。なお、緩衝器1は、減衰力特性を連続的でなくとも、2段階または複数段階に調整可能なものであってもよい。
バッテリ22は、緩衝器1の作動流体12に電圧を印加するための電源となるもので、例えば、車両の補機用バッテリとなる12Vの車載バッテリ(および、必要に応じて車載バッテリの充電を行うオルタネータ)により構成されている。バッテリ22の電源電圧端子は、昇圧回路23の1次側コイル23A1の一端(正側)に接続されている。一方、バッテリ22のグランド端子は、昇圧回路23の昇圧スイッチ23Bを介して、1次側コイル23A1の他端(負側)に接続されている。
昇圧回路23は、バッテリ22から出力された電源電圧を昇圧するもので、トランス23A、昇圧スイッチ23B、ダイオード23Cを含んで構成されている。この昇圧回路23の入力側はバッテリ22に接続され、昇圧回路23の出力側は、時定数回路24,25および緩衝器1の減衰力調整回路13にそれぞれ接続されている。昇圧回路23は、トランス23Aを用いた絶縁型DC−DCコンバータとして構成されている。
具体的には、トランス23Aの1次側コイル23A1の一端はバッテリ22の電源電圧端子に接続され、1次側コイル23A1の他端は昇圧スイッチ23Bに接続されている。一方、2次側コイル23A2の一端はダイオード23Cのアノードに接続され、2次側コイル23A2の他端は負側電源ライン21Bに接続されている。また、昇圧スイッチ23Bの一端は1次側コイル23A1に接続され、昇圧スイッチ23Bの他端はバッテリ22のグランド端子に接続されている。さらに、昇圧スイッチ23Bは、制御ユニット28に接続されている。ダイオード23Cのアノードは2次側コイル23A2の一端に接続され、ダイオード23Cのカソードは正側電源ライン21Aに接続されている。
ここで、昇圧回路23は、制御ユニット28からの電圧指令により昇圧スイッチ23BのON/OFFの切替制御を行う。そして、昇圧回路23は、バッテリ22から出力された電源電圧を、トランス23Aにより昇圧して、逆流防止用のダイオード23Cを介して減衰力調整回路13に向けて供給する。
低時定数回路24は、昇圧回路23の出力側に接続されると共に、減衰力調整回路13に並列接続されている。この低時定数回路24は、抵抗器24Aとコンデンサ24Bとから構成されている。低時定数回路24の一端は正側電源ライン21Aに接続され、低時定数回路24の他端は切替スイッチ26を介して負側電源ライン21Bに接続されている。ここで、抵抗器24Aとコンデンサ24Bとは並列に接続されている。この低時定数回路24は、高電圧発生器21の内部負荷を構成し、高電圧発生器21の内部負荷の時定数τnを決定するものである。この場合、低時定数回路24は、抵抗器24Aとコンデンサ24Bとの積である時定数τ1を有している。
高時定数回路25は、昇圧回路23の出力側に接続されると共に、低時定数回路24と同様に減衰力調整回路13に並列接続されている。この高時定数回路25は、抵抗器25Aとコンデンサ25Bとから構成されている。高時定数回路25の一端は正側電源ライン21Aに接続され、高時定数回路25の他端は切替スイッチ27を介して負側電源ライン21Bに接続されている。ここで、抵抗器25Aとコンデンサ25Bとは並列に接続されている。この高時定数回路25は、高電圧発生器21の内部負荷を構成し、高電圧発生器21の内部負荷の時定数τnを決定するものである。この場合、高時定数回路25は、抵抗器25Aとコンデンサ25Bとの積である時定数τ2を有している。
ここで、高時定数回路25の抵抗器25Aの抵抗値は、低時定数回路24の抵抗器24Aの抵抗値よりも高く設定されている。これにより、高時定数回路25の時定数τ2は、低時定数回路24の時定数τ1よりも高く設定(τ2>τ1)されている。この場合、時定数τ2が時定数τ1よりも高い関係であれば、低時定数回路24のコンデンサ24Bと高時定数回路25のコンデンサ25Bとの容量値を、仕様に応じて適宜設定することができる。
切替スイッチ26は、低時定数回路24に接続されて設けられている。即ち、切替スイッチ26の一端は低時定数回路24の他端に接続され、切替スイッチ26の他端は負側電源ライン21Bに接続されている。また、切替スイッチ26は、制御ユニット28の切替器28Aに接続されている。この切替スイッチ26は、切替器28Aからの制御信号に応じて、低時定数回路24を正側電源ライン21Aと負側電源ライン21Bとの間に接続または非接続するものである。
切替スイッチ27は、高時定数回路25に接続されて設けられている。即ち、切替スイッチ27の一端は高時定数回路25の他端に接続され、切替スイッチ27の他端は負側電源ライン21Bに接続されている。また、切替スイッチ27は、制御ユニット28の切替器28Aに接続されている。この切替スイッチ27は、切替器28Aからの制御信号に応じて、高時定数回路25を正側電源ライン21Aと負側電源ライン21Bとの間に接続または非接続するものである。
制御ユニット28は、例えばマイクロコンピュータ等からなり、切替器28Aを含んで構成されている。制御ユニット28の出力側は、昇圧回路23の昇圧スイッチ23Bに接続されている。制御ユニット28は、例えば、ばね上加速度センサおよびばね下加速度センサ(いずれも図示せず)の検出結果に基づいて、緩衝器1の減衰力を調整するように制御する。即ち、制御ユニット28は、ばね上加速度センサとばね下加速度センサとにより得た情報から、高電圧発生器21(の昇圧回路23)に出力する電圧指令を算出し、減衰力可変ダンパである緩衝器1を制御する。
具体的には、制御ユニット28は、昇圧回路23の昇圧スイッチ23BのON/OFFを繰り返し切替えることにより、高電圧を緩衝器1に向けて印加する。高電圧が入力された緩衝器1は、その電圧値(内筒4と電極筒9間の電位差)の変化に応じて作動流体12の粘性が変化し、緩衝器1の減衰力特性を調整することができる。
切替器28Aは、時定数制御装置として、例えばマイクロコンピュータ等からなり、制御ユニット28の一部を構成している。切替器28Aの出力側は切替スイッチ26,27に接続され、切替器28Aの入力側は電流センサ29に接続されている。この切替器28Aは、電流センサ29により計測した作動流体12の温度状態の高低に応じて時定数回路24,25を切替えて、高電圧発生器21の内部負荷の時定数τnを制御して、時定数τnを異なる値に変更するものである。
電流センサ29は、温度状態取得部として、高電圧発生器21内に位置して設けられている。電流センサ29の入力側は負側電源ライン21Bに接続され、電流センサ29の出力側は制御ユニット28の切替器28Aに接続されている。電流センサ29は、減衰力調整回路13からの帰還電流(帰還信号)Ifbを用いて、作動流体12の温度状態を取得するものである。ここで、作動流体12の抵抗値は、作動流体12の温度Tに対して単調に減少するため、予め実験、シミュレーション等により求めた温度特性マップを用いて帰還電流Ifbを測定することにより、作動流体12の温度Tを一意に決定することができる。
第1の実施形態による緩衝器1は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
緩衝器1を自動車等の車両に実装するときは、例えば、ピストンロッド6の上端側を車両の車体側に取付け、外筒2の下端側(ボトムキャップ3側)を車輪側(車軸側)に取付ける。車両の走行時には、路面の凹凸等により、上,下方向の振動が発生すると、ピストンロッド6が外筒2から伸長、縮小するように変位する。このとき、制御ユニット28からの電圧指令に基づいて流路10内に電位差を発生させ、流路10を通過する作動流体12の粘度を制御することにより、緩衝器1の発生減衰力を可変に調整する。
例えば、ピストンロッド6の伸び行程時には、内筒4内のピストン5の移動によってロッド側油室Bの油液(作動流体12)が加圧され、内筒4の油穴4Aを介して流路10内に油液が流入する。このとき、ピストン5が移動した分の油液は、リザーバ室Aからボトムバルブ8を介してボトム側油室Cに流入する。
一方、ピストンロッド6の縮み行程時には、内筒4内のピストン5の移動によってボトム側油室Cの油液がロッド側油室Bに、ピストン5の逆止弁5Aを通じて流入する。これと共に、ピストンロッド6が内筒4内に進入した分に相当する油液が、ロッド側油室Bから内筒4の油穴4Aを介してから流路10内に流入する。
いずれの場合も(伸び行程時も縮み行程時も)、流路10内に流入した油液は、流路10の電位差(電極筒9と内筒4との間の電位差)に応じた粘度で流路10内を出口側(下側)に向けて通過し、流路10からリザーバ室Aに流れる。このとき、緩衝器1は、流路10内を通過する油液の粘度に応じた減衰力(圧力損失)が発生し、車両の上下振動を緩衝(減衰)することができる。
ここで、図3ないし図5を用いて、制御ユニット28により実行される時定数変更処理について説明する。なお、時定数変更処理は、制御ユニット28が緩衝器1の制御を行っている間、所定の制御周期で繰り返し実行される。
まず、ステップ1では、制御ユニット28の切替器28Aは、バッテリ22から昇圧回路23を介して減衰力調整回路13に供給される電圧指令のデータと、減衰力調整回路13からの帰還電流Ifbとを読み込む。この場合、予め求めた温度特性マップ等を用いて、帰還電流Ifbの値から作動流体12の温度Tを一意に決定することができるので、帰還電流Ifbから温度に変換する必要はない。
次に、ステップ2では、読み込んだ電圧指令のデータと低時定数回路24および高時定数回路25の接続状態とに基づいて、閾値Ithを算出する。ここで、閾値Ithとは、高電圧発生器21の時定数τnを異なる値に変更するときの値をいう。言い換えれば、閾値Ithとは、低時定数回路24から高時定数回路25または高時定数回路25から低時定数回路24に変更するときの値をいう。この閾値Ithは、減衰力調整回路13に供給される電圧と帰還電流Ifbとを用いて予め求めたマップ等により、作動流体12の温度特性、応答特性、消費電力特性等を考慮して、所定の値に設定される。
ステップ3では、帰還電流Ifbが閾値Ithよりも小さいか否かを判定する。即ち、ステップ3では、帰還電流Ifbと閾値Ithとを比べることにより、作動流体12の温度Tが所定の温度よりも高いか否かを判定する。
ステップ3で「YES」と判定し、帰還電流Ifbが閾値Ithよりも小さい場合は、ステップ4に進む。ステップ4では、制御ユニット28の切替器28Aは、切替スイッチ26を「ON」にして切替スイッチ27を「OFF」にする。これにより、切替器28Aは、低時定数回路24と高時定数回路25とのうち低時定数回路24を選択する。そして、切替器28Aは、高電圧発生器21の正側電源ライン21Aと負側電源ライン21Bとの間に低時定数回路24を接続し、高時定数回路25を切り離す。この結果、高電圧発生器21の内部負荷の時定数τnを時定数τ1に設定することができる。
一方、ステップ3で「NO」と判定し、帰還電流Ifbが閾値Ithよりも大きい場合は、ステップ5に進む。ステップ5では、制御ユニット28の切替器28Aは、切替スイッチ26を「OFF」にして切替スイッチ27を「ON」にする。これにより、切替器28Aは、低時定数回路24と高時定数回路25とのうち高時定数回路25を選択する。そして、切替器28Aは、高電圧発生器21の正側電源ライン21Aと負側電源ライン21Bとの間に高時定数回路25を接続し、低時定数回路24を切り離す。この結果、高電圧発生器21の内部負荷の時定数τnを時定数τ2に設定することができる。
次に、本実施の形態による昇圧回路23の出力の時定数τaと作動流体12の温度Tとの関係について、図4および図5を用いて説明する。なお、ここで、昇圧回路23の出力の時定数τaとは、高電圧発生器21の内部負荷の時定数τnと、高電圧発生器21の外部負荷(減衰力調整回路13)の時定数τgとを合わせた全負荷の時定数のことをいう。また、図4、図5において、2点鎖線は作動流体12の温度Tに拘わらず高時定数回路25を使用した場合の第1の比較例を示し、破線は作動流体12の温度Tに拘わらず低時定数回路24を使用した場合の第2の比較例を示している。
図4において、高時定数回路25を用いた第1の比較例では、作動流体12の温度Tが低温状態にある場合には昇圧回路23の出力の時定数τaは高く、作動流体12の温度Tが高温状態にある場合には昇圧回路23の出力の時定数τaは低くなっている。この理由は、作動流体12である電気粘性流体の温度Tが低下することにより、電気粘性流体の抵抗値が増加するからである。一方、低時定数回路24を用いた第2の比較例では、作動流体12の温度Tに拘わらず、昇圧回路23の出力の時定数τaはほぼ一定の値を示している。これは、高電圧発生器21の内部負荷の時定数τnが低い値である時定数τ1に設定されているため、作動流体12の温度状態の影響を受けにくいからであると考えられる。
これに対して、本発明の実施の形態では、作動流体12の温度状態に応じて低時定数回路24と高時定数回路25とを切替える構成としている。即ち、本実施の形態の制御ユニット28の切替器28Aは、帰還電流Ifb(作動流体12の温度T)が閾値Ithよりも小さい場合は、高電圧発生器21の時定数τnを時定数τ2よりも小さな時定数τ1に設定する。これにより、図4中に実線で示すように、作動流体12の温度Tが低温状態にある場合には、第1の比較例に比べて、昇圧回路23の出力の時定数τaを小さくすることができる。また、作動流体12の温度Tが高温状態にある場合には、第2の比較例に比べて、昇圧回路23の出力の時定数τaを大きくすることができる。
また、図5において、高時定数回路25を用いた第1の比較例では、作動流体12の温度Tが上昇するにつれて、作動流体12の温度上昇ΔTも増加する。これは、作動流体12の温度Tが高くなると作動流体12の抵抗値が減少して電流値が増加するので、作動流体12が自己発熱するからである。一方、低時定数回路24を用いた第2の比較例でも、作動流体12の温度Tが上昇するにつれて作動流体12の温度上昇ΔTは大きく増加するが、温度上昇ΔTは、第1の比較例に比べて大きくなる。これは、低時定数回路24では高時定数回路25に比べて低い抵抗値を用いているので、作動流体12の温度Tが高くなると高時定数回路25よりも電流値が大きく増加するからであると考えられる。
これに対して、本発明の実施の形態では、作動流体12の温度状態に応じて低時定数回路24と高時定数回路25とを切替える構成としている。即ち、本実施の形態の制御ユニット28の切替器28Aは、帰還電流Ifb(作動流体12の温度T)が閾値Ithよりも大きい場合は、高電圧発生器21の時定数τnを時定数τ1よりも大きな時定数τ2に設定する。これにより、図5中に実線で示すように、作動流体12の温度Tが高温状態にある場合には、作動流体12の温度上昇ΔTを小さくすることができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、制御ユニット28の切替器28Aが、作動流体12の温度状態の高低に応じて時定数回路24,25を切替えることにより、昇圧回路23の出力の時定数τaを異なる値に変更する構成としている。この場合、時定数回路24,25は、抵抗器24A,25Aおよびコンデンサ24B,25Bから構成されている。これにより、作動流体12の温度状態に応じて昇圧回路23の出力の時定数τaを設定することができるので、作動流体12の温度Tに合わせて適切な特性に切替えることができる。
即ち、作動流体12の温度Tが低温状態にある場合には、昇圧回路23の出力側に低時定数回路24を接続するので、高電圧発生器21の時定数τnを時定数τ2よりも小さな時定数τ1に設定することができる。これにより、昇圧回路23の出力の時定数τaを小さくすることができるので、電圧指令を切替える際の応答速度を上昇させることができる。
一方、作動流体12の温度Tが高温状態にある場合には、昇圧回路23の出力側に高時定数回路25を接続するので、高電圧発生器21の時定数τnを時定数τ1よりも大きな時定数τ2に設定することができる。これにより、昇圧回路23の出力の時定数τaを大きくすることができるので、作動流体12の抵抗値を増加させて電流値を低下させることができる。この結果、高電圧発生器21の消費電力を抑制して最大出力量を抑制することができるので、高電圧発生器21を小型化することができる。さらに、高電圧発生器21の発熱量を抑制することができるので、連続使用時の耐久性向上を可能にして、品質を向上することができる。
また、高電圧発生器21は、電流センサ29を用いて、減衰力調整回路13からの帰還電流Ifbから作動流体12の温度状態を取得する構成としている。これにより、予め作成したマップ等を用いて帰還電流Ifbから作動流体12の温度状態を取得することができるので、電流値を基準とした温度の判定を行うことができる。
次に、図6は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、時定数回路を抵抗のみからなる構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図6において、高電圧発生器31は、バッテリ22、昇圧回路23、制御ユニット28、コンデンサ32、時定数回路33,34等により構成されている。
コンデンサ32は、昇圧回路23の出力側に位置して、減衰力調整回路13に並列接続されている。このコンデンサ32の一端は正側電源ライン21Aに接続され、コンデンサ32の他端は負側電源ライン21Bに接続されている。この場合、コンデンサ32は、電源ライン21A,21B間に供給される出力電圧を平滑化するものである。また、コンデンサ32は、所定の容量値を有し、低時定数回路33または高時定数回路34とともに、高電圧発生器31の内部負荷の時定数τnを決定するものである。
低時定数回路33は、昇圧回路23の出力側に接続されると共に、コンデンサ32と同様に減衰力調整回路13に並列接続されている。この低時定数回路33は、抵抗器33Aから構成されている。低時定数回路33の一端は正側電源ライン21Aに接続され、低時定数回路33の他端は切替スイッチ26を介して負側電源ライン21Bに接続されている。この低時定数回路33は、高電圧発生器31の内部負荷を構成し、高電圧発生器31の内部負荷の時定数τnを決定するものである。この場合、低時定数回路33は、切替スイッチ26を「ON」にしてコンデンサ32と並列接続されることにより、抵抗器33Aとコンデンサ32との積である時定数τ1を高電圧発生器31の内部負荷の時定数τnとして決定する。
高時定数回路34は、昇圧回路23の出力側に接続されると共に、コンデンサ32および低時定数回路33と同様に減衰力調整回路13に並列接続されている。この高時定数回路34は、抵抗器34Aとから構成されている。高時定数回路34の一端は正側電源ライン21Aに接続され、高時定数回路34の他端は切替スイッチ27を介して負側電源ライン21Bに接続されている。この高時定数回路34は、高電圧発生器31の内部負荷を構成し、高電圧発生器31の内部負荷の時定数τnを決定するものである。この場合、高時定数回路34は、切替スイッチ27を「ON」にしてコンデンサ32と並列接続されることにより、抵抗器34Aとコンデンサ32との積である時定数τ2を高電圧発生器31の内部負荷の時定数τnとして決定する。
ここで、高時定数回路34の抵抗器34Aの抵抗値は、低時定数回路33の抵抗器33Aの抵抗値よりも高く設定されている。従って、高時定数回路34を用いることによる時定数τ2は、低時定数回路33を用いることによる時定数τ1よりも高く設定(τ2>τ1)されている。
かくして、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。第2の実施の形態では、時定数回路33,34は、抵抗器33A,34Aからそれぞれ構成されている。これにより、低時定数回路33と高時定数回路34とにおいて、コンデンサ32を共通化することができる。この結果、部品の共通化を図ることができるので、緩衝器1の製造コストを抑制することができる。
なお、前記第1,第2の実施の形態では、電流センサ29により減衰力調整回路13からの帰還電流Ifbを測定して、作動流体12の温度状態を取得する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、図7に示す変形例のように構成してもよい。即ち、高電圧発生器21内に温度状態取得部としての温度センサ41を設けて、作動流体12の温度状態を取得してもよい。この場合、温度センサ41は、例えばサーミスタ、熱電対等の温度検出器により構成すればよい。
また、前記第1の実施の形態では、高電圧発生器21は2個の低時定数回路24と高時定数回路25とを備える構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、高電圧発生器は3個以上の時定数回路を備える構成としてもよい。さらに、昇圧回路の出力側に2個以上の時定数回路を同時に接続することにより、昇圧回路の出力の時定数を異なる値に変更する構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
また、前記第1,第2の実施の形態では、昇圧回路23をトランス23Aを用いた絶縁型のDC−DCコンバータとして構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、昇圧回路は、チョッパを用いた非絶縁型のDC−DCコンバータとして構成してもよいし、他の方式の昇圧回路を用いる構成としてもよい。
また、前記第1の実施の形態では、2つの切替スイッチ26,27を設けて、低時定数回路24と高時定数回路25とを切替える場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、1つの切替スイッチを設けて、低時定数回路と高時定数回路とを切替える構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
また、前記第1,第2の実施の形態では、シリンダ装置としての緩衝器1を4輪自動車に用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、2輪車に用いる緩衝器、鉄道車両に用いる緩衝器、一般産業機器を含む各種の機械機器に用いる緩衝器、建築物に用いる緩衝器等、緩衝すべき対象を緩衝する各種の緩衝器(シリンダ装置)として広く用いることができる。
また、前記第1,第2の実施の形態では、高電圧発生器21,31を緩衝器1に用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、高電圧発生器を緩衝器以外の回路に用いる構成としてもよい。
次に、前記実施の形態に含まれる発明について記載する。本発明によれば、時定数回路は、抵抗器およびコンデンサからなる構成としている。これにより、抵抗器の抵抗値およびコンデンサの容量値を切替えることにより、時定数を変更することができる。
また、本発明によれば、時定数回路は、抵抗器からなる構成としている。これにより、抵抗器の抵抗値を切替えることにより、時定数を変更することができる。
また、本発明によれば、温度状態取得部は、外部負荷からの帰還信号を用いて外部負荷の温度状態を取得する構成としている。これにより、外部負荷からの帰還信号の電流値を測定することで、外部負荷の温度状態を取得することができる。
また、本発明によれば、温度状態取得部は、温度センサを用いて外部負荷の温度状態を取得する構成としている。これにより、温度センサを用いて外部負荷の温度状態を取得することができる。
また、本発明によれば、緩衝器は、電界により粘度が変化する機能性流体と、該機能性流体が内部に封入された内筒と、該内筒の外側に設けられ該内筒との間に前記機能性流体が流通する流路を形成し該内筒との間に電界を形成する電極筒とを有する減衰力調整回路と、減衰力調整回路に高電圧を供給する高電圧発生器と、を備えている。この場合、高電圧発生器は、電源電圧を昇圧して出力側に接続された減衰力調整回路に供給する昇圧回路と、減衰力調整回路の温度状態を取得するための温度状態取得部と、昇圧回路の出力の時定数を決定する少なくとも2つ以上の時定数回路と、時定数回路を切替えて昇圧回路の出力の時定数を制御する時定数制御装置と、を備え、時定数制御装置が、減衰力調整回路の温度状態の高低に応じて時定数回路を切替えることにより、昇圧回路の出力の時定数を異なる値に変更する構成としている。これにより、機能性流体の温度状態に応じて時定数を設定することができるので、機能性流体の温度に合わせて適切な特性に切替えることができる。
以上説明した実施形態に基づく高電圧発生器および緩衝器として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
高電圧発生器の第1の態様としては、電源電圧を昇圧して出力側に接続された外部負荷に供給する昇圧回路と、前記外部負荷の温度状態を取得するための温度状態取得部と、前記昇圧回路の出力側に接続された少なくとも2つ以上の時定数回路と、前記時定数回路を切替えて前記昇圧回路の出力の時定数を制御する時定数制御装置と、を備え、前記時定数制御装置が、前記外部負荷の温度状態の高低に応じて前記時定数回路を切替えることにより、前記昇圧回路の出力の時定数を異なる値に変更する。
第2の態様としては、第1の態様において、前記時定数回路は、抵抗器およびコンデンサからなる。
第3の態様としては、第1の態様において、前記時定数回路は、抵抗器からなる。
第4の態様としては、第1の態様乃至第3の態様のいずれかにおいて、前記温度状態取得部は、前記外部負荷からの帰還信号を用いて前記外部負荷の温度状態を取得する。
第5の態様としては、第1の態様乃至第3の態様のいずれかにおいて、前記温度状態取得部は、温度センサを用いて前記外部負荷の温度状態を取得する。
緩衝器の第6の態様としては、電界により粘度が変化する機能性流体と、該機能性流体が内部に封入された内筒と、該内筒の外側に設けられた電極筒とを有する減衰力調整回路と、前記減衰力調整回路に高電圧を供給する高電圧発生器と、を備えた緩衝器において、前記高電圧発生器は、電源電圧を昇圧して出力側に接続された前記減衰力調整回路に供給する昇圧回路と、前記減衰力調整回路の温度状態を取得するための温度状態取得部と、前記昇圧回路の出力の時定数を決定する少なくとも2つ以上の時定数回路と、前記時定数回路を切替えて前記昇圧回路の出力の時定数を制御する時定数制御装置と、を備え、前記時定数制御装置が、前記減衰力調整回路の温度状態の高低に応じて前記時定数回路を切替えることにより、前記昇圧回路の出力の時定数を異なる値に変更する。