JP2019161091A - 感光性樹脂組成物および有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
現在、有機EL素子の量産においては蒸着法が先行している。しかし、印刷法は、高価な有機材料の使用効率が極めて高く、また、サイズ拡張性に優れている(大面積のディスプレイ製造に適用しやすい)といった利点がある。報道によれば、2017年末から、印刷法による有機ELディスプレイの量産が開始されている。
この開口部3に、インクジェットヘッド10より、材料液4を吐出して注入する。材料液4は、典型的には、RGBの画素の素となる色素等を有機溶剤に溶解または分散させたものである。
材料液4は、開口部3に注入された直後においては、その表面張力により、図2Aに示されるような状態となっていると考えられる。
その後、注入された材料液4中の有機溶剤が揮発することで、画素5(より具体的には、RGB3色の画素:5R、5Gおよび5B)を得ることができる。
検討を通じ、感光性樹脂組成物を単に膜としたときのアニソールの接触角に加え、その膜をアルカリ現像液で現像などした後の接触角の「変化」が、上記の課題解決と密接に関係しているらしいことを知見した。この知見に基づいてさらに検討を進め、以下に提供される発明を完成させた。そして、上記課題を解決した。
有機エレクトロルミネッセンス素子の隔壁を形成するための感光性樹脂組成物であって、
当該感光性樹脂組成物を用いて形成した膜厚4μmの膜の、アニソールの接触角をθ1、
前記膜を1質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に130秒浸漬し、その後230℃で60分加熱して硬化させた硬化膜の、アニソールの接触角をθ2としたとき、
θ1が20°以上であり、
θ1とθ2の差の絶対値が10°以下である、感光性樹脂組成物
が提供される。
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
基板上に、上記の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成する膜形成工程と、
前記感光性樹脂膜をパターン露光する露光工程と、
露光された前記感光性樹脂膜を現像して隔壁を得る現像工程と、
前記基板上の前記隔壁で囲われた領域に、有機材料を有機溶剤に溶解または分散させたインクを印刷する印刷工程と、を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
が提供される。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
煩雑さを避けるため、(i)同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合や、(ii)特に図2以降において、図1と同様の構成要素に改めては符号を付さない場合がある。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、有機EL素子の隔壁を形成するために用いられる。
そして、この感光性樹脂組成物を用いて形成した膜厚4μmの膜の、アニソールの接触角をθ1、
上記の膜を1質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に130秒浸漬し、その後230℃で60分加熱して硬化させた硬化膜の、アニソールの接触角をθ2としたとき、
θ1が20°以上であり、
θ1とθ2の差の絶対値が10°以下である。
上面2aの撥液性が小さくなると、ある開口部3に注入された材料液4が、上面2aを這って他の開口部3や画素5に伝わりやすくなる。つまり、RGBの混色等の不具合が生じやすくなる。
(1)感光性樹脂組成物を単に膜としたとき、つまり、現像前の膜のアニソールの接触角が比較的高いこと(撥液性が高い材料を含んでいること)
(2)上記の膜をアルカリ現像液で現像などした後においてもアニソールの接触角が高いこと、換言すると、アルカリ現像液で現像してもアニソールの接触角の変化が小さいこと(撥液性が高い材料が、現像液で流されないこと)
もちろん、θ1およびθ1とθ2の差を上記の値とするための処方設計は、上記のみに限定されるものではない。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、典型的には樹脂を含む。
樹脂は、好ましくは、ケイ素原子含有構造単位またはフッ素原子含有構造単位を含む。これにより、樹脂が撥液性となり、θ1を20°以上としやすくなる。また、低分子化合物ではなく高分子である樹脂に撥液性構造を導入することで、現像時の撥液成分の流出が抑えやすくなる。その結果、θ1とθ2の差の絶対値を10°以下としやすくなる。
一態様として、ケイ素原子含有構造単位は、Si−O−Si結合(シロキサン結合)を持つものが好ましい。ケイ素原子含有構造単位がシロキサン結合を含むことで、樹脂がある程度柔軟となり、組成物としての塗布性、膜形成性などの観点で好ましい。
樹脂中にシロキサン結合を含む構造を導入する方法としては、そのような構造を含むモノマーを重合して樹脂を得ることや、樹脂に対して後述の一般式(S1)および/または(S2)で表される化合物を作用させる等の方法が挙げられる。
以下において、XおよびRxは、水素原子、−CH3、−F、又は、−CF3を表す。
上記構造単位の量を1モル%以上とすることで、十分な撥液性を得ることができると考えられる。また、30モル%以下とすることで、組成物の透明性を高くすることなどができると考えられ、感光性樹脂組成物への適用に好ましい。
なお、この構造単位は、上記のケイ素原子含有構造単位またはフッ素原子含有構造単位と重複していてもよい。例えば、ある構造単位が、環状オレフィン骨格とケイ素原子とを両方含む骨格であってもよい。
樹脂中の上記構造単位の量は、上記のメリットを確実に得る点で、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは60〜100モル%である。
アルカリ可溶性基の具体例としては、カルボキシル基やフェノール性水酸基が挙げられる。
また、前述のフッ素原子含有構造単位にて説明した−C(CF3)2OHで表される基は、アルカリ可溶性基としての機能を有する。
本発明者らの知見によれば、フルオロエチレンに由来する構造単位が主鎖に含まれると、樹脂単体および硬化膜のガラス転移温度を低くする傾向にあり(ガラス転移温度が高いほうが好ましい理由については後述する)、また、撥水性が強すぎて現像性が悪化する傾向にあること等から、樹脂の構造単位として実質的に含まれないことが好ましい。
樹脂の多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、好ましくは1.0〜3.0、より好ましくは1.0〜2.5、さらに好ましくは1.0〜2.0である。多分散度を適切に調整することで、樹脂の物性を均質にすることができ、好ましい。
これらの値は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めることができる。
なお、後述のポリマー(P)の合成法については別途詳述する。
なお、本実施形態の感光性樹脂組成物は、樹脂を1種のみ含んでもよいし、2種以上の樹脂を含んでもよい。
ポリマー(P)は、好ましくは、下記一般式(A1)で表される構造単位と、下記一般式(B1)で表される構造単位および下記一般式(B2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくともいずれかの構造単位とを含む。
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜30の有機基であり、
a1は0、1または2である。
RSは、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基である。具体的には、シロキサン結合を含む基、フッ化アルキル基、パーフルオロアルキル基、−C(CF3)2OHで表される構造を含む基などが挙げられる。
RSとして好ましくは、下記一般式(S1)で表される化合物のNH2部分を除いた一価の基、または、下記一般式(S2)で表される化合物のNH2部分を除いた一価の基である。
複数のRは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基であり、
R5は、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基であり、
Xは、炭素数1〜30の二価の有機基であり、
kは、1以上の整数を表す。
複数のRはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基であり、
R6およびR7はそれぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基であり、
X'は、炭素数1〜30の二価の有機基であり、
lおよびmは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、ビニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル基などが挙げられる。
アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、エチリデン基などが挙げられる。
アリール基としては、例えばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
アルカリル基としては、例えばトリル基、キシリル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。
なお、R1、R2、R3およびR4の炭素数1〜30の有機基中の水素原子は、任意の原子団により置換されていてもよい。例えば、フッ素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基などで置換されていてもよい。より具体的には、R1、R2、R3およびR4の炭素数1〜30の有機基として、フッ化アルキル基などを選択してもよい。
以下、一般式(S1)および一般式(S2)について説明する。
Rのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
Rのシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基が挙げられる。また、ノルボルニル基、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基も挙げることができる。
Rのアルケニル基としては、例えば、アリル基、ペンテニル基、ビニル基などが挙げられる。
Rのアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などが挙げられる。
Rのアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
Rとして特に好ましくはメチル基またはフェニル基であり、最も好ましくはメチル基である。
R5の炭素数は、好ましくは1〜12であり、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜6である。
R5として好ましくはアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基である。
2価の有機基を構成する炭素鎖の一部は、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合などにより置き換えられていてもよい。例えば、プロピレン基−CH2−CH2−CH2−の中央のCH2部位がエーテル結合に置き換わった−CH2−O−CH2−などの構造であってもよい。
Xのシクロアルキレン基としては、Rのシクロアルキル基として例示した基から任意の水素原子を1つ除いて得られる2価の基などが挙げられる。
Xのアリーレン基としては、Rのアリール基として例示した基から任意の水素原子を1つ除いて得られる2価の基などが挙げられる。
Rの具体例や好ましい態様については、一般式(S1)におけるRと同様である。
R6およびR7がアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基である場合、これらの基の具体例や好ましい態様については一般式(S1)のR5と同様であるが、特に好ましくはメチル基である。
X'の炭素数1〜30の二価の有機基の具体例や好ましい態様については、一般式(S1)のXと同様である。
lは、1以上の整数であればよいが、好ましくは1〜1000、より好ましくは3〜500、さらに好ましくは5〜200である。
mは、1以上の整数であればよいが、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜2である。
なお、mが2以上の整数である場合、2つ以上−NH2が存在することとなるが、そのうちの1つを除いた構造が一般式(B1)または一般式(B2)のRsとなる。
本発明者らの知見などによれば、一般式(B1)で表される構造単位のほうが、一般式(B2)で表される構造よりも、Rsの部分が熱分解や解離などしにくい。つまり、ポリマー(P)を隔壁形成材料として用いる場合、露光や加熱などによっても樹脂が安定的に存在するため、好ましい。
なお、ポリマー(P)中に一般式(B1)で表される構造単位が存在するか否かについては、例えば、赤外線分光測定(FT−IR分析)により、波数1600cm−1(アミド基のN−H変角振動)付近の吸収の有無が1つの手がかりとなる。
RAの炭素数は、好ましくは1〜12であり、より好ましくは2〜10であり、さらに好ましくは2〜8である。RAの炭素数を調整することで、有機溶剤に対する溶解性とアルカリ現像液に対する溶解性とを高度に両立させることができる。
ポリマー(P)は、例えば、別途詳述する製造方法(合成方法)において、原料ポリマーと反応させる化合物(一般式(S1)で表される化合物および/または一般式(S2)で表される化合物)の仕込み量や、後述する一般式(C1−m)で表されるアルコールの無水マレイン酸との反応性などにより、この構造単位を含みうる。
例えば、一般式(A1)で表される構造単位と、式(D1)で表される構造単位とを含む原料ポリマーを、一般式(S1)で表される化合物および/または一般式(S2)で表される化合物と反応させることで得ることができる。
なお、以下では、一般式(S1)で表される化合物および/または一般式(S2)で表される化合物のことを「アミノ化シリコーン化合物」とも表記する。
原料ポリマーは、下記一般式(2)で表されるモノマーと、無水マレイン酸とを重合(付加重合)することで得ることができる。
一般式(2)で表されるモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ビシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン(慣用名:2−ノルボルネン)、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−アリル−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−エチニル−2−ノルボルネン、5−ベンジル−2−ノルボルネン、5−フェネチル−2−ノルボルネン、2−アセチル−5−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
重合の際、一般式(2)で表されるモノマーは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物などを使用できる。
アゾ化合物として具体的には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)などを挙げることができる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化水素、ジターシャリブチルパーオキサイド(DTBP)、過酸化ベンゾイル(ベンゾイルパーオキサイド,BPO)および、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKP)などを挙げることができる。
重合開始剤については、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
反応容器に仕込む際の、一般式(2)で表されるモノマーと、無水マレイン酸とのモル比は、0.5:1〜1:0.5であることが好ましい。分子構造制御の観点から、モル比は1:1であることが好ましい。
このような工程により、「原料ポリマー」を得ることができる。
なお、原料ポリマーは、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、周期共重合体などのいずれであってもよい。
具体的には、合成された原料ポリマーと低分子量成分とが含まれた有機層を濃縮し、その後、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒と混合して溶液を得る。そして、この溶液を、メタノールなどの貧溶媒と混合し、モノマーを沈殿させる。この沈殿物を濾取して乾燥させることで、原料ポリマーの純度を上げることができる。
(1)原料ポリマーを適当な有機溶剤(後述するアルコール系溶媒、および/または、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)などの単独溶媒または混合溶媒)に溶解させた溶液を準備する。これを撹拌しながら、有機溶剤で希釈したアミノ化シリコーン化合物を滴下する。これにより、原料ポリマーの無水マレイン酸に由来する構造単位と、アミノ化シリコーン化合物の−NH2部位とを反応させ、当該構造単位を開環させつつアミド結合を形成する。なお、無水マレイン酸に由来する構造単位が開環すると、アミド結合に加え、カルボキシル基が生成される。
(2)滴下終了後、溶液を80〜200℃で1〜24時間加熱(還流など)する。これにより、上記の工程(1)で無水マレイン酸に由来する構造単位の開環により生成されたカルボキシル基とアミド結合とが反応し、脱水してイミド環構造が形成される。
RA−OH (C1−m)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、感光剤を含む。
感光剤としては、酸発生剤、すなわち、活性光線(例えばg線やi線など)の照射により酸を発生する化合物を好ましく挙げることができる。
ジアゾキノン化合物としては、例えば、以下に示すものを使用することができる。
ジアゾキノン化合物のQとしては、下式(a)または下式(b)を含むことが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の透明性を向上することができる。したがって、感光性樹脂組成物の外観をよくすることができる。
感光剤の量は、感光性樹脂組成物中の不揮発成分の全量を基準(100質量%)として、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは15〜35質量%、さらに好ましくは20〜30質量%である。感光剤の量を適切に調整することで、現像時に未露光部の膜減りを抑制でき、解像性も向上することができる。膜減りの抑制は、所望の構造の隔壁を得る上で望ましい。
適切な量の感光剤を用いることで、「溶解すべき部分は溶解し、溶解すべきでない部分は溶解しない」状態を実現しやすくなり、未露光部の樹脂が溶け出しにくくなると考えられる。結果、膜減りが抑制されやすくなると考えられる。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、好ましくは、架橋剤を含む。架橋剤は、典型的には、樹脂と架橋剤、または、架橋剤同士で共有結合を形成可能な基(架橋性基)を有している。そして、感光剤から発生した酸の作用および/または加熱により、架橋反応が進行する。
好ましい架橋剤(C)としては、例えば以下(1)〜(5)の化合物などが挙げられる。本実施形態では、特に(2)のエポキシ基を有する化合物が、耐熱性(硬化時のガラス転移温度を高くしやすい)、樹脂との相溶性の良さ、樹脂が有する官能基(例えば、カルボキシ基など)との反応性の良さなどから好ましい。
架橋剤の量は、感光性樹脂組成物中の不揮発成分の全量を基準(100質量%)として、好ましくは3〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは10〜18質量%である。
感光性樹脂組成物は、密着助剤を含んでもよい。これにより、感光性樹脂組成物で形成された樹脂膜やパターンの、基板との密着性を高めることができる。
使用可能な密着助剤は特に限定されない。例えば、アミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、ウレイドシラン、酸無水物官能型シラン、スルフィドシラン等のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エポキシシラン(すなわち、1分子中に、エポキシ部位と、加水分解によりシラノール基を発生する基の両方を含む化合物)または酸無水物官能型シラン(すなわち、1分子中に、酸無水物基と、加水分解によりシラノール基を発生する基の両方を含む化合物)が好ましい。
密着助剤の量は、感光性樹脂組成物中の不揮発成分の全量を基準(100質量%)として、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%、さらに好ましくは2〜4質量%である。この範囲とすることで、他の性能とのバランスを取りつつ、密着助剤の効果である「密着性」を十分に得ることができると考えられる。
感光性樹脂組成物は、界面活性剤を含んでもよい。これにより、感光性樹脂組成物を基板上に塗布した際の厚みの均一性を向上させうる。
界面活性剤としては、フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかを含むノニオン系界面活性剤であることが好ましい。市販品としては、例えば、DIC株式会社製の「メガファック」シリーズの、F−251、F−253、F−281、F−430、F−477、F−551、F−552、F−553、F−554、F−555、F−556、F−557、F−558、F−559、F−560、F−561、F−562、F−563、F−565、F−568、F−569、F−570、F−572、F−574、F−575、F−576、R−40、R−40−LM、R−41、R−94等の、フッ素を含有するオリゴマー構造の界面活性剤、株式会社ネオス製のフタージェント250、フタージェント251等のフッ素含有ノニオン系界面活性剤、ワッカー・ケミー社製のSILFOAM(登録商標)シリーズ(例えばSD 100 TS、SD 670、SD 850、SD 860、SD 882)等のシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の不揮発成分の全量を基準(100質量%)として、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜5質量%、さらに好ましくは0.5〜3質量%である。この範囲とすることで、他の性能とのバランスを取りつつ、樹脂膜の厚みの均一性の向上等の効果を十分に得られると考えられる。
もちろん、界面活性剤を用いたとしても、θ1が20°以上であり、かつ、θ1とθ2の差の絶対値が10°以下であれば特段の問題はない。
感光性樹脂組成物は、溶剤を含むことが好ましい。
使用可能な溶剤は、典型的には有機溶剤である。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ラクトン系溶剤、カーボネート系溶剤などを用いることができる。
溶剤を用いる場合、その使用量は特に限定されないが、不揮発成分の濃度が例えば10〜70質量%、好ましくは15〜60質量%となるような量で使用される。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記以外の種々の成分を含んでもよい。例えば、塩基性化合物、硬化促進剤、酸化防止剤、シリカ等の充填材、増感剤、フィルム化剤、溶解促進剤、溶解抑制剤などを含んでもよいし、含まなくてもよい。
上記のうち、塩基性化合物については、各種のアミン化合物(例えば1級アミン、2級アミン、3級アミンなど)を具体的に挙げることができる。また、上記のうち、硬化促進剤については、アミジン骨格を含む含窒素複素環式化合物またはその塩(具体的には、ジアザビシクロウンデセンまたはその塩)を具体的に挙げることができる。
なお、これらの成分のうち、特にアルカリ現像液に溶解しやすいものを多量に用いると、現像時に当該成分が流されてしまい、結果、θ1とθ2の差の絶対値が大きくなってしまうとも推測される。使用する際には、撥液性の性能を過度に損なわないか、留意が必要である。一方、これらの成分をうまく用いることで、θ1およびθ1とθ2の差の絶対値を適切にコントロールすることも考えられる。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、ポジ型であってもネガ型であってもよい。得ようとするパターン形状などによりいずれにも設計しうる。なお、典型的には、感光剤から発生する酸の強度や、架橋剤の反応性(感光剤からの発生酸により架橋反応が進行するか否か)などを適宜調整することで、感光性樹脂組成物をポジ型にもネガ型にも設計しうる。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、硬化させて硬化膜としたときのガラス転移温度がある程度高いことが好ましい。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述のとおり、θ1が20°以上であり、θ1とθ2の差の絶対値が10°以下であればよいが、これらの値を調整することで、より性能を高めることができる。
具体的には、θ1は、好ましくは30°以上、より好ましくは40°以上である。上限は特にないが、現実的には80°以下である。また、θ1とθ2の差の絶対値は、好ましくは5°以内、より好ましくは3°以内である。θ1とθ2の差の絶対値はゼロに近いほど好ましい。
なお、通常、θ1のほうがθ2よりも大きい。
具体的には、前述のθ1測定用に形成した膜の、水の接触角θ3が、好ましくは70°以上であり、より好ましくは80°以上である。θ3の上限は特にないが、現実的には100°以下である。
また、前述のθ2測定用に形成した硬化膜の、水の接触角θ4が、好ましくは70°以上であり、より好ましくは80°以上である。θ4の上限は特にないが、現実的には100°以下である。
本実施形態の有機EL素子の製造方法は、
基板上に、上記の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成する膜形成工程と、
その感光性樹脂膜をパターン露光する露光工程と、
露光されたその感光性樹脂膜を現像して隔壁を得る現像工程と、
現像工程で得られた、基板上の隔壁で囲われた領域に、有機材料を有機溶剤に溶解または分散させたインク(材料液)を印刷する印刷工程と
を含む。
なお、上記の印刷工程は、好ましくは、インクジェット法により行われる。
ここでの基板は特に限定されず、例えばガラス基板、プラスチック基板、シリコンウエハ、セラミック基板、アルミ基板、SiCウエハ、GaNウエハ、銅張積層板などが挙げられる。有機EL素子を製造する場合には、典型的にはガラス基板が用いられる。
基板は、未加工の基板であっても、電極や素子が表面に形成された基板であってもよい。接着性の向上のために表面処理さていてもよい。
基板上に塗布された感光性樹脂組成物の乾燥は、典型的にはホットプレート、熱風、オーブン等で加熱処理することで行われる。加熱温度は、通常80〜140℃、好ましくは90〜120℃である。また、加熱の時間は、通常30〜600秒、好ましくは30〜300秒程度である。
露光は、適当なフォトマスクを介するなどして、活性光線を感光性樹脂膜に当てることで行う。
活性光線としては、例えばX線、電子線、紫外線、可視光線などが挙げられる。波長でいうと200〜500nmの光が好ましい。パターンの解像度や取り扱い性の点で、光源は水銀ランプのg線、h線又はi線であることが好ましく、特にi線が好ましい。また、2つ以上の光線を混合して用いてもよい。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション又はステッパーが好ましい。
露光の光量は、感光性樹脂膜中の感光剤の量などにより適宜調整すればよいが、例えば100〜500mJ/cm2程度である。
露光された感光性樹脂膜を、適当な現像液により現像することで、隔壁を形成することができる。
アルカリ水溶液として具体的には、(i)水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリ水溶液、(ii)エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン水溶液、(iii)テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩の水溶液などが挙げられる。
有機溶剤として具体的には、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)や酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、等が挙げられる。
現像液には、例えばメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒や、界面活性剤などが添加されていてもよい。
例えば、現像の後、リンス液による洗浄を行ってもよい。リンス液としては、例えば蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、隔壁を加熱して硬化させてもよい。加熱温度は、典型的には150〜400℃、好ましくは160〜300℃、より好ましくは200〜250℃である。加熱時間は特に限定されないが、例えば15〜300分の範囲内である。この加熱処理は、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンなどにより行うことが出来る。加熱処理を行う際の雰囲気気体としては、空気であっても、窒素、アルゴンなどの不活性ガスであってもよい。また、減圧下で加熱してもよい。
現像工程で得られた、基板上の隔壁で囲われた領域(開口部3)に、有機材料を有機溶剤に溶解または分散させたインク(材料液4)を注入する。そして、典型的にはそのインク(材料液4)の有機溶剤を乾燥させることで、画素5を形成することができる。
ここでの有機溶剤としては、アニソールやシクロヘキシルベンゼンなどを挙げることができるが、その他の有機溶剤を用いることもできる。
ドーパント材料の例としては、BCzVBi(4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)、クマリン、ルブレン、DCJTB([2−tert−ブチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)ビニル]−4H−ピラン−4−イリデン]マロノニトリル)などが挙げられる。
ホスト材料の例としては、DPVBi(4,4'−ビス(2,2−ジフェニルエテニル)ビフェニル)、Alq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム)などが挙げられる。
まず、樹脂の合成について説明する。
樹脂1は、以下の、「原料ポリマーの合成」と、「アミノ化シリコーンの導入」の2段階で合成した。
はじめに、撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、無水マレイン酸(以下、MAとも示す)353.02g(3.6mol)と、2−ノルボルネン(以下、NBとも示す)338.94g(3.6mol)と、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)41.45g(180.0mmol)とを入れ、メチルエチルケトン(以下、MEKとも示す)579.0g及びトルエン113.0gからなる混合溶媒に溶解させ、溶解液を作製した。
この溶解液に対して、20分間窒素を通気して、酸素を除去した。次いで、撹拌しつつ温度65℃で6時間加熱することで、MAとNBとを重合させ、重合溶液を作製した。得られた重合溶液をMEK712.9gで希釈することで希釈用液を作製し、次いで、希釈用液をメタノール8553.1gに滴下することで白色固体を析出させた。これにより得られた白色固体を、温度50℃で真空乾燥することにより、NBに由来する構造単位と、MAに由来する構造単位とを含む原料ポリマー604.64g得た。
得られた原料ポリマーをGPC測定した結果、重量平均分子量Mwは12300であり、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1.86であった。
上記の原料ポリマー100g(MA換算0.52mol)に、ブタノール400.0g(5.4mol)を加えた。これを撹拌しながら、ブタノール61.2g(0.83mol)で希釈したアミノ化シリコーン15.3g(信越化学工業株式会社製、品番X−22−9643、0.0156mol、官能基(−NH2)当量980g/mol)を室温で滴下した。滴下終了後に加熱し、温度110℃で4時間加熱処理(Reflux)した。以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸構造の部分に、ブタノールまたはアミノ化シリコーンに由来する構造を導入した。
その後、得られた溶液の溶媒留去と希釈を繰り返すことで、樹脂1の40質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液263.4gを得た。
さらに、赤外線分光分析の結果、波数1600cm−1(アミド基のN−H変角振動)付近に有意な吸収は確認されなかった。このことから、前述の一般式(B1)で表される構造単位が形成されていることが確認された。
この測定においては、0.0〜0.2ppm付近に、原料ポリマーや原料ポリマーにブタノールのみを反応させた場合には確認されない複雑なピークが確認された(図3中「D」のピーク)。これにより、樹脂1にはシリコーン鎖が導入されていることが確認された。すなわち、樹脂1は、アミノ化シリコーンと無水マレイン酸に由来する構造単位とが反応したものであることが確認された。
なお、この測定においては、ブタノールと無水マレイン酸に由来する構造単位とが反応した構造に由来するピーク(図3中「A」)や、前述の「D」以外のアミノ化シリコーンに由来する特徴的なピーク(図3中「B」「C」)なども確認された。
図3の「B」のピーク(原料ポリマーのMA構造単位中の3モル%がアミノシリコーンと反応したものに対応)と、「A」のピークとの面積比などから、原料ポリマー中のMA構造単位の50モル%程度にブタノール由来の構造が導入された(そして、アミノ化シリコーンもブタノールも導入されなかったMA単位(式(D1))はそのまま残った)と考えられた。
樹脂3を、以下のようにして合成した。
まず、複数のガラス機器を用意し、これらを60℃、0.1トル(Torr)下で18時間乾燥した。その後、全てのガラス機器をグローボックス内に備え付けた。
その後、これら仕込んだモノマーを45℃で加熱しながら30分間窒素を流すことによりパージを行った。
このようにして、樹脂3を得た。
また、樹脂3の組成は、1H−NMR測定でのピーク面積から、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5−イル)プロピオン酸(以下、EPENB)が25モル%、HFANBが75モル%であった。
表1に記載された各成分を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に均一に溶解または分散させて、実施例1〜4および比較例1〜4の感光性樹脂組成物を調製した。
表1に記載の各成分の量は、樹脂の量を100質量部としたときの量である。
PGMEAの量は、組成物中の不揮発成分の濃度が30質量%となるようにした。
密着助剤 KBM−403E(信越化学工業社製):3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)
まず、上記で調製した感光性樹脂組成物を、シリコンウエハ上にスピンコートし、ホットプレートを用いて100℃で3分乾燥させることで、膜厚4μmの樹脂膜を形成した。この樹脂膜を、θ1およびθ3測定用の樹脂膜とした。
上記樹脂膜を、シリコンウエハごと、1質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に130秒浸漬(ディップ)し、そして、取り出した。
取り出した樹脂膜に対し、30秒間、純水を洗瓶で全面に回しかけた(リンス工程)。その後、水滴が目視できなくなるまで、樹脂膜にエアー銃でエアーを当てた。
さらにその後、オーブンを用いて、樹脂膜を230℃で60分加熱(Air雰囲気)して、樹脂膜を硬化させた。得られた硬化膜を、θ2およびθ4測定用の硬化膜とした。
アニソールの滴下後、1秒ごとに5回接触角を測定し、その5秒間の測定の平均値を1回の測定での接触角とした。同様の滴下および測定を5回繰り返し、この5回の接触角の平均値をθ1またはθ2とした。
上記の、θ2およびθ4測定用の条件で硬化させた硬化膜(ただし、膜厚は10μmとなるように調整した)を、熱機械的分析装置にかけることで、硬化膜のガラス転移温度を測定した。
硬化膜のついたウエハを、硬化膜が4mm×20mm×厚み10μmになるようにカットし、2質量%のフッ酸水溶液にディップした。これによりウエハから硬化膜を剥離した。剥離した硬化膜を純水で洗浄後、60℃で10時間乾燥させて、ガラス転移温度測定用の試験片を得た。
この試験片を、熱機械分析装置(セイコーインスツル株式会社製、TMA/SS6000)にセットし、1stラン:30℃から130℃(昇温10℃/分)+ホールド15分間、2ndラン:130℃から10℃(降温10℃/分)+ホールド15分間、3rdラン:10℃から400℃(昇温5℃/分)、窒素ガス雰囲気、荷重30mNの条件で熱機械分析を行った。
これの3rdランの結果中の曲線データから変曲点を読み取り、ガラス転移温度とした。
まず、以下工程により、隔壁構造(開口部の形状:縦横それぞれ2200μmの正方形状、隣接する開口部同士の間隔:200μm)を備えるシリコンウエハを形成した。
(1)上記で調製した感光性樹脂組成物を、シリコンウエハ上にスピンコートし、ホットプレートを用いて100℃で3分乾燥させることで、膜厚4μmの樹脂膜を形成した。
(2)上記の樹脂膜に対し、i線ステッパー(NIKON社製、品番NSR−4425i)を用いてi線をパターン露光した。
(3)露光した樹脂膜を、1質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に120秒間浸漬して現像し、樹脂膜の露光された部分を除去した。その後、純水によるリンス工程と、エアー銃による乾燥工程とを行った。
(4)シリコンウエハ上に残った樹脂膜(パターン)を、シリコンウエハごとオーブンで硬化させた。硬化条件は、230℃、1hr、Air雰囲気とした。
浸漬後、当該シリコンウエハを引き上げ、軽く振り、余分なアニソールを落とした。
このシリコンウエハの、隔壁が形成された部分を光学顕微鏡で拡大観察し、隔壁と隔壁の間の部分(図2Aの隔壁の上面2aで表される部分に相当)が、アニソールで濡れているか否かを、以下3段階で評価した。
2:隔壁と隔壁の間の部分の一部が、アニソールで濡れていた。
1:隔壁と隔壁の間の部分が、ほぼ全面的に、アニソールで濡れていた。
感光性樹脂組成物としての基本的性能(解像性、パターニング性)を確認するための評価を行った。
具体的には、上記<隔壁の形成>においては、縦横それぞれ2200μmの正方形状の開口部を解像するフォトマスクを用いたところ、このフォトマスクを、縦横それぞれ7μmの正方形状の開口部を解像するフォトマスクに換えた以外は同様にしてパターニング評価(隔壁構造の形成)を行った。
縦横それぞれ7μmの正方形状の開口部を満足に形成できたものを○(良好)、そうでないものを×(不良)とした。
各実施例および比較例の感光性樹脂組成物を、シリコンウエハ上にスピンコートし、ホットプレートを用いて100℃で3分乾燥させることで、膜厚4μmの樹脂膜を形成した。
形成した樹脂膜の膜厚を、光干渉式膜厚測定装置(VM−1030、SCREEN社製)を用いて測定した(このときの膜厚をT1とする)。
その後、樹脂膜を、シリコンウェハごと、1質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に130秒ディップし、そして、取り出した。30秒間、純水を洗瓶で全面に回しかけた(リンス工程)。その後、水滴が目視できなくなるまで、樹脂膜にエアー銃でエアーを当てた。そして、樹脂膜厚を測定した(このときの膜厚をT2とする)。
(T2/T1)×100の計算より、現像後残膜率を算出した。
特に、ケイ素含有樹脂等を用いた実施例1〜3の組成物により形成された隔壁が、良好な撥液性を示すことが示された。
また、実施例4は、元々のθ1が実施例1〜3に比べて小さいものの、比較例に比べて良好な撥液性を示すことが示された。
さらに、実施例1、3および4の組成物により形成された硬化膜のガラス転移温度は、200℃以上と高めであった。このことより、材料液が隔壁の内部にしみ込みにくかったり、隔壁の熱ダレが抑えられたり、といった効果が推認される。
具体的には、比較例1および2は、ケイ素・フッ素不含有の樹脂2を用いていること等により、θ1自体が小さく、十分な撥液性が得られなかったと考えられる。
また、比較例3は、添加剤としてシリコーン化合物を用いたことにより、θ1はある程度大きな値だったが、θ2が大きく低下し、そして、撥液性は悪いという結果であった。添加剤のシリコーン化合物が膜の上方に偏在し、それが現像により流されてしまったためと推察される。
θ1とθ2の差が大きいことは、現像前後で膜表面の変化が激しいこと(例えば、膜減りの発生など)を意味すると考えられる。比較例4はθ2の値がそれなりに大きいが、現像前後で膜表面の変化が激しいことに起因し、実際に隔壁としたときには十分な撥液性が得られなかったものと考えられる。
「θ1が20°以上である」ことと、「θ1とθ2の差の絶対値が10°以下である」ことの両方を満たすことが重要である。
2 隔壁
2a 上面(隔壁の上面)
3 開口部
4 材料液
5 画素
5R、5G、5B 画素
10 インクジェットヘッド
Claims (11)
- 有機エレクトロルミネッセンス素子の隔壁を形成するための感光性樹脂組成物であって、
当該感光性樹脂組成物を用いて形成した膜厚4μmの膜の、アニソールの接触角をθ1、
前記膜を1質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に130秒浸漬し、その後230℃で60分加熱して硬化させた硬化膜の、アニソールの接触角をθ2としたとき、
θ1が20°以上であり、
θ1とθ2の差の絶対値が10°以下である、感光性樹脂組成物。 - 請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記硬化膜のガラス転移温度が180℃以上である、感光性樹脂組成物。 - 請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物であって、
樹脂、感光剤および架橋剤を含む、感光性樹脂組成物。 - 請求項3に記載の感光性樹脂組成物であって、
組成物の不揮発成分中の前記感光剤の量が、1〜40質量%である、感光性樹脂組成物。 - 請求項3または4に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記樹脂が、ケイ素原子含有構造単位を含む、感光性樹脂組成物。 - 請求項3または4に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記樹脂が、フッ素原子含有構造単位を含む、感光性樹脂組成物。 - 請求項3〜6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記樹脂が、主鎖に、環状オレフィン由来の構造単位および/または無水マレイン酸由来の構造単位を含む、感光性樹脂組成物。 - 請求項3〜7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
組成物中の不揮発成分中の前記樹脂の量が、50質量%以上である、感光性樹脂組成物。 - 請求項3〜8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記樹脂が、アルカリ可溶性基を含む、感光性樹脂組成物。 - 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
基板上に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成する膜形成工程と、
前記感光性樹脂膜をパターン露光する露光工程と、
露光された前記感光性樹脂膜を現像して隔壁を得る現像工程と、
前記基板上の前記隔壁で囲われた領域に、有機材料を有機溶剤に溶解または分散させたインクを印刷する印刷工程と
を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。 - 請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記印刷工程が、インクジェット法により行われる、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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