以下、本実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態における画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態における画像形成装置1の制御系の主要部を示す。図1、2に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙Sに二次転写することにより、トナー像を形成する。
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、および制御部100等を備える。
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙Sにトナー像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示す。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度で回転させる。
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有し、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーを除去する。
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
中間転写ベルト421は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
その後、用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Sに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙Sの裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙Sに静電的に転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成(いわゆるベルト式の二次転写ユニット)を採用してもよい。
定着部60は、用紙Sの定着面(トナー像が形成されている面)側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙Sの裏面(定着面の反対の面)側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、及び加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙Sを狭持して搬送する定着ニップNPが形成される。
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップNPで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。また、定着器Fには、定着面側部材および裏面側支持部材に付着した紙粉等の異物を除去するための分離爪ユニット60Eが備えられる(図2参照)。なお、分離爪ユニット60Eの構成は後述する。
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー対を有する。
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
次に、図1および図3を参照して、定着部60の構成について説明する。定着部60および制御部100は、本発明の「定着装置」に対応する。
図1に示すように、上側定着部60Aは、定着面側部材である定着ローラー63を有する(ローラー加熱方式)。
定着ローラー63は、例えば、直径70mmであり、鉄等の金属から形成された中実の芯金(接地されている)の周囲を弾性層で被覆し、表層として絶縁性PFAチューブを備えたものである。ここで、弾性層は、例えば硬度(アスカー硬度)が32±3°で、厚さが0.5mmである。また、表層の絶縁性PFAチューブの厚さは、例えば50±10μmである。定着ローラー63は、後述する下加圧ローラー65に圧接されて、定着ニップNPを形成する。
定着ローラー63は、ハロゲンヒーターなどの加熱源60Cを内蔵している。加熱源60Cの温度は、制御部100によって制御される。また、定着ローラー63は、制御部100の制御の下、図示しない駆動モーターの動力が伝達されることで、図中の時計方向に回転駆動される。定着ローラー63は、トナー像が形成された用紙Sに接触して、当該トナー像を用紙Sに定着許容温度範囲で加熱定着する。ここで、定着許容温度範囲とは、用紙S上のトナーを溶融するのに必要な熱量を供給しうる温度であり、画像形成される用紙Sの紙種等によって異なる。
定着ローラー63の上方に、定着ローラー63の表面をクリーニングするための図示しないクリーニング装置が設けられている。このクリーニング装置は、シリコーンオイルを含浸させたウェブシートがロール状に巻かれたクリーニングウェブを備え、図示しない押圧ローラーを介してウェブシートを定着ローラー63に押圧することで、定着ローラー63の表面を清掃する。さらに、定着ローラー63の軸方向の中央側には図示しない非接触式の温度センサーが対向して配置され、軸方向の端側(通紙領域外)には図示しない接触式の温度センサーが配置されている。制御部100は、これら温度センサーの検知結果に基づいて加熱源60Cに供給する電力を制御し、定着ローラー63を所定温度に制御する。
下側定着部60Bは、裏面側支持部材である下加圧ローラー65を有する(ローラー加圧方式)。下加圧ローラー65は、例えば、直径70mmであり、金属製の芯金の周囲をシリコーンゴム層で被覆し、表層として導電性PFAチューブが被覆されたゴムローラーである。ここで、導電性PFAチューブは、例えば、表面粗さがRz3.0μm以下であり、表面抵抗率が1E7〜1E11Ωである。また、一例では、シリコーンゴム層は、その硬度が25±3°(JISA)であり、厚さが6.5mmである。導電性PFAチューブは、例えば、厚さが100±10μmであり、表面硬度(アスカー硬度)が70±3°である。
下加圧ローラー65は、図示しない圧縮バネによる付勢力で定着ローラー63に押圧され、定着ローラー63の回転に従動して回転する。また、下加圧ローラー65の下方には、上記の圧縮バネの位置を可変するための図示しない押圧カムが設けられている。この押圧カムの位置(押圧位置)が切り替えられることによって、定着荷重すなわち定着ローラー63への押圧力を切り替えることができる。このようにして、定着ローラー63と下加圧ローラー65との間には、用紙Sを狭持して搬送する定着ニップNPが形成される。
さらに、下側定着部60Bは、下加圧ローラー65に当接して下加圧ローラー65の表面を加熱するための図示しない加熱ローラーが設けられている。加熱ローラーは、下加圧ローラー65よりも小さい直径(例えば30mm)であり、ハロゲンヒーター等の加熱源が内蔵されている。加熱ローラーの表面は、PTFEコート層で被覆されている。また、加熱ローラーは、図示しない引っ張りバネによる付勢力で下加圧ローラー65に押圧されており、下加圧ローラー65の回転に従動して回転する。制御部100は、加熱源に供給する電力を制御し、下加圧ローラー65を所定温度に制御する。
かかる構成の定着部60では、下加圧ローラー65および定着ローラー63による定着ニップNPで用紙Sを加熱、加圧しながら搬送することにより、未定着のトナー像を用紙S上に定着させる。
次に、分離爪ユニット60Eの構成について説明する。本実施の形態では、図3Aに示すように、定着ニップNPに進入した用紙Sが定着ニップNPの構成部材(この例では定着ローラー63と下加圧ローラー65)から良好に分離されるように、分離部材としての分離爪600、610を備えている。ここで、分離爪600は、搬送方向における定着ニップNPの下流側で、下加圧ローラー65に対向するように配置されている。他方、分離爪610は、搬送方向における定着ニップNPの下流側で、定着ローラー63に対向するように配置されている。一具体例として、分離爪600は、PAI(ポリアミドイミド)樹脂製であり、その表面にPFA(フッ素樹脂)がコーティングされている。また、分離爪610は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂製であり、その表面にPEA(フッ素樹脂)がコーティングされている。
これら分離爪600および610は、各々、図中の左側に位置するホルダーないし軸が図示しないソレノイド等の駆動源に接続され、制御部100の制御の下、対向する下加圧ローラー65および定着ローラー63への離接方向に移動可能に構成されている。
また、分離爪600および610は、各々、対向する下加圧ローラー65および定着ローラー63の軸(幅)方向に沿って複数設けられている(図7参照)。本実施の形態では、これら複数の分離爪の各々が、対向する下加圧ローラー65および定着ローラー63への離接方向に移動可能に構成されている。上述した分離爪600とその駆動源、および上側の分離爪610とその駆動源は、分離爪ユニット60Eの構成部として、各々、定着器Fから着脱可能に構成されている。
ところで、定着ニップNPに通紙される用紙Sが、再生紙などの紙粉の出やすい紙種である場合、通常紙等の場合と比較して、より多くの紙粉が下加圧ローラー65および定着ローラー63の表面に付着する。また、上記の再生紙等が複数枚連続して印刷されるような場合、下加圧ローラー65および定着ローラー63の表面に付着した紙粉は、分離爪600,610で継続的に掻き取られることにより、分離爪600,610の先端側から徐々に蓄積し、次第に肥大化してゆく。以下、図3Bを参照して、分離爪600に用紙Sの紙粉が蓄積した場合について説明する。
図3Bは、図3Aの定着ニップNPの領域を拡大して示す図であり、下加圧ローラー65に当接している分離爪600の先端側に紙粉PFが付着した状態を例示している。図3Bに示すように、分離爪600は、通常は、分離爪600の先端が下加圧ローラー65に当接する位置(後述する用紙分離位置)にある。このとき、分離爪600は、定着ニップNPに進入する用紙Sが図中の反時計方向に回転している下加圧ローラー65に巻き付くことを防止する(図3A参照)とともに、下加圧ローラー65に付着した紙粉PFを掻き取る。
他方、上述した再生紙等が連続的に通紙されて、下加圧ローラー65に付着した紙粉PFを分離爪600で掻き取り続けると、分離爪600上の紙粉PFは、図中の左側に膨張するように、徐々に肥大化してゆく。そして、分離爪600上で肥大化した紙粉PFは、目視でも分かる程度の大きさの紙粉塊となり、下加圧ローラー65の停止または駆動の際の振動や衝撃の発生により、肥大化した紙粉塊が分離爪600から剥がれ落ち、下加圧ローラー65に付着する虞がある。さらに、下加圧ローラー65の表面に付着した紙粉塊が定着ニップNPに進入している用紙Sに付着すると、目視で確認できるレベルの画像不良(汚れ)が発生する虞がある。
上記の紙粉塊による画像不良の問題は、定着ローラー63側の分離爪610についても同様のことが言える。
そこで、本実施の形態では、制御部100は、用紙Sから出る紙粉量を推定する紙粉量推定部としての役割を担うとともに、かかる推定結果に応じて、分離爪600(610)に付着している紙粉を定着ニップNPに進入している用紙Sに拭き取らせるように、分離爪600(610)の位置を制御する。
具体的には、制御部100は、分離爪600(610)の位置を、定着ニップNPに進入している用紙Sが下加圧ローラー65(定着ローラー63)から分離されるための通常位置としての用紙分離位置と、分離爪600(610)に付着している紙粉PFを定着ニップNPに進入している用紙Sに拭き取らせる(回収させる)ための紙粉除去位置と、に切り替える制御を行う。
以下は、主として、下加圧ローラー65側の分離爪600の位置の制御について、図4以下を参照して詳しく説明する。
図4Aは分離爪600が用紙分離位置にある状態を示し、図4Bは分離爪600が用紙分離位置から紙粉除去位置に移動した状態を示す。簡明のため、分離爪600は、先端側だけが示されており、また上側の分離爪610等の図示は省略している。また、比較を容易にするため、図4B中、用紙分離位置にあった分離爪600を点線で示している。
本実施の形態では、制御部100は、紙粉除去位置において用紙Sに接触する分離爪600の部位を、用紙分離位置において用紙Sに接触する分離爪600の部位とは異ならせるように、分離爪600の位置(下加圧ローラー65に対する姿勢すなわち角度や高さ)を変化させる(図4B参照)。なお、用紙Sの種類(坪量等)によっては、用紙分離位置にある分離爪600は当該用紙Sに接触しない場合がある(図4A中の点線矢印参照)。他方、分離爪600に付着した紙粉の除去を達成するため、紙粉除去位置は、用紙Sの種類(坪量等)に関わらず、分離爪600が当該用紙Sに接触するように、分離爪600の角度や高さが設定される。
一例では、分離爪600の用紙分離位置は、下加圧ローラー65の表面に接触する分離爪600の先端側と下加圧ローラー65の外接線とのなす角度が略27.5°となり、定着ニップNPの中心から分離爪600の先端が5mm低い高さ位置となるように、固定的に設定される。これに対し、分離爪600の紙粉除去位置では、上述の角度および高さ位置は、用紙Sの坪量に応じて変えられる設定となっている。紙粉除去位置における分離爪600の角度および高さの具体例は、図9A〜9Cの説明で後述する。
図4Aは上述した図3Bに対応する図である。図4Aに示すように、分離爪600が用紙分離位置にある場合、分離爪600の先端が下加圧ローラー65の表面に接触する。このため、回転する下加圧ローラー65の表面に付着した異物は、分離爪600によって掻き取られる。したがって、例えば再生紙等の紙粉が多く出る用紙Sを定着ニップNPに連続的に通紙した場合、下加圧ローラー65の表面に付着した紙粉は、分離爪600の先端で掻き取られる。掻き取られた紙粉PFは、図4Aに示すように分離爪600の先端側(いわゆる腹の部分)に溜まり、目視できる紙粉塊のレベルまで肥大化すると、上述のように画像不良等が発生する要因となる。
そこで、本実施の形態の一具体例では、制御部100は、印刷ジョブの実行時に、ユーザーにより設定された用紙設定情報から用紙Sの種類を特定し、当該用紙Sが紙粉量の多い種類のものであるか否かを推定する。そして、制御部100は、当該用紙Sが紙粉量の多い種類のものである場合、分離爪600を紙粉除去位置に移動させる制御を行う(図4B参照)。このような制御を行うことで、分離爪600に付着した紙粉PFが目視できるほど肥大化する前に、分離爪600上の紙粉PFを用紙Sに拭き取らせて分離爪600を清掃し、紙粉PFを当該用紙Sとともに装置外に排出ないし回収することができる。
紙粉除去位置への移動に関し、本実施の形態では、制御部100は、分離爪600の先端側を用紙分離位置よりも上方の位置に移動させて(図4B参照)、分離爪600の先端側が用紙Sの下面に接触する高さおよび角度に移動させる制御を行う。かかる制御により、分離爪600の先端側に付着している紙粉PFを、用紙Sの下面に付着させて(すなわち用紙Sに拭き取らせて)、当該用紙Sとともに画像形成装置1の外部に移送することができる。言い換えると、紙粉除去位置は、分離爪600において紙粉PFが付着する(溜まる)部位を用紙搬送経路中に置くことで、分離爪600に付着した紙粉PFを用紙Sで回収させるための位置である。
上述した画像不良等の発生のリスクは、分離爪600に付着した紙粉PFのサイズが大きくなるほど高くなる。また、用紙Sに拭き取らせた紙粉PFのサイズが小さいほど、用紙S上に印刷された画像への影響や美観等の点からも望ましい。かかる観点からは、制御部100は、分離爪600の用紙分離位置と紙粉除去位置との位置の切り替えの制御を小まめに行う方がよい。他方、このような位置の切り替えを余りに頻繁に行うと、消費電力等のコスト面で不利になり、また、図13Cで後述するような問題も生じる。
総じて、定着ニップNPに進入される用紙Sから出る紙粉が少ない場合、分離爪600の位置の切り替えを行わず、図5に示すように、分離爪600を通常の用紙分離位置のままに保持させた方が良い場合も考えられる。
上記の観点から、制御部100は、例えば、印刷ジョブにおいてユーザーにより設定された情報から用紙Sの種類を特定し、当該用紙Sから出る紙粉量が多い/少ない(すなわち閾値を超えるか否か)を推定ないし判別する。一具体例では、制御部100は、用紙Sの種類が再生紙の場合、当該用紙Sから出る紙粉量(ひいては分離爪600に付着する紙粉量)が多いものとみなして、分離爪600を紙粉除去位置に移動させる制御を行う(図4B参照)。一方、制御部100は、用紙Sの種類が再生紙以外の場合には、当該用紙Sから出る紙粉量(ひいては分離爪600に付着する紙粉量)が少ないものとみなして、分離爪600を通常の用紙分離位置に保持したまま用紙Sを通紙する(図5参照)。
他の例として、制御部100(紙粉量推定部)は、定着ニップNPに進入される用紙Sから出る紙粉量の多い/少ないかの判別を、用紙Sが定着部60の搬送方向上流に位置するローラーを通過した後に、当該ローラーの表面の状態を検出することによって行ってもよい。
図6は、上述した給紙トレイユニット51a〜51cに備えられている給紙ローラー対510の表面の状態を検出する場合の構成例を示す。図6に示す例では、給紙ローラー対510を構成する各々のローラーの表面に、フォトセンサー520,520を対向して配置した構成となっている。
一例では、制御部100は、用紙Sが所定枚数(例えば10枚)給紙された後(すなわち10枚の用紙Sが給紙ローラー対510を抜けた後)のフォトセンサー520,520の検出値が所定値以上の場合に、当該給紙された用紙Sは紙粉量が多いものと判別する。すなわち、制御部100は、所定枚数(この場合は10枚)の用紙Sが給紙されるまでは、分離爪600を用紙分離位置のままに保持して定着プロセスを実行する。そして、制御部100は、フォトセンサー520,520の検知値に基づいて、当該給紙された用紙Sは紙粉量が多いと判断した場合、その後(例えば11枚目以後)の定着プロセス実行時に、分離爪600を用紙分離位置から紙粉除去位置に切り替える制御を行う。
次に、図7以下を参照して、分離爪ユニット60Eにおける分離爪600の構成をさらに詳しく説明する。分離爪ユニット60Eにおいて、分離爪600は、図7に示すように、下加圧ローラー65の幅に応じて複数個備えることができる。図7では、6つの分離爪600(600−1〜600−6)を備えた構成を例示しており、各分離爪600−1〜600−6の先端側を抽出して示している。この例では、各分離爪600−1〜600−6の先端側の幅は、略3mmである。各分離爪600−1〜600−6は、通常状態(すなわち用紙分離位置)では、図示しない押圧部材(バネ等)によって、20±5gの押圧力で下加圧ローラー65に当接する。
本実施の形態では、これら分離爪600−1〜600−6は、各々別個の駆動源に接続されており、制御部100の制御の下、互いに独立的に用紙分離位置と紙粉除去位置との位置の切り替えができるようになっている。なお、分離爪600の構成数は、本例の6個に制限されず、任意の数とすることができる。
制御部100は、分離爪600(600−1〜600−6)の位置を用紙分離位置から紙粉除去位置に移動させて紙粉を用紙Sに拭き取らせる場合、図8Aおよび8B中に両矢印で示すように、用紙Sの搬送方向における一部の領域(接触領域CA)に接触させればよい。簡明のため、図8Bでは、制御部100が、全ての分離爪600−1〜600−6を、用紙分離位置から紙粉除去位置に同時に切り替えて、用紙Sの裏面(接触領域CA)に接触させた場合を例示している。用紙Sが厚紙や通常紙の場合、および用紙Sの上面にトナー像が形成されている片面印刷ジョブの実行時においては、このような画一的な動作でもよい。
一方で、用紙Sが薄紙の場合、または用紙Sの下面にトナー像が形成されている両面印刷ジョブの際には、より細やかな位置切り替えの制御が要求されることが考えられ、これらの事例および制御内容については後述する。
また、本実施の形態では、図9A〜9Cに示すように、定着ニップNPに通紙される用紙Sの厚み(坪量)に応じて、紙粉除去位置における分離爪600の先端側の姿勢(角度や高さ)を変えるように設定する。
すなわち、用紙Sが厚紙の場合、剛性が高いことから、当該用紙Sは、図9Aに示すように、側方から見てほぼ直線の形状で定着ニップNPを通過する。他方、用紙Sが薄紙の場合、剛性が低いことから、当該用紙Sは、図9Cに示すように、下加圧ローラー65に巻き付き気味の状態で定着ニップNPに進入する。また、用紙Sが普通紙の場合、当該用紙Sは、上述した厚紙と薄紙の中間的な挙動で定着ニップNPに進入する。
このような事象に対応すべく、本実施の形態では、制御部100は、定着ニップNPに進入する用紙Sの坪量に応じて、定着ニップNPの中心部に対する分離爪600の角度または高さを変えるように紙粉除去位置を設定する。
一具体例では、制御部100は、用紙Sの坪量が第1の閾値(この例では106g/m2)以上の値である場合、当該用紙Sは定着ニップNPを直線的に抜ける(すなわち厚紙であって殆ど変形しない)ものとみなして(図9Aの点線矢印参照)、紙粉除去位置における分離爪600の角度および高さを以下のように設定する。
(1)下加圧ローラー65の表面に接触する分離爪600の先端側と下加圧ローラー65の外接線とのなす角度:16.5°
(2)定着ニップNPの中心からの分離爪600の先端の位置(高さ):−2mm
すなわち、この例では、用紙分離位置と比較して、角度が9°緩やかになり、高さが2mm上昇する。
他方、制御部100は、用紙Sの坪量が第2の閾値(この例では63g/m2)以下の値である場合、当該用紙S(薄紙)は下加圧ローラー65に巻き付き気味になるものとして、紙粉除去位置における分離爪600の先端側の高さを低く設定する(図9C参照)。また、制御部100は、分離爪600上の紙粉が当該用紙Sで拭き取り易くなるように、分離爪600の先端側の角度を設定する。一具体例では、紙粉除去位置における分離爪600の角度および高さは、例えば以下のように設定される。
(1)下加圧ローラー65の表面に接触する分離爪600の先端側と下加圧ローラー65の外接線とのなす角度:25.5°
(2)定着ニップNPの中心からの分離爪600の先端の位置(高さ):−4.5mm
すなわち、この例では、用紙分離位置と比較して、角度が15°緩やかになり、高さが4.5mm上昇する。
さらに、制御部100は、用紙Sの坪量が64〜105g/m2の値である場合、紙粉除去位置における分離爪600の先端側の角度および高さを中程度に設定する(図9B参照)。一具体例では、紙粉除去位置における分離爪600の角度および高さは、例えば以下のように設定される。
(1)下加圧ローラー65の表面に接触する分離爪600の先端側と下加圧ローラー65の外接線とのなす角度:21.5°
(2)定着ニップNPの中心からの分離爪600の先端の位置(高さ):−3.5mm
すなわち、この例では、用紙分離位置と比較して、角度が13°緩やかになり、高さが3.5mm上昇する。
上述したような分離爪600の角度や高さの変更は、本実施の形態では、分離爪600を支持する軸ないしホルダー(図3A等参照)に接続されている上述のソレノイドの押し/引き量で変えるようにする。代替的または追加的な他の例として、分離爪600を支持する軸(ホルダー)をカムで押し、当該カムの回転位置(押し位置)を変化させることによって、分離爪600の高さや角度を変更してもよい。なお、上述のソレノイドやカムは、各々の分離爪(600−1〜600−6)毎に設置されることで、各々独立して角度や高さを変更することができる。
次に、図10を参照して、分離爪600(600−1〜600−6)の位置を用紙分離位置から紙粉除去位置に切り替えるタイミング等について説明する。図10は、図8Aおよび図8Bに対応するタイミングチャートであり、簡明のため、各分離爪600−1〜600−6を、同時に切り替えて、用紙Sの裏面(接触領域CA)に同じタイミングで接触させた場合を例示している。
制御部100は、搬送方向における定着部60の上流にある機内の用紙検知部(フォトセンサーやアクチェーターなど)によって用紙Sの先端が検知された時刻t0から所定時間経過後の時刻t1で、当該用紙Sが分離爪600の先端に到達したと判断する。なお、用紙Sが分離爪600の先端に到達する時刻t1は、機内における用紙Sの搬送速度、上記の用紙検知部と分離爪先端との距離に基づいて算出できる。時刻t1の時点では、分離爪600(600−1〜600−6)の位置は、未だ用紙分離位置にある。
続いて、制御部100は、時刻t1から所定時間経過後の時刻t2で、分離爪600を用紙分離位置から紙粉除去位置に切り替える制御を行う(図8A参照)。さらに、制御部100は、時刻t2から所定時間経過後の時刻t3で、分離爪600を再び用紙分離位置に戻す制御を行う。その後、時刻t4で上記の用紙検知部によって用紙Sの後端が検知された後、当該用紙Sは定着ニップNPを抜ける。
次に、図11〜図13を参照して、図7の構成における各々の分離爪600−1〜600−6毎の位置切り替えの制御例について説明する。図11および図12に示す例では、搬送方向における定着ニップNPの上流側に、フォトセンサー650が配置されている構成であり、用紙Sとして薄紙を通紙する場合を想定している。ここで、薄紙は、図9Cで上述したように、下加圧ローラー65に対する分離性が良好でない場合が多いことから、用紙分離位置から紙粉除去位置への切り替えを、図11および図12で説明するように、各分離爪600−1〜600−6において同時に行わないようにする。
まず、図11A〜図11Cを参照して、1枚の用紙Sに全ての分離爪600(600−1〜600−6)上の紙粉を拭き取らせる場合の制御例を説明する。制御部100は、用紙Sの先端が時刻t0(図10参照、以下同様)でフォトセンサー650によって検知された後、所定時間が経過するまでは(例えば時刻t2までは)、図11Aに示すように、全ての分離爪600(600−1〜600−6)を用紙分離位置に保持させる。
続いて、制御部100は、時刻t2が来たら、例えば2つの分離爪600−2および600−5を用紙分離位置から紙粉除去位置に切り替える制御を行う(図11B参照)。他方、制御部100は、他の4つの分離爪600−1,600−3,600−4,および600−6については、そのまま用紙分離位置に保持させる。さらに、制御部100は、時刻t3が来たら、2つの分離爪600−2および600−5を用紙分離位置に戻すとともに、他の4つの分離爪600−1,600−3,600−4,および600−6を用紙分離位置から紙粉除去位置に切り替える制御を行う(図11C参照)。この後、制御部100は、4つの分離爪600−1,600−3,600−4,および600−6を用紙分離位置に戻す制御を行う。
このようにして、用紙S(薄紙)が定着ニップNPに突入した後のしばらくの間は下加圧ローラー65に対する分離性が良くないため、多くの分離爪600を用紙分離位置に保持させて分離性を確保しつつ、比較的少ない数の分離爪600の紙粉を用紙Sに回収させる。その後、下加圧ローラー65に対する分離性が良好になった時機に、当該残りの分離爪600の紙粉を用紙Sに回収させる。かかる制御により、用紙S(薄紙)の分離性を確保しながら、全ての分離爪600に付いている紙粉を一枚の用紙Sに拭き取らせて、分離爪600をクリーニングすることができる。
図11A〜11Cで説明した制御内容は一例であり、他にも種々の制御内容とすることができる。総じて、制御部100は、分離爪600を紙粉除去位置に移動させる場合、定着ニップNPに進入している1枚の用紙Sに対して紙粉除去位置に移動させるタイミングを、用紙Sの坪量やトナー像の形成状況等に応じて、分離爪600−1〜600−6毎に制御することができる。
次に、図12A〜図12Dを参照して、分離爪600(600−1〜600−6)上の紙粉を複数枚の用紙S(薄紙)に拭き取らせる場合の制御例を説明する。
制御部100は、一枚目の用紙Sの先端が時刻t0でフォトセンサー650によって検知された後、所定時間が経過するまでは(例えば時刻t2になるまでは)、図12Aに示すように、全ての分離爪600(600−1〜600−6)を用紙分離位置に保持させる。
続いて、制御部100は、時刻t2のタイミングで、2つの分離爪600−2および600−5を用紙分離位置から紙粉除去位置に切り替え(図12B参照)、時刻t3が来たら、これら分離爪600−2および600−5を用紙分離位置に戻す。他方、制御部100は、他の4つの分離爪600−1,600−3,600−4,および600−6については、一枚目の用紙Sに対しては、そのまま用紙分離位置に保持させる。
さらに、制御部100は、二枚目の用紙Sの先端が時刻t0でフォトセンサー650によって検知された後、所定時間が経過するまでは(例えば時刻t3までは)、図12Cに示すように、全ての分離爪600(600−1〜600−6)を用紙分離位置に保持させる。そして、制御部100は、二枚目の用紙Sに関し、時刻t3が来たら、4つの分離爪600−1,600−3,600−4,および600−6を用紙分離位置から紙粉除去位置に切り替え(図12D参照)、その後、これら分離爪600−1,600−3,600−4,および600−6を用紙分離位置に戻す。他方、制御部100は、他の2つの分離爪600−2および600−5については、二枚目の用紙Sに対しては、そのまま用紙分離位置に保持させる。
このように複数の用紙S(薄紙)が連続的に搬送される場合、制御部100は、予め定められた用紙枚数(上記例では1枚)毎に、用紙分離位置に保持される分離爪600と、紙粉除去位置に移動する分離爪600と、を交代させるように制御する。かかる制御を行うことにより、用紙Sの分離性を確保しながら、全ての分離爪600に付いている紙粉を当該複数の用紙Sに分担的に拭き取らせて、各分離爪600をクリーニングすることができる。
次に、図13A〜図13Cを参照して、用紙Sの第1面(下面)に高カバレッジの画像(TI)が形成されている場合に、分離爪600(600−1〜600−6)上の紙粉を当該用紙Sに拭き取らせるための制御例を説明する。
図13Bおよび図13Cは、両面印刷ジョブの実行時に、用紙Sの第1面に高カバレッジのトナー像TI(以下、ベタ部TIという。)が形成され、第2面の印刷時に分離爪600−4および600−5を用紙分離位置から紙粉除去位置に切り替えた場合を例示している。
このような場合、図13C中の白の点線部分に示すように、用紙Sの下面のベタ部TIに分離爪600−4および600−5が接触する(擦る)ことにより、ベタ部TIに傷(分離爪600−4および600−5の跡)が発生するおそれがある。このような画像不良の発生を防止するため、制御部100は、ベタ部TIとの接触を避けるタイミングで、対応する分離爪600を用紙分離位置から紙粉除去位置に切り替えるように制御する。
例えば、図13Aに示す例では、搬送される一枚目の用紙Sの下面には分離爪600−4および600−5に接触し得る位置にベタ部TIが形成され、二枚目の用紙Sの下面には分離爪600−2に接触し得る位置に、搬送方向に沿ったベタ部TIが形成されている。
このような場合、制御部100は、一具体例では、分離爪600−2については、一枚目の用紙Sで用紙分離位置から紙粉除去位置への切り替えを行い、二枚目の用紙Sでは用紙分離位置に保持したままにする。また、制御部100は、分離爪600−4および600−5については、一枚目の用紙Sにおいてベタ部TIが通過したタイミングで用紙分離位置から紙粉除去位置に切り替える、または、一枚目の用紙Sでは用紙分離位置に保持したままとし、二枚目の用紙Sで紙粉除去位置への切り替えを行う。
上記のような制御を行うことにより、用紙Sに高カバレッジの画像が形成された場合であっても、当該画像に傷(分離爪600の跡)が付くことを防止し、かつ、用紙Sの分離性を確保しながら分離爪600の紙粉を画像形成装置1の外部に除去(排出)することができる。
なお、他の制御例として、制御部100は、両面印刷ジョブの実行時には全ての分離爪600−1〜600−6を用紙分離位置に保持したままとし、片面印刷の実行時にのみ分離爪600−1〜600−6を用紙分離位置から紙粉除去位置に切り替える制御を行ってもよい。あるいは、制御部100は、両面印刷ジョブの実行時には、用紙Sの第1面(上面)の定着時にのみ分離爪600−1〜600−6を用紙分離位置から紙粉除去位置に切り替える制御を行ってもよい。
分離爪600−1〜600−6を用紙分離位置から紙粉除去位置に切り替える制御は、上記以外にも種々の態様が考えられる。また、上述した種々の制御内容については、図示しないユーザー設定画面等を通じてユーザーが任意に選択できる構成としてもよい。
次に図14のフローチャートを参照して、印刷ジョブの実行時における分離爪の紙粉除去のための制御例を説明する。
ステップS100において、制御部100は、印刷しようとする用紙Sの種類(紙種、坪量など)および入力画像の情報を取得し、ステップS120に移行する。ここで、制御部100は、例えば、操作表示部20の表示部21(操作パネル)等に表示される給紙トレイや紙種の設定画面を通じて、用紙Sの紙種や坪量の情報を取得する。
ステップS120において、制御部100は、取得した用紙Sの紙種から、紙粉が多く出る用紙であるか否かを判別する。一具体例では、制御部100は、上記の設定画面を通じて、予めプロファイル登録された紙種が設定された場合、または、かかる設定画面に表示された「再生紙」または「紙粉が多い紙」を示すボタンが選択された場合に、紙粉が多く出る用紙であると判定する(ステップS120、YES)。他方、制御部100は、上記以外の設定ないし選択がされた場合には、紙粉が多く出る用紙ではない(ステップS120、NO)と判定する。
制御部100は、紙粉が多く出る用紙であると判定した場合(ステップS120、YES)、ステップS140に移行する。他方、制御部100は、紙粉が多く出る用紙ではないと判定した場合(ステップS120、NO)、当該印刷ジョブが終了するまで、全ての分離爪600(600−1〜600−6)を用紙分離位置(すなわち通常位置)に保持したままとして、処理を終了する。
ステップS140において、制御部100は、用紙Sの坪量を判別する。続くステップS160において、制御部100は、各々の分離爪(600−1〜600−6)に対応する領域(幅方向位置)の高カバレッジ画像(図13Aのベタ部TI参照)の有無を判別して、ステップS180に移行する。
ステップS180において、制御部100は、ステップS140およびステップS160の判別結果(すなわち用紙Sの坪量および高カバレッジ画像の有無)に基づいて、各々の分離爪の位置(紙粉除去位置における角度および高さ)ないし動作態様(移動タイミング等)を決定する。ここで、制御部100は、分離爪ユニット60Eを構成する複数の分離爪600(600−1〜600−6)の中で、紙粉除去位置に移動させる分離爪600、および当該移動対象となる分離爪600の移動タイミング、さらには紙粉除去位置における角度および高さを決定する。
続くステップS200において、制御部100は、移動対象とされた分離爪600を、決定された移動タイミングで用紙分離位置から紙粉除去位置に移動する、すなわち角度および高さを変更するように、対応する駆動源(ソレノイド等)に制御信号を出力する。そして、制御部100は、当該移動させた分離爪600を所定タイミングで用紙分離位置(通常位置)に戻すように、対応する駆動源(ソレノイド等)に制御信号を出力する。
ステップS220において、制御部100は、印刷ジョブが終了したか否かを判定する。制御部100は、印刷ジョブが終了していないと判定した場合(ステップS220、NO)、ステップS160に処理を戻し、上述したステップS160〜ステップS220の処理を繰り返し行う。他方、制御部100は、印刷ジョブが終了したと判定した場合(ステップS220、YES)、一連の処理を終了する。
上述した実施の形態では、印刷ジョブの実行中にトナー像が形成された用紙Sに分離爪600を接触させることで、分離爪600のクリーニングを行う構成を例示した。他の例として、印刷ジョブで印刷される用紙Sとは別の所謂ヤレ紙を使用し、分離爪600を紙粉除去位置に強制的に移動させて、分離爪600のクリーニング動作を行うモード(以下、分離爪クリーニングモードという。)を実行してもよい。
この分離爪クリーニングモードは、例えば以下の場合に実施する。
(1)印刷ジョブの実行中、分離爪600−1〜600−6のうち、用紙分離位置のまま一度も紙粉除去されなかった(紙粉除去位置に移動しなかった)分離爪が1本以上ある場合に自動で実行する。
(2)表示部21(操作パネル)等に表示された「分離爪クリーニングモードを実行する」旨のボタンがユーザーにより選択された場合に(いわゆる手動で)実行する。
上記(1)の実施のために、制御部100は、印刷ジョブの実行中の各分離爪600−1〜600−6の位置の切り替え動作(履歴)を記録し、印刷ジョブの終了時に、紙粉除去位置に移動しなかった分離爪600があるかを判定する。制御部100は、この判定の結果、紙粉除去位置に移動しなかった分離爪600があった場合、例えば、いずれかの給紙トレイユニット(51a〜51c)から用紙S(紙粉が多く出ない通常紙等が望ましい)を給紙させる。そして、制御部100は、ヤレ紙となる当該用紙Sを、画像形成部40でトナー像を形成せずに定着部60に搬送し、紙粉除去位置に移動しなかった分離爪600を、上述のように所定のタイミングで用紙分離位置から紙粉除去位置に移動させた後、用紙分離位置に戻す。
このような制御を行うことにより、例えば、ベタ画像(ベタ部TI)が複数の用紙S(再生紙)の両面に印刷されたような場合であっても、当該印刷ジョブの終了後に、該当する分離爪600の紙粉除去(クリーニング)を行うことができる。
上記(2)の実施のために、制御部100は、印刷ジョブの実行中あるいは実行後において、「分離爪クリーニングモードを実行する」旨のボタン(以下、単に「実行ボタン」という)が選択されたか否かを監視する。制御部100は、実行ボタンが選択されたと判定した場合、一具体例では、全ての分離爪600−1〜600−6を所定のタイミングで用紙分離位置から紙粉除去位置に移動させた後、用紙分離位置に戻す制御を行う。
このように、本実施の形態によれば、分離爪600に付着した紙粉を、目視では分からない大きさの状態で、簡易かつ迅速に画像形成装置1の外部に除去(排出)することができる。したがって、本実施の形態によれば、分離爪600に付着した紙粉が肥大化することにより生じる画像不良を未然に防止することができる。
上述した実施の形態では、分離爪ユニット60Eにおいて、下加圧ローラー65に対向する分離爪600の構成および動作を詳細に説明したが、定着ローラー63に対向する分離爪610(図3参照)も同様の構成および動作とすることができる。この場合、制御部100は、分離爪610の先端側が用紙分離位置よりも下方の位置(紙粉除去位置)に移動させて、分離爪610に溜まった紙粉PFを用紙Sの上面に付着させる(拭き取らせる)ようにすればよい。
図示しないが、一具体例では、分離爪610は、定着ローラー63の幅方向に6つの爪を備えた構成とし、各々の分離爪610(610−1〜610−6)の先端側の幅を1.5mmとする。各分離爪610(610−1〜610−6)は、通常状態(すなわち用紙分離位置)では、図示しない押圧部材(バネ等)によって、210±5gの押圧力で定着ローラー63に押圧される。
なお、用紙Sの第1面に当接される定着ローラー63側の分離爪610は、上述した分離爪600に比べて、印刷ジョブの実行中に紙粉除去位置に移動できない場合が多くなり得る。典型的には、ベタ画像(ベタ部TI)が多数枚の用紙S(再生紙)の略全面に連続的に印刷されるような印刷ジョブを実行するような場合が挙げられる。このような場合、当該印刷ジョブの実行中に、定着ローラー63側の分離爪610の殆どが紙粉除去位置に移動できないことから、分離爪610に付着する紙粉量が閾値を超える(すなわち紙粉塊に肥大化する)虞がある。さらに、定着ローラー63側の分離爪610では、付着する紙粉に残トナーが混入しやすく、付着した紙粉の肥大化に起因した画像不良の問題がより発生しやすいと考えられる。
このような問題を回避するため、制御部100は、分離爪610に付着する紙粉量が印刷ジョブの実行中に閾値を超える(すなわち紙粉塊に肥大化する)おそれがあると判断した場合、当該印刷ジョブの実行中に上述のクリーニングモードの処理を割り込ませて実行する。このような処理を行うことにより、高カバレッジ画像の印刷が連続的に行われる場合でも、紙粉の肥大化に伴う画像不良等の発生を未然に防止することができる。
上述した実施の形態では、分離部材として分離爪600を使用した分離爪方式の場合を例示した。分離部材の他の例として、ブレード状の分離板を使用する分離板方式のものであってもよい。
上述した実施の形態では、定着ニップNPを構成する部材が下加圧ローラー65および定着ローラー63である構成例について例示した。他にも例えば、定着ニップNPの構成部材が定着ベルトを含む構成であってもよい。
上述した実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。