JP2019156766A - 含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物、その製造方法および含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造方法 - Google Patents

含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物、その製造方法および含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造方法 Download PDF

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卓也 藁科
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Abstract

【課題】安全性が高く、合成ルートも短く、高収率でかつ安価に大量合成できる含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造方法及びその新規な合成中間体の提供。【解決手段】含フッ素p−キシレンの光やラジカル開始剤存在下での塩素化等により得られる下式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物、及び該中間体を塩化鉄触媒等の存在下、水と反応させる含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造方法。[nは1又は2]【選択図】なし

Description

本発明は、新規な含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物、その製造方法および含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造方法に関する。
ポリ−p−フェニレンテレフタルアミドに代表される芳香族ポリアミド(アラミド)は剛直性と耐熱性を兼ね備えたプラスチックスであり、多くの用途に使用されている。それらはテレフタル酸クロリドとジアミンを原料としアミド結合でつながった高分子化合物である。
芳香族ポリアミドを用いたイオン導電フィルムではイオン透過性、耐熱性、強度などに優れ、リチウムイオン電池用電解質膜、燃料電池電解質膜として様々な構造が提案されているが、実用的なイオン透過性を有する材料はなく、未だナフィオン膜が主流である。
近年、芳香族ポリアミドにフッ素原子を導入した芳香族ポリアミドが無置換および塩素原子を導入した芳香族ポリアミドに比べて膜抵抗値が非常に減少し優れたフィルム特性を持ち、電池材料として有用であることが見出された(特許文献1参照)。
また、芳香環にフッ素原子が2個導入されたポリアミドが固体高分子電解質および燃料電池電解質膜として有用であることが提案されている(特許文献2参照)。
このように、芳香族ポリアミドにフッ素原子が導入されることで、無置換体や他のハロゲン置換体に比べ、イオン導電率が向上し、電解質膜としての実用レベルが期待できる。
国際公開第2016/098659号パンフレット 特開2010−070600号公報
Inorganic Chemistry,52(22),1287〜12880(2013) Journal Medicinal Chemistry,60,6205〜6219(2017)
特許文献1によれば、2−フルオロテレフタル酸ジクロリドと2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニルから得られた含フッ素芳香族ポリアミドは、2−クロロテレフタル酸ジクロリドから得られた含塩素芳香族ポリアミドに比べ機械的強度、熱収縮率などが同等であるにも関わらず膜抵抗値が1/2と低く電池としての高い特性が得られる。
しかしながら、上記の2−フルオロテレフタル酸ジクロリドを含め、フッ素原子が置換したテレフタル酸クロリドの製造には、危険な酸化剤を使用したり、合成ルートが長かったりして、製造コストが高く、しかも大量合成が困難であった。
例えば、上記の2−フルオロテレフタル酸ジクロリドの製造には危険な過マンガン酸カリウムにより酸化し、2−フルオロテレフタル酸を製造し、シュウ酸ジクロリドなどにより塩素化(例えば、非特許文献1、2参照)して製造されていた。
Figure 2019156766
一方、2,5−ジフルオロテレフタル酸ジクロリドは、例えば、特許文献2では、以下の合成ルートで合成されている。
Figure 2019156766
2,5−ジフルオロトルエンをフリーデル・クラフツ反応によりアセチル基を導入した後、毒性の高い重クロム酸酸化により、2,5−ジフルオロテレフタル酸に変換し、これを塩化チオニルで酸クロリドに導いている。
従って、本発明は、上記のような状況を鑑み、安全性が高く、合成ルートも短く、高収率でかつ安価に大量合成できる含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造方法を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、上記の含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造方法を可能とする含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。
この結果、テレフタル酸ジクロリドの合成は、p−キシレンを酸化する方法が、短工程であることから、酸化剤をさらに精力的に検討し、p−キシレンのメチル基を塩素化して、加水分解する方法に至った。
本発明は、この方法を詳細に検討することで完成させたものである。
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>下記一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物。
Figure 2019156766
式中、nは1または2を表す。
<2>前記一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物が、下記化合物である<1>に記載の含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物。
Figure 2019156766
<3>前記一般式(I)におけるnが2の下記化合物である<1>に記載の含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物。
Figure 2019156766
<4>下記一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物の製造方法であって、
下記一般式(1)で表される化合物を塩素化する含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物の製造方法。
Figure 2019156766
式中、nは1または2を表す。
<5>下記一般式(2)で表される含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造方法であって、
下記一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物を加水分解する含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造方法。
Figure 2019156766
式中、nは1または2を表す。
本発明により、安全性が高く、合成ルートも短く、高収率でかつ安価に大量合成できる含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造方法を提供することが可能となった。
しかも、上記の含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造方法を可能とする含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物およびその製造方法を提供することが可能となった。
以下、本発明についてその好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
<<含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物>>
本発明の含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物は、下記一般式(I)で表される。
Figure 2019156766
式中、nは1または2を表す。
上記一般式(I)で表される化合物は、後述するように、安全性が高く、合成ルートも短く、高収率でかつ安価に大量合成できる含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造方法を可能とする重要な化合物である。
nが1である場合、下記化合物であり、本発明において特に好ましい。
Figure 2019156766
また、nが2である場合、下記化合物のいずれかであり、本発明において好ましい。
Figure 2019156766
<<含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物の製造方法>>
本発明の一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物を塩素化することで製造することができる。
Figure 2019156766
式中、nは1または2を表す。
<含フッ素パラキシレン化合物の塩素化反応>
本発明では、上記一般式(1)で表される化合物を塩素化することにより高収率で製造できる。
塩素化は、無溶媒で、上記一般式(1)で表される化合物に塩素ガスを吹き込む方法が容積効率の点で好ましいが溶媒を用いることもできる。
好ましい溶媒としては、塩素化されない溶媒であればよく、ハロゲン化ベンゼン溶媒(例えば、トリフルオロメチルベンゼン、4−クロロトリフルオロメチルベンゼンなど)やニトロ基を有するベンゼン溶媒(例えば、ニトロベンゼンなど)が挙げられる。溶媒の使用量としては、原料1モル当たり2L以下が好ましく、溶媒を使用量せざるを得ない場合は、0.1L〜2Lの範囲が好ましい。
塩素ガスの使用量は、一般式(1)で表される化合物1モルに対し、6〜30モルが好ましく、6〜12モルがより好ましい。
反応は100℃から溶媒の沸点温度で進行するが、無溶媒の時には上記一般式(1)で表される化合物の沸点温度で還流しながら塩素ガスを吹き込むことが好ましい。
塩素置換されると還流温度が上昇するので反応の進行を見ながら徐々に反応温度を上げる方法を採用することが好ましい。反応温度を上げ過ぎると塩素化されたトリクロロメチル基自身が塩素原子によって置換された生成物が増加するので160℃を限度とすることが好ましい。
還流温度で塩素を吹き込む方法は、反応が速やかに進行するとともに、副生した塩化水素を反応系外に除く効果がある。これにより、反応系内の塩化水素濃度が減少し、ベンゼン環への塩素置換反応副生物の触媒となることを回避できる。ベンゼン環への塩素置換反応副生物は蒸留による分離に多段階の精留装置を必要とするので目的物の収率の低下とともにその分離に手間がかかるので好ましくない。
反応には触媒を用いることが好ましい。触媒としては紫外線(300〜500nm)、ラジカル開始剤が用いられる。用いられるラジカル開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリルが代表例として挙げられる。
紫外線照射によるラジカル発生方法は余分な化学品を混入させない方法として、より好ましい実施形態である。
特に、本発明では、水銀ランプにより反応器の外部または内部に光照射しながら、塩素ガスを導入することで、ラジカルを容易に発生させることができるため好ましい。光照射は、反応スケールにより変化するが実験室スケールでは40〜200w水銀ランプ装置〔例えば、岩崎電気(株)製〕によって紫外線外部照射しながら反応を行うことが好ましい。
反応時間は反応スケールに依存するが、140〜150℃で、上記一般式(1)で表される化合物1モル当たり40〜50時間で終了する。
塩素化反応により生じた一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物の分離は、通常の処理、例えば、蒸留、を行う。
本発明では、後述の含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物を合成する場合、反応終了後の反応液を、そのまま加水分解して、得られた一般式(2)で表される含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物を、蒸留などにより、精製することも好ましい。
なお、塩素ガスは一般に危険な試薬であると思われているが、食塩の電気分解で容易に生産でき、オンサイトにて扱う限り人体および環境への負荷は少ない。実際、キシレン類を塩素ガスにより酸化する工程がアラミドの原料として我が国だけで数千トン以上実施されている。副生物は塩化水素でだけであり、水に吸収させて工業原料の塩酸として活用されている。
<<含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造方法>>
本発明では、本発明の一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物を加水分解することで、下記一般式(2)で表される含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物を製造することができる。
Figure 2019156766
式中、nは1または2を表す。
従って、本発明の一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物を使用することで、下記の合成ルートにより、加水分解は、一般式(2)で表される含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物を製造することができる。
この結果、危険な過マンガン酸カリウムまたは重クロム酸カリウムを使用することなく、一般式(2)で表される含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物を製造することができる。
Figure 2019156766
このように、上記合成ルートによって、安全性が高く、合成ルートも短く、高収率でかつ安価に大量合成できる含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物が製造できる。
一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物の加水分解は、以下の合成条件で行うのが好ましい。
(水)
通常の水であれば特に制限はないが、鉄錆等の濁りや汚れがある場合は濾過して使用することが好ましい。
本発明においては、加水分解反応に使用する水の量は、一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物1モルに対して、2〜2.3モルが好ましく、2.1〜2.2モルがより好ましい。2モルより少ないと加水分解反応速度が遅く、しかも反応が完結しない。逆に、2.3モルより多いとカルボキシ基(−COH)まで加水分解が進んでしまう。
加水分解に使用する水の添加法については特に制限はない。例えば、反応開始時に全量加えてもよいし、反応途中に一部を分けて添加してもよいが、好ましくは、反応系に水を滴下するのが好ましい。滴下する時間は、一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物1モル換算で、0.2〜0.5時間が好ましく、0.4〜0.5時間がより好ましい。
本発明においては水以外の溶媒を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、10%以下の量を含んでいても構わないが、少ない方が好ましく、全く含まない方が特に好ましいことをいう。
水以外の含んでもよい溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであればどのような溶媒でも構わないが、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼンなどを挙げることができる。
反応温度は、加水分解反応が進行する温度であれば特に制限はないが、通常は80℃以上、好ましくは水の還流温度で行われ、加圧の場合は圧力に応じて反応温度が高くなる。
特に本発明では、反応系が145℃以上、好ましくは145〜160℃、より好ましくは150〜155℃に保った状態で、反応系に水を滴下するのが好ましい。
反応時間は反応温度、水の量などにより変わり、特に制限はないが、通常は24時間で十分であり、好ましくは2〜24時間である。
反応方法についても特に制限はなく、回分式もしくは連続式のいずれも採用することができる。また、反応は常圧または加圧のいずれでも実施できる。
本発明においては、反応成分として水を用いるが、それ以外の反応試剤、例えば、触媒(塩化鉄、塩化亜鉛のようなルイス酸、相間移動触媒など)を用いることが好ましい。
ルイス酸は、塩化鉄(III)が好ましい。またルイス酸の使用量は、一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物に対し、100〜300ppmが好ましく、200〜250ppmがより好ましい。
加水分解反応により生じた一般式(2)で表される含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の分離は、水と混和しない有機溶媒、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどで抽出し、溶媒を回収することにより行うことができる。また、反応液をそのまま蒸留して精製してもよい。
生成物が水に不溶の固体の場合は、反応溶液をそのまま濾過しても得られる。これら一般式(2)で表される含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物は通常そのままでも十分な純度を有していて、製品となりうるが、さらに高純度製品を要求される場合は、再結晶または蒸留などにより精製してもよい。
なお、このような方法で得られた一般式(2)で表される含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物は、水だけを反応試剤および反応溶媒として使用しているため、特別な精製工程を経由しないでも十分に高純度である。
なお、反応工程が1工程増えるものの、以下のように、一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物を対応するテレフタル酸とした後、一般式(2)で表される含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物を製造しても構わない。
Figure 2019156766
一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物から、一般式(3)で表される含フッ素テレフタル酸を合成するには、塩化鉄(III)などのルイス酸触媒の存在下または非存在下で加水分解反応に使用する水の量を過剰量、好ましくはモル比で、一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物に対して4倍モル以上であり、より好ましくは10倍モル以上であり、特に好ましくは20〜30倍モルである。なお、30倍モル以上の水を使用しても加水分解の反応速度に問題はないが、単位容積あたりの一般式(3)で表される含フッ素テレフタル酸の生成量が小さくなり、生産性の低下を招くことになる。
一般式(3)で表される含フッ素テレフタル酸から、一般式(2)で表される含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物を合成するには、通常の塩素化反応が適用される。
塩素化剤は、例えば、塩化チオニル、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン、塩化オキサリルや、トリフェニルホスフィンと四塩化炭素が挙げられる。
<含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物の用途>
本発明の一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物は、剛直性と耐熱性を兼ね備えたプラスチックスであり、多くの用途に使用することができる。
特に、芳香族ポリアミドを用いたイオン導電フィルムではイオン透過性、耐熱性、強度などに優れ、リチウムイオン電池用電解質膜、燃料電池電解質膜に好ましく使用される。
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
〔2−フルオロ−1,4―ビス(トリクロロメチル)ベンゼンの製造〕
2−フルオロ−1,4−ジメチルベンゼン(2−フルオロパラキシレン)62g(0.5mol)に、トリフェニルホスフィンオキシド12mg(2−フルオロ−1,4−ジメチルベンゼンの質量に対して200ppm)を加え、100Wの水銀ランプ照射下140℃で塩素ガス361gを45時間かけて吹き込んだ。反応は緩やかな還流になるように徐々に昇温し、160℃を最高温度としてキープした。
この反応における塩素反応率は59%であった。反応混合物をガスクロマトグラフィーにて分析すると、純度99.4%であった。これを単蒸留して150g(収率91%)、純度99.4%の2−フルオロ−1,4―ビス(トリクロロメチル)ベンゼンを得た。
得られた生成物を質量ガスクロマトグラフィー(GCMS;Gas Chromatography−Mass spectrometry)にて分析し、m/z=328の分子イオンピークとその同位体を観測し、分子中に6塩素原子が含まれていることを確認した。また、フラグメントピークからも、目的とする2−フルオロ−1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼンであることを支持していた。
融点は71.4〜71.8℃であった。
GCMS:m/z=334(M+6,相対強度2.1%),332(M+4,1.6%),330(M+2,2.1%),328(M,1.0%),299(20.2%),297(63.5%),295(ベースピーク),293(M−35,60.2%),264(5.7%),262(26.9%),260(54.3%),258(M−35x2,43.5%)
参考例1
実施例1で得られた2−フルオロ−1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼンを、以下のように、加水分解して2−フルオロテレフタル酸クロリドに導き、その構造を同定した。
実施例1で得た2−フルオロ−1,4―ビス(トリクロロメチル)ベンゼン94.3g(0.29mol)と塩化鉄(III)0.03gの混合液を150℃まで昇温し、水11.4g(0.57mol)を1時間かけて滴下し、同温度で3時間熟成させた。
反応終了液を単蒸留(bp.115℃/8torr)することで、2−フルオロテレフタル酸クロリドの液体を53g(収率82%)得た。ガスクロマトグラフィー分析により純度99.4%であった。
生成物の構造を質量ガスクロマトグラフィーとIRスペクトルにより同定した。
GCMS(直接分析):m/z=224(M+4,相対強度0.2%),222(M+2,1.0%),220(M,1.4%),187(33.4%),185(M−35,ベースピーク),159(8.7%),157(27.2%),150(1.9%),122(43.2%),94(47.7%)
IR(neat):1775,1751cm−1
構造確認を確かなものとするために、2−フルオロテレフタル酸クロリドをジエチルアミド誘導体に変換しGCMSでアサインした。
GCMS(ジエチルアミド誘導体):m/z=294(M,相対強度31.3%)、293(38.5%)、222(ベースピーク)、194(9.4%)、123(42.9%)
実施例2
〔2−フルオロ−1,4−ジメチルベンゼンから2−フルオロテレフタル酸クロリドへの一貫製造〕
2−フルオロ−1,4−ジメチルベンゼン807g(6.5mol)とトリフェニルホスフィンオキシド0.2g(2−フルオロ−1,4−ジメチルベンゼンの質量に対して200ppm)の混合溶液に100Wの水銀ランプ照射下、140℃から緩やかな還流がかかるように塩素ガス5240gを62時間かけて吹き込んだ。この反応における塩素反応率は52.6%であった。反応終了液に塩化鉄(III)0.3g(2−フルオロ−1,4−ジメチルベンゼンの質量に対して200ppm)を加え、150℃で水219g(12.2mol)を3時間かけて滴下し、さらに同温度で6時間熟成させた。反応終了液を単蒸留し、2−フルオロテレフタル酸クロリドを1077g(総収率75%)、純度99.4%で得た。
上記から明らかなように、本発明の一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物は、安全性が高く、合成ルートも短く、高収率でかつ安価に大量合成できる含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造を可能とする合成中間体である。
この合成中間体により、剛直性と耐熱性を兼ね備えたプラスチックス、特に、イオン透過性、耐熱性、強度などに優れたイオン導電フィルム(例えば、リチウムイオン電池用電解質膜、燃料電池電解質膜など)を、安価に多量製造できる。

Claims (5)

  1. 下記一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物。
    Figure 2019156766
    式中、nは1または2を表す。
  2. 前記一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物が、下記化合物である請求項1に記載の含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物。
    Figure 2019156766
  3. 前記一般式(I)におけるnが2の下記化合物である請求項1に記載の含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物。
    Figure 2019156766
  4. 下記一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物の製造方法であって、
    下記一般式(1)で表される化合物を塩素化する含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物の製造方法。
    Figure 2019156766
    式中、nは1または2を表す。
  5. 下記一般式(2)で表される含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造方法であって、
    下記一般式(I)で表される含フッ素1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン化合物を加水分解する含フッ素テレフタル酸ジクロリド化合物の製造方法。
    Figure 2019156766
    式中、nは1または2を表す。
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