以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[自然水用肥料の製造方法]
まず、本発明の自然水用肥料の製造方法について説明する。
本発明の自然水用肥料の製造方法は、水に対して難溶性のリン化合物(以下、「難溶性リン化合物」とも言う)を含む被処理物と、アルカリ金属および/または第2族元素の水酸化物および/または塩である反応性イオン性物質を含む組成物とを接触させ、リン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩である溶解性塩を得る工程を有することを特徴とする。
このように、難溶性のリン化合物を溶解性塩に変換することにより、水(自然水)に対する溶解性を向上させることができ、自然水に接触させた場合に、リン成分を溶解状態で好適に供給することができる。したがって、自然水用肥料(すなわち、リン濃度調整剤)として好適に機能させることができる。
これに対し、リン化合物を水に対して難溶性の状態のまま用いると、リン化合物は、自然水には実質的に溶解せず、肥料として機能させることができない。
なお、自然水用肥料の溶解性(溶出速度)は、例えば、溶解性塩の組成に加え、自然水用肥料の大きさ(粒径、厚い等)、結晶状態(結晶粒径、結晶成分の比率(結晶化度)等)、自然水用肥料中における前記溶解性塩と前記溶解性塩以外の成分との関係(例えば、前記溶解性塩の含有率、前記溶解性塩以外の成分の含有率、前記溶解性塩と前記溶解性塩以外の成分との大きさの関係、前記溶解性塩と前記溶解性塩以外の成分との位置関係等)等を調整することにより、好適に制御することができる。このような自然水用肥料の条件は、例えば、前記組成物の組成(反応性イオン性物質の種類、含有率)、反応条件(例えば、反応時の温度条件、反応時間、前記被処理物に対する前記組成物の使用量等)、反応の前処理の方法・条件(例えば、被処理物に対する消化処理、精製処理等)、反応の後処理の方法・条件(例えば、粉砕処理、複数成分の混合処理等)等により、好適に調整することができる。
被処理物としては、難溶性リン化合物を含んでいればいかなるものであってもよく、例えば、汚泥を焼却処理して得られる汚泥灰、鉄鋼スラグ、キノコ排菌床の燃焼灰等の産業廃棄物等を用いることができるが、被処理物は、汚泥灰であるのが好ましい。
汚泥灰は、一般に、貴重な資源であるリンを比較的高い含有率で含んでおり、また、世界各地で大量に発生している。
したがって、被処理物として汚泥灰を用いることにより、資源を有効活用することができ、産業廃棄物量の削減効果が特に大きい。
また、汚泥灰を自然水用肥料の原料として用いることで、汚泥灰の新しい再利用方法となり、近年埋立地の不足や処理費の増加等の問題が深刻化している汚泥灰の処理コスト削減や、自然水用肥料の原料コスト削減の観点からも好ましい。
一般に、汚泥灰等の被処理物は、リン酸アルミニウム、リン酸鉄等の難溶性リン化合物を含んでいる。
本発明において、水に対して難溶性とは、水に対する溶解度が極めて低いことを意味し、例えば、25℃における水に対する溶解度が、1×10−15g/100g水以下である場合を指す。
本発明に係る方法では、難溶性リン化合物を、反応性イオン性物質(アルカリ金属および/または第2族元素の水酸化物および/または塩)を含む組成物と接触させて、溶解性塩(リン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩)に変化させることで、リン化合物の水に対する溶解性を高め、自然水用肥料として効果的に機能させる点に特徴を有する。
また、本発明において、自然水とは、海、河川、湖、池、沼等、自然界においてまとまって存在する水のことを含み、加えて、人工的に作られた、人工池、貯水池、釣り堀、水槽、養殖場等、前記海、河川、湖、池、沼等とは直接つながらない、閉じた空間にまとまって存在する水のことも含む概念とする。また、自然水は、淡水、塩水および汽水のいずれであってもよい。
中でも、本発明に係る自然水用肥料が適用される自然水は、海水であるのが好ましい。
海は、貧栄養の問題が生じやすく、いわゆる海の砂漠化も進んでいる。したがって、自然水が海水である場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。
海の砂漠化を食い止めることで、生態系を回復できる。例えば、本発明に係る自然水用肥料を用いることで、海に栄養分を供給することができ、コンブ、ワカメ等の海藻の生育が良くなり、また魚の生育の場になる。さらに、海藻は、アワビ、サザエ等の餌にもなるので、高級食材でもあるアワビ、サザエ等の生産量も増える。すなわち、漁村の経済活性化に貢献することができる。
難溶性リン化合物を含む被処理物と、反応性イオン性物質とを接触させる形態は、特に限定されず、例えば、以下の実施形態で詳述するものが挙げられる。
<第1実施形態>
本実施形態の自然水用肥料の製造方法は、難溶性リン化合物(水に対して難溶性のリン化合物)を含む被処理物と、反応性イオン性物質(アルカリ金属および/または第2族元素の水酸化物および/または塩)とを固相で接触させ、溶解性塩(リン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩)を得る工程を有する。言い換えると、被処理物、および、反応性イオン性物質のいずれもが、固相の状態で、これらを接触させて、目的の化学反応を進行させ、溶解性塩を得る。
これにより、溶媒を用いないで目的とする溶解性塩を得ることができるため、環境に対してより低負荷であるとともに、本工程後の溶媒除去の工程を省略することができる。
被処理物に含まれる難溶性リン化合物は、Fe、Alのうち少なくとも一方を含むものであるのが好ましい。
Fe、Alのうち少なくとも一方を含むリン化合物は、水に対する溶解性が特に低く、本発明を適用することによる効果がより顕著である。また、溶解性塩の生成過程において、FeやAlは、不純物として機能し、生成される溶解性塩の結晶粒径の制御等において好適に作用する。その結果、自然水用肥料の溶解度、徐放性等の調整をより好適に行うことができる。
Fe、Alのうち少なくとも一方を含むリン化合物としては、例えば、FexPyOz、AlxPyOz(ただし、x,y,zはそれぞれ1以上の整数である。)で表される酸化リン化合物が挙げられ、特に、リン酸鉄(FePO4)、リン酸アルミニウム(AlPO4)であるのが好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
なお、汚泥灰は、一般に、リンとともに、Fe、Al等をより適切な割合で含有している。すなわち、被処理物として汚泥灰を用いることにより、本発明による効果がより顕著に発揮される。この点からも、被処理物として、汚泥灰を用いるのが好ましい。
反応性イオン性物質(アルカリ金属および/または第2族元素の水酸化物および/または塩)は、陽イオンおよび陰イオンを含み、陽イオンとして、アルカリ金属および第2族元素から選択される少なくとも1種を含むものであればよいが、陽イオンとして、Naおよび/またはCaを含んでいるのが好ましい。
これにより、生成される溶解性塩を、リン酸系化合物のナトリウム塩および/またはカルシウム塩とすることができる。これらの塩は水に対してより好適な溶解性を有するものとなり、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
特に、反応性イオン性物質は、Na2CO3、NaOH、CaCO3、Ca(OH)2、CaCl2およびNaClよりなる群から選択される1種または2種以上であるのが好ましい。
これにより、反応性イオン性物質の使用量を抑制しつつ、本工程をより効率よく進行させることができる。
特に、本工程では、反応性イオン性物質として、Naを含む水酸化物または塩と、Caを含む水酸化物または塩とを併用するのが好ましい。
これにより、生成される溶解性塩は、リン酸系化合物のナトリウム塩と、リン酸系化合物のカルシウム塩とを含むものとなる。リン酸系化合物のナトリウム塩と、リン酸系化合物のカルシウム塩とは、水に対する溶解性が異なるため、これらを組み合わせることで、自然水に対する溶解性の調整をより好適に行うことができる。例えば、自然水への適用後の初期段階におけるリン成分(溶解性塩)の溶出量を比較的高くしつつ、自然水への適用後から比較的長期間経過した後のリン成分(溶解性塩)の溶出量も比較的高くすることができる。
より具体的には、リン酸系化合物のカルシウム塩は、リン酸系化合物のナトリウム塩に比べて溶解度が低いため、自然水への適用後の初期段階においては、主に、リン酸系化合物のナトリウム塩が優先的に溶出することにより、全体としてのリン成分(溶解性塩)の溶出量を比較的高いものとしつつ、自然水への適用後から比較的長期間経過した後においては、固体状態で残存しているリン酸系化合物のカルシウム塩からの溶出により、全体としてのリン成分(溶解性塩)の溶出量を確保することができる。
反応性イオン性物質を含む組成物中における、Naの含有率をXNa’[mol%]、Caの含有率をXCa’[mol%]としたとき、0.01≦XCa’/XNa’≦100の関係を満足するのが好ましく、0.1≦XCa’/XNa’≦10の関係を満足するのがより好ましい。
これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
反応性イオン性物質は、上述したようなリン酸系化合物のナトリウム塩および/またはカルシウム塩以外にも、例えば、その他の反応性イオン性物質や、それ以外の成分(例えば、アルカリ金属または第2族元素の水酸化物または塩以外のイオン性物質や、非イオン性物質)を含んでいてもよい。
被処理物の使用量(処理量)に対する反応性イオン性物質の使用量を調整することにより、溶解性塩の生成量をより好適に調整することができる。これにより、自然水用肥料の溶解性、徐放性等をより好適に調整することができる。
反応性イオン性物質は、いかなる形態であってもよいが、本実施形態においては、粒子状をなしているのが好ましい。
これにより、例えば、混合等により、反応性イオン性物質を被処理物とより効率よく接触させることができ、本工程での反応をより円滑に進行させることができる。また、反応性イオン性物質の粒径を調整することにより、反応の進行をより好適に調整することができる。
反応性イオン性物質が粒状をなすものである場合、当該反応性イオン性物質の平均粒径は、0.1μm以上100mm以下であるのが好ましく、5μm以上500μm以下であるのがより好ましい。
これにより、安全性や操作の容易性を確保しつつ、被処理物と反応性イオン性物質とを、より効率よく接触させることができ、反応性をより効果的に高めることができる。
なお、本明細書において、平均粒径とは、特に断りのない限り、体積平均粒径のことを指す。
本実施形態においては、例えば、難溶性リン化合物を含む被処理物と、反応性イオン性物質を含む組成物に、適度な量の水分を添加して混合し、練り上げてもよい。
これにより、被処理物と、反応性イオン性物質とを、より効率よく接触させることができる。
また、溶解性塩を得る工程においては、加熱処理を行うのが好ましい。
これにより、自然水用肥料の製造に要するエネルギー量を削減しつつ、リン酸等のリン化合物とアルカリ金属または第2族元素との間で、より効率よく化学結合を形成させることができ、短時間で効率よく本工程を行うことができる。
なお、難溶性リン化合物を含む被処理物と、反応性イオン性物質を含む組成物との混合物が水分を含む場合、加熱処理に先立って、水分を蒸発させてもよい。
また、加熱処理時に、水分を蒸発させてもよい。
加熱処理における加熱温度(最高温度)は、150℃以上1500℃以下であるのが好ましく、300℃以上1200℃以下であるのがより好ましい。
これにより、自然水用肥料の製造に要するエネルギー量を削減しつつ、被処理物中に含まれるリン化合物と、反応性イオン性物質との反応をより好適に進行させることができ、より短時間で効率よく本工程を行うことができる。
また、加熱処理は、加熱温度を変更しつつ行ってもよい。
これにより、例えば、被処理物中に含まれるリン化合物と、反応性イオン性物質との反応をより好適に進行させることができたり、反応生成物の形状や反応生成物中における溶解性塩の状態(例えば、複数種の溶解性塩を含む場合におけるこれらの分布等)をより好適に調整することができる。
また、加熱処理においては、加熱温度を、上記範囲で異なる複数の保持温度(例えば、温度幅が30℃以内の温度領域)で、それぞれ所定時間(例えば、10分以上)保持するようにして加熱してもよい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、加熱処理は、昇温速度、降温速度がほぼ一定となるようにして行ってもよいし、
昇温速度、降温速度のうち少なくとも一方が、経時的に変化するようにして行ってもよい。
加熱処理において、昇温時の昇温速度(例えば、200℃からの昇温速度)は、1℃/分以上50℃/分以下であるのが好ましく、2℃/分以上30℃/分以下であるのがより好ましい。
これにより、例えば、被処理物中に含まれるリン化合物と、反応性イオン性物質との反応をより好適に進行させることができたり、反応生成物の形状や反応生成物中における溶解性塩の状態(例えば、複数種の溶解性塩を含む場合におけるこれらの分布等)をより好適に調整することができる。
また、降温時の降温速度(例えば、200℃からの降温速度)は、2℃/分以上50℃/分以下であるのが好ましく、3℃/分以上40℃/分以下であるのがより好ましい。
これにより、例えば、被処理物中に含まれるリン化合物と、反応性イオン性物質との反応をより好適に進行させることができたり、反応生成物の形状や反応生成物中における溶解性塩の状態(例えば、複数種の溶解性塩を含む場合におけるこれらの分布等)をより好適に調整することができる。
加熱処理の処理時間(150℃以上の温度での加熱時間)は、1時間以上100時間以下であるのが好ましく、3時間以上18時間以下であるのがより好ましい。
これにより、加熱処理を行う装置(例えば、焼成炉等)への負担を抑制しつつ、より短時間で効率よく本工程を行うことができる。
加熱処理は、特に限定されないが、例えば、電気炉を用いて行うことができる。これにより、加熱温度、昇温速度、降温速度等の設定や制御をより好適に行うことができる。
なお、加熱処理は、ロータリーキルンを用いて行ってもよい。これにより、例えば、大量の被処理物に対して、連続的に加熱処理を施すことができる。
また、加熱処理時の雰囲気ガスとしては、いかなる雰囲気中で行ってもよく、例えば、空気、不活性ガス(N2、Ar等)、水素(H2)等の還元ガス中で行うことができるが、空気中で行うのが好ましい。
これにより、加熱処理に比較的単純な構成の装置を用いることができ、雰囲気の組成等の調整を行う必要がなく、自然水用肥料の生産性を向上させることができる。
加熱処理時において、雰囲気ガスを調節することで、様々な形態の化合物に変換させることができる。雰囲気ガスの調整としては、酸素濃度の調整や雰囲気ガスの圧力の調整等が挙げられる。
以下に、本発明に係る製造方法により進行する化学反応の一例を示す。なお、式中、x,y,z,l,m,nはそれぞれ1以上の整数である。
(1)被処理物に含まれる、難溶性の酸化リン化合物が、リン酸鉄(FePO4)である場合
(1−1)Na2CO3との反応:
FePO4+3/2Na2CO3 → Na3PO4+3/2CO2+1/2Fe2O3
2FePO4+2Na2CO3 → Na4P2O6 + 2CO2 +Fe2O3 + 1/2O2
FexPyOz +Na2CO3 → NaxPyOz +mCO2 +lFe2O3
(1−2)CaCO3との反応:
2FePO4 + 3CaCO3 → Ca3(PO4)2 + 3CO2 + FeCO3
FexPyOz +3CaCO3 → CaxPyOz +mCO2 +nFe2O3
(2)被処理物に含まれる、難溶性の酸化リン化合物が、リン酸アルミニウム(AlPO4)である場合
(2−1)Na2CO3との反応:
AlPO4 +3/2Na2CO3 → Na3PO4 +3/2CO2 +1/2Al2O3
2AlPO4 + 2Na2CO3 → Na4P2O6 + 2CO2 +Al2O3 +1/2O2
AlxPyOz +Na2CO3 → NaxPyOz + mCO2 + lAl2O3
(2−2)CaCO3との反応:
2AlPO4 + 3CaCO3 → Ca3(PO4)2 + 3CO2 +Al2O3
AlxPyOz + 3CaCO3 → CaxPyOz + mCO2 + nAl2O3
また、例えば、反応に寄与する各成分の比率を調整すること等により、溶解性塩を、カルシウム欠損ハイドロキシアパタイト、CaHPO4、Ca(H2PO4)2、Ca8(HPO4)2、Na2HPO4、NaH2PO4等のリン酸水素塩として得ることもできる。
このようなリン酸水素塩が得られる化学反応の一例を以下に示す。なお、式中、x,y,a,b,c,d,eはそれぞれ1以上の整数であり、Mは金属元素である。
CaxPyOz + M(OH)a → CabHcPdOe
NaxPyOz + M(OH)a → NabHcPdOe
このようにして、溶解性塩(リン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩)を含む自然水用肥料が得られる。
本発明に係る方法で得られる自然水用肥料は、上述したような溶解性塩(リン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩)以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、被処理物中に含まれていた難溶性リン化合物の未反応分、被処理物中に含まれていた難溶性リン化合物以外の成分やその反応生成物等が挙げられる。
本発明に係る方法によれば、被処理物に含有されている、難溶性リン化合物を、水に対する溶解性の高い溶解性塩に変換することができる。
より具体的には、例えば、20℃における、溶解性塩としてのリン酸ナトリウムの水に対する溶解度は約12.1g/100g水であり、溶解性塩としてのリン酸二カルシウムの水に対する溶解度は約0.02g/100g水であり、リン酸カルシウムの水に対する溶解度は約8.4×10−12g/100g水であるのに対し、難溶性リン化合物であるリン酸鉄は、水に対して実質的に不溶であり、難溶性リン化合物であるリン酸アルミニウムの水に対する溶解度は約6.3×10−19g/100g水である。
このように、本発明に係る方法によれば、水に対する溶解性を約105〜1022倍以上に高めることができる。これにより、得られる反応生成物を自然水用肥料として好適に用いることができる。
また、本発明に係る方法によれば、汚泥灰、鉄鋼スラグ等の産業廃棄物を原料として用いて自然水用肥料を製造することで、埋め立て処分場の用地確保や高い処理費用等の混台があった産業廃棄物を有効に利用することができ、上記のような問題を緩和することができるとともに、産業廃棄物を原料として用いることで、自然水用肥料の製造コストも抑えることができる。
また、本発明に係る方法は、汚泥灰、鉄鋼スラグ等の新しい利用方法、新しい産業を提案するものであり、新しい産業が生まれることにより、雇用も創出されることが期待される。
汚泥灰等の被処理物に含まれる難溶性リン化合物の溶解度を調整する方法として、上述した方法以外にも、例えば、次に示すような方法も挙げることができる。
すなわち、まず、汚泥灰等の被処理物に含まれている、水に対して難溶性のリン化合物を、バイオマス、泥炭または褐炭等の低品位炭(高品位炭でも可)に含まれている炭素または水素と反応させ、還元することで、難溶性のリン化合物の反応性を高めることができる。
そして、反応性が高められたリン化合物を、周囲に存在する金属(鉄、アルミ、カルシウム、ナトリウム等)またはケイ酸と反応させて、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、ケイ酸リン化合物等を生成する。これにより、難溶性のリン化合物の溶解度を調節することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の自然水用肥料の製造方法の第2実施形態について説明する。
以下、本発明の自然水用肥料の製造方法の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態の自然水用肥料の製造方法は、難溶性リン化合物(水に対して難溶性のリン化合物)を酸またはアルカリで溶解した被処理物と、反応性イオン性物質(アルカリ金属および/または第2族元素の水酸化物および/または塩)を含む組成物とを接触させ、溶解性塩(リン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩)を得る工程を有する。
すなわち、前述した第1実施形態では、難溶性リン化合物を含む被処理物を、固相のまま、反応性イオン性物質を含む組成物と接触させていたのに対し、本実施形態では、被処理物に含まれる難溶性リン化合物を酸またはアルカリで溶解させ、液相として反応させている。
被処理物に含まれる難溶性リン化合物を酸またはアルカリで溶解させることで、被処理物中のリン化合物(リン酸アルミニウム、リン酸鉄等)を、リンを含むイオン(リン酸イオン)として溶出させることができる。
これにより、被処理物に含まれるリン化合物と、反応性イオン性物質との反応性をより効果的に向上させることができる。
以下、被処理物中に含まれる難溶性リン化合物を《2−1》酸で溶解する場合と、《2−2》アルカリで溶解する場合とについて、それぞれ説明する。
《2−1》難溶性リン化合物を酸で溶解する場合
《2−1−1》
難溶性リン化合物を含む被処理物と、酸とを混合する。
これにより、被処理物中に含まれる、水に対して難溶性のリン化合物(難溶性リン化合物)を酸に好適に溶解させることができる。
難溶性リン化合物を酸に溶解した後の液相のpHは、1.0以上8.0以下であるのが好ましく、1.5以上7.0以下であるのがより好ましく、2.0以上6.0以下であるのがさらに好ましい。
これにより、例えば、後の溶解性塩の析出の処理に用いるアルカリ性物質の使用量を抑制しつつ、前述した効果がより顕著に発揮される。また、自然水用肥料の製造に伴い生じる廃液量が必要以上に多くなることを効果的に防止することができる。
本工程で、用いる酸は、例えば、固体や気体であってもよいが、液体であるのが好ましく、水溶液であるのがより好ましい。
これにより、本工程をより効率よく行うことができ、作業性をさらに向上させることができる。また、後処理も容易となる。
本工程で用いる酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩化水素、酢酸等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これにより、安全性を確保しつつ、酸の使用量を抑制し、本工程を効率よく行うことができる。
《2−1−2》
上記のようにして得られた、難溶性リン化合物を酸で溶解した液体状の被処理物(以下、「被処理物液体」とも言う)に、固体状の反応性イオン性物質(アルカリ金属および/または第2族元素の水酸化物および/または塩)を接触させる。
このように、液相−固相での反応とすることで、固相−固相での反応に比べて、被処理物に含まれるリン化合物と、反応性イオン性物質との反応性をより効果的に向上させることができる。
本工程においては、難溶性リン化合物を酸で溶解した被処理物液体に、固体状態の反応性イオン性物質を添加し、混合するのが好ましい。
これにより、被処理物液体と反応性イオン性物質とをより効率よく接触させることができ、反応効率をより向上させることができる。
本工程において、被処理物液体と、反応性イオン性物質との混合物の温度(反応温度)は、5℃以上100℃以下であるのが好ましく、10℃以上60℃以下であるのがより好ましい。
これにより、反応が促進され、反応をより効率よく進行させることができる。
《2−1−3》
被処理物と、反応性イオン性物質とを十分に混合した後、濃縮、乾燥等の処理を行い、溶媒を蒸発させることにより、溶解性塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム等)を含む固体を得ることができる。
被処理物液体と、反応性イオン性物質とを十分に混合した後、混合物のpHを変化させて、リン酸系化合物の塩を析出させるのが好ましい。
混合物中には、生成した溶解性塩が溶解状態で存在しており、混合物のpHを変化させることにより、リン酸系化合物の塩の混合物中における溶解性が低下し、リン酸系化合物の塩が析出する。
具体的には、被処理物に含まれる難溶性リン化合物を酸で溶解した場合、混合物のpHを上昇させることにより、リンを含む化合物を析出させることができる。特に、リンをリン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム等)として析出させる。
これにより、析出物を固液分離して自然水用肥料を得る場合において、自然水用肥料中における目的とする溶解性塩以外の成分の含有率が必要以上に高くなりすぎることをより効果的に防止することができ、自然水用肥料の機能をより高くすることができる。
また、例えば、析出条件を調整することにより、析出物(自然水用肥料)の粒径をより好適に調整することができる。
本工程で用いるアルカリは、例えば、固体や気体であってもよいが、液体であるのが好ましく、水溶液であるのがより好ましい。
これにより、本工程をより効率よく行うことができ、作業性をさらに向上させることができる。また、後処理も容易となる。
本工程で用いるアルカリとしては、例えば、NaOH、KOH、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Al(OH)3等の金属水酸化物、CaCO3、MgCO3等の金属炭酸塩、アンモニア、トリエチルアミン、アニリン等のアミン系物質等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本工程においてアルカリを液体として用いる場合、当該液体のpHは、10以上であるのが好ましく、11以上であるのがより好ましく、12以上14以下であるのがさらに好ましい。
これにより、本工程の終了時(アルカリ処理後)におけるpHをより好適に調整することができる。
また、本工程の終了時(アルカリ処理後)における液相のpHは、4.0以上11以下であるのが好ましく、5.0以上10以下であるのがより好ましく、5.5以上9.0以下であるのがさらに好ましい。
これにより、pHの上昇に用いる材料の使用量が必要以上に多くなることを防止しつつ、溶解性塩をより効率よく析出させることができる。また、析出する溶解性塩の粒径等の調整等がより容易となる。
《2−2》難溶性リン化合物をアルカリで溶解する場合
以下の説明では、前述した「《2−1》難溶性リン化合物を酸で溶解する場合」との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
《2−2−1》
難溶性リン化合物を含む被処理物と、アルカリ溶液とを混合する。
これにより、被処理物中に含まれる、水に対して難溶性のリン化合物(難溶性リン化合物)をアルカリに好適に溶解させることができる。その一方で、汚泥灰のような被処理物に含まれる重金属は、一般に、アルカリには、溶解しにくい。その結果、自然水用肥料に利用可能な有用物質としてのリンと、重金属とを好適に分離することができる。また、最終的な固体廃棄物(産業廃棄物)を少なくすることができる。
難溶性リン化合物をアルカリに溶解した後の液相のpHは、6.0以上14以下であるのが好ましく、7.0以上13以下であるのがより好ましく、8.0以上12以下であるのがさらに好ましい。
これにより、例えば、後の溶解性塩の析出の処理に用いるアルカリ性物質の使用量を抑制しつつ、前述した効果がより顕著に発揮される。また、自然水用肥料の製造に伴い生じる廃液量が必要以上に多くなることを効果的に防止することができる。
本工程で、用いるアルカリは、例えば、固体や気体であってもよいが、液体であるのが好ましく、水溶液であるのがより好ましい。
これにより、本工程をより効率よく行うことができ、作業性をさらに向上させることができる。また、後処理も容易となる。
本工程で用いるアルカリとしては、例えば、NaOH、KOH、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Al(OH)3等の金属水酸化物、CaCO3、MgCO3等の金属炭酸塩、アンモニア、トリエチルアミン、アニリン等のアミン系物質等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本工程においてアルカリを液体として用いる場合、当該液体のpHは、8以上であるのが好ましく、11以上であるのがより好ましく、12以上14以下であるのがさらに好ましい。
これにより、例えば、後の溶解性塩の析出の処理に用いる酸性物質の使用量を抑制しつつ、前述した効果がより顕著に発揮される。また、自然水用肥料の製造に伴い生じる廃液量が必要以上に多くなることを効果的に防止することができる。
《2−2−2》
上記のようにして得られた、難溶性リン化合物をアルカリで溶解した被処理物液体に、固体状の反応性イオン性物質(アルカリ金属および/または第2族元素の水酸化物および/または塩)を接触させる。
本工程においては、難溶性リン化合物をアルカリで溶解した被処理物液体に、固体状態の反応性イオン性物質を添加し、混合するのが好ましい。
これにより、被処理物液体と反応性イオン性物質とをより効率よく接触させることができ、反応効率をより向上させることができる。
《2−2−3》
被処理物と、反応性イオン性物質とを十分に混合した後、濃縮、乾燥等の処理を行い、溶媒を蒸発させることにより、溶解性塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム等)を含む固体を得ることができる。
被処理物液体と、反応性イオン性物質とを十分に混合した後、混合物のpHを変化させて、リン酸系化合物の塩を析出させるのが好ましい。
具体的には、被処理物に含まれる難溶性リン化合物をアルカリで溶解した場合、混合物のpHを低下させることにより、リンを含む化合物を析出させることができる。特に、リンをリン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム等)として析出させる。
これにより、析出物を固液分離して自然水用肥料を得る場合において、自然水用肥料中における目的とする溶解性塩以外の成分の含有率が必要以上に高くなりすぎることをより効果的に防止することができ、自然水用肥料の機能をより高くすることができる。
また、例えば、析出条件を調整することにより、析出物(自然水用肥料)の粒径をより好適に調整することができる。
本工程で用いる酸は、例えば、固体や気体であってもよいが、液体であるのが好ましく、水溶液であるのがより好ましい。
これにより、本工程をより効率よく行うことができ、作業性をさらに向上させることができる。また、後処理も容易となる。
本工程で用いる酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩化水素、酢酸等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本工程において酸を液体として用いる場合、当該液体のpHは、−1.0以上6.0以下であるのが好ましく、−0.5以上5.0以下であるのがより好ましく、0以上3.0以下であるのがさらに好ましい。
これにより、本工程の終了時(酸処理後)におけるpHをより好適に調整することができる。
本段階の終了時(酸処理後)における液相のpHは、3.0以上11以下であるのが好ましく、5.0以上10以下であるのがより好ましく、5.5以上9.0以下であるのがさらに好ましい。
これにより、pHの上昇に用いる材料の使用量が必要以上に多くなることを防止しつつ、溶解性塩をより効率よく析出させることができる。また、析出する溶解性塩の粒径等の調整等がより容易となる。
そして、本実施形態では、上記の「《2−1》難溶性リン化合物を酸で溶解する場合」または「《2−2》難溶性リン化合物をアルカリで溶解する場合」で説明した処理を行った後、析出されたリン酸系化合物の塩を含む液体に対し、固液分離を行い、析出したリン酸系化合物の塩を含む固相を、液体成分と分離する。
固液分離の方法は、特に限定されないが、例えば、デカンテーション、ろ過、遠心分離等が挙げられ、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。
また、必要に応じて、分離された固相を水等により洗浄してもよい。
分離された固相に対して、加熱処理を行うのが好ましい。
これにより、自然水用肥料の製造に要するエネルギー量を削減しつつ、リン酸等のリン化合物とアルカリ金属または第2族元素との間で、より効率よく化学結合を形成させることができ、短時間で効率よく自然水用肥料を製造することができる。
加熱処理の方法および条件は、上述した第1実施形態における加熱処理の方法および条件と同様にすることができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の自然水用肥料の製造方法の第3実施形態について説明する。
以下、本発明の自然水用肥料の製造方法の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態の自然水用肥料の製造方法は、難溶性リン化合物(水に対して難溶性のリン化合物)を含む被処理物と、反応性イオン性物質(アルカリ金属および/または第2族元素の水酸化物および/または塩)を含む溶液とを接触させ、溶解性塩(リン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩)を得る工程を有する。
すなわち、前述した実施形態では、反応性イオン性物質を、固相のまま、難溶性リン化合物を含む被処理物と接触させていたのに対し、本実施形態では、反応性イオン性物質を溶解した溶液(液相)として用いている。
これにより、被処理物に含まれるリン化合物と、反応性イオン性物質との反応性をより効果的に向上させることができる。
反応性イオン性物質を含む溶液は、水溶液であるのが好ましい。
これにより、反応性イオン性物質をより効率よく溶解、電離させることができる。
反応性イオン性物質を含む溶液は、酸またはアルカリを含む溶液であるのが好ましい。
これにより、本工程の反応終了後に被処理物と溶液との混合物のpHを変化させることで、溶解性塩をより効率よく析出させることができる。
また、反応性イオン性物質を含む組成物は、反応性イオン性物質としてアルカリ金属および/または第2族元素の塩を含むとともに、酸性物質を含んでいるのが好ましい。
これにより、被処理物と反応性イオン性物質との反応をより好適に進行させることができる。
前記酸性物質としては、例えば、塩化水素、硫酸等が挙げられる。
溶液が、《3−1》酸を含む場合と、《3−2》アルカリを含む場合とについて、それぞれ説明する。
《3−1》溶液が酸を含む場合
溶液は、反応性イオン性物質と酸とを含む酸溶液である。
反応性イオン性物質と酸とを含む酸溶液のpHは、−1.0以上6.0以下であるのが好ましく、−0.5以上5.0以下であるのがより好ましく、0以上3.0以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
本工程で用いる酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩化水素、酢酸等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これにより、安全性を確保しつつ、酸の使用量を抑制し、本工程を効率よく行うことができる。
被処理物と混合される酸溶液中の反応性イオン性物質の含有量を調整することにより、溶解性塩の析出量を好適に調節することができる。
《3−2》溶液がアルカリを含む場合
溶液は、反応性イオン性物質とアルカリとを含むアルカリ溶液である。
反応性イオン性物質とアルカリとを含むアルカリ溶液のpHは、7.1以上14以下であるのが好ましく、7.5以上13以下であるのがより好ましく、8.0以上12以下であるのがさらに好ましい。
被処理物と混合されるアルカリ溶液中の反応性イオン性物質の含有量を調整することにより、溶解性塩の析出量を好適に調節することができる。
そして、本実施形態では、上記の「《3−1》溶液が酸を含む場合」または「《3−2》溶液がアルカリを含む場合」で説明した処理を行った後、上記のようにして得られた反応性イオン性物質を含む溶液(酸溶液またはアルカリ溶液)に、被処理物を固相で接触させる。
反応性イオン性物質を含む溶液に、被処理物を添加し、混合するのが好ましい。
これにより、反応性イオン性物質を含む溶液と被処理物とをより効率よく接触させることができ、反応効率をより向上させることができる。
反応性イオン性物質を含む溶液中における反応性イオン性物質の濃度は、1質量%以上であるのが好ましく、5質量%以上50質量%以下であるのがより好ましく、20質量%以上30質量%以下であるのがさらに好ましい。
被処理物と溶液との混合物の温度(反応温度)は、5℃以上100℃以下であるのが好ましく、10℃以上80℃以下であるのがより好ましい。
これにより、反応が促進され、反応をより効率よく進行させることができる。
被処理物と、反応性イオン性物質を含む溶液とを十分に混合した後、濃縮、乾燥等の処理を行い、溶媒を蒸発させることにより、溶解性塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム等)を含む固相を得ることができる。
被処理物と、反応性イオン性物質を含む溶液とを十分に混合した後、混合物のpHを変化させて、溶解性塩を析出させてもよい。
具体的には、反応性イオン性物質を酸で溶解した場合には、混合物のpHを上昇させることにより、溶解性塩を析出させることができる。
また、反応性イオン性物質をアルカリで溶解した場合には、混合物のpHを下降させることにより、溶解性塩を析出させることができる。
混合物のpHを変化させることにより溶解性塩を析出させる方法および条件は、第2実施形態で説明した析出処理の方法および条件と同様にすることができる。
そして、析出されたリン酸系化合物の塩を含む液体に対し、固液分離を行い、析出したリン酸系化合物の塩を含む固相を、液体成分と分離する。
固液分離の方法は、特に限定されないが、例えば、デカンテーション、ろ過、遠心分離等が挙げられ、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。
また、必要に応じて、分離された固相を水等により洗浄してもよい。
分離された固相に対して、加熱処理を行うのが好ましい。
これにより、自然水用肥料の製造に要するエネルギー量を削減しつつ、リン酸等のリン化合物とアルカリ金属または第2族元素との間で、より効率よく化学結合を形成させることができ、短時間で効率よく自然水用肥料を製造することができる。
<第4実施形態>
次に、本発明の自然水用肥料の製造方法の第4実施形態について説明する。
以下、本発明の自然水用肥料の製造方法の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態の自然水用肥料の製造方法は、難溶性リン化合物(水に対して難溶性のリン化合物)を酸またはアルカリで溶解した被処理物と、反応性イオン性物質(アルカリ金属および/または第2族元素の水酸化物および/または塩)を含む溶液とを接触させ、溶解性塩(リン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩)を得る工程を有する。
すなわち、前述した実施形態では、被処理物、反応性イオン性物質のうち少なくとも一方を固相のまま用いていたのに対し、本実施形態では、被処理物および反応性イオン性物質を液相(溶液)として用いている。
これにより、被処理物に含まれるリン化合物と、反応性イオン性物質との反応性をさらに効果的に向上させることができる。
難溶性リン化合物を酸またはアルカリで溶解した被処理物は、前記第2実施形態で説明したのと同様の条件を満足するのが好ましく、反応性イオン性物質を含む溶液は、前記第3実施形態で説明したのと同様の条件を満足するのが好ましい。
[自然水用肥料]
本発明に係る自然水用肥料は、リン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩である溶解性塩を含む。
そして、本発明に係る自然水用肥料は、前述した方法を用いて好適に製造することができる。
自然水用肥料において、溶解性塩(リン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩)は、NaまたはCaを含む塩を含むのが好ましく、NaxPyOz、CaxPyOzで表される塩(式中、x,y,zはそれぞれ1以上の整数である。)を含むのがより好ましく、Na3PO4、Na4P2O7、Ca3(PO4)2よりなる群から選ばれる1種または2種以上を含むのがさらに好ましい。また、自然水用肥料は、CaHPO4、Ca(H2PO4)2、NaH2PO4、Na2HPO4等のリン酸水素系化合物の塩も含んでもよい。
自然水用肥料は、上述したような溶解性塩(リン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩)以外の成分を含んでいてもよい。
ただし、自然水用肥料中における溶解性塩(リン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩)以外の成分の含有率は、60質量%以下であるのが好ましく、40質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
特に、自然水用肥料中における難溶性リン化合物(リン酸アルミニウム、リン酸鉄等)の含有率は、60質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、自然水用肥料中における溶解性塩(リン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩)の含有率は、30質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましく、80質量%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
本発明に係る自然水用肥料は、水に対する溶解度が調節できるようにされており、例えば、自然水中で徐々に溶解する性質(徐放性)を有するものとすることができる。したがって、自然水中に提供されることによって、海藻等の栄養分となるリン成分が長期間にわたって溶出し、貧栄養の自然水環境を富栄養化することができ、長期間にわたってその効果を持続することができる。
特に、自然水用肥料は、リン酸系化合物のナトリウム塩と、リン酸系化合物のカルシウム塩との両方を含むのが好ましい。
リン酸系化合物のナトリウム塩と、リン酸系化合物のカルシウム塩とは、水に対する溶解性が異なるため、これらを組み合わせることで、自然水に対する溶解性の調整をより好適に行うことができる。例えば、自然水への適用後の初期段階におけるリン成分(溶解性塩)の溶出量を比較的高いものとしつつ、自然水への適用後から比較的長期間経過した後のリン成分(溶解性塩)の溶出量も比較的高くすることができる。
自然水用肥料中における、Naの含有率をXNa[mol%]、自然水用肥料中におけるCaの含有率をXCa[mol%]としたとき、0.01≦XCa/XNa≦100の関係を満足するのが好ましく、0.1≦XCa/XNa≦10の関係を満足するのがより好ましい。
これにより、上述した効果がより顕著に発揮される。
1gの自然水用肥料を、500mLの3.5質量%塩化ナトリウム水溶液に添加して25℃で静置した際の、5時間後における自然水用肥料中に含まれるリンの溶出率をD1[%]、720時間後における自然水用肥料中に含まれるリンの溶出率をD2[%]としたとき、1.1≦D2/D1≦100の関係を満足するのが好ましく、2.0≦D2/D1≦80の関係を満足するのがより好ましい。
これにより、長期間にわたってより好適にリンを溶出することができ、自然水用肥料としての効果を長期間にわたってより好適に発揮することができる。
ここで、前記D2は、1%以上98%以下であるのが好ましく、2%以上90%以下であるのがより好ましい。
これにより、長期間にわたってさらに好適にリンを溶出することができ、自然水用肥料としての効果を長期間にわたってさらに好適に発揮することができる。
また、自然水用肥料中におけるFeの含有率とAlの含有率との和をXA[質量%]、自然水用肥料中におけるアルカリ金属の含有率と第2族元素の含有率との和をXB[質量%]としたとき、0.1≦XB/XA≦10の関係を満足するのが好ましく、0.2≦XB/XA≦5の関係を満足するのがより好ましく、0.5≦XB/XA≦3の関係を満足するのがさらに好ましい。
これにより、長期間にわたってさらに好適にリンを溶出することができ、自然水用肥料としての効果を長期間にわたってさらに好適に発揮することができる。
自然水用肥料は、いかなる形状であってもよいが、粒状をなしているのが好ましい。
これにより、自然水用肥料の取り扱いがより容易となる。
自然水用肥料が粒状をなしている場合、自然水用肥料が用いられる目的および環境によって、粒径を調節することができる。自然水用肥料の粒径や、自然水中への投与形態を変えることによって、溶出期間等も好適に調節することができる。
自然水用肥料が粒状をなす場合、要求される自然水用肥料の持続時間等によって異なるが、その平均粒径は、1μm以上1.0m以下であるのが好ましく、2mm以上500mm以下であるのがより好ましい。
これにより、自然水中における自然水用肥料の溶解速度等をより好適に調整することができる。
自然水用肥料の自然水中への投与形態は、自然水と接触する状態で投与されるものであれば特に限定されず、例えば、自然水用肥料をそのまま自然水中に直接投入すること、自然水用肥料を土または砂利等に混ぜて海底等に敷設すること等により投与される。
また、自然水用肥料は、自然水用肥料の大きさよりも小さい開口部を有する容器に収容した状態で、自然水に適用してもよい。
これにより、例えば、水流等の影響で、固体状の自然水用肥料が必要以上に広範囲に拡散してしまい、所望の領域において十分な効果が得られなくなってしまうことをより確実に防止することができる。
前記容器としては、例えば、メッシュを有する袋体を用いてもよい。
袋体の構成材料は、特に限定されないが、ポリ乳酸等の生分解性の高分子材料であるのが好ましい。
また、自然水用肥料は、例えば、護岸ブロック、消波ブロック、人工魚礁、堤防等の、自然水に接した状態で設置される構造体、特に、コンクリート製の大型固定物または建造物の全体または一部に含まれた状態で用いられるものであってもよい。
これにより、自然水用肥料が海流、水流等で流されることがより効果的に防止される。また、コンクリート等に含まれることによって、徐々に溶解する性質をさらに効果的に発揮することができ、さらに長期間にわたって効果を持続させることができる。
自然水用肥料は、前記構造体の全体に含まれていてもよいし、前記構造体の一部(ただし、自然水と接触し得る部位)のみに含まれていてもよい。
構造体を製造する際に、原料となるコンクリート等に混合することにより、自然水用肥料が混合された構造体とすることができる。
また、前記構造体は、その表面に、自然水用肥料を含む組成物を付着させたものであってもよい。また、自然水用肥料(前記構造体)は、自然水と接触し得るものであれば、地中に埋設して用いるものであってもよい。
これにより、例えば、自然水に接触し得る部位にすでに設置されている構造体や、すでに製造された設置前の構造体(例えば、設置準備中の構造体等)等にも、好適に適用することができ、コストや手間の観点からも有利である。また、リン成分の溶出が進み、自然水用肥料としての効果が低下してきた場合にも、自然水用肥料を含む組成物を再付着させることにより、所望の期間だけ、自然水用肥料を延長させることができる。また、自然水に適用した場合のリン成分(溶解性塩)の溶出量や海藻等の生育条件によって、自然水用肥料を含む組成物の付着量や組成物の組成の調整を行うことができ、より好ましい環境を作り上げることができる。また、万が一、リン成分(溶解性塩)の溶出量が過剰となった場合に、残存する自然水用肥料の回収も比較的容易に行うことができる。
また、母材となる構造体への、自然水用肥料を含む組成物の付着は、例えば、塗装法により好適に行うことができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の自然水用肥料の製造方法は、前述した工程以外の工程(例えば、前処理工程、中間処理工程、後処理工程等)を有していてもよい。
より具体的には、本発明の自然水用肥料の製造方法は、前処理工程として、例えば、被処理物と反応性イオン性物質を含む組成物との反応に先立って、被処理物と当該組成物とを混練、圧縮成形等により、これらの混合物を所定の形状(ペレット状、ブリケット状)に成形する工程を有していてもよい。また、被処理物に対して精製処理、消化処理等を施す前処理工程を有していてもよい。また、本発明の自然水用肥料の製造方法は、中間処理工程や後処理工程として、異なる条件で製造された自然水用肥料を混合する工程を有していてもよい。また、本発明の自然水用肥料の製造方法は、反応により得られた自然水用肥料を粉砕する工程を有していてもよい。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<1>自然水用肥料の製造
(実施例1)
まず、被処理物としての汚泥灰を用意した。この汚泥灰は、リンに加え、Fe、Alを含んでいた。
次に、300mLの三角フラスコに水(純水)50mLを入れ、80℃で加熱した後、反応性イオン性物質としての炭酸ナトリウム5.4gをこの三角フラスコ内に添加し、撹拌した。
次に、上記の炭酸ナトリウム水溶液に汚泥灰10gを加え、マグネットスターラーを用いて40分間撹拌した。これにより、35質量%の炭酸ナトリウム添加試料を調製した。
撹拌終了後に、乾燥等の処理を行い、溶媒(水分)を除去するとともに、固相部分に対し、120℃×120分間の加熱処理を行いさらに乾燥した。
その後、固相部分に焼成処理を施した。焼成処理は、まず、室温から200℃までは昇温速度:10℃/分で昇温し、200℃で2時間保持し、次いで、800℃(最高焼成温度)まで昇温速度:20℃/分で昇温し、800℃(最高焼成温度)で2時間保持し、次いで、200℃まで、降温速度:5℃/分で降温し、200℃で2時間保持し、その後、室温まで、降温速度:10℃/分で降温することにより行った。
これにより、自然水用肥料を得た。
(実施例2)
炭酸ナトリウム水溶液の濃度を20質量%に変更した以外は、前記実施例1と同様にして自然水用肥料を製造した。
(実施例3)
炭酸ナトリウム水溶液の濃度を25質量%に変更した以外は、前記実施例1と同様にして自然水用肥料を製造した。
(実施例4)
炭酸ナトリウム水溶液の濃度を30質量%に変更した以外は、前記実施例1と同様にして自然水用肥料を製造した。
(実施例5)
炭酸ナトリウム水溶液の濃度を35質量%に変更した以外は、前記実施例1と同様にして自然水用肥料を製造した。
(実施例6)
まず、被処理物としての汚泥灰を用意した。この汚泥灰は、リンに加え、Fe、Alを含んでいた。
次に、300mLの三角フラスコに水(純水)100mLを入れ、80℃で加熱した後、反応性イオン性物質としての炭酸カルシウム5.4gをこの三角フラスコ内に添加し、撹拌した。
次に、上記の炭酸ナトリウム水溶液に汚泥灰10gを加え、マグネットスターラーを用いて40分間撹拌した。これにより、20質量%の炭酸カルシウム添加試料を調製した。
撹拌終了後に、乾燥等の処理を行い、溶媒(水分)を除去するとともに、固相部分に対し、120℃×120分間の加熱処理を行いさらに乾燥した。
その後、固相部分に焼成処理を施した。焼成処理は、まず、室温から200℃までは昇温速度:10℃/分で昇温し、200℃で2時間保持し、次いで、800℃(最高焼成温度)まで昇温速度:20℃/分で昇温し、800℃(最高焼成温度)で2時間保持し、次いで、200℃まで、降温速度:5℃/分で降温し、200℃で2時間保持し、その後、室温まで、降温速度:10℃/分で降温することにより行った。
これにより、自然水用肥料を得た。
(実施例7)
炭酸カルシウムの濃度を25質量%に変更した以外は、前記実施例6と同様にして自然水用肥料を製造した。
(実施例8)
炭酸カルシウム濃度を30質量%に変更した以外は、前記実施例6と同様にして自然水用肥料を製造した。
(実施例9)
炭酸カルシウムの濃度を35質量%に変更した以外は、前記実施例6と同様にして自然水用肥料を製造した。
(比較例1)
汚泥灰をそのまま自然水用肥料とした。
なお、前記各実施例の自然水用肥料について、X線回折(XRD)にて成分の分析を行ったところ、実施例1〜9の自然水用肥料にはリン酸ナトリウムが含まれていることが確認された。また、実施例1〜9で得られた自然水用肥料は、いずれも、粒状をしており、実施例1〜9で得られた自然水用肥料の平均粒径は、いずれも、3mm以上10mm以下であった。また、実施例1〜9で得られた自然水用肥料は、いずれも、溶解性塩(リン酸系化合物のアルカリ金属塩および/または第2族元素塩)の含有率が10質量%以上であった。また、自然水用肥料中におけるFeの含有率とAlの含有率との和をXA[質量%]、自然水用肥料中におけるアルカリ金属の含有率と第2族元素の含有率との和をXB[質量%]としたとき、実施例1〜9の自然水用肥料では、0.1≦XB/XA≦10の関係を満足していた。
<2>リンの溶出率の評価
以上のようにして製造された各実施例および比較例の自然水用肥料1gを、それぞれ、500mLの3.5質量%塩化ナトリウム水溶液に添加して、25℃で静置した。
この際の、自然水用肥料中に含まれるリンの溶出率を30日間にわたって測定した。
図1は、実施例1〜5および比較例1に係る自然水用肥料について、塩化ナトリウム水溶液への添加からの経過日数とリン成分の溶出率との関係を示す図である。また、図2は、実施例6〜9および比較例1に係る自然水用肥料について、塩化ナトリウム水溶液への添加からの経過日数とリン成分の溶出率との関係を示す図である。
図1、図2から明らかなように、汚泥灰をそのまま用いた比較例1では、30日間でのリン成分の溶出率は約0.5%であったのに対し、前記各実施例では、いずれも溶解度が向上していることがわかる。また、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムの濃度を変えることによって、自然水用肥料のリンの溶出率を変更できることがわかる。より具体的には、実施例1〜5で行った15質量%〜35質量%の範囲では、炭酸ナトリウム水溶液の濃度を上げることにより、溶出率を上げることができ、5%〜50%程度の範囲でリンの溶出率を調節可能であった。また、実施例6〜9で行った10質量%〜35質量%の範囲では、炭酸カルシウム水溶液の濃度を上げることにより、溶出率を上げることができ、1%〜5%程度の範囲でリンの溶出率を調節可能であった。
また、汚泥灰に対し炭酸ナトリウム水溶液を用いて反応を行った実施例1〜5では、いずれも、汚泥灰に対し炭酸カルシウム水溶液を用いて反応を行った実施例6〜9に比べて、短期間でリン成分の溶出量が高くなる傾向を示していることがわかる。
また、汚泥灰に対し炭酸カルシウム水溶液を用いて反応を行った実施例6〜9では、いずれも、汚泥灰に対し炭酸ナトリウム水溶液を用いて反応を行った実施例1〜5に比べて、長期間経過した後でも、リン成分の溶出量が上昇し続ける傾向を示していることがわかる。
また、前記各実施例では、30日経過以降もリンの溶出率が増加していくことが確認された。このことから、試算では2年間にわたってリン成分の溶出が可能であり、この場合、汚泥灰に含まれているリンの約80%を溶出させることができると推測される。
なお、実施例1の自然水用肥料、実施例6の自然水用肥料、被処理物である汚泥灰についてのX線回折(XRD)のチャートを図3に示す。この図から、実施例1では、溶解性塩としてのNa3PO4が生成しており、実施例6では、溶解性塩としてのCa3(PO4)2が生成していることが分かる。
また、1gの自然水用肥料を、500mLの3.5質量%塩化ナトリウム水溶液に添加して25℃で静置した際の、5時間後における自然水用肥料中に含まれるリンの溶出率をD1[%]、720時間後における自然水用肥料中に含まれるリンの溶出率をD2[%]としたとき、前記実施例1〜4、6〜9では、いずれも、2.2≦D2/D1≦80の関係を満足しており、D2の値が2%以上90%以下の範囲内の値であった。
また、汚泥灰と炭酸ナトリウムまたは炭酸カルシウムとを固相の状態で混合し、加熱処理を行った以外は、前記各実施例と同様にして自然水用肥料を製造したところ、いずれも優れた結果が得られた。
また、汚泥灰に含まれる難溶性リン化合物を酸またはアルカリで溶解した被処理物(液相)と、固体状態の反応性イオン性物質(炭酸ナトリウムまたは炭酸カルシウム)とを混合し、溶媒を除去、乾燥した後、加熱処理を行った以外は、前記各実施例と同様にして自然水用肥料を製造したところ、いずれも優れた結果が得られた。
また、汚泥灰に含まれる難溶性リン化合物を酸またはアルカリで溶解した被処理物(液相)と、水溶液状態の反応性イオン性物質(炭酸ナトリウムまたは炭酸カルシウム)(液相)とを混合し、溶媒を除去、乾燥した後、加熱処理を行った以外は、前記各実施例と同様にして自然水用肥料を製造したところ、いずれも優れた結果が得られた。
また、反応性イオン性物質として、Na2CO3、CaCO3の代わりに、NaOH、Ca(OH)2、CaCl2およびNaClを用いた以外は、前記各実施例と同様にして自然水用肥料を製造したところ、いずれも優れた結果が得られた。
また、汚泥灰と反応性イオン性物質の水溶液(炭酸ナトリウム水溶液または炭酸カルシウム水溶液)との混合物の温度を、5℃以上100℃以下の範囲内で変更した以外は、前記各実施例と同様にして自然水用肥料を製造したところ、いずれも優れた結果が得られた。
また、加熱処理の加熱温度を、150℃以上1500℃以下の範囲内で変更するとともに、加熱処理の処理時間(150℃以上の温度での加熱時間)を、1時間以上100時間以下の範囲内で変更した以外は、前記各実施例と同様にして自然水用肥料を製造したところ、いずれも優れた結果が得られた。
反応性イオン性物質を含む水溶液として、炭酸ナトリウムと炭酸カルシウムとを含む水溶液を用い、当該水溶液(組成物)中における、Naの含有率をXNa’[mol%]、Caの含有率をXCa’[mol%]としたとき、XCa’/XNa’の値を0.01以上100以下の範囲内で変更した以外は、前記各実施例と同様にして自然水用肥料を製造したところ、いずれも優れた結果が得られた。また、この用紙にて得られた自然水用肥料中における、Naの含有率をXNa[mol%]、自然水用肥料中におけるCaの含有率をXCa[mol%]としたとき、XCa/XNaは、0.01以上100以下の範囲内の値であった。
反応性イオン性物質として炭酸ナトリウムの代わりに水酸化ナトリウムを20質量%の水溶液として用い、焼成温度(最高焼成温度)を400℃〜900℃の範囲で、種々変更した以外は前記実施例1と同様にして自然水用肥料を製造し、当該自然水用肥料について、前記と同様にリンの溶出率を測定することにより得られた、加熱処理における加熱温度と、製造された自然水用肥料からのリンの溶出率との関係を図4に示す。
図4から明らかなように、同一の材料を用いても、製造条件(ここでは、焼成温度)により、得られる自然水用肥料からのリンの溶出率が異なることが分かる。