JP2019155600A - ボーラス、ボーラスの製造方法、及び立体造形物 - Google Patents

ボーラス、ボーラスの製造方法、及び立体造形物 Download PDF

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【課題】 患者の放射線照射対象となる体表面に沿って隙間なく密着させる形状を有するボーラスは、必要以上に高い密着力を有する。そのため、治療後にボーラスを外すとき、体表面から剥離させるのが困難となる課題がある。【解決手段】 放射線治療を受ける患者の放射線照射される体表面に沿って対向する形状である対向形状部を有するボーラスであって、前記対向形状部の前記体表面に対向する側の表面は階段構造を有し、前記階段構造における段差は50μm以上200μm以下であるボーラスである。【選択図】図2

Description

本発明は、ボーラス、ボーラスの製造方法、及び立体造形物の製造方法に関する。
X線、γ線、電子線、中性子線、α線等の放射線やレーザー光線を人体に照射して、癌等の病気治療に利用することが、広く行われている。一般に、物質に放射線を照射すると、人体の深部にいくにしたがって、放射線の量は指数関数的に減少するが、散乱線は深部ほど比較的増大し、その方向は様々である。
特に、高活性エネルギー線では、反跳電子(散乱線)の方向が主に前方にあるため、側方への散乱が少なくなり、表面線量よりもある深さのところでの線量が最大となる。このような放射線の皮膚中での性質を考慮しないで治療を行うと、ターゲット(患部)以外の正常組織に対して、不必要な放射線の照射による有害な作用を及ぼすことがある。
このことを防ぐため、ボーラス(Bolus)という、高活性エネルギー線の吸収が人体組織と等価又は類似である物質を用いて、人体等の不規則な表面を平坦に、又は欠損した部分を充填し、ターゲットのみに高活性エネルギー線を照射するという方法が行われている。
ここで、人体組織と等価な物質とは、放射線の吸収又は散乱について実質的に人体組織と同じ性質を示す物質を意味する。
一般に、実用に値するボーラスは、(1)人体組織と等価な物質であること、(2)均質なものであること、(3)可塑性に優れ、適当に弾力性を有し、生体への形状適合性及び密着性がよいこと、(4)毒性がないこと、(5)エネルギー変化等がないこと、(6)厚みが均一であること、(7)空気の混入がないこと、(8)透明性が高いこと、(9)消毒の容易性があること、などの特性及び機能を満たすことが望まれる。そして、特に(3)の「密着性がよいこと」は、ボーラスの機能を果たすために重要となる。
特許文献1には、患者の皮膚表面に隙間なく密着させることを課題として、患者の皮膚表面の形状データ、及び患者の患部の形状データに基づき、患者の放射線照射対象となる体表面に沿った形状を有するボーラスが開示されている。また、このボーラスは3次元プリンターを用いて作成した型に、水、鉱物、重合性ポリマーを含有するボーラス形成用液体材料を流し込んで硬化させて作成することができ、または、紫外線光で硬化させるインクジェット方式の3次元プリンターや光造形方式の3次元プリンターを用いて直接形成することができる。
しかしながら、患者の放射線照射対象となる体表面に沿って隙間なく密着させる形状を有するボーラスは、必要以上に高い密着力を有する。そのため、治療後にボーラスを外すとき、体表面から剥離させるのが困難となる課題がある。
請求項1に係る発明は、放射線治療を受ける患者の放射線照射される体表面に沿って対向する形状である対向形状部を有するボーラスであって、前記対向形状部の前記体表面に対向する側の表面は階段構造を有し、前記階段構造における段差は50μm以上200μm以下である。
本発明のボーラスは、患者の放射線照射対象となる体表面に対する密着性に優れ、且つ治療後において体表面からの剥離性に優れる効果を奏する。
図1は、階段構造の断面概略図である。 図2は、ボーラスを作製するための3次元プリンターの概略図である。 図3は、3次元プリンターで作製したボーラスを支持体から分離した概略図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
<<ボーラス>>
ボーラスは、立体造形物の一例であって、放射線治療を受ける患者に適用される医療器具である。本実施形態は、放射線治療を受ける患者の放射線照射される体表面に沿って対向する形状である対向形状部を有するボーラスであって、対向形状部の体表面に対向する側の表面は階段構造を有し、階段構造における段差は50μm以上200μm以下である。
<ボーラスの形状>
本実施形態のボーラスは、放射線治療を受ける患者の放射線照射される体表面に沿って対向する形状である対向形状部を有する。体表面は、皮膚、患部などの外部に露出している人体組織である。また、対向形状部は、患者の放射線照射される体表面におけるDICOMデータなどの三次元データに基づいて形成される形状を有する領域である。例えば、患者の体表面の一部の領域において他の体表面の領域より飛び出している形状(凸部)がある場合、ボーラスは、この飛び出している形状(凸部)に沿って対向する凹んだ形状(凹部)である対向形状部を有する。すなわち、従来用いられていたボーラスのように、非使用時は平板状の形状であって、使用時に患者の体表面に沿って追従させるものは、本願の対向形状部を有さない。本実施形態は、ボーラスが対向形状部を有することにより、患者の体表面にボーラスを密着させることができ、ボーラスの密着性が向上する。なお、対向形状部は、体表面に沿って直接的に又は間接的に対向する形状であれば限定されず、例えば、ボーラスと体表面の間に別の部材を挟んで対向する場合の形状であってもよい。
−対向形状部の表面構造−
対向形状部の体表面に対向する側の表面は階段構造を有する。本実施形態において「階段構造」とは、互いに略直交する第一の面と第二の面とが交互に連続する構造である。この階段構造について、図1を用いて説明する。図1は、階段構造の断面概略図である。図1(a)〜(c)に示すように、階段構造は、第一の面1及び第二の面2を有し、第一の面1及び第二の面2は略直交する。また、第一の面1及び第二の面2は、「1、2、1、2、・・・」と、交互に連続している。また、「互いに略直交する第一の面と第二の面とが交互に連続する構造」には、図1(d)に示すように、隣り合う第一の面及び第二の面が曲線部を介して間接的に接続される構造であって、第一の面の延長平面1e及び第二の面の延長平面2eが略直交する構造も含まれる。
このように階段構造を設けることで、図1(a)に示すように、対向形状部の体表面に対向する側の表面は、略線上の複数の頂部3と、頂部に挟まれる複数の溝部4と、を有する。このように、略線上の複数の頂部と、頂部に挟まれる複数の溝部と、を有することによって、ボーラスが対向形状部を有して患者の体表面に強固に密着する形状である場合であっても、使用後に容易にボーラスを体表面から剥離させることができる。これは、略線上の複数の頂部が、体表面と接触しつつ、空気の流路となる複数の溝部を形成し、ボーラスの体表面に対する過度な密着を抑制することができるためである。なお、体表面と接触する頂部の形状が略線上ではなく点状である場合、ボーラスの剥離性を向上させることはできるが、ボーラスの密着性が低下する。
また、階段構造における段差は50μm以上200μm以下であり、80μm以上150μm以下であることが好ましい。段差が50μm未満であるとボーラスの剥離性が低下し、段差が200μmより大きいとボーラスの密着性が低下する。なお、本実施形態において「段差」とは、互いに略直交する第一の面と第二の面とが交互に連続する構造である階段構造において、第二の面を介して隣接する2つの第一の面の間の長さである。ここで「第二の面を介して隣接する2つの第一の面の間の長さ」は、第二の面の方向における長さであり、具体的にはボーラスの断面において第一の面を形成する辺と第二の面を形成する辺とが略直交するようにボーラスを切断した場合において、第二の面を形成する辺の方向における長さを示す。なお、第一の面を形成する辺と第二の面を形成する辺とが略直交する場合には、第一の面を形成する辺の延長線と第二の面を形成する辺の延長線とが間接的に略直交する場合も含まれる。より具体的には、図1(a)に示すように、第一の面1が、第二の面2の方向に50μm以上200μm以下の段差dで連続して複数形成されていることを示す。また、対向形状部の面積に対し、段差が50μm以上200μm以下である階段構造を有する領域の面積が占める割合は、80%以上であることが好ましい。
また、図1(a)に示すように、段差dは、略等間隔であることが好ましい。ボーラス又はボーラスを成形するための型を熱溶解積層法(FDM)又は切削RPマシンにより製造した場合、ボーラスを製造する際に用いる三次元データに対し、階段構造を形成させるための特別なデータ処理を実行しなくても、熱溶解積層法(FDM)自体の堆積跡又は切削RPマシンによる切削跡に由来して階段構造を形成することができ、且つ階段構造における段差を略等間隔にすることができる場合があるためである。なお、「略等間隔」とは、階段構造の所定の位置における段差と、所定の位置における段差を含む10箇所以上の位置における段差の平均値と、の差が、段差の平均値に対して−25%以上25%以下であることを示す。
なお、ボーラスの形状を確認する方法は適宜選択することができるが、例えば、共焦点レーザー顕微鏡(VK−X1000、株式会社キーエンス製)などを用いることができる。また、上記の段差は、物理的にボーラスを切断し断面を見ることで測定することができる。具体的には、三次元測定器(装置名:CNC三次元測定機CRYSTA−Apex S、株式会社ミツトヨ製)などを用いて観察する。
<ボーラスの物性>
−CT値−
本実施形態のボーラスは、コンピュータ断層撮影法で測定したCT値(HU)が、−100以上100以下であることが好ましく、0以上100以下であることがより好ましく、0以上70以下であることが更に好ましい。なお、CT値とは、コンピュータ断層撮影装置で骨1,000、水0、空気−1,000としてキャリブレーションされた値である。ここで、ボーラスは、放射線治療に供されるものであり、その性質が体組成に近いことが好ましい。体組成におけるCT値は、身体の部位によって異なるが、例えば、筋肉では35〜50程度、肝臓では45〜75程度、膵臓では25〜55程度、脂肪では−50〜−100程度、血液では10〜30程度であることが知られている。このため、放射線を照射する部位にもよるが、CT値が−100以上100以下であることにより、放射線の吸収、又は散乱について実質的な人体組織と同じ性質を示すボーラスが得られる。
なお、X線による放射線治療を行う場合、対象となる患部近傍、すなわちボーラスと患者体表面の間に空気が存在することで、患部近くにおいてCT値が大きく変化し、治療精度が悪くなる場合がある。しかし、体表面とボーラスの間の距離が安定して1mm以内に収まっていれば治療効果が損なわれない。そのため、本実施形態のように段差が200μm以内の階段構造であれば、CT値が−100以上100以下であるボーラスを作製することで、制度の良い放射線治療と治療後における体表面からの剥離性を両立することができる。
−全光透過率−
本実施形態のボーラスは、全光透過率が60%以上あることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。医療効果を高めるため、X線を放射する領域において、ボーラスと体表面が適度に密着し大きな空隙がないことを確認する必要があるが、この確認はボーラスを透過して目視するのが簡便な方法であるためである。なお、ボーラスの空隙の視認容易性に関する評価指標としては、ヘイズよりも全光透過率が好ましい。全光透過率は、汎用の透過率測定機で測定する。例えば、HR−100(株式会社村上色彩技術研究所製)やヘイズ−ガード i(株式会社テツタニ製)などのヘイズ・透過率・反射計を用いて測定する。また、全光透過率と併せて狭角度散乱を測定しても良い。
なお、ボーラスの表面が階段構造を形成している場合、不規則な凹凸を形成している場合と比べて光の乱反射が少なく、また階段構造も微細になる。そのため、透過性の低下が抑制され、全光透過率が60%以上であるボーラスの製造が容易となる。
−硬度−
本実施形態のボーラスは、アスカーゴム硬度計C2型で測定した硬度が80以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましい。また、20以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上が特に好ましい。硬度が80以下であると、ボーラスと患者の体表面とを十分に密着させることができる。
<ボーラスの組成>
ボーラスの組成としては特に制限はないが、例えば、ポリウレタン樹脂、シリコーンゴム、ポリビニルアルコール、カラギーナン、ローカストビーンガム、グルコマンナン、デンプン、カードラン、グアーガム、寒天、カシアガム、デキストラン、アミロース、ゼラチン、ペクチン、キサンタンガム、タラガム、ジェランガム、アセトアセチル化水溶液高分子化合物、トポロジカルゲル、テトラペグゲル、ダブルネットワークゲル、ナノコンポジッド(NC)ゲルなどがあり、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、上記の中でも、CT値、透明性、硬度を考慮すると、NCゲルが好適である。
−NCゲル−
NCゲルは、水、ポリマー、鉱物、有機溶媒を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。NCゲルは、溶液中に分散された鉱物と、重合性モノマーが重合したポリマーと、が複合化して形成された三次元網目構造の中に水が包含されている。そのため、ボーラスの組成中にNCゲルが含まれることで、優れた可塑性、適度な弾力性、及び高い密着性を有するボーラスを得ることができる。また、NCゲルは、ポリマーと水を主成分として構成され、CT値が人体の値に近いため好ましい。
−−ポリマー−−
ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミド基、アミノ基、水酸基、テトラメチルアンモニウム基、シラノール基、エポキシ基などを有するポリマーが挙げられる。また、ポリマーは、ホモポリマー(単独重合体)、ヘテロポリマー(共重合体)のいずれであってもよく、ホモポリマーであることが好ましい。また、ポリマーは、変性されていてもよく、公知の官能基が導入されていてもよく、また塩の形態であってもよいが、水溶性であることが好ましい。なお、水溶性とは、例えば、30℃の水100gにポリマーを1g混合して撹拌したとき、90質量%以上が溶解するものを意味する。
−−水−−
水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。水には、保湿性付与、抗菌性付与、導電性付与、硬度調整などの目的に応じてその他の成分を溶解乃至分散させてもよい。
−−鉱物−−
鉱物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水膨潤性層状粘土鉱物などが挙げられる。水膨潤性層状粘土鉱物としては、例えば、水膨潤性スメクタイト、水膨潤性雲母などが挙げられる。より具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、高弾性のボーラスが得られる点から、水膨潤性ヘクトライトが好ましい。水膨潤性ヘクトライトは、適宜合成したものであってもよいし、市販品であってもよい。市販品としては、例えば、合成ヘクトライト(ラポナイトXLG、RockWood社製)、SWN(Coop Chemical Ltd.製)、フッ素化ヘクトライトSWF(Coop Chemical Ltd.製)などが挙げられる。これらの中でも、ボーラスの弾性率の点から、合成ヘクトライトが好ましい。なお、水膨潤性とは、層状粘土鉱物の層間に水分子が挿入され、水中に分散されることを意味する。
鉱物の含有量は、ボーラスの弾性率及び硬度の点から、ボーラスの全量に対して、1質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上25質量%以下がより好ましい。
−−有機溶媒−−
有機溶媒は、ボーラスの保湿性を高めるために含有される。有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルコールエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、保湿性の点から、多価アルコールが好ましく、グリセリン、プロピレングルコールがより好ましい。
有機溶媒の含有量は、ボーラスの全量に対して、10質量%以上50質量%以下が好ましい。有機溶媒の含有量が、10質量%以上であると、乾燥防止の効果が十分に得られ、50質量%以下であると、層状粘土鉱物が均一に分散される。また、有機溶媒の含有量が、10質量%以上50質量%以下であると、人体の組成からのずれが小さく、ボーラスとしての良好な機能が得られる。
−−その他の成分−−
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸等のホスホン酸化合物、安定化剤、表面処理剤、重合開始剤、着色剤、粘度調整剤、接着性付与剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、紫外線吸収剤、可塑剤、防腐剤、分散剤などが挙げられる。
<ボーラスの表面構造>
ボーラスの表面構造としては、上記のボーラスの形状を形成できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面に皮膜を設けたボーラスであることが好ましい。皮膜を設けることにより、ボーラスの形状を維持でき、ボーラスの保存性(耐乾燥性及び防腐性)を向上することができ、ボーラスの外観性を改善することができる。なお、本実施形態でボーラスとは、皮膜等の表面構造も含めた全体としての構造体を示す。
−皮膜−
皮膜としては、ボーラスの耐乾燥性及び防腐性を向上できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂などが挙げられる。
樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、PPS、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、セロハン、アセテート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリイミド、フッ素樹脂、パラフィンワックスなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
皮膜を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、皮膜の形成材料を溶剤に溶解してボーラスの表面に塗布する方法、皮膜の形成材料として熱収縮フィルムを用いボーラスとなる材料の表面にラミネート形成する方法などが挙げられる。塗布する方法、フィルムを用いてラミネート形成する方法を用いることにより、ボーラスの表面形状に沿った皮膜を形成することができるため好ましい。塗布する方法としては、例えば、刷毛、スプレー、浸漬塗工などを用いる方法などが挙げられる。また、皮膜の形成材料を溶剤に溶解したボーラス形成用液体材料を用い、3次元プリンターでボーラスを造形する際に同時に皮膜を形成してもよい。
<ボーラスの寸法>
ボーラスの面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、放射線照射時に、照射線と患部を結んだ軸を含む形状における面積であって、下限値としては、10mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましく、上限値としては、1,000mm以下が好ましく、500mm以下がより好ましい。
また、対向形状部において、体表面に対向する表面から体表面に対向しない表面までの最短距離(ボーラスの厚み)が2.5mm以上25mm以下である領域を含むことが好ましく、4.5mm以上5.5mm以下または9.5mm以上10.5mm以下である領域を含むことがより好ましい。また、対向形状部において、体表面に対向する側の表面から体表面に対向しない側の表面までの最短距離(ボーラスの厚み)と、最短距離の平均値(ボーラスの厚みの平均値)と、の差が、最短距離の平均値に対して−10%以上10%以下であることが好ましい。なお、最短距離の平均値は、10箇所以上の任意の位置における最短距離の平均である。
<<ボーラスの製造方法>>
本実施形態におけるボーラスを造形する方法は特に限定されないが主に2つある。
第一の方法は、患者の体表面の三次元データに基づき、切削装置や3次元プリンター等を用いてボーラスを製造するための型を成形する型成形工程と、この型にボーラス形成用液体材料を流し込んで硬化させる方式である注型成形方式でボーラスを造形する造形工程と、を有する。
第二の方法は、患者の体表面の三次元データに基づき、型を用いずに、3次元プリンター等を用いてボーラスを造形する造形工程を有する。
<三次元データ>
第一の方法、及び第二の方法で用いる「患者の体表面の三次元データ」は、患者の体表面の三次元データに基づいて作成される。患者の体表面の三次元データは、医用撮影機器や3Dスキャナなどを用いて得られたデータを変換することで作製される。医用撮影機器としては、例えば、X線CT、ポジトロン断層法(PET)、単一光子放射断層撮影法(SPECT)、核磁気共鳴画像法(MRI)などを用いた撮影機器等が挙げられる。得られたデータが2次元画像の場合は、例えば、OsiriX(Newton Graphics, Inc.製)やMimics(Materialise製)などを用いて三次元データに変換する。
また、ボーラスの製造方法に応じて、患者の体表面の三次元データを用いてボーラスの三次元データが作成される。例えば、患者の体表面の三次元データを用い、ボーラスが患者の体表面と接触する範囲における、ボーラスの厚さ(法線距離)を設定し、ボーラスの三次元データを作成する。通常、ボーラスの厚さは一定の長さに設計されるが、治療内容によっては場所ごとに任意の厚さで設計する。なお、ボーラスの三次元データの作成は、Magics(Materialise製)やMesh Mixer(Autodesk製)などのSTL編集ソフトを用いておこなう。
また、型を用いてボーラスを造形する場合は、更に、ボーラスの三次元データから型の三次元データを作成する。型の三次元データは、例えば、得られたボーラスの三次元データを、雄型(コア)の型及び雌型(キャビティー)の型の三次元データに変換することで作成される。なお、ボーラスの三次元データから作成されるデータは、型自体の三次元データ以外に、型を成形するための型に関する三次元データであってもよい。
なお、本実施形態のボーラスは、体表面に対向する側の表面に、上記説明した特徴を有する所定の階段構造を有している。階段構造は、三次元データにおいて階段構造を設けるデータ処理を行うことで実現してもよいが、三次元データに対しては特に処理を行わず、例えば、切削で残る帯状の切削跡や、積層造形法における積層跡で生じる階段構造で代替してもよい。但し、ボーラス形成用液体材料をインクジェット方式で吐出し、それを硬化させることで硬化層を積層する積層造形法の場合、インクジェット方式で形成される単一の硬化層は非常に薄層であり、通常の積層造形工程を経るだけでは階段構造における段差である「50μm以上200μm以下」を満たすことは困難である。従って、インクジェット方式を用いた積層造形法でボーラスを形成する場合は、三次元データ自体に階段構造設けることが好ましい。
<ボーラス形成用液体材料>
ボーラス形成用液体材料は、水、鉱物、及び重合性モノマーを含有し、有機溶媒、を含有することが好ましく、更に必要に応じて重合開始剤及びその他の成分を含有する。水、鉱物、有機溶媒、及びその他の成分としては、上記のボーラスの組成と同様のものを用いることができるので、その説明を省略する。
−重合性モノマー−
重合性モノマーとしては、炭素間の不飽和結合を1つ以上有する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単官能モノマー、多官能モノマーなどが挙げられる。
−−単官能モノマー−−
単官能モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、N−置換アクリルアミド誘導体、N,N−ジ置換アクリルアミド誘導体、N−置換メタクリルアミド誘導体、N,N−ジ置換メタクリルアミド誘導体、その他の単官能モノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
N−置換アクリルアミド誘導体、N,N−ジ置換アクリルアミド誘導体、N−置換メタクリルアミド誘導体、及びN,N−ジ置換メタクリルアミド誘導体としては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N−イソプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。
その他の単官能モノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート(EHA)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEA)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(HPA)、アクリロイルモルホリン(ACMO)、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
単官能モノマーを重合させることにより、アミド基、アミノ基、水酸基、テトラメチルアンモニウム基、シラノール基、エポキシ基などを有する水溶性有機ポリマーが得られる。
アミド基、アミノ基、水酸基、テトラメチルアンモニウム基、シラノール基、エポキシ基などを有する水溶性有機ポリマーは、ボーラスの強度を保つために有利な構成成分である。
単官能モノマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ボーラス形成用液体材料の全量に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下がより好ましい。含有量が、1質量%以上10質量%以下の範囲であると、ボーラス形成用液体材料中の層状粘土鉱物の分散安定性が保たれ、かつボーラスの延伸性を向上させることができる。延伸性とは、ボーラスを引っ張った際に伸び、破断しない特性のことを意味する。
−−多官能モノマー−−
多官能モノマーとしては、2官能モノマー、3官能モノマー、4官能以上のモノマーなどが挙げられる。
2官能性モノマーとしては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート(MANDA)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート(HPNDA)、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート(BGDA)、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート(BUDA)、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(HDDA)、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(DEGDA)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(NPGDA)、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(TPGDA)、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
3官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(PETA)、トリアリルイソシアネート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
4官能以上のモノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(DPHA)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
多官能モノマーの含有量は、ボーラス形成用液体材料の全量に対して、0.001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。含有量が、0.001質量%以上1質量%以下の範囲であると、得られるボーラスの弾性率や硬度を適正な範囲に調整することができる。
−−重合開始剤−−
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
熱重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤、過硫酸塩開始剤、レドックス(酸化還元)開始剤などが挙げられる。
アゾ系開始剤としては、例えば、VA−044、VA−46B、V−50、VA−057、VA−061、VA−067、VA−086、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(VAZO 33)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(VAZO 50)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(VAZO 52)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(VAZO 64)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(VAZO 67)、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(VAZO 88)(いずれもDuPont Chemical社から入手可能)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)(V−601)(いずれも和光純薬工業株式会社製)などが挙げられる。
過酸化物開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(Perkadox 16S)(Akzo Nobel社から入手可能)、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート(Lupersol 11)(Elf Atochem社から入手可能)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(Trigonox 21−C50)(いずれもAkzo Nobel社製)、過酸化ジクミルなどが挙げられる。
過硫酸塩開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
レドックス(酸化還元)開始剤としては、例えば、過硫酸塩開始剤とメタ亜硫酸水素ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムのような還元剤との組み合わせ、有機過酸化物と第3級アミンに基づく系(例えば、過酸化ベンゾイルとジメチルアニリンに基づく系)、有機ヒドロパーオキシドと遷移金属に基づく系(例えば、クメンヒドロパーオキシドとコバルトナフテートに基づく系)などが挙げられる。
光重合開始剤としては、光(特に波長220nm〜400nmの紫外線)の照射によりラジカルを生成する任意の物質を用いることが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェノン、p,p−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルフォーメート、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、テトラメチルエチレンジアミンは、アクリルアミドをポリアクリルアミドゲルとする重合・ゲル化反応の開始剤として用いられる。
<型を用いてボーラスを製造する方法(第一の方法)>
第一の方法は、患者の体表面の三次元データに基づき、切削装置や3次元プリンター等を用いてボーラスを製造するための型を成形する型成形工程と、この型にボーラス形成用液体材料を流し込んで硬化させる方式である注型成形方式でボーラスを造形する造形工程と、を有する。
−型成形工程−
型成形工程で用いる3次元プリンターとしては、特に方式を限定するものではないが、ボーラス形成用液体材料を注入して硬化させるものであるから、ボーラス形成用液体材料の漏れの無いような材質や方式を用いる方式であることが好ましい。具体的には、熱溶解積層法(FDM)、光造形装置、マテリアルジェッティング及びバインダージェッティングなどのインクジェット方式、粉末焼結積層造形(SLS/SLM)などが好ましい。なお、熱溶解積層法(FDM)は、熱可塑性樹脂を含む材料を加熱して軟化物とし、それを押し出して積層させた積層体としての立体造形物を形成する方法である。また、3次元プリンター以外の型を成形する工程で用いる手段としては、例えば、切削RPマシンやNC旋盤、印象材、機械研磨、などの切削加工による手段などが好ましい。これらの中でも、型を成形する工程で用いる手段としては、熱溶解積層法(FDM)及び切削RPマシンが好ましい。型を熱溶解積層法(FDM)又は切削RPマシンにより製造した場合、ボーラスを製造する際に用いる三次元データに対し、階段構造を形成させるための特別なデータ処理を実行しなくても、熱溶解積層法(FDM)自体の堆積跡又は切削RPマシンによる切削跡に由来して階段構造が形成され、且つ階段構造における段差が略等間隔になる場合があるためである。
−造形工程−
次に、成形された型にボーラス形成用液体材料を流し込んで硬化させる。例えば、雄型(コア)の型及び雌型(キャビティー)の型を組み合わせ、両者の間に形成された隙間にボーラス形成用液体材料を流し込んで硬化させる。
熱重合開始剤を用いて硬化する場合には、開始剤の種類に応じて反応温度を制御する。ボーラス形成用液体材料を注入し、密閉して空気(酸素)を遮断した後、室温もしくは所定温度に加温して重合反応を進行させる。重合が完了した後、型から取り出すことにより、ボーラスが形成される。
光重合開始剤を用いて硬化する場合には、硬化手段として、紫外線等のエネルギー線をボーラス形成用液体材料に照射する必要がある。このため、使用する型はエネルギー線に対して透明な材質で構成される。このような型に注入し、密閉して空気(酸素)を遮断した後、型の外側からエネルギー線を照射する。この様にして重合が完了した後、型から取り出すことにより、ボーラスが形成される。
<型を用いずにボーラスを製造する方法(第二の方法)>
第二の方法は、患者の体表面の三次元データに基づき、型を用いずに、3次元プリンター等を用いてボーラスを造形する造形工程を有する。
−造形工程−
造形工程としては、例えば、ボーラスの三次元データに基づき、3次元プリンター等を用いてボーラス形成用液体材料をインクジェット方式で吐出する工程と、吐出されたボーラス形成用液体材料をUV光などで硬化して硬化物を形成する工程と、を有し、これら工程を繰り返すことで硬化物を積層させた立体造形物としてのボーラスを造形する手法(マテリアルジェット方式)などが挙げられる。
インクジェット方式による場合、ボーラス形成用液体材料を吐出可能なノズルを有する。ノズルとしては、公知のインクジェットプリンターにおけるノズルを好適に使用することができる。また、インクジェットプリンターとしては、例えば、リコーインダストリー株式会社製のMH5420/5440などを好適に使用することができる。
但し、ボーラス形成用液体材料をインクジェット方式で吐出し、それを硬化させることで硬化層を積層する積層造形法の場合、インクジェット方式で形成される単一の硬化層は非常に薄層であり、通常の積層造形工程を経るだけでは階段構造における段差である「50μm以上200μm以下」を満たすことは困難である。従って、インクジェット方式を用いた積層造形法でボーラスを形成する場合は、三次元データ自体に階段構造設けることが好ましい。
−−3次元プリンター−−
次に、ボーラスを製造する装置の一例である3次元プリンターについて図2を用いて説明する。図2は、ボーラスを作製するための3次元プリンターの概略図である。図2に示すように、インクジェット(IJ)方式の三次元プリンター110は、インクジェットヘッドを配列したヘッドユニットを用いて、造形体用液体材料吐出ヘッドユニット111からボーラス形成用液体材料を、支持体形成用液体材料吐出ヘッドユニット112から支持体形成用液体材料を吐出し、隣接した紫外線照射機113でボーラス形成用液体材料及び支持体形成用液体材料を硬化させ、更に平滑化部材116を用いて平滑化を行いながら積層する。また、三次元プリンター110は、造形体用液体材料吐出ヘッドユニット111、支持体形成用液体材料吐出ヘッドユニット112、及び紫外線照射機113と、ボーラス117、及び支持体118とのギャップを一定に保つため、積層回数に合わせて、造形物支持基板114及びステージ115を下げながら積層する。
次に、ボーラスを製造後にボーラスを支持体から分離する際の詳細について図3を用いて説明する。図3は、3次元プリンターで作製したボーラスを支持体から分離した概略図である。造形終了後、図3に示すようにボーラス117を支持体形成部材118から垂直方向に引っ張ることで、ボーラス117は支持体118から一体として剥離され取り出すことができる。
<<立体造形物>>
上記の製造方法を経て作製される立体造形物は、上記の通り、放射線治療用のボーラスとして用いられることが好ましいが、立体造形物の一部態様は必要に応じて他の用途においても使用することができる。他の用途としては、例えば、臓器モデルなどが挙げられる。立体造形物の一部態様は、三次元データに基づいて造形され、階段構造を表面に有し、階段構造における段差は50μm以上200μm以下であり、CT値が−100以上100以下であり、アスカーゴム硬度計(C2型)で測定した値が20以上90以下である。立体造形物がこのような構造を有しているとき、臓器モデルなどをガラスなどの平滑性が高い部材に長時間接触させた場合であっても容易に剥離させることができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
(ABS樹脂モールド1a、1bの作製)
患者の顔をCTスキャンして得られたDICOMデータを、変換ソフト(OsiriX、(Newton Graphics, Inc.製)を用いることで、患者の顔表面のSTLデータに変換した。このSTLデータに対しSTL編集ソフト(Materialise Magics、マテリアライズ社製)を用いることで、患者の顔表面の放射線照射領域を含む領域の形状とその領域を10mm外側に押し出した領域の形状とで形成される立体形状のソリッドデータを入手した。また、このソリッドデータにおいて、患者の顔の形状に沿う表面形状を形成する領域であって且つ曲面構造を有する領域が、階段構造となるようにデータの処理を行い、ソリッドデータ1を得た。なお、上記説明した階段構造の段差は100μmの等間隔となるように設定した。
次に、ABSプレート(NABS−4H、株式会社ミスミ製)に対し、切削機(MDX−540S、ローランド ディーシー株式会社製)を用いて、ソリッドデータ1に基づいた成形を行った。具体的には、ソリッドデータ1における一方の表面形状(患者の顔表面の放射線照射領域を含む領域の形状)を含む凸構造体であるABS樹脂モールド1aと、ソリッドデータ1における他方の表面形状(10mm外側に押し出した領域の形状)を含む凹構造体であるABS樹脂モールド1bと、を作製した。
(シリコーン樹脂モールド1a、1bの作製)
次に、切削機(MDX−540S、ローランド ディーシー株式会社製)を用い、ABSプレートに内径150×100×50mmの空間を切削し、直方体空間を有する枠モールドFを作製した。
まず、ABS樹脂モールド1a(凸構造体)を枠モールドFの直方体空間内に収め樹脂モールド1aを固定した。そして、シリコーンゴム(KE−12、信越化学工業株式会社製)の主剤と硬化剤を混合し脱気した液を、樹脂モールド1aを納めた枠モールドFの直方体空間内に注ぎ、硬化させた。硬化完了後にシリコーンゴムを取り出し、ボーラスの型となるシリコーン樹脂モールド1aを得た。シリコーン樹脂モールド1aは、形状や表面形状がABS樹脂モールド1aを反転する形で反映しているため、凹構造体であった。
次に、ABS樹脂モールド1b(凹構造体)の凹部に、シリコーンゴム(KE−12、信越化学工業株式会社製)の主剤と硬化剤を混合し脱気した液を注ぎ硬化させた。硬化完了後にシリコーンゴムを取り出し、ボーラスの型となるシリコーン樹脂モールド1bを得た。シリコーン樹脂モールド1bは、形状や表面形状がABS樹脂モールド1bを反転する形で反映しているため、凸構造体であった。
(ボーラス1の作製)
ポリエステルポリオール(ポリライト OD−X−2420、DIC株式会社製)100質量部、1,4−ブタンジオール5質量部、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、東京化成工業株式会社製)0.15質量部を、ミキサー(FLO−MIX Jr.、フローテック株式会社製)で混合し、ボーラス形成用液体材料1であるポリオール溶液を得る。更に、ポリイソシアネート(バーノック DN−902S、DIC株式会社製)18質量部を投入して攪拌したあと真空脱気する。得られた混合物をシリコーン樹脂モールド1aとシリコーン樹脂モールド1bを組み合わせた型に注ぎ入れ、硬化させてポリウレタンとした後でモールド内から取り出して、ボーラス1を得た。得られたボーラス1の表面には段差が100μmの階段構造が形成され、その段差は等間隔であった。
<実施例2>
実施例1において、階段構造の段差を100μmから200μmに変更した以外は実施例1と同様にして、ボーラス2を作製した。得られたボーラス2の表面には段差が200μmの階段構造が形成され、その段差は等間隔であった。
<実施例3>
実施例1において、階段構造の段差を100μmから50μmに変更した以外は実施例1と同様にして、ボーラス3を作製した。得られたボーラス3の表面には段差が50μmの階段構造が形成され、その段差は等間隔であった。
<実施例4>
実施例1において、シリコーン樹脂モールド1aとシリコーン樹脂モールド1bを組み合わせたモールドに注ぎ入れる混合物を、シリコーンゴム(KE−1051J、信越化学工業株式会社製)の主剤100質量部と硬化剤100質量部をミキサーで混合して得られた混合物に変更した以外は実施例1と同様にして、ボーラス4を作製した。得られたボーラス4の表面には段差が100μmの階段構造が形成され、その段差は等間隔であった。
<実施例5>
実施例1において、(ボーラス1の作製)を、次の(ボーラス5の作製)に変更した以外は実施例1と同様にして、ボーラス5を作製した。
(ボーラス5の作製)
特公平6−047030号公報の実施例2に記載の方法に基づき、ポリビニルアルコール(平均重合度:約1,000、ケン化度:88モル%)20質量部を水80質量部に60℃に加熱しながら溶解させ、得られたポリビニルアルコール溶液を、シリコーン樹脂モールド1aとシリコーン樹脂モールド1bを組み合わせた型に注ぎ入れ、25℃、30分間で放置することにより固化させた。得られた固化物を真空凍結乾燥機(DFR−5N−B、株式会社ULVAC製)で−30℃に冷却(凍結)後、解凍する操作を7回繰り返し、ボーラス5を得た。得られたボーラス5の表面には段差が100μmの階段構造が形成され、その段差は等間隔であった。
<実施例6>
実施例1において、(ボーラス1の作製)を、次の(ボーラス6の作製)に変更した以外は実施例1と同様にして、ボーラス6を作製した。
(ボーラス6の作製)
純水165質量部を撹拌させながら、水膨潤性層状粘土鉱物として[Mg5.34Li0.66Si20(OH)]Na 0.66の組成を有する合成ヘクトライト(ラポナイトRD、RockWood社製)17質量部を少しずつ添加し、3時間撹拌した後、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(東京化成株式会社製)0.7質量部を添加し、更に1時間撹拌を行った。その後、グリセリン(坂本薬品工業株式会社製)30質量部を添加し、撹拌を10分間行うことにより分散液を得た。
次に、得られた分散液に重合性モノマーとして、活性アルミナのカラムを通過させ重合禁止剤を除去したアクロイルモルフォリン(KJケミカルズ株式会社製)17質量部、N,N−ジメチルアクリルアミド(和光純薬工業株式会社製)4質量部、及びライトアクリレート9EG−A(共栄社化学株式会社製)1質量部を添加し、撹拌混合の後、減圧脱気を20分間実施し、ろ過により不純物等を除去し、ボーラス形成用液体材料6を得た。
次に、ペルオキソ二硫酸カリウム(東京化成工業株式会社製)0.25質量部と、水6質量部を攪拌し、4%ペルオキソ二硫酸カリウム水溶液を調整した。そして、100質量部のボーラス形成用液体材料6に4%ペルオキソ二硫酸カリウム水溶液を添加し、ミキサーで混合し、シリコーン樹脂モールド1aとシリコーン樹脂モールド1bを組み合わせた型に注ぎ入れ、25℃、3時間放置することにより固化させて、ボーラス6を得た。得られたボーラス6の表面には段差が100μmの階段構造が形成され、その段差は等間隔であった。
<実施例7>
(ボーラス形成用液体材料7の作製)
純水165質量部を撹拌させながら、水膨潤性層状粘土鉱物として[Mg5.34Li0.66Si20(OH)]Na 0.66の組成を有する合成ヘクトライト(ラポナイトRD、RockWood社製)17質量部を少しずつ添加し、3時間撹拌した後、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(東京化成株式会社製)0.7質量部を添加し、更に1時間撹拌を行った。その後、グリセリン(坂本薬品工業株式会社製)30質量部を添加し、撹拌を10分間行うことにより分散液を得た。
次に、得られた分散液に重合性モノマーとして、活性アルミナのカラムを通過させ重合禁止剤を除去したアクロイルモルフォリン(KJケミカルズ株式会社製)17質量部、N,N−ジメチルアクリルアミド(和光純薬工業株式会社製)4質量部、及びライトアクリレート9EG−A(共栄社化学株式会社製)1質量部を添加した。
そして、更に、界面活性剤としてエマルゲンLS−106(花王株式会社製)1質量部を添加して混合した。次に、氷浴で冷却しながら、光重合開始剤として1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184、BASF社製)のメタノール4質量%溶液を2.4質量部添加し、ミキサーで混合後、減圧脱気を20分間実施し、ろ過により不純物等を除去し、ボーラス形成用液体材料7を得た。
(支持体形成用液体材料7の作製)
ウレタンアクリレート(ダイヤビームUK6038、三菱レイヨン株式会社製)10質量部、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート(KAYARAD MANDA、日本化薬株式会社製)90質量部、及び光重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製)3質量部を、ミキサーで混合後、減圧脱気を20分間実施し、ろ過により不純物等を除去し、支持体形成用液体材料7を得た。
(ボーラス7の作製)
実施例1と同様にして得た100μmの段差の階段構造を有するソリッドデータ1を、インクジェット方式の3次元プリンター用のデータに変換した。
次に、図2に示すボーラスを作製するための3次元プリンターに、造形体用液体材料吐出ヘッドユニット111からボーラス形成用液体材料7が吐出できるようにボーラス形成用液体材料7を充填し、支持体形成用液体材料吐出ヘッドユニット112から支持体形成用液体材料7が吐出できるように支持体形成用液体材料7を充填した。また、3次元プリンターで用いられるインクジェットヘッドとしては、リコーインダストリー株式会社製のGEN4を用いた。また、紫外線照射機113としては、ウシオ電機株式会社製のSPOT CURE SP5−250DBを用いた。そして、3次元プリンター用のデータに基づいてボーラス形成用液体材料7及び支持体形成用液体材料7を吐出させる工程と、吐出されたボーラス形成用液体材料7及び支持体形成用液体材料7を紫外線照射機により硬化させる工程と、を繰り返すことでボーラス形成用液体材料7及び支持体形成用液体材料7の硬化物を積層させ、ボーラス及び支持体の一体物を造形した。
一体物の造形後、ボーラスを支持体から引っ張ることで剥離させ、ボーラス7を得た。得られたボーラス7の表面には段差が100μmの階段構造が形成され、その段差は等間隔であった。
<実施例8>
(ABS樹脂モールド8a、8bの作製)
患者の顔をCTスキャンして得られたDICOMデータを、変換ソフト(OsiriX、(Newton Graphics, Inc.製)を用いることで、患者の顔表面のSTLデータを得た。このSTLデータに対しSTL編集ソフト(Materialise Magics、マテリアライズ社製)を用いることで、患者の顔表面の放射線照射領域を含む領域の形状とその領域を10mm外側に押し出した領域の形状とで形成される立体形状のソリッドデータ8−1を入手した。なお、このソリッドデータ8−1は、実施例1におけるソリッドデータ1と異なり、階段構造を有していない。
次に、ソリッドデータ8−1を反転させてボーラスの位置を空洞とし、実施例1のシリコーン樹脂モールド1a、1bの立体形状と一致する3次元データであるソリッドデータ8−2を作成した。
更に、熱溶解積層法(FDM)の3次元プリンター(3DWOX DP200、SINDOH CO., LTD.製)を用い、ソリッドデータ8−2に基づいた成形を行った。なお、フィラメントは同社のPLA樹脂を用いた。具体的には、ソリッドデータ8−2に基づき、ボーラスの一方の表面形状(10mm外側に押し出した領域の形状)を含む凹構造体であるPLA樹脂モールド8aと、ボーラスの他方の表面形状(患者の顔表面の放射線照射領域を含む領域の形状)を含む凸構造体であるPLA樹脂モールド8bと、を作製した。この工程で熱溶解積層法(FDM)を用いたことに起因して、得られたPLA樹脂モールド8a及びPLA樹脂モールド8bの表面には段差が100μmの階段構造が形成され、その段差は等間隔であった。
(ボーラス8の作製)
まず、実施例6と同様にしてボーラス形成用液体材料6を得た。
次に、ペルオキソ二硫酸カリウム(東京化成工業株式会社製)0.25質量部と、水6質量部を攪拌し、4%ペルオキソ二硫酸カリウム水溶液を調整した。そして、100質量部のボーラス形成用液体材料6に4%ペルオキソ二硫酸カリウム水溶液を添加し、ミキサーで混合し、PLA樹脂モールド8aとPLA樹脂モールド8bを組み合わせた型に注ぎ入れ、25℃、3時間放置することにより固化させて、ボーラス8を得た。得られたボーラス8の表面には段差が100μmの階段構造が形成され、その段差は等間隔であった。
<実施例9>
(ソリッドデータ9の作成)
患者の肝臓をCTスキャンして得られたDICOMデータを、変換ソフト(OsiriX、(Newton Graphics, Inc.製)を用いることで、肝臓表面のSTLデータに変換した。このSTLデータに対しSTL編集ソフト(Materialise Magics、マテリアライズ社製)を用いることで、肝臓の臓器モデルのソリッドデータを入手した。また、このソリッドデータにおいて、肝臓の表面形状を形成する領域であって且つ曲面構造を有する領域が、階段構造となるようにデータの処理を行い、ソリッドデータ9を得た。なお、上記説明した階段構造の段差は100μmの等間隔となるように設定した。
(肝臓の臓器モデル9の作製)
100μmの段差の階段構造を有するソリッドデータ9を、インクジェット方式の3次元プリンター用のデータに変換した。
また、実施例7のボーラス形成用液体材料7と同様の作製方法により臓器モデル形成用液体材料9を作製した。また、実施例7の支持体形成用液体材料7と同様の作製方法により支持体形成用液体材料9を作製した。
次に、図2に示すボーラスを作製するための3次元プリンターに、造形体用液体材料吐出ヘッドユニット111から臓器モデル形成用液体材料9が吐出できるように臓器モデル形成用液体材料9を充填し、支持体形成用液体材料吐出ヘッドユニット112から支持体形成用液体材料9が吐出できるように支持体形成用液体材料9を充填した。また、3次元プリンターで用いられるインクジェットヘッドとしては、リコーインダストリー株式会社製のGEN4を用いた。また、紫外線照射機113としては、ウシオ電機株式会社製のSPOT CURE SP5−250DBを用いた。そして、3次元プリンター用のデータに基づいて臓器モデル形成用液体材料9及び支持体形成用液体材料9を吐出させる工程と、吐出された臓器モデル形成用液体材料9及び支持体形成用液体材料9を紫外線照射機により硬化させる工程と、を繰り返すことで臓器モデル形成用液体材料9及び支持体形成用液体材料9の硬化物を積層させ、肝臓の臓器モデル及び支持体の一体物を造形した。
一体物の造形後、肝臓の臓器モデルを支持体から引っ張ることで剥離させ、肝臓の臓器モデル9を得た。得られた肝臓の臓器モデル9の表面には段差が100μmの階段構造が形成され、その段差は等間隔であった。
<実施例10>
(ABS樹脂モールド10a、10bの作製)
ABS樹脂(ABSプレート・シートABS−1100−N1−G(厚さ60mm)、積水成型工業株式会社製)に対し、切削機(MDX−540S、ローランド ディーシー株式会社製)を用いて、実施例9で作成したソリッドデータ9に基づいた成形を行った。具体的には、ソリッドデータ9における表面の上面形状を有する構造体であるABS樹脂モールド10aと、ソリッドデータ9における下面形状(ソリッドデータ9表面の上面形状以外の形状)を有する構造体であるABS樹脂モールド1bと、を作製した。
(シリコーン樹脂モールド10a、10bの作製)
次に、切削機(MDX−540S、ローランド ディーシー株式会社製)を用い、ABS樹脂に内径196×96×58mmの空間を切削し、直方体空間を有する枠モールドfを作製した。
まず、ABS樹脂モールド10aを枠モールドfの直方体空間内に収め樹脂モールド10aを固定した。そして、シリコーンゴム(KE−12、信越化学工業株式会社製)の主剤と硬化剤を混合し脱気した液を、樹脂モールド10aを納めた枠モールドfの直方体空間内に注ぎ、硬化させた。硬化完了後にシリコーンゴムを取り出し、肝臓の臓器モデルの型となるシリコーン樹脂モールド10aを得た。シリコーン樹脂モールド10aは、形状や表面形状がABS樹脂モールド10aを反転する形で反映している構造体であった。
次に、ABS樹脂モールド10bを枠モールドfの直方体空間内に収め樹脂モールド10bを固定した。そして、シリコーンゴム(KE−12、信越化学工業株式会社製)の主剤と硬化剤を混合し脱気した液を、樹脂モールド10bを納めた枠モールドfの直方体空間内に注ぎ、硬化させた。硬化完了後にシリコーンゴムを取り出し、肝臓の臓器モデルの型となるシリコーン樹脂モールド10bを得た。シリコーン樹脂モールド10bは、形状や表面形状がABS樹脂モールド10bを反転する形で反映している構造体であった。
(肝臓の臓器モデル10の作製)
ポリエステルポリオール(ポリライト OD−X−2420、DIC株式会社製)100質量部、1,4−ブタンジオール5質量部、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、東京化成工業株式会社製)0.15質量部を、ミキサー(FLO−MIX Jr.、フローテック株式会社製)で混合し、肝臓の臓器モデル形成用液体材料であるポリオール溶液を得る。更に、ポリイソシアネート(バーノック DN−902S、DIC株式会社製)18質量部を投入して攪拌したあと真空脱気する。得られた混合物をシリコーン樹脂モールド10aとシリコーン樹脂モールド10bを組み合わせた型に注ぎ入れ、硬化させてポリウレタンとした後でモールド内から取り出して、肝臓の臓器モデル10を得た。得られた肝臓の臓器モデル10の表面には段差が100μmの階段構造が形成され、その段差は等間隔であった。
<比較例1>
実施例1において、階段構造の段差を100μmから25μmに変更した以外は実施例1と同様にして、ボーラスC1を作製した。得られたボーラスC1の表面には段差が25μmの階段構造が形成され、その段差は等間隔であった。
<比較例2>
実施例1において、階段構造の段差を100μmから250μmに変更した以外は実施例1と同様にして、ボーラスC2を作製した。得られたボーラスC2の表面には段差が250μmの階段構造が形成され、その段差は等間隔であった。
<比較例3>
実施例7において用いたソリッドデータ1を次のソリッドデータC3に変更した以外は実施例7と同様にして、ボーラスC3を作製した。得られたボーラスC3の表面には段差が50μm以上200μm以下となる階段構造が存在しなかった。
(ソリッドデータC3の作成)
患者の顔をCTスキャンして得られたDICOMデータを、変換ソフト(OsiriX、(Newton Graphics, Inc.製)を用いることで、患者の顔表面のSTLデータを得た。このSTLデータに対しSTL編集ソフト(Materialise Magics、マテリアライズ社製)を用いることで、患者の顔表面の放射線照射領域を含む領域の形状とその領域を10mm外側に押し出した領域の形状とで形成される立体形状のソリッドデータC3を入手した。なお、ソリッドデータC3は、実施例1におけるソリッドデータ1と異なり、階段構造を有していない。
次に、実施例1〜9、及び比較例1〜3で得られた造形物であるボーラス1〜9、臓器モデル9、及びボーラスC1〜C2を用いて、各造形物の特性を評価した。以下、評価項目の評価方法と評価基準を説明する。
[CT値]
X線試験装置としてAquilion PRIME/Beyond Edition(東芝メディカルシステムズ株式会社製)を用いて、造形物のCT値を16点測定し、平均値を算出した。結果を表2に示した。なお、臓器モデル9、10については、ボーラス同様に10mmの厚さとなるように切り出してから測定した。
[全光透過率]
造形物から30mm×30mm×10mmとなる直方体を切り出し、測定面ができるだけ平面になるよう周囲を固定して、全光透過率測定サンプル片をつくる。このサンプル片の全光透過率をヘイズ・透過率・反射計 HR−100で測定した。結果を表2に示した。
[硬度]
造形物から30mm×30mm×10mmとなる直方体を切り出し、測定面ができるだけ平面になるよう周囲を固定する。デュロメーター(アスカーゴム硬度計C2型、高分子計器株式会社製)を使い、切り出した造形物の8点を測定し、平均値を算出した。結果を表2に示した。
[密着性(ボーラス)]
ソリッドデータを取得した患者の顔に、作成したボーラスを乗せ、位置を合わせた状態で、全体を2[N/m]の圧力で押さえたときの密着度を評価した。結果を表2に示した。評価がAである場合を実用可能であると判断した。
−評価基準−
A:患者の顔表面とボーラスは十分密着していた。
B:患者の顔表面から、ボーラスがずれたり外れたりした。
[密着性(臓器モデル)]
ソリッドデータに基づく臓器モデルを、臓器モデルの凹凸が組み合わさる形状の保持部材の上に乗せる。保持部材は、階段形状の加工を行う前のソリッドデータに基づき、臓器モデルの下半分の形状が納まるよう、3Dプリンター(Agilista3000/AR−M2、株式会社キーエンス製)を用いて作成する。
保持部材に臓器モデルを設置した状態で、対象臓器の手術経験がある医師5名によりハサミによる切開を実施してもらい、AまたはBの意見をもらう。数の多いほうを評価結果とする。結果を表2に示した。評価がAである場合を実用可能であると判断した。
A:切開が完了するまで臓器モデルの位置がずれることはなかった。
B:切開の途中に臓器モデルの位置がずれたため、位置を直した。
[剥離性(ボーラス)]
ソリッドデータを取得した患者の顔に、作成したボーラスを載せ、位置を合わせた状態で押さえて十分密着させたあと、ボーラスを患者の顔から外したときの剥離性を評価した。結果を表2に示した。評価がAである場合を実用可能であると判断した。
−評価基準−
A:患者の顔表面から容易に外せた。
B:患者の顔表面と密着して、外しにくかった。
[剥離性(臓器モデル)]
密着性(臓器モデル)を評価した後の臓器モデルを保持部材から取り出す際、切開した臓器モデルが破損せずに取り出せたかを評価した。結果を表2に示した。評価がAである場合を実用可能であると判断した。
A:臓器モデルは破損せずに取り出せた。
B:臓器モデルの一部が破損した。
1 第一の面
2 第二の面
3 頂部
4 溝部
1e 第一の面の延長平面
2e 第二の面の延長平面
110 三次元プリンター
111 造形体用液体材料吐出ヘッドユニット
112 支持体形成用液体材料吐出ヘッドユニット
113 紫外線照射機
114 造形物支持基板
115 ステージ
116 平滑化部材
117 ボーラス
118 支持体
特開2017−202178号公報

Claims (11)

  1. 放射線治療を受ける患者の放射線照射される体表面に沿って対向する形状である対向形状部を有するボーラスであって、
    前記対向形状部の前記体表面に対向する側の表面は階段構造を有し、
    前記階段構造における段差は50μm以上200μm以下であるボーラス。
  2. 前記階段構造は、略等間隔の前記段差が連続する請求項1に記載のボーラス。
  3. CT値が−100以上100以下である請求項1又は2に記載のボーラス。
  4. アスカーゴム硬度計(C2型)で測定した値が20以上90以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のボーラス。
  5. 全光透過率が60%以上である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のボーラス。
  6. 水、ポリマー、及び鉱物を含むゲルからなる請求項1乃至5のいずれか一項に記載のボーラス。
  7. 前記対向形状部において、前記体表面に対向する表面から前記体表面に対向しない表面までの最短距離が2.5mm以上25mm以下である領域を含む請求項1乃至6のいずれか一項に記載のボーラス。
  8. 前記対向形状部において、前記体表面に対向する側の表面から前記体表面に対向しない側の表面までの最短距離と、前記最短距離の平均値と、の差が、前記最短距離の平均値に対して−10%以上10%以下である請求項1乃至6のいずれか一項に記載のボーラス。
  9. 請求項1乃至8のいずれか一項に記載のボーラスを、インクジェット方式または光造形方式により造形する造形工程を有するボーラスの製造方法。
  10. 熱可塑性樹脂の軟化物を積層して型を成形する型成形工程と、
    ボーラス形成用液体材料を前記型に入れて硬化させて請求項1乃至8のいずれか一項に記載のボーラスを造形する造形工程と、
    を有するボーラスの製造方法。
  11. 三次元データに基づいて造形される立体造形物であって、
    前記立体造形物の表面は階段構造を有し、
    前記階段構造における段差は50μm以上200μm以下であり、
    前記立体造形物は、CT値が−100以上100以下であり、
    前記立体造形物は、アスカーゴム硬度計(C2型)で測定した値が20以上90以下である立体造形物。
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