JP2022182263A - 有機無機複合ハイドロゲル前駆体液、有機無機複合ハイドロゲル、ハイドロゲル造形物、及びハイドロゲル造形物の製造方法 - Google Patents

有機無機複合ハイドロゲル前駆体液、有機無機複合ハイドロゲル、ハイドロゲル造形物、及びハイドロゲル造形物の製造方法 Download PDF

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貴志 松村
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Abstract

【課題】優れた圧縮応力及び破断限界を有するハイドロゲル造形物を造形できる有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の提供。【解決手段】ヒドロキシ基を有するモノマーと、ホウ酸塩化合物と、水と、を含む有機無機複合ハイドロゲル前駆体液である。【選択図】なし

Description

本発明は、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液、有機無機複合ハイドロゲル、ハイドロゲル造形物、及びハイドロゲル造形物の製造方法に関する。
近年、腹腔鏡下手術、血管内手術などの新しい術式や医療機器が生み出されており、患者の術後の回復及びクオリティ・オブ・ライフ(QOL)向上が期待できる低侵襲手術が急速に進歩している。このような医療技術の急速な進歩に伴い、技術習得を十分行えないまま手術に向かわざるを得ない医師が少なからず生じており、医療事故が増加傾向にあることが、大きな社会問題となっている。
そこで、手術前に十分な技術習得が可能なトレーニングシステムが必要とされている。
一方、専門医を育成するための手術用トレーニングは、実験動物の使用、キャダバー(解剖用の人の死体)の使用、患者を対象にした臨床試験などにより行われているが、社会的及び道徳的な観点から、実験動物やキャバターの使用頻度を減少させることが求められている。実験動物やキャバターの使用頻度を減少させるために、その代替となり得る医療技術と安全性向上を実現するトレーニングシステムへの要求が高まっている。
前記課題を解決するため、患部や身体の特定部位の3次元造形モデル(以下、「臓器モデル」と称することがある)が利用されている。臓器モデルを使用することにより、視覚だけでなく、立体形状を実際に手に触れて見ることで、コンピュータ画像では伝えきれない多くの情報を伝えることができる。
このような臓器モデルに求められる機能として、触感を生体質感に近づけることが重要である。例えば、臓器モデルを手で触れて、部位の違いによって柔軟性や延伸性に差異があることや、患部と健常部とで硬さが異なることを伝えられると、医療教育及びインフォームドコンセントの効果を高められる。併せて、臓器モデルは表面及び内部構造が再現できていることが好ましい。
更に、電気メス等のエネルギーデバイスで切開できること、コンピュータ断層撮影(CT)で特定の部位にコントラストを付けられることなどの機能が付与されると、実現できるトレーニングの種類を格段に増やすことができる。
そこで、生体質感に近い触感を持ち、所望の機能を付与した臓器モデルが種々提案されている。例えば、無機鉱物、モノマー、及びホスホン酸化合物を含むハイドロゲル前駆体液及び該ハイドロゲル前駆体液を用いて得られるハイドロゲル造形体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、アミノ基を有する水溶性有機高分子(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)と、水(C)とにより形成されるアミノ基を有する有機無機複合ハイドロゲルの三次元網目中に、ホウ酸塩基を含有するホウ酸塩基含有有機無機複合ハイドロゲルが提案されている(例えば、特許文献2参照)
また、親水性成分を含有するモノマー又はマクロマー、シロキサン含有モノマー又はマクロマー、及びホウ酸塩を含む反応混合物を硬化させることにより得られるシリコーンハイドロゲル材料が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
本発明は、優れた圧縮応力及び破断限界を有するハイドロゲル造形物を造形できる有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液は、ヒドロキシ基を有するモノマーと、ホウ酸塩化合物と、水と、を含む。
本発明によると、優れた圧縮応力及び破断限界を有するハイドロゲル造形物を造形できる有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を提供することができる。
図1は、ハイドロゲル造形物を作製するための三次元プリンターの一例を示す概略図である。 図2は、三次元プリンターで作製したハイドロゲル造形物をサポート材から剥離した一例を示す概略図である。
(有機無機複合ハイドロゲル前駆体液)
本発明の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液は、ヒドロキシ基を有するモノマーと、ホウ酸塩化合物と、水とを含み、イオン化合物及びエチレングリコール骨格を有するモノマーを含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含む。
特許文献1(特開2016-176006号公報)に記載の従来技術は、無機鉱物を含むナノコンポジット(NC)ゲル前駆体液であり、本発明の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液とは組成が相違し、このNCゲル前駆体液にイオン化合物を添加するとNC前駆体液の粘度が上昇し、MJ(Material Jetting)方式で造形することができないという問題がある。
特許文献2(特開2008-074925号公報)に記載の従来技術は、粘土鉱物を含む、アミノ基を有するナノコンポジット(NC)ゲル前駆体液であり、本発明の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液とは組成が相違し、このNCゲル前駆体液を用いて得られたNCゲルを無機ホウ酸化合物の水溶液に浸漬し、該アミノ基と無機ホウ酸化合物とを反応させることでNCゲルにホウ酸塩基を導入するため、NCゲルに膨潤による形状変化が生じてしまうという問題がある。
特許文献3(特表2014-501799号公報)に記載の従来技術は、ホウ酸塩が親水性成分とシリコーン成分を架橋したシリコーンハイドロゲル材料であり、水を含まないので本発明の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液とは組成が相違し、水を含むハイドロゲルではないため、臓器モデルに適した圧縮応力及び破断限界を有していないという問題がある。
本発明においては、ヒドロキシ基を有するモノマーと、ホウ酸塩化合物と、水と、を含む有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を硬化すると、ヒドロキシ基を有するモノマーのヒドロキシ基と、ホウ酸塩化合物のホウ素とで架橋構造を形成することによって、優れた圧縮応力及び破断限界を有するハイドロゲル造形物が得られる。
また、本発明の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液は、大量のイオン化合物を添加することができるので、様々な機能を付与することができる。例えば、X線撮像でコントラストが得られ、電気メス等のエネルギーデバイスで切開できるという機能をハイドロゲル造形物に付加することができる。
更に、本発明の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液は、粘度が低く、ラジカル重合により硬化できるため、高精細な型造形及びインクジェットに代表される積層造形に好適に用いられる。
<水>
水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、超純水などが例示され、より具体的には、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水などが挙げられる。
水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、軟質感を有するハイドロゲル造形物を得る点から、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の全量に対して、30質量%以上、40質量%以上がより好ましく、50.0質量%以上であることが更に好ましい。また、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
<ヒドロキシ基を有するモノマー>
ヒドロキシ基を有するモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、N-(ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、2-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、又は前記モノマーを少なくとも1種を含む反応性オリゴマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、得られるハイドロゲル造形物の伸び率の点から、4-ヒドロキシエチルアクリルアミド(4-HBA)、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)が好ましい。ヒドロキシ基を有するモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ヒドロキシ基を有するモノマーは、光重合性の官能基を有する化合物であることが好ましい。本発明において「重合性官能基」とは、活性エネルギー線の照射や熱の付加により重合反応を起こす官能基を意味し、「光重合性官能基」は特に活性エネルギー線の照射により重合反応を起こす官能基を意味する。光重合性官能基としては、これに限定するものではないが、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合を有する基、エポキシ基等の環状エーテル基などが挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物の具体例としては、例えば、(メタ)アクリルアミド基を有する化合物、(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物、アリル基を有する化合物などが挙げられる。
ヒドロキシ基を有するモノマーの含有量は、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の全量に対して、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましく、15質量%以上30質量%以下が更に好ましい。ヒドロキシ基を有するモノマーの含有量が5質量%以上50質量%以下であると、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液中のホウ酸塩化合物の分散安定性が向上する。
<ホウ酸塩化合物>
ホウ酸塩化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタホウ酸ナトリウム(NaBO)、メタホウ酸バリウム(Ba(BO)、四ホウ酸ナトリウム(Na)、十三酸化二ナトリウム八ホウ素(Na13)、ポリホウ酸ナトリウム(SOUFA)などが挙げられる。天然で得られるものとしては、例えば、ホウ砂(Na(OH)・8HO/Na・10HO)、小藤石(Mg(BO)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ハイドロゲル造形物を圧縮したときの強度が得られる点から、四ホウ酸ナトリウム、十三酸化二ナトリウム八ホウ素、及びこれらの水和物が好ましい。また、ホウ酸塩化合物は、ホウ酸エステル以外の化合物であることが好ましい。
ホウ酸塩化合物の含有量は、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の全量に対して、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上6質量%以下がより好ましく、2質量%以上5質量%以下が更に好ましい。ホウ酸塩化合物の含有量が0.1質量%未満であると、ホウ酸塩化合物による架橋効果が得られないことがあり、20質量%を超えると、ハイドロゲル造形物が硬くなり伸びが得られにくくなることがある。
<イオン化合物>
イオン化合物は、ハイドロゲル造形物に機能付与を目的として添加される。イオン化合物としては、水に溶けて安定する物質である限りは特に制限はなく、求められる機能に合わせて適宜選択することができる。なお、本開示において「イオン化合物」とは、上記ホウ酸塩化合物は含まない。
ハイドロゲル造形物をX線撮像するとコントラストが得られる機能を付与するには、イオン化合物として造影剤を添加することが好ましい。造影剤とは、X線の透過しにくい物質を含む化合物であり、例えば、ヨウ素、バリウム、セシウム等の原子量の大きい元素のイオンを含む。造影剤としては、例えば、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化カルシウム(CaI)等のヨウ化物;臭化バリウム(BaBr)、塩化バリウム(BaCl)、ヨウ化バリウム(BaI)等のハロゲン化バリウム化合物;臭化セシウム(CsBr)、塩化セシウム(CsCl)、ヨウ化セシウム(CsI)等のハロゲン化セシウム化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。このような原子量の大きい元素のイオンを含むイオン化合物を添加して得られるハイドロゲル造形物をX線撮像すると、他の部分とのコントラストが得られる。
一方、ハイドロゲル造形物に電気メス等のエネルギーデバイスで切断できる機能を付与するには、イオン化合物として無機塩を添加することが好ましい。無機塩を添加すると、ハイドロゲル造形物の導電性を高めることができる。
無機塩としては、電離することでハイドロゲル造形物の導電性を高めることができれば特に制限はなく、酸性塩、中性塩、及び塩基性塩を含む。
無機塩としては、例えば、塩化アンモニウム(NHCl)、硫酸銅(CuSO)、硫酸水素ナトリウム(NaHSO)、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl)、塩化リチウム(LiCl)、酢酸ナトリウム(CHCOONa)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
イオン化合物としては、造影剤及び無機塩の両方を添加してもよいし、造影剤又は無機塩のいずれかを添加してもよい。
イオン化合物の含有量は、ハイドロゲル造形物に付与する機能に応じて適宜調整することができる。イオン化合物の含有量を調整することで、X線撮像したときのコントラスト又はエネルギーデバイスでの切断性を調整することができる。
イオン化合物の含有量は、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の全量に対して、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましく、5質量%以上10質量%以下が更に好ましい。イオン化合物の含有量が0.1質量%未満であると、添加したイオン化合物の効果がほとんど得られない。また、イオン化合物の含有量が20質量%を超えると、ハイドロゲル造形物が脆くなる、あるいはハイドロゲル造形物の表面がべたつく(タック性が強い)など、品質に悪影響が生じる。
<エチレングリコール骨格を有するモノマー>
有機無機複合ハイドロゲル前駆体液には、ハイドロゲル造形物の強度を向上させる、もしくは質感を調整する目的で、エチレングリコール骨格を有するモノマーを添加することが好ましい。
エチレングリコール骨格のようなエーテル結合を有していると水溶性及び屈曲性が付与されるため、水に溶解しやすく、柔軟で高伸長のハイドロゲル造形物が得られる。また、分子鎖のエチレングリコールがプロピレングリコール又はブチレングリコールに置き換わると、分子に含まれるエーテル骨格の比率が下がるため、水への溶解性が低下する。
エチレングリコール骨格を有するモノマーとしては、例えば、エトキシ-ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ-トリエチレングルコールアクリレート、2-エチルヘキシル-ジグルコールアクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコールアクリレート、メトキシ-テトラエチレングリコールメタクリレート、メトキシ-ポリエチレングルコールメタクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等の多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水への溶解性が良好であり、高伸長のハイドロゲル造形物が得られる点から、二官能(メタ)アクリレートが好ましく、ポリエチレングリコールジアクリレートがより好ましい。
エチレングリコール骨格を有するモノマーの含有量は、ヒドロキシ基を有するモノマーを1としたときのモル比で0.01以上0.5以下が好ましく、0.1以上0.3以下がより好ましい。モル比が0.01未満であると、ハイドロゲル造形物の圧縮に対する応力が不足してしまうことがあり、0.5を超えると、ハイドロゲル造形物が伸びに対して脆くなりやすい。
<その他の成分>
その他の成分としては、必要に応じて、ヒドロキシ基及びエチレングリコール骨格を有しないモノマー、重合開始剤、界面活性剤、色材、保湿剤、その他の添加剤などを適時含有することが可能である。
-ヒドロキシ基及びエチレングリコール骨格を有しないモノマー-
ヒドロキシ基及びエチレングリコール骨格を有しないモノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩、ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロライド4級塩のアクリルアミド、前記アクリルアミドのN-置換アクリルアミド誘導体、N,N-ジ置換アクリルアミド誘導体、N-置換メタクリルアミド誘導体、N,N-ジ置換メタクリルアミド誘導体等のアクリルアミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
-重合開始剤-
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。光造形の場合は光重合開始剤を用いることができ、型造形の場合は熱重合開始剤と光重合開始剤を共に用いることができる。
光重合開始剤としては、光、特に波長220nm乃至550nmの紫外線の照射によりラジカルを生成する任意の物質が例示される。重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、紫外線照射装置の紫外線波長に合わせた光重合開始剤を選択することが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ジクロロベンゾフェノン、p,p-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシドなどが挙げられる。
熱重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤、過硫酸塩開始剤、レドックス(酸化還元)開始剤などが挙げられる。
アゾ系開始剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、VA-044、VA-46B、V-50、VA-057、VA-061、VA-067、VA-086、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(VAZO 33)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(VAZO 50)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(VAZO 52)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(VAZO 64)、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル(VAZO 67)、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(VAZO 88)(いずれも、DuPont Chemical社製、「VAZO」は同社商標)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(メチルイソブチレ-ト)(V-601)(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)などが挙げられる。
過酸化物開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(Perkadox 16S)(Akzo Nobel社製、「Perkadox」は同社商標)、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート(Lupersol 11)(Elf Atochem社製、「Lupersol」は同社商標)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(Trigonox 21-C50)(Akzo Nobel社製、「Trigonox」は同社商標)、過酸化ジクミルなどが挙げられる。
過硫酸塩開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。レドックス(酸化還元)開始剤としては、例えば、過硫酸塩開始剤と、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムのような還元剤との組み合わせ、有機過酸化物と第3級アミンに基づく系、例えば、過酸化ベンゾイルとジメチルアニリンに基づく系、有機ヒドロパーオキシドと遷移金属に基づく系、クメンヒドロパーオキシドとコバルトナフテートに基づく系などが挙げられる。
-界面活性剤-
界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤は、サポート部との界面における弾きを抑制する目的で、1種を単独で用いてもよいが、弾きに加えて、吐出性、又は硬化性等のその他の特性を改良するために、2種以上を併用することが好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、濡れ性、吐出安定性、及び造形精度を考慮すると、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の全量に対して、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上3質量%以下が更に好ましい。
-色材-
色材としては、例えば、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色などを付与する種々の顔料又は染料を用いることができる。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を用いることができる。
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(例えば、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料などが挙げられる。
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤を更に含んでもよい。分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高分子分散剤等の顔料分散物を調製するのに慣用されている分散剤などが挙げられる。
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、塩基性染料などが使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、マテリアルジェッティング方式に用いる場合、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、及びホワイト等の各色のものを用いることで、フルカラーの造形物を造形することができる。
色材の含有量は、特に制限はなく、所望の色濃度や有機無機複合ハイドロゲル前駆体液中における分散性等を考慮して適宜決定すればよく、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の全量に対して、0.1質量%以上20質量%以下が好ましい。
-保湿剤-
保湿剤は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水溶性、保湿性、及び安全性の点から、多価アルコール類、多価アルコールのエーテル類などが挙げられる。
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオールなどが挙げられる。
多価アルコールのエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度調整剤、防腐剤、pH調整剤、キレート剤、架橋剤、重合禁止剤、香料、酸化防止剤、架橋促進剤、紫外線吸収剤、可塑剤などが挙げられる。
本発明の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液は、ヒドロキシ基を有するモノマー、ホウ酸塩化合物、水、イオン化合物、更に必要に応じてその他の成分を用いて調製することができ、その調製方法及び条件について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記各成分をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、混合することにより調製することができる。
有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の25℃での粘度は、均一な膜形成や高精細な型造形を行うためには、1Pa・s以下が好ましく、100mPa・s以下がより好ましく、1mPa・s以上20mPa・s以下が更に好ましい。25℃での粘度が1Pa・sを超えると、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液に気泡が入ったとき、気泡を除去するのが大変困難であり、そのまま硬化すると、得られるハイドロゲル造形物の品質に悪い影響を与える。
粘度は、例えば、回転粘度計(VISCOMATE VM-150III、東機産業株式会社製)などを用いて25℃の環境下で測定することができる。
(有機無機複合ハイドロゲル)
本発明の有機無機複合ハイドロゲルは、ヒドロキシ基を有するモノマーが重合してなるポリマーと、ホウ酸塩化合物と、水とを含み、イオン化合物及びエチレングリコール骨格を有するモノマーを含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
ポリマーは、上記有機無機複合ハイドロゲル前駆体液におけるヒドロキシ基を有するモノマー、好ましくはエチレングリコール骨格を有するモノマーが重合してなるポリマーである。
ホウ酸塩化合物、イオン化合物、水、及びその他の成分については、上記有機無機複合ハイドロゲル前駆体液におけるホウ酸塩化合物、イオン化合物、水、及びその他の成分と同様のものを用いることができる。
本発明において「ハイドロゲル」とは、ポリマーを含む三次元網目構造の中に水が包含されている構造体を表し、かかる三次元網目構造が、ポリマーとホウ酸塩化合物等の無機化合物とが複合化して形成される三次元網目構造である場合、特に「有機無機複合ハイドロゲル」という。なお、ハイドロゲルは水を主成分として含み、具体的には、水の含有量がハイドロゲルの全量に対して30.0質量%以上であることが好ましく、40.0質量%以上であることがより好ましく、50.0質量%以上であることが更に好ましい。
(ハイドロゲル造形物の製造方法)
本発明のハイドロゲル造形物の製造方法は、本発明の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を用いて、ハイドロゲル前駆体液膜を形成する液膜形成工程と、前記ハイドロゲル前駆体液膜を硬化して層を形成する液膜硬化工程と、を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。前記液膜形成工程はインクジェット印刷法で行われることが好ましい。
本発明のハイドロゲル造形物の製造方法は、本発明の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を用いて、型に注入し、前記有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を硬化させた後、型を除去することによりハイドロゲル造形物を製造する。
本発明の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を用いてハイドロゲル造形物を製造する方法としては、具体的には、以下の第1の形態から第3の形態が挙げられる。
<第1の形態のハイドロゲル造形物の製造方法>
第1の形態の製造方法は、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液膜を形成する液膜形成工程と、前記有機無機複合ハイドロゲル前駆体液膜を硬化して層を形成する液膜硬化工程と、を繰り返し、前記層を積層させてハイドロゲル造形物を形成し、更に必要に応じてその他の工程を含む。前記液膜形成工程は、インクジェット印刷法で行われることが好ましく、これを一般に「マテリアルジェッティング法」と呼ぶ。
第1の形態のハイドロゲルモデル造形物の製造方法は、ヘッドの個数を増やすことにより、着色インクや他の樹脂系材料を同時に造形できるため、カラー造形や樹脂系部材とのハイブリッド造形に対応できる。
第1の形態のハイドロゲルモデル造形物の製造方法においては、前記各工程を複数回繰り返すものである。前記繰り返し回数としては、造形するハイドロゲル造形物の大きさ、形状、構造などに応じて異なり一概には規定できないが、1層あたりの厚みが10μm~50μmの範囲であれば、精度よく、剥離することもなく造形することが可能であるため、造形するハイドロゲル造形物の高さ分だけ繰り返して積層することが好ましい。
-液膜形成工程及び液膜形成手段-
液膜形成工程は、本発明の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を付与して、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液膜を形成する工程であり、液膜形成手段により実施される。
液膜形成手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディスペンサー方式、スプレー方式、インクジェット方式などが挙げられる。なお、これらの方式を実施するには公知の装置を好適に使用することができる。
これらの中でも、前記ディスペンサー方式は、液滴の定量性に優れるが、塗布面積が狭くなり、前記スプレー方式は、簡便に微細な吐出物を形成でき、塗布面積が広く、塗布性に優れるが、液滴の定量性が悪く、スプレー流による飛散が発生する。このため、本発明においては、前記インクジェット方式が特に好ましい。前記インクジェット方式は、前記スプレー方式に比べ、液滴の定量性がよく、前記ディスペンサー方式に比べ、塗布面積が広くできる利点があり、複雑な立体形状を精度よくかつ効率よく形成し得る点で好ましい。
-液膜硬化工程及び液膜硬化手段-
液膜硬化工程は、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液膜を硬化して層を形成する工程であり、液膜硬化手段により実施される。
液膜硬化工程では、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液膜は活性エネルギー線を照射することにより硬化する。
活性エネルギー線としては、光が好ましく、特に波長220nm以上400nm以下の紫外線が好ましい。紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
「マテリアルジェッティング法」の立体造形物の製造装置としては市販品を用いることができる。市販のマテリアルジェッティング方式の立体造形物の製造装置としては、例えば、アジリスタ(株式会社キーエンス製)などが挙げられる。
ここで、図1は、「マテリアルジェッティング法」の三次元プリンター10を示す。インクジェットヘッドを配列したヘッドユニットを用いて、造形体用液体材料噴射ヘッドユニット11から有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を、支持体用液体材料噴射ヘッドユニット12、12から支持体形成用液体材料を噴射する。隣接した紫外線照射機13、13で有機無機複合ハイドロゲル前駆体液及び支持体形成用液体材料を硬化しながら積層する。更に、三次元プリンター10は、造形体支持基板14と、平滑化部材16が含まれる。
液体材料噴射ヘッドユニット11、12及び紫外線照射機13と、ハイドロゲル造形物17及び支持体18とのギャップを一定に保つため、積層回数に合わせて、ステージ15を下げながら積層する。
三次元プリンター10では、紫外線照射機13、13は矢印A、Bいずれの方向に移動する際も使用し、その紫外線照射に伴って発生する熱により、積層された支持体形成用液体材料表面が平滑化され、結果としてハイドロゲル造形物の寸法安定性が向上できる。
造形終了後、図2に示すようにハイドロゲル造形物17と支持体18を水平方向に引っ張り剥離したところ、支持体18は一体として剥離され、ハイドロゲル造形物17を容易に取り出すことができる。
<第2の形態のハイドロゲル造形物の製造方法>
第2の形態のハイドロゲル造形物の製造方法としては、例えば、ステレオリソグラフィー法が挙げられる。
ステレオリソグラフィー法は有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を一層ずつ露光することにより、順次硬化させ積層させてハイドロゲル造形物を造形する。
この積層体の各層は、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の液面に光を照射することにより得られる。なお、液面は、リコーター等で均すことができる。このとき、光を選択的に照射すると、所望のパターンの断面を有する硬化物(断面硬化層)を得ることができる。
第2の形態のハイドロゲル造形物の製造方法は、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液に光を照射して、該有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の硬化物(断面硬化層)を形成し、この硬化物(断面硬化層)の上に、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を再度供給し、光を照射して、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の硬化物(断面硬化層)を更に形成し、以後、これを繰り返すことにより、複数の硬化物(断面硬化層)を積層し一体化してなるハイドロゲル造形物を得るものである。
有機無機複合ハイドロゲル前駆体液に光を選択的に照射する手段としては、特に制限されるものではなく、種々の手段を採用することができる。例えば、(a)レーザー光、又はレンズ、ミラー等を用いて得られた収束光等を走査させながら有機無機複合ハイドロゲル前駆体液に照射する手段、(b)所定のパターンの光透過部を有するマスクを用い、このマスクを介して非収束光を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液に照射する手段、(c)多数の光ファイバーを束ねてなる導光部材を用い、この導光部材における所定のパターンに対応する光ファイバーを介して、光を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液に照射する手段、(d)一定の領域毎に一括露光を繰り返し実行する手段、などを採用することができる。
また、上記(b)のマスクを用いる手段においては、マスクとして、液晶表示装置と同様の原理により、所定のパターンに従って、光透過領域と光不透過領域とよりなるマスク像を電気光学的に形成するものを用いることもできる。
目的とするハイドロゲル造形物が、微細な部分を有するもの、又は高い寸法精度が要求されるものである場合には、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液に選択的に光を照射する手段として、スポット径の小さいレーザー光を走査する手段を採用することが好ましい。
なお、容器内に有機無機複合ハイドロゲル前駆体液が収容されている場合、光の照射面(例えば、収束光の走査平面)は、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の液面、透光性容器の器壁との接触面の何れであってもよい。有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の液面又は器壁との接触面を光の照射面とする場合には、容器の外部から直接又は器壁を介して光を照射することができる。
本発明のハイドロゲル造形物は、上述したように、光積層造形法等の光学的立体造形法により製造することができる。光学的立体造形法においては、通常、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の特定部分を硬化させた後、光の照射位置(照射面)を、既硬化部分から未硬化部分に連続的に又は段階的に移動させることにより、硬化部分を積層させて所望の立体形状とする。ここで、照射位置の移動は、種々の方法によって行うことができ、例えば、光源、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の収容容器、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液の既硬化部分の何れかを移動させたり、収容容器に有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を追加供給したりする方法などが挙げられる。
ステレオリソグラフィー造形装置としては市販品を用いることができる。市販のステレオリソグラフィー造形装置としては、例えば、Form2(Formlabs社製)などが挙げられる。
<第3の形態のハイドロゲル造形物の製造方法>
第3の形態のハイドロゲル造形物の製造方法は、鋳型を用いた注型法が挙げられる。
本方法ではテンプレートとなる鋳型を作製する。鋳型の作製方法としては、マテリアルジェッティング法、ステレオリソグラフィー法、バインダージェット法、FDM法など、3Dプリンターを用いることができる。また、CNC切削加工を用いてもよい。
これらにより作製した鋳型の内部中空部分に有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を注入又は充填する。透過性を有する樹脂で鋳型を作製した場合は有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を光重合開始剤にてUV硬化型にすればUVランプにて簡易的に有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を硬化させることができる。
非透過性の樹脂で鋳型を形成した場合は、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を熱重合開始剤にて熱硬化型にすれば熱エネルギーにより有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を硬化させることができる。
これらの方法で有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を硬化した後、鋳型を剥離、又は破砕等により除去することでハイドロゲル造形物を取り出すことができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例において、以下のようにして、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を実施した。
<前駆体液の粘度>
TV25形粘度計(東機産業株式会社製)を用いて前駆体液の粘度を測定した。なお、前駆体液は25℃で5分間以上調温した状態で測定を行った。
<圧縮試験>
-圧縮試験片の作製(型造形)-
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ブロックを切削加工によりテストパターン(30mm×30mm×10mm)を形成し、圧縮試験片作製用モールドを作製した。この型に前駆体液を充填し、硬化させることにより、30mm×30mm×10mmの圧縮試験片を得た。
なお、前駆体液に添加する開始剤の種類によって硬化方法を変える。熱重合開始剤を添加する場合は、窒素雰囲気中で24時間放置する。また、光重合開始剤UVを添加する場合は、重合開始剤に合わせたUV照射装置を用いて硬化させる。
-圧縮応力及びヤング率の測定-
万能試験機(株式会社島津製作所製、AG-I)、ロードセル1kN、1kN用圧縮冶具を設けて、圧縮試験モデルを設置した。ロードセルに掛かる圧縮に対する応力をコンピュータに記録し、変位量に対する圧縮応力を評価し、70%圧縮応力と、10%圧縮応力と20%圧縮応力の差からヤング率を求めた。
<引張試験>
-引張試験片の作製(型造形)-
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ブロックに切削加工によりテストパターン(JIS K 6251に基づき、ダンベル状3号形とした)を深さ3mmで形成した。この型に前駆体液を充填し、硬化させ、引張試験片を得た。
なお、前駆体液に添加する開始剤の種類によって硬化方法を変える。熱重合開始剤を添加する場合は、窒素雰囲気中で24時間放置する。また、光重合開始剤UVを添加する場合は、重合開始剤に合わせたUV照射装置を用いて硬化させる。
-破断伸び及び破断強度の測定-
JIS K 6251に基づき、引張試験機(AG-10kNX、株式会社島津製作所製)にて100mm/minの引張速度で試験を行い、標線間距離の変化より算出した伸び率から、引張試験片が破断したときの伸び率と、破断したときの引張強度を求めた。
<X線撮像の可否>
Aquilion one(東芝メディカルシステムズ株式会社製)を用い、診療放射線技師に上記圧縮試験片のCT画像を撮像してもらい、外部と圧縮試験片とのコントラストが十分に得られるか否かを下記の基準で評価した。
[評価基準]
〇:外部と圧縮試験片とのコントラストが十分に得られるCT画像が撮影できる
×:X線撮像不能
<電気メスでの切開の可否>
マーチン電気メス マキシウム(KLSマーチングループ社製)をモノポーラモード/ピュアカットで用い、内科医に上記圧縮試験片を切開してもらい、生体に近い切断性が得られるか否かを下記の基準で評価した。
[評価基準]
〇:生体に近い状態で切開可能
×:切開不能
(実施例1)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1の調製-
イオン交換水53.1質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、三菱ケミカルホールディングス株式会社製)46.0質量部、十三酸化二ナトリウム八ホウ素四水和物(Polybor(登録商標)、U.S.Borax社製)0.92質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)で濾過し、ハイドロゲル前駆体液1を得た。
-ハイドロゲル造形物1の造形-
有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を、上記圧縮試験片作製用モールド及び引張試験片作製用モールドに流し込み、UV-LED照射器(MS-H1000AF、松尾産業株式会社製)を用い、照射距離(UVランプと有機無機複合ハイドロゲル前駆体液面)を40mmにして、UV光を15秒間照射することにより、ハイドロゲル造形物1を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1及びハイドロゲル造形物1について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例2)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液2の調製-
イオン交換水77.3質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、三菱ケミカルホールディングス株式会社製)22.3質量部、十三酸化二ナトリウム八ホウ素四水和物(Polybor(登録商標)、U.S.Borax社製)0.45質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)により濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液2を調製した。
-ハイドロゲル造形物2の造形-
ハイドロゲル造形物1の造形において、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液2に置き換えた以外は、ハイドロゲル造形物1の造形と同様にして、ハイドロゲル造形物2を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液2及びハイドロゲル造形物2について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例3)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液3の調製-
イオン交換水76.6質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、三菱ケミカルホールディングス株式会社製)22.1質量部、十三酸化二ナトリウム八ホウ素四水和物(Polybor(登録商標)、U.S.Borax社製)1.33質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)により濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液3を調製した。
-ハイドロゲル造形物3の造形-
ハイドロゲル造形物1の造形において、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液3に置き換えた以外は、ハイドロゲル造形物1の造形と同様にして、ハイドロゲル造形物3を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液3及びハイドロゲル造形物3について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例4)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液4の調製-
イオン交換水53.1質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、三菱ケミカルホールディングス株式会社製)46.0質量部、十三酸化二ナトリウム八ホウ素四水和物(Polybor(登録商標)、U.S.Borax社製)0.92質量部、ヨウ化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)8.0質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)により濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液4を調製した。
-ハイドロゲル造形物4の造形-
ハイドロゲル造形物1の造形において、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液4に置き換えた以外は、ハイドロゲル造形物1の造形と同様にして、ハイドロゲル造形物4を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液4及びハイドロゲル造形物4について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例5)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液5の調製-
イオン交換水77.3質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、三菱ケミカルホールディングス株式会社製)22.3質量部、十三酸化二ナトリウム八ホウ素四水和物(Polybor(登録商標)、U.S.Borax社製)0.45質量部、ヨウ化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)8.0質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)により濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液5を調製した。
-ハイドロゲル造形物5の造形-
ハイドロゲル造形物1の造形において、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液5に置き換えた以外は、ハイドロゲル造形物1の造形と同様にして、ハイドロゲル造形物5を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液5及びハイドロゲル造形物5について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例6)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液6の調製-
イオン交換水76.6質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、三菱ケミカルホールディングス株式会社製)22.1質量部、十三酸化二ナトリウム八ホウ素四水和物(Polybor(登録商標)、U.S.Borax社製)1.33質量部、ヨウ化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)8.0質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)により濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液6を調製した。
-ハイドロゲル造形物6の造形-
ハイドロゲル造形物1の造形において、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液6に置き換えた以外は、ハイドロゲル造形物1の造形と同様にして、ハイドロゲル造形物6を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液6及びハイドロゲル造形物6について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例7)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液7の調製-
イオン交換水53.1質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、三菱ケミカルホールディングス株式会社製)46.0質量部、十三酸化二ナトリウム八ホウ素四水和物(Polybor(登録商標)、U.S.Borax社製)0.92質量部、ヨウ化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)16.0質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)により濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液7を調製した。
-ハイドロゲル造形物7の造形-
ハイドロゲル造形物1の造形において、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液7に置き換えた以外は、ハイドロゲル造形物1の造形と同様にして、ハイドロゲル造形物7を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液7及びハイドロゲル造形物7について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例8)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液8の調製-
イオン交換水77.3質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(三菱ケミカルホールディングス株式会社製)22.3質量部、十三酸化二ナトリウム八ホウ素四水和物(Polybor(登録商標)、U.S.Borax社製)0.45質量部、ヨウ化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)16.0質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)で濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液8を調製した。
-ハイドロゲル造形物8の造形-
ハイドロゲル造形物1の造形において、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液8に置き換えた以外は、ハイドロゲル造形物1の造形と同様にして、ハイドロゲル造形物8を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液8及びハイドロゲル造形物8について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例9)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液9の調製-
イオン交換水76.6質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、三菱ケミカルホールディングス株式会社製)22.1質量部、十三酸化二ナトリウム八ホウ素四水和物(Polybor(登録商標)、U.S.Borax社製)1.33質量部、ヨウ化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)16.0質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)により濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液9を調製した。
-ハイドロゲル造形物9の造形-
ハイドロゲル造形物1の造形において、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液9に置き換えた以外は、ハイドロゲル造形物1の造形と同様にして、ハイドロゲル造形物9を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液9及びハイドロゲル造形物9について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例10)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液10の調製-
イオン交換水53.1質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、三菱ケミカルホールディングス株式会社製)46.0質量部、十三酸化二ナトリウム八ホウ素四水和物(Polybor(登録商標)、U.S.Borax社製)0.92質量部、塩化ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)8.0質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)により濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液10を調製した。
-ハイドロゲル造形物10の造形-
ハイドロゲル1の造形において、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液10に置き換えた以外は、ハイドロゲル造形物1の造形と同様にして、ハイドロゲル造形物10を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液10及びハイドロゲル造形物10について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例11)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液11の調製-
イオン交換水53.1質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、三菱ケミカルホールディングス株式会社製)46.0質量部、四ホウ酸ナトリウム(商品名:ホウ砂、健栄製薬株式会社製)0.92質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)で濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液11を調製した。
-ハイドロゲル造形物11の造形-
ハイドロゲル1の造形において、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液11に置き換えた以外は、ハイドロゲル造形物1の造形と同様にして、ハイドロゲル造形物11を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液11及びハイドロゲル造形物11について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例12)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液12の調製-
イオン交換水53.1質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、三菱ケミカルホールディングス株式会社製)46.0質量部、四ホウ酸ナトリウム(商品名:ホウ砂、健栄製薬株式会社製)0.92質量部、ヨウ化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)8.0質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)で濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液12を調製した。
-ハイドロゲル造形物12の造形-
ハイドロゲル造形物1の造形において、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液12に置き換えた以外は、ハイドロゲル造形物1の造形と同様にして、ハイドロゲル造形物12を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液12及びハイドロゲル造形物12について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例13)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液13の調製-
イオン交換水58.6質量部、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA、KJケミカルズ株式会社製)40.5質量部、四ホウ酸ナトリウム(商品名:ホウ砂、健栄製薬株式会社製)0.81質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)で濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液13を調製した。
-ハイドロゲル造形物13の造形-
ハイドロゲル造形物1の造形において、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液13に置き換えた以外は、ハイドロゲル造形物1の造形と同様にして、ハイドロゲル造形物13を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液13及びハイドロゲル造形物13について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例14)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液14の調製-
イオン交換水58.7質量部、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA、KJケミカルズ株式会社製)40.5質量部、四ホウ酸ナトリウム(商品名:ホウ砂、健栄製薬株式会社製)0.81質量部、ヨウ化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)8.0質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)で濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液14を調製した。
-ハイドロゲル造形物14の造形-
ハイドロゲル造形物1の造形において、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液14に置き換えた以外は、ハイドロゲル造形物1の造形と同様にして、ハイドロゲル造形物14を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液14及びハイドロゲル造形物14について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例15)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液15の調製-
イオン交換水58.4質量部、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA、KJケミカルズ株式会社製)40.4質量部、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート(A-600、新中村化学工業株式会社製)0.42質量部、四ホウ酸ナトリウム(商品名:ホウ砂、健栄製薬株式会社製)0.82質量部、ヨウ化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)8.0質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)により濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液15を調製した。
-ハイドロゲル造形物15の造形-
ハイドロゲル造形物1の造形において、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液15に置き換えた以外は、ハイドロゲル造形物1の造形と同様にして、ハイドロゲル造形物15を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液15及びハイドロゲル造形物15について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例16)
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液16の調製-
イオン交換水58.2質量部、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA、KJケミカルズ株式会社製)40.2質量部、ポリエチレングリコール#1000ジアクリレート(A-1000、新中村化学工業株式会社製)0.70質量部、四ホウ酸ナトリウム(商品名:ホウ砂、健栄製薬株式会社製)0.82質量部、ヨウ化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)8.0質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.50質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)により濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液16を調製した。
-ハイドロゲル造形物16の造形-
ハイドロゲル造形物1の造形において、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液1を有機無機複合ハイドロゲル前駆体液16に置き換えた以外は、ハイドロゲル造形物1の造形と同様にして、ハイドロゲル造形物16を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液16及びハイドロゲル造形物16について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例17)
-KPS水溶液の調製-
イオン交換水100質量部に、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS、関東化学株式会社製)2質量部を加えて溶解させ、KPS水溶液を得た。
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液17の調製-
イオン交換水58.4質量部、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA、KJケミカルズ株式会社製)40.4質量部、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート(A-600、新中村化学工業株式会社製)0.42質量部、四ホウ酸ナトリウム(商品名:ホウ砂、健栄製薬株式会社製)0.82質量部、及びヨウ化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)8.0質量部を撹拌し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm、AGCテクノグラス・IWAKI社製)により濾過し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液17を調製した。
-ハイドロゲル造形物17の造形-
100質量部の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液17を静かに撹拌しているところに、5質量部のKPS水溶液を添加した。十分撹拌されたことを確認し、圧縮試験片作製用モールド及び引張試験片作製用モールドに流し込み、真空脱気した後、窒素置換し、25℃で24時間放置(熱硬化剤型成形)して、ハイドロゲル造形物17を造形した。
-評価-
得られた有機無機複合ハイドロゲル前駆体液17及びハイドロゲル造形物17について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例18)
-ハイドロゲル造形物18の造形-
有機無機複合ハイドロゲル前駆体液15をモデル材インクとし、マテリアルジェット方式(MJ)の3DプリンターであるMateriART-3DU(株式会社マイクロジェット製)を用い、ハイドロゲル造形物18として30mm×30mm×10mmの圧縮試験片、及び厚さ3mmのダンベル状3号形の引張試験片を造形した。
-評価-
得られたハイドロゲル造形物18について、上記の方法により、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(実施例19)
-ハイドロゲル造形物19の造形-
有機無機複合ハイドロゲル前駆体液15を造形インクとし、光造形方式(SLA)の3DプリンターであるForm2(Formlabs社製)を用い、ハイドロゲル造形物19として30mm×30mm×10mmの圧縮試験片、厚さ3mmのダンベル状3号形の引張試験片をオープンモードで造形した。
-評価-
得られたハイドロゲル造形物19について、上記の方法により、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
(比較例1)
-KPS水溶液の調製-
イオン交換水100質量部に、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS、関東化学株式会社製)2質量部を加えて溶解させ、KPS水溶液を得た。
-ハイドロゲル造形物101の調製-
窒素置換したデシケータ内で、イオン交換水19質量部に、ラポナイトXLG[Mg5.34Li0.66Si20(OH)]Na 0.66の組成を有する水膨潤性合成ヘクトライト(日本シリカ株式会社製)0.66質量部を加えて撹拌して、無色透明の溶液に調製した。これに、ジメチルアクリルアミド(DMAA、KJケミカルズ株式会社製)1.5質量部を加え、続いて、前記KPS水溶液1.0質量部、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA、富士フイルム和光純薬株式会社製)0.5質量部を撹拌して加え、均一溶液を得た。得られた均一溶液を、上記圧縮試験片作製用モールド及び引張試験片作製用モールドに流し入れ、上部を密栓し、20℃で15時間静置重合して、ハイドロゲル101を得た。
-ホウ酸塩基含有有機無機複合ハイドロゲル101の作製-
ハイドロゲル101を、工程1:5質量%ホウ酸塩基水溶液100mLに3日間浸漬する、工程2:100mLの純水に1日間浸漬する、という工程を3回繰り返し、ホウ酸塩基含有有機無機複合ハイドロゲル101を得た。
なお、水は全て高純度窒素を予め3時間以上バブリングさせ溶存酸素を除去、ラポナイトXLGは80℃で24時間真空乾燥し、DMAA及びDMAEAは活性アルミナ(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いて重合禁止剤を取り除き、使用した。
-評価-
得られたホウ酸塩基含有有機無機複合ハイドロゲル101について、上記の方法により、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
ホウ酸塩基含有有機無機複合ハイドロゲル101は無色透明な硬化物で柔軟性があり、破断時の伸びが十分大きい。しかし、浸漬によりハイドロゲルが膨潤し、引張試験片の断面が幅5mm×厚さ3mmから幅7.3mm×厚さ4.1mmに形状が変化した。
(比較例2)
-光重合開始剤液の調製-
光重合開始剤液として、エタノール96質量部に対して光重合開始剤(Irgacure184、BASF社製)を4質量部の割合で溶解させ、水溶液として準備した。
-有機無機複合ハイドロゲル前駆体液102の調製-
純水165質量部を撹拌させながら、層状鉱物として[Mg5.34Li0.66Si20(OH)]Na 0.66の組成を有する合成ヘクトライト(ラポナイトXLG、RockWood社製)20質量部を少しずつ添加し、撹拌して分散液を作製した。
次に、得られた分散液に、0.8質量部のエチドロン酸水溶液(キレストPH-210、有効成分含有量60質量%、キレスト株式会社製)を添加し、30分間分散の後、更に前記合成ヘクトライト20質量部を少しずつ添加し、30分間撹拌した。前記合成ヘクトライトは、合計で40質量部添加した。その後、前記分散液を、50℃の恒温槽で10時間保管し、分散を安定化させた。
次に、得られた分散液に、モノマーとして活性アルミナのカラムを通過させ重合禁止剤を除去したアクリロイルモルホリン(ACMO、KJケミカルズ株式会社製)20質量部、グリセリン30質量部を添加した。更に、界面活性剤としてエマルゲンS LS-106(花王株式会社製)1.0質量部を添加して混合した。
次に、氷浴で冷却しながら、上記光重合開始剤液を2.2質量部、及びテトラエチルメチレンジアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を0.15質量部添加し、撹拌混合後、減圧脱気を20分間実施した。続いて、濾過により不純物等を除去し、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液102を調製した。
-ハイドロゲル102の調製-
有機無機複合ハイドロゲル前駆体液102を、上記圧縮試験片作製用モールド及び引張試験片作製用モールドに流し込む。UV-LED照射器(MS-H1000AF、松尾産業株式会社製)を用い、照射距離(UVランプとハイドロゲル前駆体液面)を40mmにして、UV光を15秒間照射することで、ハイドロゲル102を得た。
-ヨウ化カリウム水溶液の調製-
イオン交換水100質量部にヨウ化カリウム(KI、富士フイルム和光純薬株式会社製)100質量部を添加し溶解させ、ヨウ化カリウム水溶液を調製した。
-ヨウ化カリウム含有ハイドロゲル102の造形-
ハイドロゲル102を、工程1:ヨウ化カリウム水溶液300mLに3日間浸漬する、工程2:300mLイオン交換水に1日間浸漬する、という工程を3回繰り返し、ヨウ化カリウム含有ハイドロゲル造形物102を造形した。
-評価-
得られたヨウ化カリウム含有ハイドロゲル102について、上記の方法により、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
ヨウ化カリウム含有ハイドロゲル102は茶褐色の硬化物で柔軟性があり、破断時伸びが大きい。しかし、浸漬によりハイドロゲルが膨潤し、引張試験片の断面が幅5mm×厚さ3mmから幅8.7mm×厚さ4.9mmに形状が変化した。
(比較例3)
-シリコーンゲル前駆体液103の調製-
ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA、KJケミカルズ株式会社製)とホウ酸トリエチル(東京化成工業株式会社製)をモル比3対1で混合し、ロータリーエバポレーターを50℃で加熱撹拌しエタノールを除去し、HEAA-ホウ酸塩を生じさせた。得られたHEAA-ボレートブレンドは、真空デシケータ内で4kPa(40mbar)にて1時間脱気した。
HEAA-ホウ酸塩31.5質量部、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル メタクリレート(SiGMA、東京化成工業株式会社製)47.2質量部、tert-アミルアルコール20.0質量部、エチレングリコールジメタクリレート1.0質量部、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 1173、BASF社製)0.3質量部を混合し、得られた液体をシリンジフィルター(フィルター孔径0.8μm)で濾過し、シリコーンゲル前駆体液103を調製した。
-シリコーンゲル造形物103の造形-
シリコーンゲル前駆体液103を、上記圧縮試験片作製用モールド及び引張試験片作製用モールドに流し込む。UV-LED照射器(MS-H1000AF、松尾産業株式会社製)を用い、照射距離(UVランプとハイドロゲル前駆体液面)を40mmにして、UV光を15秒間照射することで、シリコーンゲル103を造形した。
-評価-
得られたシリコーンゲル前駆体液103及びシリコーンゲル103について、上記の方法により、「前駆体液の粘度」、「圧縮試験」、「引張試験」、「X線撮像性」、及び「電気メス切開性」を評価した。結果を表2に示した。
シリコーンゲル103は無色透明な硬化物で柔軟性があり、水にも親和性があるゲルであったが、引張試験の破断時伸びは小さかった。
次に、実施例1~19の組成及び造形方法について、表1にまとめて示した。
Figure 2022182263000001
表1中の略号の詳細な内容については、以下のとおりである。
*4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート、三菱ケミカルホールディングス株式会社製
*HEAA:ヒドロキシエチルアクリルアミド、KJケミカルズ株式会社製
*A-600:ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、新中村化学工業株式会社製
*A-1000:ポリエチレングリコール#1000ジアクリレート、新中村化学工業株式会社製
Figure 2022182263000002
表2の結果から、実施例1~19の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液は、粘度が低いため真空デシケータ内で脱気しなくても気泡が残存しなかった。また、得られたハイドロゲル造形物は、圧縮試験を行うと十分な圧縮応力が得られ、かつ1MPaで圧縮しても破壊されなかった。更に、得られたハイドロゲル造形物を引張試験で評価すると、破断時の伸び率が大きく、伸長性が高いことがわかった。
比較例1は、ハイドロゲル造形物101を無機ホウ酸化合物の水溶液に浸漬することによりハイドロゲル造形物にホウ酸塩基を導入するため、膨潤による形状変化が生じてしまい、ハイドロゲル造形物1と比べると劣る。
比較例3は、得られるゲルがシリコーンハイドロゲルであり、水を含まないのでハイドロゲル造形物1と比べると硬く、伸長度が得られなかった。
また、実施例4~9及び14~19の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液は、粘度が低いため真空デシケータ内で脱気しなくても気泡が残存しない。また、得られたハイドロゲル造形物は、圧縮試験及び引張試験の特性が実施例1~3のハイドロゲル造形物と同様に優れていることに加えて、電気メスで切開可能でありX線撮像でコントラストが得られることがわかった。
比較例2は、有機無機複合ハイドロゲル前駆体液102にイオン化合物を添加すると不安定になりゲル化するため、実施例4の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液4のようにイオン化合物を安定して含有させることができなかった。
また、実施例10のハイドロゲル造形物10は、イオン化合物として塩化ナトリウムを用いているので、X線撮像ではコントラストが得られなかったが、電気メスで切開可能であった。
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> ヒドロキシ基を有するモノマーと、
ホウ酸塩化合物と、
水と、
を含むことを特徴とする有機無機複合ハイドロゲル前駆体液である。
<2> 前記ホウ酸塩化合物が、四ホウ酸ナトリウム及び十三酸化二ナトリウム八ホウ素四水和物の少なくともいずれかである、前記<1>に記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液である。
<3> 前記ホウ酸塩化合物の含有量が0.1質量%以上20質量%以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液である。
<4> 前記ヒドロキシ基を有するモノマーが、4-ヒドロキシブチルアクリレート及びヒドロキシエチルアクリルアミドの少なくともいずれかである、前記<1>から<3>のいずれかに記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液である。
<5> イオン化合物を含有する、前記<1>から<4>のいずれかに記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液である。
<6> 前記イオン化合物の含有量が0.1質量%以上20質量%以下である、前記<5>に記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液である。
<7> エチレングリコール骨格を有するモノマーを含有する、前記<1>から<6>のいずれかに記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液である。
<8> 前記エチレングリコール骨格を有するモノマーが多官能モノマーである、前記<7>に記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を用いて得られるハイドロゲル造形物である。
<10> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を用いて、型に注入し、前記有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を硬化させた後、型を除去することによりハイドロゲル造形物を製造するハイドロゲル造形物の製造方法である。
<11> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を用いて、ハイドロゲル前駆体液膜を形成する液膜形成工程と、
前記ハイドロゲル前駆体液膜を硬化して層を形成する液膜硬化工程と、
を含むことを特徴とするハイドロゲル造形物の製造方法である。
<12> 前記液膜形成工程がインクジェット印刷法で行われる、前記<11>に記載のハイドロゲル造形物の製造方法である。
<13> ヒドロキシ基を有するモノマーが重合してなるポリマーと、ホウ酸塩化合物と、水と、を含むことを特徴とする有機無機複合ハイドロゲルである。
前記<1>から<8>のいずれかに記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液、前記<9>に記載のハイドロゲル造形物、前記<10>から<12>のいずれかに記載のハイドロゲル造形物の製造方法、及び前記<13>に記載の有機無機複合ハイドロゲルによると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
10 三次元プリンター
17 ハイドロゲル造形物
特開2016-176006号公報 特開2008-74925号公報 特表2014-501799号公報

Claims (13)

  1. ヒドロキシ基を有するモノマーと、
    ホウ酸塩化合物と、
    水と、
    を含むことを特徴とする有機無機複合ハイドロゲル前駆体液。
  2. 前記ホウ酸塩化合物が、四ホウ酸ナトリウム及び十三酸化二ナトリウム八ホウ素四水和物の少なくともいずれかである、請求項1に記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液。
  3. 前記ホウ酸塩化合物の含有量が0.1質量%以上20質量%以下である、請求項1から2のいずれかに記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液。
  4. 前記ヒドロキシ基を有するモノマーが、4-ヒドロキシブチルアクリレート及びヒドロキシエチルアクリルアミドの少なくともいずれかである、請求項1から3のいずれかに記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液。
  5. イオン化合物を含有する、請求項1から4のいずれかに記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液。
  6. 前記イオン化合物の含有量が0.1質量%以上20質量%以下である、請求項5に記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液。
  7. エチレングリコール骨格を有するモノマーを含有する、請求項1から6のいずれかに記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液。
  8. 前記エチレングリコール骨格を有するモノマーが多官能モノマーである、請求項7に記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を用いて得られるハイドロゲル造形物。
  10. 請求項1から8のいずれかに記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を用いて、型に注入し、前記有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を硬化させた後、型を除去することによりハイドロゲル造形物を製造するハイドロゲル造形物の製造方法。
  11. 請求項1から8のいずれかに記載の有機無機複合ハイドロゲル前駆体液を用いて、ハイドロゲル前駆体液膜を形成する液膜形成工程と、
    前記ハイドロゲル前駆体液膜を硬化して層を形成する液膜硬化工程と、
    を含むことを特徴とするハイドロゲル造形物の製造方法。
  12. 前記液膜形成工程がインクジェット印刷法で行われる、請求項11に記載のハイドロゲル造形物の製造方法。
  13. ヒドロキシ基を有するモノマーが重合してなるポリマーと、ホウ酸塩化合物と、水と、を含むことを特徴とする有機無機複合ハイドロゲル。

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