図1は、実施例1の媒体処理装置としてのATM100の内部構成を示す構成図である。操作表示部11は、ATM100の使用者への告知表示を行い、かつ使用者がATM100に対する操作入力を行うタッチパネルである。
紙幣入出金口13は、ATM100への入金の際に、紙幣が入金(投入)される投入口である。また、紙幣入出金口13は、出金の際に、紙幣が出金(排出)される排出口ともなる。紙幣入出金口13には、紙幣入出金口13の開口部を開閉自在に移動可能なシャッター13Sが設けられている。
紙幣一時保留部15は、ATM100内で搬送される紙幣、例えば、紙幣入出金口13から取り込まれた紙幣または紙幣入出金口13へ排出される紙幣が一時的に集積、滞留される領域である。紙幣一時保留部15には、例えば、入金紙幣計数時等に、一時的に紙幣を集積、滞留させることができる。
紙幣収納部17は、紙幣を収納する複数の収納庫(カセット)を含む。当該複数の収納庫の各々は、ATM100に対して脱着自在に設けられている。紙幣収納部17は、紙幣入出金口13から投入された紙幣を金種毎に収納可能である。
紙幣収納部17は、リサイクルカセット19及びリサイクルカセット20を含む。リサイクルカセット19及び20は、紙幣の収納及び排出の両方の機能を有する収納庫である。
リサイクルカセット19は、カセット19A及び19Bを含む。また、リサイクルカセット20は、カセット20A及び20Bを含む。本実施例においては、一例として、カセット19A及び19Bが一万円券カセットであり、カセット20A及び20Bが千円券カセットである場合について説明する。
例えば、紙幣入出金口13に一万円券が投入された場合、当該紙幣はリサイクルカセット19に搬送されて収納される。また、紙幣入出金口13から一万円券が出金される場合、リサイクルカセット19に収納されている紙幣が、紙幣入出金口13に搬送されて排出される。
また、紙幣入出金口13に一万円券が投入された場合、当該紙幣はリサイクルカセット19に含まれるカセット19A又は19Bのいずれかのカセットに収納される。すなわち、一万円券を収納するカセット19A及び19Bを含むリサイクルカセット19は、一万円券を収納する収納庫群である。
同様に、紙幣入出金口13に千円券が投入された場合、当該紙幣はリサイクルカセット20に含まれるカセット20A又は20Bのいずれかのカセットに収納される。すなわち、千円券を収納するカセット20A及び20Bを含むリサイクルカセット20は、千円券を収納する収納庫群である。
また、紙幣収納部17は、紙幣入出金口13から入金された紙幣を収納する入金カセット21を含む。入金カセット21は、紙幣の収納の機能のみを有し、排出の機能は有していない収納庫である。本実施例においては、入金カセット21には、五千円券及び二千円券が収納される。
また、紙幣収納部17は、ATM100内において鑑別された紙幣が偽券または損券である場合に、当該偽券または損券が入れられるリジェクト(RJ)カセット23を含んでいる。
搬送部25(図中破線)は、紙幣の通路である搬送路25Aを含んでいる。また、搬送部25は、ローラ等によって搬送路25Aに沿って紙幣を送る機構である搬送機構(図示せず)を含んでいる。搬送部25は、紙幣入出金口13、紙幣一時保留部15、及び紙幣収納部17の各カセットとの間で紙幣を搬送可能に設けられている。
例えば、搬送部25は、搬送路25Aが分岐している箇所に設けられた振分機構を有しており、当該振分機構によって、搬送路25Aに沿って搬送されている紙幣を所定の搬送先に案内する。
また、搬送部25は、搬送路25A上に設けられたセンサを有しており、当該センサによって、紙幣の位置又は所定箇所における紙幣の通過等の検出が行われる。
搬送部25の搬送路25Aは、紙幣収納部17の各カセットに接続されている。すなわち、搬送路25Aは、紙幣収納部17の各カセットに紙幣を導入可能に設けられている。また、搬送路25Aは、紙幣入出金口13に接続されている。紙幣入出金口13から投入される紙幣は、搬送路25Aに沿って搬送され、搬送路25Aを介して紙幣収納部17の各カセットに導入されて収納される。また、リサイクルカセット19から出金される紙幣は、搬送路25Aを介して紙幣入出金口13に導出される。
紙幣鑑別部27は、搬送部25の一部に設けられており、搬送部25によってATM100内を搬送される紙幣の券種及び真偽の鑑別を行う。紙幣鑑別部27は、紙幣が搬送路25A上の紙幣鑑別部27を通過する際に、紙幣の鑑別に必要なデータを取得する。例えば、紙幣鑑別部27は、紙幣の大きさ又は画像等のデータを取得する機能を備えており、当該データに基づいて紙幣の鑑別を行う。
認識部としての処理制御部29は、ATM100の機能を実行する処理部又は装置である。処理制御部29は、例えば、CPU、記憶部(例えば、ROM、RAM、EEPROM等)、入出力インタフェース部等を有する回路で構成されるものである。処理制御部29は、ATM100の各部に接続されてこれらを制御し、いわゆるソフトウェア処理により、ATM100に含まれる各種装置の機能を実現する。
処理制御部29は、例えば、紙幣入出金口13、紙幣一時保留部15及び紙幣収納部17の各カセットとの間での紙幣の搬送を搬送部25に行わせる。また、例えば、処理制御部29は、紙幣鑑別部27による紙幣の鑑別結果に応じて、当該紙幣の搬送先となるカセットを決定する。
従って、搬送部25は、処理制御部29の指示に応じて紙幣を搬送する。例えば、紙幣鑑別部27による紙幣の鑑別結果に応じて、処理制御部29によって指定された紙幣収納部17カセットに含まれるカセットに当該紙幣を搬送する。例えば、搬送部25は、処理制御部29からの命令に従って、搬送機構及び振り分け機構を作動させて当該指定されたカセットに当該紙幣を搬送する。
[収納ルーチンRT1]
図2を参照しつつ、処理制御部29によって実行されるルーチンの一例である収納ルーチンRT1について説明する。処理制御部29は、紙幣入出金口13のシャッター13Sが開閉されて紙幣が投入されると、収納ルーチンRT1を開始する。
処理制御部29は、収納ルーチンRT1を開始すると、入金処理がされたか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11において、操作表示部11に入金を示す入力がなされたか否かが判定される。
処理制御部29は、ステップS11において、入金処理がされていないと判定する(ステップS11:NO)と、ステップS11を繰り返し、入金処理がされたか否かを再度判定する。
処理制御部29は、ステップS11において、入金処理がされたと判定する(ステップS11:YES)と、搬送部25に紙幣を搬送させ、紙幣鑑別部27に紙幣を鑑別させる(ステップS12)。ステップS12において、搬送部25は、紙幣入出金口13に投入された紙幣を1枚ずつ繰り出して紙幣鑑別部27に搬送し、鑑別された紙幣を紙幣一時保留部15に搬送する。ステップS12において、紙幣鑑別部27は、鑑別に必要なデータを取得する。
処理制御部29は、ステップS12の実行後、取引が成立したか否かを判定する(S13)。処理制御部29は、ステップS13において、操作表示部11に入力された金額と、紙幣鑑別部27による鑑別結果から得られた金額と、が一致するか否かを判定する。
処理制御部29は、ステップS13において、取引が成立していないと判定する(ステップS13:NO)と、紙幣一時保留部15の紙幣を紙幣入出金口13から排出し(ステップ14)、収納ルーチンRT1を終了する。
処理制御部29は、ステップS13において、取引が成立したと判定する(ステップS13:YES)と、紙幣一時保留部15の紙幣の紙幣収納部17への搬送を開始する(ステップS15)。ステップS15において、処理制御部29は、紙幣毎に収納先のカセットを指定して搬送部25に搬送させる。
より詳細には、処理制御部29は、紙幣一時保留部15から各カセットに向かう搬送路25A上で、同じ券種の紙幣が連続しているか否かを認識し、連続していると認識した場合に、連続するいずれの2枚の紙幣も、互いに異なるカセットに搬送させる。すなわち、当該互いに異なるカセットとなるように、紙幣毎の搬送すべきカセットを選択して指定し、搬送部25に搬送させる。ステップS15において、処理制御部29は、搬送路25A上で同じ券種の紙幣が連続して搬送されているか否か、という搬送状況を認識する認識部として機能する。
ステップS15において、搬送部25は、紙幣一時保留部15の紙幣を一枚ずつ搬送し、紙幣収納部17の各カセットに分岐する搬送路25Aを介して、例えば振り分け機構を作動させて、紙幣毎に処理制御部29によって指定されたカセットに搬送する。
処理制御部29は、ステップS15の実行後、投入された紙幣が全て紙幣収納部17に収納されたか否かを判定する(ステップS16)。処理制御部29は、ステップS16において、投入された紙幣が全て収納されていないと判定する(ステップS16:NO)と、ステップS16を繰り返し、投入された紙幣が全て収納されたか否かの判定を再度行う。
処理制御部29は、ステップS16において、投入された紙幣が全て収納されたと判定する(ステップS16:YES)と、紙幣の搬送を終了し(ステップS17)、収納ルーチンR1を終了する。
[収納ルーチンRT1による搬送順]
図3Aを参照しつつ、収納ルーチンR1によって紙幣が搬送される順番について説明する。図3Aは、1の取引処理において収納ルーチンR1によって紙幣が搬送された結果の一例を示している。
図3Aにおいて、10枚の紙幣について、紙幣一時保留部15から紙幣収納部17に向けて搬送された順番である搬送順と、各々の紙幣の券種と、当該紙幣が搬送された先のカセットと、が夫々対応されて示されている。
図3A中、1番目から4番目に搬送された紙幣は一万円券であり、一万円券カセット19A及び19Bに交互に搬送されている。5番目及び6番目に搬送された紙幣は千円券であり、5番目の紙幣は千円券カセット20Aに、6番目の紙幣は千円券カセット20Bに夫々搬送されている。
その後、7番目に搬送された紙幣である一万円券は一万円券カセット19Aに、8番目に搬送された紙幣である千円券は千円券カセット20Aに搬送されている。9番目に搬送された紙幣である一万円券は、一万円券としては7番目に搬送された紙幣の次に搬送されているが、当該7番目に搬送された一万円券と同様に一万円券カセット19Aに搬送されている。
同様に、10番目に搬送された紙幣である千円券は、千円券としては8番目に搬送された紙幣の次に搬送されているが、当該8番目に搬送された千円券と同様に、千円券カセット20Aに搬送されている。
すなわち、図3Aの例では、収納ルーチンR1によって、紙幣一時保留部15から搬送される搬送路25A上において、同じ券種の紙幣が連続して搬送される場合には、同じ券種のカセット群に属する異なるカセット(19A及び19B、又は20A及び20B)に搬送される。また、当該搬送路25A上において同じ券種が連続していない場合には、同じ券種で1枚前に搬送された紙幣と同じカセット(19Aと19A、20Aと20A)に搬送される。
図3Bを参照して、カセット内に収納された紙幣M1の集積状態について説明する。図3Bは、収納ルーチンRT1によって一万円券カセット19A及び19Bに収納された一万円券である紙幣Mが集積されている状態である集積状態を模式的に示している。図3Bは、カセットを水平方向から見た状態を示す図であり、一万円券カセット19A及び19Bに、紙幣の券面が水平方向に沿うように集積されている様子を示している。図3B中のWL及びWRは、一万円券カセット19A及び19Bの内壁を示している。
図3Bに示すように、紙幣Mは、内壁WL及びWRに対して片寄りが無く、内壁WL及びWRからの距離がほぼ一定の位置に積み重なっている。また、図3Bに示すように、1の紙幣の上に積み重ねられた他の紙幣は、その両端の位置が当該1の紙幣との間で大きくずれることなく、揃った状態で集積されている。すなわち、紙幣M1は、内壁WL−WR間における紙幣の位置のばらつきが小さい状態で集積されている。
このような集積状態は、図3Aに例示したような、ATM100によって実現される搬送順によるものである。上述したように、収納ルーチンRT1によれば、紙幣一時保留部15からカセットに向かう搬送路25A上で、同じ券種の紙幣が連続していても、当該連続している紙幣は1つ前に搬送された紙幣と異なるカセットに搬送されて収納される。すなわち、搬送されている順序において隣り合う紙幣は、互いに異なるカセットに収納される。
これによって、紙幣がカセットに導入されてから次の紙幣が同じカセットに導入されるまでの時間は、当該搬送されている順序において隣り合う紙幣が連続して同じカセットに収納される場合よりも長くなる。従って、紙幣がカセットに導入されて当該カセットの底部又は先に収納されていた他の紙幣の上に落下して静止するまでの時間を長く確保することができ、カセット内で静止する位置のばらつきが小さく、揃った状態で集積される。
図4Aは、本実施例の比較例において紙幣が搬送された順の一例を示している。図4Aには、10枚の紙幣について、紙幣一時保留部15から紙幣収納部17に向けて搬送された順番である搬送順と、各々の紙幣の券種と、当該紙幣が搬送された先のカセットと、が夫々対応されて示されている。
図4A中、1番目から6番目に搬送された紙幣は一万円券であり、一万円券カセット19Aに搬送されている。6番目から10番目に搬送された紙幣は千円券であり、全て千円券カセット20Aに連続して搬送されている。すなわち、同じ券種の紙幣は全て同じカセットに連続して搬送されている。
図4Bは、本実施例の比較例において紙幣が搬送された際の集積状態を示している。
図4Bは、一万円券カセット19Aに、搬送路25A上において連続する紙幣Mが連続して収納された場合の集積状態を模式的にしている。図4B中のWL及びWRは、一万円券カセット19A及び19Bの内壁を示している。
図4Bに示すように、一万円券カセット19Aの内壁WL及びWRに対して、片寄った位置に紙幣Mが積み重なっている。また、当該片寄った紙幣Mと、カセットの内壁WL及びWRとの間に、空隙ができている(図中、V)。
また、図4Bに示すように、1の紙幣の上に積み重ねられた他の紙幣の、両端の位置が当該1の紙幣との間で大きくずれている場合がある。例えば、下から4枚目の紙幣と下から5枚目の紙幣とは、両端の位置が揃っておらず、大きくずれている。このように、図4Bにおける紙幣Mは、内壁WL−WR間における紙幣の位置のばらつきが大きい状態で集積されている。
そして、一番上の紙幣M及び一番上から2番目の紙幣Mは、その下に積み重ねられた紙幣Mとカセットの内壁WRとの間にできた間隙Vに入り込んで(落ち込んで)いる。このように、搬送された紙幣がカセット内で間隙Vに入り込む現象が生じると、ATM100内又はカセットが取り外された後に紙幣Mについてなされる分離等の動作に支障をきたす可能性が高くなる。従って、図4Bに示す集積状態は異常な集積状態とされる。
例えば、当該異常な集積状態(異常集積)は、2以上の紙幣が搬送路25A上において連続している場合など、2以上の紙幣が同じカセットに間を置かずに連続して入った場合に生じ易くなる。例えば、先に搬送された紙幣がカセット内に入って静止するよりも前に次の紙幣が搬送された場合に、先の紙幣に後の紙幣が衝突することで、当該紙幣が静止した際の紙幣の位置がずれる場合がある。また、紙幣の曲げ剛性(腰の強さ)や織り癖等の紙幣の状態によって、カセット内で静止するまでにかかる時間が異なる等、当該異常集積が起こり易くなる場合もある。
また、搬送路25A上で連続している紙幣について、紙幣の収納に要する時間を最短とすべく、紙幣と紙幣の間隔が狭く設定され、搬送速度が速く設定されるほど、当該連続している紙幣が同じカセットに搬送された際の当該異常集積が起こり易くなる。
これに対して、図3Bに示したATM100による集積状態においては、間隙Vに入り込む現象はみられない。ATM100の収納ルーチンRT1によって、紙幣一時保留部15からカセットに向かう搬送路25A上で、同じ券種の紙幣が連続していても、搬送されている順序において隣り合う紙幣が互いに異なるカセットに搬送されることで、カセットに入った紙幣が静止するまでの時間を確保することができ、紙幣の間隔や搬送速度を変更することなく、異常集積の発生を防止することができる。
なお、本実施例において、例えば一万円券カセット19A及び19Bのように、1の収納庫群が同じ券種の紙幣を収納する複数のカセットである例について説明したが、これに限られない。所定の1以上の券種の紙幣を収納する複数のカセットを1の収納庫群としてもよい。例えば、2以上の券種の紙幣を収納する複数の収納庫を1の収納庫群としてもよい。例えば、二千円券と五千円券とを収納するカセットを2つ以上設けて、当該2つ以上のカセットを1の収納庫群としてもよい。
以上、説明したように、実施例1の媒体処理装置であるATM100によれば、同じ種類の、すなわち所定の1以上の券種の2以上の媒体(紙幣)が紙幣一時保留部15から紙幣収納部17に向かう搬送路25A上で連続して搬送されているか否かを認識することができ、当該搬送路25A上で連続して搬送されている順序において隣り合う媒体を、同じ種類の媒体が収納される1の収納庫群に含まれる収納庫のうち互いに異なる収納庫(カセット)に搬送することができる。
すなわち、ATM100は、所定の1以上の券種の媒体が搬送路25A上で連続して搬送されているか否か、という搬送路25Aにおける媒体の搬送状況を認識し、当該搬送状況に応じて、ATM100が有する1の収納庫群に含まれる複数のカセットの中から選択して、当該選択されたカセットに当該媒体を搬送することができる。すなわち、ATM100は、搬送状況に応じて異なる態様で複数のカセットの中から選択されたカセットに、搬送路25A上を搬送される媒体の各々を収納することができる。これによって、所定の1以上の券種の媒体が連続して同じカセットに搬送された際に生じ易い異常集積を、搬送の効率を維持しつつ防止し、媒体のカセットへの収納を円滑に行うことを可能とする媒体処理装置を提供することができる。
図5A乃至図5Cを参照しつつ、実施例2の媒体処理装置としてのATM200について説明する。ATM200は、搬送部25が搬送路25A上に設けられた紙幣を検出するセンサを有しており、当該センサによる検出信号が紙幣の搬送先となるカセットの選択に用いられる点において実施例1のATM100と異なり、その余の点については同様に構成されている。
図5Aは、搬送部25が搬送路25A上に有するセンサの一例であるセンサRS及びLSを模式的に示している。図5A中の破線CAは、搬送路25Aに沿った中心線を示し、CA上の矢印は搬送方向を示している。センサRSは、搬送路25Aの幅方向において、中心線CAから搬送方向に向かって右側に、中心線から所定の距離だけ離れた位置に設けられている。センサLSは、中心線CAから搬送方向に向かって左側に、中心線から所定の距離だけ離れた位置に設けられている。
また、図5A中には、搬送路25A上に位置する紙幣M(C)、M(R)及びM(L)を示している。紙幣M(C)は、紙幣の搬送方向に沿った中心線が搬送路25Aの中心線CA上にある場合について、すなわち搬送路25Aの中央に位置する紙幣を示している。
紙幣M(R)は、搬送路25Aの幅方向において、中心線CAから搬送方向に向かって右側に片寄った位置の紙幣を示している。図5Aに示すように、紙幣M(R)は、搬送路25A上においてセンサRSの位置に重なっており、センサRSによって検知されている。
紙幣M(L)は、搬送路25Aの幅方向において、中心線CAから搬送方向に向かって左側に片寄った位置の紙幣を示している。図5Aに示すように、紙幣M(L)は、搬送路25A上においてセンサLSの位置に重なっており、センサLSによって検知されている。
センサRS及びLSによって検知された信号は、処理制御部29によって取込まれる。処理制御部29は、当該信号に基づいて、紙幣毎に搬送路25Aにおける幅方向の片寄りの状況を検出する。例えば、当該片寄りの状況の検出は、紙幣毎に、紙幣M(C)、M(R)又はM(L)のいずれに該当するかを認識することによってなされる。例えば、紙幣が搬送路25Aの幅方向において所定の範囲内にある場合に、当該紙幣は紙幣M(C)に該当し、片寄っていないと認識される。
また、例えば、処理制御部29は、紙幣が搬送路25Aの幅方向において、当該所定の範囲を超えて、当該幅方向における一方の側若しくは他方の側(搬送方向に向かって右側又は左側)のいずれかに片寄っている場合に、M(R)又はM(L)のいずれに該当するかを認識する。
図5Bは、搬送路25Aの中央に位置する紙幣M(C)が連続して5枚搬送されている様子を示している。図5Cは、紙幣M(C)、右側に片寄った紙幣M(R)及び左側に片寄った紙幣M(L)が混合されて連続して搬送されている様子を示している。
上述したように、搬送部25の搬送路25Aは、紙幣収納部17に接続されている。本実施例において、搬送路25A上で右側又は左側に片寄った紙幣が紙幣収納部17のいずれかのカセットに搬送されると、当該紙幣は当該カセット内で片寄った位置に静止する傾向を有する(すなわち、搬送路25A上における片寄りが維持される)場合について説明する。
[収納ルーチンRT1]
ATM200の処理制御部29は、実施例1の場合と同様に、収納ルーチンRT1を実行する(図2参照)。処理制御部29は、収納ルーチンRT1のステップS15において、センサRS及びLSからの信号に基づいて紙幣の片寄りの状況を検出して、当該片寄りの状況に応じて異なる態様で、カセットに当該紙幣を搬送させる。
より詳細には、処理制御部29は、紙幣毎に、搬送部25の搬送方向に沿った中心線の右側か左側のいずれに片寄っているか、或いは片寄っていないかという搬送状況(すなわち、紙幣M(C)、M(R)又はM(L)のいずれに該当するか)を検出する。そして、同じ側に片寄っている紙幣が同じカセットに収納されるように、当該紙幣が搬送されるべきカセットを選択する。
図6は、ATM200における1の取引処理において収納ルーチンR1によって紙幣が搬送された結果の一例を示している。図6において、10枚の紙幣について、紙幣一時保留部15から紙幣収納部17に向けて搬送された順番である搬送順と、各々の紙幣の券種と、「片寄り」の欄に示されている各々の紙幣の片寄りの状況の検出結果と、当該紙幣が搬送された先のカセットと、が夫々対応されて示されている。
図6の搬送順1〜5に示すように、片寄りが検出された紙幣が一万円券であって、右側に片寄っている場合(図中、「右」)には、一万円券カセット19A、左側に片寄っている場合(図中、「左」)には一万円券カセット19Bに当該紙幣が搬送される。
また、図6の搬送順6〜8に示すように、片寄りが検出された紙幣が千円券であって、右側に片寄っている場合には、千円券カセット20A、左側に片寄っている場合には千円券カセット20Bに当該紙幣が搬送される。
なお、紙幣が片寄っていない場合(図中、「中央」)には、当該紙幣の券種に対応するいずれのカセットに搬送されてもよい。例えば、図6の搬送順9〜10に示すように、千円券が千円券カセット20A及び20Bに搬送されてもよい。
図7は、収納ルーチンRT1によって一万円券カセット19A及び19Bに収納された一万円券である紙幣Mの集積状態を模式的に示している。図7は、図3Bと同様に、カセットを水平方向から見た状態を示す図であり、一万円券カセット19A及び19Bに、紙幣の券面が水平方向に沿うように集積されている様子を示している。図7中のWL及びWRは、一万円券カセット19A及び19Bの内壁を示している。
図7に示すように、一万円券カセット19A及び19B内の紙幣Mは、1の紙幣の上に積み重ねられた他の紙幣は、その両端の位置が当該1の紙幣との間で大きくずれることなく、揃った状態で集積されている。
また、図7に示すように、一万円券カセット19A内の紙幣Mは、内壁WL及びWRに対して右側に片寄った状態で積み重なっている。一方、一万円券カセット19B内の紙幣Mは、内壁WL及びWRに対して左側に片寄った状態で積み重なっている。
すなわち、一万円券カセット19A内の紙幣Mは、内壁WL−WR間で右側に片寄ってかつ紙幣の位置のばらつきが小さい状態で集積されている。一万円券カセット19B内の紙幣Mは、内壁WL−WR間で左側に片寄ってかつ紙幣の位置のばらつきが小さい状態で集積されている。
例えば、図7の一万円券カセット19Aに、異なる方向に片寄った紙幣、すなわち左側に片寄った紙幣が搬送されると、両端の位置が先に積み重ねられていた紙幣Mとの間で大きく異なり、集積された紙幣Mと左側の内壁WLとの間の間隙に当該左側に片寄った紙幣が入り込む可能性がある。すなわち、図4Bに示したような異常集積が生じる可能性がある。従って、図7のように、同じ方向に片寄った同じ片寄り状態の紙幣を同じカセットに搬送して収納し、ばらつきが小さい状態で集積することで、図4Bに示したような異常集積を防止することができる。
換言すれば、本実施例では、搬送路25Aにおける幅方向の一方の側に片寄っている紙幣を、同じ種類の紙幣を収納する収納庫群の中から選択された1の収納庫に収納し、他方の側に片寄っている紙幣を、当該収納庫群の中から選択された他の収納庫に収納することで、異常集積を防止することができる。
以上、説明したように、実施例2の媒体処理装置は、媒体(紙幣)が搬送路25A上の搬送方向に沿った中心線に対して右側又は左側のいずれに片寄っているか、又は片寄っていないかという片寄りの状態を検出することができ、当該片寄りの検出結果に応じて、同じ片寄り状態の紙幣を同じ収納庫(カセット)に搬送することができる。実施例2の媒体処理装置は、異なる片寄り状態の紙幣が同じ収納庫に収納されることを防止することができる。
従って、実施例2の媒体処理装置は、媒体が搬送路25A上でどのように片寄っているか、という搬送状況を認識し、当該搬送状況に応じて、各々の紙幣の搬送先とすべきカセットを、ATM200が有する、所定の1以上の券種の媒体を収納する2以上のカセットの中から選択して、当該選択されたカセットに当該紙幣を搬送することができる。これによって、異なる片寄りの状態の媒体が同じカセットに搬送された際に生じ易い異常集積を防止し、媒体のカセットへの収納を円滑に行うことを可能とする媒体処理装置を提供することができる。
なお、上記の実施例において、搬送路25A上で連続する紙幣又は同じ片寄りの状態の紙幣を2つのカセットに分けて搬送する例について説明したが、これに限らず、3つ以上のカセットに分けて搬送してもよい。例えば、紙幣の片寄りの状態を、所定の基準を設けて3段階以上に区分して、3つ以上のカセットに分けて搬送してもよい。
なお、上記の実施例において、媒体が紙幣である場合について説明したが、これに限られない。本発明は、有価証券等の紙葉類及びカードを含む媒体について適用可能である。
また、上記の実施例では、本発明の媒体処理装置がATMである場合を例として説明したが、これに限られない。本発明の媒体処理装置は、現金出納機又は紙幣計数機等の、投入された媒体を収納する他の様々な装置であってもよい。また、本発明の媒体処理装置は、ATM、現金出納機又は紙幣計数機等の媒体を取り扱う装置に搭載されてもよい。
上記の構成及びルーチンは現金出納機又は紙幣計数機等の、投入された媒体を収納する様々な媒体処理装置に適用可能である。
上述した実施例における構成及びルーチンは例示に過ぎず、用途等に応じて適宜選択及び変更可能である。