JP2019148016A - 漁網用ポリアミド610マルチフィラメント - Google Patents

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Abstract

【課題】単糸太繊度かつ高強度な低吸水のポリアミドのマルチフィラメントを提供することで、上述のような吸水、吸湿によるポリアミドマルチフィラメントの欠点を解消し、漁網用途として適したマルチフィラメントを提供する。【解決手段】吸湿率が2.0%以内であり、吸水時の強力保持率が90%以上であり、初期抱水変化率が20.0%以上であることを特徴とする漁網用ポリアミド610マルチフィラメント。【選択図】なし

Description

本発明は、漁網用のポリアミドマルチフィラメントに関する。
ポリアミド6やポリアミド66のマルチフィラメントは、ポリエステルやポリプロピレン等の汎用マルチフィラメントと比較して強伸度が高く、毛羽品位に優れるため、エアバッグ、スポーツラケット用ガット、ロープ、漁網、鞄用ベルト等の多岐に渡る用途に用いられている。
上述の用途の中でも漁網分野ではポリアミド6、66の有する高強伸度、耐久性、耐候性の観点から長年に渡り利用されてきた。(特許文献1)
特開2008−31572号公報 特開2011−1635号公報 特願2009−143329号公報
一般的な漁法の一つとして、漁網を海水中に投網し、一定時間経過後、漁獲物とともに漁網を船舶に引き上げる手法がある。漁網は船上と海水中を往復するため漁網の使用状態として、乾燥状態に加えて吸水状態についても想定する必要がある。漁船が帰港する際には漁獲物と共に海水を含んだ漁網を運搬することから、漁網の吸水量が船舶の燃費や積載漁獲量に影響を及ぼす。
漁網に使用されるポリアミドは一般的に、吸水、吸湿性を有するポリマーである。ポリアミド6やポリアミド66などのいわゆる汎用ポリアミドのマルチフィラメントでは、吸水による強度低下や吸湿による寸法変化が大きい。そのため吸水による強度低下や吸水−乾燥の繰り返しに伴い、漁網が硬化する、または耐磨耗性が低下する問題があった。
一方で低吸水ポリアミドマルチフィラメントとしてポリアミド11やポリアミド610、ポリアミド612のマルチフィラメントなどが知られており、例えば洗浄ブラシ用繊維として提案されたりしている(特許文献2)が、従来手法で製造されたこれらのポリアミドマルチフィラメントはポリアミド6やポリアミド66に比らべて低強度かつ毛羽品位が悪いことから、1本1本のフィラメントが太く、かつ強度が高い(以下、単糸太繊度高強度とも言う)マルチフィラメントを必須とする漁網用途への展開は困難であった(特許文献3)。
本発明はかかる従来技術に鑑み、単糸太繊度かつ高強度な低吸水のポリアミドのマルチフィラメントとすることで、特に漁網用途として適したマルチフィラメントを提供することができる。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討したものであり、本発明は下記の構成からなる。
(1)吸湿率が2.0%以下であり、吸水時の強力保持率が90%以上であり、初期抱水変化率が20.0%以上であることを特徴とする漁網用ポリアミド610マルチフィラメント。
(2)総繊度が400〜4000dtex、単繊維繊度が20〜40dtexであることを特徴とする前記(1)記載の漁網用ポリアミド610マルチフィラメント。
(3)硫酸相対粘度が3.3〜3.7であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の漁網用ポリアミド610マルチフィラメント。
(4)強度が6.5〜8.5cN/dtexであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載の漁網用ポリアミド610マルチフィラメント。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか1項記載の漁網用ポリアミド610マルチフィラメントを用いることを特徴とする漁網。
本発明により、ポリアミド6やポリアミド66マルチフィラメントと同等の強度、毛羽品位を示し、漁網用途として求められる低吸水性、吸水時特性を発現したポリアミド610マルチフィラメントを提供することが可能となる。
図1は本発明で好ましく用いられる直接紡糸延伸装置の概略図である。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントの原料はポリアミド610である。ポリアミド610のみから構成されることが好ましいが、実質的にポリアミド610で構成されていればよく、本発明の特性を損なわない範囲で、具体的には5質量%以下の範囲で他のポリマーが混合されていてもよく、また共重合がなされていてもよい。混合または共重合されるポリマー・共重合単位としてはポリアミド6、66、11、12などのポリアミドが好ましい。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントの吸湿率は2.0%以下であることが好ましく、より好ましくは1.8%以下である。吸湿率が2.0%より大きいと、吸湿による繊維の強度低下が顕著となる。2.0%以下とすることで、漁網用途で想定される水中での高い強度保持を達成することが可能である。さらには、低吸湿率を示すということは繊維中に水分が取り込まれにくい性質を持っており、すなわち水中での低吸水性も達成されるため、漁網の海水吸水量が減少し、帰港時の船舶の燃費改善や積載漁獲量の増加も期待される。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントの吸水時の強力保持率は90%以上であることが好ましい。より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。吸水時の強力保持率が90%以上であれば、汎用ポリアミドであるポリアミド6やポリアミド66と比較して、吸水時の強度低下を抑制することができる。なお、吸水時の強力保持率とは、後述する方法で測定した値をいう。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントの初期抱水変化率は20.0%以上であることが好ましく、より好ましくは、22%以上である。漁網を海水中に投網し、一定時間後海中から船舶へ回収する際は、海水を抱き込みながら巻き上げるため、繊維からの水の脱離速度、すなわち乾燥速度は、最終的な網重量に大きく影響を及ぼす重要なファクターである。マルチフィラメントとしての初期抱水変化率が20.0%以上であると、巻き上げ初期の水の脱落量が多く、吸水による最終的な網重量の増加を抑えることができる。
なお初期抱水変化率とは、後述する初期抱水変化率により測定した値をいう。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントの総繊度は400〜4000dtexが好ましく、より好ましくは700〜2000dtexである。400dtex未満でも用いることができるが、通常は合糸したり、合撚糸して目的とする製品に加工されるため、総繊度が小さいと効率が悪く好ましくない。一方、4000dtexを超える総繊度のマルチフィラメントも得ることができるが、総繊度の大きな糸が必要な場合は適当に合糸して用いれば良く、敢えて大型の製糸設備を用いて総繊度の大きなマルチフィラメントを製造する必要はない。
単繊維繊度としては、20〜40dtexが好ましく、より好ましくは25〜35dtexである。単繊維繊度が20dtex未満のポリアミドマルチフィラメントからなる漁網は、腰が十分でなく、網捌きがよくないという欠点がある。また単繊維繊度が細いと、耐摩耗性、耐候性等も劣るため好ましくない。一方、40dtexを超えると、硬すぎたり、フィラメントを集束し難いことがある。また、製糸工程では、均一な延伸が行われない、3000m/min以上の高速でチ−ズ状に巻き取る時にフォ−ムが悪化する等の問題がある。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントの原料チップの硫酸相対粘度(以下、単に粘度とも言う)は3.6〜4.0であることが好ましく、より好ましくは3.7〜3.9であり、さらに好ましくは3.7〜3.8である。チップの粘度が3.5以下であるとチップ水分率を下記の好ましい範囲にした際に、本発明のポリアミド610マルチフィラメントを安定して得ることが難しくなることがある。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントの原料となるポリアミド610のチップの水分率は0.05%以上であることが好ましく、特に0.05〜0.13%であることが好ましく、更には0.07〜0.09%であることが好ましい。ポリアミド610は吸水しにくいことから水分率による影響が少ないことが示唆されるが、水分率調整による粘度調整により、劇的に強伸度、毛羽品位が改善する。水分率が0.05%未満であると毛羽品位が悪化する。水分率を調整する手法としては、乾燥後のチップに軽量した水を添加し、チップを攪拌する方法が好ましいが、上記範囲を達成すれば手法は問わない。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントは硫酸相対粘度が3.3〜3.7であることが好ましく、特に3.3〜3.6であることが好ましく、更には3.4〜3.6であることが好ましい。粘度が3.3未満であると十分な強度を有する原糸を毛羽品位良く得ることができず、粘度が3.8以上であると製糸性、毛羽品位が悪化する。
なお、硫酸相対粘度は、試料を98%硫酸に溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した値をいう。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントの強度としては6.5〜8.5cN/dtexが好ましく、特に7.0〜8.5cN/dtexが好ましい。通常の方法で高強度繊維を製造すると毛羽が発生しやすいが、本発明で用いる水分率の調整と上記の粘度範囲により、紡出および延伸工程での毛羽発生、糸切れ等が抑制され、品位の高いポリアミドマルチフィラメントを得ることができる。
次に、本発明のポリアミド610マルチフィラメントを製造する方法について説明する。ポリアミド610マルチフィラメントは通常の溶融紡糸をベースに以下の方法により好ましく製造することができるが、本発明においてはポリアミド610フィラメントを直接紡糸延伸法により製造することが特に有効である。また、溶融紡糸をする際、チップを適正粘度に管理した上で、所定量の水分を付与することが好ましく、これにより強伸度を向上させ、延伸時の糸切れや毛羽の発生を抑制することができるので、結果として強度が高く、品位に優れたポリアミド610マルチフィラメントを得ることができるのである。
以下、図1を例にとり、説明する。
図1は本発明で好ましく用いられる直接紡糸延伸装置の概略図である。
粘度、水分率等を調整したポリアミド610チップをエクストルーダー型紡糸機(図1には図示されていない)で溶融・混練し、紡出部において紡糸口金1より吐出して紡糸する。紡糸口金1から紡出した紡出糸条5は加熱筒2を経て、クロスフロー冷却装置3により冷却風4で冷却される。冷却された糸条5はダクト6を通過し、給油装置7により処理剤を付与されながら、引き取りローラ8により引き取られる。引き取られた糸条5は引き取りローラ8と給糸ローラ9の間でプレストレッチ延伸をかけられる。その後、第1延伸ローラ10、第2延伸ローラ11、第3延伸ローラ12において3段延伸され、弛緩ローラ13において弛緩される。弛緩された糸条5は交絡付与装置14により交絡を付与され、ワインダー15により巻き取られ、繊維パッケージ16となる。
上記のとおり、原料として用いるポリアミド610チップの粘度は3.6〜4.0であることが好ましく、水分率は0.05%以上であることが好ましい。
上記において引き取る際の引き取り速度は350〜1100m/minであることが好ましい。本発明における処理剤は非水系処理剤として用いることが好ましいが、含水処理剤を用いても十分な物性を得られる。処理剤の付与方法はオイリング装置やガイド給油が好ましい。
延伸から巻取りまでの工程は、通常2段以上の多段延伸したのち、弛緩処理して巻き取る方法が好ましい。2段以上で延伸する際、プレストレッチ延伸を施した後、延伸することが好ましい。プレストレッチ延伸、1段目延伸はガラス転移温度前後で熱延伸を行い、残りの延伸および熱セット温度は通常150〜220℃の高温で行うことが好ましい。より好ましくは170〜210℃である。
延伸倍率、すなわち引き取りローラ8から第2延伸ローラ11間の倍率は通常3〜6倍の範囲で行う。なお。巻取速度は通常2000〜5000m/minであることが好ましく、2500〜4500m/minであることがより好ましい。また、巻取張力は20〜250gfの条件下で巻取装置にてチーズ条に巻き上げることが好ましい。
以上のような方法により、本発明のポリアミド610マルチフィラメントを製造することができる。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントはその特性から水中・海中で使用される網(ネット)に適しており、特に漁網用として好適である。本発明のポリアミド610マルチフィラメントを用いてなる魚網は、網地の種類としては有結節網でも無結節網でもかまわない。魚網の種類も特に限定されず、養殖網、生簀網、定置網、刺し網、引き網、巻き網、敷き網などが挙げられるが、なかでも巻き網が好ましい。本発明は、低吸水による高い吸水時強力保持率の発現により、海水中での強度低下が抑えられる。また、初期抱水変化率変化が大きく、網の巻き上げ時により多くの海水が脱落し、網が軽量化される。
また、魚網以外の用途としては、水中・海中で使用される又は水に濡れたり浸漬することが想定される各種ネット類、例えば水切りネット、洗濯ネット、仕切りネット、土木用ネット、農業用ネットなどが挙げられる。
以下、本発明に関し、実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何等限定されるものではない。なお、実施例中の各測定値の測定方法は以下の通りである。
(1)硫酸相対粘度(ηr):ポリマチップまたは原糸(フィラメント)を試料として、試料0.25gを98%硫酸25mLに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定し、以下の式から求めた。測定値は5サンプルの平均値から求めた。
ηr= 試料溶液の流下秒数/硫酸のみの流下秒数。
(2)水分率:HIRANUMA SANGYOのAQ−2200とHIRANUMA SANGYOのEV−2000を組み合わせて用いて測定した。すなわち、HIRANUMA SANGYOのEV−2000を用いて、試料チップ中の水分を抽出し、HIRANUMA SANGYOのAQ−2200を用いて、水分率を計測した。試料は1.5gとし、水分気化に用いる窒素は0.2L/minとした。
測定条件は以下の通りとした。
・ステップ1 温度 210℃、時間 21分
・空焼き時間 0分
・終了 B.G. 0μg
・冷却時間 1分
・B.G.安定回数 30回
・バックパージ時間 20秒
(3)総繊度:JIS L1013(1999) 8.3.1 A法により、所定荷重0.045cN/dtexで正量繊度を測定して総繊度とした。
(4)フィラメント数:JIS L1013(1999) 8.4の方法で算出した。
(5)(乾燥時)強力・強度・伸度:JIS L1013(1999) 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。試料をオリエンテック社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100を用い、掴み間隔は250mm、引張り速度は300mm/minで行った。強力はS−S曲線における最大強力から求め、強度は強力を総繊度で除して求めた。
(6)吸湿率:JIS L1013(1999) 8.2の平衡水分率の値を吸湿率とした。
(7)吸水時の強力保持率:JIS L1013(1999) 8.3.1 A法の要領で所定糸長の小かせを作成し、小かせを20℃の水道水に24時間浸漬させた。24時間経過後に、小かせを取り出し、10分以内にJIS L1013(1999)8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。この測定で得られた吸水時強力を乾燥時強力(上記(5)項で測定)で徐して百分率表記とし、吸水時強力保持率を算出した。
(8)初期抱水変化率:JIS L1013(1999) 8.3.1 A法の要領で糸長10000mの小かせを作成し、標準状態に静置後の小かせの質量(乾燥時質量)を測定した。その後、小かせを20℃の水道水に24時間浸漬させた。24時間経過後に、水中から小かせを取り出し、直後の質量を測定した。その後は小かせを吊るしながら風乾させ、10分経過後に再び質量を測定した。これらの吸水時質量を上記の乾燥時質量で徐して百分率表記し、各風乾時間での抱水率とした。この抱水率の変化量を初期抱水変化率とした。
[実施例1]
液相重合で得られたポリアミド610チップに酸化防止剤として酢酸銅の5重量%水溶液を添加して混合し、ポリマー重量に対し銅として70ppm添加吸着させた。次に沃化カリウムの50重量%水溶液および臭化カリウムの20重量%水溶液をポリマチップ100重量部に対してそれぞれカリウムとして0.1重量部となるよう添加吸着させ、固相重合装置を用いて固相重合させた後、水分を添加し、表1の硫酸相対粘度、水分率のポリアミド610チップを得た。
紡糸装置としては図1の装置を用いた。前記したポリアミド610チップをエクストルーダーへ供給し、計量ポンプにより総繊度が約875dtexになるように吐出量を調整した。紡糸温度は265℃で行い、紡糸パック内にて金属不織布フィルターで濾過したのち、孔数28の紡糸口金を通して紡糸した。紡出糸条は235℃の温度に加熱した加熱筒を通過させたのち風速45m/minの冷却風により冷却固化した。冷却固化した糸条には、含水系処理剤を付与し、紡糸引き取りローラに旋回し糸条を引き取った。引き取られた糸条にはその後、一旦巻き取られることなく引き取りローラ8と給糸ローラ9の間での8%のストレッチをかけ、次いで給糸ローラ9と第1延伸ローラ10の間で該ローラ間の回転速度比が2.7となるように1段目の延伸、続いて第1延伸ローラ10と第2延伸ローラ11の間で該ローラ間の回転速度比が1.25となるように2段目の延伸を行った。続いて、第2延伸ローラ11と第3延伸ローラ12の間で3段目の延伸を行った。
引き続き、第3延伸ローラ12と弛緩ローラ13との間で10%の弛緩熱処理を施し、交絡付与装置にて糸条を交絡処理した後、巻き取り機14にて巻き取った。各ローラの表面温度は、引き取りローラが常温、給糸ローラ55℃、第1延伸ローラ95℃、第2延伸ローラ150℃、第3延伸ローラ205℃、弛緩ローラ140℃となるように設定した。交絡処理は、交絡付与装置内で走行糸条に直角方向から高圧空気を噴射することにより行った。交絡付与装置の前後には走行糸条を規制するガイドを設け、噴射する空気の圧力は0.2MPaで一定とした。
[実施例2]
第1延伸ローラ10と第2延伸ローラ11の間で該ローラ間の回転速度比を1.35に変更した以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
[実施例3]
第1延伸ローラ10と第2延伸ローラ11の間で該ローラ間の回転速度比を1.15に変更した以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
[実施例4]
表1の硫酸相対粘度、水分率のポリアミド610ペレットを用い、計量ポンプにより表1の総繊度になるように吐出量を調整し、紡糸口金の孔数を28に変更した以外は、実施例1と同様の方法で製造した。
[実施例5]
表1の硫酸相対粘度、水分率のポリアミド610ペレットを用い、計量ポンプにより表1の総繊度になるように吐出量を調整し、紡糸口金の孔数を48に変更した以外は、実施例1と同様の方法で製造した。
[比較例1]
表1の硫酸相対粘度、水分率のポリアミド610ペレットを用い、計量ポンプにより表1の総繊度になるように吐出量を調整し、孔数28の紡糸口金を通して紡糸した。紡糸温度は285℃で行い、紡糸パック内にて金属不織布フィルターで濾過したのち、紡出糸条は250℃の温度に加熱した加熱筒を通過させたのち風速40m/minの冷却風により冷却固化した。それ以降の条件は実施例1と同様な方法で製造した。
[比較例2]
液相重合で得られたポリアミド6チップを固相重合装置を用いて固相重合させた後、水分を添加し、表1の硫酸相対粘度、水分率のポリアミド6ペレットを得た。
紡糸装置としては図1の装置を用いた。 前記したポリアミド6チップをエクストルーダーへ供給し、計量ポンプにより総繊度が約940dtexになるように吐出量を調整した。紡糸温度は270℃で行い、紡糸パック内にて金属不織布フィルターで濾過したのち、孔数28の紡糸口金を通して紡糸した。紡出糸条は250℃の温度に加熱した加熱筒を通過させたのち風速45m/minの冷却風により冷却固化した。それ以降の条件は実施例1と同様な方法で製造した。
[比較例3]
液相重合で得られたポリアミド6チップを酸化防止剤として酢酸銅の5重量%水溶液を添加して混合し、ポリマー重量に対し、銅として68ppm添加吸着させた。次に沃化カリウムの50重量%水溶液および臭化カリウムの20重量%水溶液をポリマチップ100重量部に対してそれぞれカリウムとして0.1重量部となるよう添加吸着させ、固相重合装置を用いて固相重合させた後、水分を添加し、表1の硫酸相対粘度、水分率のポリアミド6ペレットを得た。
紡糸装置としては図1の装置を用いた。 前記したポリアミド6チップをエクストルーダーへ供給し、計量ポンプにより総繊度が約1400dtexになるように吐出量を調整した。紡糸温度は285℃で行い、紡糸パック内にて金属不織布フィルターで濾過したのち、孔数204の紡糸口金を通して紡糸した。紡出糸条は290℃の温度に加熱した加熱筒を通過させたのち風速30m/minの冷却風により冷却固化した。それ以降の条件は実施例1と同様な方法で製造した。冷却固化した糸条には、含水系処理剤を付与し、紡糸引き取りローラに旋回し糸条を引き取った。引き取られた糸条にはその後、一旦巻き取られることなく引き取りローラ8と給糸ローラ9の間での9%のストレッチをかけ、次いで給糸ローラ9と第1延伸ローラ10の間で該ローラ間の回転速度比が2.8となるように1段目の延伸、続いて第1延伸ローラ10と第2延伸ローラ11の間で該ローラ間の回転速度比が1.4となるように2段目の延伸を行った。続いて、第2延伸ローラ11と第3延伸ローラ12の間で3段目の延伸を行った。
引き続き、第3延伸ローラ12と弛緩ローラ13との間で8%の弛緩熱処理を施し、交絡付与装置にて糸条を交絡処理した後、巻き取り機14にて巻き取った。この際、引取速度と延伸速度比で表される総合延伸倍率はそれぞれ表1記載の倍率となるように調節した。各ローラの表面温度は、引き取りローラが常温、給糸ローラ45℃、第1延伸ローラ107℃、第2延伸ローラ170℃、第3延伸ローラ197℃、弛緩ローラ144℃となるように設定した。交絡処理は、交絡付与装置内で走行糸条に直角方向から高圧空気を噴射することにより行った。交絡付与装置の前後には走行糸条を規制するガイドを設け、噴射する空気の圧力は0.3MPaで一定とした。
[比較例4]
液相重合で得られたポリアミド66チップを酸化防止剤として酢酸銅の5重量%水溶液を添加して混合し、ポリマー重量に対し、銅として68ppm添加吸着させた。次に沃化カリウムの50重量%水溶液および臭化カリウムの20重量%水溶液をポリマチップ100重量部に対してそれぞれカリウムとして0.1重量部となるよう添加吸着させ、固相重合装置を用いて固相重合させた後、水分を添加し、表1の硫酸相対粘度、水分率のポリアミド66ペレットを得た。
紡糸装置としては図1の装置を用いた。前記したポリアミドチップをエクストルーダーへ供給し、計量ポンプにより総繊度が約1400dtexになるように吐出量を調整した。紡糸温度は295℃で行い、紡糸パック内にて金属不織布フィルターで濾過したのち、孔数204の紡糸口金を通して紡糸した。紡出糸条は280℃の温度に加熱した加熱筒を通過させたのち風速33m/minの冷却風により冷却固化した。冷却固化した糸条には、含水系処理剤を付与し、紡糸引き取りローラに旋回し糸条を引き取った。引き取られた糸条にはその後、一旦巻き取られることなく引き取りローラ8と給糸ローラ9の間での3%のストレッチをかけ、次いで給糸ローラ9と第1延伸ローラ10の間で該ローラ間の回転速度比が2.8となるように1段目の延伸、続いて第1延伸ローラ10と第2延伸ローラ11の間で該ローラ間の回転速度比が1.3となるように2段目の延伸を行った。続いて、第2延伸ローラ11と第3延伸ローラ12の間で3段目の延伸を行った。
引き続き、第3延伸ローラ12と弛緩ローラ13との間で8%の弛緩熱処理を施し、交絡付与装置にて糸条を交絡処理した後、巻き取り機14にて巻き取った。各ローラの表面温度は、引き取りローラが常温、給糸ローラ54℃、第1延伸ローラ140℃、第2延伸ローラ205℃、第3延伸ローラ228℃、弛緩ローラ144℃となるように設定した。交絡処理は、交絡付与装置内で走行糸条に直角方向から高圧空気を噴射することにより行った。交絡付与装置の前後には走行糸条を規制するガイドを設け、噴射する空気の圧力は0.3MPaで一定とした。
1:紡糸口金
2:加熱筒
3:クロスフロー冷却装置
4:冷却風
5:糸条
6:ダクト
7:給油装置
8:引き取りローラ
9:給糸ローラ
10:第1延伸ローラ
11:第2延伸ローラ
12:第3延伸ローラ
13:弛緩ローラ
14:交絡付与装置
15:ワインダー
16:繊維パッケージ

Claims (5)

  1. 吸湿率が2.0%以下であり、吸水時の強力保持率が90%以上であり、初期抱水変化率が20.0%以上であることを特徴とする漁網用ポリアミド610マルチフィラメント。
  2. 総繊度が400〜4000dtex、単繊維繊度が20〜40dtexであることを特徴とする請求項1記載の漁網用ポリアミド610マルチフィラメント。
  3. 硫酸相対粘度が3.3〜3.7であることを特徴とする請求項1または2記載の漁網用ポリアミド610マルチフィラメント。
  4. 強度が6.5〜8.5cN/dtexであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の漁網用ポリアミド610マルチフィラメント。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載の漁網用ポリアミド610マルチフィラメントを用いたことを特徴とする漁網。
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