JP2019147874A - 解体性接着剤組成物、及び被着体の解体方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、構造体の使用中に要求される十分な接着強度を有すると共に、構造体を解体する際には接着層を従来よりも容易に解体できる解体性接着剤組成物を提供すること。【解決手段】本発明の接着剤組成物は、無機物粒子、及び接着硬化性有機樹脂を含有する、熱解体性に優れた特徴を有することに要旨を有する。【選択図】図9

Description

本発明は解体性接着剤組成物、及び該接着剤組成物を介して被着材が接合されている被着体の解体方法に関するものである。
接着剤は従来から構造体を構成する各種部材(以下、被着材ということがある)の接合に用いられている。近年、自動車などの各種産業分野では強度や耐久性が求められる構造体においても被着材の接合に接着剤が使用されている。一方、使用後の構造体は解体して再資源化されるが、その際、接着剤で強固に接合された被着材は分離が難しく、リサイクルする際に問題となっていた。そのため接着剤を介して被着材が接合されている被着体の接合部(以下、接着層ということがある)を必要に応じて解体できる接着剤(以下、解体性接着剤という)の研究開発が行われている。
既知の解体性接着剤としては(1)加熱による軟化を利用した解体性接着剤、(2)加熱により膨張するマイクロカプセルや発泡剤などの熱膨張材を含有した解体性接着剤(例えば特許文献1、2)、(3)接着剤に熱溶融性や熱分解性を付与した解体性接着剤(例えば特許文献3、4)が知られている。
特開2000−204332号公報 特開2002−187973号公報 特開2004−231808号公報 特開2015−196793号公報
上記(1)加熱による軟化を利用した解体性接着剤は熱可塑性樹脂を基材としており、接着層は加熱されると軟化して接着力が低下するため容易に解体できるが、軟化させても冷却すると接着力が復元するため高温下での解体が必要であり、作業安全性に問題があった。また構造体が使用中に高温になると十分な接着強度を確保できなかった。
上記(2)熱膨張材を含有した解体性接着剤は、熱膨張材の膨張開始温度が低いため、構造体が使用中に高温になると十分な接着強度を確保できなかった。そのため接着強度が要求されない仮止めなどでの使用に留まっており、実用性が低かった。
上記(3)熱溶融性や熱分解性を付与した解体性接着剤も接着層の解体には高温環境下での解体作業を要し、また解体に必要な温度に達するまで長時間の加熱が必要となるため被着材が熱劣化するという問題があった。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、構造体の使用中に要求される十分な接着強度を有すると共に、構造体を解体する際には接着層を従来よりも容易に解体できる解体性接着剤組成物を提供することである。また本発明の他の目的は、該接着剤を介して被着材が接合された被着体、及び該被着体の接着層を短時間、且つ容易に解体できる解体方法を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明の接着剤組成物とは、無機物粒子、及び接着硬化性有機樹脂を含有する、熱解体性に優れた特徴を有することに要旨を有する。
本発明の接着剤組成物は、(1)前記無機物粒子が6GHz帯の空胴共振器を用いて室温下で測定した比誘電率εが5〜1000、且つ誘電損率tanδが0.05〜1000であること、(2)前記無機物粒子が炭化ケイ素、炭素、酸化鉄、酸化マンガン、酸化チタン、及び酸化ジルコニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種であること、(3)前記接着剤組成物は、更に前記接着硬化性有機樹脂の硬化剤を含み、且つ前記接着剤組成物に含まれる前記無機物粒子、前記接着硬化性有機樹脂、及び前記硬化剤の合計体積に対して前記無機物粒子の含有量は、30体積%以下であること、(4)前記無機物粒子の平均粒子径が80.0μm以下であることはいずれも好ましい実施態様である。
また本発明の接着剤組成物は、接着硬化性有機樹脂が熱硬化型、二液反応型、湿気硬化型、及び光硬化型よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることも好ましい実施態様である。
本発明には、上記接着剤組成物を介して第1の被着材と第2の被着材とが接合されている被着体も含まれる。また前記被着体を構成する前記第1の被着材、及び前記第2の被着材は、異なる材料であることも好ましい実施態様である。
本発明には、前記被着体にマイクロ波を照射する工程と、前記第1の被着材と前記第2の被着材を分離する工程を含む被着体の解体方法も含まれる。また前記被着体の少なくとも熱伝導率が高い面にマイクロ波透過性を有し、且つ前記被着体よりも熱伝導率が低い無機材を積層させてなる被処理体に、マイクロ波を照射することも好ましい実施態様である。
本発明の接着剤組成物によれば、使用中に要求される十分な接着強度を付与できると共に、必要に応じて接着層を容易に解体できる。また本発明の接着剤組成物を用いた被着体は、本発明の解体方法によって容易に解体できる。
図1はJIS K 6850に基づき実施例で使用した試験片の形状を示す概略図であり、側面図(上)とその平面図(下)を表す。 図2は実施例1のマイクロ波照射前の引張せん断接着強さ試験の結果を示すグラフである。 図3は実施例2のマイクロ波照射による接着力消失までの時間を示すグラフである。 図4は実施例2のマイクロ波照射時間に対する試験片の温度変化を示すグラフである。 図5は実施例1の各試験片の接着層破断面を示す図面代用写真(平面撮影図)である。 図6は実施例2の各試験片の破断面を示す図面代用写真(平面撮影図)である。 図7は実施例1の各試験片の破断面を示す図面代用写真(断面撮影図)である。 図8は実施例2の各試験片の破断面を示す図面代用写真(断面撮影図)である。 図9は実施例3のマイクロ波照射前後の引張せん断接着強さ試験の結果を示すグラフであって、グラフ左側がマイクロ波照射前、グラフ右側がマイクロ波照射後である。 図10は実施例4の試験片の引張せん断接着強さ試験1の結果を示すグラフである。 図11は実施例4の試験片の引張せん断接着強さ試験1の結果を示すグラフである。 図12は実施例4のマイクロ波照射時間に対する試験片の温度変化を示すグラフである。 図13は実施例5の試験片の引張せん断接着強さ試験1の結果を示すグラフであって、グラフ左側がマイクロ波照射前、グラフ右側がマイクロ波照射後である。 図14は実施例5のマイクロ波照射前後の第2の試験片(セラミックス粒子を含まない)の剥離面示す図面代用写真(平面撮影図)である。 図15は実施例5のマイクロ波照射前後の第2の試験片(セラミックス粒子を含む)の剥離面示す図面代用写真(平面撮影図)である。 図16は実施例4のマイクロ波照射前の各試験片の破断面を示す図面代用写真(断面撮影図)である。 図17は実施例4のマイクロ波照射前の各試験片の破断面を示す図面代用写真(断面撮影図)である。
はじめに、本発明に到達した経緯について説明する。
構造材用途に適している接着剤として従来から接着後に硬化する性質を有する有機樹脂(以下、接着硬化性有機樹脂という)が使用されている。接着硬化性有機樹脂は接着強度、及び耐熱性に優れているが、このような特性のため解体が難しかった。接着硬化性有機樹脂は高温に加熱されると接着強度が低下、乃至消失(以下、接着強度が低下、乃至消失する温度を熱分解温度ということがある)して被着物の剥離が可能となるが、このような熱分解温度にまで被着体全体を加熱するには長時間の加熱が必要であり、また加熱時間が長くなる程、被着材が損傷、変質することがある。そこで本発明者らは被着体の接着層を局所的に加熱する手段について検討した。
その結果、接着硬化性有機樹脂を基材とする接着剤に無機物粒子を含有させることで、構造体の使用中に要求される被着材同士の接合に十分な接着強度を確保できること、また解体時はマイクロ波を被着体に照射すれば無機物粒子の温度が急上昇し、該加熱された無機物粒子に起因して接着層の接着強度が大幅に低下、乃至消失し、被着体を容易に解体(以下、熱解体性ということがある)できることを見出し、本発明に至った。
以下、本発明について詳述する。なお、本発明において接着剤組成物とは接着剤が硬化する前の状態であり、硬化した後は接着層という。また接着強度とは実施例記載の測定方法に基づく引張せん断強度をいう。本発明においてマイクロ波照射前の接着層の接着強度は好ましくは5MPa以上、より好ましくは9MPa以上、更に好ましくは10MPa以上、より更に好ましくは15MPa以上である。またマイクロ波照射後の接着層の接着強度は好ましくは4MPa以下、より好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2.5MPa以下、より更に好ましくは2.0MPa以下である。
本発明の熱解体性に優れた特徴を有する接着剤組成物は、無機物粒子、及び接着硬化性有機樹脂を含有する接着剤組成物である点に要旨を有する。
無機物粒子
本発明の接着剤組成物に含まれる無機物粒子とは、すなわち、有機物でない粒子であり、また無機物粒子には金属、及び非金属のいずれも含まれる。また無機物粒子は1種、または2種以上を併用することも可能である。2種以上を併用する場合は任意の無機物粒子の組み合わせでよく、例えば金属系無機物粒子同士、非金属系無機物粒子同士、または金属系無機物粒子と非金属系無機物粒子の組み合わせなど、各種無機物粒子を組み合わせて使用できる。金属系無機物粒子としては特に限定されず、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、銅などの各種非鉄金属、及び鉄、並びにこれらの酸化物などが例示される。また非金属系無機物粒子としても特に限定されず、ケイ素、炭素などであり、シリカなどの酸化物も含まれる。
無機物粒子は解体性を考慮すると、マイクロ波を受けて発熱する性質を有することが望ましい。このような性質を有する無機物粒子はいずれも好ましいが、特に(1)6GHz帯の空胴共振器を用いて室温下で測定した比誘電率εが5〜1000、且つ誘電損率tanδが0.05〜1000である無機物粒子、および/または(2)炭化ケイ素、炭素、酸化鉄、酸化マンガン、酸化チタン、及び酸化ジルコニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の無機物粒子であり、特に無機物を加熱処理した焼結体であるセラミックス粒子が好ましい(以下、無機物粒子はセラミックス粒子に置換可能である)。
(1)6GHz帯の空胴共振器を用いて室温下で測定した比誘電率εが5〜1000、且つ誘電損率tanδが0.05〜1000である無機物粒子
比誘電率及び誘電損率が大きい無機物粒子は、マイクロ波の吸収率が高く、加熱されやすいため解体時にマイクロ波を照射すると短時間で無機物粒子を接着層の熱分解温度まで加熱できるため望ましい。また腐食抑制効果や接着強度なども加味すると無機物粒子は好ましくは比誘電率ε5〜1000、且つ誘電損率tanδ0.05〜1000、より好ましくは比誘電率ε10〜1000、誘電損率tanδ0.1〜1000である。
比誘電率εと誘電損率tanδは、6GHz帯の空胴共振器を用いて室温下で測定した値であり、具体的には試料を挿入したときの共振周波数の変化率が共振器内の蓄積エネルギーの変化率に比例するとし、マクスウェルの方程式から求められる値である。
(2)無機物粒子
無機物粒子としては、炭化ケイ素、炭素、酸化鉄、酸化マンガン、酸化チタン、及び酸化ジルコニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらはセラミックス粒子であり、セラミックス粒子を含有させることで接着強度と解体性を両立できるので好ましい。これらのなかでも加熱された後、周囲の接着層へ熱を移転でき、輻射率に優れている炭化ケイ素がより好ましい。また被着材に金属を使用する場合、電位差による腐食を防ぐためには上記粒子のうち、非金属のものが好ましく、より好ましくは腐食を抑制できる程度の絶縁性を有するものが望ましい。なお、上記粒子に不純物が含まれていると導電性が高くなるため、上記粒子は純度が高いほど好ましく、例えば純度は98.0%以上であることが望ましい。
無機物粒子含有量
無機物粒子自体は接着能力がないため、無機物粒子含有量が増加したり、無機物粒子の粒子径が大きくなるほど、接着剤同士の化学的相互作用力、及び被着材と接着剤との物理的相互作用力が減少して接着強度が低下すると考えられていた。しかしながら無機物粒子を含有させても粒子分散強化によって十分な接着強度が得られることがわかった。一方、無機物粒子を含有させると短時間のマイクロ波照射で接着層の接着強度を減少、乃至消失させることができる。このような効果を十分得るためには無機物粒子の含有率は、接着剤組成物に含まれる無機物粒子、及び接着剤の合計体積を基準とし、該合計体積に対して好ましくは0体積%超、より好ましくは5体積%以上、更に好ましくは10体積%以上、より更に好ましくは15体積%以上である。一方、無機物粒子が多すぎると接着強度が減少し過ぎるため、好ましくは30体積%以下、より好ましくは25体積%以下、更に好ましくは20体積%以下である。本発明において無機物粒子の含有量は、接着硬化性有機樹脂、及びその硬化剤(ただし、硬化剤を含む場合)(以下、接着硬化性有機樹脂組成物ということがある)、及び無機物粒子それぞれの質量を測定し、密度に基づいて体積含有率に換算した値である。
無機物粒子の平均粒子径(以下、粒子径ということがある)
無機物粒子は小さい程、マイクロ波照射によって発熱に寄与する表面積が増大するため好ましいが、小さすぎると凝集しやすくなり接着阻害要因となるおそれがある。したがって無機物粒子の平均粒子径は好ましくは0.02μm以上、より好ましくは0.3μm以上である。一方、無機物粒子が大きくなりすぎると接着強度が低下することがあるため、好ましくは80.0μm以下、より好ましくは1.2μm以下である。本発明において無機物粒子の平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定によって測定し、求めた値である。
無機物粒子の形状
無機物粒子の形状は接着剤と無機物粒子との接触面積、及び接着剤の接着強度確保を考慮すると球形であることが好ましい。球形には長球、扁球などのだ円体、真球体、略真球体が含まれるが、真球度が高い球体が好ましい。
接着硬化性有機樹脂
本発明で使用する接着硬化性有機樹脂は、上記の通り接着後に硬化する性質を有する有機樹脂であればいずれも使用可能である。好ましくは各種公知の熱硬化型、二液反応型、湿気硬化型、及び光硬化型よりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、市販されている各種接着硬化性有機樹脂を使用できる。また各種公知の接着硬化性有機樹脂を1種、又は2種以上を併用できる。熱硬化型とは、加熱することで樹脂に混合した硬化剤が活性化し、硬化する性質を有するものである。二液反応型とは樹脂に硬化剤を添加することで化学反応を起こし硬化する性質を有するものである。湿気硬化型とは、空気中の湿気と反応し硬化する性質を有するものである。光硬化型とは、紫外線などを照射することで重合硬化する性質を有するものである。好ましい接着硬化性有機樹脂としては、アクリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、メラミン樹脂、ユリア樹脂、レゾルシノール樹脂などの熱硬化型が例示される(熱硬化性樹脂ということがある)。好ましくはアクリル樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン樹脂などである。特にエポキシ樹脂は耐熱性、及び接着強度に優れているためより好ましい。以下、エポキシ樹脂を代表例として説明するが、他の接着硬化性有機樹脂についても同様に適用でき、適宜選択して組み合わせることができる。
エポキシ樹脂としては常温で液状のエポキシ化合物が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボリック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが例示される。これらのうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は耐久性に優れているため好ましい。エポキシ樹脂は、1種、又は2種以上を併用してもよい。またエポキシ樹脂と他の接着硬化性有機樹脂とを組み合わせてもよく、エポキシ樹脂と他の接着硬化性有機樹脂の合計質量に対して[エポキシ樹脂:他の接着硬化性有機樹脂]の割合は、好ましくは1:99〜99:1であるが、接着強度を考慮するとより好ましくは50超:50未満〜99:1、更に好ましくは70:30〜99:1、より更に好ましくは90:10〜99:1である。
接着硬化性有機樹脂には必要に応じてその硬化剤を添加してもよい。エポキシ樹脂硬化剤には通常用いられる公知の硬化剤を使用することができる。硬化剤としてはアミン化合物、イソシアネート化合物、イミダゾール、エピクロルヒドリン、カルボン酸、酸無水物、三級アミン化合物、シアナートエステル化合物、ジシアンジアミド、フェノール樹脂、ブレンステッド酸塩、ブロックイソシアネート化合物、ポリアミドアミン化合物、ポリメルカプタン系硬化剤、メラミン樹脂、有機酸ジヒドラジド、ユリア樹脂ルイス酸、潜在性硬化剤などが例示される。これらの中でも常温保管性に優れている有機酸ジヒドラジドが好ましい。硬化剤は1種、又は2種以上を併用してもよい。なお、本発明では一液性エポキシ樹脂、二液性エポキシ樹脂のいずれも用途に応じて採用できるため、接着硬化性有機樹脂には硬化剤が添加された状態、及び硬化剤が未添加の状態のいずれも含まれる。
接着剤組成物中のエポキシ樹脂硬化剤の含有量は、用法にしたがった含有量でよく、限定されないが、少なすぎると未反応のエポキシ基が残り、架橋も十分でないため接着強度が低下することがある。一方、多すぎると過剰の硬化剤が未反応のまま残るため、接着強度が低下する傾向がある。したがってエポキシ樹脂硬化剤の含有量は、化学当量を考慮して、エポキシ樹脂を硬化し得る範囲で適宜調整すればよい。市販されているエポキシ樹脂系熱硬化性接着剤、及びその硬化剤を使用する場合には用法にしたがって硬化剤の含有量を決定すればよい。
本発明の接着剤組成物には、必要に応じて、更に硬化促進剤、稀釈剤、カップリング剤、充填剤、溶剤、可塑剤、増粘剤、改質用樹脂、酸化防止剤、各種安定剤など各種公知の添加剤が含まれていてもよく、これらの含有量も通常の接着剤組成物に含まれる程度でよい。
次に本発明の接着剤組成物の製造方法について説明する。
本発明の接着剤組成物に含まれる接着硬化性有機樹脂は公知の方法で製造されたものを使用できる。また接着硬化性有機樹脂と各種添加剤とを公知の方法で混合した接着剤原料を使用できる。更に本発明では市販されている接着硬化性有機樹脂を使用することもできる。
無機物粒子の製造方法は特に限定されず、各種公知の方法で製造された無機物粒子を使用できる。また粒径等の上記要件に合致する市販の無機物粒子を使用できる。
接着硬化性有機樹脂の接着剤原料と無機物粒子の混合方法は特に限定されないが、無機物粒子が凝集していると接着強度が低下することがあるため、接着剤中の無機物粒子の分散度は高いほどよい。したがって分散度を高めるためにミキサーなどの機械的攪拌手段を使用して無機物粒子を接着剤原料に添加・混合して接着剤組成物を製造することが好ましい。なお、各種添加剤は必要に応じて公知の方法で含有させればよい。本発明の接着剤組成物は、市販されている接着硬化性有機樹脂の接着剤原料と無機物粒子とを混合するだけでよく、簡易な方法で接着剤組成物を製造できる。
本発明には上記接着剤組成物を介して第1の被着材と第2の被着材とが接合されている被着体も含まれる。被着体は被着材の少なくとも一方に接着剤組成物を塗布した後、該塗布箇所に他の被着材を積層させ、接着剤組成物を固化させることで、被着材が接着剤組成物を介して接合された被着体が得られる。接着剤組成物は、自然乾燥、加熱、紫外線照射など各種公知の方法で固化させればよい。
本発明の被着材は特に限定されず、各種産業用構造体で使用される材料を使用できる。被着材としては有機材料、無機材料のいずれでもよく、また金属材料、非金属材料のいずれでもよい。被着材としては繊維強化プラスチック、金属、木材、樹脂、セラミックス、ガラスなどが例示され、これらの中でも高接着強度が求められる材料として汎用されている繊維強化プラスチック、金属が好ましい。繊維強化プラスチックとしてはガラス繊維強化プラスチック(GFRR)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP)、ボロン繊維強化プラスチック(BFRP)、ダイニーマ繊維強化プラスチック(DFRP)、ザイロン強化プラスチック(ZFRP)、ケブラー繊維強化プラスチック(KFRP)、セルロースナノファイバー強化プラスチック(CNFRP)などの各種無機繊維強化プラスチック、有機繊維強化プラスチックが例示される。これらのなかでもガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックが強度及び耐久性の観点から好ましい。金属としてはアルミニウム(合金を含む、他の金属についても同じ)、銅、ニッケル、ステンレス、鉄などが例示、これらの中でも軽量、且つ強度に優れているアルミニウムが好ましい。
また本発明では接着剤組成物で接合される被着材は同一、又は異なる材料であってもよい。したがって上記被着材を適宜組み合わせて、接着剤組成物を介して接合させてもよく、好ましくは繊維強化プラスチック同士、或いは繊維強化プラスチックと異種材料との接合である。具体的に接着剤組成物で接合される被着材は、好ましくは同一の繊維強化プラスチック、異なる繊維強化プラスチック、繊維強化プラスチックと金属である。より好ましい組み合わせはガラス繊維強化プラスチックとガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックと炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチックと炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチックとアルミニウム、炭素繊維強化プラスチックとアルミニウムである。特に炭素繊維強化プラスチックと金属との異材接合を行う場合のように被着材が導電性を有する場合、電位差に起因して金属側被着材が腐食するという問題が生じるが、本発明では上記高絶縁性を有する無機物粒子を接着剤組成物に含有させることで腐食を抑制できる。
被着材の形状は特に限定されず、用途に応じた形状でよい。したがって被着材はシート状に限らず、任意の形状に成型されたものでよく、サイズも限定されない。接着剤組成物を塗布する方法も特に限定されず、各種公知の方法を採用できる。接着剤組成物の塗布量、及び硬化後の接着層の厚みなども特に限定されず、要求特性に応じて調整可能である。
(解体方法)
以下、本発明の解体方法について説明する。
本発明の解体方法は、上記被着体にマイクロ波を照射する工程と、第1の被着材と第2の被着材を分離する工程を含む。本発明の被着体にマイクロ波を照射すると、接着層に含まれる無機物粒子の温度が急激に上昇し、該無機物粒子からの輻射熱によって接着層を構成する熱硬化性接着剤の接着強度を低下乃至消失させることができる。その結果、接着剤と被着物との接着力や接着剤同士の結合力が消失、乃至大きく減少するため、その後、冷却しても第1の被着材と第2の被着材をマイクロ波照射前よりも小さな力で分離できる。特に本発明の接着剤組成物を用いると、マクロ波の照射によって接着層内部からの局所加熱によって接着層の接着強度を低下、乃至消失させることができるため、長時間かけて被着体全体を加熱する必要がなく、また長時間加熱による被着材の損傷も防止できる。
マイクロ波の照射には各種公知のマイクロ波加熱装置を用いることができ、産業用マイクロ波加熱装置、及び電子レンジのような家庭用マイクロ波加熱装置を使用できる。マイクロ波照射条件は特に限定されず、被着体のサイズ、被着材の材質、接着硬化性有機樹脂の種類、及びその使用量、無機物粒子の含有量などを考慮して適宜決定できる。マイクロ波の周波数は300MHz〜3THz、出力は10〜10000Wの範囲で適宜選択することができる。例えばマイクロ波の周波数は法定されている2.45GHzでもよく、出力も500W、600W、900W、1200Wなど予め設定されている範囲から選択してもよい。マイクロ波を被着体に照射する時間は特に限定されず、好ましくは接着層の接着強度を低減、乃至消失させる程度であり、より好ましくは無機物粒子の温度が接着硬化性有機樹脂の熱分解温度以上となる程度である。なお、被着体にマイクロ波を照射する場合は、枚迂路は透過率が高い被着材側に照射することが望ましい。
マイクロ波照射後の被着材の分離方法は特に限定されない。マイクロ波照射直後の接着層は高温であるが、その後、冷却しても該接着層の接着力は回復しないため、被着体の温度を室温まで低下させてから被着材を分離すればよい。本発明ではマイクロ波照射により接着層の接着強度が減少乃至消失し、被着材と接着層との界面剥離、或いは接着層内部の層内破壊による剥離を生じさせることができ、解体に伴う被着材の破損も抑制できる。
本発明では、被着体の少なくとも熱伝導率が高い面、すなわち、第1の被着材、および/または第2の被着材側に、マイクロ波透過性を有し、且つ被着体、すなわち、第1の被着材、および/または第2の被着材よりも熱伝導率が低い無機材を積層させてなる被処理体に、マイクロ波を照射することも好ましい実施態様である。
本発明者らが検討した結果、金属、例えばアルミニウムなど熱伝導率が高い被着材は、マイクロ波を照射しても無機物粒子からの輻射熱がアルミニウムを介して外部に放熱されてしまい接着層の接着強度を十分に低減させることが難しかった。このような場合、マイクロ波透過性を有し、且つ該被着材よりも熱伝導率が低い無機材を使用することが有効である。上記したように被着体の少なくとも熱伝導率が高い面に無機材を積層させてマイクロ波を照射すると上記放熱が抑制されて接着層の接着強度を十分に低減できる。無機材としては各種公知の断熱性を有する無機材を使用でき、特にマイクロ波透過性に優れた特性を有するグラスウール、セラミック板、セラミックスファイバー、耐火煉瓦、不定形耐火物、耐熱性樹脂繊維などが好ましい。
無機材はシート状が好ましいが、形状は特に限定されず、積層面の形状に合わせればよい。また無機材のサイズも上記断熱効果が得られるように適宜選択すればよい。
無機材を使用する場合は、被着材からの放熱を抑制できる使用形態であれば特に限定されない。例えば被着体がガラス繊維強化プラスチックなどのように熱伝導率が低い被着材と、アルミニウムなどのように熱伝導率が高い被着材との異材接合体である場合、熱伝導率が高い被着材側の少なくとも一部、好ましくは全部に無機材を積層させることで放熱を抑制できる。勿論、被着体全体を無機材で包含することも好ましい実施態様である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(実施例1)
接着剤組成物を介して被着材を接合させた被着体を作製し、これを試験片として引張せん断強度を測定した。
[接着剤組成物]
二液性エポキシ樹脂接着剤(ハンツマンジャパン社製、Araldite20011)に無機物粒子としてセラミックス粒子(FUJIMI社製、製品名:GC30000、球状粉末、平均粒径0.3μm、炭化ケイ素粒子(SiC)) を混合して接着剤組成物を作製した。具体的にはエポキシ樹脂主剤50質量部、硬化剤50質量部を混合してエポキシ樹脂組成物(100質量部)を得た。接着剤組成物に含まれるエポキシ樹脂組成物、及びセラミックス粒子の合計体積に対してセラミックス粒子含有量(体積%)がそれぞれ10体積%(No.1−1)、20体積%(No.1−2)、30体積%(No.1−3)となるようにエポキシ樹脂組成物とセラミックス粒子をミキサー(シンキー社製、AR−100:2000rpm) に充填して5分間攪拌した後、5分間脱泡して混合して接着剤組成物No.1−1〜1−3を製造した。またセラミックス粒子を添加せず、エポキシ樹脂組成物のみの接着剤組成物No.1−4(セラミックス粒子=0体積%)を作製した。
[被着材]
ガラス繊維強化複合材料([0/90]s)を使用した。JIS K 6850に準拠してガラス繊維強化複合材料を長さ100mm、幅25mm、厚さ1mmに裁断して被着材とした。
[試験片]
第1の被着材の端部から12mmまでの部分に接着剤組成物を塗布した後、該塗布箇所に第2の被着材の端部から12mmまでを重ねて図1に示す被着体を作製し、接着剤組成物No.1−1〜1−4に対応させて試験片No.1−1〜No.1−4とした。試験片は、室温(23℃)で24時間硬化させた後、更に恒温乾燥機で80℃に加熱して30分間保持して接着剤組成物を硬化させた。なお、室温で24時間硬化させている間は、被着材の上部に20kgfの等分布荷重を加えた。硬化後の接着層の厚みはいずれも約0.10mmであった。
[引張せん断接着強さ試験1(常温接着強度)]
JIS K 6850に基づいて試験片の引張せん断接着強さ試験を行った。引張圧縮試験機(島津製作所社製、EHF−ED10−20L)に試験片長手方向の両端部を挟持させて室温(23℃)下、引張負荷速度1mm/minで最大せん断応力を測定した。試験は各3回行い、その平均値を採用した。結果を図2に示す。また試験片の破断面をマイクロスコープ(キーエンス社製、VW−6000)で撮影し、図5、7に示した。
図2に示すように、セラミックス粒子を多く含む試験片程、引張強さが線形的に減少する傾向がみられた。この結果から、セラミックス粒子を多く含有する程、接着層の伸びが減少して被着材と接着層との界面強度が減少し、引張せん断強度が低下したと考えられる。そのため、セラミックス粒子を30体積%含む試験片No.1−3の引張せん断強度が低くなった。
図5(a)〜(c)、図7(a)〜(c)に示すように試験片No.1−1、1−2、1−4は、接着層に被着材が多く付着しており、被着材の損傷を伴う破断であった。一方、図5(d)、図7(d)に示すように試験片No.1−3は、接着層に被着材が付着しておらず、接着層内部の破断であったが、これは接着強度が低いために生じたものである。すなわち、セラミックス粒子の含有量が多く、接着層内部の結合力が低いため、被着材よりも接着層が破壊され易い状態であったためであると考えられる。
(実施例2)
接着剤組成物を介して被着材を接合させた被着体を作製し、これを試験片としてマイクロ波照射後の接着強度を測定した。
[試験片]
実施例1の各接着剤組成物、及び被着材を用いて試験片No.1−1〜1−4と同様にして試験片を作製した(試験片No.2−1〜2−4)。試験片はそれぞれ3体ずつを作製した(第1の試験片〜第3の試験片)。
[引張せん断接着強さ試験2(マイクロ波照射後接着強度)]
マイクロ波照射前後の試験片の温度を非接触赤外線放射温度計(キーエンス社製、FT−H20)で計測した。第1の試験片にマイクロ波を照射した後、温度を再測定し、その後、最大せん断応力を測定した。具体的にはマイクロ波発生装置(MOASTORE社製、JM17BGZ01)の中心部に試験片の長手方向が手前から奥になるように配置(なお、配置面は非回転である)してマイクロ波(周波数2.45GHz、500W)を30秒間照射し、試験片の温度を非接触赤外線放射温度計で計測した。試験片を放置して常温まで冷却した後、接着層の接着力が消失、具体的には一方の被着材の端部を上に持ち上げることにより剥離できるか確認し、被着材が剥離できる程度になるまで上記マイクロ波照射を繰り返した。該剥離時間を測定した後、第2の試験片、第3の試験片を用いて当該剥離時間までマイクロ波を連続照射して被着材が剥離することを確認し、接着力消失時間として図3に示した。また30秒毎に測定した温度を図4に示した。更に試験片の破断面を実施例1と同様にしてマイクロスコープで撮影して図6、8に示した。なお、試験片No.2−4はマイクロ波を5分間照射しても接着力が消失しなかったため撮影を行わなかった。
図3、図4より、試験片No.2−4はマイクロ波を照射しても温度が200℃を超えていないことから短時間では接着力が消失する温度まで十分に加熱できてなかったことが分かる。一方、セラミックス粒子を含有させた試験片No.2−1〜2−3はマイクロ波照射によって短時間で接着力が消失する温度まで加熱できた。特にセラミックス粒子を多く含む試験片程、温度上昇速度が速く、短時間で接着力が消失していることが分かる。なお、セラミックス粒子を30体積%含む試験片No.2−3よりも20体積%含む試験片No.2−2の方が短時間で接着力が消失しているが、これは試験片No.2−3はセラミックス粒子を多く含むことによって接着層全体が加熱され、そのため接着剤の架橋反応が促進されて接着力が一時的に高まったためであると考えられる。
図6(a)〜(c)、図8(a)〜(c)に示す様に試験片No.2−1〜2−3の各破断面は接着層内部での破断であった。また破断面の接着剤層を観察したところセラミックス粒子含有量が多くなる程、接着層内の空隙が多く観察できた。これはマイクロ波照射によって加熱されたセラミックス粒子近傍の接着層に形成されたものであり、該空隙の形成によって接着強度が大幅に低下、乃至消失したものと考えられる。
(実施例3)
セラミックス粒子の粒径を変えた接着剤組成物を介して被着材を接合させた被着体を作製し、これを試験片としてマイクロ波照射前後の接着強度について測定した。
[接着剤組成物]
平均粒径が0.02μm(No.3−1)、0.3μm(No.3−2)、1.2μm(No.3−3)、80.0μm(No.3−4)のセラミック粒子が5体積%濃度となるように混合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物を作製した。なお、セラミックス粒子を含まない接着剤組成物(No.3−5)も実施例1と同様にして作製した。
[被着材]
実施例1と同様にして作製した被着材を使用した。
[試験片]
実施例1と同様にして図1に示す被着体を作製し、接着剤組成物No.3−1〜3−5に対応して試験片No.3−1〜3−5とした。
[引張せん断接着強さ試験(常温接着強度)]
JIS K 6850に基づいて試験片の引張せん断接着強さ試験を行った。引張圧縮試験機(島津製作所社製、EHF−ED10−20L)に試験片長手方向の両端部を挟持させて室温(23℃)下、引張負荷速度1mm/minで最大せん断応力を測定した。試験は各3回行い、その平均値を採用した。結果を図9に示す。また図示しないが実施例1と同様にしてマイクロスコープで破断面の撮影を行った。
[引張せん断接着強さ試験(マイクロ波照射後接着強度)]
マイクロ波照射時間を4分間に変更した以外は実施例2と同様にしてマイクロ波照射後の試験片No.3−1〜3−5の引張せん断接着強さ試験を行って最大せん断応力を測定し、結果を図9に示した。また図示しないが実施例1と同様にしてマイクロスコープで破断面の撮影を行った。
図9に示す様にセラミックス粒子を含有させた試験片No.3−1〜3−4はセラミックス粒子を含まない試験片No.3−5よりも接着強度が低かったが、いずれも10MPa以上の十分な接着強度を有しており、特に試験片No.3−2〜3−4は15MPa以上のより高い接着強度を有していた。この結果から試験片No.3−1はセラミックス粒子の粒子径が小さいため接着面積が減少して接着強度が低下したが、試験片No.3−2〜3−4は粒子分散強化により接着強度の低下が抑制されたと考えられる。一方、試験片No.3−1〜3−4のマイクロ波照射後の接着強度はいずれも5MPa以下に低下しているが、セラミックス粒子の粒子径が大きくなるほど接着強度は低下しており、特に試験片No.3−2〜3−4は3MPa以下となっていた。
なお、図示しないが各試験片の破断面を調べた結果、セラミックス粒子径の変化による破断箇所の違いはなく、No.3−1〜3−4では被着材内部での破断は生じていなかった。一方、試験片No.3−5では被着材内部での破断が生じており、被着材が損傷していた。
(実施例4)
接着剤組成物を介して異なる被着材を接合させた被着体の接着強度等を測定した。
[接着剤組成物]
実施例1と同様にセラミックス粒子の含有量を変化させて作製した接着剤組成物No.1−1〜1−4を接着剤組成物No.4−1〜4−4とした。また実施例3と同様にセラミックス粒子の粒子径を変化させて作製した接着剤組成物No.3−1〜3−5を接着剤組成物No.5−1〜5−5とした。
[被着材]
第1の被着材として実施例1のガラス繊維強化複合材料を使用し、第2の被着材としてアルミフラットバー(A6063)を使用した。
[試験片]
実施例1と同様にして図1に示す形状の試験片を作製し、接着剤組成物No.4−1〜4−4に対応して試験片No.4−1〜4−4、及び接着剤組成物No.5−1〜5−5に対応して試験片No.5−1〜5−5とした。
[引張せん断接着強さ試験(常温接着強度)]
試験片No.4−1〜4−4、試験片No.5−1〜5−5について、実施例1と同様にして各試験片の最大せん断応力を測定した。結果を図10、図11に示す。
また断面写真を図16、17に示す。
図10に示すように異材接合した試験片では、セラミックス粒子を含有させた試験片No.4−1〜4−3の接着強度の減少がセラミックス粒子を含まない試験片No.4−4と比べて抑えられており、いずれも10MPa以上の高接着強度を有していた。異材接合の場合、セラミックス粒子の粒子径が大きくなるほど、接着強度が減少する傾向を示していることから、粒径が増大したことに伴う接着面積の減少が影響していると考えられる。
図11に示す様にセラミックス粒子の粒子径を変化させても接着強度への影響はほとんどなく、セラミックス粒子を含まない試験片No.5−5と同等の接着強度を示した。セラミックス粒子の粒子径を変化させても粒子分散強度への影響がほとんどないと考えられる。なお、試験片No.5−1(粒子径0.02μm)の接着強度が高い理由は粒子分散強度よりもアルミニウムと接着剤との接着性が良好であることに基づくと考えられる。
各試験片の破断面を実施例1と同様にしてマイクロスコープで撮影した。セラミックス粒子を含まない接着層(図16(a))の接着層破断面は、セラミックス粒子を含む接着層(図16(b)〜(d))と比べて平滑になっている。これはセラミックス粒子を含む接着層のように粒子分散強化による凹凸(図16(b)〜(d))が形成されなかったためと考えられる。またセラミックス粒子の含有量が多い程、第1の被着材の付着量が少ない接着層内での破断となっているが、これはセラミックス粒子の含有量に伴って接着剤として機能する接着面積が減少して接着層内での接着強度が減少したためであると考えられる。
また粒子径が小さいセラミックス粒子を含む試験片No.5−1(図17(a))では接着層が被着材から浮いたような状態となっており、被着材表面における接着剤のアンカー効果低いことがわかる。このことからセラミックス粒子の粒径が小さいと、接着剤の粘性が高くなってアンカー効果が十分に得られず、接着強度も低くなると考えられる。
[マイクロ波照射後の温度変化測定]
試験片No.5−1、及び試験片No.5−5に対して実施例2と同様にしてマイクロ波を照射し、30秒毎に温度を測定した。マイクロ波照射時間は15分とした。結果を図12に示す。なお、第1の被着材側を上面にして被着体を設置した。
図12に示すように試験片はいずれもマイクロ波の照射時間が5〜6分の間で約100℃に達した後、ほぼ一定の温度を保っていた。マイクロ波照射後に試験片の接着強度を調べたが、いずれもマイクロ波照射前と同等であり、接着強度は殆ど低下していなかった。したがって異材接合の場合は接着強度を低減させるためにマイクロ波照射時間を長くする必要があると考えられる。その理由は、アルミニウム(Al)など熱伝導率が高い被着材は、マイクロ波を照射してもセラミックス粒子からの発熱が被着材を介して外部に放熱されやすく、接着層の温度上昇の阻害要因になっているためと考えられる。したがって熱伝導率が高い被着材を用いる場合は、マイクロ波での解体をする場合は、接着層の加熱に時間がかかることが分かる。
(実施例5)
接着剤組成物を介して2種類の被着材を接合させた被着体にグラスウールを積層させた被処理体にマイクロ波を照射し、接着強度等を測定した。
[接着剤組成物]
平均粒子径0.3μmのセラミックス粒子を10体積%含有させた以外は実施例1と同様にして接着剤組成物No.6−1を作製した。またセラミックス粒子を含まない実施例1の接着剤組成物を接着剤組成物No.6−2とした。
[被着材]
実施例4と同じ第1の被着材、第2の被着材を使用した。
[試験片]
実施例1と同様にして図1に示す形状の試験片を作製し、接着剤組成物No.6−1、6−2に対応して試験片No.6−1、6−2とした。
[引張せん断接着強さ試験(常温接着強度)]
実施例3と同様にして引張せん断接着強さ試験を行って最大せん断応力を測定し、結果を図13に示した。またせん断後の第2の試験片(Al)の接着層側の表面を写真撮影し(図14)、接着剤等の付着状態を調べた。
[引張せん断接着強さ試験(マイクロ波照射後接着強度)]
試験片をグラスウール(日本板硝子社製硝子綿(マイクロガラスZ−SW−19))を用いて試験片の約2割程度厚みとなるように包み込んでグラスウールに被覆された試験片を作製した。マイクロ波照射時間を15分とした以外は、実施例3と同様にして該試験片にマイクロ波を照射し、マイクロ波照射後の試験片の引張せん断接着強さ試験を行って最大せん断応力を測定した。結果を図13に示す。またせん断後の第2の試験片(Al)の接着層側の表面を写真撮影し(図15)、接着剤等の付着状態を調べた。
図13に示す様にセラミックス粒子を含まない試験片No.6−2はグラスウールで被覆してもマイクロ波照射前後で接着強度に変化は見られなかったが、セラミックス粒子を含む試験片No.6−1はマイクロ波を照射した結果、グラスウールで試験片を被覆乃至積層させることで熱伝導率が高い被着材に対しても接着強度を減少乃至消失させることができた。なお、マイクロ波照射後の試験片No.6−1はマイクロ波照射装置から取り出す際に試験片が剥離したことから、接着強度が消失したと判断し、最大せん断応力を0とした。
図14(a)、図15(a)はマイクロ波照射前の試験片No.6−2の第2の被着材(Al)の写真であるが、第1の被着材の付着量が多く、いずれも第1の被着材の内部破壊が生じていた。一方、図14(b)はマイクロ波照射後の試験片No.6−1の第2の被着材(Al)の写真であるが、破断面から第1の被着材の内部破壊であることが分かる。一方、図15(b)に示す様にマイクロ波照射後の試験片No.6−1の第2の被着材(Al)には接着層が殆ど付着しておらず、第2の被着材と接着層の界面で剥離できたことがわかる。

Claims (10)

  1. 無機物粒子、及び接着硬化性有機樹脂を含有する、熱解体性に優れた特徴を有する接着剤組成物。
  2. 前記無機物粒子は、6GHz帯の空胴共振器を用いて室温下で測定した比誘電率εが5〜1000、且つ誘電損率tanδが0.05〜1000である請求項1に記載の接着剤組成物。
  3. 前記無機物粒子は、炭化ケイ素、炭素、酸化鉄、酸化マンガン、酸化チタン、及び酸化ジルコニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の接着剤組成物。
  4. 前記接着剤組成物は、更に前記接着硬化性有機樹脂の硬化剤を含み、且つ前記接着剤組成物に含まれる前記無機物粒子、前記接着硬化性有機樹脂、及び前記硬化剤の合計体積に対して前記無機物粒子の含有量は、30体積%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
  5. 前記無機物粒子の平均粒子径は、80.0μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。
  6. 前記接着硬化性有機樹脂は熱硬化型、二液反応型、湿気硬化型、及び光硬化型よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の接着剤組成物を介して第1の被着材と第2の被着材とが接合されている被着体。
  8. 前記被着体を構成する前記第1の被着材、及び前記第2の被着材は、異なる材料である請求項7に記載の被着体。
  9. 請求項7または8に記載の前記被着体の解体方法であって、
    前記被着体にマイクロ波を照射する工程と、前記第1の被着材と前記第2の被着材を分離する工程を含む被着体の解体方法。
  10. 前記被着体の少なくとも熱伝導率が高い面にマイクロ波透過性を有し、且つ前記被着体よりも熱伝導率が低い無機材を積層させてなる被処理体に、マイクロ波を照射する請求項9に記載の被着体の解体方法。
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