JP2019147727A - 強化ガラス及び強化用ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】ガラス組成中にP2O5を含み、イオン交換速度が速く、耐酸性が良好であり、しかも分相し難い強化ガラス及び強化用ガラスを創案する。【解決手段】本発明の強化ガラスは、表面に圧縮応力層を有する強化ガラスであって、ガラス組成として、質量%で、SiO240〜70%、Al2O310〜30%、B2O30〜3%、Na2O 5〜25%、K2O 1〜5.5%、MgO 0.1〜5.5%、P2O52〜10%を含有し、0.41×[SiO2]+2.17×[Al2O3]−5.28×[B2O3]−0.54×[Na2O]−0.04×[K2O]−3.29×[MgO]+5.09×[P2O5]で表されるX値が70以上であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、強化ガラス及び強化用ガラスに関し、特に携帯電話、PDA(携帯端末)等のカバーガラスに好適な強化ガラス及び強化用ガラスに関する。
携帯電話、デジタルカメラ、PDA、タッチパネルディスプレイ、大型テレビ、非接触給電等のデバイスは、益々普及する傾向にある。
これらの用途には、イオン交換処理された強化ガラスが用いられている(特許文献1、非特許文献1参照)。
また、近年では、デジタルサイネージ、マウス、スマートフォン等の外装部品に強化ガラスを使用することが増えてきた。
強化ガラスの主な要求特性として、(1)高い機械的強度、(2)高い耐傷性、(3)軽量、(4)低コスト等が挙げられる。特に、スマートフォンの用途では、薄型化を実現しつつ、落下衝撃強度が高いことが要求されている。
特開2006−83045号公報 国際公開第2015/031188号パンフレット
泉谷徹郎等、「新しいガラスとその物性」、初版、株式会社経営システム研究所、1984年8月20日、p.451−498
落下衝撃強度を高める方法として、強化ガラスの応力深さを大きくすることが有効である。
しかし、従来の強化ガラスについて、応力深さを増加させようとすると、イオン交換時間が極端に長くなり、生産効率が大幅に低下してしまう。
そこで、特許文献2には、イオン交換速度を高めるために、ガラス組成中にPを含む強化用ガラス(P含有ガラス)が提案されている。しかし、このP含有ガラスは、耐酸性が低いという問題がある。更に、このP含有ガラスは、生産時に高温に曝されると、分相により白濁が発生して、視認性が低下し易くなる。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その技術的課題は、ガラス組成中にPを含み、イオン交換速度が速く、耐酸性が良好であり、しかも分相し難い強化ガラス及び強化用ガラスを創案することである。
本発明者は、種々の検討を行った結果、ガラス組成を厳密に規制することにより、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明の強化ガラスは、表面に圧縮応力層を有する強化ガラスであって、ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜70%、Al 10〜30%、B 0〜3%、NaO 5〜25%、KO 1〜5.5%、MgO 0.1〜5.5%、P 2〜10%を含有し、0.41×[SiO]+2.17×[Al]−5.28×[B]−0.54×[NaO]−0.04×[KO]−3.29×[MgO]+5.09×[P]で表されるX値が70以上であることを特徴とする。ここで、[SiO]はSiOの含有量(質量%)、[Al]はAlの含有量(質量%)、[B]はBの含有量(質量%)、[NaO]はNaOの含有量(質量%)、[KO]はKOの含有量(質量%)、[MgO]はMgOの含有量(質量%)、[P]はPの含有量(質量%)をそれぞれ表している。
また、本発明の強化ガラスは、ガラス組成として、質量%でSiO 40〜70%、Al 10〜30%、B 0〜3%、NaO 7〜20%、KO 1.5〜5.5%、MgO 0.5〜5.5%、P 2〜8%を含有することが好ましい。
また、本発明の強化ガラスは、ガラス組成として、質量%でSiO 45〜65%、Al 15〜25%、B 0〜2%、NaO 10〜18%、KO 2〜5%、MgO 1〜4%、P 2〜7%を含有することが好ましい。
また、本発明の強化ガラスは、−5.40×[SiO]+9.69×[Al]+18.08×[B]+2.87×[NaO]+18.25×[KO]−5.79×[MgO]−2.89×[P]で表されるY値が30以下であることが好ましい。
また、本発明の強化ガラスは、ビッカース硬度値が630以上であることが好ましい。ここで、「ビッカース硬度」は、JIS Z2244−1992に準拠すると共に、ビッカース硬度計にて100gfの荷重でビッカース圧子を押し込むことで測定した値であり、測定10回の平均値である。
また、本発明の強化ガラスは、携帯電話のカバーガラスに用いることが好ましい。
本発明の強化用ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜70%、Al 10〜30%、B 0〜3%、NaO 5〜25%、KO 1〜5.5%、MgO 0.1%〜5.5%、P 2〜10%を含有し、0.41×[SiO]+2.17×[Al]−5.28×[B]−0.54×[NaO]−0.04×[KO]−3.29×[MgO]+5.09×[P]で表されるX値が70以上であることを特徴とする。
また、本発明の強化用ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜60%、Al 13〜26%、B 0〜1.8%、NaO 8〜25%、KO 0.01〜5.5%、MgO 0%〜5.5%、P 2.1〜8.5%、CaO+SrO+BaO 0〜2.5%を含有し、0.41×[SiO]+2.17×[Al]−5.28×[B]−0.54×[NaO]−0.04×[KO]−3.29×[MgO]+5.09×[P]で表されるX値が70以上であることを特徴とする。ここで、「CaO+SrO+BaO」は、CaO、SrO及びBaOの合量を指す。
また、本発明の強化用ガラスは、分相発生粘度が105.5dPa・s以上であることが好ましい。ここで、「分相発生粘度」は、分相発生温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。「分相発生温度」は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、温度勾配炉中に24時間保持した後、白金ボートを取り出し、ガラス内部に分相による白濁が視認された最も高い温度を指す。
本発明の強化ガラス(強化用ガラス)は、ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜70%、Al 10〜30%、B 0〜3%、NaO 5〜25%、KO 0.01〜5.5%、MgO 0〜5.5%、P 2〜10%を含有し、0.41×[SiO]+2.17×[Al]−5.28×[B]−0.54×[NaO]−0.04×[KO]−3.29×[MgO]+5.09×[P]で表されるX値が70以上であることを特徴とする。本発明の強化ガラス(強化用ガラス)において、各成分の含有範囲を限定した理由を下記に示す。なお、各成分の含有範囲の説明において、%表示は、特に断りがない限り、質量%を指す。
SiOは、ガラスのネットワークを形成する成分である。SiOの含有量が少な過ぎると、ガラス化し難くなり、また耐酸性が低下し易くなる。よってSiOの好適な下限範囲は40%以上、40.5%以上、41%以上、41.5%以上、42%以上、42.5%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、特に50%以上である。一方、SiOの含有量が多過ぎると、溶融性や成形性が低下し易くなり、また熱膨張係数が低くなり過ぎて、周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。よってSiOの好適な上限範囲は70%以下、68%以下、65%以下、62%以下、60%以下、58%以下、57%以下、56%以下、55%以下、特に54%以下である。
Alは、イオン交換速度を高める成分であり、またヤング率を高めてビッカース硬度を高める成分である。更に分相発生粘度を高める成分である。Alの含有量は10〜30%である。Alの含有量が少な過ぎると、イオン交換速度やヤング率が低下し易くなる。よって、Alの好適な下限範囲は10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、14.5%以上、15%以上、15.5%以上、16%以上、16.5%以上、17%以上、17.5%以上、18%以上、18.5%以上、19%以上、特に19.5%以上である。一方、Alの含有量が多過ぎると、ガラスに失透結晶が析出し易くなって、オーバーフローダウンドロー法等で板状成形し難くなる。特に、成形体耐火物としてアルミナ耐火物を用いて、オーバーフローダウンドロー法で板状成形する場合、アルミナ耐火物との界面にスピネルの失透結晶が析出し易くなる。また耐酸性も低下し、酸処理工程に適用し難くなる。更には高温粘性が高くなり、溶融性が低下し易くなる。よって、Alの好適な上限範囲は30%以下、28%以下、26%以下、25%以下、24%以下、23.5%以下、23%以下、22.5%以下、22%以下、21.5%以下、特に21%以下である。
は、高温粘度や密度を低下させると共に、耐失透性を高める成分である。しかし、Bの含有量が多過ぎると、イオン交換速度(特に応力深さ)が低下し易くなる。またイオン交換によって、ヤケと呼ばれるガラス表面の着色が発生したり、耐酸性や耐水性が低下し易くなる。よって、Bの好適な範囲は0〜3%、0〜2.5%、0〜2%、0〜1.9%、0〜1.8%、0〜1.7%、0〜1.6%、0〜1.5%、0〜1.3%、特に0〜1%未満である。
NaOは、イオン交換成分であり、また高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。また、NaOは、耐失透性、成形体耐火物、特にアルミナ耐火物との反応失透性を改善する成分でもある。NaOの含有量が少な過ぎると、溶融性が低下したり、熱膨張係数が低下し過ぎたり、イオン交換速度が低下し易くなる。よって、NaOの好適な下限範囲は5%以上、7%以上、8%以上、8.5%以上、9%以上、9.5%以上、10%以上、11%以上、12%以上、特に12.5%以上である。一方、NaOの含有量が多過ぎると、分相発生粘度が低下し易くなる。また耐酸性が低下したり、ガラス組成の成分バランスを欠き、かえって耐失透性が低下する場合がある。よって、NaOの好適な上限範囲は25%以下、22%以下、20%以下、19.5%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16.5%以下、16%以下、15.5%以下、特に15%以下である。
Oは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。更に耐失透性を改善したり、ビッカース硬度を高める成分でもある。しかし、KOの含有量が多過ぎると、分相発生粘度が低下し易くなる。また耐酸性が低下したり、ガラス組成の成分バランスを欠き、かえって耐失透性が低下する傾向がある。よって、KOの好適な下限範囲は0.01%以上、0.02%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上、1.5%以上、2%以上、2.5%以上、3%以上、特に3.5%以上であり、好適な上限範囲は5.5%以下、5%以下、特に4.5%未満である。
MgOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。また、ヤング率を高めてビッカース硬度を高めたり、耐酸性を高める成分でもある。よって、MgOの好適な下限範囲は0%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上、1.5%以上、特に2%以上である。しかし、MgOの含有量が多過ぎると、イオン交換速度が低下し易くなり、またガラスが失透し易くなる傾向がある。特に、成形体耐火物としてアルミナ耐火物を用いて、オーバーフローダウンドロー法で板状成形する場合、アルミナ耐火物との界面にスピネルの失透結晶が析出し易くなる。よって、MgOの好適な上限範囲は5.5%以下、4.5%以下、4%以下、3.5%以下、3%以下、特に2.5%以下である。
は、圧縮応力値を維持した上で、イオン交換速度を高める成分である。よって、Pの好適な下限範囲は2%以上、2.1%以上、2.5%以上、3%以上、4%以上、特に4.5%以上である。しかし、Pの含有量が多過ぎると、ガラスに分相による白濁が生じたり、耐水性が低下し易くなる。よって、Pの好適な上限範囲は10%以下、8.5%以下、8%以下、7.5%以下、7%以下、6.5%以下、6.3%以下、6%以下、5.9%以下、5.7%以下、5.5%以下、5.3%以下、5.1%以下、特に5%以下である。
上記X値は、イオン交換速度と強い相関があり、X値が大きい程、イオン交換速度が速くなる。X値の好適な範囲は70以上、70.5以上、71以上、71.5以上、72以上、72.5以上、73〜90、74〜87、特に75〜85である。
上記Y値は、耐酸性と強い相関があり、Y値が小さい程、耐酸性が向上する。Y値の好適な範囲は30以下、27以下、25以下、23以下、20以下、17以下、15以下、特に−15〜10である。
質量比KO/Pは、好ましくは0.7〜1.3、特に0.75〜1.25である。また、KO−Pは、好ましくは−2〜2、−1.5〜1.5、特に−1〜1である。このようにすれば、イオン交換速度と耐酸性を同時に高め易くなる。なお、「KO/P」は、KOの含有量をPの含有量で除した値を指す。「KO−P」は、KOの含有量(質量%)からPの含有量(質量%)を減じた値を指す。
上記成分以外にも、例えば以下の成分を添加してもよい。
LiOは、イオン交換成分であり、また高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。更にヤング率を高める成分である。またLiOは、イオン交換処理時に溶出して、イオン交換溶液を劣化させる成分である。よって、LiOの好適な含有量は0〜2%、0〜1.7%、0〜1.5%、0〜1%、0〜1%未満、0〜0.5%、0〜0.3%、0〜0.1%、特に0〜0.05%である。
CaOは、他の成分と比較して、耐失透性の低下を伴うことなく、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める効果が大きい成分である。しかし、CaOの含有量が多過ぎると、イオン交換速度が低下したり、イオン交換溶液を劣化させ易くなる。よって、CaOの好適な含有量は0〜6%、0〜5%、0〜4%、0〜3.5%、0〜3%、0〜2%、0〜1%、特に0〜0.5%である。
SrOとBaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分であるが、それらの含有量が多過ぎると、イオン交換速度が低下したり、密度や熱膨張係数が高くなったり、ガラスが失透し易くなる。よって、SrOとBaOの好適な含有量は、それぞれ0〜2%、0〜1.5%、0〜1%、0〜0.5%、0〜0.1%、特に0〜0.1%未満である。
CaO、SrO及びBaOの合量は、好ましくは0〜5%、0〜2.5%、0〜2%、0〜1.5%、0〜1%、0〜0.5%、0〜0.1%、特に0〜0.1%未満である。CaO、SrO及びBaOの合量が多過ぎると、イオン交換速度が低下し易くなる。
ZnOは、イオン交換速度を高める成分であり、特に圧縮応力値を高める効果が大きい成分である。また低温粘性を低下させずに、高温粘性を低下させる成分である。しかし、ZnOの含有量が多過ぎると、ガラスが分相したり、耐失透性が低下したり、密度が高くなったり、応力深さが小さくなる傾向がある。よって、ZnOの好適な含有量は0〜6%、0〜3%、特に0〜1%である。
TiOは、イオン交換速度を高める成分であり、また高温粘度を低下させる成分であるが、その含有量が多過ぎると、ガラスが着色したり、失透し易くなる。よって、TiOの含有量は0〜4.5%、0〜1%未満、0〜0.5%、特に0〜0.3%が好ましい。
ZrOは、イオン交換速度を顕著に高める成分であると共に、液相粘度付近の粘性や歪点を高める成分であるが、その含有量が多過ぎると、耐失透性が著しく低下する虞があり、また密度が高くなり過ぎる虞もある。よって、ZrOの好適な含有量は0〜5%、0〜4%、0〜3%、0〜2%、特に0〜1%未満である。
清澄剤として、SnO、SO、Cl、CeOの群(好ましくはSnO、SO、Clの群)から選択された一種又は二種以上を導入することが好ましい。SnO+SO+Clの好適な含有量は0.01〜3%、0.05〜3%、0.1〜3%、特に0.2〜3%である。なお、「SnO+SO+Cl」は、SnO、SO及びClの合量である。
Feは原料からの不純物成分であるが、人間の目に悪影響のある紫外光を吸収する成分である。しかし、Feの含有量が多過ぎると、ガラスの着色が強まる。よって、Feの好適な含有量は1000ppm(0.1%)未満、800ppm未満、600ppm未満、400ppm未満、300ppm未満、250ppm未満、200ppm未満、150ppm未満、特に100ppm未満である。
Nd、La等の希土類酸化物は、ヤング率を高める成分である。しかし、原料自体のコストが高く、また多量に添加すると、耐失透性が低下し易くなる。よって、希土類酸化物の好適な含有量は3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%以下である。
環境的配慮から、ガラス組成中に実質的にAs、Sb、PbO、F、Biを含有しないことが好ましい。「実質的に〜を含有しない」とは、ガラス成分として積極的に明示の成分を添加しないものの、不純物量レベルの混入を許容する趣旨であり、具体的には、明示の成分の含有量が0.05%未満の場合を指す。
本発明の強化ガラス(強化用ガラス)は、例えば、下記の特性を有することが好ましい。
密度は、好ましくは2.6g/cm以下、2.55g/cm以下、2.50g/cm以下、2.48g/cm以下、特に2.46g/cm以下である。密度が低い程、強化ガラスを軽量化することができる。
熱膨張係数は、好ましくは65〜115×10−7/℃、75〜115×10−7/℃、90〜110×10−7/℃、特に95〜105×10−7/℃である。熱膨張係数を上記範囲に規制すれば、ガラスが熱衝撃によって破損し難くなるため、イオン交換処理前の予熱やイオン交換処理後の除冷に要する時間を短縮することができる。結果として、強化ガラスの製造コストを低廉化することができる。また、金属、有機系接着剤等の周辺部材の熱膨張係数に整合させ易くなり、周辺部材の剥離を防止することができる。ここで、「熱膨張係数」は、ディラトメーターを用いて、30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数を測定した値を指す。
歪点は、好ましくは550℃以上、580℃以上、590℃以上、600℃以上、610℃以上、615℃以上、特に620℃以上である。歪点が高い程、KNO溶融塩の温度変化によってイオン交換特性が変化し難くなる。特に薄型化しても、面内のイオン交換特性を厳密に制御し易くなる。
高温粘度104.0dPa・sにおける温度は1400℃以下が好ましい。高温粘度104.0dPa・sにおける温度が低い程、成形設備への負担が軽減されて、成形設備が長寿命化し、結果として、強化ガラスの製造コストを低廉化し易くなる。なお、「104.0dPa・sにおける温度」は、例えば、白金球引き上げ法で測定可能である。
高温粘度102.5dPa・sにおける温度は、好ましくは1650℃以下、1620℃以下、特に1600℃以下である。高温粘度102.5dPa・sにおける温度が低い程、低温溶融が可能になり、溶融窯等のガラス製造設備への負担が軽減されると共に、泡品位を高め易くなる。よって、高温粘度102.5dPa・sにおける温度が低い程、強化ガラスの製造コストを低廉化し易くなる。なお、「102.5dPa・sにおける温度」は、例えば、白金球引き上げ法で測定可能である。
高温粘度104.0dPa・s、102.5dPa・sにおける温度は、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、B、ZnO、TiOを増量したり、SiO、Alを減量すると、低下し易くなる。
ビッカース硬度は、好ましくは630以上、640以上、650以上、660以上、670以上、675以上、680以上、685以上、特に690以上が好ましい。ビッカース硬度が低過ぎると、耐傷性が低下し易くなる。なお、ビッカース硬度は、Al、MgOの増量により上昇し易くなる。
分相発生粘度は、好ましくは104.0dPa・s以上、104.4dPa・s以上、104.8dPa・s以上、105.0dPa・s以上、105.3dPa・s以上、特に105.5dPa・s以上である。分相発生粘度が低過ぎると、オーバーフローダウンドロー法で板状成形し難くなる。
80℃、5質量%の塩酸に24時間振盪しながら浸漬させた時のガラスの表面積当たりの質量減少量は、好ましくは30mg/cm以下、25mg/cm以下、20mg/cm以下、15mg/cm以下、特に10mg/cm以下である。上記質量減少量が大き過ぎると、デバイスの酸処理工程でガラスが劣化し易くなる。
本発明の強化ガラスは、表面に圧縮応力層を有している。圧縮応力層の圧縮応力値は、好ましくは300MPa以上、400MPa以上、500MPa以上、600MPa以上、700MPa以上、800MPa以上、900MPa以上、特に950MPa以上である。圧縮応力値が大きい程、強化ガラスの機械的強度が高くなる。一方、表面に極端に大きな圧縮応力が形成されると、強化ガラスに内在する引っ張り応力が極端に高くなり、イオン交換処理前後の寸法変化が大きくなる虞がある。よって、圧縮応力層の圧縮応力値は1500MPa以下、1300MPa以下、1200MPa以下、特に1100MPa以下が好ましい。
応力深さは、好ましくは50μm以上、55μm以上、60μm以上、65μm以上、70μm以上、75μm以上、特に80μm以上である。応力深さが大きい程、強化ガラスに深い傷が付いても、強化ガラスが割れ難くなると共に、機械的強度のバラツキが小さくなる。一方、応力深さが大きい程、イオン交換処理前後で寸法変化が大きくなり易い。よって、応力深さは、好ましくは120μm以下、115μm以下、特に110μm以下である。
内部の引っ張り応力値は、好ましくは150MPa以下、140MPa以下、130MPa以下、120PMa以下、110MPa以下、100MPa以下、90MPa以下、80MPa以下、特に70MPa以下である。内部の引っ張り応力値が高過ぎると、物理的衝突等により、強化ガラスが自己破壊し易くなる。一方、内部の引っ張り応力値が低過ぎると、強化ガラスの機械的強度を確保し難くなる。内部の引っ張り応力値は、好ましくは5MPa以上、15MPa以上、20MPa以上、25MPa以上、特に30MPa以上である。なお、内部の引っ張り応力は下記の数式1で計算可能である。
[数1]
内部の引っ張り応力値=(圧縮応力値×応力深さ)/(板厚−2×応力深さ)
本発明の強化用ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜70%、Al 10〜30%、B 0〜3%、NaO 5〜25%、KO 1〜5.5%、MgO 0.1%〜5.5%、P 2〜10%を含有し、0.41×[SiO]+2.17×[Al]−5.28×[B]−0.54×[NaO]−0.04×[KO]−3.29×[MgO]+5.09×[P]で表されるX値が70以上であることを特徴とし、また質量%で、SiO 40〜60%、Al 13〜26%、B 0〜1.8%、NaO 8〜25%、KO 0.01〜5.5%、MgO 0%〜5.5%、P 2.1〜8.5%、CaO+SrO+BaO 0〜2.5%を含有し、X値が70以上であることを特徴とする。本発明の強化用ガラスの技術的特徴は、本発明の強化ガラスと共通しており、ここでは詳細な説明を省略する。
本発明の強化用ガラスは以下のようにして作製することができる。まず所望のガラス組成になるように調合したガラス原料を連続溶融炉に投入して、1500〜1700℃で加熱溶融し、清澄した後、溶融ガラスを成形装置に供給した上で板状成形し、冷却することが好ましい。板状成形した後に、所定寸法に切断加工する方法は、周知の方法を採用することができる。
溶融ガラスの成形時に、溶融ガラスの徐冷点から歪点の間の温度域を3℃/分以上、且つ1000℃/分未満の冷却速度で冷却することが好ましく、その冷却速度は、好ましくは10℃/分以上、20℃/分以上、30℃/分以上、特に50℃/分以上であり、好ましくは1000℃/分未満、500℃/分未満、特に300℃/分未満である。冷却速度を速過ぎると、ガラスの構造が粗になり、イオン交換処理後にビッカース硬度を高めることが困難になる。一方、冷却速度が遅過ぎると、強化用ガラスの生産効率が低下してしまう。なお、溶融ガラスを板状成形した後に、強化用ガラスに対して、別途加熱し、上記冷却速度で冷却する工程を設けてもよい。
溶融ガラスを板状成形する方法として、オーバーフローダウンドロー法を採用することが好ましい。オーバーフローダウンドロー法は、高品位なガラス板を大量に作製し得ると共に、大型のガラス板も容易に作製し得る方法である。更に、オーバーフローダウンドロー法では、成形体耐火物として、アルミナやジルコニアが使用されるが、本発明の強化用ガラス板は、アルミナやジルコニア、特にアルミナとの適合性が良好であるため、これらの成形体と反応して泡やブツ等を発生させ難い。
オーバーフローダウンドロー法以外にも、種々の成形方法を採用することができる。例えば、フロート法、ダウンドロー法(スロットダウンドロー法、リドロー法等)、ロールアウト法、プレス法等の成形方法を採用することができる。
本発明の強化ガラスは、強化用ガラスをイオン交換処理することにより作製される。イオン交換処理の条件は、特に限定されず、ガラスの粘度特性、用途、厚み、内部の引っ張り応力、寸法変化等を考慮して最適な条件を選択すればよい。特に、KNO溶融塩中のKイオンをガラス中のNa成分とイオン交換すると、表面の圧縮応力層を効率良く形成することができる。
イオン交換処理の回数は特に限定されず、一回だけ行ってもよく、複数回行ってもよい。イオン交換処理を複数回行う場合、イオン交換処理の回数は2回が好ましい。このようにすれば、応力深さを増加させつつ、ガラス内部に蓄積する引っ張り応力の総量を低減することができる。
以下、実施例に基づいて、本発明を説明する。なお、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
表1、2は、本発明の実施例(試料No.1〜34)と比較例(試料No.35)を示している。
次のようにして表中の各試料を作製した。まず表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合し、白金ポットを用いて1580℃で8時間溶融した。その後、得られた溶融ガラスをカーボン板の上に流し出して、平板形状に成形、徐冷した。得られたガラス板について、種々の特性を評価した。その結果を表1、2に示す。
密度は、周知のアルキメデス法によって測定した値である。
熱膨張係数αは、ディラトメーターを用いて、30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数を測定した値である。
歪点Ps、徐冷点Taは、ASTM C336の方法に基づいて測定した値である。
高温粘度104.0dPa・s、103.0dPa・s、102.5dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。
分相発生粘度は、分相発生温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。分相発生温度は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、温度勾配炉中に24時間保持した後、白金ボートを取り出し、ガラス内部に分相による白濁が視認された最も高い温度を指す。
耐酸性試験は、測定試料として、表面を光学研磨された板状試料を用い、80℃、5質量%の塩酸に24時間振盪しながら浸漬させた後、試験前後の質量減少を測定し、その質量減少量をガラスの表面積で除することにより評価したものである。
次に、各試料の両表面に光学研磨を施し、板厚0.8mmとした後、430℃のKNO溶融塩中に4時間浸漬することにより、イオン交換処理を行った。イオン交換処理後に各試料の表面を洗浄した。続いて、表面応力計(折原製作所社製FSM−6000)を用いて観察される干渉縞の本数とその間隔から表面の圧縮応力層の圧縮応力値と応力深さを算出した。算出に当たり、各試料の屈折率を1.50、光学弾性定数を30[(nm/cm)/MPa]とした。なお、イオン交換処理前後で、ガラスの表層におけるガラス組成が微視的に異なるものの、ガラス全体として見た場合は、ガラス組成が実質的に相違しない。
ビッカース硬度は、JIS Z2244−1992に準拠すると共に、測定試料として、上記イオン交換処理後の試料を用い、ビッカース硬度計にて100gfの荷重でビッカース圧子を押し込むことで測定した値であり、測定10回の平均値である。
表1、2から明らかなように、試料No.1〜34は、応力深さが69.4μm以上であるため、イオン交換速度が速く、耐酸性試験における質量減少が12.6mg/cm以下であり、しかも分相発生粘度が105.6dPa・s以上であるため、オーバーフローダウンドロー法で板状成形し易いものと考えられる。一方、試料No.27は、X値が小さいため、応力深さが62.3μmであり、イオン交換速度が遅いと考えられる。
本発明の強化ガラス及び強化用ガラスは、携帯電話、デジタルカメラ、PDA等のカバーガラス、或いはタッチパネルディスプレイ等のガラス基板として好適である。また、本発明の強化ガラス及び強化用ガラスは、これらの用途以外にも、高い機械的強度が要求される用途、例えば窓ガラス、磁気ディスク用基板、フラットパネルディスプレイ用基板、太陽電池用カバーガラス、固体撮像素子用カバーガラス、食器への応用が期待できる。

Claims (9)

  1. 表面に圧縮応力層を有する強化ガラスであって、
    ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜70%、Al 10〜30%、B 0〜3%、NaO 5〜25%、KO 1〜5.5%、MgO 0.1〜5.5%、P 2〜10%を含有し、
    0.41×[SiO]+2.17×[Al]−5.28×[B]−0.54×[NaO]−0.04×[KO]−3.29×[MgO]+5.09×[P]で表されるX値が70以上であることを特徴とする強化ガラス。
  2. ガラス組成として、質量%でSiO 40〜70%、Al 10〜30%、B 0〜3%、NaO 7〜20%、KO 1.5〜5.5%、MgO 0.5〜5.5%、P 2〜8%を含有することを特徴とする請求項1に記載の強化ガラス。
  3. ガラス組成として、質量%でSiO 45〜65%、Al 15〜25%、B 0〜2%、NaO 10〜18%、KO 2〜5%、MgO 1〜4%、P 2〜7%を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の強化ガラス。
  4. −5.40×[SiO]+9.69×[Al]+18.08×[B]+2.87×[NaO]+18.25×[KO]−5.79×[MgO]−2.89×[P]で表されるY値が30以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の強化ガラス。
  5. ビッカース硬度値が630以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の強化ガラス。
  6. 携帯電話のカバーガラスに用いることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の強化ガラス。
  7. ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜70%、Al 10〜30%、B 0〜3%、NaO 5〜25%、KO 1〜5.5%、MgO 0.1%〜5.5%、P 2〜10%を含有し、
    0.41×[SiO]+2.17×[Al]−5.28×[B]−0.54×[NaO]−0.04×[KO]−3.29×[MgO]+5.09×[P]で表されるX値が70以上であることを特徴とする強化用ガラス。
  8. ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜60%、Al 13〜26%、B 0〜1.8%、NaO 8〜25%、KO 0.01〜5.5%、MgO 0%〜5.5%、P 2.1〜8.5%、CaO+SrO+BaO 0〜2.5%を含有し、
    0.41×[SiO]+2.17×[Al]−5.28×[B]−0.54×[NaO]−0.04×[KO]−3.29×[MgO]+5.09×[P]で表されるX値が70以上であることを特徴とする強化用ガラス。
  9. 分相発生粘度が105.5dPa・s以上であることを特徴とする請求項7又は8に記載の強化用ガラス。
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