JP2019138971A - 反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスク - Google Patents
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Description
本発明の一実施形態による反射型フォトマスクブランク1は、EUV光を反射し、反射光を転写用試料に照射する反射型フォトマスクを形成するためのフォトマスクブランクである。
図1に示すように、本実施形態による反射型フォトマスクブランク1は、基板11と、基板11上に形成されて入射した光を反射する反射層13とを備えている。また、反射型フォトマスクブランク1は、単層構造を有し膜厚が16nm以上45nm以下の酸化テルル(TeO)膜15aを有し反射層13上に積層されて入射した光を吸収する吸収層15を備えている。本実施形態では、吸収層15に設けられた酸化テルル膜15aは、単層構造を有しているが、複数の酸化テルル膜が積層された積層構造を有していてもよい。この場合、積層される複数の酸化テルル膜は、テルル(Te)に対する酸素(O)の原子数比が異なっていてもよい。
吸収層は、ドライエッチングされて所定の露光転写パターンである吸収層パターンが形成された後に、反射型フォトマスクに照射されたEUV光を吸収する層である。吸収層は、課題となる射影効果を低減するために薄く形成される必要がある。反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクに備えられる吸収層の形成材料として従来一般に使用されているTa(タンタル)は、単に薄く形成された場合、EUV光の吸収性が充分でなく、吸収層の領域における反射率が高くなってしまう。このため、吸収層の薄膜化とEUV光の光吸収性を同時に達成する為には、既存の吸収層材料よりもEUV光に対して高い光吸収性を有する材料が必要である。
図3は、各金属材料のEUV光の波長における光学定数を示すグラフである。図3の横軸は屈折率nを示し、縦軸は消衰係数kを示している。図3に示すように、消衰係数kの高い材料には、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、テルル(Te)、インジウム(In)などが存在する。これらの金属材料の消衰係数は、0.07から0.08の範囲にあり、従来の吸収層の形成材料であるTaの消衰係数0.041に対して約2倍と大幅に大きい。このため、これらの金属材料によって形成される吸収層は、高い光吸収性が可能となる。しかしながら、これらの金属材料は、元素のハロゲン化物の揮発性が低くドライエッチング性が悪いという問題を有している。このため、これらの金属材料で形成された吸収層を備える反射型フォトマスクブランクを作製したとしても、この吸収層に吸収層パターンをパターニングできず、その結果、この反射型フォトマスクブランクを反射型フォトマスクに加工が出来ないという問題が生じる。あるいは、これらの金属材料の融点が低いために反射型フォトマスク作製時やEUV露光時の熱に耐えられず、実用性に乏しい反射型フォトマスクとなってしまうという問題が生じる。
上述の欠点を回避するため、本発明の反射型フォトマスクブランクおよび反射型フォトマスクの吸収層は、テルルの酸化物であるTeO膜を有している。Te単体では、融点が450℃付近であり、熱的安定性と洗浄耐性に問題がある。一方、TeO膜の融点は、700℃以上に出来る。これにより、TeO膜は、反射型フォトマスク作製時やEUV露光時の熱に充分な耐性を持つ。さらに、TeO膜は、TeとOとの化学結合により化学的にも安定であるため、反射型フォトマスク作製時や使用前後に用いられる酸性の洗浄液やアルカリ性の洗浄液に対して充分な耐性を有する。
本発明の一実施形態による反射型フォトマスクブランクおよび反射型フォトマスクに備えられた吸収層のTeO膜は、Teに対する酸素の原子数比(O/Te比)が1.0以上3.0以下の膜である。TeOは、O/Te比が1.0〜3.0においては、EUV光に対する光学定数(消衰係数、屈折率)がTe単体と比べてほとんど変化しないため、Te単体と同様の光吸収性を維持できる。一方、O/Te比が1.0未満になると、洗浄耐性が悪くなる。さらに、後述の実施例において説明するが、O/Te比が3.0を超えるTeO膜を形成することができないことが確認できた。
図4は、EUV光の波長におけるEUV光反射率に関し、TeO膜を有する吸収層と、従来のTa膜を有する吸収層とを比較したグラフである。図4の横軸は吸収層の膜厚(nm)を示し、縦軸はEUV光反射率(%)を示している。また、図5は、マスクの基本性能を示す光学濃度(Optical Density:OD)の値に関し、TeO膜を有する吸収層と、Ta膜を有する吸収層とを比較したグラフである。図5の横軸は吸収層の膜厚(nm)を示し、縦軸はOD値を示している。EUV光反射率及びOD値は、TeO膜の光学定数(屈折率nが0.963、消衰係数kが0.072)を基に算出されている。
OD=−log(Ra/Rm)・・・(1)
次に、射影効果の影響を評価するために、Ta膜とTeO膜のそれぞれで、膜厚を変更したときに、HVバイアス値がどのように変化するかをシミュレーションにより比較した。図6は、このHVバイアス値のシミュレーション結果を示すグラフである。図6の横軸は、反射型フォトマスクに設けられた吸収層の膜厚(nm)を示し、縦軸は、HVバイアス値(nm)を示している。
射影効果の影響は、NILS(Normalized Image Log Slope)と呼ばれるパターンコントラストにも現れる。NILSは転写パターンの光強度分布から得られる明部と暗部の傾きを示す特性値である。NILSの値が大きい方が、パターン転写性が良い。TaとTeOのそれぞれの吸収層材料の光学定数を用いて、計算によりNILSを評価した結果を図8に示している。図8の横軸は、吸収層の膜厚(nm)を示し、縦軸はNILSを示している。図8の、「TeO−X」はTeO膜における転写パターンのX方向(V方向の線幅の方向)のNILSを示し、「TeO−Y」はTeO膜における転写パターンのY方向(H方向の線幅の方向)のNILSを示し、「Ta−X」はTa膜における転写パターンのX方向のNILSを示し、「Ta−Y」はTa膜における転写パターンのY方向のNILSを示している。
図8に示すように、膜厚が16nm以上32nm以下のTeO膜であれば、Y方向のNILSを、最高値を含み相対的に高い値に出来る。膜厚が16nm以上32nm以下のTeO膜におけるY方向のNILSは、シミュレーションを行った膜厚が14〜70nmの範囲のTa膜におけるY方向のNILS以上である。さらに、膜厚が32nmより厚く45nm以下の範囲のTeO膜は、OD値が2となる膜厚70nmのTa膜よりもY方向のNILSを高く出来る。
本発明の一実施態様の反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクは、膜厚が16nm以上32nm以下(図8に「OD=1〜2の範囲」として表された範囲)のTeO膜を含む吸収層を有していてもよい。これにより、本実施形態による反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクは、膜厚が16nm以上32nm以下のTeO膜を含まない吸収層を有する反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクと比較して、射影効果の影響を小さくできるため、Y方向のNILSを高くできる。
本実施形態による反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクの吸収層に備えられるTeO膜は、テルル(Te)と酸素(O)とで80%以上の原子数比を占める化合物材料を含む膜であり、残り20%は他の材料が混ざっていても良い。これは、TeO膜に占めるテルル及び酸素の割合が80%未満の場合、TeO膜が持つEUV光の吸収性が低下してしまうためである。これに対し、TeO膜に占めるテルル及び酸素の割合が80%以上であれば、TeO膜が持つEUV光の吸収性の低下はごく僅かである。これにより、テルル(Te)と酸素(O)とで80%以上の原子数比を占める化合物材料を含むTeO膜は、EUVマスクの吸収層としての性能の低下を防止できる。
本発明の一実施形態による反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクは、上述の式(1)によって規定されるOD値が1以上であってもよい。OD値が1未満のTeO膜(膜厚16nm未満)で、露光シミュレーションを行ったところ、吸収層と多層反射層のコントラストが足りず、半導体基板や半導体ウェハに転写パターンが形成されにくいことが判明した。よってパターンが形成できたとしてもラインエッジラフネスの悪化が想定される。Ta膜の場合も同様であることが判明した。
図9に示すように、例えば合成石英などの低熱膨張特性を有する基板11の上に、シリコン(Si)とモリブデン(Mo)を一対とする積層膜131が40対(合計の膜厚が280nm)積層されて形成された多層反射膜13aを形成する。なお、図9では、理解を容易にするため、多層反射膜13aは、3対の積層膜131で図示されている。次に、多層反射膜13aの上にルテニウム(Ru)で形成されたキャッピング膜13bを膜厚が2.5nmとなるように成膜した。これにより、基板11上には、多層反射膜13a及びキャッピング膜13bを有する反射層13が形成される。キャッピング膜13bの上に酸化テルルを成膜して酸化テルル膜15aを有する吸収層15を形成し、反射型フォトマスクブランク3を作製した。反射型フォトマスクブランク3は、サンプルブランクとして複数個、作製した。基板11上へのそれぞれの膜の成膜は、スパッタリング装置を用いた。酸化テルル膜15a中の酸素含有量は、スパッタリング中にチャンバーに導入する酸素の量で制御した。当該酸素量の制御は、酸化テルル膜15aの形成時の反応性スパッタリング法において実施した。各サンプルの膜厚は透過電子顕微鏡によって測定し、O/Te比はXPS(X線光電子分光測定法)によって測定し、それぞれ確認した。
上記のO/Te比のTe膜およびTeO膜について、反射層13領域の反射率Rmと、吸収層15領域の反射率Raを、EUV光による反射率測定装置で測定した。その測定結果から、マスク特性であるOD値を計算した結果、表1に示すように、反射型フォトマスクブランク3の全てのサンプルブランクは概ねOD値が2と1に作製できていることが分かった。このことからも、O/Te比が1.0以上3.0以下の範囲の膜組成であれば、酸化テルル膜15aを有する吸収層15は、テルル単体のテルル膜を有する吸収層と同じ膜厚で同等のマスク特性(EUV反射率及びこのEUV反射率から計算されるOD値)が得られることが分かる。
比較例として従来品に用いられる既存膜であるTa膜についても、反射型フォトマスクブランク3と同様の方法で反射型フォトマスクブランクのサンプルブランクを作製した。OD値が2又は1を達成するために、Ta膜の膜厚は、70nmと40nmの膜厚で作製された。Ta膜がこの膜厚で作製された反射型フォトマスクブランクのサンプルブランクをEUV光による反射率測定装置で測定した結果、OD値は、狙い通りに2付近と1付近であることが確認された。
図10に示すように、本発明の一実施形態の実施例による反射型フォトマスク4は、図9に示す反射型フォトマスクブランク3の吸収層15に吸収層パターン151が形成された構成を有している。
次いで、上記の手順で作製した本実施例による反射型フォトマスク4のサンプルマスクを用いて、EUV光露光装置(NXE3300B:ASML社製)で、EUV用ポジ型化学増幅レジストを塗布した半導体ウェハ(不図示)上に反射型フォトマスク4のサンプルマスクで反射した反射光によって、パターンを転写露光し、レジストに転写パターンを形成し、電子線寸法測定機により転写パターンの観察、線幅測定及びラインエッジラフネス(Line Edge Roughness:LER)測定を実施した。ラインエッジラフネスは、転写パターンの側面のガタツキである。ラインエッジラフネスの測定結果は、表1の「LER」欄に示されている。
半導体ウェハに形成されたレジストパターンからリソグラフィ特性を確認した。表1の「リソグラフィ特性」欄に示すように、本実施例では、確認したリソグラフィ特性は、上述のラインエッジラフネス、HVバイアス及び解像性である。転写パターンのX方向の寸法と、射影効果の影響を受ける転写パターンのY方向との寸法を測定し、これらの寸法の差を算出してHVバイアス値を確認した。その結果、表1に示すように、薄膜化による射影効果の低減効果が見られた。具体的に、OD値が2付近において、HVバイアス値は、Te膜では膜厚30nmで3.1nmであり、TeO1.0では膜厚31nmで3.3nmであり、TeO2.0膜では膜厚31nmで3.6nmであり、TeO2.5膜では膜厚31nmで3.7nmであり、TeO3.0膜では膜厚32nmで3.8nmである。Te膜及びTeO膜を有する吸収層を備える場合のHVバイアス値は、比較例としてのTa膜を有する吸収層を備える場合のHVバイアス値の70nm膜厚で11.1nmと比較して大幅に改善していることを確認した。また、表1に示すように、OD値が1においては、Te膜では16nm膜厚で1.5nm、TeO1.0膜では16nm膜厚で1.7nm、TeO2.0膜では17nm膜厚で1.8nm、TeO2.5膜では17nm膜厚で1.8nm、そしてTeO3.0膜では17nm膜厚で1.8nmと、既存膜であるTa膜の40nm膜厚で3.5nmより良好な結果が得られた。
転写パターンのラインエッジラフネス(LER)を確認した。表1に示すように、Ta膜の膜厚が70nmの反射型フォトマスクで形成した転写パターンは未解像によりラインエッジラフネスを計測することができなかった。また、Ta膜の膜厚が40nmの反射型フォトマスクで形成した転写パターンは、ラインエッジラフネスが4.2nmであった。反射型フォトマスク4では、Te膜及びTeO膜の膜厚によらず、転写パターンのラインエッジラフネスが3.8nm以下と良好であることを確認した。
ウェハ転写評価後に反射型フォトマスク4の硫酸過水洗浄およびアンモニア過水洗浄に対する耐性評価を行った。Te膜は、硫酸過水により溶解してしまい、吸収層パターン151が消失してしまった。これにより、Te膜を有する吸収層を備えた反射型フォトマスクは、洗浄耐性が無いことを確認した。TeO膜を有する吸収層を備えた反射型フォトマスク4は、O/Te比によらずにいずれも、硫酸過水の洗浄において吸収層パターンが問題なく残っていた。以上より、酸化テルルであれば、膜特性として安定しており、洗浄耐性も向上していることが確認できた。
吸収層を構成する酸化テルル膜の膜厚が16nmから32nmの範囲では、ラインエッジラフネス及びY方向のNILSが優れるとともに、OD値が同レベルでのHVバイアスが向上する。ここで、OD値の同レベルとは、所定のOD値(本例では、1又は2)に対して±0.2の範囲をいう。具体的には、表1に示すように、吸収層を構成する酸化テルル膜の膜厚が16nmから32nmの範囲では、ラインエッジラフネスが3.6nmから3.8nm、かつY方向のNILSが0.7から0.9となる。このように、酸化テルル膜の膜厚が当該範囲では、ラインエッジラフネス及びY方向のNILSの両方の数値が良好である点において、Ta膜よりも優れている。また、吸収層を構成する酸化テルル膜の膜厚が16nmから32nmの範囲であって、かつOD値が1と同レベルの場合には、HVバイアスが1.7nm又は1.8nmとなり、OD値が1.1のTa膜のHVバイアス3.5nmより向上している。さらに、吸収層を構成する酸化テルル膜の膜厚が16nmから32nmの範囲であって、かつOD値が2と同レベルの場合には、HVバイアスが3.3nmから3.8nmとなり、OD値が1.8のTa膜のHVバイアス11.1nmより向上している。
吸収層15が有する酸化テルル膜の膜厚の評価を行うために、O/Te比が2.0の酸化テルル膜の膜厚を12nmから50nmの範囲で変更させた反射型フォトマスクブランク3及び反射型フォトマスク4を作製し、リソグラフィ特性及び洗浄耐性を評価した。表2には、この評価結果が示されている。
2,4 反射型フォトマスク
11 基板
13 反射層
13a 多層反射膜
13b キャッピング膜
15 吸収層
15a 酸化テルル膜
31 裏面導電層
131 積層膜
151 吸収層パターン
R15 レジストマスク
R15a ポジ型化学増幅レジスト
R151 レジストパターン
Claims (7)
- 基板と、
前記基板上に形成されて入射した光を反射する反射層と、
単層構造又は積層構造を有し膜厚が16nm以上45nm以下の酸化テルル膜を有し、前記反射層上に積層されて入射した光を吸収する吸収層と
を備えることを特徴とする反射型フォトマスクブランク。 - 前記酸化テルル膜の膜厚は、16nm以上32nm以下であること
を特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。 - 前記酸化テルル膜は、テルルに対する酸素の原子数比が1.0以上3.0以下の膜であること
を特徴とする請求項1又は2に記載の反射型フォトマスクブランク。 - 前記酸化テルル膜は、テルル及び酸素で80%以上の原子数比を占める化合物材料を含むこと
を特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の反射型フォトマスクブランク。 - 前記反射層からの反射光の強度をRmとし、前記吸収層からの反射光の強度をRaとし、前記反射層及び前記吸収層に基づく光学濃度をODとすると、前記光学濃度は、以下の式(1)で規定され、かつ値が1以上であること
を特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の反射型フォトマスクブランク。
OD=−log(Ra/Rm) ・・・(1) - 前記反射層は、多層反射膜と、前記多層反射膜上に形成されたキャッピング膜とを含むこと
を特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載の反射型フォトマスクブランク。 - 基板と、
前記基板上に形成されて入射した光を反射する反射層と、
単層構造又は積層構造を有し膜厚が16nm以上45nm以下であって所定パターンが形成された酸化テルル膜を有し、前記反射層上に積層されて入射した光を吸収する吸収層と
を備えることを特徴とする反射型フォトマスク。
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