JP2019137586A - セメント組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
高炉スラグの含有率の大きい、セメントを含む混合材の製造方法として、特許文献1には、5〜30重量部のセメントと、0〜20重量部のシリカフュームと、0〜50重量部のフライアッシュと、42〜75重量部の高炉スラグと、を混合して100重量部の混合材を製造することを特徴とする混合材の製造方法が記載されている。
そこで、本発明の目的は、高炉スラグ粉末を多く含む(例えば、30〜75質量%)場合であっても、強度発現性(特に、材齢28日)、及び流動性に優れたセメント組成物を提供することである。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[4]を提供するものである。
[2] 上記普通ポルトランドセメントクリンカー粉末は、水硬率(H.M.)が2.00〜2.20で、かつ、ケイ酸率(S.M.)が2.40を超え、2.60以下のものである前記[1]に記載のセメント組成物。
[3] セメント組成物中の塩素の含有率が、0.02質量%未満である前記[1]又は[2]に記載のセメント組成物。
[4] 前記[1]〜[3]のいずれかに記載のセメント組成物と、水を含む水硬性組成物。
なお、本明細書において、セメント組成物とは、水、骨材及び減水剤を含まないセメント含有粉末またはそれに由来する物(水を含む混練物中の上記粉末の由来物、または、その硬化物)をいう。また、水硬性組成物とは、セメント組成物と水を含む硬化性組成物であって、水硬性組成物の硬化前の形態および硬化後の形態を包含するものである。水硬性組成物の例としては、ペースト、モルタル、及びコンクリートが挙げられる。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)普通ポルトランドセメントクリンカー粉末
本発明で使用する普通ポルトランドセメントクリンカー粉末(以下、単に「セメントクリンカー」ともいう。)は、普通ポルトランドセメントクリンカーを粉砕することによって得ることができる。セメントクリンカーの鉄率(I.M.)は、1.88〜2.00、好ましくは1.90〜1.99、より好ましくは1.91〜1.98である。鉄率が1.88未満であると、セメント組成物の強度発現性が低下する。鉄率が2.00を超えると、セメント組成物の流動性が低下する。
セメントクリンカーのケイ酸率(S.M.)は、セメントクリンカーの製造の容易性や、セメント組成物の流動性及び強度発現性の観点から、好ましくは2.40を超え、2.60以下、より好ましくは2.44〜2.58、特に好ましくは2.48〜2.55である。
また、セメントクリンカーの、ボーグ式を用いて算出した2CaO・SiO2(ビーライト;以下、「C2S」ともいう。)の含有率は、セメント組成物の流動性、強度発現性の観点から、好ましくは20.0〜24.0質量%、より好ましくは20.5〜23.5質量%、特に好ましくは21.0〜23.0質量%である。
また、セメントクリンカーの、ボーグ式を用いて算出した3CaO・Al2O3(アルミネート相;以下、「C3A」ともいう。)の含有率は、セメント組成物の流動性や強度発現性の観点から、好ましくは8.5〜10.0質量%、より好ましくは8.7〜9.8質量%、特に好ましくは8.8〜9.4質量%である。
さらに、セメントクリンカーの、ボーグ式を用いて算出した4CaO・Al2O3・Fe2O3(フェライト相;以下、「C4AF」ともいう。)の含有率は、好ましくは9.5〜11.5質量%、より好ましくは9.7〜11.0質量%、特に好ましくは10.0〜10.8質量%である。
C3S(質量%)=(4.07×CaO(質量%))−(7.60×SiO2(質量%))−(6.72×Al2O3(質量%))−(1.43×Fe2O3(質量%))
C2S(質量%)=(2.87×SiO2(質量%))−(0.754×C3S(質量%))
C3A(質量%)=(2.65×Al2O3(質量%))−(1.69×Fe2O3(質量%))
C4AF(質量%)=3.04×Fe2O3(質量%)
なお、本発明においては、セメントクリンカーの原料として、前記原料に加えて、産業廃棄物、一般廃棄物及び発生土から選ばれる一種以上を使用することができる。セメントクリンカーの原料として、産業廃棄物、一般廃棄物及び発生土から選ばれる一種以上を使用することは、廃棄物の有効利用を促進させる観点から好ましい。
ここで、産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物(ただし、後述する「発生土」を除く。)をいう。産業廃棄物としては、例えば、生コンスラッジ、各種汚泥(例えば、下水汚泥、浄水汚泥、製鉄汚泥等)、建設廃材、コンクリート廃材、各種焼却灰、鋳物砂、ロックウール、廃ガラス、高炉2次灰等が挙げられる。
一般廃棄物とは、産業廃棄物以外の廃棄物(ただし、後述する「発生土」を除く。)をいう。一般廃棄物としては、例えば、下水汚泥乾粉、都市ごみ焼却灰、貝殻等が挙げられる。
発生土とは、建設工事に伴い副次的に発生する土砂(例えば、地盤の掘削により生じるボーリング廃土)や汚泥(建設汚泥;例えば、地盤改良工事で生じる、セメントミルクと掘削土の混合物)をいう。
各原料を混合する方法は、特に限定されるものではなく、慣用の混合装置等を用いて行えばよい。
また、焼成に使用する装置も、特に限定されるものではなく、例えば、ロータリーキルン等を用いればよい。なお、ロータリーキルンを用いて焼成する場合、燃料代替廃棄物(例えば、廃油、廃タイヤ、廃プラスチック等)を使用することができる。
本発明で使用する石膏としては、例えば、二水石膏、半水石膏、および無水石膏等が挙げられる。石膏は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、セメント組成物の流動性および強度発現性の観点から、二水石膏と半水石膏の混合物を用いることが好ましい。二水石膏と半水石膏の合計100質量%中の半水石膏の割合は、セメント組成物の流動性および強度発現性の観点から、SO3換算で、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは20〜90質量%、特に好ましくは30〜85質量%である。
また、石膏のブレーン比表面積は、セメント組成物の流動性及び強度発現性の観点から、好ましくは5,000〜15,000cm2/g、より好ましくは6,000〜14,000cm2/gである。
本発明で使用するフライアッシュのブレーン比表面積は、2,500cm2/g以上、好ましくは2,700〜6,000cm2/g、より好ましくは3,000〜5,000cm2/g、さらに好ましくは3,100〜4,000cm2/g、特に好ましくは3,200〜3,800cm2/gである。ブレーン比表面積が2,500cm2/g未満であると、セメント組成物の強度発現性が低下する。
本発明で使用する高炉スラグ粉末のブレーン比表面積は、セメント組成物の流動性及び強度発現性の観点から、好ましくは3,000〜6,000cm2/g、より好ましくは3,500〜5,500cm2/g、特に好ましくは4,000〜5,000cm2/gである。
(1)各材料の割合
本発明のセメント組成物において、普通ポルトランドセメントクリンカー粉末の量と、石膏の量(SO3換算)の合計100質量%中の、石膏の量(SO3換算)の割合は、1.0〜3.0質量%、好ましくは1.1〜2.5質量%、より好ましくは1.2〜2.2質量%である。該割合が1.0質量%未満であると、セメント組成物の流動性が低下する。該割合が3.0質量%を超えると、セメント組成物の強度発現性が低下する。
また、普通ポルトランドセメントクリンカー粉末の量と、石膏の量(SO3換算)の合計100質量%中の、全SO3量の割合は、セメント組成物の流動性及び強度発現性の観点から、好ましくは1.5〜3.5質量%、より好ましくは1.7〜3.0質量%である。
本発明のセメント組成物は、上述した普通ポルトランドセメントクリンカー粉末、石膏、フライアッシュ、及び高炉スラグ粉末の他に、必要に応じて、石灰石粉末と珪石粉末の中から選ばれる少なくとも1種を、セメントクリンカー100質量部に対して、5.5質量部以下の量で含んでいてもよい。
本発明のセメント組成物の製造方法としては、例えば、以下の(a)〜(b)の方法が挙げられる。
(a)普通ポルトランドセメントクリンカーと石膏を同時に粉砕し、次いで、フライアッシュと高炉スラグ粉末を添加して混合する方法
該方法において、普通ポルトランドセメントクリンカーと石膏の粉砕は、粉砕物のブレーン比表面積が、好ましくは3,000〜3,400cm2/g、より好ましくは3,100〜3,350cm2/gとなるまで行うことが好ましい。
(b)普通ポルトランドセメントクリンカーと石膏と高炉スラグを同時に粉砕し、次いで、フライアッシュを添加して混合する方法
該方法において、普通ポルトランドセメントクリンカーと石膏と高炉スラグの粉砕は、粉砕物のブレーン比表面積が、好ましくは3,000〜3,400cm2/g、より好ましくは3,100〜3,350cm2/gとなるまで行うことが好ましい。
セメント分散剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、又はポリカルボン酸系等の、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、又は高性能AE減水剤を使用することができる。
本発明のセメント組成物を、モルタル又はコンクリートとして使用する場合には、骨材として、モルタルやコンクリートの製造に使用される通常の細骨材(例えば、川砂、陸砂、砕砂等)や粗骨材(例えば、川砂利、山砂利、砕石等)を使用することができる。また、骨材の一部または全部として、溶融スラグ(例えば、都市ゴミ、都市ゴミ焼却灰、及び下水汚泥焼却灰から選ばれる一種以上を溶融して製造されたもの)、高炉スラグ、製鋼スラグ、銅スラグ、碍子屑、ガラスカレット、陶磁器廃材、クリンカーアッシュ、廃レンガ、コンクリート廃材等の廃棄物を使用することもできる。
なお、必要に応じて、本発明の目的に支障のない範囲内で、空気連行剤、消泡剤等の混和剤を使用してもよい。
[普通ポルトランドセメントクリンカーA〜Eの製造]
下水汚泥、石炭灰、発生土等と、石灰石等の一般的なポルトランドセメントクリンカーの原料を用いて、得られる普通ポルトランドセメントクリンカー(A〜E)の水硬率(H.M.)、ケイ酸率(S.M.)、及び鉄率(I.M.)が、表1に示す値となるように、セメント組成物の原料を調製した。調製した原料を、ロータリーキルンを用いて、1,450℃で焼成して、塊状物である普通ポルトランドセメントクリンカーA〜Eを得た。
(1)フライアッシュ:ブレーン比表面積3,410cm2/g
(2)二水石膏:排脱二水石膏(粒径0.01〜2mm程度)
(3)高炉スラグ粉末:ブレーン比表面積4,800cm2/g
(4)細骨材:「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に定める標準砂
(5)減水剤A:ポリカルボン酸系高性能AE減水剤、BASFジャパン製、商品名「マスターグレニウムSP8N」
(6)減水剤B:ナフタレンスルホン酸系高性能減水剤、花王社製、商品名「マイティ150」
(7)消泡剤:非イオン界面活性剤、日華化学社製、商品名「フォームレックス747」(8)水:水道水
表2に示す種類の普通ポルトランドセメントクリンカー(表3中、「クリンカー」と示す。)と、排脱二水石膏(表3中、「石膏」と示す。)を、実機ボールミル(粉砕能力:130トン/時)に投入した後、これらを同時に粉砕して、粉砕物を得た。
得られた粉砕物に、表2に示す割合のフライアッシュ及び高炉スラグ粉末を添加した後、混合して、セメント組成物1〜14を製造した。
なお、表2中、「全SO3」(質量%)は、普通ポルトランドセメントクリンカーの量と、石膏の量(SO3換算)の合計100質量%中の、全SO3の量の割合を示す。「石膏」(質量%)は、普通ポルトランドセメントクリンカーの量と、石膏の量(SO3換算)の合計100質量%中の、石膏の量(SO3換算)の割合を示す。粉砕物中の二水石膏の量と半水石膏の量の合計100質量%中の半水石膏の割合は、SO3換算で30〜50質量%であった。
また、表2中、「フライアッシュ」(質量%)及び「高炉スラグ粉末」(質量%)は、各々、普通ポルトランドセメントクリンカーの量、石膏の量(SO3換算)、フライアッシュの量、及び高炉スラグ粉末の量の合計100質量%中、フライアッシュの量の割合、及び、高炉スラグ粉末の量の割合を示す。
さらに、セメント組成物1〜14の製造における、フライアッシュ及び高炉スラグ粉末を添加する前の粉砕物のブレーン比表面積を表2に示す。
普通ポルトランドセメントクリンカーEと排脱二水石膏を、実機ボールミル(粉砕能力:130トン/時)に投入した後、これらを同時に粉砕して、ブレーン比表面積が3,280cm2/gであるセメント組成物15を得た。
なお、普通ポルトランドセメントクリンカー粉末の量と石膏の量(SO3換算)の合計100質量%中の全SO3の量の割合は、2.2質量%であった。また、セメント組成物15中の二水石膏の量と半水石膏の量の合計100質量%中の半水石膏の量の割合は、SO3換算で45質量%であった。
なお、セメント組成物15は、市販されている普通ポルトランドセメントに相当するものである。
[参考例1]
セメント組成物15と高炉スラグ粉末を混合して、セメント組成物16を製造した。セメント組成物16(100質量%)中、セメント組成物15の割合は60質量%であり、高炉スラグ粉末の割合は40質量%であった。
なお、セメント組成物16は、市販されている高炉セメントB種に相当するものである。
セメント組成物1〜16において、セメント組成物中の石膏のブレーン比表面積は、8,000〜12,000cm2/gであった。
なお、セメント組成物中の特定の材料(石膏)のブレーン比表面積は、セメント組成物を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して、セメント組成物中の材料の粒子を特定し、該粒子の平均粒径を求めた後、該平均粒径から推定することができる。
(1)モルタルフローの測定
水とセメント組成物の質量比(水/セメント組成物)が0.3、細骨材とセメント組成物の質量比(細骨材/セメント組成物)が1.4、消泡剤とセメント組成物の質量比(消泡剤/セメント組成物)が0.001となる量、及び、表3に示す種類の減水剤を、減水剤Aとセメント組成物の質量比(減水剤A/セメント組成物)が0.0065、又は、減水剤Bとセメント組成物の質量比(減水剤B/セメント組成物)が0.012となる量で、セメント組成物等のこれら材料を混合して、モルタルを調製した。これら材料の混練は、ホバートミキサーを用いて、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準拠(ただし、混練時間は、ここに記載されている時間よりも2分間長いものとした。)して行った。なお、混練に際して、減水剤と消泡剤は水と同時にミキサーに投入した。
得られたモルタルについて、「JIS A 1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)」に記載されたスランプコーンを用いて、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」のフロー試験に準拠して、混練直後のモルタルフロー値を、15回の落下運動を行わないで測定した。
(2)モルタル圧縮強さの測定
「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準拠して、材齢3日、7日、28日の各時点における、モルタル圧縮強さを測定した。
具体的には、実施例1、3、4、5及び8(高炉スラグ粉末を50質量%で含むもの)と、比較例6(高炉スラグ粉末を使用していないもの)を比較すると、上記実施例(1、3、4、5及び8)の材齢3日、7日におけるモルタル圧縮強さ(3日:23.3〜24.3N/mm2、7日:40.7〜41.4N/mm2)は、比較例6の材齢3日、7日におけるモルタル圧縮強さ(3日:25.3N/mm2、7日:42.8N/mm2)とほぼ同等であり、上記実施例の材齢28日におけるモルタル圧縮強さ(64.2〜65.9N/mm2)は、比較例6の材齢28日におけるモルタル圧縮強さ(61.7N/mm2)よりも大きいことがわかる。また、上記実施例のモルタルフロー(減水剤Aを使用した場合;直後:312〜325mm、30分後:157〜169mm、減水剤Bを使用した場合;直後:409〜426mm、30分後:243〜252mm)は、比較例6のモルタルフロー(減水剤Aを使用した場合;直後:252mm、30分後:143mm、減水剤Bを使用した場合;直後:260mm、30分後:181mm)よりも大きいことがわかる。
Claims (4)
- 鉄率(I.M.)が1.88〜2.00である普通ポルトランドセメントクリンカー粉末と、石膏と、ブレーン比表面積が2,500cm2/g以上であるフライアッシュと、高炉スラグ粉末を含むセメント組成物であって、
上記普通ポルトランドセメントクリンカー粉末の量と、上記石膏の量(SO3換算)の合計100質量%中の、石膏の量(SO3換算)の割合が、1.0〜3.0質量%であり、
上記普通ポルトランドセメントクリンカー粉末の量、上記石膏の量(SO3換算)、上記フライアッシュの量、及び上記高炉スラグ粉末の量の合計100質量%中、フライアッシュの割合が1.0〜10.0質量%、高炉スラグ粉末の割合が30〜75質量%であることを特徴とするセメント組成物。 - 上記普通ポルトランドセメントクリンカー粉末は、水硬率(H.M.)が2.00〜2.20で、かつ、ケイ酸率(S.M.)が2.40を超え、2.60以下のものである請求項1に記載のセメント組成物。
- セメント組成物中の塩素の含有率が、0.02質量%未満である請求項1又は2に記載のセメント組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のセメント組成物と、水を含む水硬性組成物。
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