JP2019137090A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】氷上性能および雪上性能を維持しつつ耐ヒールアンドトゥ摩耗性能を向上させることができる空気入りタイヤの提供。【解決手段】空気入りタイヤは、2本の主溝22と、2本の主溝22の間に設けられた周方向細溝26と、複数のラグ溝24と、複数の幅方向細溝25とを有し、複数のラグ溝24と複数の幅方向細溝25とがタイヤ周方向に交互に並んで設けられており、周方向細溝26と、複数のラグ溝24と、複数の幅方向細溝25とによって区画される4つのブロックB11、B12、B21、B22を備えるブロック集合体ABを有し、複数の幅方向細溝25の溝深さは、主溝22の溝深さの25%以上100%以下であり、4つのブロックは、一端が周方向細溝26に開口しかつ他端が主溝22に開口するオープンサイプ28を有し、ブロック集合体ABを区画する幅方向細溝25を延長した延長線25E同士の間の範囲261に、オープンサイプ28が配置される。【選択図】図3

Description

本発明は、空気入りタイヤに関する。
偏摩耗の発生を抑制しつつ氷上性能と雪上性能とをバランス良く向上させる空気入りタイヤとして、特許文献1が知られている。
特許第5840874号公報
特許文献1に記載の空気入りタイヤは、トレッドに複数本のブロック列を形成したものであり、偏摩耗の発生を抑制しつつ氷上性能と雪上性能とをバランス良く向上させるうえで改善の余地がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は氷上性能および雪上性能を維持しつつ耐ヒールアンドトゥ摩耗性能を向上させることができる空気入りタイヤを提供することである。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のある態様による空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在してタイヤ幅方向に並んで設けられた2本の主溝と、タイヤ周方向に延在して前記2本の主溝の間に設けられた周方向細溝と、前記主溝に交差する方向に延在し、一端が前記周方向細溝に開口しかつ他端が前記主溝に開口し、タイヤ周方向に並んで設けられた複数のラグ溝と、前記主溝に交差する方向に延在し、一端が前記周方向細溝に接続され、かつ、他端が前記主溝に接続され、前記ラグ溝よりも溝幅が狭く、タイヤ周方向に並んで設けられた複数の幅方向細溝とを有し、前記複数のラグ溝と前記複数の幅方向細溝とがタイヤ周方向に交互に並んで設けられており、前記周方向細溝と、前記複数のラグ溝と、前記複数の幅方向細溝とによって区画される4つのブロックを備えるブロック集合体を有し、前記複数の幅方向細溝の溝深さは、前記主溝の溝深さの25%以上100%以下であり、前記4つのブロックは、一端が前記周方向細溝に開口しかつ他端が前記主溝に開口するオープンサイプを有し、前記ブロック集合体を区画する前記幅方向細溝を延長した延長線同士の間の範囲に、前記オープンサイプが配置される。
前記4つのブロックのうちタイヤ幅方向に隣り合う2つのブロックはタイヤ周方向にずれた位置に配置されることが好ましい。
前記ラグ溝の溝深さおよび前記周方向細溝の溝深さは、前記主溝の溝深さの60%以上90%以下であることが好ましい。
前記幅方向細溝は、少なくとも一部がタイヤ幅方向に対して傾斜していることが好ましい。
前記周方向細溝は、少なくとも一部がタイヤ周方向に対して傾斜していることが好ましい。
前記幅方向細溝および前記周方向細溝において、前記4つのブロックのうち隣接するブロック間の各細溝の長さについて、最も短い長さに対する最も長い長さの比が1.0以上1.8以下であることが好ましい。
前記オープンサイプは3次元形状であることが好ましい。
前記オープンサイプは、タイヤ幅方向に4つ以上の屈曲部を有し、溝深さ方向に4個以上の屈曲部を有することが好ましい。
前記オープンサイプは、屈曲部と、溝底部と、前記屈曲部と前記溝底部との間に設けられた直線部とを含み、前記溝底部は、前記直線部よりも広い溝幅を有し、前記オープンサイプは、前記ブロックの摩耗によって前記屈曲部が消失すると直線形状になり、さらに摩耗すると前記直線部よりも溝幅が大きくなることが好ましい。
前記ブロックは、2本のオープンサイプと3本のクローズドサイプとを有することが好ましい。
前記クローズドサイプは、タイヤ幅方向に4つ以上の屈曲部を有することが好ましい。
前記オープンサイプと前記クローズドサイプとは、前記ブロックにおいて交互に配置されることが好ましい。
前記オープンサイプと前記クローズドサイプとは平行に延在することが好ましい。
前記クローズドサイプの溝深さより前記オープンサイプの溝深さが大きく、前記オープンサイプの溝深さより前記幅方向細溝の溝深さが大きいことが好ましい。
前記ラグ溝の溝幅の、前記ブロックの最大周方向長さに対する比が、0.15以上0.3以下であることが好ましい。
前記ラグ溝の溝幅は、5mm以上9mm以下であることが好ましい。
前記4つのブロックのうちタイヤ幅方向に隣り合う2つのブロックのタイヤ周方向のずれ量の、前記ブロックの最大周方向長さに対する比は、0.2以上0.5以下であることが好ましい。
本発明にかかる空気入りタイヤは、氷上性能および雪上性能を維持しつつ耐ヒールアンドトゥ摩耗性能を向上させることができる。
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。 図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。 図3は、ブロック集合体を説明する図である。 図4は、各ブロックのずれを説明する図である。 図5は、隣接するブロック同士の間の幅方向細溝および周方向細溝の長さの関係を示す図である。 図6Aは、オープンサイプの形状を説明する図である。 図6Bは、オープンサイプの形状を説明する図である。 図7Aは、オープンサイプを有するブロックの摩耗による踏面の変化の例を示す図である。 図7Bは、オープンサイプを有するブロックの摩耗による踏面の変化の例を示す図である。 図7Cは、オープンサイプを有するブロックの摩耗による踏面の変化の例を示す図である。 図7Dは、オープンサイプを有するブロックの摩耗による踏面の変化の例を示す図である。 図8は、隣接するブロックが有する各切欠部の大きさを説明する図である。 図9Aは、主溝の溝深さと切欠部との関係を説明する図である。 図9Bは、主溝の溝深さと切欠部との関係を説明する図である。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ1の子午断面図である。図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド面を示す平面図である。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の前記回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
図1に示すように、本実施形態にかかる空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、そのタイヤ幅方向両外側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7とを含み構成されている。
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。トレッド面21は、タイヤ周方向に延在する複数(本実施形態では4本)の主溝22が設けられている。そして、トレッド面21は、これら複数の主溝22により、タイヤ周方向に沿って延在し、タイヤ幅方向に複数(本実施形態では5本)並ぶリブ状の陸部20ce、20m1、20m2、20s1、20s2(以下、総称して陸部20と呼ぶことがある)が形成されている。陸部20は、タイヤ周方向に延在する周方向細溝26を有する。
また、図2に示すように、トレッド面21は、各陸部20において、タイヤ周方向に延在する主溝22に交差する方向に延在するラグ溝24、幅方向細溝25が設けられている。これにより、陸部20は、ラグ溝24および幅方向細溝25によってタイヤ周方向で複数のブロックBに分割されたブロック列23ce、23m1、23m2、23s1、23s2(以下、総称してブロック列23と呼ぶことがある)として形成されている。このため、陸部20は、周方向溝によって区画されたブロック列23を有する。ブロック列23には、複数のラグ溝24、幅方向細溝25によって区画されるブロックBがタイヤ周方向に沿って複数並んでおり、このブロック列23がタイヤ幅方向に複数並んで配置される。また、タイヤ幅方向最外側に設けられたリブ状の陸部20s1、20s2には、ラグ溝29、30が設けられている。ブロック列23には、タイヤ周方向に延在する周方向細溝26が設けられている。主溝22および周方向細溝26は、タイヤ周方向に延在する周方向溝である。
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。
ベルト層7は、例えば、4層のベルト71、72、73、74を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71、72、73、74は、タイヤ周方向に対して所定の角度で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。
この空気入りタイヤ1は、スタッドレスタイヤとして適用される。このため、トレッド面21を構成する陸部の表面に、クローズドサイプ27、オープンサイプ28が形成されている。クローズドサイプ27、オープンサイプ28は、幅が1mm未満の溝である。
図2において、タイヤ赤道面CLに最も近い2本の主溝22の間に位置するブロック列をセンターブロック列23ceと呼ぶ。タイヤ接地端部Tに最も近い主溝22とタイヤ接地端部Tとの間に位置するブロック列をショルダーブロック列23s1、23s2と呼ぶ。センターブロック列23ceとショルダーブロック列23s1、23s2との間に位置するブロック列をミドルブロック列23m1、23m2と呼ぶ。
センターブロック列23ceの接地面積と、ショルダーブロック列23s1、23s2の接地面積と、ミドルブロック列23m1、23m2の接地面積との関係は、以下であることが好ましい。すなわち、ミドルブロック列23m1の接地面積よりショルダーブロック列23s1の接地面積が大きく、ショルダーブロック列23s1の接地面積よりセンターブロック列23ceの接地面積が大きいことが好ましい。また、ミドルブロック列23m2の接地面積よりショルダーブロック列23s2の接地面積が大きく、ショルダーブロック列23s2の接地面積よりセンターブロック列23ceの接地面積が大きいことが好ましい。
なお、接地面積は、各ブロック列23の接地幅を、主溝22の最大幅位置を基準にした幅として算出したものである。接地面積とは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに、正規荷重の70%をかけたとき、トレッド面21が路面と接地するタイヤ幅方向およびタイヤ周方向の領域の面積である。
また、センターブロック列23ceのタイヤ幅方向の幅Wce、ミドルブロック列23m1、23m2のタイヤ幅方向の幅Wm1、Wm2、ショルダーブロック列23s1、23s2のタイヤ幅方向の幅Ws1、Ws2は、それぞれ、トレッド接地幅WHに対して10%以上25%以下であることが好ましい。各幅Wce、Wm1、Wm2、Ws1、Ws2がトレッド接地幅WHに対して10%未満であると氷上性能および雪上性能は向上するが耐偏摩耗性能が悪化し、25%より大きいと、耐偏摩耗性能は向上するが氷上性能および雪上性能は悪化する。なお、各幅Wce、Wm1、Wm2、Ws1、Ws2の端部は、主溝22の最大幅位置である。各幅Wce、Wm1、Wm2、Ws1、Ws2は、周方向細溝26を含む幅である。
トレッド接地幅とは、接地領域におけるタイヤ幅方向の長さである。なお、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいはETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
(ブロック集合体)
図2において、センターブロック列23ceの領域10に着目すると、4つのブロックB11、ブロックB12、ブロックB21およびブロックB22は、1つにまとまったブロック集合体を形成していると考えることができる。図3は、ブロック集合体を説明する図である。図3は図2中の領域10を拡大して示す。
図3に示すように、4つのブロックB11、ブロックB12、ブロックB21およびブロックB22により、ブロック集合体ABが形成される。図3に示すように、複数のラグ溝24と複数の幅方向細溝25とはタイヤ周方向に交互に並んで設けられている。複数のラグ溝24は、主溝22に交差する方向に延在し、一端が周方向細溝26に開口しかつ他端が主溝22に開口し、タイヤ周方向に並んで設けられている。複数の幅方向細溝25は、主溝22に交差する方向に延在し、一端が周方向細溝26に接続され、かつ、他端が主溝22に接続され、ラグ溝24よりも溝幅が狭く、タイヤ周方向に並んで設けられている。そして、2本の主溝22と、2本の主溝22の間に設けられた周方向細溝26と、タイヤ周方向に交互に並んで設けられた複数のラグ溝24と複数の幅方向細溝25とによって、4つのブロックB11、ブロックB12、ブロックB21およびブロックB22が区画される。このように区画された、連続する4つのブロックB11、ブロックB12、ブロックB21およびブロックB22により、ブロック集合体ABが形成される。また、複数のラグ溝24と複数の幅方向細溝25とがタイヤ周方向に交互に並んでいるため、すべてラグ溝24にする場合に比べて接地面積を増やすことができ、すべて幅方向細溝25にする場合に比べて雪柱せん断力を増やすことができる。なお、すべてラグ溝24にすると氷上性能が低下し、すべて幅方向細溝25にすると雪上性能が低下する。
ここで、ブロック集合体ABを構成する4つのブロックB11、ブロックB12、ブロックB21およびブロックB22のうちタイヤ幅方向に隣り合う2つのブロックはタイヤ周方向にずれた位置に配置される。図4は、各ブロックのずれを説明する図である。図4において、タイヤ幅方向に隣り合うブロックB11とブロックB21とは、タイヤ周方向にずれた位置に配置される。また、タイヤ幅方向に隣り合うブロックB21とブロックB12とは、タイヤ周方向にずれた位置に配置される。さらに、タイヤ幅方向に隣り合うブロックB21とブロックB22とは、タイヤ周方向にずれた位置に配置される。つまり、各ブロックは、タイヤ周方向に沿って千鳥状に配置される。
図4において、4つのブロックB11、ブロックB12、ブロックB21およびブロックB22のうちタイヤ幅方向に隣り合う2つのブロックのタイヤ周方向のオフセット量すなわちずれ量をLOとする。このずれ量LOの、ブロックの最大周方向長さLBに対する比LO/LBは0.2以上0.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.3以上0.4以下である。比LO/LBが上記範囲であればブロック同士が支え合う効果が生じて、耐偏摩耗性能が向上する。
また、図4において、ラグ溝24の溝幅をWLとする。溝幅WLの、ブロックの最大周方向長さLBに対する比WL/LBは、0.15以上0.3以下であることが好ましい。なお、ラグ溝24の溝幅WLは、5mm以上9mm以下であることが好ましい。比WL/LBが0.15より小さいと耐偏摩耗性能は良化するが、氷上性能および雪上性能が悪化し、比WL/LBが0.3より大きいと氷上性能および雪上性能は良化するが耐偏摩耗性能が悪化する。
図5は、隣接するブロック同士の間の幅方向細溝25および周方向細溝26の長さの関係を示す図である。図5において、幅方向細溝25の、隣接するブロック同士の間の長さをL25とする。また、周方向細溝26の、隣接するブロック同士の間の長さをL26とする。長さL25および長さL26については、最も短い長さに対する最も長い長さの比が1.0以上1.8以下であることが好ましく、より好ましくは1.0以上1.4以下である。すべての長さL25および長さL26がほぼ等しければ、ブロック同士が支え合う効果が大きくなり、ブロック同士がずれにくくなる。これにより、耐偏摩耗性能が向上する。
(幅方向細溝)
図3に示すように、幅方向細溝25は、タイヤ幅方向に対して傾斜している。ブロックB11とブロックB12との間の幅方向細溝25は、タイヤ幅方向に対する傾斜角度がθ1である。ブロックB21とブロックB22との間の幅方向細溝25は、タイヤ幅方向に対する傾斜角度がθ2である。幅方向細溝25がタイヤ幅方向に対して傾斜していることにより、幅方向細溝25を挟んで隣接するブロック同士が支え合う効果が生じて、ブロック同士がずれにくくなる。これにより、耐偏摩耗性能が向上する。
また、幅方向細溝25は、全体がタイヤ幅方向に対して傾斜していることが好ましい。ただし、幅方向細溝25は、タイヤ幅方向に対して傾斜していない部分を含んでいてもよい。幅方向細溝25は、少なくとも一部がタイヤ幅方向に対して傾斜していれば、ブロック同士が支え合う効果が生じて、耐偏摩耗性能が向上する。
本例において、幅方向細溝25は、直線状の溝になっているが、曲線状の溝になっていてもよい。幅方向細溝25は、全体または一部が波状の溝になっていてもよい。このように、幅方向細溝25の少なくとも一部がタイヤ幅方向に対して傾斜していれば、ブロック同士が支え合う効果が生じて、耐偏摩耗性能が向上する。
幅方向細溝25のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ1、θ2は、10度以上40度以下が好ましい。このような傾斜角度であれば、ブロック同士が支え合う効果が生じて、耐偏摩耗性能が向上する。傾斜角度θ1と、傾斜角度θ2とは同じ角度であってもよいし異なる角度であってもよい。幅方向細溝25の溝幅は、1mm以上5mm以下である。
(周方向細溝)
図3に示すように、周方向細溝26は、タイヤ幅方向の位置が変化しつつ、タイヤ周方向に延在している。つまり、周方向細溝26は、図中の左右方向に屈曲しながら、タイヤ周方向に延在している。周方向細溝26は、屈曲しているため、タイヤ周方向に対して一方向に傾斜する状態と他方向に傾斜する状態とを交互に繰り返しながら、タイヤ周方向に延在している。傾斜角度はθ3である。周方向細溝26がタイヤ周方向に対して傾斜していることにより、周方向細溝26を挟んで隣接するブロック同士が支え合う効果が生じて、ブロック同士がずれにくくなる。これにより、耐偏摩耗性能が向上する。
また、周方向細溝26は、全体がタイヤ周方向に対して傾斜していることが好ましい。ただし、周方向細溝26は、タイヤ周方向に対して傾斜していない部分を含んでいてもよい。周方向細溝26は、少なくとも一部がタイヤ周方向に対して傾斜していれば、ブロック同士が支え合う効果が生じて、耐偏摩耗性能が向上する。
本例において、周方向細溝26は、屈曲部分同士の間が直線状の溝になっているが、屈曲部分同士の間が曲線状の溝になっていてもよい。周方向細溝26は、全体または一部が波状の溝になっていてもよい。このように、周方向細溝26の少なくとも一部がタイヤ周方向に対して傾斜していれば、ブロック同士が支え合う効果が生じて、耐偏摩耗性能が向上する。
なお、周方向細溝26のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ3は、10度以上40度以下が好ましい。このような傾斜角度であれば、ブロック同士が支え合う効果が生じて、耐偏摩耗性能が向上する。
(溝深さ)
幅方向細溝25の溝深さは、主溝22の溝深さの25%以上100%以下であることが好ましい。ラグ溝24の溝深さおよび周方向細溝26の溝深さは、主溝22の溝深さの60%以上90%以下であることが好ましく、より好ましくは70%以上80%以下である。ラグ溝24、幅方向細溝25および周方向細溝26の溝深さが、このような範囲であれば、ブロック同士が支え合う効果が生じて、耐偏摩耗性能が向上する。
(ブロック集合体のサイプ)
図3を参照すると、4つのブロックB11、ブロックB12、ブロックB21およびブロックB22は、それぞれ、オープンサイプ28を有する。4つのブロックB11、ブロックB12、ブロックB21およびブロックB22は、オープンサイプ28を2本有し、クローズドサイプ27を3本有することが好ましい。オープンサイプ28とクローズドサイプ27とは、各ブロックにおいて交互に配置されることが好ましい。オープンサイプ28とクローズドサイプ27とは等間隔で配置されることが好ましい。このようにオープンサイプ28とクローズドサイプ27とを配置すれば、氷上性能および雪上性能の向上と、耐偏摩耗性能の向上とをより両立できる。ここで、ブロック集合体ABを区画する幅方向細溝25をそれぞれ延長した、延長線25Eを想定する。このとき、延長線25E同士の間の範囲261に、オープンサイプ28が配置されることが好ましい。ブロック集合体ABのタイヤ周方向の中央付近にオープンサイプ28を配置することにより、耐偏摩耗性能を向上させることができる。
オープンサイプ28は、周方向溝である周方向細溝26に一端が開口し、周方向溝である主溝22に他端が開口する。オープンサイプ28はタイヤ幅方向に4つ以上の屈曲部を有することが好ましい。オープンサイプ28はタイヤ幅方向の屈曲部が4つ未満(つまり3つ以下)である場合、ブロック剛性の低下を抑える効果が低く、かつエッジ成分を増やす効果が低いため、好ましくない。
各ブロックB11、B12、B21、B22はオープンサイプ28によって、複数の部分に分割される。本例では、2つのオープンサイプ28によって、3つの部分Ba、BbおよびBcに分割される。オープンサイプ28によって複数に分割された部分Ba、BbおよびBcは、それぞれ、クローズドサイプ27を有する。
クローズドサイプ27は、タイヤ幅方向に4個以上の屈曲部を有する。複数に分割された部分Ba、BbおよびBcそれぞれにクローズドサイプ27を設けているため、3次元形状を有するオープンサイプ28とクローズドサイプ27とによって、耐偏摩耗性能を維持しつつ氷上性能および雪上性能を向上させることができる。
ここで、オープンサイプ28の少なくとも一部は3次元形状であることが好ましい。ここで、サイプが3次元形状であるとは、サイプが溝深さ方向に屈曲等して延びることを意味する。オープンサイプ28が3次元形状であることにより、ブロック剛性の低下を抑えることができ、かつエッジ成分を増やすことができるため、耐偏摩耗性能を維持しつつ氷上性能および雪上性能を向上させることができる。
(オープンサイプ)
図6Aおよび図6Bは、オープンサイプ28の形状を説明する図である。図6Aは、図3のA−A部の断面を示す図である。図6Bは、図3のB−B部の断面を示す図である。図6Aに示すように、オープンサイプ28は、深さ方向に屈曲部K11、K12、K13、K14およびK15を有する。また、図6Bに示すように、オープンサイプ28は、深さ方向に屈曲部K21、K22、K23、K24およびK25を有する。図6Aおよび図6Bから理解できるように、屈曲部K11と屈曲部K21とは、屈曲の方向が互いに逆向きになっている。屈曲部K12と屈曲部K22、屈曲部K13と屈曲部K23、屈曲部K14と屈曲部K24、屈曲部K15と屈曲部K25、についても同様に、屈曲の方向が互いに逆向きになっている。オープンサイプ28は溝深さ方向に4つ以上の屈曲部を有することが好ましく、より好ましくは5つ以上7つ未満である。オープンサイプ28は溝深さ方向の屈曲部が4つ未満(つまり3つ以下)である場合、ブロック剛性の低下を抑える効果が低く、かつエッジ成分を増やす効果が低いため、好ましくない。
また、図6Aに示すように、オープンサイプ28の、屈曲部K15より深い部分は、一定幅のまま屈曲しない直線部T1と、溝容積が広がった溝底部R1とを含む。図6Bに示すように、オープンサイプ28の、屈曲部K25より深い部分は、一定幅のまま屈曲しない直線部T2と、溝容積が広がった溝底部R2とを含む。直線部T1と直線部T2とが同じ形状であれば、オープンサイプ28の直線部T1および直線部T2の部分は平板状の空間になる。溝底部R1と溝底部R2とが同じ形状の円形であれば、オープンサイプ28の溝底部R1および溝底部R2の部分は円筒状の空間になる。
図6Aおよび図6Bに示すように、オープンサイプ28は、屈曲領域HKと、直線領域HTと、溝底領域HRとから構成される。図6Aを参照すると、屈曲領域HKは、屈曲部K11、K12、K13、K14およびK15を含む。直線領域HTは、直線部T1を含む。溝底領域HRは、溝底部R1を含む。図6Bを参照すると、屈曲領域HKは、屈曲部K21、K22、K23、K24およびK25を含む。直線領域HTは、直線部T2を含む。溝底領域HRは、溝底部R2を含む。
オープンサイプ28のタイヤ径方向の深さH28は、主溝22の溝深さに対して、50%以上70%以下であることが好ましい。オープンサイプ28の溝深さが主溝22の溝深さの50%より浅いと耐偏摩耗性能は向上するが、氷上性能および雪上性能が悪化する。オープンサイプ28の溝深さが主溝22の溝深さの70%より深いと氷上性能および雪上性能は向上するが、耐偏摩耗性が悪化する。
主溝22の溝深さに対し50%の溝深さまで屈曲領域HKとしてもよいし、深さH28までのすべてを屈曲領域HKとしてもよい。オープンサイプ28の深さH28に対する、屈曲領域HK、直線領域HT、溝底領域HRの深さの比は、図6Aおよび図6Bに示す場合に限らない。例えば、屈曲領域HKが深さH28の60%以上80%以下であってもよい。また、直線領域HTが深さH28の0.5%以上2%以下であってもよい。直線領域HTと溝底領域HRとを合わせた深さが深さH28の70%以上90%以下であってもよい。
(ブロックの摩耗)
図7Aから図7Dは、図3、図6Aおよび図6Bに示す形状を採用したオープンサイプ28を有するブロックBの摩耗による踏面の変化の例を示す図である。図7AはブロックBが主溝22の溝深さに対して0%以上40%未満摩耗した状態を示す図である。図7Aを参照すると、ブロックBの摩耗は初期段階であるため、オープンサイプ28およびクローズドサイプ27の両方の形状を確認することができる。
図7BはブロックBが主溝22の溝深さに対して40%以上50%未満摩耗した状態を示す図である。図7Bに示す段階では、オープンサイプ28の形状を確認できるが、クローズドサイプ27の形状は確認できない。クローズドサイプ27の溝深さは、オープンサイプ28の溝深さよりも浅く、クローズドサイプ27の溝底まで摩耗すると図7Bに示すようにクローズドサイプ27の形状は確認できない。
図7CはブロックBが主溝22の溝深さに対して50%以上55%未満摩耗した状態を示す図である。図7Cに示す段階まで摩耗が進むと、図6Aおよび図6Bに示すオープンサイプ28の屈曲領域HKは摩耗して消失する。このため、図7Cに示す段階では、オープンサイプ28は、図6Aおよび図6Bに示す直線領域HTが確認できる。オープンサイプ28は、屈曲形状ではなく、直線形状として確認できる。
図7DはブロックBが主溝22の溝深さに対して55%以上65%以下摩耗した状態を示す図である。図7Dに示す段階まで摩耗が進むと、オープンサイプ28は、図6Aおよび図6Bに示す直線領域HTは摩耗して消失する。このため、図7Dに示す段階では、オープンサイプ28は、図6Aおよび図6Bに示す溝底領域HRが確認できる。溝底領域HRは、直線領域HTよりも溝幅が大きいため、オープンサイプ28は図7Cに示す段階よりも溝幅が広がった形状として確認できる。
図7Aから図7Dを参照して説明したように、オープンサイプ28は、ブロックBの摩耗によって屈曲部が消失すると直線形状になる。オープンサイプ28は、さらに摩耗すると直線形状よりも溝幅が大きくなる。
(オープンサイプ、クローズドサイプの溝深さ)
オープンサイプ28の溝深さは、主溝22の溝深さに対して、55%以上65%以下であることが好ましい。また、クローズドサイプ27の溝深さは、主溝22の溝深さに対して、50%以上60%以下であることが好ましい。さらに、クローズドサイプ27の溝深さよりオープンサイプ28の溝深さが大きく、オープンサイプ28の溝深さより幅方向細溝25の溝深さが大きいことが好ましい。すなわち、溝深さの関係は、幅方向細溝25>オープンサイプ28>クローズドサイプ27の関係であることが好ましい。クローズドサイプ27の溝深さがオープンサイプ28の溝深さより浅すぎると、耐偏摩耗性能は向上するが氷上性能および雪上性能が悪化する。クローズドサイプ27の溝深さがオープンサイプ28の溝深さより深すぎると氷上性能および雪上性能は向上するが、耐偏摩耗性能が悪化する。クローズドサイプ27の溝深さは、例えば、5mm以上15mm以下である。オープンサイプ28の溝深さは、例えば、6mm以上20mm以下である。
(切欠部)
ところで、図2に示す各ブロックは、タイヤ幅方向の両側の側面のうち、一方の側面が主溝22に隣接し、他方の側面が周方向細溝26に隣接している。各ブロックは、主溝22に隣接する側面に切欠部BK21、BK22、BK11、BK12を有する。各切欠部BK21、BK22、BK11、BK12の端部が主溝22側に向いている。
図8は、隣接するブロックが有する各切欠部の大きさを説明する図である。図8は図2中の領域10を拡大して示す。図8に示すように、センターブロック列23ceは、ブロックB11、ブロックB12、ブロックB13、ブロックB14、ブロックB21、ブロックB22、ブロックB23、ブロックB24など、複数のブロックを有する。センターブロック列23ceには、周方向細溝26を挟んでタイヤ赤道面CLを挟んで両側に、タイヤ周方向に並んだブロックB11、ブロックB12、ブロックB13、ブロックB14の列と、ブロックB21、ブロックB22、ブロックB23、ブロックB24の列とがある。各ブロックは、ラグ溝24によってタイヤ周方向に区画され、主溝22および周方向細溝26すなわち、タイヤ周方向に延在する溝によってタイヤ幅方向に区画されている。ブロックB11、ブロックB12、ブロックB13、ブロックB14と、ブロックB21、ブロックB22、ブロックB23、ブロックB24とは、隣り合うブロック同士でタイヤ幅方向およびタイヤ周方向の位置が異なり、千鳥状に配置されている。
ここで、ブロックB21を第1のブロック、ブロックB22を第2のブロック、ブロックB23を第3のブロック、ブロックB24を第4のブロックとすると、第1、第2、第3、第4のブロックは、タイヤ周方向に直線的に連続して並んでいる。第1のブロックB21、第2のブロックB22、第3のブロックB23、第4のブロックB24は、それぞれ、切欠部BK21、切欠部BK22、切欠部BK23、切欠部BK24(以下、総称して切欠部BKと呼ぶことがある)を有する。切欠部BK21の長手方向、切欠部BK22の長手方向、切欠部BK23の長手方向、および、切欠部BK24の長手方向は、タイヤ周方向に向いている。
切欠部BK21、切欠部BK22、切欠部BK23、切欠部BK24のそれぞれのタイヤ周方向の長さを、長さLBK21、長さLBK22、長さLBK23、長さLBK24とする。このとき、長さLBK21より長さLBK22の方が小さい。また、長さLBK22より長さLBK23の方が大きい。さらに、長さLBK23より長さLBK24の方が小さい。つまり、第1のブロックB21の切欠部BK21より第2のブロックB22の切欠部BK22の方が小さく、第2のブロックB22の切欠部BK22より第3のブロックB23の切欠部BK23の方が大きく、第3のブロックB23の切欠部BK23より第4のブロックB24の切欠部BK24の方が小さい。なお、長さLBK21と長さLBK23とは同じ大きさであってもよいし、異なる大きさであってもよい。また、長さLBK22と長さLBK24とは同じ大きさであってもよいし、異なる大きさであってもよい。
ここで、第1のブロックB21、第2のブロックB22および第3のブロックB23に着目すると、第2のブロックB22の切欠部BK22よりも、第1のブロックB21の切欠部BK21、第3のブロックB23の切欠部BK23がともに大きい。また、第2のブロックB22、第3のブロックB23および第4のブロックB24に着目すると、第3のブロックB23の切欠部BK23よりも、第2のブロックB22の切欠部BK22、第4のブロックB24の切欠部BK24がともに小さい。したがって、センターブロック列23ceには、大きさが異なる切欠部を有する複数のブロックが、切欠部BKの大きさについて大小交互にタイヤ周方向に並んでいるということができる。切欠部BKの大きさを調整することによって、ブロックの接地面積の大小関係を調整できる。切欠部BKを大きくすることによって接地面積を小さくすることができる。切欠部BKを小さくすることによって接地面積を大きくすることができる。主溝22の溝幅を固定したうえで切欠部BKの大きさを調整することにより、接地面積が大きいブロックと接地面積が小さいブロックとがタイヤ周方向に交互に並ぶようにすることができる。すなわち、第1のブロックB21の接地面積より第2のブロックB22の接地面積の方を大きくし、第2のブロックB22の接地面積より第3のブロックB23の接地面積の方を小さくし、第3のブロックB23の接地面積より第4のブロックB24の接地面積の方を大きくすることができる。したがって、切欠部の大きいブロックB21、B23と、切欠部の小さいブロックB22、B24とが、タイヤ周方向に交互に並ぶことにより、接地面積を維持しつつ氷上性能を向上させ、切欠部の大きい部分で雪上性能を維持する。このため、氷上性能および雪上性能のバランスをとりつつ両者を向上させることができる。
センターブロック列23ceにおいて、タイヤ赤道面CLを挟んで反対側のブロックB11、ブロックB12、ブロックB13、ブロックB14についても、切欠部BK11、BK12、BK13、BK14の長さLBK11、LBK12、LBK13、LBK14を調整することによって、接地面積が大きいブロックと接地面積が小さいブロックとがタイヤ周方向に交互に並ぶようにすることができる。接地面積を維持しつつ氷上性能を向上させ、切欠部の大きい部分で雪上性能を維持する。このため、氷上性能および雪上性能のバランスをとりつつ両者を向上させることができる。
以上はタイヤ周方向に直線的に連続して並んでいる、第1のブロックB21、第2のブロックB22、第3のブロックB23、第4のブロックB24について、切欠部が大小大小交互に並ぶ場合について説明したが、タイヤ周方向に千鳥状に連続して並んでいるブロックについて切欠部が大小大小交互に並でいてもよい。例えば、図8において、ブロックB11、ブロックB21、ブロックB12、ブロックB22は、タイヤ周方向に千鳥状に連続して並んでいる。このようにタイヤ周方向に千鳥状に連続して並んでいるブロックB11、ブロックB21、ブロックB12、ブロックB22について、切欠部が大小大小交互に並んでいてもよい。このことは、タイヤ幅方向に隣接するブロック列について、一方のブロック列全体の接地面積よりも他方のブロック列全体の接地面積を大きくまたは小さくすることができることを意味する。
以上はセンターブロック列23ceの場合について説明したが、ミドルブロック列23m1、23m2についても同様に、大きさが異なる切欠部を有する複数のブロックが、切欠部の大きさについて大小交互にタイヤ周方向に並んでいる。このように、切欠部の大きいブロックと、切欠部の小さいブロックとが、タイヤ周方向に交互に並ぶことにより、氷上性能および雪上性能のバランスをとりつつ両者を向上させることができる。
さらに、他のブロック列23についても同様に、大きさが異なる切欠部を有する複数のブロックが、切欠部の大きさについて大小交互にタイヤ周方向に並んでいてもよい。少なくとも1つのブロック列23が切欠部の大きさについて大小交互にタイヤ周方向に並んでいれば、氷上性能および雪上性能のバランスをとりつつ両者を向上させることができる。
(切欠部の形状)
図9Aおよび図9Bは、主溝22の溝深さと切欠部BKとの関係を説明する図である。図9Aおよび図9Bは、ブロックBの、主溝22に隣接する側面の例を拡大して示す。図9Aおよび図9Bは、タイヤ子午断面を示す図である。
図9Aにおいて、ブロックは、切欠部BKを有する。切欠部BKは、ブロックBの接地面と主溝22の溝底22BTとの間に存在する、ステップSTの形状になる。したがって、切欠部BKは、主溝22のタイヤ径方向最外側に設けられることがある面取り部とは異なる。ステップSTから溝底22BTに至る、タイヤ径方向に沿った部分が、切欠部BKと主溝22との境界SSとなる。
ここで、ブロックBの接地面から主溝22の溝底22BTまでのタイヤ径方向の距離、すなわち主溝22の溝深さをH22とする。また、溝底22BTから切欠部BKまでのタイヤ径方向の距離をHSTとする。このとき、溝深さH22に対する、距離HSTの比HST/H22の値は、0以上0.7以下であることが好ましい。比HST/H22の値は、0.1以上0.5以下であることがより好ましい。なお、主溝22の溝深さH22は、例えば、16mm以上22mm以下である。
図9Bは、比HST/H22の値が0である場合を示す図である。図9Bに示すように、溝深さH22に対する距離HSTの比HST/H22が0である場合、切欠部BKのステップSTのタイヤ径方向の位置と溝底22BTのタイヤ径方向の位置とが一致する。
(まとめ)
スタッドレスタイヤの氷上性能と雪上性能とを向上させる手段として、サイプを多く配置することがある。サイプを多く配置すると、排水性能およびエッジ効果が向上するものの、ブロック剛性が低下し、耐ヒールアンドトゥ摩耗性能が低下してしまう問題が考えられる。上記のブロック集合体ABをトレッド面21に配置すれば、そのような問題はなく、氷上性能および雪上性能を維持しつつ耐ヒールアンドトゥ摩耗性能を向上させる効果が得られる。ブロック集合体ABをセンター領域に設ければ、車両の発進時のトラクションに最も寄与するため、上記の効果が高くなる。
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、テストコース内にて、雪上性能(雪上発進性能)および氷上性能(氷上制動性能)に関する性能試験が行われた(表1から表4を参照)。なお、すべて、主溝が4本の空気入りタイヤを用いた。
この性能試験では、タイヤサイズ275/80R22.5の重荷重用空気入りタイヤを、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填して、2−D4(前2輪−後4駆動輪)の試験車両に装着した。
雪上性能の性能試験は、上記試験車両にて、雪上登坂路を車両停止状態から発進・走行し、テストドライバーのフィーリングにて評価し、その評価結果について従来例の空気入りタイヤを基準(100)とする指数で示した。この指数値が大きいほど雪上性能(雪上発進性能)が優れている。
氷上性能の性能試験は、上記試験車両にて、平坦な氷上路面を時速40[km/h]から制動をかけ、制動をかけた位置から停止した位置までの制動距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例の空気入りタイヤを基準(100)とした指数評価が行われる。評価結果は、その数値が大きいほど氷上性能(氷上制動性能)が優れている。
耐偏摩耗性能については、上記車両の駆動軸に、空気入りタイヤ1を装着したリムを装着し、市場モニターによる2万km走行後のヒール・アンド・トウ摩耗量を測定した。測定結果は従来例の空気入りタイヤを基準(100)として指数化した。指数値が大きいほど性能が優れている。
表1において、従来例のタイヤは、4つのブロックによるブロック集合体を有しておらず、オープンサイプを有し、オープンサイプの形状が2次元形状であり、オープンサイプのタイヤ幅方向の屈曲数が3つ、ずれ量LOの、ブロックの最大周方向長さLBに対する比LO/LBが0のタイヤである。
表1において、比較例1のタイヤは、4つのブロックによるブロック集合体を有しているが、オープンサイプを有しておらず、幅方向細溝の溝深さは、主溝の溝深さの10%で、ずれ量LOの、ブロックの最大周方向長さLBに対する比LO/LBが0のタイヤである。
表1において、比較例2のタイヤは、4つのブロックによるブロック集合体を有し、オープンサイプを有しており、オープンサイプの形状が2次元形状であり、オープンサイプのタイヤ幅方向の屈曲数が3つ、ずれ量LOの、ブロックの最大周方向長さLBに対する比LO/LBが0のタイヤである。
表1から表4の実施例1から実施例40を参照すると、4つのブロックによるブロック集合体を有し、幅方向細溝25の溝深さが主溝の溝深さの25%以上100%以下であり、オープンサイプを有しており、幅方向細溝25の延長線間にオープンサイプが配置されている場合に良好な結果が得られることがわかる。
また、表1から表4の実施例1から実施例40を参照すると、ブロック集合体の4つのブロックが千鳥状に配置されている場合、ラグ溝24の溝深さおよび周方向細溝26の溝深さが、主溝22の溝深さの60%以上90%以下である場合、幅方向細溝がタイヤ幅方向に対して傾斜している場合、周方向細溝がタイヤ周方向に対して傾斜している場合、4つのブロックのうち隣接するブロック間の、幅方向細溝25および周方向細溝26において、最も短い長さに対する最も長い長さの比が1.0以上1.8以下である場合、オープンサイプの形状が3次元形状である場合、オープンサイプがタイヤ幅方向に4つ以上の屈曲部を有する場合、各ブロックが2本のオープンサイプと3本のクローズドサイプとを有する場合、クローズドサイプがタイヤ幅方向に4つ以上の屈曲部を有する場合、各ブロックにおいてオープンサイプとクローズドサイプとが交互に配置されている場合、オープンサイプと前記クローズドサイプとは平行に延在する場合、クローズドサイプの溝深さよりオープンサイプの溝深さが大きく、オープンサイプの溝深さより幅方向細溝の溝深さが大きい場合、ラグ溝の溝幅の、ブロックの最大周方向長さに対する比が、0.15以上0.3以下である場合、ラグ溝の溝幅が5mm以上9mm以下である場合、4つのブロックのうちタイヤ幅方向に隣り合う2つのブロックのタイヤ周方向のずれ量LOの、ブロックの最大周方向長さLBに対する比LO/LBが0.2以上0.5以下である場合、に良好な結果が得られることがわかる。
Figure 2019137090
Figure 2019137090
Figure 2019137090
Figure 2019137090
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 ショルダー部
4 サイドウォール部
5 ビード部
6 カーカス層
7 ベルト層
20 陸部
21 トレッド面
22 主溝
23 ブロック列
24 ラグ溝
25 幅方向細溝
26 周方向細溝
27 クローズドサイプ
28 オープンサイプ
51 ビードコア
52 ビードフィラー
71、72、73、74 ベルト
B、B11〜B14、B21〜B24 ブロック
BK、BK11〜BK14、BK21〜BK24 切欠部

Claims (17)

  1. タイヤ周方向に延在してタイヤ幅方向に並んで設けられた2本の主溝と、タイヤ周方向に延在して前記2本の主溝の間に設けられた周方向細溝と、
    前記主溝に交差する方向に延在し、一端が前記周方向細溝に開口しかつ他端が前記主溝に開口し、タイヤ周方向に並んで設けられた複数のラグ溝と、
    前記主溝に交差する方向に延在し、一端が前記周方向細溝に接続され、かつ、他端が前記主溝に接続され、前記ラグ溝よりも溝幅が狭く、タイヤ周方向に並んで設けられた複数の幅方向細溝とを有し、
    前記複数のラグ溝と前記複数の幅方向細溝とがタイヤ周方向に交互に並んで設けられており、
    前記周方向細溝と、前記複数のラグ溝と、前記複数の幅方向細溝とによって区画される4つのブロックを備えるブロック集合体を有し、
    前記複数の幅方向細溝の溝深さは、前記主溝の溝深さの25%以上100%以下であり、
    前記4つのブロックは、一端が前記周方向細溝に開口しかつ他端が前記主溝に開口するオープンサイプを有し、
    前記ブロック集合体を区画する前記幅方向細溝を延長した延長線同士の間の範囲に、前記オープンサイプが配置される空気入りタイヤ。
  2. 前記4つのブロックのうちタイヤ幅方向に隣り合う2つのブロックはタイヤ周方向にずれた位置に配置される請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記ラグ溝の溝深さおよび前記周方向細溝の溝深さは、前記主溝の溝深さの60%以上90%以下である請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記幅方向細溝は、少なくとも一部がタイヤ幅方向に対して傾斜している請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記周方向細溝は、少なくとも一部がタイヤ周方向に対して傾斜している請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記幅方向細溝および前記周方向細溝において、前記4つのブロックのうち隣接するブロック間の各細溝の長さについて、最も短い長さに対する最も長い長さの比が1.0以上1.8以下である請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記オープンサイプは3次元形状である請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記オープンサイプは、タイヤ幅方向に4つ以上の屈曲部を有し、溝深さ方向に4個以上の屈曲部を有する請求項7に記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記オープンサイプは、屈曲部と、溝底部と、前記屈曲部と前記溝底部との間に設けられた直線部とを含み、前記溝底部は、前記直線部よりも広い溝幅を有し、
    前記オープンサイプは、前記ブロックの摩耗によって前記屈曲部が消失すると直線形状になり、さらに摩耗すると前記直線部よりも溝幅が大きくなる請求項8に記載の空気入りタイヤ。
  10. 前記ブロックは、2本のオープンサイプと3本のクローズドサイプとを有する請求項1から請求項9のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
  11. 前記クローズドサイプは、タイヤ幅方向に4つ以上の屈曲部を有する請求項10に記載の空気入りタイヤ。
  12. 前記オープンサイプと前記クローズドサイプとは、前記ブロックにおいて交互に配置される請求項10または請求項11に記載の空気入りタイヤ。
  13. 前記オープンサイプと前記クローズドサイプとは平行に延在する請求項10から請求項12のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
  14. 前記クローズドサイプの溝深さより前記オープンサイプの溝深さが大きく、
    前記オープンサイプの溝深さより前記幅方向細溝の溝深さが大きい
    請求項10から請求項13のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
  15. 前記ラグ溝の溝幅の、前記ブロックの最大周方向長さに対する比が、0.15以上0.3以下である請求項1から請求項13のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
  16. 前記ラグ溝の溝幅は、5mm以上9mm以下である請求項1から請求項15のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
  17. 前記4つのブロックのうちタイヤ幅方向に隣り合う2つのブロックのタイヤ周方向のずれ量の、前記ブロックの最大周方向長さに対する比は、0.2以上0.5以下である請求項1から請求項16のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
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