JP2019131833A - クロム基二相合金製造物およびその製造方法 - Google Patents

クロム基二相合金製造物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来技術と同等以上の高い耐食性と良好な機械的特性を有しかつ低コストのCr基二相合金を用いた製造物およびその製造方法の提供。【解決手段】フェライト相とオーステナイト相の二相が混在し、化学組成が主要成分と副成分と不純物とを含み、質量%で主要成分が34〜70%Cr、17〜45%Ni、10〜35%Feからなり、Crの含有率が最大で、Ni+Feが30〜65%で、副成分が0.1〜2%Mnと0.1〜1%Siからなり、0<Ti≦1%、0<V<0.5%、0<N≦0.02%、不純物P≦0.04%、S≦0.01%、C≦0.03%、N≦0.02%、O≦0.03%を含むCr基二相合金を用い、微細組織として鍛造組織を有しフェライト粒内にオーステナイト粒が分散析出しており、フェライト相の占有率が15〜85%で、室温引張試験による0.2%耐力≧600MPaで破断伸び≧5%であるCr基二相合金製造物。【選択図】図1

Description

本発明は、高耐食性・高強度合金の技術に関し、特に、オーステナイト相とフェライト相との二相が混在するクロム基二相合金を用いた製造物およびその製造方法に関するものである。
原油や天然ガス等の掘削に使用される油井用機器の材料として、かつては炭素鋼と腐食抑制剤(インヒビター)とを併用することが一般的であった。近年では、油井掘削における高深度化の進展に伴う掘削環境の変化のため、以前よりも高い耐食性や機械的特性(例えば、硬さ)が油井用機器材料に求められるようになり、耐食性に優れる鋼材(合金鋼)が用いられるようになった。例えば、クロム(Cr)の添加は鉄(Fe)の耐食性を著しく向上させるため、金属腐食成分を含む油井ではCrを13質量%含有したマルテンサイト系ステンレス鋼(例えば、SUS420)が多く用いられてきた。
ただし、塩化物と酸性ガス(例えば、炭酸ガスや硫化水素)を含む環境下では、SUS420は応力腐食割れ(SCC)を起こし易いという弱点がある。そのため、そのような厳しい腐食環境下で油井掘削する場合、従来は高価なニッケル(Ni)基合金(例えば、Niを40質量%以上含有する合金)を用いることが多く、材料コスト(ひいては掘削コスト)が大幅に上昇してしまうという問題があった。
一方、Ni基合金に比して安価な耐食・耐熱合金としてCr基合金があり、種々のCr基合金が提案されている。例えば、特許文献1(特開平04-301048)には、Cr:65〜80%,Co:10〜15%,残部Feおよび不純分からなり、所望によりN:0.1〜1.5%を含む化学組成を有するCr−Fe系耐熱合金が開示され、特許文献2(特開平04-301049)には、Cr:70〜95%,N:0.1〜1.5%,残部Feおよび不純分からなる化学組成を有する耐熱合金が開示されている。特許文献1,2によると、高温雰囲気炉中における圧縮変形抵抗性、耐酸化性等に優れており、被加熱鋼材支持面部材としての耐久性の向上、メンテナンスの軽減、それに伴う操炉効率の向上に大きくに寄与するとされている。
特許文献3(特開平08-291355)には、質量%で、Cr:95%超え、N:0.1〜2.0%を含有し、残部Fe、NiおよびCoの一種または二種以上と不可避的不純物からなり、所望によりTi、Al、Zr、Nb、B、Vの内の一種または二種以上を合計で0.3%以上さらに含有するCr基耐熱合金が開示されている。特許文献3によると、超高温下で強度、延性および耐食性が必要な部材(例えば、加熱炉内の被加熱鋼材支持部材)に使用される高温強度に優れたCr基耐熱合金を提供できるとされている。
また、特許文献4(特開平07-258801)には、Cr:15〜50%、Ni:6.1〜50%、O+P+S:200 ppm以下で残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、結晶粒度番号:8以上であり、所望によりC+N:400〜1200 ppmであることを特徴とする加工部分の耐食性に優れたFe-Cr-Ni合金が開示されている。特許文献4によると、加工性を低下させることなく耐食性を向上させ、かつ、加工されても耐食性の低下しないFe-Cr-Ni合金を提供できるとされている。
特開平04−301048号公報 特開平04−301049号公報 特開平08−291355号公報 特開平07−258801号公報
特許文献1〜3に記載されたような高Cr基合金(Crの含有率が高い合金)は、1300℃以上の高温環境下での使用を目的とするものであり、該高温環境下でも優れた耐食性と機械的特性とを有するとされている。しかしながら、そのような高Cr基合金は、油井環境の温度域(室温〜350℃程度)において脆性を示す(靭性が不十分である)ため、油井用機器材料としては適していないと考えられる。
また、特許文献4に記載されたFe-Cr-Ni合金は、オーステナイト系ステンレス鋼を意図したものであるが、オーステナイト系ステンレス鋼は、塩化物を含む高温高圧環境下で水素脆化による応力腐食割れ(SCC)を起こし易いことが知られており、高Cr基合金と同様に、油井用機器材料としては適していないと考えられる。
前述したように、油井掘削における高深度化の進展により、従来と同等以上に高い耐食性や機械的特性を有する材料で、かつNi基合金よりも低コストの金属材料が強く求められている。なお、油井用機器材料の機械的特性としては、硬さや機械的強度に加えて、耐久性の観点から延性・靱性の確保も非常に重要である。
したがって、本発明の目的は、油井のような温度域・高腐食環境下においても好適に利用できる金属材料であり、従来と同等以上の高い耐食性と良好な機械的特性を有しかつ低コストのCr基二相合金を用いた製造物、および該製造物の製造方法を提供することにある。
(I)本発明の一態様は、フェライト相およびオーステナイト相の二相が混在するCr基二相合金を用いた製造物であって、
前記Cr基二相合金の化学組成は、主要成分と副成分と不純物と随意副成分とからなり、
前記主要成分は、34質量%以上70質量%以下のCrと、17質量%以上45質量%以下のNi(ニッケル)と、10質量%以上35質量%以下のFe(鉄)とからなり、前記Crの質量含有率が最も大きく、前記Niと前記Feとの合計含有率が30質量%以上65質量%以下であり、
前記副成分は、0.1質量%以上2質量%以下のMn(マンガン)と、0.1質量%以上1質量%以下のSi(ケイ素)とからなり、
前記不純物は、0質量%超0.04質量%以下のP(リン)と、0質量%超0.01質量%以下のS(硫黄)と、0質量%超0.03質量%以下のC(炭素)と、0質量%超0.02質量%以下のN(窒素)と、0質量%超0.03質量%以下のO(酸素)とを含み、
前記製造物は、微細組織として、鍛造組織を有すると共に前記フェライト相の結晶粒内に前記オーステナイト相の粒が分散析出しており、前記フェライト相の占有率が15%以上85%以下であり、
室温引張試験による0.2%耐力が600 MPa以上で破断伸びが5%以上であることを特徴とするCr基二相合金製造物を提供するものである。
なお、本発明において、随意副成分とは、添加してもよいし添加しなくてもよい成分を意味する。
本発明は、上記の本発明に係るCr基二相合金製造物(I)において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記随意副成分は、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)およびTi(チタン)のうちの少なくとも一種からなり、
前記Cr基二相合金が前記随意副成分を含有する場合、前記V、Nb、TaおよびTiの合計原子含有率が、前記C、NおよびOの合計原子含有率の0.8倍以上2倍以下の範囲である。
(ii)前記分散析出しているオーステナイト相の粒(オーステナイト相析出粒)は、針状および/または鱗片状の形状を有している。
(iii)前記フェライト相の隣接する結晶粒間に前記オーステナイト相の層が介在している。
(iv)前記製造物は、回転機械の軸または軸受である。
(II)本発明の他の一態様は、上記のCr基二相合金製造物の製造方法であって、
前記Cr基二相合金の原料を混合・溶解して溶湯を形成した後に一旦凝固させて原料合金塊を形成する原料混合溶解工程と、
前記原料合金塊を再溶解して清浄化溶湯を用意する再溶解工程と、
前記清浄化溶湯を鋳造して鋳塊を形成する鋳造工程と、
前記鋳塊に対して1050℃以上1300℃以下の温度で熱処理を施して前記フェライト相の占有率を調整したフェライト率調整鋳塊を形成するフェライト率調整熱処理工程と、
前記フェライト率調整鋳塊に対して900℃以上1300℃以下の温度範囲内で熱間鍛造して成形体を形成する熱間鍛造成形工程と、
前記成形体に対して1050℃以上1250℃以下の温度で溶体化処理を施す溶体化熱処理工程と、
前記溶体化処理した成形体に対して800℃以上1000℃以下の温度で時効処理を施す時効熱処理工程とを有することを特徴とするCr基二相合金製造物の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、油井のような温度域・高腐食環境下においても好適に利用できるような金属材料として、従来と同等以上の高い耐食性と良好な機械的特性とを有しかつ低コストのCr基二相合金を用いた製造物、および該製造物の製造方法を提供することができる。
本発明に係るCr基二相合金製造物の金属組織例を示す光学顕微鏡写真である。 本発明に係るCr基二相合金製造物の製造方法の一例を示す工程図である。
本発明者等は、Cr、NiおよびFeを主要成分とするCr-Ni-Fe系合金、特にCrを34質量%以上含むCr-Ni-Fe系合金を用いた製造物において、化学組成、金属組織形態、機械的特性、および耐食性の関係について鋭意調査検討し、本発明を完成させた。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、本発明は、ここで取り挙げた実施形態に限定されるものではなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。
(本発明のCr基二相合金製造物の金属組織)
まず、本発明に係るCr基二相合金製造物の金属組織(微細組織)について説明する。
本発明の合金は、主要成分としてCr、NiおよびFeを含むCr-Ni-Fe系合金である。主要成分にFeを含む合金の金属組織は、通常、体心立方格子の結晶構造を有するフェライト組織(フェライト相、α相とも言う)と、面心立方格子の結晶構造を有するオーステナイト組織(オーステナイト相、γ相とも言う)と、ひずんだ体心立方格子の結晶構造を有するマルテンサイト組織(マルテンサイト相、α’相とも言う)とに大別される。
一般的に、フェライト相は、耐食性(例えば、耐SCC性)に優れ、高い機械的強度(例えば、0.2%耐力)を有するが、オーステナイト相に比して延性・靭性が相対的に低いとされている。オーステナイト相は、フェライト相に比して相対的に高い延性・靭性を有するが、機械的強度が相対的に低いとされている。また、通常環境において高い耐食性を示すが、腐食環境が厳しくなると耐SCC性が急激に低下するとされている。マルテンサイト相は、高い機械的強度(例えば、硬さ)を有するが、耐食性が比較的低いとされている。
一方、本発明に係る二相合金は、金属組織(微細組織)としてオーステナイト相およびフェライト相の二相が混在する合金である。二相合金は、オーステナイト相の利点(優れた延性・靭性)とフェライト相の利点(高い機械的強度、耐SCC性を含む優れた耐食性)とを併せ持つ特徴がある。また、Niよりも安価なCrを主要成分とすることから、Niを最大成分とするNi基合金よりも材料コストを低減できる利点がある。
本発明の二相合金は、フェライト相の占有率(以下、単純に「フェライト率」と称する場合がある)が15%以上85%以下であり、残部(すなわち85%以下15%以上)がオーステナイト相であることが好ましい。本発明における相の占有率とは、合金バルク試料の研磨面に対して、後方散乱電子回折像(EBSP)解析を行ったときの当該相の含有率(単位:%)と定義する。
フェライト率が85%超になると、二相合金の延性が低下し過ぎて期待される耐久性の確保が困難になる。一方、フェライト率が15%未満になると、期待される機械的強度(例えば、0.2%耐力、引張強さ)の確保が困難になる。該フェライト率は、20%以上70%以下がより好ましく、25%以上60%以下が更に好ましい。
また、本発明のCr基二相合金製造物は、機械的特性および耐食性の観点から、結晶粒径が小さい金属組織(例えば、鍛造組織)を有することが好ましい。言い換えると、本発明の製造物は、鍛造により成形されることが好ましい。結晶粒径が小さい金属組織を有することにより、結晶粒が粗大な鋳造凝固組織よりも良好な機械的特性・耐食性を得ることができる。具体的には、平均結晶粒径は30μm以下であることが好ましく、20μm以下がより好ましい。
本発明における平均結晶粒径は、合金バルク試料の研磨面の光学顕微鏡観察像または電子顕微鏡観察像を画像解析ソフト(NIH Image、パブリックドメインソフト)で読み込んで二値化した後、二値化した結晶粒の短径と長径とから算出される平均値と定義する。また、鍛造成形した後に、溶体化熱処理を施した金属組織であってもよいし、溶体化熱処理の後に時効熱処理を施した金属組織であってもよい。なお、本発明での平均結晶粒径は、後述するフェライト相結晶粒内に分散析出したオーステナイト相析出粒およびフェライト相結晶粒間に介在するオーステナイト相層を考慮しないものとする。
図1は、本発明に係るCr基二相合金製造物の金属組織例を示す光学顕微鏡写真である。図1に示したように、本発明に係るCr基二相合金は、暗色のフェライト相P1と明色のオーステナイト相P2とが互いに分散混合した金属組織を有していることが確認される。熱間鍛造を行っていることから、鋳造凝固組織(例えば、鋳造凝固組織特有の樹枝状晶)が破壊され少なくとも一部に等軸晶状の結晶粒が見られる組織(いわゆる、鍛造組織)を有しており、平均結晶粒径が30μm以下であることが確認される。
また、フェライト相P1の結晶粒を詳細に観察すると、各結晶粒内にオーステナイト相P2の粒が分散析出しており、該析出粒は針状および/または鱗片状の形状を有していることが確認される。さらに、フェライト相P1の隣接する結晶粒間には、オーステナイト相P2の層が介在していることが確認される。
(本発明のCr基二相合金の化学組成)
前述したように、本発明に係る二相合金は、Cr、NiおよびFeを主要成分とするCr-Ni-Fe系合金であり、副成分としてMnおよびSiを少なくとも含み、不純物を含む。随意的にV、Nb、TaおよびTiのうちの少なくとも一種を更に含むことがより好ましい。以下、本発明に係る二相合金の組成(各成分)について説明する。
Cr:34質量%以上70質量%以下
Cr成分は、本Cr基二相合金の主要成分の1つであり、高強度のフェライト相を形成すると共に、オーステナイト相に固溶して耐食性の向上に寄与する成分である。Cr成分の含有率は、34質量%以上70質量%以下が好ましく、34質量%以上65質量%以下がより好ましく、40質量%以上60質量%以下が更に好ましい。Cr含有率が34質量%未満になると、Cr基二相合金の機械的強度が低下する。一方、Cr含有率が70質量%超になると、Cr基二相合金の延性・靱性が低下する。また、耐食性と材料コストとの観点から、主要3成分(Cr、Ni、Fe)のうちでCr成分が最大含有率であることが好ましい。
Ni:17質量%以上45質量%以下
Ni成分は、本Cr基二相合金の主要成分の1つであり、オーステナイト相を安定化させて合金の二相状態の維持に寄与する(例えば、フェライト率調整熱処理や溶体化処理を施しても二相状態の維持が可能)と共に、Cr基二相合金に延性と靱性を付与する成分である。Ni成分の含有率は、17質量%以上45質量%以下が好ましく、20質量%以上40質量%以下がより好ましい。Ni含有率が17質量%未満になると、Cr基二相合金の延性・靱性が低下する。一方、Ni含有率が45質量%超になると、Cr基二相合金の機械的強度が低下する。
Fe:10質量%以上35質量%以下
Fe成分も、本Cr基二相合金の主要成分の1つであり、機械的強度を確保するための基本成分である。Fe成分の含有率は、10質量%以上35質量%以下が好ましく、10質量%以上32質量%以下がより好ましい。Fe含有率が10質量%未満になると、Cr基二相合金の延性・靱性が低下する。一方、Fe含有率が35質量%超になると、800℃近傍の温度域で金属間化合物のσ相が生成し易くなり、Cr基二相合金の延性・靱性が著しく低下する(いわゆる、σ相脆化)。言い換えると、Feの含有率を10〜35質量%の範囲に制御することにより、Cr基二相合金の機械的強度を確保しながらσ相の生成を抑制して延性・靱性の低下を抑制することができる。
Ni+Fe:30質量%以上65質量%以下
Ni成分とFe成分との合計含有率は、30質量%以上65質量%以下が好ましく、40質量%以上62質量%以下がより好ましく、45質量%以上55質量%以下が更に好ましい。該合計含有率が30質量%未満になると、Cr基二相合金の延性・靱性が不十分になる。一方、該合計含有率が65質量%超になると、機械的強度が大きく低下する。
Mn:0.1質量%以上2質量%以下
Mn成分は、本Cr基二相合金において脱硫・脱酸の役割を担い、機械的強度・靱性の向上および耐炭酸ガス腐食性の向上に寄与する副成分である。Mn成分の含有率は、0.1質量%以上2質量%以下が好ましく、0.3質量%以上1.8質量%以下がより好ましい。Mn含有率が0.1質量%未満になると、Mn成分による作用効果が十分に得られない。また、Mn含有率が2質量%超になると、硫化物(例えば、MnS)の粗大粒子を形成して耐食性や機械的強度の劣化要因になる。
Si:0.1質量%以上1質量%以下
Si成分は、本Cr基二相合金において脱酸の役割を担い、機械的強度・靱性の向上に寄与する副成分である。Si成分の含有率は、0.1質量%以上1質量%以下が好ましく、0.3質量%以上0.8質量%以下がより好ましい。Si含有率が0.1質量%未満になると、Si成分による作用効果が十分に得られない。また、Si含有率が1質量%超になると、酸化物(例えば、SiO2)の粗大粒子を形成して靱性の低下要因になる。
不純物
本二相合金における不純物としては、P、S、C、NおよびOが挙げられる。以下、これら不純物について説明する。
P:0質量%超0.04質量%以下
P成分は、二相合金の結晶粒界に偏析し易く、合金の靱性や粒界の耐食性を低下させる不純物成分である。P成分の含有率を0.04質量%以下に制御することで、それらの負の影響を抑制することができる。P含有率は、0.03質量%以下がより好ましい。
S:0質量%超0.01質量%以下
S成分は、本二相合金の構成成分と化合して比較的低融点の硫化物(例えば、Fe硫化物)を生成し易く、合金の靱性や耐孔食性を低下させる不純物成分である。S成分の含有率を0.01質量%以下に制御することで、それらの負の影響を抑制することができる。S含有率は、0.003質量%以下がより好ましい。
C:0質量%超0.03質量%以下
C成分は、固溶することによって合金を硬化させる作用効果がある一方、本二相合金の構成成分と化合して炭化物(例えば、Cr炭化物)を生成・粒界析出し易く、合金の耐食性や靱性を低下させる不純物成分でもある。C成分の含有率を0.03質量%以下に制御することで、それらの負の影響を抑制することができる。C含有率は、0.02質量%以下がより好ましい。
N:0質量%超0.02質量%以下
N成分は、本Cr基二相合金に固溶することによって機械的特性(例えば、硬さ)を向上させる作用効果がある。N成分の含有率は、0質量%超0.02質量%以下が好ましく、0質量%超0.015質量%以下がより好ましい。N成分を添加しなければ、その作用効果は得られない。また、N含有率が0.02質量%超になると、Cr基二相合金の構成成分と化合して窒化物(例えば、Cr窒化物)を生成・析出し、Cr基二相合金の延性・靱性が低下する。
O:0質量%超0.03質量%以下
O成分は、本二相合金の構成成分と化合して酸化物(例えば、Fe酸化物)を生成・析出し易く、合金の靱性を低下させる不純物成分である。O成分の含有率を0.03質量%以下に制御することで、その負の影響を抑制することができる。O含有率は、0.02質量%以下がより好ましい。
随意副成分
本二相合金は、随意副成分として、V、Nb、TaおよびTiのうちの少なくとも一種を更に含むことが好ましい。以下、これら随意副成分について説明する。なお、前述したように随意副成分とは、添加してもよいし添加しなくてもよい成分を意味する。
V成分、Nb成分、Ta成分、およびTi成分は、それぞれ本二相合金において脱炭・脱窒素・脱酸の役割を担う成分である。C、NおよびOの不純物成分との化合物を形成し、該不純物成分を集合化・安定化することにより、合金の靱性を改善する(靱性低下を抑制する)ことができる。
また、V成分の少量添加は、合金の機械的特性(例えば、硬さ)を向上させる副次的な作用効果がある。Nb成分の少量添加も、合金の機械的特性(例えば、靱性)を向上させる副次的な作用効果がある。Ta成分やTi成分の少量添加は、合金の耐食性を向上させる副次的な作用効果がある。
上記の随意副成分の合計原子含有率(原子%)は、不純物成分のC、NおよびOの合計原子含有率(原子%)の0.8倍以上2倍以下の範囲となるように制御することが好ましく、0.8倍以上1.5倍以下の範囲がより好ましい。随意副成分の合計含有率が、C、NおよびOの合計原子含有率の0.8倍未満になると、上記の作用効果が十分に得られない。一方、随意副成分の合計原子含有率が、C、NおよびOの合計原子含有率の2倍超になると、合金の延性・靭性が低下する。
(本発明のCr基二相合金製造物の製造方法)
次に、上記のCr基二相合金製造物の製造方法について説明する。図2は、本発明に係るCr基二相合金製造物の製造方法の一例を示す工程図である。
図2に示したように、この製造方法では、まず、所望の組成(主要成分+副成分+必要に応じて随意副成分)となるように二相合金の原料を混合・溶解して溶湯10を形成する原料混合溶解工程(ステップ1:S1)を行う。原料の混合方法や溶解方法に特段の限定はなく、高耐食性・高強度合金の製造における従前の方法を利用できる。例えば、溶解方法として真空溶解を好適に利用できる。また、真空炭素脱酸法などを併用して、溶湯10を精錬することが好ましい。原料混合溶解工程S1では、その工程の最後に溶湯10を一旦凝固させて原料合金塊を形成する。
次に、合金中の不純物成分(P、S、C、NおよびO)の含有率を制御する(合金の清浄度を高める)ための再溶解工程(ステップ2:S2)を行う。合金の清浄度を高められる限り再溶解方法に特段の限定はないが、例えば、真空アーク再溶解(VAR)やエレクトロスラグ再溶解(ESR)を好ましく利用できる。本工程により清浄化溶湯11を用意する。
次に、所定の鋳型を用いて鋳造して鋳塊20を形成する鋳造工程を行う(ステップ3:S3)。
次に、鋳塊20に対して、フェライト相とオーステナイト相との二相の相比調整(フェライト率調整)を行うための熱処理を施すフェライト率調整熱処理工程(ステップ4:S4)を行う。フェライト率調整熱処理の温度は、1050〜1300℃の範囲が望ましく、1100〜1250℃の範囲がより望ましい。熱処理時間としては、フェライト率が15%〜85%となるように0.5〜6時間保持の範囲で適宜調整すればよい。
フェライト率調整熱処理工程S4を行う意義は、次のようである。
前述したように、Cr基二相合金製造物において十分な機械的特性を確保するためには、平均結晶粒径を30μm以下に制御することが好ましい。そのような金属組織を得るためには、熱間鍛造成形における鍛造変形量を大きくする必要がある。言い換えると、熱間鍛造成形を行おうとする鋳塊20が、大きな鍛造変形量に耐えられる十分な延性・靱性を有している必要がある。
一方、鋳塊20においては、しばしば合金の配合組成から予定されるフェライト率よりもフェライト率が過大になる場合が多い。特にフェライト率が85%超になると、Cr基二相合金の延性・靱性が低下し過ぎて熱間鍛造によるひずみに耐えられず割れが生じ易くなり、熱間鍛造による製造物成形の歩留まりが低下する。本フェライト率調整熱処理を施すことにより、過剰なフェライト相をオーステナイト相に相変態させて、鋳塊20に必要な延性・靱性を確保することができる。
なお、鋳塊20が合金の配合組成から予定されるフェライト率よりも過少(オーステナイト相が過剰)な場合、本フェライト率調整熱処理を施すことにより、過剰なオーステナイト相をフェライト相に相変態させて、製造物の機械的強度を調整することができる。
次に、フェライト率調整を行った鋳塊に対して、熱間鍛造を施してほぼ最終形状に成形する熱間鍛造成形工程(ステップ5:S5)を行う。熱間鍛造・成形方法に特段の限定はなく、従前の方法を利用できるが、本熱間鍛造成形工程は900〜1300℃の温度範囲内で行うことが好ましい。該温度範囲内で熱間鍛造を施す(熱間鍛造中に該温度範囲を外れない)ことにより、鋳塊の鋳造欠陥を消失させ、所望のフェライト率を維持しながら粗大な鋳造凝固組織を壊すことができ、平均結晶粒径30μm以下の鍛造組織を有する二相合金の成形体30を得ることができる。
熱間鍛造成形工程S5の後、鍛造成形体30に対して溶体化処理を施すための溶体化熱処理工程(ステップ6:S6)を行う。溶体化熱処理の温度は、1050〜1250℃の範囲が望ましく、1100℃前後がより望ましい。溶体化処理を施すことにより、オーステナイト相およびフェライト相の各相内で化学的組成を均質化することができる。
加えて、溶体化熱処理工程S5の後に、時効熱処理工程(ステップ7:S7)を行うことは好ましい。時効熱処理の温度は、800〜1000℃の範囲が望ましく、900℃前後がより望ましい。熱処理時間としては、0.5〜6時間保持の範囲で適宜調整すればよい。
本時効熱処理を施すことにより、随意副成分と不純物成分(C、NおよびO)との化合物形成が促進されて該不純物成分をより集合化・安定化することができる。その結果、製造物の靱性をより改善する(靱性低下をより抑制する)ことができる。
上記のようにして製造した製造物は、Niに比して安価なCrを最大成分とする二相合金からなることから、従来と同等以上の高い耐食性・機械的特性を有しながら、Ni基合金からなる製造物よりも低コスト化を図ることができる。その結果、本発明に係る二相合金製造物は、厳しい腐食環境下において用いられる油井用機器部材(例えば、回転機械(圧縮機、ポンプなど)の部材(軸、軸受など))や海水環境機器部材(例えば、海水淡水化プラント機器部材、アンビリカルケーブル)や化学プラント機器部材(例えば、液化天然ガス気化装置部材)として好適に利用できる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜22および比較例1〜6の合金製造物の作製)
表1に示す化学組成を有する合金A1〜A9(随意副成分を含有しない合金)および合金B1〜B9(随意副成分を含有する合金)を用いて合金製造物(実施例1〜22および比較例1〜6)を作製した。各成分の含有率(単位:質量%)は、表1に記載の化学組成の総和が100質量%となるように換算してある。なお、合金A9は、スーパー二相鋼と称される市販の二相ステンレス鋼である。
Figure 2019131833
各合金製造物の作製は、図2に示した製造方法に沿って行った。まず、各合金の原料を混合し、高周波真空溶解炉を用いて真空溶解(2×10-3 Pa以下、1700℃以上)を行った後、一旦凝固させて原料合金塊を形成した。次に、真空アーク再溶解炉を用いて原料合金塊の再溶解工程を行って、清浄化溶湯を用意した。次に、所定の鋳型を用いて清浄化溶湯を鋳造し、各合金の鋳塊を作製した。
次に、実施例1〜22および比較例2〜5となる鋳塊に対して、フェライト率調整熱処理(1150〜1250℃で1〜3時間保持後、水冷)を施した。一方、比較例1,6となる鋳塊に対しては、フェライト率調整熱処理を行わなかった。
次に、上記の各鋳塊に対して、所定の形状となるように熱間鍛造による成形を行った。熱間鍛造条件としては、鍛造温度:1050〜1300℃、ひずみ速度:8 mm/s以下、鍛造1回あたりの圧下量:10 mm以下、鍛造回数:6回以上とした。
なお、鍛造温度の範囲は、次のようにして決定したものである。フェライト率調整熱処理を施した各実施例の鋳塊から引張試験用の試験片を別途切り出し加工して、該試験片に対してグリーブル試験機を用いて高温引張試験(試験温度:800〜1350℃、引張速度:10 mm/s)を行った。高温引張試験の結果、絞りが60%以上となる温度範囲を鍛造温度範囲とした。
次に、熱間鍛造成形を行った各合金試料に対して、溶体化熱処理(1050〜1150℃で0.5〜1.5時間保持後、水冷)を施した後、時効熱処理(800〜1000℃で1〜3時間保持後、水冷)を施した。以上の工程により、試験・評価用の合金製造物(実施例1〜22および比較例1〜6)を作製した。
(実施例1〜22および比較例1〜6の合金製造物に対する試験・評価)
(1)微細組織評価
各合金製造物から組織観察用の試験片を採取した後、該試験片の表面を鏡面研磨し、シュウ酸水溶液中で電界エッチングを行った。該研磨表面を光学顕微鏡で観察した。先に示した図1は、実施例3の金属組織の光学顕微鏡写真である。
前述したように、本発明のCr基二相合金製造物は、暗色のフェライト相P1と明色のオーステナイト相P2とが互いに分散混合した金属組織を有している。熱間鍛造を行っていることから、鋳造凝固組織(例えば、鋳造凝固組織特有の樹枝状晶)が破壊され、少なくとも一部に等軸晶状の結晶粒が見られる組織(いわゆる、鍛造組織)を有していることが確認される。
また、フェライト相P1の各結晶粒内にオーステナイト相P2の粒が分散析出しており、該析出粒は針状および/または鱗片状の形状を有していることが確認される。さらに、フェライト相P1の隣接する結晶粒間には、オーステナイト相P2の層が介在していることが確認される。他の実施例も同様であった。
次に、微細組織評価の他の一つとして、フェライト率測定を行った。上記の組織観察用試験片の研磨表面に対して後方散乱電子回折像(EBSP)解析を行い、フェライト相の占有率(フェライト率、単位:%)を測定した。該測定には、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡(S-4300SE)に株式会社TSLソリューションズ製の結晶方位測定装置を付加した装置を用いた。結果を後述する表2〜3に記す。
次に、微細組織評価の更に他の一つとして、平均結晶粒径測定を行った。各実施例の光学顕微鏡観察像に対して、画像解析ソフト(NIH Image、パブリックドメインソフト)を用いて各結晶粒を二値化し、その二値化した各結晶粒の短径と長径との平均から平均結晶粒径を算出した。その結果、いずれの実施例も平均結晶粒径が30μm以下であることが確認された。
(2)機械的特性評価
機械的特性評価の一つとして、先の組織観察用試験片に対してビッカース硬度計を用いてビッカース硬さ試験(荷重:500 g、荷重付加時間:20 s)を行った。ビッカース硬さは5測定の平均値として求めた。結果を表2〜3に併記する。
次に、用意した各合金製造物から引張試験用の試験片(直径:4 mm、平行部長さ:20 mm)を採取した。他の機械的特性評価として、各試験片に対して引張試験機を用いて室温引張試験(ひずみ速度:5×10-4 s-1)を行い、0.2%耐力、引張強さ、破断伸びを測定した。なお、明確な引張強さが測定される前に試験片が破断した場合は、破断応力を測定した。これら引張試験の結果は3測定の平均値として求めた。
破断伸びの測定の結果、15%以上をAランクと評価し、5%以上15%未満をBランクと評価し、2%以上5%未満をCランクと評価し、2%未満をDランクと評価した。Bランク以上を合格と判定し、Cランク以下を不合格と判定した。室温引張試験の結果を表2〜3に併記する。
(3)耐食性評価
耐食性評価の一種として孔食試験を行った。用意した各合金製造物から孔食試験用の分極試験片を採取した。孔食試験は、各分極試験片に対してJIS G0577(2005)に準拠して行った。具体的には、分極試験片にすきま腐食防止電極を装着し、参照電極として飽和カロメル電極を用い、分極試験片のアノード分極曲線を測定して、電流密度100μA/cm2に対応する孔食発生電位を求めた。孔食試験の結果を表2〜3に併記する。また、アノード分極曲線測定後、光学顕微鏡を用いて孔食の発生の有無を調査した。
耐食性評価の他の一種として耐硫酸性試験を行った。孔食試験と同様に各合金製造物から耐硫酸性試験用の分極試験片を採取した。耐硫酸性試験は、具体的には、分極試験片にすきま腐食防止電極を装着し、硫酸水溶液(pH=2.0、30℃)中における分極試験片のアノード分極曲線(自然浸漬電位から掃引速度200μA/sの動電位法で電位1300 mV(vs. SHE)に達するまで)を測定した。得られた分極曲線から電位400 mV(vs. SHE)に対応する腐食電流密度を求めた。
測定の結果、比較例6(市販の二相ステンレス鋼)における電位400 mV(vs. SHE)に対応する腐食電流密度は、1.32μA/cm2であった。これを100%として、各合金製造物の腐食電流密度の比率を算出した。耐硫酸性試験の結果を表2〜3に併記する。
Figure 2019131833
Figure 2019131833
表に示したように、フェライト率調整熱処理を行わなかった比較例1は、フェライト率が本発明の規定を外れており、良好な耐食性を示したものの延性が不十分であった。比較例2〜6は、合金の化学組成が本発明の規定を外れており、機械的特性(延性や機械的強度)または耐食性に難点があった。なお、市販の二相ステンレス鋼(A9)からなる比較例6のフェライト率は、45%であった。
これら比較例に対し、本発明に係る実施例は、いずれもオーステナイト相とフェライト相とが混在するフェライト率が15%〜85%の範囲にある二相合金であり、平均結晶粒径が30μm以下の鍛造組織を有していた。
また、本発明に係る実施例は、いずれも良好な機械的特性(例えば、200 Hv以上のビッカース硬さ、600 MPa以上の0.2%耐力、850 MPa以上の引張強さ、5%以上の破断伸び)を示すことが確認された。
耐食性としては、孔食試験を行った実施例において、電流密度100μA/cm2に対応する孔食発生電位は1.1 V以上であり、該孔食発生電位以上の領域では、過不動態域における酸素発生となった。それら全ての試料において、孔食発生は認められなかった。また、耐硫酸性試験を行った実施例は、比較例6に比して0.8〜16%の腐食電流密度を示した。すなわち、本発明に係る実施例は、優秀な耐食性を有することが確認された。
(4)組織安定性評価
次に、合金製造物の長期信頼性の観点から、組織安定性試験を行った。各実施例の合金製造物から組織安定性試験用の試験片を採取した後、800℃で60分間保持する熱処理を施した。各試験片の表面に対してX線回折測定を行い、金属間化合物のσ相の生成の有無を調査した。調査の結果、本発明に係る実施例は、いずれもσ相が検出されず、σ相が生成し難いことが確認された。
以上のような試験・評価結果から、本発明に係る実施例は、従来材と同等以上の良好な機械的特性と優秀な耐食性とを兼ね備えることが確認された。さらに、Cr成分の含有率が高いことから、従来のNi基合金材よりも低コスト化が可能と言える。
上述した実施形態や実施例は、本発明の理解を助けるために説明したものであり、本発明は、記載した具体的な構成のみに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。すなわち、本発明は、本明細書の実施形態や実施例の構成の一部について、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。
P1…フェライト相、P2…オーステナイト相、10…溶湯、11…清浄化溶湯、20…鋳塊、30…成形体。

Claims (6)

  1. フェライト相およびオーステナイト相の二相が混在するCr基二相合金を用いた製造物であって、
    前記Cr基二相合金の化学組成は、主要成分と副成分と不純物と随意副成分とからなり、
    前記主要成分は、34質量%以上70質量%以下のCrと、17質量%以上45質量%以下のNiと、10質量%以上35質量%以下のFeとからなり、前記Crの質量含有率が最も大きく、前記Niと前記Feとの合計含有率が30質量%以上65質量%以下であり、
    前記副成分は、0.1質量%以上2質量%以下のMnと、0.1質量%以上1質量%以下のSiとからなり、
    前記不純物は、0質量%超0.04質量%以下のPと、0質量%超0.01質量%以下のSと、0質量%超0.03質量%以下のCと、0質量%超0.02質量%以下のNと、0質量%超0.03質量%以下のOとを含み、
    前記製造物は、微細組織として、鍛造組織を有すると共に前記フェライト相の結晶粒内に前記オーステナイト相の粒が分散析出しており、前記フェライト相の占有率が15%以上85%以下であり、
    室温引張試験による0.2%耐力が600 MPa以上で破断伸びが5%以上であることを特徴とするCr基二相合金製造物。
  2. 請求項1に記載のCr基二相合金製造物において、
    前記随意副成分は、V、Nb、TaおよびTiのうちの少なくとも一種からなり、
    前記Cr基二相合金が前記随意副成分を含有する場合、前記V、Nb、TaおよびTiの合計原子含有率が、前記C、NおよびOの合計原子含有率の0.8倍以上2倍以下の範囲であることを特徴とするCr基二相合金製造物。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のCr基二相合金製造物において、
    前記分散析出しているオーステナイト相の粒は、針状および/または鱗片状の形状を有していることを特徴とするCr基二相合金製造物。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のCr基二相合金製造物において、
    前記フェライト相の隣接する結晶粒間に前記オーステナイト相の層が介在していることを特徴とするCr基二相合金製造物。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のCr基二相合金製造物において、
    前記製造物は、回転機械の軸または軸受であることを特徴とするCr基二相合金製造物。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のCr基二相合金製造物の製造方法であって、
    前記Cr基二相合金の原料を混合・溶解して溶湯を形成した後に一旦凝固させて原料合金塊を形成する原料混合溶解工程と、
    前記原料合金塊を再溶解して清浄化溶湯を用意する再溶解工程と、
    前記清浄化溶湯を鋳造して鋳塊を形成する鋳造工程と、
    前記鋳塊に対して1050℃以上1300℃以下の温度で熱処理を施して前記フェライト相の占有率を調整したフェライト率調整鋳塊を形成するフェライト率調整熱処理工程と、
    前記フェライト率調整鋳塊に対して900℃以上1300℃以下の温度範囲内で熱間鍛造して成形体を形成する熱間鍛造成形工程と、
    前記成形体に対して1050℃以上1250℃以下の温度で溶体化処理を施す溶体化熱処理工程と、
    前記溶体化処理した成形体に対して800℃以上1000℃以下の温度で時効処理を施す時効熱処理工程とを有することを特徴とするCr基二相合金製造物の製造方法。
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