JP2019131715A - インクジェットプリンタ用インク及びインクジェットプリンタ - Google Patents
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本実施形態に係るインクジェットプリンタ用インク(以下、単に「インク」と称することがある)は帯電制御方式のインクジェットプリンタに用いられ、主に、樹脂、着色剤、導電剤、非水溶剤等で構成されている。インクは、これらをスターラーチップやオーバーヘッドスターラー等で攪拌してお互いを相溶させることによって製造される。
本実施形態で用いることができる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂及び塩素含有の酢酸ビニル等が挙げられる。樹脂は、これらの中から選択されるいずれか1種を単独で用いることができ、また、2種以上を併用することができる。また、樹脂は、これらの樹脂のうちから選択される少なくとも1種の樹脂に他の任意の樹脂を混合したものを用いることができる。これらの樹脂の重量平均分子量はそれぞれ数千〜2万程度である。これらの樹脂は、用いる溶剤に溶解するものを選定する。
着色剤としては、染料又は顔料が挙げられる。
(a)染料
染料は用いる溶剤に溶解する材料であれば特に限定されず、適宜のものを用いることができる。染料として具体的には以下のものを用いることができる。
黒色系染料として、例えば、オイルブラックHBB(C.I.ソルベントブラック3)、バリファストブラック3804(C.I.ソルベントブラック34)、スピリットブラックSB(C.I.ソルベントブラック5)、オレオゾルファストブラックRL(C.I.ソルベントブラック27)、アイゼンゾットブラック8(C.I.ソルベントブラック7)、オラゾールブラックCN(C.I.ソルベントブラック28)等が挙げられる。
赤色系染料として、例えば、オイルレッド5B(C.I.ソルベントレッド27)、バリファストレッド1306(C.I.ソルベントレッド109)、オレオゾルファストレッドBL(C.I.ソルベントレッド132)、アイゼンゾットレッド1(C.I.ソルベントレッド24)、オラゾールレッド3GL(C.I.ソルベントレッド130)、フィラミッドレッドGR(C.I.ソルベントレッド225)等が挙げられる。
黄色系染料として、例えば、オイルイエロー129(C.I.ソルベントイエロー29)、オレオゾルブリリアントイエロー5G(C.I.ソルベントイエロー150)、アイゼンゾットイエロー1(C.I.ソルベントイエロー56)、オラゾールイエロー3R(C.I.ソルベントイエロー25)等が挙げられる。
青色系染料として、例えば、オイルブルー2N(C.I.ソルベントブルー35)、バリファストブルー1605(C.I.ソルベントブルー38)、オレオゾルファストブルーELN(C.I.ソルベントブルー70)、アイゼンゾットブルー1(C.I.ソルベントブルー25)、オラゾールブルーGN(C.I.ソルベントブルー67)等が挙げられる。
顔料は用いる溶剤に溶解する材料であれば特に限定されず、適宜のものを用いることができる。顔料として具体的には以下のものを用いることができる。
黒色顔料として、例えば、カーボンブラックが挙げられる。白色顔料として、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。赤色顔料として、例えば、カドミウムレッド、べんがら(三酸化第二鉄)、キナクリドンレッド等が挙げられる。黄色顔料として、例えば、クロムイエロー、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー等が挙げられる。青色顔料として、例えば、プルシアンブルー、銅フタロシアニン等が挙げられる。緑色顔料として、例えば、フタロシアニングリーン、クロムイエローと紺青の混合物、チタンコバルト緑等が挙げられる。
白色顔料を除く顔料は、平均粒子径100〜1000ナノメートルに粉砕したものを適切な分散剤とともに添加する。白色顔料は小さ過ぎると隠蔽率が低下するので、平均粒子径は200ナノメートル以上のものを適切な分散剤とともに用いる。
(a)化学構造の検討
本実施形態に係るインクは帯電制御方式のインクジェットプリンタで用いるので、導電性が求められる。そのため導電剤を添加する。導電剤は、非水溶剤中で陰イオン及び陽イオンを生じる塩構造である。導電剤は大量に添加するとインクの耐擦性、密着性等の物理的強度を低下させるので、添加率は極力低くするのが好ましい。そこで、導電剤を構成している塩構造のうち、陰イオン及び陽イオンを極力小さな分子量にすることが望まれる。
本発明者らが陰イオン種を詳細に検討したところ、元素の分子量を小数点以下四捨五入した整数で計算した場合、ジシアナミド(N-(CN)2)構造、すなわち、ジシアナミドイオンの分子量は66であるから、メタンスルホン酸イオンの分子量95、ベンゼンスルホン酸イオンの分子量157、トルエンスルホン酸イオンの分子量171等と比較して分子量が小さいため、ジシアナミド構造を有する塩を用いると、添加率(例えば質量%)を低くできることがわかった。また、ジシアナミド構造を有する塩はインクジェットプリンタ内部の金属部分を腐食させるおそれもないことから、導電剤として好ましいことがわかった。さらに、ジシアナミド構造を有する塩は、他の陰イオン種に比べてMEKやアセトン等のインクジェットプリンタ用インクの溶剤にも溶解し易い傾向があることもわかった。
なお、陽イオン種が多環(縮合環)であると、分子量が高くなる傾向にあることから同様に耐擦性、密着性が低下することが懸念される。
また、陽イオン種が飽和環であると、長鎖アルキル鎖を有するテトラアルキルアミンと同様、アルキル鎖がある程度長くならないとMEK等の非水溶剤への溶解性が低い。具体的には置換基としてアルキル鎖を有する飽和環の場合、陽イオン種の合計の炭素数が15以上でなければ、MEKに対して安定な溶解性を確保することが難しい。
このように陽イオンを含窒素不飽和複素単環にすることで、分子量の小さなジシアナミド塩構造の導電剤を得ることができる。
前述の化学構造検討により、陰イオンはジシアナミド構造、陽イオンは含窒素不飽和複素単環構造が好適であることがわかった。また、本発明者らが検討した結果、アルキル鎖が複素環内の窒素原子に結合することでMEK等のケトン系溶剤への溶解性が特に向上することがわかった。これは親水性のアンモニウムイオンの近傍に疎水性のアルキル鎖を配置することにより、疎水性の有機溶剤への溶解性が向上したものと推定する。
よって、下記の化合物1群、化合物2群又は化合物3群の構造を有する化合物が好適である。
なお、化合物1群において、R1、R2は炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖である。R3は水素又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素鎖である。
化合物2群において、R4、R5は炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖である。
化合物3群において、R6は炭素数6〜18の直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖である。
帯電制御方式のインクジェットプリンタのインク溶剤はメチルエチルケトン(MEK)が主流であり、本実施形態に係るインクもMEKを好適に使用することができる。本実施形態においては、MEK以外の溶剤も使用可能である。MEK以外の溶剤としては、例えば、アセトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン系溶剤、ジメトキシエタン、エタノール等を使用することができる。
本実施形態に係るインクジェットプリンタは、上記で説明した本実施形態に係るインクを用いて印字を行い、所望の印字を与えることが可能である。
帯電制御式のインクジェットプリンタのインク吐出、着弾までのプロセスを図1に示す。図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ用インクを用いたインクジェットプリンタ10の構成を説明する模式図である。
そして、図1に示すように、インクジェットプリンタ10は、ノズル1から吐出したインク滴2が、帯電電極3で電荷を付与され、その後、偏向電極4で方向を制御され、被印字物5に着弾する。印字されないインクはガター6から回収され、インクタンクに戻される。
平均粒子径300nmの二酸化チタン粉(100g)、水酸基価が130で重量平均分子量が15000のポリビニルブチラール樹脂(32g)、2−ブタノン(308g)をビーズミルで混合し、二酸化チタンの分散液を調製した。これに酸価72で重量平均分子量が10000のアクリル樹脂(100g)、両末端にポリエトキシ鎖を有するポリジメチルシロキサン誘導体である化合物4(2g)、及び下記の化合物5〜9のいずれかを1g、1.5g又は2g加えた。
なお、化合物5〜9は、陽イオン種がいずれも1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオンである。陰イオン種は、化合物5がジシアナミドイオン、化合物6がヘキサフルオロリン酸イオン、化合物7がメタンスルホン酸イオン、化合物8がp−トルエンスルホン酸イオン、化合物9が臭素イオンである。
それぞれのインクの抵抗を測定したところ、図2に示す結果となった。なお、図2は、実施例1で製造したインクジェットプリンタ用インクにおける導電剤の添加率と抵抗の関係を示すグラフである。
実施例1と同様に、平均粒子径300nmの二酸化チタン粉(100g)、水酸基価が130で重量平均分子量が15000のポリビニルブチラール樹脂(32g)、2−ブタノン(308g)をビーズミルで混合し、二酸化チタンの分散液を調製した。これに酸価72で重量平均分子量が10000のアクリル樹脂(100g)、両末端にポリエトキシ鎖を有するポリジメチルシロキサン誘導体である化合物4(2g)を加えた。但し、本実施例では化合物5〜9の代わりに化合物10〜12のいずれかを1g、1.5g又は2g加えた。
なお、実施例1で用いた化合物5及び実施例2で用いた化合物10〜12は、陰イオン種がいずれもジシアナミドイオンである。陽イオン種は、化合物5が1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、化合物10がテトラブチルアンモニウムイオン、化合物11が1−ヘキシルピリジニウムイオン、化合物12が1,1−プロピルピロリウムイオンである。
それぞれのインクの抵抗を測定したところ、図3に示す結果となった。なお、図3は、実施例2で製造したインクジェットプリンタ用インクにおける導電剤の添加率と抵抗の関係を示すグラフである。図3には、比較のため化合物5の結果も併記した。
また、化合物10と化合物11、12を比較すると、陽イオン種がアルキルアンモニウムイオンである化合物10よりも含窒素不飽和複素単環の陽イオンである化合物11、12の方がインクに対する添加率が同じ場合においてインクの抵抗を下げることも示された。
よって、樹脂の種類が変わっても化合物5は高い導電性を発揮することが示された。
よって、顔料の種類が変わっても化合物5は高い導電性を発揮することが示された。
2 インク滴
3 帯電電極
4 偏向電極
5 被印字物
6 ガター
10 インクジェットプリンタ
Claims (7)
- 少なくとも樹脂、着色剤、導電剤、非水溶剤を含有する帯電制御方式のインクジェットプリンタ用インクであり、
前記導電剤が、前記非水溶剤中で陰イオン及び陽イオンを生じる塩構造であり、
前記陰イオンがジシアナミド構造を有し、
前記陽イオンが含窒素不飽和複素単環構造を有する
ことを特徴とするインクジェットプリンタ用インク。 - 請求項1において、
前記含窒素不飽和複素単環構造が、含窒素不飽和複素五員環構造であることを特徴とするインクジェットプリンタ用インク。 - 請求項2において、
前記含窒素不飽和複素五員環構造が、イミダゾリウム構造であることを特徴とするインクジェットプリンタ用インク。 - 請求項3において、
前記イミダゾリウム構造の1位及び3位に炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖が結合していることを特徴とするインクジェットプリンタ用インク。 - 請求項2において、
前記含窒素不飽和複素五員環構造が、ピロリウム構造であり、前記ピロリウム構造の窒素原子に炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖が2本結合していることを特徴とするインクジェットプリンタ用インク。 - 請求項1において、
前記含窒素不飽和複素単環構造が、ピリジニウム構造であり、前記ピリジニウム構造の窒素原子に炭素数6〜18の直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖が結合していることを特徴とするインクジェットプリンタ用インク。 - 少なくとも樹脂、着色剤、導電剤、非水溶剤を含有し、前記導電剤が、前記非水溶剤中で陰イオン及び陽イオンを生じる塩構造であり、前記陰イオンがジシアナミド構造を有し、前記陽イオンが含窒素不飽和複素単環構造を有するインクジェットプリンタ用インクを用いたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
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