以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド踏面3を示す平面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド踏面3として形成されている。トレッド踏面3には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝30と、タイヤ幅方向に延びるラグ溝40とが、それぞれ複数形成されている。トレッド踏面3には、これらの複数の周方向主溝30とラグ溝40とにより、陸部であるブロック10が複数区画されている。
詳しくは、周方向主溝30は、4本がタイヤ幅方向に並んで形成されており、タイヤ赤道面CLを挟んでタイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に配設される2本の内側周方向主溝31と、2本の内側周方向主溝31のそれぞれのタイヤ幅方向外側に1本ずつ配設される2本の外側周方向主溝32と、が設けられている。また、ラグ溝40は、2本の内側周方向主溝31同士の間に配設される中央ラグ溝41と、タイヤ幅方向に隣り合う内側周方向主溝31と外側周方向主溝32との間に配設される中間ラグ溝42と、外側周方向主溝32のタイヤ幅方向外側に配設されるショルダーラグ溝43と、が設けられている。
ここでいう周方向主溝30は、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在する縦溝をいう。一般に周方向主溝30は、5.0mm以上の溝幅を有し、7.5mm以上の溝深さを有し、摩耗末期を示すトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を内部に有する。本実施形態では、周方向主溝30は、5.0mm以上の溝幅を有し、10mm以上の溝深さを有しており、タイヤ赤道面CLとトレッド踏面3とが交差するタイヤ赤道線(センターライン)と実質的に平行である。周方向主溝30は、タイヤ周方向に直線状に延在してもよいし、波形状又はジグザグ状に設けられてもよい。また、ラグ溝40は、溝幅が5.0mm以上10mm以下の範囲内になっており、溝深さが10mm以上20mm以下の範囲内になっている。
トレッド踏面3には、複数の周方向主溝30とラグ溝40とにより、複数のブロック10が形成されている。詳しくは、2本の内側周方向主溝31の間には、2本の内側周方向主溝31と中央ラグ溝41とにより区画されるブロック10である中央ブロック11が配設されている。また、タイヤ幅方向に隣り合う内側周方向主溝31と外側周方向主溝32との間には、内側周方向主溝31と外側周方向主溝32と中間ラグ溝42とにより区画されるブロック10である中間ブロック12が配設されている。また、外側周方向主溝32のタイヤ幅方向外側には、外側周方向主溝32とショルダーラグ溝43とにより区画されるブロック10であるショルダーブロック13が配設されている。
これらのようにトレッド踏面3に形成される複数のブロック10は、タイヤ周方向に隣り合う周方向主溝30同士の間でタイヤ周方向に並ぶことにより、ブロック列を形成している。つまり、中央ブロック11は、複数がタイヤ周方向に並ぶことにより、2本の内側周方向主溝31の間で中央ブロック列21を形成している。また、中間ブロック12は、複数がタイヤ周方向に並ぶことにより、タイヤ幅方向に隣り合う内側周方向主溝31と外側周方向主溝32との間に中間ブロック列25を形成している。また、ショルダーブロック13は、複数がタイヤ周方向に並ぶことにより、外側周方向主溝32のタイヤ幅方向外側にショルダーブロック列26を形成している。
さらに、トレッド踏面3には、周方向主溝30の溝幅やラグ溝40の溝幅より狭い溝幅でタイヤ周方向に延びる周方向細溝50が形成されている。具体的には、周方向細溝50は、2本の内側周方向主溝31の間に配設される中央細溝51と、外側周方向主溝32のタイヤ幅方向外側に配設されるショルダー細溝52とが設けられている。つまり、中央細溝51は、2本の内側周方向主溝31の間に位置する中央ブロック列21に形成され、ショルダー細溝52は、外側周方向主溝32のタイヤ幅方向外側に位置するショルダーブロック列26に形成されている。ここでいう周方向細溝50は、溝幅が1mm以上5mm以下の範囲内になっており、溝深さが10mm以上15mm以下の範囲内になっている。
これらのように形成される周方向細溝50のうち、中央細溝51は、2本の内側周方向主溝31の間の、タイヤ幅方向におけるほぼ中央付近に配設されており、タイヤ赤道面CL上、またはタイヤ赤道面CL上の近傍に位置している。このように形成される中央細溝51は、タイヤ周方向における両端が、中央ラグ溝41に開口している。つまり、中央細溝51は、タイヤ周方向に隣り合う中央ラグ溝41同士の間でタイヤ周方向に延びて形成されており、両端がそれぞれ中央ラグ溝41に開口している。
また、ショルダー細溝52は、外側周方向主溝32と、トレッド踏面3のタイヤ幅方向外側端であるデザインエンドEとの間の、タイヤ幅方向におけるほぼ中央付近に配設されている。ここでいうデザインエンドEは、トレッド部2のタイヤ幅方向最外側端をいい、トレッド部2において溝が形成されるタイヤ幅方向最外側端になっている。このように形成されるショルダー細溝52は、タイヤ周方向に延びつつ、タイヤ幅方向に繰り返し屈曲している。つまり、ショルダー細溝52とは、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し屈曲するジグザグ状の形状で、タイヤ周方向に延びている。
また、トレッド踏面3に形成される各ブロック10には、それぞれ複数のサイプ60が形成されており、特に、中央ブロック11と中間ブロック12とには、オープンサイプ61を含むサイプ60が少なくとも4本配設されている。各ブロック10に形成されるサイプ60は、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に繰り返し屈曲して形成されている。
なお、ここでいうサイプ60は、トレッド踏面3に細溝状に形成されるものであり、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、正規内圧の内圧条件で、無負荷時には細溝を構成する壁面同士が接触しないが、平板上で垂直方向に負荷させたときの平板上に形成される接地面の部分に細溝が位置する際、または細溝が形成される陸部の倒れ込み時には、当該細溝を構成する壁面同士、或いは壁面に設けられる部位の少なくとも一部が、陸部の変形によって互いに接触するものをいう。正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。本実施形態では、サイプ60は、幅が1mm未満の範囲内になっており、深さが5.0mm以上15mm以下の範囲内になっている。
図2は、図1のA部詳細図である。2本の内側周方向主溝31同士の間に配設される中央ラグ溝41は、タイヤ幅方向における両端がそれぞれ異なる内側周方向主溝31に開口している。また、中央ラグ溝41は、タイヤ幅方向に延びつつ、複数の箇所でタイヤ周方向に屈曲して形成されており、即ち、中央ラグ溝41には、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への角度が変化する部分である延在方向屈曲部45が、2箇所以上に形成されている。
本実施形態では、延在方向屈曲部45は、1つの中央ラグ溝41に対して2箇所に形成されている。2箇所の延在方向屈曲部45は、中央ラグ溝41に沿って一方の内側周方向主溝31側から他方の内側周方向主溝31側に向かった際における屈曲の方向が互いに反対方向になっており、これにより中央ラグ溝41は、クランク状の形状で形成されている。また、クランク状の形状で形成される中央ラグ溝41は、2箇所の延在方向屈曲部45から、内側周方向主溝31に向かって延びる部分のそれぞれが、タイヤ幅方向に対して傾斜しており、傾斜の方向と傾斜の角度は、延在方向屈曲部45から内側周方向主溝31に向かって延びる2箇所の部分で、互いに同じ方向と角度になっている。2本の内側周方向主溝31同士の間に配設される複数の中央ラグ溝41は、全て同等の形状で形成されている。
このように形成される中央ラグ溝41は、タイヤ周方向におけるピッチPcが、タイヤ周長の1%以上3%以下の範囲内になっている。なお、タイヤ周長は、タイヤ赤道面CLの位置におけるトレッド踏面3上でのタイヤ周方向における長さになっている。本実施形態では、タイヤ赤道面CLには中央細溝51や中央ラグ溝41が形成されているため、タイヤ周長は、中央ブロック11のトレッド踏面3が、中央細溝51上や中央ラグ溝41上まで延長されているものとして測定される。中央ラグ溝41は、このように測定されるタイヤ周長に対して、タイヤ周方向に隣り合う中央ラグ溝41同士のタイヤ周方向における距離である中央ラグ溝41のピッチPcが、1%以上3%以下の範囲内になっている。
また、中央ブロック11は、2本の内側周方向主溝31の間に形成される中央細溝51によって、タイヤ幅方向に2分割されている。つまり、中央細溝51は、中央ブロック11のタイヤ幅方向における中央付近の位置で、中央ブロック11のタイヤ周方向における両側を区画する中央ラグ溝41に対して、タイヤ周方向における両端が開口しているため、中央ブロック11は、この中央細溝51によって、タイヤ幅方向に2分割されている。中央ブロック11における、中央細溝51によって2分割されたそれぞれの部分は、分割中央ブロック11aになっており、分割中央ブロック11aは、中央細溝51のタイヤ幅方向における両側に形成されている。即ち、分割中央ブロック11aは、それぞれ内側周方向主溝31と中央ラグ溝41と中央細溝51とによって区画されている。
複数の中央ブロック11がタイヤ周方向に並んで配設されることにより形成される中央ブロック列21は、各中央ブロック11が、中央細溝51によって2つの分割中央ブロック11aに分割されることにより、中央ブロック列21自体も、中央細溝51によって2つの分割ブロック列22に分割される。この場合における分割ブロック列22は、複数の分割中央ブロック11aがタイヤ周方向に並ぶことにより構成されるブロック列になっている。
なお、中央ブロック11を分割し、端部が中央ラグ溝41に開口する中央細溝51は、中央ラグ溝41の延在方向屈曲部45に対して開口している。また、中央細溝51は、溝深さが内側周方向主溝31の溝深さに対して50%以上75%以下の範囲内となって形成されている。
中央細溝51は、中央ラグ溝41の延在方向屈曲部45に対して開口しているため、中央細溝51のタイヤ幅方向両側に位置する分割中央ブロック11a同士は、タイヤ周方向に互いにオフセットして配設されている。つまり、分割中央ブロック11aを区画する中央ラグ溝41は、クランク状の形状で形成されているため、中央ラグ溝41における延在方向屈曲部45のタイヤ幅方向両側で、タイヤ周方向における位置が異なっている。中央細溝51は、このようにクランク状の形状で形成される中央ラグ溝41の延在方向屈曲部45に対して開口しているため、中央ラグ溝41が、延在方向屈曲部45のタイヤ幅方向両側でタイヤ周方向の位置が異なっているのに伴い、中央細溝51のタイヤ幅方向における両側に位置する分割中央ブロック11a同士も、中央ラグ溝41と同様に、タイヤ周方向における位置が異なっている。これにより、中央細溝51のタイヤ幅方向両側に位置する分割中央ブロック11a同士は、タイヤ周方向にずらして配置されている。
また、内側周方向主溝31は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し屈曲して形成されており、これにより、中央ブロック11には、タイヤ幅方向における両端に、タイヤ幅方向外側に突出する突出部14が形成されている。中央ブロック11に形成される突出部14は、中央ブロック11における内側周方向主溝31によって区画される部分のうち、一方の中央ラグ溝41寄りの位置に形成されている。
つまり、中央ブロック11は、内側周方向主溝31と中央ラグ溝41とによって区画されているため、中央ブロック11における内側周方向主溝31によって区画される部分のタイヤ周方向における両側には、それぞれ中央ラグ溝41が配設され、それぞれの中央ラグ溝41が内側周方向主溝31に対して開口している。突出部14は、このように中央ブロック11における内側周方向主溝31によって区画される部分のうち、タイヤ周方向における一方の中央ラグ溝41の近傍に形成されている。また、1つの中央ブロック11のタイヤ幅方向における両側2箇所に形成される突出部14は、互いに異なる中央ラグ溝41の近傍に形成されている。このように形成される突出部14は、タイヤ周方向における長さが、内側周方向主溝31によって区画される部分のタイヤ周方向における長さの50%以下の長さになっている。
また、中央ブロック11には、2本のオープンサイプ61と2本のクローズドサイプ62とが形成されている。このうち、オープンサイプ61は、サイプ60の長さ方向における両端が、ブロックの端部で開口するサイプ60になっている。この場合におけるブロックの端部は、中央ブロック11が中央細溝51により分割されたブロックである分割中央ブロック11aの端部も含まれる。即ち、中央ブロック11に形成されるオープンサイプ61は、サイプ60の長さ方向における一端が、中央ブロック11或いは分割中央ブロック11aにおける内側周方向主溝31によって区画される端部で開口し、他端が分割中央ブロック11aにおける中央細溝51によって区画される端部で開口している。
また、クローズドサイプ62は、サイプ60の長さ方向における両端がブロック10内で終端するサイプ60になっており、中央細溝51によって2分割される中央ブロック11においては、クローズドサイプ62は、サイプ60の長さ方向における両端が分割中央ブロック11a内で終端している。本実施形態では、中央ブロック11には、各分割中央ブロック11aに、タイヤ周方向に並ぶ2本のオープンサイプ61と、オープンサイプ61のタイヤ周方向における両側に1本ずつ配設される2本のクローズドサイプ62との4本のサイプ60が形成されている。
中央ブロック11に形成されるサイプ60のうち、オープンサイプ61は、サイプ長さ方向とサイプ深さ方向との双方向に対してサイプ幅方向に振幅する三次元形状のサイプである、いわゆる三次元サイプになっている。つまり、三次元サイプであるオープンサイプ61は、サイプ長さ方向を法線方向とする断面視、及びサイプ深さ方向を法線方向とする断面視の双方にて、サイプ幅方向に振幅をもつ屈曲形状のサイプ壁面を有している。また、オープンサイプ61は、トレッド踏面3では、タイヤ幅方向に延びつつ5箇所以上で屈曲している。
また、クローズドサイプ62は、タイヤ幅方向に延びる際、またはタイヤ深さ方向に向かう際に屈曲せずにストレート状に延びる二次元形状のサイプである、いわゆる二次元サイプになっている。つまり、二次元サイプであるクローズドサイプ62は、サイプ長さ方向を法線とする任意の断面視(サイプ幅方向、且つ、サイプ深さ方向を含む断面視)にてストレート形状のサイプ壁面を有している。本実施形態では、クローズドサイプ62は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に複数回繰り返し屈曲しており、トレッド踏面3に表れる形状と同じ形状で、トレッド踏面3への開口部分からサイプ底まで形成されている。
これらのように形成される中央ブロック11は、タイヤ幅方向における幅Wcが、トレッド展開幅TDW(図1参照)の15%以上30%以下の範囲内になっている。この場合における中央ブロック11のタイヤ幅方向における幅Wcは、中央ブロック11のタイヤ幅方向両側に形成される突出部14における最もタイヤ幅方向外側に位置する部分同士の、タイヤ幅方向における距離になっている。なお、トレッド展開幅TDWに対する、中央ブロック11のタイヤ幅方向における幅Wcは、20%以上25%以下の範囲内であるのが好ましい。
図3は、図1のB部詳細図である。中間ブロック列25には周方向細溝50は形成されておらず、中間ブロック列25は、複数の中間ブロック12がタイヤ周方向に並ぶことによって形成される1列のブロック列になっている。このように構成される中間ブロック列25に形成され、隣り合う内側周方向主溝31と外側周方向主溝32との間に配設される中間ラグ溝42は、両端が内側周方向主溝31と外側周方向主溝32とに開口している。詳しくは、中間ラグ溝42は、タイヤ幅方向内側の端部が内側周方向主溝31に開口し、タイヤ幅方向外側の端部が外側周方向主溝32に開口している。このように、内側周方向主溝31と外側周方向主溝32とに開口してタイヤ幅方向に延びる中間ラグ溝42は、タイヤ周方向におけるピッチPmが、中央ラグ溝41のタイヤ周方向におけるピッチPcとほぼ同じ大きさになっている。
また、同じ内側周方向主溝31に対して開口する中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、内側周方向主溝31に対する開口位置が、タイヤ周長の0.5%以上1.0%以下の範囲内でタイヤ周方向にずれて配置されている。つまり、同じ内側周方向主溝31に対して開口する中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、内側周方向主溝31に対する中央ラグ溝41の開口部41aと、中間ラグ溝42における内側周方向主溝31に対する開口部42aとのタイヤ周方向における距離Lcが、タイヤ周長の0.5%以上1.0%以下の範囲内になっている。この場合における中央ラグ溝41の開口部41aと、中間ラグ溝42の開口部42aとのタイヤ周方向における距離Lcは、各中央ラグ溝41の開口部41aや中間ラグ溝42の開口部42aからみて、最も近い開口部41a、42a同士のタイヤ周方向における距離になっている。
これらのように、中央ブロック列21が有する中央ラグ溝41と、中間ブロック列25が有する中間ラグ溝42とは、タイヤ周方向におけるピッチがほぼ同じ大きさで、且つ、互いにタイヤ周方向にずれて配置されているため、中間ラグ溝42によって区画される中間ブロック12がタイヤ周方向に複数並んで配設される中間ブロック列25も、これに伴って中央ブロック列21に対してタイヤ周方向にずれて配置されている。即ち、中間ブロック列25は、中央ブロック列21に対して、タイヤ周長の0.5%以上1.0%以下の範囲内でタイヤ周方向にずれて配置されている。このため、中央ブロック列21を構成する中央ブロック11と、中間ブロック列25を構成する中間ブロック12とは、相対的にタイヤ周方向にずらして配置されている。
また、中央ラグ溝41の開口部41aと中間ラグ溝42の開口部42aとのタイヤ周方向における距離Lcは、中央ラグ溝41のタイヤ周方向におけるピッチPcに対しては、30%以上50%以下の範囲内になっている。中央ラグ溝41に対して、このようにタイヤ周方向にずれて配置される中間ラグ溝42は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜している。中間ラグ溝42の、タイヤ周方向への傾斜方向は、中央ラグ溝41における、延在方向屈曲部45と内側周方向主溝31との間の部分の傾斜方向の反対方向になっている。また、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向両側に配設される中間ラグ溝42は、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が、互いに同じ方向になっている。
また、内側周方向主溝31は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し屈曲して形成されることにより、中央ブロック11と同様に、中間ブロック12にも突出部15が形成されている。中間ブロック12の突出部15は、外側周方向主溝32によって区画される側にも形成されている。即ち、中間ブロック12には、中間ブロック12における内側周方向主溝31によって区画される側に形成されてタイヤ幅方向内側に突出する突出部15と、中間ブロック12における外側周方向主溝32によって区画される側に形成されてタイヤ幅方向外側に突出する突出部15とが形成されている。これらのように、中間ブロック12のタイヤ幅方向両側2箇所に形成される突出部15は、中央ブロック11の突出部14と同様に、2箇所の突出部15同士が、中間ブロック12のタイヤ周方向における両側に配設される中間ラグ溝42のうち、互いに異なる中間ラグ溝42の近傍に形成されている。
また、中間ブロック12には、2本のオープンサイプ61と2本のクローズドサイプ62とが形成されている。中間ブロック12に形成されるオープンサイプ61は、サイプ60の長さ方向における一端が、中間ブロック12における内側周方向主溝31によって区画される端部で開口し、他端が中間ブロック12における外側周方向主溝32によって区画される端部で開口している。中間ブロック12に形成されるクローズドサイプ62は、サイプ60の長さ方向における両端が中間ブロック12内で終端している。本実施形態では、中間ブロック12には、タイヤ周方向に並ぶ2本のオープンサイプ61と、オープンサイプ61のタイヤ周方向における両側に1本ずつ配設される2本のクローズドサイプ62との4本のサイプ60が形成されている。
また、中間ブロック12に形成されるサイプ60は、中央ブロック11に形成されるサイプ60と同様に、オープンサイプ61は三次元サイプになっており、クローズドサイプ62は二次元サイプになっている。また、オープンサイプ61は、トレッド踏面3では、タイヤ幅方向に延びつつ5箇所以上で屈曲している。
これらのように形成される中間ブロック12は、タイヤ幅方向における幅Wmが、トレッド展開幅TDW(図1参照)の7%以上15%以下の範囲内になっている。この場合における中間ブロック12のタイヤ幅方向における幅Wmは、中間ブロック12のタイヤ幅方向両側に形成される突出部15における最もタイヤ幅方向内側及び最もタイヤ幅方向外側に位置する部分同士の、タイヤ幅方向における距離になっている。
中央ブロック11と中間ブロック12とは、タイヤ幅方向における幅が異なっており、中央ラグ溝41のタイヤ周方向におけるピッチPcと中間ラグ溝42のタイヤ周方向におけるピッチPmとが、ほぼ同じ大きさになっているため、接地面積が互いに異なっている。具体的には、中央ブロック11の接地面積が、中間ブロック12の接地面積に対して、1.8倍以上2.3倍以下の範囲内になっている。この場合における接地面積は、ブロック10の接地時に実際に接地する部分の面積であり、即ち、ブロック10が形成される領域の面積から、この領域内に位置する溝の面積を除外した面積になっている。
図4は、図3のC−C断面図である。図5は、図3のD−D断面図である。中央ブロック11を区画する中央ラグ溝41と、中間ブロック12を区画する中間ラグ溝42とは、溝深さが同じ深さになっている。即ち、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、中央ラグ溝41の溝深さDcと中間ラグ溝42の溝深さDmが、同じ深さになっている。なお、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、溝深さが厳密に同じ深さでなくてもよく、双方のラグ溝40の溝深さ同士の差が、±5%以内であればよい。換言すると、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、中央ラグ溝41の溝深さDcと、中間ラグ溝42の溝深さDmとの差が、±5%以内になっている。即ち、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42との溝深さ同士の差が±5%以内である場合は、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、溝深さが同じ深さであるものとする。
また、これらのように溝深さが同じ深さで形成される中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、それぞれ溝深さが、周方向主溝30の溝深さの65%以上85%以下の範囲内になっている。つまり、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、内側周方向主溝31の溝深さと外側周方向主溝32の溝深さとのいずれに対しても、中央ラグ溝41の溝深さDcと中間ラグ溝42の溝深さDmとが、それぞれ65%以上85%以下の範囲内になっている。なお、中央ラグ溝41の溝深さDcと中間ラグ溝42の溝深さDmとは、それぞれ周方向主溝30の溝深さの70%以上80%以下の範囲内であるのが好ましい。
また、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、それぞれ溝壁46に、ラグ溝40の深さ方向に対する溝幅方向への角度が変化する部分である溝壁屈曲部47を1つ以上有している。溝壁屈曲部47は、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42を、それぞれの溝の溝幅方向と溝深さ方向と含む断面、即ち、それぞれの溝を、溝の延在方向に見る断面において、溝壁46が屈曲している部分になっている。
本実施形態では、中央ラグ溝41は、対向する溝壁46の双方に、溝壁屈曲部47が1つずつ形成されており、対向する溝壁46の溝壁屈曲部47同士の、中央ラグ溝41の溝深さ方向における位置は、互いに同じ位置になっている。中間ラグ溝42も同様に、溝壁屈曲部47は、対向する溝壁46の双方に1つずつ形成されており、対向する溝壁46の溝壁屈曲部47同士の、中間ラグ溝42の溝深さ方向における位置は、互いに同じ位置になっている。
また、中央ラグ溝41の溝壁屈曲部47と中間ラグ溝42の溝壁屈曲部47とは、共にトレッド踏面3から溝壁屈曲部47へ向かう際におけるラグ溝40の溝幅が小さくなる度合いよりも、溝壁屈曲部47から溝底48へ向かう際における溝幅が小さくなる度合いの方が大きくなるように屈曲している。即ち、中央ラグ溝41の溝壁屈曲部47と中間ラグ溝42の溝壁屈曲部47とは、共に溝壁46における溝壁屈曲部47の両側に位置する部分の相対角度が180°未満になっており、溝壁46における溝壁屈曲部47よりトレッド踏面3側の部分よりも、溝壁46における溝壁屈曲部47より溝底48側の部分の方が、対向する溝壁46に近付く方向に溝壁46が大きく傾斜する向きで屈曲している。
これらのように、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42との双方に形成される溝壁屈曲部47は、ラグ溝40の溝深さ方向におけるトレッド踏面3から溝壁屈曲部47までの距離が、中間ラグ溝42の溝壁46に形成される溝壁屈曲部47よりも、中央ラグ溝41の溝壁46に形成される溝壁屈曲部47の方が大きくなっている。つまり、中央ラグ溝41の溝深さ方向におけるトレッド踏面3から中央ラグ溝41の溝壁屈曲部47までの距離DBcは、中間ラグ溝42の溝深さ方向におけるトレッド踏面3から中間ラグ溝42の溝壁屈曲部47までの距離DBmよりも大きくなっている。具体的には、中央ラグ溝41のトレッド踏面3から溝壁屈曲部47までの距離DBcと、中間ラグ溝42のトレッド踏面3から溝壁屈曲部47までの距離DBmとは、0.7≦(DBm/DBc)<1の範囲内となる関係になっている。
また、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、それぞれ溝深さ方向においてトレッド踏面3から溝壁屈曲部47までの距離が、溝深さの65%以上90%以下の範囲内になっている。つまり、中央ラグ溝41は、中央ラグ溝41の溝深さ方向におけるトレッド踏面3から溝壁屈曲部47までの距離DBcが、中央ラグ溝41の溝深さDcの65%以上90%以下の範囲内になっている。同様に、中間ラグ溝42は、中間ラグ溝42の溝深さ方向におけるトレッド踏面3から溝壁屈曲部47までの距離DBmが、中間ラグ溝42の溝深さDmの65%以上90%以下の範囲内になっている。
なお、中央ラグ溝41は、中央ラグ溝41の溝深さ方向におけるトレッド踏面3から溝壁屈曲部47までの距離DBcが、中央ラグ溝41の溝深さDcの70%以上80%以下の範囲内であるのが好ましい。中間ラグ溝42も同様に、中間ラグ溝42の溝深さ方向におけるトレッド踏面3から溝壁屈曲部47までの距離DBmが、中間ラグ溝42の溝深さDmの70%以上80%以下の範囲内であるのが好ましい。
図6は、図1のF部詳細図である。外側周方向主溝32のタイヤ幅方向外側に配設されるショルダーブロック列26は、ショルダー細溝52によってタイヤ幅方向に2分割されている。つまり、ショルダーブロック列26は、ショルダー細溝52によって2分割されることにより、ショルダー細溝52を介してタイヤ幅方向に隣接する2つのブロック列27を有している。また、ショルダーブロック列26における、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向外側のブロック列27には、タイヤ幅方向に延びる細溝である幅方向細溝58が形成されている。
外側周方向主溝32のタイヤ幅方向外側に配設されるショルダーラグ溝43は、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向における両側に配設されている。即ち、ショルダーラグ溝43は、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側に配設される双方のブロック列27に配設されている。ショルダーラグ溝43のうち、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向における内側に配設されるショルダーラグ溝43は、タイヤ幅方向内側の端部が外側周方向主溝32に開口し、タイヤ幅方向外側の端部がショルダー細溝52に開口している。また、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向における内側に配設されるショルダーラグ溝43は、タイヤ周方向におけるピッチが、中間ラグ溝42のタイヤ周方向におけるピッチPmとほぼ同じ大きさになっている。また、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向における内側に配設されるショルダーラグ溝43は、溝深さが、中央ラグ溝41の溝深さに対して、75%以上85%以下の範囲内になっている。
また、ショルダーラグ溝43のうち、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向における外側に配設されるショルダーラグ溝43は、タイヤ幅方向内側の端部がショルダー細溝52に開口し、タイヤ幅方向外側の端部がデザインエンドEで開口している。その際に、ショルダーラグ溝43におけるショルダー細溝52に開口している側の端部は、ジグザグ状に形成されるショルダー細溝52における屈曲している部分に開口している。
また、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側に配設されるショルダーラグ溝43は、タイヤ周方向における位置が、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向両側のショルダーラグ溝43同士で互いに異なる位置に配設されている。
また、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向における外側に配設される幅方向細溝58は、タイヤ幅方向内側の端部が、ジグザグ状に形成されるショルダー細溝52における屈曲している部分に開口し、タイヤ幅方向外側の端部がデザインエンドEで開口している。ショルダー細溝52のタイヤ幅方向における外側では、タイヤ幅方向に延びるショルダーラグ溝43と幅方向細溝58とが、タイヤ周方向に交互に配設されている。
ショルダーブロック列26が有する2つのブロック列27のうち、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向内側に位置するブロック列27は、外側周方向主溝32とショルダーラグ溝43とショルダー細溝52とにより区画されるブロック10である複数のショルダーブロック13が、タイヤ周方向に並んでいる。各ショルダーブロック13には、4本のクローズドサイプ62が形成されている。ショルダーブロック13に形成されるクローズドサイプ62は、サイプ60の長さ方向における両端がショルダーブロック13内で終端する二次元サイプになっている。
また、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向外側に位置するブロック列27は、ショルダーラグ溝43と幅方向細溝58とショルダー細溝52とデザインエンドEとにより区画されるブロック10である複数のショルダーブロック13が、タイヤ周方向に並んでいる。また、ショルダー細溝52を介して隣接する2つのブロック列27が有するショルダーブロック13は、互いに他方のブロック列27が有するショルダーブロック13に対して、タイヤ周方向にずらして配置されている。
このように形成されるショルダーブロック列26のタイヤ幅方向内側を区画する外側周方向主溝32は、溝深さが溝幅に対して155%以上185%以下の範囲内になっている。ここで、外側周方向主溝32は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し屈曲しており、また、溝幅も、タイヤ幅方向への屈曲に伴って変化しているが、この場合における外側周方向主溝32の溝幅は、外側周方向主溝32の溝幅の最大幅になっている。外側周方向主溝32のタイヤ幅方向外側に配設されるショルダー細溝52は、溝深さが、この外側周方向主溝32の溝深さに対して、55%以上65%以下の範囲内になっている。
また、ショルダーラグ溝43のうち、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向における内側に配設されるショルダーラグ溝43は、タイヤ幅方向内側の端部が外側周方向主溝32に開口するが、同じ外側周方向主溝32に対して開口する中間ラグ溝42とショルダーラグ溝43とは、外側周方向主溝32に対する開口位置が、タイヤ周長の0.5%以上1.0%以下の範囲内でタイヤ周方向にずれて配置されている。つまり、同じ外側周方向主溝32に対して開口する中間ラグ溝42とショルダーラグ溝43とは、中間ラグ溝42における外側周方向主溝32に対する開口部42bと、ショルダーラグ溝43における外側周方向主溝32に対する開口部43aとのタイヤ周方向における距離Lsが、タイヤ周長の0.5%以上1.0%以下の範囲内になっている。この場合における中間ラグ溝42の開口部42bと、ショルダーラグ溝43の開口部43aとのタイヤ周方向における距離Lsは、各中間ラグ溝42の開口部42bやショルダーラグ溝43の開口部43aからみて、最も近い開口部42b、43a同士のタイヤ周方向における距離になっている。
これらのように、中間ブロック列25が有する中間ラグ溝42と、ショルダー細溝52のタイヤ幅方向における内側に配設されるショルダーラグ溝43とは、タイヤ周方向におけるピッチがほぼ同じ大きさで、且つ、互いにタイヤ周方向にずれて配置されているため、ショルダーラグ溝43によって区画されるショルダーブロック13がタイヤ周方向に複数並んで配設されるショルダーブロック列26も、これに伴って中間ブロック列25に対してタイヤ周方向にずれて配置されている。即ち、ショルダーブロック列26におけるショルダー細溝52のタイヤ幅方向内側に位置するブロック列27は、中間ブロック列25に対して、タイヤ周長の0.5%以上1.0%以下の範囲内でタイヤ周方向にずれて配置されている。このため、中間ブロック列25を構成する中間ブロック12と、ショルダーブロック列26におけるショルダー細溝52のタイヤ幅方向内側に位置するブロック列27を構成するショルダーブロック13とは、相対的にタイヤ周方向にずらして配置されている。
さらに、外側周方向主溝32によって区画される中間ブロック12とショルダーブロック13とには、外側周方向主溝32とラグ溝40とが交差する部分に、面取り16が形成されている。この面取り16は、トレッド踏面3からラグ溝40の溝深さ方向における深さが、5mm以上となって形成されている。詳しくは、中間ブロック12に形成される面取り16は、中間ブロック12を区画する中間ラグ溝42と外側周方向主溝32とが交差する部分に形成されており、即ち、中間ブロック12における、外側周方向主溝32に対する中間ラグ溝42の開口部42bが位置する部分に形成されている。また、ショルダーブロック13に形成される面取り16は、ショルダーブロック13を区画するショルダーラグ溝43と外側周方向主溝32とが交差する部分に形成されており、即ち、ショルダーブロック13における、外側周方向主溝32に対するショルダーラグ溝43の開口部43aが位置する部分に形成されている。
これらのように形成される面取り16のうち、中間ブロック12の面取り16は、1つの中間ラグ溝42によって区画される2つの中間ブロック12のうち一方の中間ブロック12のみに形成される。同様に、ショルダーブロック13の面取り16は、1つのショルダーラグ溝43によって区画される2つのショルダーブロック13のうち一方のショルダーブロック13のみに形成される。換言すると、中間ブロック12の面取り16は、中間ラグ溝42の開口部42bを形成する対向する溝壁のうち、一方の溝壁側にのみ形成されており、ショルダーブロック13の面取り16は、ショルダーラグ溝43の開口部43aを形成する対向する溝壁のうち、一方の溝壁側にのみ形成されている。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、用途が重荷重用空気入りタイヤになっている。この空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、リムホイールにリム組みしてインフレートした状態で車両に装着する。リムホイールにリム組みした状態の空気入りタイヤ1は、例えばトラックやバス等の大型の車両に装着して使用される。
空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド踏面3のうち下方に位置するトレッド踏面3が路面に接触しながら空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド踏面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド踏面3と路面との間の水が周方向主溝30やラグ溝40等に入り込み、これらの溝でトレッド踏面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、トレッド踏面3は路面に接地し易くなり、トレッド踏面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
また、雪上路面を走行する際には、空気入りタイヤ1は路面上の雪をトレッド踏面3で押し固めると共に、路面上の雪が周方向主溝30やラグ溝40に入り込むことにより、これらの雪も溝内で押し固める状態になる。この状態で、空気入りタイヤ1に駆動力や制動力が作用したり、車両の旋回によってタイヤ幅方向への力が作用したりすることにより、溝内の雪に対して作用するせん断力である、いわゆる雪柱せん断力が空気入りタイヤ1と雪との間で発生する。雪上路面を走行する際には、この雪柱せん断力によって空気入りタイヤ1と路面との間で抵抗が発生することにより、駆動力や制動力を路面に伝達することができ、車両は雪上路面での走行が可能になる。
また、雪上路面や氷上路面を走行する際には、周方向主溝30やラグ溝40、サイプ60のエッジ効果も用いて走行する。つまり、雪上路面や氷上路面を走行する際には、周方向主溝30のエッジやラグ溝40のエッジ、サイプ60のエッジが雪面や氷面に引っ掛かることによる抵抗も用いて走行する。また、氷上路面を走行する際には、氷上路面の表面の水をサイプ60で吸水し、氷上路面とトレッド踏面3との間の水膜を除去することにより、氷上路面とトレッド踏面3は接触し易くなる。これにより、トレッド踏面3は、摩擦力やエッジ効果によって氷上路面との間の抵抗が大きくなり、空気入りタイヤ1を装着した車両の走行性能を確保することができる。
これらのように、雪上路面や氷上路面を走行する際には、周方向主溝30やラグ溝40等の溝や、サイプ60が重要になるが、雪上路面や氷上路面を走行する際の性能である氷雪上性能を重視して溝深さを深くした場合、ブロック10の剛性が低下し易くなる。ブロック10の剛性が低下すると、ブロック10は摩耗し易くなり、特に、剛性が低い部分での摩耗が大きくなり易くなるため、偏摩耗が発生し易くなる。
これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42のそれぞれの溝壁46に溝壁屈曲部47が形成されている。このため、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42の溝深さを確保しつつ、中央ラグ溝41によって区画される中央ブロック11の剛性や、中間ラグ溝42によって区画される中間ブロック12の剛性を確保することができる。これにより、ブロック10のタイヤ周方向における両端付近の剛性が低くなることに起因して、ブロック10のトレッド踏面3における、空気入りタイヤ1の回転時における蹴り出し側の部分が大きく摩耗する偏摩耗である、ヒール&トウ摩耗を抑制することができる。
また、溝壁屈曲部47は、トレッド踏面3から溝壁屈曲部47までの距離が、中間ラグ溝42の溝壁46に形成される溝壁屈曲部47よりも、中央ラグ溝41の溝壁46に形成される溝壁屈曲部47の方が大きくなっている。このため、中央ラグ溝41は、中間ラグ溝42よりも溝容積が大きくなっている。トラックやバス等の大型の車両では、貨物の満載時の接地面積に対する空車時の接地面積が大幅に小さくなるため、空車時における雪上路面でのトラクション性能が低下し易くなるが、本実施形態では、空車時においても比較的大きな荷重で接地し易い、中央ブロック列21に形成される中央ラグ溝41の溝容積を確保できるため、空車時の雪柱せん断力を確保することができる。これにより、貨物の積載状態に関わらず、雪上路面でのトラクション性能を確保することができる。これらの結果、氷雪上性能と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、溝深さが同じ深さであるため、中央ラグ溝41によって区画する中央ブロック11と、中間ラグ溝42によって区画する中間ブロック12とで、剛性差が大きくなり過ぎることを抑制することができる。これにより、中央ブロック11と中間ブロック12との剛性差に起因して、ブロック10同士の間で摩耗の仕方が変化し、偏摩耗が発生することを抑制することができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を向上させることができる。
また、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、トレッド踏面3から溝壁屈曲部47までの距離DBc、DBmが、溝深さDc、Dmの65%以上90%以下の範囲内であるため、より確実に雪上路面でのトラクション性能を確保しつつ、ヒール&トウ摩耗を抑制することができる。つまり、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42が有する溝壁屈曲部47のトレッド踏面3からの距離DBc、DBmが、溝深さDc、Dmの65%未満である場合は、溝壁屈曲部47がトレッド踏面3に近付き過ぎる虞がある。この場合、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の溝容積が小さくなり過ぎて雪柱せん断力を確保し難くなる虞があり、雪上路面でのトラクション性能を確保し難くなる虞がある。また、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42が有する溝壁屈曲部47のトレッド踏面3からの距離DBc、DBmが、溝深さDc、Dmの90%を超える場合は、溝壁屈曲部47がトレッド踏面3に離れ過ぎる虞がある。この場合、中央ラグ溝41によって区画する中央ブロック11や、中間ラグ溝42によって区画する中間ブロック12の剛性を確保し難くなる虞があり、ヒール&トウ摩耗を抑制し難くなる虞がある。
これに対し、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42が有する溝壁屈曲部47のトレッド踏面3からの距離DBc、DBmが、溝深さDc、Dmの65%以上90%以下の範囲内である場合は、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の溝容積を確保しつつ、中央ブロック11や中間ブロック12の剛性を確保することができる。これにより、より確実に雪上路面でのトラクション性能を確保しつつ、ヒール&トウ摩耗を抑制することができる。この結果、より確実に氷雪上性能と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、それぞれ溝深さDc、Dmが、周方向主溝30の溝深さの65%以上85%以下の範囲内であるため、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42での雪柱せん断力を、比較的長期に亘って確保しつつ、中央ブロック11や中間ブロック12の剛性を確保することができる。つまり、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の溝深さDc、Dmが、周方向主溝30の溝深さの65%未満である場合は、溝深さDc、Dmが浅過ぎるため、トレッド踏面3の摩耗が進行した際に、雪柱せん断力が低下し易くなる虞がある。この場合、雪上路面でのトラクション性能が、空気入りタイヤ1の使用開始後の早い段階で低下する虞がある。また、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の溝深さDc、Dmが、周方向主溝30の溝深さの85%を超える場合は、溝深さDc、Dmが深過ぎるため、中央ブロック11や中間ブロック12の剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、ヒール&トウ摩耗を抑制するのが困難になる虞がある。
これに対し、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の溝深さDc、Dmが、周方向主溝30の溝深さの65%以上85%以下の範囲内である場合は、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42での雪柱せん断力を、比較的長期に亘って確保しつつ、中央ブロック11や中間ブロック12の剛性を確保することができる。この結果、より確実に氷雪上性能と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、中央ブロック11は、タイヤ幅方向における幅Wcが、トレッド展開幅TDWの15%以上30%以下の範囲内であるため、貨物の積載状態に関わらず、氷雪上性能を向上させることができる。つまり、中央ブロック11のタイヤ幅方向における幅Wcが、トレッド展開幅TDWの15%未満である場合は、空車時においても比較的大きな荷重で接地し易い中央ブロック11の幅Wcが狭過ぎるため、空車時の接地面積が小さくなり過ぎる虞がある。この場合、空車時における雪上路面でのトラクション性能を確保し難くなる虞がある。また、中央ブロック11のタイヤ幅方向における幅Wcが、トレッド展開幅TDWの30%を超える場合は、周方向主溝30の溝幅や中間ブロック12の幅Wm等の、中央ブロック11以外の部位のタイヤ幅方向における幅を確保するのが困難になる虞がある。この場合、周方向主溝30や中間ラグ溝42での雪柱せん断力を確保し難くなる虞があり、空車時以外の雪上路面での操縦安定性やトラクション性能を確保し難くなる虞がある。
これに対し、中央ブロック11のタイヤ幅方向における幅Wcが、トレッド展開幅TDWの15%以上30%以下の範囲内である場合は、中央ブロック11の幅Wcを確保することによって空車時における雪上路面でのトラクション性能を確保しつつ、空車時以外の雪上路面での操縦安定性やトラクション性能を確保することができる。この結果、より確実に氷雪上性能を向上させることができる。
また、中央ラグ溝41は、延在方向屈曲部45が2箇所以上に形成されているため、中央ブロック11に対する中央ラグ溝41の本数や、中央ブロック11の体積に対する中央ラグ溝41の容積の比率を増やすことができる。これにより、より確実に雪上路面でのトラクション性能を確保することができる。この結果、より確実に氷雪上性能を向上させることができる。
また、中央ラグ溝41は、タイヤ周方向におけるピッチPcが、タイヤ周長の1%以上3%以下の範囲内であるため、より確実に中央ブロック11のヒール&トウ摩耗を抑制しつつ、空車時における雪上路面でのトラクション性能を確保することができる。つまり、中央ラグ溝41のタイヤ周方向におけるピッチPcが、タイヤ周長の1%未満である場合は、中央ラグ溝41のピッチPcが小さ過ぎるため、中央ラグ溝41によって区画する中央ブロック11の剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、中央ブロック11のヒール&トウ摩耗を抑制し難くなる虞がある。また、中央ラグ溝41のタイヤ周方向におけるピッチPcが、タイヤ周長の3%を超える場合は、中央ラグ溝41の本数が少なくなり過ぎる虞がある。この場合、空車時における雪上路面でのトラクション性能を確保し難くなる虞がある。
これに対し、中央ラグ溝41のタイヤ周方向におけるピッチPcが、タイヤ周長の1%以上3%以下の範囲内である場合は、中央ブロック11の剛性を確保して中央ブロック11のヒール&トウ摩耗をより確実に抑制しつつ、空車時における雪上路面でのトラクション性能をより確実に確保することができる。この結果、より確実に氷雪上性能と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、中央ブロック11は、接地面積が中間ブロック12の接地面積に対して1.8倍以上2.3倍以下の範囲内であるため、空車時における雪上路面でのトラクション性能を、より確実に確保することができる。つまり、中央ブロック11の接地面積が、中間ブロック12の接地面積に対して1.8倍未満である場合は、中央ブロック11に配置することができるサイプ60の数が少なくなる虞がある。この場合、空車時においても比較的大きな荷重で接地し易い中央ブロック11のエッジ量を確保するのが困難になるため、空車時における雪上路面でのトラクション性能を確保し難くなる虞がある。また、中央ブロック11の接地面積が、中間ブロック12の接地面積に対して2.3倍を超える場合は、中央ブロック11における、周方向主溝30や中央ラグ溝41によって区画される部分のエッジが、中央ブロック11の接地面積に対して少なくなり過ぎる虞がある。この場合も、中央ブロック11のエッジ量を確保するのが困難になるため、空車時における雪上路面でのトラクション性能を確保し難くなる虞がある。
これに対し、中央ブロック11の接地面積が、中間ブロック12の接地面積に対して1.8倍以上2.3倍以下の範囲内である場合は、空車時における雪上路面でのトラクション性能を、より確実に確保することができる。この結果、より確実に氷雪上性能を向上させることができる。
また、中央ブロック11は、タイヤ周方向に延びる中央細溝51によってタイヤ幅方向に2分割されるため、中央ブロック11の剛性の低下を抑えつつ、中央ブロック列21のエッジを増加させることができる。これにより、中央ブロック11のヒール&トウ摩耗を抑制しつつ、雪上路面での操縦安定性を確保することができる。この結果、より確実に氷雪上性能と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、同じ内側周方向主溝31に対して開口する中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、内側周方向主溝31に対する開口位置が、タイヤ周長の0.5%以上1.0%以下の範囲内でタイヤ周方向にずれて配置されるため、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とを、タイヤ周方向に分散して配置することができる。これにより、より確実に雪上路面でのトラクション性能を確保することができる。この結果、より確実に氷雪上性能を向上させることができる。
また、外側周方向主溝32は、溝深さが溝幅に対して155%以上185%以下の範囲内であるため、より確実に雪上路面での操縦安定性を確保しつつ、ヒール&トウ摩耗を抑制することができる。つまり、外側周方向主溝32の溝深さが、溝幅に対して155%未満である場合は、外側周方向主溝32の溝容積が小さくなり過ぎて雪柱せん断力を確保し難くなる虞があり、雪上路面での操縦安定性を確保し難くなる虞がある。また、外側周方向主溝32の溝深さが、溝幅に対して185%を超える場合は、外側周方向主溝32の溝深さが深過ぎるため、外側周方向主溝32によって区画するブロック10の剛性を確保し難くなる虞があり、ヒール&トウ摩耗を抑制し難くなる虞がある。
これに対し、外側周方向主溝32の溝深さが、溝幅に対して155%以上185%以下の範囲内である場合は、外側周方向主溝32の溝容積を確保しつつ、外側周方向主溝32によって区画するブロック10の剛性を確保することができる。これにより、より確実に雪上路面での操縦安定性を確保しつつ、ヒール&トウ摩耗を抑制することができる。この結果、より確実に氷雪上性能と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、同じ外側周方向主溝32に対して開口する中間ラグ溝42とショルダーラグ溝43とは、外側周方向主溝32に対する開口位置が、タイヤ周長の0.5%以上1.0%以下の範囲内でタイヤ周方向にずれて配置されるため、中間ラグ溝42とショルダーラグ溝43とを、タイヤ周方向に分散して配置することができる。これにより、より確実に雪上路面でのトラクション性能を確保することができる。この結果、より確実に氷雪上性能を向上させることができる。
また、ショルダーブロック列26は、タイヤ周方向に延びるショルダー細溝52によってタイヤ幅方向に2分割されるため、ショルダーブロック13の剛性の低下を抑えつつ、ショルダーブロック列26のエッジを増加させることができる。これにより、ショルダーブロック13のヒール&トウ摩耗を抑制しつつ、雪上路面での操縦安定性を確保することができる。この結果、より確実に氷雪上性能と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、ショルダー細溝52は、溝深さが外側周方向主溝32の溝深さに対して55%以上65%以下の範囲内であるため、ショルダー細溝52の排雪性能を確保しつつ、ショルダーブロック13の剛性を確保することができる。つまり、ショルダー細溝52の溝深さが、外側周方向主溝32の溝深さの55%未満である場合は、ショルダー細溝52の溝深さが浅過ぎるため、雪上路面の走行時にショルダー細溝52に雪が詰まり易く、排雪性能を確保するのが困難になる虞がある。また、ショルダー細溝52の溝深さが、外側周方向主溝32の溝深さの65%を超える場合は、ショルダー細溝52の溝深さが深過ぎるため、ショルダーブロック13の剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、ヒール&トウ摩耗を抑制するのが困難になる虞がある。
これに対し、ショルダー細溝52の溝深さが、外側周方向主溝32の溝深さの55%以上65%以下の範囲内である場合は、ショルダー細溝52の排雪性能を確保しつつ、ショルダーブロック13の剛性を確保することができる。この結果、より確実に氷雪上性能と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、ショルダーラグ溝43の溝深さが、中央ラグ溝41の溝深さに対して75%以上85%以下の範囲内であるため、雪上路面でのトラクション性能を確保しつつ、ショルダーブロック13のヒール&トウ摩耗をより確実に抑制することができる。つまり、ショルダーラグ溝43の溝深さが、中央ラグ溝41の溝深さに対して75%未満である場合は、ショルダーラグ溝43の溝深さが浅過ぎるため、ショルダーラグ溝43での雪柱せん断力を確保するのが困難になる虞がある。この場合、雪上路面でのトラクション性能を確保し難くなる虞がある。また、ショルダーラグ溝43の溝深さが、中央ラグ溝41の溝深さに対して85%を超える場合は、ショルダーラグ溝43の溝深さが深過ぎるため、ショルダーラグ溝43によって区画するショルダーブロック13の剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、ヒール&トウ摩耗を抑制するのが困難になる虞がある。
これに対し、ショルダーラグ溝43の溝深さが、中央ラグ溝41の溝深さに対して75%以上85%以下の範囲内である場合は、ショルダーラグ溝43での雪柱せん断力を確保して雪上路面でのトラクション性能を確保しつつ、ショルダーブロック13のヒール&トウ摩耗をより確実に抑制することができる。この結果、より確実に氷雪上性能と耐偏摩耗性とを両立することができる。
また、中間ブロック12は、中央ブロック11とショルダーブロック13とに対して、タイヤ周方向にオフセットして配設されるため、空気入りタイヤ1の回転時に、タイヤ幅方向に隣り合う複数のブロック10が同時に路面から離れることを抑制でき、タイヤ幅方向に隣り合う複数のブロック10が異なるタイミングで路面から離れるようにすることができる。これにより、各ブロック10の蹴り出し側の部分が大きく摩耗することを抑制することができ、より確実にヒール&トウ摩耗を抑制することができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を向上させることができる。
また、中間ブロック12とショルダーブロック13とには、外側周方向主溝32とラグ溝40とが交差する部分に面取り16が形成されているため、中間ブロック12やショルダーブロック13に作用する応力集中を緩和することができ、より確実に偏摩耗を抑制することができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を向上させることができる。
また、中央ブロック11や中間ブロック12に形成されるオープンサイプ61は、三次元形状のサイプ60として形成されるため、サイプ60によって氷雪上性能を確保しつつ、サイプ60を形成することによるブロック10の剛性の低下を抑制することができる。つまり、三次元形状のサイプ60は、二次元形状のサイプ60と比較して、対向するサイプ壁面の噛合力が強いため、三次元形状のサイプ60は、ブロック10の剛性の低下を抑えて偏摩耗を抑制しつつ、エッジ効果によって氷雪上性能を確保することができる。この結果、より確実に氷雪上性能と耐偏摩耗性とを両立することができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、溝深さが同じ深さになっているが、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、溝深さが異なっていてもよい。中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とは、例えば、中央ラグ溝41よりも中間ラグ溝42の方が溝深さが深くなっていてもよい。中央ラグ溝41よりも中間ラグ溝42の方が溝深さが深くなるようにし、即ち、中央ラグ溝41の溝深さを中間ラグ溝42の溝深さよりも浅くすることにより、中央ラグ溝41によって区画する中央ブロック11の剛性を、より確実に向上させることができる。これにより、貨物の積載状態に関わらず大きな荷重で接地し易い中央ブロック11のヒール&トウ摩耗をより確実に抑制することができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を向上させることができる。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の溝壁46に形成される溝壁屈曲部47は、溝壁46における溝壁屈曲部47の両側に位置する部分の相対角度が180°未満になる向きで屈曲しているが、溝壁屈曲部47は、これ以外の形態で屈曲していてもよい。
図7は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、溝壁屈曲部47の両側の溝壁46同士の相対角度が180°を超えて屈曲する場合の説明図である。中央ラグ溝41や中間ラグ溝42に形成される溝壁屈曲部47は、例えば、図7に示すように、溝壁屈曲部47よりもトレッド踏面3側の位置では、トレッド踏面3から溝壁屈曲部47へ向かうに従って溝幅が小さくなり、溝壁屈曲部47よりも溝底48側の位置では、溝幅がほぼ一定になるように屈曲していてもよい。換言すると、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の溝壁屈曲部47は、溝壁屈曲部47よりもトレッド踏面3側では、対向する溝壁46同士がテーパー状に形成され、溝壁46における溝壁屈曲部47よりも溝底48側では、対向する溝壁46同士が平行に形成されるように屈曲していてもよい。即ち、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の溝壁屈曲部47は、溝壁46における溝壁屈曲部47より溝底48側の部分よりも、溝壁46における溝壁屈曲部47よりトレッド踏面3側の部分の方が、溝壁46の傾斜角度が大きくなるように、溝壁46における溝壁屈曲部47の両側に位置する部分の相対角度が180°を超える向きで屈曲していてもよい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の溝壁46に形成される溝壁屈曲部47は、対向する溝壁46の双方に形成されるが、溝壁屈曲部47は双方の溝壁46に形成されていなくてもよい。図8は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、溝壁屈曲部47が一方の溝壁46のみに形成される場合の説明図である。中央ラグ溝41や中間ラグ溝42に形成される溝壁屈曲部47は、例えば、図8に示すように、対向する溝壁46のうち、一方の溝壁46のみに形成され、他方の溝壁46には溝壁屈曲部47は形成されなくてもよい。中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の溝壁46に形成される溝壁屈曲部47は、それぞれの対向する溝壁46において、1つ以上有していればよい。
また、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の溝壁46に形成される溝壁屈曲部47は、1つの溝壁46に複数が形成されていてもよい。図9は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、1つの溝壁46に溝壁屈曲部47が複数形成される場合の説明図である。中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の溝壁屈曲部47は、例えば、図9に示すように、1つの溝壁46に2つが形成されていてもよい。このように、1つの溝壁46に溝壁屈曲部47が複数形成される場合は、トレッド踏面3から、トレッド踏面3に最も近い溝壁屈曲部47aまでの溝深さ方向における距離が、中間ラグ溝42の溝壁46に形成される溝壁屈曲部47aよりも、中央ラグ溝41の溝壁46に形成される溝壁屈曲部47aの方が大きくなっていればよい。つまり、1つの溝壁46に溝壁屈曲部47が複数形成される場合は、中間ラグ溝42における、トレッド踏面3からトレッド踏面3に最も近い溝壁屈曲部47aまでの溝深さ方向における距離DBmよりも、中央ラグ溝41における、トレッド踏面3からトレッド踏面3に最も近い溝壁屈曲部47aまでの溝深さ方向における距離DBcの方が大きくなっていればよい。
なお、このように中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の1つの溝壁46に、溝壁屈曲部47が複数形成される場合は、溝深さ方向においてトレッド踏面3からトレッド踏面3に最も近い溝壁屈曲部47aまでの距離が、溝深さの65%以上90%以下の範囲内であるのが好ましい。
また、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の1つの溝壁46に、溝壁屈曲部47が複数形成される場合は、同じ溝壁46に形成される複数の溝壁屈曲部47同士の溝深さ方向における位置が、同じ位置となって形成されていてもよい。図10は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、1つの溝壁46に溝壁屈曲部47が複数形成される場合の説明図である。中央ラグ溝41や中間ラグ溝42は、例えば、図10に示すように、1つの溝壁46に溝壁屈曲部47が2つ形成され、2つの溝壁屈曲部47同士の溝深さ方向における位置が同じ位置となることにより、溝壁46における溝壁屈曲部47同士の間の部分がトレッド踏面3と平行に形成される、ひな壇形状で形成されていてもよい。
図11は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、1つの溝壁46に溝壁屈曲部47が複数形成される場合の説明図である。また、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の1つの溝壁46に、溝壁屈曲部47が複数形成される場合は、屈曲の向きが異なる溝壁屈曲部47が、1つの溝壁46に3つ以上形成されていてもよい。この場合、例えば、図11に示すように、1つの溝壁46に形成される3つ以上の溝壁屈曲部47により、対向する溝壁46同士がテーパー状に形成される部分と、ひな壇形状に形成される部分とが組み合わされて、1つの溝壁46に形成されてもよい。
図12は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、溝底48に突起部49が形成される場合の説明図である。また、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42には、図12に示すように、溝底48に、溝底48からトレッド踏面3の方向に突出した突起部49が形成されていてもよい。中央ラグ溝41や中間ラグ溝42は、溝壁46に溝壁屈曲部47が形成されていれば、溝底48の形状は問わない。
また、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42は、溝壁46に形成される溝壁屈曲部47が、互いに異なる形態で形成されていてもよい。中央ラグ溝41や中間ラグ溝42は、対向する溝壁46に1つ以上の溝壁屈曲部47を有していれば、溝壁屈曲部47の数や屈曲の形態、溝底48の形状は問わない。
また、上述した実施形態では、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の溝壁46に溝壁屈曲部47が形成されているが、ショルダーラグ溝43や周方向主溝30に、同様の形態の溝壁屈曲部が形成されていてもよい。
また、上述した実施形態では、1つの中央ラグ溝41の2箇所に延在方向屈曲部45が形成されているが、延在方向屈曲部45は、1つの中央ラグ溝41に対して3箇所以上形成されていてもよい。1つの中央ラグ溝41に形成される延在方向屈曲部45の数は、中央ラグ溝41のピッチPc等に応じて適宜設定するのが好ましい。
また、上述した実施形態では、中央ブロック11は、中央細溝51によってタイヤ幅方向に2分割されているが、中央ブロック11は、3分割以上で分割されていてもよい。つまり、中央細溝51は、2本の内側周方向主溝31の間には、中央細溝51が2本以上形成されていてもよい。同様に、ショルダー細溝52も、外側周方向主溝32のタイヤ幅方向外側に2本以上形成されていてもよく、ショルダーブロック列26は、2本以上のショルダー細溝52によってタイヤ幅方向に3分割以上で分割されていてもよい。中央細溝51は、中央ブロック11のタイヤ幅方向における幅Wcや、トレッド展開幅TDWに対する中央ブロック11の幅Wcの割合等に応じて適宜設定するのが好ましい。同様に、ショルダー細溝52も、ショルダーブロック列26のタイヤ幅方向における幅や、トレッド展開幅TDWに対するショルダーブロック列26の幅の割合等に応じて適宜設定するのが好ましい。
また、上述した実施形態では、中間ブロック12とショルダーブロック13とにおける外側周方向主溝32側の部分に面取り16が形成されているが、面取り16は、中間ブロック12における内側周方向主溝31と中間ラグ溝42とが交差する部分に形成されていてもよい。また、中央ブロック11における内側周方向主溝31と中央ラグ溝41とが交差する部分に、同様の形態の面取り16が形成されていてもよい。
また、中央ブロック11の分割中央ブロック11aと中間ブロック12とには、2本のオープンサイプ61と2本のクローズドサイプ62とが形成され、ショルダーブロック13には、4本のクローズドサイプ62が形成されているが、各ブロック10に形成されるサイプ60は、これ以外の本数や構成で形成されていてもよい。ブロック10に形成されるサイプ60は、サイプ60を形成するブロック10の位置や大きさ等に応じて適宜設定するのが好ましい。
また、上述した実施形態では、周方向主溝30は4本が形成されているが、周方向主溝30は4本以外であってもよい。周方向主溝30は、少なくとも2本の内側周方向主溝31同士の間に配設される中央ラグ溝41と、タイヤ幅方向に隣り合う内側周方向主溝31と外側周方向主溝32との間に配設される中間ラグ溝42とを設けることができる本数であれば、本数は問わない。
[実施例]
図13A〜図13Eは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、氷上路面や雪上路面でのトラクション性能、操縦安定性である氷雪上性能と、偏摩耗のし難さについての性能である耐偏摩耗性とについての試験を行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが275/80R22.5サイズの空気入りタイヤ1をJATMAで規定される規定リムのリムホイールにリム組みし、空気圧をJATMAで規定される最大空気圧に調整し、2−D4の試験車両(トラック)に装着してテスト走行をすることにより行った。
各試験項目の評価方法は、氷雪上性能については、氷上路面と雪上路面とを有するテストコースを試験車両で走行した際における、テストドライバーによるフィーリング評価を行い、フィーリング評価を、後述する従来例を100として指数で表すことによって評価した。数値が大きいほど氷上路面や雪上路面での操縦安定性が高く、氷雪上性能が優れていることを示している。
また、耐偏摩耗性については、試験車両で20,000km走行後のヒール&トウ摩耗の摩耗量、具体的には、各ブロック10の蹴り出し側と踏み込み側との摩耗量の差を測定し、測定した摩耗量の差を、後述する従来例を100とする指数で表示した。この数値が大きいほど、ブロック10の蹴り出し側と踏み込み側との摩耗量の差が小さく、即ち、ヒール&トウ摩耗が少なく、耐偏摩耗性に優れていることを示している。
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1〜41と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例との43種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例の空気入りタイヤは、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42に溝壁屈曲部47が形成されていない。
なお、図13A〜図13Eにおいて、「分割中央ブロックの配置形態」における「通常配置」は、中央細溝51のタイヤ幅方向両側に位置する分割中央ブロック11a同士がタイヤ周方向にオフセットされておらず、分割中央ブロック11a同士のタイヤ周方向における位置がほぼ同じ位置となる配置状態を示している。また、図13A〜図13Eにおいて、「ショルダーブロックの配置形態」における「−」は、外側周方向主溝32のタイヤ幅方向外側にショルダー細溝52が形成されていない状態を示している。また、図13A〜図13Eにおいて、「中間ブロックと、中央ブロック及びショルダーブロックの配置形態」における「通常配置」は、中間ブロック12が、中央ブロック11やショルダーブロック13に対してタイヤ周方向にオフセットされておらず、中間ブロック12と、中央ブロック11及びショルダーブロック13とのタイヤ周方向における位置がほぼ同じ位置となる配置状態を示している。
また、比較例の空気入りタイヤは、中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とのそれぞれの溝壁46に溝壁屈曲部47が形成されているものの、トレッド踏面3から溝壁屈曲部47までの距離が、中央ラグ溝41よりも中間ラグ溝42の方が大きくなっている。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜41は、全て中央ラグ溝41と中間ラグ溝42とのそれぞれの溝壁46に溝壁屈曲部47が形成され、トレッド踏面3から溝壁屈曲部47までの距離が、中間ラグ溝42よりも中央ラグ溝41の方が大きくなっている。さらに、実施例1〜41に係る空気入りタイヤ1は、中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の溝深さDc、Dmに対するトレッド踏面3から溝壁屈曲部47までの距離DBc、DBmや、周方向主溝30の溝深さに対する中央ラグ溝41や中間ラグ溝42の溝深さDc、Dm、トレッド展開幅TDWに対する、中央ブロック11のタイヤ幅方向における幅Wc、中央ラグ溝41の延在方向屈曲部45の数、タイヤ周長に対する中央ラグ溝41のピッチPc、中間ブロック12の面積に対する中央ブロック11の面積、中央ブロック11の分割数、分割中央ブロック11aの配置形態、周方向主溝30の溝幅に対する溝深さ、ショルダーブロック13の配置形態、周方向主溝30の溝深さに対するショルダー細溝52の溝深さ、中央ラグ溝41の溝深さDcに対するショルダーラグ溝43の溝深さ、中間ブロック12と、中央ブロック11及びショルダーブロック13の配置形態、オープンサイプ61の形状がそれぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、図13A〜図13Eに示すように、実施例1〜41に係る空気入りタイヤ1は、従来例や比較例に対して、氷雪上性能と耐偏摩耗性とを、共に向上させることができることが分かった。つまり、実施例1〜41に係る空気入りタイヤ1は、氷雪上性能と耐偏摩耗性とを両立することができる。