JP2019123796A - 水性脂溶性重合開始剤分散体、及び水性ポリウレタン樹脂分散体組成物 - Google Patents

水性脂溶性重合開始剤分散体、及び水性ポリウレタン樹脂分散体組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 水性ポリウレタン樹脂分散体と混合使用が可能な重合開始剤分散体、及び、界面活性剤の成分を含有しない水性ポリウレタン樹脂分散体組成物を提供する。【解決手段】 水性ポリウレタン樹脂分散体(A1)中のポリウレタン樹脂粒子に、脂溶性重合開始剤(B)が内包された、水性脂溶性重合開始剤分散体、及び、ポリウレタン樹脂粒子中に重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体(A2)と、水性脂溶性重合開始剤分散体とを含む、水性ポリウレタン樹脂分散体組成物である。【選択図】 なし

Description

本発明は、水性脂溶性重合開始剤分散体、及び水性ポリウレタン樹脂分散体組成物に関する。
従来、水性ポリウレタン樹脂分散体は、各種基材への密着性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐溶剤性等に優れていることから、例えば、塗料、インク、接着剤、各種コーティング剤として紙、プラスチックス、フィルム、金属、ゴム、エラストマー、繊維製品などに幅広く使用されている。
そのような、水性ポリウレタン樹脂分散体としては、例えば、ポリウレタン樹脂と(メタ)アクリレート化合物とを含む水性ポリウレタン樹脂分散体、及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンのような光重合開始剤と界面活性剤とから得られた光重合開始剤分散体を混合して得られる、エネルギー線硬化型樹脂水性分散体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2008−248014号公報
特許文献1では、光重合開始剤と界面活性剤とから得られた光重合性開始剤分散体を使用するため、得られるポリウレタン膜中に界面活性剤の成分が混入してしまうという問題があった。界面活性剤は、ポリウレタン膜の調製段階では、主に脂溶性である光重合開始剤を水系媒体中に均一分散させるために必要である。しかし、界面活性剤はポリウレタン膜にとっては不純物である。界面活性剤の成分はポリウレタン膜中に混入しないことが好ましく、この点の解決が望まれていた。
本発明の課題は、即ち、上記問題点を解決し、水性ポリウレタン樹脂分散体と混合使用が可能な重合開始剤分散体を提供するものである。
本発明の課題は、また、界面活性剤の成分を含有しない水性ポリウレタン樹脂分散体組成物を提供するものである。
本発明の課題は、水性ポリウレタン樹脂分散体(A1)中のポリウレタン樹脂粒子に、脂溶性重合開始剤(B)が内包された、水性脂溶性重合開始剤分散体によって解決される。
本発明の課題は、また、ポリウレタン樹脂粒子中に重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体(A2)と、前記水性脂溶性重合開始剤分散体とを含む、水性ポリウレタン樹脂分散体組成物によって解決される。
本発明により、界面活性剤を使用しない水性脂溶性重合開始剤分散体を提供することができる。
また、本発明の水性脂溶性重合開始剤分散体は、ポリウレタン樹脂粒子中に重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体(A2)と混合することにより水性ポリウレタン樹脂分散体組成物とすることができる。
当該水性ポリウレタン樹脂分散体組成物を使用することで不純物の混入が少ないポリウレタン樹脂硬化膜を製造することができる。本発明は、ポリウレタン樹脂が脂溶性重合開始剤を水系媒体に均一分散可能にしつつも、界面活性剤ではないポリウレタン樹脂粒子に取り込まれた脂溶性重合開始剤が、物理的な距離により重合性不飽和化合物と接触しづらいと考えられるにもかかわらず重合反応を起こし、ポリウレタン膜を良好に形成できるという、予測できない効果に、少なくとも部分的に基づく。
[水性脂溶性重合開始剤分散体]
本発明の「水性脂溶性重合開始剤分散体」は、「水性ポリウレタン樹脂分散体(A1)中のポリウレタン樹脂粒子」に、「脂溶性重合開始剤(B)」が内包され、水系媒体中に分散しているものである。
ここで、「ポリウレタン樹脂粒子に内包された」の「内包」とは、ポリウレタン樹脂粒子と脂溶性重合開始剤(B)とが完全に分離・独立して水性媒体に分散している状態以外を広く意味する。
具体的には、脂溶性重合開始剤(B)の一部又はほとんどが水性ポリウレタン樹脂分散体(A1)中のポリウレタン樹脂粒子に包含されている状態を意味し、より具体的には、水系媒体に分散している水性ポリウレタン樹脂分散体(A1)のポリウレタン粒子中又は表面に脂溶性重合開始剤(B)が存在していることを意味する。
ここで、水性ポリウレタン樹脂分散体(A1)は、ポリカーボネートポリオール由来の構造、ポリイソシアネート由来の構造、及び酸性基含有ポリオール由来の構造を有するポリウレタン樹脂が、水系媒体に分散しているものである。
本発明の水性脂溶性重合開始剤分散体では、当該分散体の機能や特性を損なわない範囲において、脂溶性重合開始剤(B)の一部が部分的に水性脂溶性重合開始剤分散体の外(水系媒体中)に存在していてもよい。
更に、水性脂溶性重合開始剤分散体における脂溶性重合開始剤(B)の存在位置は、特に限定されず、水性ポリウレタン樹脂分散体(A1)中のポリウレタン樹脂粒子の中心付近又は中心付近からずれた、水性ポリウレタン樹脂分散体(A1)粒子表面を含む任意の位置に、単一又は複数に分離して存在していても構わない。
[水性脂溶性重合開始剤分散体の製造方法]
本発明の水性脂溶性重合開始剤分散体は、水性ポリウレタン樹脂分散体(A1)中のポリウレタン樹脂粒子に、脂溶性重合開始剤(B)が内包されたものであり、ポリカーボネートポリオール、ポリイソシアネート、及び酸性基含有ポリオールを反応させた後、酸性基を中和剤により中和してウレタンプレポリマーを製造した後、中和剤及び脂溶性重合開始剤(B)と混合することによって製造できる。
その反応形態は特に限定されず、公知のワンショット法やプレポリマー法を適宜選択できる。
具体的には、例えば、
ポリカーボネートポリオール、ポリイソシアネート、及び酸性基含有ポリオールを、溶媒の存在下、又は非存在下で反応させてウレタンプレポリマーとする工程;
前記プレポリマー中の酸性基を中和剤により中和する工程;
中和されたプレポリマーを水系媒体に分散させる工程;
脂溶性重合開始剤(B)を加えて混合する工程;
水系媒体に分散されたプレポリマーと鎖延長剤とを反応させる工程;
を順次行うことによって、本発明の水性脂溶性重合開始剤分散体を製造することができる。
なお、各工程では、必要に応じて触媒を使用することで、反応を促進させたり、副生成物の発生を抑制することができる。
上記のような製造方法を採用することにより、ポリウレタン樹脂の末端イソシアネート基を損なうことなく、塩基により酸性基を含有するポリウレタン樹脂の酸性基を十分に中和することができ、かつ分散性が良好な水性ポリウレタン樹脂分散体を得ることができる。
(ポリカーボネートポリオール)
前記ポリカーボネートポリオールは、例えば、ポリオールと炭酸エステルとを反応(以下、カーボネート化反応と称することもある)させて得られるものであり、ポリオール由来の構造と、カーボネート結合を有するものである。
(ポリオール)
前記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオールなどの炭素原子数2〜12の直鎖状の脂肪族ポリオール;
2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−又は3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオールなどの炭素原子数3〜18の分岐状の脂肪族ポリオール;
1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの炭素原子数6〜18の環状脂肪族ポリオール
が使用される。
なお、これらのポリオールは、複数種を併用してもよい。
なお、ポリカーボネートポリオールは、機能や特性を損なわない程度において、エステル結合やエーテル結合を有していてもよい。エステル結合を有することにより、ポリウレタンとした際の相溶性が増すことが予想される。また、エーテル結合を有することによって、ポリウレタンとした際の柔軟性がより増すことが予想される。
(ポリカーボネートポリオールの数平均分子量)
本発明のポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、目的に応じて適宜調整するが、好ましくは500〜10000、更に好ましくは500〜8000、より好ましくは500〜6000である。
なお、数平均分子量は、JIS K 1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量とする。具体的には、水酸基価を測定し、末端基定量法により、(56.1×1000×価数)/水酸基価を用いて算出する(この式において、水酸基価の単位は[mgKOH/g]である)。前記式中において、価数は1分子中の水酸基の数である。
(炭酸エステル)
前記炭酸エステルは、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルエチルなどの炭酸ジアルキル;炭酸ジフェニルなどの炭酸ジアリール;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、トリメチレンカーボネート)、ブチレンカーボネート(4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、テトラメチレンカーボネート)、5−メチル−1,3−ジオキサン−2−オンなどの環状カーボネートが挙げられるが、好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート又はエチレンカーボネートが使用される。
なお、これらの炭酸エステルは、複数種を併用してもよい。
前記炭酸エステルの使用量は、ポリオール1モルに対して、好ましくは0.8〜2.0モル、更に好ましくは0.9〜1.5モルである。
この範囲とすることで、十分な反応速度で、効率良く目的とするポリカーボネートポリオールを得ることができる。
(反応温度、及び反応圧力)
本発明のカーボネート化反応における反応温度は、炭酸エステルの種類に応じて適宜調整するが、好ましくは50〜250℃、更に好ましくは70〜230℃である。
また、反応圧力は、低沸点成分を除去しながら反応させる態様となるような圧力ならば特に制限されず、好ましくは常圧又は減圧下で行われる。
この範囲とすることで、逐次反応や副反応が起こることなく、効率良く目的とするポリカーボネートポリオールを得ることができる。
(触媒)
本発明のカーボネート化反応においては、公知のエステル交換触媒を使用することができ、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、コバルト、ゲルマニウム、スズ、セリウムなどの金属、及びそれらの水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、有機金属などが挙げられるが、好ましくは水素化ナトリウム、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズオキサイドが使用される。
なお、これらの触媒は、複数種を併用してもよい。
前記触媒の使用量は、ポリオール1モルに対して、好ましくは0.001〜0.1ミリモル、更に好ましくは0.005〜0.05ミリモル、より好ましくは0.01〜0.03ミリモルである。
この範囲とすることで、後処理を煩雑とすることなく、効率良く目的とするポリカーボネートポリオールを得ることができる。
なお、当該触媒は、反応開始時に一括で使用しても、反応開始時、及び反応開始後に分割して使用(添加)してもよい。
(ポリイソシアネート)
前記ポリイソシアネートは、目的や用途に応じて適宜選択するが、例えば、
エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネートなどの炭素原子数2〜12の直鎖状脂肪族ポリイソシアネート;
1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートなどの炭素原子数3〜12の分岐状脂肪族ポリイソシアネート;
4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイルビス(メチレン)ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの炭素原子数6〜18の環状脂肪族ポリイソシアネート;
2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの炭素原子数6〜18の芳香族ポリイソシアネート
が使用される。
なお、これらのポリイソシアネートは、複数種を併用してもよく、その構造の一部又は全部がイソシアヌレート化、カルボジイミド化、又はビウレット化など誘導化されていてもよい。
前記ポリイソシアネートの使用量は、ポリイソシアネートのイソシアネート基とポリカーボネートポリオールの水酸基(脂肪族ポリオールが含まれている場合には、その水酸基も含む)との比(イソシアネート基/水酸基(モル比))が、好ましくは1.0〜8.0、更に好ましくは1.3〜5.0である。
(酸性基含有ポリオール)
前記酸性基含有ポリオールは、目的や用途に応じて適宜選択するが、例えば、
2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、3,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸などが使用される。
なお、これらの酸性基含有ポリオールは、単独又は二種以上を混合して使用してもよく、N,N−ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビスヒドロキシエチルアラニン、3,6−ジヒドロキシ−2−トルエンスルホン酸も同様に使用できる。
なお、その使用量はポリウレタン樹脂が水系媒体に分散できる量であれば特に制限されず、また、複数種を併用してもよい。
(ウレタン化触媒)
本発明のウレタン化反応においては、反応速度を向上させるために公知の重合触媒を用いることができ、例えば、第三級アミン、スズ又はチタンなどの有機金属塩が使用される。
なお、重合触媒については、吉田敬治著「ポリウレタン樹脂」(日本工業新聞社刊、1969年)の第23〜32頁を参照することができ、複数種を併用してもよい。
(溶媒)
本発明のウレタン化反応は溶媒の存在下で行うことができ、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのエステル類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどのピロリドン類;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、2−エトキシエタノールなどのエーテル類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;出光興産社製「エクアミド」に代表されるβ−アルコキシプロピオンアミドなどのアミド類が使用される。
なお、これらの溶媒は、二種以上を併用してもよい。
本発明のウレタン化反応は、分子量を調整するために末端停止剤を添加して行うことができる。
(中和剤)
前記「中和剤」としては、ポリウレタン樹脂中の酸性基を中和できるものならば特に限定されないが、例えば、アンモニア;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノイソプロピルアミン、モノブチルアミンなどの一級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、モルホリンなどの二級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジンなどの三級アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩が挙げられるが、ポリウレタン樹脂の末端イソシアネート基との反応を抑止しつつ、ポリウレタン樹脂によるコーティングの容易さの観点から、好ましくは三級アミン、更に好ましくはトリアルキルアミンが使用される。
なお、これらの中和剤は、複数種を併用してもよい。
(水系媒体)
前記水系媒体としては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水などの水や、水と親水性有機溶媒との混合媒体などが挙げられる。
前記親水性有機溶媒としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトンなどのケトン類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどのピロリドン類;ジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール類;出光興産社製「エクアミド」に代表されるβ−アルコキシプロピオンアミドなどのアミド類が挙げられる。
前記水系媒体中の前記親水性有機溶媒の量としては、好ましくは0〜20質量%である。
[脂溶性重合開始剤(B)]
脂溶性重合開始剤としては、水系媒体に溶解しないか、溶解しにくい重合開始剤であれば特に限定されないが、例えば、
4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、エチル 4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、ベンゾフェノン、o−メチル ベンゾイルベンゾエート、4−メチル ベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシル フェニル ケトン、メチル ベンゾエート ホルメート、2,4,6−トリメチルベンゾイル ジフェニル ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルチオキサントンなどのベンゾイル骨格を有する化合物:
2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル 1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオアミド)などのアゾ化合物
が使用される。
なお、これらの脂溶性重合開始剤は、複数種を併用できる。
前記脂溶性重合開始剤の使用量は、水性ポリウレタン樹脂分散体(A1)の固形分の全量に対して、好ましくは0.5〜5質量%である。
この範囲とすることで、水性脂溶性重合開始剤分散体の状態を損なうことなく、また重合性不飽和化合物を十分に重合させることができる。
また、前記脂溶性重合開始剤(B)と、還元剤とを併用することでレドックス系開始剤として使用することもでき、還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酒石酸、L又はD−アスコルビン酸などが使用できる。
なお、これらの還元剤は、複数種を併用することができる。
前記、脂溶性重合開始剤(B)や還元剤の使用量は、必要な反応速度(重合速度)や重合時の発熱の状況に応じて適宜調整すればよく、水性脂溶性重合開始剤分散体の機能や特性を損なわない程度において、脂溶性重合開始剤(B)や還元剤、それらの分解物が存在していてもよい。
また、急激な重合反応を抑制するために、適宜、乳化剤を存在させてもよい。
(鎖延長剤)
本発明においては、分子量を増大させることを目的として、鎖延長剤を用いることができる。使用する鎖延長剤としては、目的や用途に応じて適宜選択できるが、例えば、
水;
エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10−デカンジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサンなどの低分子ポリオール;
ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールなどの高分子ポリオール;
エチレンジアミン、イソホロンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのポリアミン
が使用される。
なお、鎖延長剤については、例えば、「最新ポリウレタン応用技術」(株式会社CMC社、1985年に発行)を参照することができ、前記高分子ポリオールについては、例えば、「ポリウレタンフオーム」(高分子刊行会、1987年)を参照することができる。
また、これらの鎖延長剤は、複数種を併用してもよい。
[水性ポリウレタン樹脂分散体組成物]
本発明の「水性ポリウレタン樹脂分散体組成物」は、ポリウレタン樹脂粒子中に重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体(A2)と、水性脂溶性重合開始剤分散体とを含む組成物である。
(重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体(A2))
前記「ポリウレタン樹脂粒子中に重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体(A2)」は、ポリカーボネートポリオール由来の構造、ポリイソシアネート由来の構造、及び酸性基含有ポリオール由来の構造を有し、内部に重合性不飽和化合物を含むポリウレタン樹脂が、水系媒体に分散しているものである。
[重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体(A2)の製造方法]
本発明の、ポリウレタン樹脂粒子中に重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体(A2)は、水性ポリウレタン樹脂分散体(A2)中のポリウレタン樹脂粒子に、重合性不飽和化合物が内包されたものであり、ポリカーボネートポリオール、ポリイソシアネート、及び酸性基含有ポリオールを反応させた後、酸性基を中和剤により中和してウレタンプレポリマーを製造した後、中和剤及び重合性不飽和化合物と混合することによって製造できる。
その反応形態は特に限定されず、公知のワンショット法やプレポリマー法を適宜選択できる。
具体的には、例えば、
ポリカーボネートポリオール、ポリイソシアネート、及び酸性基含有ポリオールを、溶媒の存在下、又は非存在下で反応させてウレタンプレポリマーとする工程;
前記プレポリマー中の酸性基を中和剤により中和する工程;
中和されたプレポリマーを水系媒体に分散させる工程;
重合性不飽和化合物を加えて混合する工程;
水系媒体に分散されたプレポリマーと鎖延長剤とを反応させる工程;
を順次行うことによって製造することができる。
なお、各工程では、必要に応じて触媒を使用することで、反応を促進させたり、副生成物を制御することができる。
この製造方法を採用することにより、ポリウレタン樹脂の末端イソシアネート基を損なうことなく、塩基により酸性基を含有するポリウレタン樹脂の酸性基を十分に中和することができ、かつ分散性が良好な水性ポリウレタン樹脂分散体を得ることができる。
ここで、ポリカーボネートポリオール、ポリイソシアネート、酸性基含有ポリオール、溶媒、中和剤、水系媒体、及び鎖延長剤は前記と同義である。
(重合性不飽和化合物)
前記重合性不飽和化合物としては、単官能(メタ)アクリルモノマーや、多官能(メタ)アクリルモノマーが好適に使用されるが、例えば、
2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコールーテトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子の1,6−ヘキサンジオールジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DA−212」)、2分子のエポキシ(メタ)アクリル酸と1分子のネオペンチルグリコールジグリシジルとの反応生成物、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のビスフェノールAジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DA−250」)、2分子の(メタ)アクリル酸とビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジグリシジル体との反応生成物、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のフタル酸ジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DA−721」)、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のポリエチレングリコールジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DM−811」、「DM−832」、「DM−851」)、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のポリプロピレングリコールジグリシジルとの反応生成物等の(メタ)アクリル酸とポリオールジグリシジルとの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の付加物などのジ(メタ)アクリル酸エステル;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(6モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(BASF社製Laromer(登録商標) LR8863)等のアルキレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(BASF社製Laromer(登録商標) PO33F)などのトリ(メタ)アクリル酸エステル;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(4モル)変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(ダイセル・サイテック社、Ebecryl 40)等のアルキレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのテトラ(メタ)アクリル酸エステル;
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどのペンタ(メタ)アクリル酸エステル;
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのヘキサ(メタ)アクリル酸エステル
が使用される。
なお、これらの重合性不飽和化合物は、複数種を併用してもよい。
また、重合性不飽和化合物には、本発明の機能や特性を損なわない程度において、重合性不飽和化合物以外の重合性モノマーが含有されていてもよい。
前記重合性モノマーとしては、例えば、プロピレン、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、シクロペンタジエンなどの不飽和炭化水素化合物;スチレン、α−メチルスチレンなどの不飽和基を有する芳香族化合物;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化不飽和炭化水素化合物;酢酸ビニル、酢酸アリル、安息香酸ビニルなどのカルボン酸不飽和エステル類;N−ビニルピロリドンなどの不飽和基を有するアミド類が挙げられる。
なお、これらの重合性モノマーは、複数種を併用してもよい。
前記重合性不飽和化合物の使用量は、水性ポリウレタン樹脂分散体(A2)の固形分に対して、好ましくは10〜90質量%、更に好ましくは15〜85質量%、より好ましくは20〜80質量%である。
この範囲とすることで、水性ポリウレタン樹脂分散体(A2)から誘導される水性ポリウレタン樹脂分散体組成物が良好な硬化膜を得ることができる。
以上により、本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体組成物が得られるが、目的に応じて、増粘剤、光増感剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤、熱安定剤、無機充填剤、滑剤、着色剤、シリコンオイル、発泡剤、難燃剤などを存在させることができる。
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体組成物は、人工皮革や合成皮革、断熱材、クッション材、接着剤、塗料、コーティング剤、フィルムなどの成形体などに加工することができる。
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体組成物を用いて、例えば、塗料組成物やコーティング組成物などを製造することができる。
具体的には、本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体組成物と各種添加剤、必要に応じて前記水系媒体や他の樹脂とを混合することによって製造できる。
(添加剤)
前記添加剤としては、
例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料などの着色顔料;
クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトなどの体質顔料;
アルミニウム、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母などの光輝性顔料
を使用することができる。
また、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤などの通常の塗料用添加剤も使用できる。
なお、これらの添加剤は、二種以上を併用できる。
更に、添加剤として硬化剤を存在させることにより、前記組成物から得られる塗膜や複層塗膜、コーティング膜の耐水性を向上させることができる。
そのような硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート、ブロック化ポリイソシアネート、メラミン樹脂、カルボジイミドなどを使用することができる。
なお、これらの硬化剤は、二種以上を併用できる。
(他の樹脂)
前記他の樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂が挙げられるが、水系媒体への分散性の観点から、樹脂中に親水性基(例えば、酸性基)を有しているのが望ましい。
(被塗装基材)
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体組成物や、それを含有する塗料組成物やコーティング組成物などは、適当な「被塗装基材」(以下、単に基材と称することもある)に塗布し、乾燥させることにより、塗膜を生成し、基材をコーティングなどすることができる。その際、水性ポリウレタン樹脂分散体組成物などの粘度を適宜調整することができる。
前記被塗装基材としては、例えば、
ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体(ABS)、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴム、エラストマーなどの熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂、合成樹脂及びその成形品;
鉄、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛などの金属基材やこれらの金属を含む合金、更にメッキや化成処理が施された各種の表面処理された金属基材及びその成形品;
コンクリート、スレート、タイル、瓦、ガラス、木製建築資材などの建築部材及びその成形品;
合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維、動物繊維、食物繊維などの繊維及びその成形品
が挙げられるが、密着性の観点から、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体(ABS)が好適に使用される。
なお、これらの樹脂は、二種以上を併用できる。
前記コーティング合法としては、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、ベル塗装、スプレー塗装、ロール塗装、シャワー塗装、浸漬塗装などが採用される。
また、塗膜の厚さは、用途に応じて適宜選択されるが、好ましくは1〜100μm、更に好ましくは3〜50μmである。
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
なお、各物性の測定は、以下の通り行った。
(引張試験)
ガラス板上に光硬化後の塗膜の厚さが50μm〜80μmとなるように、光重合開始剤を含む水性樹脂分散体をバーコーターで塗布し、室温24時間更に60℃で24時間養生した後、積算光量1000mJ/cmの紫外線を照射して光硬化させた。得られた塗膜をガラス板から剥がし、3号ダンベル形で打ち抜いて試験片を作成した。得られた試験片をJIS K 6251に準じ、23℃で引張試験機(オリエンティック社製RTC−1250A)を用いて100mm/minの速度で測定した。
実施例1(水性脂溶性重合開始剤分散体の合成)
撹拌機及び加熱器を備えた反応容器に、ポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL(登録商標)UH−200)400g(0.200モル)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)42.9g(0.320モル)と、イソホロンジイソシアネート(IPDI)162g(0.728モル)と、N−エチルピロリドン193g及びジブチル錫ジラウリレート0.3gを混合し、攪拌しながら80〜90℃で4.5時間反応させてウレタンプレポリマー組成物を得た。
得られたウレタンプレポリマー組成物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン32.4g(0.320モル)を加えた後、2,2−ジメトキシ−1,2―ジフェニルエタン−1−オンとベンゾフェノンの混合物(重量比1:1)の混合物(重量比1:1)119gを混合し、強攪拌下、水1475gの中に加えた。ついで、35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液62.2g(0.187モル)を加えて、水性脂溶性重合開始剤分散体を得た。
合成例1(ポリウレタン樹脂粒子中に重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体の合成)
撹拌機及び加熱器を備えた反応容器に、ポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL(登録商標)UH−200)400g(0.200モル)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)42.9g(0.320モル)と、イソホロンジイソシアネート(IPDI)162g(0.728モル)と、N−エチルピロリドン193g及びジブチル錫ジラウリレート0.3gを混合し、攪拌しながら80〜90℃で4.5時間反応させてウレタンプレポリマー組成物を得た。
得られたウレタンプレポリマー組成物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン32.4g(0.320モル)を加えた後、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA:分子量296)とトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA:分子量300)の混合物(重量比1:1)119gを混合し、強攪拌下、水1475gの中に加えた。ついで、35重量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液62.2g(0.187モル)を加えて、ポリウレタン樹脂粒子中に重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
実施例2(水性ポリウレタン樹脂分散体組成物の合成)
攪拌機及を備えた反応装置に、実施例1で得られた水性脂溶性重合開始剤分散体5gと、合成例1で得られた、ポリウレタン樹脂粒子中に重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体100gを加え、5分間攪拌し均一分散体として水性ポリウレタン樹脂分散体組成物を得た。
得られた組成物を十分に乾燥・硬化させて得られた塗膜のJIS K 6251に準じた引張試験の弾性率は290MPa、切断時伸びは300%であった。
比較例1(ポリウレタン樹脂粒子中に重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体と脂溶性重合開始剤との混合)
合成例1で得られた重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体100gに2,2−ジメトキシ−1,2―ジフェニルエタン−1−オンとベンゾフェノンの混合物(重量比1:1)1.5gを加え、30分間攪拌したが均一の分散体溶液は得られなかった。
以上の結果より、本発明の水性脂溶性重合開始剤分散体は、ポリウレタン樹脂粒子中に重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体と混合することにより、均一な分散体溶液として水性ポリウレタン樹脂分散体組成物を得ることができた。
また、実施例の水性ポリウレタン樹脂分散体組成物から得られた塗膜は、弾性率、切断時伸びともに良好であった。
本発明は、水性脂溶性重合開始剤分散体に関する。水性脂溶性重合開始剤分散体は、重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体と混合することにより、各種、塗料組成物やコーティング用組成物などの原料として有用である水性ポリウレタン樹脂分散体組成物を提供することができる。

Claims (8)

  1. 水性ポリウレタン樹脂分散体(A1)中のポリウレタン樹脂粒子に、脂溶性重合開始剤(B)が内包された、水性脂溶性重合開始剤分散体。
  2. 水性ポリウレタン樹脂が、ポリカーボネートポリオール由来の構造、ポリイソシアネート由来の構造、及び酸性基含有ポリオール由来の構造を有する、請求項1記載の水性脂溶性重合開始剤分散体。
  3. 脂溶性重合開始剤が、ベンゾイル骨格を有する化合物である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の水性脂溶性重合開始剤分散体。
  4. ポリウレタン樹脂粒子中に重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体(A2)と、請求項1〜3のいずれか一項記載の水性脂溶性重合開始剤分散体とを含む、水性ポリウレタン樹脂分散体組成物。
  5. 重合性不飽和化合物を内包する水性ポリウレタン樹脂分散体が、ポリカーボネートポリオール由来の構造、ポリイソシアネート由来の構造、及び酸性基含有ポリオール由来の構造を有し、内部に重合性不飽和化合物を含む、請求項4記載の水性ポリウレタン樹脂分散体組成物。
  6. 請求項4に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体組成物を含有する塗料組成物。
  7. 請求項4記載の水性ポリウレタン樹脂分散体組成物を含有するコーティング用組成物。
  8. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体組成物を被塗装基材上で硬化させてなる積層体。
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