JP2019120345A - 滑り免震装置用のスライダーと滑り免震装置 - Google Patents
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前記上面と前記下面が凹部を備えていることを特徴とする。
本態様によれば、スライダーの高さに応じて式(A)に基づいて凹部の孔径を設定することにより、曲げモーメントに起因するスライダーの端部応力を可及的に抑制することができる。既述するように、スライダーがスライドしている際にスライダーの特に端部に生じる端部応力σVは、スライダーに作用する軸力に起因して常時生じている平均応力σOと、曲げモーメントに起因する増加応力σBの合計値となる。本発明者等によれば、スライダー本体の摩耗やスライダーの上面及び下面に接着等されている滑り材の摩耗を防止するには、σV/σOを1.1に抑えることが重要であるとの知見が得られている。上式(A)は、σV/σO≦1.1を充足する式となっている。スライダーの設計としては、まず、構造物の規模や高さ制限等からスライダーの高さが設定されるのが一般的である。従って、スライダーの高さHが設定され、次にスライダーの外径D1が設定されてスライダーの寸法が設定された後、上式(A)を充足するD2を設定することにより、スライダーの摩耗を抑制しながら、所定の面圧を確保して摩擦係数の増加を抑制し、滑り免震装置による免震効果を得ることができる。
前記滑り材において、前記PTFE繊維が前記上沓および前記下沓の前記摺動面側に配設されていることを特徴とする。
曲率を有する上面と下面を備えている前記スライダーと、を有することを特徴とする。
はじめに、図1乃至図3を用いて、第1の実施形態に係るスライダーを形成するスライダー本体の一例を説明し、図4を用いて、第1の実施形態に係るスライダーの一例を説明する。ここで、図1は、第1の実施形態に係るスライダーを形成するスライダー本体の斜視図であり、図2は、図1のII−II矢視図であって、スライダー本体の縦断面図であり、図3は、図1のIII方向の矢視図であって、スライダー本体の平面図である。また、図4は、第1の実施形態に係るスライダーの斜視図である。
次に、図6と図7を用いて、第2の実施形態に係るスライダーを形成するスライダー本体の一例を説明し、図8を用いて、第2の実施形態に係るスライダーの一例を説明する。ここで、図6は、第2の実施形態に係るスライダーを形成するスライダー本体の斜視図であり、図7は、図6のVII−VII矢視図であって、スライダー本体の縦断面図である。また、図8は、第2の実施形態に係るスライダーの斜視図である。
次に、図9と図10を用いて、実施形態に係る滑り免震装置の一例を説明する。ここで、図9は、滑り免震装置の分解斜視図であり、図10は、滑り免震装置の縦断面図である。なお、図示する滑り免震装置を構成するスライダーとして、スライダー10Aを取り上げて説明する。図示するように、滑り免震装置100は、上沓20Aと、下沓20Bと、上沓20Aと下沓20Bの間に介在するスライダー10Aとを有する。
次に、図11を用いて、スライダーの高さの算出方法について説明する。図11は、スライダーの高さを算出するための模式図である。図11において、上沓20Aと下沓20Bの曲率半径をRとし、上沓20A及び下沓20Bの中心軸を通る鉛直方向の曲率半径Rと、曲率中心と端部を通る曲率半径Rと、の間の角度をθとする。また、滑り免震装置100において、スライダー10Aの高さをHとし、上沓20Aと下沓20Bの摺動面の曲率による深さをhとし、上沓20Aと下沓20Bのクリアランスを10mmとする。
本発明者等は、上面および下面の外径が350mmの実大のスライダーを有する滑り免震装置を用いて、振幅±200mm、速度20mm/秒で滑り免震装置を作動させ、スライダーに作用する面圧を測定する実験を行った。そして、基準面圧を60N/mm2とし、基準面圧での摩擦係数に対する測定面圧での摩擦係数の変化率を求めた。図12に、面圧ごとの摩擦係数の変化率を示す。
本発明者等は、凹部の孔径を変化させた際の、スライダーの面積変化率とスライダーの断面係数変化率をそれぞれ算定し、双方の変化率を比較する検証を行った。以下、凹部を備えていない従来のスライダー(平面視円形で、略円柱状)の面積(平面への投影面積)をA0、断面係数をZ0として、式(5)、(6)にそれぞれ示す。また、図7に示す凹部(貫通孔)を有するスライダーの面積(平面への投影面積)をA1、断面係数をZ1として、式(7)、(8)にそれぞれ示す。なお、スライダーの直径と貫通孔の直径はそれぞれ、D1、D2である。
式(7)を式(5)で除してスライダーの面積変化率とし、式(8)を式(6)で除してスライダーの断面係数変化率とする。スライダーの面積変化率を以下の式(9)に示し、スライダーの断面係数変化率を以下の式(10)に示す。
式(9)より、スライダーの面積変化率は、D2/D1の二乗で低下することが分かり、式(10)より、スライダーの断面係数変化率は、D2/D1の四乗で低下することが分かる。式(9)、(10)を図13に示す。
凹部の面積を調整することにより、スライダーの外径を小さくすることなく、スライダーの面積を調整することができ、スライダーの面積の低下割合に比べてスライダーの断面係数の低下割合が低いことから、スライダーが作動した際にスライダーの特に上面及び下面の端部に生じる曲げ応力(端部応力)を可及的に抑制することができる。
図14と図15を用いて、本発明者等による一つの設計例を示す。この設計例では、スライダーの直径をD1、高さをHとした際に、D1/H=0.5の円筒状のスライダーを有する滑り免震装置において、スライダーの面圧を5倍にし、かつ、曲げモーメントによる応力増加が軸力による応力の10%以下となるケースを想定する。ここで、通常の軸力のみが作用する平均応力に対して、曲げモーメントが作用した際の曲げ応力、特にスライダーの端部の端部応力を平均応力の10%増以下に抑制することは、スライダー表面に装着された滑り材の早期摩耗を抑制し、さらには、滑り免震装置の摩擦係数のばらつきを抑制する観点から重要である。
本発明者等は、最適な凹部の孔径とスライダーの外径の比率範囲について検証した。ここで、スライダーの外径をD1,凹部(貫通孔)の孔径をD2、スライダーの高さをHとし、スライダーにおける軸力による平均応力をσO、曲げモーメントが作用した際のスライダーの上面及び下面の端部応力をσVとする。上記設計例で記載するように、σV/σOを1.1以下に抑制すること、すなわち、曲げモーメントによる増加応力を10%以下に抑制することは、スライダー表面に装着された滑り材の早期摩耗を抑制し、さらには、滑り免震装置の摩擦係数のばらつきを抑制する観点から重要であることに鑑み、σV/σO=1.1を閾値とした。ここで、図16は、横軸にD2/D1をとり、縦軸にσV/σOをとった。D1/Hを1.0乃至10まで変化させた際のそれぞれのグラフを記載し、各グラフがσV/σO=1.1の閾値ラインと交わるD2/D1の値を読み取った。この読み取った値をもとに、図17に示すグラフを作成した。これは、横軸にD1/Hをとり、縦軸にD2/D1をとり、図16で読み取った値をプロットし、各プロットを繋ぐ近似曲線を作成したものである。図17において、近似曲線は、以下の式(13)となる。
1B,1C :スライダー本体
1a :上面
1b :下面
2a、2b :凹部(座ぐり孔)
2c、2d :凹部(座ぐり孔)
2e :凹部(貫通孔)
3a、3b :滑り材(二重織物)
10、10A :スライダー
20A :上沓
20B :下沓
20a、20b :滑り板
20c :ストッパーリング
100 :滑り免震装置
Claims (7)
- 曲率を有する摺動面を備えた上沓と下沓の間に配設され、曲率を有する上面と下面を備えている、鋼製の滑り免震装置用のスライダーであって、
前記上面と前記下面が凹部を備えていることを特徴とする、滑り免震装置用のスライダー。 - 前記上面と前記下面の平面視形状が円形であり、双方の面積が同じであり、双方の備える前記凹部の面積が同じであることを特徴とする、請求項1に記載の滑り免震装置用のスライダー。
- 前記凹部が座ぐり孔であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の滑り免震装置用のスライダー。
- 前記凹部が、前記上面から前記下面に亘る貫通孔であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の滑り免震装置用のスライダー。
- 前記スライダーの前記上面と前記下面には、PTFE繊維と、該PTFE繊維よりも引張強度の高い繊維とからなる二重織物からなる滑り材が固定されており、
前記滑り材において、前記PTFE繊維が前記上沓および前記下沓の前記摺動面側に配設されていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の滑り免震装置用のスライダー。 - 曲率を有する摺動面を備えた上沓及び下沓と、
曲率を有する上面と下面を備えている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のスライダーと、を有することを特徴とする、滑り免震装置。
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