JP2019118327A - ビール風味飲食品用風味改善剤 - Google Patents

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【課題】ビールらしいコクを増強することができる風味改善剤を提供すること。【解決手段】シス−2−ノネナールを含有する、ビール風味飲食品用風味改善剤。【選択図】なし

Description

本発明は、ビール風味飲食品用風味改善剤に関する。
従来、ビールの風味において2−ノネナールと言えば、トランス−2−ノネナールを意味し、トランス−2−ノネナールの香味は、ビールの酸化劣化臭(オフフレーバー)のひとつとして知られていた。そして、トランス−2−ノネナールの香味は、とりわけ「カードボード臭」「段ボール臭」として知られていた(例えば、特許文献1〜3及び非特許文献1参照)。そのため、トランス−2−ノネナール生成の原因物質として知られていた麦芽中の脂肪酸を酸化する酵素を作用させないことや、原料液(麦汁や発酵中のビールなど)を極力外気中の酸素から遮断し、ビール様発泡性飲料中のトランス−2−ノネナールの含有量を低減させることなどが試みられていた。なお、非特許文献1において、シス−2−ノネナールについて言及した記載があるが、これは誤りであり、トランス−2−ノネナールを意味している。
一方、ビール様発泡性飲料の香味を構成する成分は、すべてが解明されているわけではなく、ビールらしいコクを増強することができる成分が求められていた。
特開2004−290024号公報 特開2008−17760号公報 特開2008−253197号公報
Journal of the American Society of Brewing Chemists, Volume 65, Issue 3, Pages 129-137, 2007
そこで、本発明は、ビールらしいコクを増強することができる風味改善剤を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、シス−2−ノネナールを添加することでビールらしいコクを増強することができることを見出した。したがって、本発明は、以下の事項を含んでいる。
〔1〕シス−2−ノネナールを含有する、ビール風味飲食品用風味改善剤。
〔2〕前記ビール風味飲食品が、ビール様発泡性飲料である、前記〔1〕に記載の風味改善剤。
〔3〕前記ビール様発泡性飲料が、アルコールを含有しない飲料である、前記〔2〕に記載の風味改善剤。
〔4〕ビール様発泡性飲料にシス−2−ノネナールを添加することを含む、ビール様発泡性飲料の製造方法。
〔5〕ビール様発泡性飲料中のシス−2−ノネナールの含有量が20〜300pptとなるようにシス−2−ノネナールを添加する、前記〔4〕に記載の製造方法。
〔6〕シス−2−ノネナールを20〜300ppt含有する、ビール様発泡性飲料。
〔7〕アルコールを含有しない飲料である、前記〔6〕に記載のビール様発泡性飲料。
〔8〕発酵麦芽飲料である、前記〔6〕に記載の飲料。
〔9〕ビール様発泡性飲料にシス−2−ノネナールを添加することを含む、ビール様発泡性飲料のコク味増強方法。
本発明によれば、ビールらしいコクが増強されたビール様発泡性飲料が提供される。
以下、本発明の実施態様について説明する。
本発明のビール風味飲食品用風味改善剤は、シス−2−ノネナールを含有する。ここで、シス−2−ノネナールは、天然由来のものであっても、合成されたものであってもよい。また、天然由来のシス−2−ノネナールは、他の成分を含む抽出物としてビール風味飲食品用風味改善剤に含有されてもよい。
「ビール風味飲食品」とは、ビールらしさ(香味上ビールを想起させる風味)を有する飲食品のことを言う。本発明における飲食品の例としては、飲料、冷菓、菓子、調味液、調味用粉末類等が挙げられるが、飲料が好ましく、特にビール様発泡性飲料であることが好ましい。「ビール様発泡性飲料」とは、ビールらしさ(香味上ビールを想起させる風味)を有する発泡性飲料のことを言う。「ビール様発泡性飲料」は、0.5容量%以上のアルコール飲料であってもよく、あるいは0.5容量%未満のいわゆるノンアルコール飲料であってもよい。さらに、「ビール様発泡性飲料」は、アルコール含有しない飲料であってもよい。そして、炭酸水にビール風味香料を添加した「ビール風味フレーバードウォーター」であってもよい。「ビール風味フレーバードウォーター」とは、炭酸水にビール風味香料のみを添加した飲料を指す。他方、通常のノンアルコールビール風味飲料には、香料のほか、苦味料、甘味料、および酸味料などが添加される。「ビール様発泡性飲料」がアルコール飲料の場合、アルコール度数は、好ましくは3〜10容量%であり、より好ましくは4〜7容量%である。また、「ビール様発泡性飲料」は、原料(又は麦芽原料)を酵母により発酵させる発酵工程を経て製造される発酵飲料(又は発酵麦芽飲料)であってもよく、あるいは発酵工程を経ずに製造される非発酵飲料であってもよい。「ビール様発泡性飲料」の具体例としては、ビール、発泡酒、ノンアルコールビール等が挙げられる。その他、発酵工程を経て製造された発酵飲料を、アルコール含有蒸留液と混和して得られたリキュール類であってもよい。なお、アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液であり、例えば原料用アルコール、ウィスキー、ブランデー、スピリッツ、ウオッカ、テキーラ、ジン、ラム、焼酎等が挙げられる。
飲料以外の「ビール風味飲食品」として、より具体的には冷菓としてゼリー類、氷菓等が挙げられ、菓子としてはキャンディー、グミ、焼菓子等が挙げられる。また、本発明において調味液、調味用粉末類は魚介類加工品、食肉加工品、スナック類等にビール風味を付与するためのものを言う。
本発明のビール様発泡性飲料の製造方法は、ビール様発泡性飲料にシス−2−ノネナールを添加することを含む。また、本発明のビール様発泡性飲料のコク味増強方法は、ビール様発泡性飲料にシス−2−ノネナールを添加することを含む。ここで、シス−2−ノネナールは、天然由来のものであっても、合成されたものであってもよい。また、天然由来のシス−2−ノネナールは、他の成分を含む抽出物として用いられてもよい。
シス−2−ノネナールの添加後のビール様発泡性飲料中の、シス−2−ノネナールの含有量は、好ましくは20〜300pptであり、より好ましくは20〜200pptである。
ビール様発泡性飲料が0.5容量%以上のアルコール飲料である場合、シス−2−ノネナールの添加後のビール様発泡性飲料中の、シス−2−ノネナールの含有量は、好ましくは20〜65pptであり、より好ましくは20〜50pptである。
ビール様発泡性飲料が、0.5容量%未満のいわゆるノンアルコール飲料又はアルコール含有しない飲料である場合、シス−2−ノネナールの添加後のビール様発泡性飲料中の、シス−2−ノネナールの含有量は、好ましくは10〜300pptであり、より好ましくは100〜200pptである。
炭酸水にビール風味香料を添加したのみの炭酸入りフレーバードウォーターの場合は、シス−2−ノネナールの添加後の飲料中のシス−2−ノネナールの含有量は、好ましくは、2〜300pptであり、より好ましくは、5〜200pptである。
本発明のビール様発泡性飲料の製造方法において、発酵飲料(又は発酵麦芽飲料)を製造する場合には、まず、穀物原料から、酵母によって利用され得る炭素源又は窒素源を含有する水溶液を調製する。
例えば、主原料として麦芽を用いて発酵麦芽飲料を得る場合には、主原料としての麦芽の粉砕物と、副原料である米やコーンスターチ等のデンプン質に温水を加えて混合・加温し、主に麦芽の酵素を利用してデンプン質を糖化させる。得られた糖化液を濾過した後、ホップを加えて煮沸する。煮沸後、ワールプールと呼ばれる槽でホップ粕等の沈殿物を除去する。沈殿物の除去後、熱交換器(プレートクーラー)により冷却する。これにより、発酵用の水溶液が得られる。
一方、麦芽を使用せずに発酵飲料を得る場合には、炭素源を含有する液糖、麦芽以外の窒素源含有材料(例えば、大豆、エンドウ豆、酵母エキス及びトウモロコシ等のタンパク質原料の分解物)、ホップ、色素等を、温水と共に混合し、液糖溶液を調製する。当該液糖溶液を、煮沸し、ホップ粕等の沈殿物を除去して冷却する。これにより、発酵用の水溶液が得られる。
続いて、得られた水溶液に、酵母を接種して発酵を行う。次いで、得られた発酵液を熟成させる。熟成後、濾過により酵母及びタンパク質等を除去して、目的のビール様発泡性飲料が得られる。尚、発酵麦芽飲料の麦芽使用比率は、好ましくは25%以上、より好ましくは40%以上である。更に好ましくは40%〜100%である。最も好ましくは50%〜100%である。麦芽使用比率とは、水を除く全原料に対する麦芽の割合(質量%)である。
また、発酵及び熟成工程を省略し、煮沸後の溶液に炭酸ガス等を添加することにより、非発酵飲料を得ることもできる。
シス−2−ノネナールの添加は、上記の任意の段階で行ってもよい。シス−2−ノネナールの添加は、麦汁煮沸工程以降が好ましい。
(実験例1)
3種類の市販のビール類、及び4種類の市販のノンアルコールビール類について、シス−2−ノネナール(Z2N)及びトランス−2−ノネナール(E2N)の含有量を測定した。測定方法は以下の通りである。
前処理法として、Twister(Gerstel社製)を用いた誘導体化を行い、GC/MSにて検出することによって、飲料中のシス−2−ノネナール及びトランス−2−ノネナールを定量した。
バイアル瓶に、試料6gを量りとり、ヘキサン洗浄水54g加え、希釈した。そこへ内部標準(安定同位体 トランス−2−ノネナール、200ng/ml溶液)を30μl及び1%PFBHA(ペンタフルオロベンジルヒドロキシルアミン塩酸塩)を180μl加えたのち、コンディショニング済みのTwister(Gerstel社製、20mm、膜厚0.5mm)を入れて、500rpmで60分間撹拌した。Twisterを取り出し、ヘキサン洗浄水で洗浄した後、GC/MSへ導入して測定した。GC/MS条件は、以下の通りである。

ガスクロマトグラフ:6890(Agilent Technologies社製)
検出器:MSD5977B(Agilent Technologies社製)
カラム:DB−23キャピラリカラム(長さ:30m、内径:0.25mm、膜厚:0.25μm、Agilent Technologies社製)
注入口:250℃
注入モード:スプリットレスインジェクションモード
キャリアガス:ヘリウム(1ml/分)
カラム温度設定:40℃(3分間保持)−10℃/分―250℃(3分間保持)
イオン化条件:70eV
測定モード:シングルイオン−モニタリング(SIM)モード
定量:香気成分のピークエリア面積と内部標準品のピークエリア面積との比較にて実施

得られた結果を下記表1に示す。
Figure 2019118327
(実験例2)
市販ビール類1に、下記表2に示す量のシス−2−ノネナールを添加して、シス−2−ノネナール含有量の異なるビール様発泡性飲料を調製した。これらのビール様発泡性飲料について、8名の専門パネルにより、官能検査を行い、コクを評価した。コクとして、濃い深い味わい(味の重厚感)があるかを評価し、下記の基準により評価し、結果を表2に示す。

9点:重い味わい。ボディ感を感じる。
8点:平均的なビールよりも重厚感がある。
7点:平均的なビールよりやや重い。
6点:ビールよりややボディ(味の重み)を感じる。
5点:平均的なビール程度のコクがある。
4点:ビールよりやや軽快な味わい。
3点:軽快、やや水っぽい。
2点:水っぽい。
1点:しまりがない。

また、カメムシ臭を感じると指摘したパネルの人数も併せて表2に示す。表2の結果から、シス−2−ノネナールを添加することにより、ビール様発泡性飲料のビールらしいコクを増強することができることが分かる。
Figure 2019118327
(実験例3)
市販ノンアルコールビール類1に、下記表3に示す量のシス−2−ノネナールを添加して、シス−2−ノネナール含有量の異なるビール様発泡性飲料を調製した。これらのビール様発泡性飲料について、実験例2と同様の官能検査を行った。結果を表3に示す。表3の結果から、シス−2−ノネナールを添加することにより、ビール様発泡性飲料のビールらしいコクを増強することができることが分かる。
Figure 2019118327
(実験例4)
炭酸水にビール風味香料(シス−2−ノネナール無添加)を0.01%添加した。これに、さらにシス−2−ノネナールを添加しその添加効果を確認した。結果を表4に示す。表4の結果から、香料及びシス−2−ノネナール以外に風味に影響する成分が含まれていない場合は、ビール風味香料0.01%に対してシス−2−ノネナールの添加量は2ppt以上、好ましくは5ppt以上の添加量でビールらしい風味が向上したことが分かる。
Figure 2019118327
(試験例5)
市販ビール類1に、下記表4に示す量のトランス−2−ノネナールを添加して、トランス−2−ノネナール含有量の異なるビール様発泡性飲料を調製した。これらのビール様発泡性飲料について、実験例2と同様の官能検査を行った。結果を表5に示す。表5の結果から、トランス−2−ノネナールを添加しても、ビール様発泡性飲料のビールらしいコクを増強することができないことが分かる。
Figure 2019118327

Claims (9)

  1. シス−2−ノネナールを含有する、ビール風味飲食品用風味改善剤。
  2. 前記ビール風味飲食品が、ビール様発泡性飲料である、請求項1に記載の風味改善剤。
  3. 前記ビール様発泡性飲料が、アルコールを含有しない飲料である、請求項2に記載の風味改善剤。
  4. ビール様発泡性飲料にシス−2−ノネナールを添加することを含む、ビール様発泡性飲料の製造方法。
  5. ビール様発泡性飲料中のシス−2−ノネナールの含有量が20〜300pptとなるようにシス−2−ノネナールを添加する、請求項4に記載の製造方法。
  6. シス−2−ノネナールを20〜300ppt含有する、ビール様発泡性飲料。
  7. アルコールを含有しない飲料である、請求項6に記載のビール様発泡性飲料。
  8. 発酵麦芽飲料である、請求項6に記載の飲料。
  9. ビール様発泡性飲料にシス−2−ノネナールを添加することを含む、ビール様発泡性飲料のコク味増強方法。
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