JP2019118327A - ビール風味飲食品用風味改善剤 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、ビール様発泡性飲料の香味を構成する成分は、すべてが解明されているわけではなく、ビールらしいコクを増強することができる成分が求められていた。
〔1〕シス−2−ノネナールを含有する、ビール風味飲食品用風味改善剤。
〔2〕前記ビール風味飲食品が、ビール様発泡性飲料である、前記〔1〕に記載の風味改善剤。
〔3〕前記ビール様発泡性飲料が、アルコールを含有しない飲料である、前記〔2〕に記載の風味改善剤。
〔4〕ビール様発泡性飲料にシス−2−ノネナールを添加することを含む、ビール様発泡性飲料の製造方法。
〔5〕ビール様発泡性飲料中のシス−2−ノネナールの含有量が20〜300pptとなるようにシス−2−ノネナールを添加する、前記〔4〕に記載の製造方法。
〔6〕シス−2−ノネナールを20〜300ppt含有する、ビール様発泡性飲料。
〔7〕アルコールを含有しない飲料である、前記〔6〕に記載のビール様発泡性飲料。
〔8〕発酵麦芽飲料である、前記〔6〕に記載の飲料。
〔9〕ビール様発泡性飲料にシス−2−ノネナールを添加することを含む、ビール様発泡性飲料のコク味増強方法。
本発明のビール風味飲食品用風味改善剤は、シス−2−ノネナールを含有する。ここで、シス−2−ノネナールは、天然由来のものであっても、合成されたものであってもよい。また、天然由来のシス−2−ノネナールは、他の成分を含む抽出物としてビール風味飲食品用風味改善剤に含有されてもよい。
「ビール風味飲食品」とは、ビールらしさ(香味上ビールを想起させる風味)を有する飲食品のことを言う。本発明における飲食品の例としては、飲料、冷菓、菓子、調味液、調味用粉末類等が挙げられるが、飲料が好ましく、特にビール様発泡性飲料であることが好ましい。「ビール様発泡性飲料」とは、ビールらしさ(香味上ビールを想起させる風味)を有する発泡性飲料のことを言う。「ビール様発泡性飲料」は、0.5容量%以上のアルコール飲料であってもよく、あるいは0.5容量%未満のいわゆるノンアルコール飲料であってもよい。さらに、「ビール様発泡性飲料」は、アルコール含有しない飲料であってもよい。そして、炭酸水にビール風味香料を添加した「ビール風味フレーバードウォーター」であってもよい。「ビール風味フレーバードウォーター」とは、炭酸水にビール風味香料のみを添加した飲料を指す。他方、通常のノンアルコールビール風味飲料には、香料のほか、苦味料、甘味料、および酸味料などが添加される。「ビール様発泡性飲料」がアルコール飲料の場合、アルコール度数は、好ましくは3〜10容量%であり、より好ましくは4〜7容量%である。また、「ビール様発泡性飲料」は、原料(又は麦芽原料)を酵母により発酵させる発酵工程を経て製造される発酵飲料(又は発酵麦芽飲料)であってもよく、あるいは発酵工程を経ずに製造される非発酵飲料であってもよい。「ビール様発泡性飲料」の具体例としては、ビール、発泡酒、ノンアルコールビール等が挙げられる。その他、発酵工程を経て製造された発酵飲料を、アルコール含有蒸留液と混和して得られたリキュール類であってもよい。なお、アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液であり、例えば原料用アルコール、ウィスキー、ブランデー、スピリッツ、ウオッカ、テキーラ、ジン、ラム、焼酎等が挙げられる。
飲料以外の「ビール風味飲食品」として、より具体的には冷菓としてゼリー類、氷菓等が挙げられ、菓子としてはキャンディー、グミ、焼菓子等が挙げられる。また、本発明において調味液、調味用粉末類は魚介類加工品、食肉加工品、スナック類等にビール風味を付与するためのものを言う。
シス−2−ノネナールの添加後のビール様発泡性飲料中の、シス−2−ノネナールの含有量は、好ましくは20〜300pptであり、より好ましくは20〜200pptである。
ビール様発泡性飲料が0.5容量%以上のアルコール飲料である場合、シス−2−ノネナールの添加後のビール様発泡性飲料中の、シス−2−ノネナールの含有量は、好ましくは20〜65pptであり、より好ましくは20〜50pptである。
ビール様発泡性飲料が、0.5容量%未満のいわゆるノンアルコール飲料又はアルコール含有しない飲料である場合、シス−2−ノネナールの添加後のビール様発泡性飲料中の、シス−2−ノネナールの含有量は、好ましくは10〜300pptであり、より好ましくは100〜200pptである。
炭酸水にビール風味香料を添加したのみの炭酸入りフレーバードウォーターの場合は、シス−2−ノネナールの添加後の飲料中のシス−2−ノネナールの含有量は、好ましくは、2〜300pptであり、より好ましくは、5〜200pptである。
例えば、主原料として麦芽を用いて発酵麦芽飲料を得る場合には、主原料としての麦芽の粉砕物と、副原料である米やコーンスターチ等のデンプン質に温水を加えて混合・加温し、主に麦芽の酵素を利用してデンプン質を糖化させる。得られた糖化液を濾過した後、ホップを加えて煮沸する。煮沸後、ワールプールと呼ばれる槽でホップ粕等の沈殿物を除去する。沈殿物の除去後、熱交換器(プレートクーラー)により冷却する。これにより、発酵用の水溶液が得られる。
一方、麦芽を使用せずに発酵飲料を得る場合には、炭素源を含有する液糖、麦芽以外の窒素源含有材料(例えば、大豆、エンドウ豆、酵母エキス及びトウモロコシ等のタンパク質原料の分解物)、ホップ、色素等を、温水と共に混合し、液糖溶液を調製する。当該液糖溶液を、煮沸し、ホップ粕等の沈殿物を除去して冷却する。これにより、発酵用の水溶液が得られる。
続いて、得られた水溶液に、酵母を接種して発酵を行う。次いで、得られた発酵液を熟成させる。熟成後、濾過により酵母及びタンパク質等を除去して、目的のビール様発泡性飲料が得られる。尚、発酵麦芽飲料の麦芽使用比率は、好ましくは25%以上、より好ましくは40%以上である。更に好ましくは40%〜100%である。最も好ましくは50%〜100%である。麦芽使用比率とは、水を除く全原料に対する麦芽の割合(質量%)である。
また、発酵及び熟成工程を省略し、煮沸後の溶液に炭酸ガス等を添加することにより、非発酵飲料を得ることもできる。
シス−2−ノネナールの添加は、上記の任意の段階で行ってもよい。シス−2−ノネナールの添加は、麦汁煮沸工程以降が好ましい。
3種類の市販のビール類、及び4種類の市販のノンアルコールビール類について、シス−2−ノネナール(Z2N)及びトランス−2−ノネナール(E2N)の含有量を測定した。測定方法は以下の通りである。
前処理法として、Twister(Gerstel社製)を用いた誘導体化を行い、GC/MSにて検出することによって、飲料中のシス−2−ノネナール及びトランス−2−ノネナールを定量した。
バイアル瓶に、試料6gを量りとり、ヘキサン洗浄水54g加え、希釈した。そこへ内部標準(安定同位体 トランス−2−ノネナール、200ng/ml溶液)を30μl及び1%PFBHA(ペンタフルオロベンジルヒドロキシルアミン塩酸塩)を180μl加えたのち、コンディショニング済みのTwister(Gerstel社製、20mm、膜厚0.5mm)を入れて、500rpmで60分間撹拌した。Twisterを取り出し、ヘキサン洗浄水で洗浄した後、GC/MSへ導入して測定した。GC/MS条件は、以下の通りである。
ガスクロマトグラフ:6890(Agilent Technologies社製)
検出器:MSD5977B(Agilent Technologies社製)
カラム:DB−23キャピラリカラム(長さ:30m、内径:0.25mm、膜厚:0.25μm、Agilent Technologies社製)
注入口:250℃
注入モード:スプリットレスインジェクションモード
キャリアガス:ヘリウム(1ml/分)
カラム温度設定:40℃(3分間保持)−10℃/分―250℃(3分間保持)
イオン化条件:70eV
測定モード:シングルイオン−モニタリング(SIM)モード
定量:香気成分のピークエリア面積と内部標準品のピークエリア面積との比較にて実施
得られた結果を下記表1に示す。
市販ビール類1に、下記表2に示す量のシス−2−ノネナールを添加して、シス−2−ノネナール含有量の異なるビール様発泡性飲料を調製した。これらのビール様発泡性飲料について、8名の専門パネルにより、官能検査を行い、コクを評価した。コクとして、濃い深い味わい(味の重厚感)があるかを評価し、下記の基準により評価し、結果を表2に示す。
9点:重い味わい。ボディ感を感じる。
8点:平均的なビールよりも重厚感がある。
7点:平均的なビールよりやや重い。
6点:ビールよりややボディ(味の重み)を感じる。
5点:平均的なビール程度のコクがある。
4点:ビールよりやや軽快な味わい。
3点:軽快、やや水っぽい。
2点:水っぽい。
1点:しまりがない。
また、カメムシ臭を感じると指摘したパネルの人数も併せて表2に示す。表2の結果から、シス−2−ノネナールを添加することにより、ビール様発泡性飲料のビールらしいコクを増強することができることが分かる。
市販ノンアルコールビール類1に、下記表3に示す量のシス−2−ノネナールを添加して、シス−2−ノネナール含有量の異なるビール様発泡性飲料を調製した。これらのビール様発泡性飲料について、実験例2と同様の官能検査を行った。結果を表3に示す。表3の結果から、シス−2−ノネナールを添加することにより、ビール様発泡性飲料のビールらしいコクを増強することができることが分かる。
炭酸水にビール風味香料(シス−2−ノネナール無添加)を0.01%添加した。これに、さらにシス−2−ノネナールを添加しその添加効果を確認した。結果を表4に示す。表4の結果から、香料及びシス−2−ノネナール以外に風味に影響する成分が含まれていない場合は、ビール風味香料0.01%に対してシス−2−ノネナールの添加量は2ppt以上、好ましくは5ppt以上の添加量でビールらしい風味が向上したことが分かる。
市販ビール類1に、下記表4に示す量のトランス−2−ノネナールを添加して、トランス−2−ノネナール含有量の異なるビール様発泡性飲料を調製した。これらのビール様発泡性飲料について、実験例2と同様の官能検査を行った。結果を表5に示す。表5の結果から、トランス−2−ノネナールを添加しても、ビール様発泡性飲料のビールらしいコクを増強することができないことが分かる。
Claims (9)
- シス−2−ノネナールを含有する、ビール風味飲食品用風味改善剤。
- 前記ビール風味飲食品が、ビール様発泡性飲料である、請求項1に記載の風味改善剤。
- 前記ビール様発泡性飲料が、アルコールを含有しない飲料である、請求項2に記載の風味改善剤。
- ビール様発泡性飲料にシス−2−ノネナールを添加することを含む、ビール様発泡性飲料の製造方法。
- ビール様発泡性飲料中のシス−2−ノネナールの含有量が20〜300pptとなるようにシス−2−ノネナールを添加する、請求項4に記載の製造方法。
- シス−2−ノネナールを20〜300ppt含有する、ビール様発泡性飲料。
- アルコールを含有しない飲料である、請求項6に記載のビール様発泡性飲料。
- 発酵麦芽飲料である、請求項6に記載の飲料。
- ビール様発泡性飲料にシス−2−ノネナールを添加することを含む、ビール様発泡性飲料のコク味増強方法。
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