JP2023098515A - ビール風味発酵アルコール飲料およびその製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】コク、スムースさが向上したビール風味発酵アルコール飲料の提供。【解決手段】ビール風味発酵アルコール飲料であって、飲料中の飲料中のβ-ユーデスモールの濃度が0.15ppb以上であり、飲料中のネロールの濃度が0.8ppb以上である、ビール風味発酵アルコール飲料。【選択図】なし
Description
本発明は、ビール風味発酵アルコール飲料およびその製法に関する。
近年の健康志向の高まりにより、糖質含有量が低減されたビールテイスト飲料が求められている。糖質を低減したビールおよびビール系飲料は、水っぽくうすい味となるため、味の強度や余韻が弱いという問題がある。
このような状況下、糖質を低減したビールやビール系飲料においてもコクやスムースさを向上または付与する方法が求められている。
味の強度を高めるための従来の方法としては苦味価(BU)上昇や、ホップによる香気成分を付与する方法があるが、BU上昇により全体の味のバランスが崩れ、ホップによる香気成分付与は単調な印象になってしまう。
一方、β-ユーデスモールは、その添加により冷涼感を付与できることが知られている。しかしながら、β-ユーデスモールを糖質低減ビールに添加した場合では冷涼感が際立ち、香味のバランスが崩れるという問題があった。
本発明者らは、今般、ビール風味発酵アルコール飲料においてβ-ユーデスモールおよびネロールの濃度を所定の範囲に調整することにより、コクやスムースさを向上できることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
従って、本発明は、コクやスムースさが向上されたビール風味発酵アルコール飲料およびその製法を提供する。
そして、本発明には、以下の発明が包含される。
(1)飲料中のβ-ユーデスモールの濃度が0.15ppb以上であり、飲料中のネロールの濃度が0.8ppb以上である、ビール風味発酵アルコール飲料。
(2)飲料中の糖質の濃度が0.5g/100mL以下である、(1)に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
(3)麦芽使用比率が50質量%以上100質量%以下である、(1)または(2)に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
(4)アルコール濃度が3体積%超である、(1)~(3)のいずれか一つに記載のビール風味発酵アルコール飲料。
(5)ビール風味発酵アルコール飲料を製造する方法であって、飲料中のβ-ユーデスモールの濃度が0.15ppb以上に調整され、飲料中のネロールの濃度が0.8ppb以上に調整される、方法。
(6)飲料中の糖質の濃度が0.5g/100mL以下に調整される、(5)に記載の方法。
(7)麦芽使用比率が50質量%以上100質量%以下である、(5)または(6)に記載の方法。
(8)飲料中のアルコール濃度が3体積%超に調整される、(5)~(7)のいずれか一つに記載の方法。
(9)ビール風味発酵アルコール飲料において、コクおよびスムースさを向上する方法であって、飲料中のβ-ユーデスモールの濃度が0.15ppb以上に調整され、飲料中のネロールの濃度が0.8ppb以上に調整される、方法。
(1)飲料中のβ-ユーデスモールの濃度が0.15ppb以上であり、飲料中のネロールの濃度が0.8ppb以上である、ビール風味発酵アルコール飲料。
(2)飲料中の糖質の濃度が0.5g/100mL以下である、(1)に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
(3)麦芽使用比率が50質量%以上100質量%以下である、(1)または(2)に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
(4)アルコール濃度が3体積%超である、(1)~(3)のいずれか一つに記載のビール風味発酵アルコール飲料。
(5)ビール風味発酵アルコール飲料を製造する方法であって、飲料中のβ-ユーデスモールの濃度が0.15ppb以上に調整され、飲料中のネロールの濃度が0.8ppb以上に調整される、方法。
(6)飲料中の糖質の濃度が0.5g/100mL以下に調整される、(5)に記載の方法。
(7)麦芽使用比率が50質量%以上100質量%以下である、(5)または(6)に記載の方法。
(8)飲料中のアルコール濃度が3体積%超に調整される、(5)~(7)のいずれか一つに記載の方法。
(9)ビール風味発酵アルコール飲料において、コクおよびスムースさを向上する方法であって、飲料中のβ-ユーデスモールの濃度が0.15ppb以上に調整され、飲料中のネロールの濃度が0.8ppb以上に調整される、方法。
本発明によれば、ビール風味発酵アルコール飲料において、コクやスムースさを向上することが可能となる。
[ビール風味発酵アルコール飲料]
本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、飲料中のβ-ユーデスモール濃度およびネロール濃度が所定の範囲にあるものである。このようなビール風味発酵アルコール飲料は、その製造の際に、β-ユーデスモール濃度およびネロール濃度を調整することにより得ることができる。ビール風味発酵アルコール飲料中のβ-ユーデスモール濃度およびネロール濃度を所定の範囲に調整することにより、ビール風味発酵アルコール飲料のコクおよびスムースさを向上することができる。ここで、スムースさとは、雑味・渋味・収斂味を舌に感じる程度のことをいい、その程度は低いことが好ましい。
本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、飲料中のβ-ユーデスモール濃度およびネロール濃度が所定の範囲にあるものである。このようなビール風味発酵アルコール飲料は、その製造の際に、β-ユーデスモール濃度およびネロール濃度を調整することにより得ることができる。ビール風味発酵アルコール飲料中のβ-ユーデスモール濃度およびネロール濃度を所定の範囲に調整することにより、ビール風味発酵アルコール飲料のコクおよびスムースさを向上することができる。ここで、スムースさとは、雑味・渋味・収斂味を舌に感じる程度のことをいい、その程度は低いことが好ましい。
本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、その製造の際にβ-ユーデスモール濃度およびおよびネロール濃度を調整することにより得ることができる。これらの濃度調整の具体的手段は特に限定されるものではなく、例えば、これらの物質の添加、これらの物質を含有する原料の使用量の増減、これらの物質を最終製品内に生成する原料の使用量の増減、酵母による発酵によってこれら物質に変換される物質の濃度調整等が挙げられる。
本明細書において化合物「β-ユーデスモール」とは、IUPAC名「2-[2R,4aR,8aS]-4a-メチル-8-メチリデン-1,2,3,4,5,6,7,8a-オクタヒドロナフタレン-2-オール」の化合物を意味する。
本明細書において化合物「ネロール」とは、IUPAC名「(Z)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール」の化合物を意味する。
本発明において「ビール風味発酵アルコール飲料」とは、ビール(麦芽およびホップを原料として用い、ビール酵母による発酵によって得られるアルコール飲料)、またはビールと同様の風味を有する発酵アルコール飲料を意味する。本発明において「発酵アルコール飲料」とは、炭素源、窒素源および水などを原料として酵母により発酵させたアルコール(エタノール)含有飲料を意味する。本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、好ましくはホップを原料として用いることによりホップの香気が付与された発酵飲料である。本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、好ましくは発酵麦芽飲料、すなわち、原料として少なくとも麦芽を使用した飲料を意味する。このような発酵麦芽飲料としては、ビール、発泡酒、リキュール(例えば、酒税法上、「リキュール(発泡性)(1)」に分類される飲料)などが挙げられ、好ましくはビールである。本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、好ましくは麦芽使用比率50質量%以上100質量%以下、より好ましくは麦芽使用比率50質量%以上95質量%以下の発酵麦芽飲料である。
本発明において、「ppb」という単位は「μg/L」と同義である。
本発明のビール風味発酵アルコール飲料中のβ-ユーデスモール濃度は、例えば、0.15ppb以上が挙げられ、好ましくは0.2ppb以上、より好ましくは0.3ppb以上、さらに好ましくは0.5ppb以上である。ビール風味発酵アルコール飲料中のβ-ユーデスモール濃度は、本発明の効果が奏される限り特に限定されるものではないが、例えば50ppb以下である。本発明の一つの実施態様によれば、本発明のビール風味発酵アルコール飲料中のβ-ユーデスモール濃度は、例えば、0.15~20ppbが挙げられ、好ましくは0.2~20ppb、より好ましくは0.2~10ppb、さらに好ましくは0.2~5ppb、さらに好ましくは0.2~4.5ppb、さらに好ましくは0.2~4ppb、さらに好ましくは0.3~4ppb、さらに好ましくは0.5~4ppbとされる。上記濃度範囲とすることにより、スムースさを改善させることで後切れが改善され、飲みやすくすることも可能である。
本発明のビール風味発酵アルコール飲料中のネロール濃度は、例えば、0.8ppb以上が挙げられ、好ましくは1ppb以上であり、より好ましくは1.5ppb以上である。ビール風味発酵アルコール飲料中のネロール濃度は、本発明の効果が奏される限り特に限定されるものではないが、例えば100ppb以下である。本発明の一つの実施態様によれば、本発明のビール風味発酵アルコール飲料中のネロール濃度は、例えば、0.8~100ppbが挙げられ、好ましくは1~100ppb、より好ましくは1~80ppb、さらに好ましくは1~60ppb、さらに好ましくは1~20ppb、さらに好ましくは1~15ppbとされる。
ビール風味発酵アルコール飲料中のβ-ユーデスモールおよびネロールの定量は、GC/MS分析により行うことができる。その際に、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。このGC/MS分析は、例えば、次のように実施することができる。まず、飲料中の成分をC18固相カラムで抽出し、ジクロロメタン溶出画分を分析用試料として用いる。定量は内部標準法によって行い、内部標準物質にはボルネオール(Borneol)を用い、分析用試料中25ppbになるよう添加する。GC/MSの分析条件は、以下の表1に従うことができる。
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のビール風味発酵アルコール飲料において、β-ユーデスモール濃度は、0.15ppb以上とされ、より好ましくは0.2~5ppb、さらに好ましくは0.2~4ppbとされ、ネロール濃度は、0.8ppb以上とされ、より好ましくは1~60ppb、さらに好ましくは1~15ppbとされる。β-ユーデスモールおよびネロールの濃度を上記濃度とすることにより、香りの複雑性を付与するとともに後味をスッキリさせることで味のバランスをよりよくすることも可能である。
本発明のビール風味発酵アルコール飲料中のアルコール濃度は、特に制限されるものではないが、好ましくは3体積%(v/v%)超とされ、より好ましくは3.5体積%以上、さらに好ましくは4体積%以上とされる。ビール風味発酵アルコール飲料のアルコール濃度は、本発明の効果が奏される限り特に限定されるものではないが、例えば20体積%以下である。本発明の一つの実施態様によれば、本発明のビール風味発酵アルコール飲料中のアルコール濃度は、好ましくは3体積%超10体積%以下とされ、より好ましくは3体積%超7体積%以下、さらに好ましくは3体積%超6体積%以下、あるいは、好ましくは3.5~10体積%、より好ましくは3.5~7体積%、さらに好ましくは3.5~6体積%、あるいは、好ましくは4~10体積%、より好ましくは4~7体積%、さらに好ましくは4~6体積%とされる。なお、ビール風味発酵アルコール飲料中のアルコールの濃度の測定は公知の方法によって行うことができ、具体的には、日本国国税庁が定める「BCOJビール分析法 8.3.6 アルコライザー法」に基づいて行うことができる。
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のビール風味発酵アルコール飲料において、β-ユーデスモール濃度は、0.15ppb以上、より好ましくは0.2ppb以上、さらに好ましくは0.5ppb以上であり、また100ppb以下とされ、ネロール濃度は、0.8ppb以上、より好ましくは1ppb以上であり、さらに好ましくは1.5ppb以上とされ、アルコール濃度は3.5体積%超、より好ましくは3.5体積%以上、さらに好ましくは4体積%以上であり、また20体積%以下とされる。より具体的には、ビール風味発酵アルコール飲料中のβ-ユーデスモール濃度は、好ましくは0.15~20ppb、より好ましくは0.2~20ppb、さらに好ましくは0.2~10ppb、さらに好ましくは0.2~5ppb、さらに好ましくは0.2~4.5ppb、さらに好ましくは0.2~4ppb、さらに好ましくは0.5~4ppbであり、かつ、ネロール濃度は、好ましくは0.8~100ppb、より好ましくは1~100ppb、さらに好ましくは1~80ppb、さらに好ましくは1~60ppb、さらに好ましくは1~20ppb、さらに好ましくは1~15ppbであり、かつ、アルコール濃度は、好ましくは3体積%超10体積%以下、より好ましくは3体積%超7体積%以下、さらに好ましくは3体積%超6体積%以下、あるいは、好ましくは3.5~10体積%、より好ましくは3.5~7体積%、さらに好ましくは3.5~6体積%、あるいは、好ましくは4~10体積%、より好ましくは4~7体積%、さらに好ましくは4~6体積%である。本発明の特に好ましい実施態様によれば、ビール風味発酵アルコール飲料中のβ-ユーデスモール濃度は0.2~5ppbであり、ネロール濃度は、1~60ppbであり、かつアルコール濃度は4~6体積%である。ビール風味発酵アルコール飲料中のβ-ユーデスモール濃度、ネロール濃度およびアルコール濃度が上記濃度である場合には、上記アルコール飲料において、コクやスムースさを向上するとともに、香りと味のバランスをとることも可能である。中でも、ビール風味発酵アルコール飲料中のβ-ユーデスモール濃度を0.2~4ppb、ネロール濃度を1~15ppb、かつアルコール濃度を4~6体積%に調整することにより、香りと味とのバランスをより良いものとすることができる。
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のビール風味発酵アルコール飲料は糖質の含有量が通常よりも低減された飲料とされる。この「通常よりも低減された」とは、そのビール風味発酵アルコール飲料を製造する際に糖質の含有量を低下させるための工夫がなされていることを意味する。このような低糖質のビール風味発酵アルコール飲料における具体的な糖質濃度の数値は特に限定されるものではないが、例えば、1.5g/100mL以下、好ましくは1.1g/100mL以下、より好ましくは1.0g/100mL以下、さらに好ましくは1.0g/100mL未満、さらに好ましくは0.5g/100mL以下、さらに好ましくは0.5g/100mL未満とすることができる。一つの実施態様において、低糖質ビール風味発酵アルコール飲料中の糖質の濃度は0.4g/mL以下である。
糖質濃度の測定は公知の方法によって行うことができ、当該試料の質量から、水分、たんぱく質、脂質、灰分および食物繊維量を除いて算出する方法(食品表示基準について(平成27年3月30日 消食表第139号)別添 栄養成分等の分析方法等 参照)に従って行うことができる。
本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、炭酸飲料とすることができる。炭酸ガス圧は好みに応じて適宜調整することができ、例えば、0.05~0.4MPa(20℃におけるガス圧)の範囲で調整することができる。
本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、pHを、例えば、2.0~5.0、好ましくは2.3~4.8、より好ましくは2.9~4.5に調整することができる。飲料のpHは市販のpHメーター(例えば、HORIBA Scientific 卓上pH計、株式会社堀場アドバンスドテクノ製)を使用して容易に測定することができる。
本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、好ましくは容器詰飲料として提供される。本発明のビール風味発酵アルコール飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
本発明の一つの実施態様によれば、本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、飲料中のβ-ユーデスモールおよびネロールの濃度調整以外は、通常のビール風味発酵アルコール飲料の製造方法に従って製造することができる。通常の製法としては、例えば、少なくとも水および麦芽を含んでなる発酵前液を発酵させる方法、すなわち、麦芽等の醸造原料から調製された麦汁(発酵前液)に発酵用ビール酵母を添加して発酵を行い、所望により発酵液を低温にて貯蔵した後、ろ過工程により酵母を除去する方法が挙げられる。
本発明では、いずれかの工程でホップ(ホップの加工品を含む)を添加することができる。ホップの添加量は、典型的には、発酵工程における発酵前液の容量に対して0.1~5g/Lとなるように調整することができ、好ましくは0.1~2g/L、さらに好ましくは0.2~1.5g/Lとすることができる。
本発明では、麦芽、ホップおよび水以外に、米、とうもろこし、こうりゃん、馬鈴薯、でんぷん、糖類(例えば、液糖)、果実、コリアンダー等の酒税法で定める副原料や、タンパク質分解物、酵母エキス等の窒素源、色素、起泡・泡持ち向上剤、水質調整剤、発酵助成剤等のその他の添加物を醸造原料として使用することができる。また、未発芽の麦類(例えば、未発芽大麦(エキス化したものを含む)、未発芽小麦(エキス化したものを含む))を醸造原料として使用してもよい。
[ビール風味発酵アルコール飲料の製造方法]
本発明の別の態様によれば、ビール風味発酵アルコール飲料の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)が提供される。本発明の製造方法は、ビール風味発酵飲料におけるβ-ユーデスモールおよびネロールの濃度を所定の範囲に調整する工程を含むものである。ビール風味発酵アルコール飲料におけるβ-ユーデスモールおよびネロールの濃度調整の具体的手段は特に限定されるものではなく、例えば、ビール風味発酵アルコール飲料の原料および/または中間物へのβ-ユーデスモールおよび/またはネロールの添加、β-ユーデスモールおよび/またはネロールを含有する原料の使用量の増減、β-ユーデスモールおよび/またはネロールを最終製品内に生成する原料の使用量の増減、酵母による発酵によってβ-ユーデスモールおよび/またはネロールに変換される物質の濃度調整等が挙げられる。
本発明の別の態様によれば、ビール風味発酵アルコール飲料の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)が提供される。本発明の製造方法は、ビール風味発酵飲料におけるβ-ユーデスモールおよびネロールの濃度を所定の範囲に調整する工程を含むものである。ビール風味発酵アルコール飲料におけるβ-ユーデスモールおよびネロールの濃度調整の具体的手段は特に限定されるものではなく、例えば、ビール風味発酵アルコール飲料の原料および/または中間物へのβ-ユーデスモールおよび/またはネロールの添加、β-ユーデスモールおよび/またはネロールを含有する原料の使用量の増減、β-ユーデスモールおよび/またはネロールを最終製品内に生成する原料の使用量の増減、酵母による発酵によってβ-ユーデスモールおよび/またはネロールに変換される物質の濃度調整等が挙げられる。
本発明の製造方法において、ビール風味発酵アルコール飲料におけるβ-ユーデスモールおよび/またはネロールの濃度、アルコール濃度、糖質の濃度、麦芽比率、炭酸ガスの圧力、pH、およびそれらの調整方法、測定方法等は、いずれも上述した本発明のビール風味発酵アルコール飲料と同様とすることができる。
本発明の製造方法により得られるビール風味発酵アルコール飲料の形態は、上述した本発明のビール風味発酵アルコール飲料と同様とすることができる。
本発明の製造方法により得られるビール風味発酵アルコール飲料には、上述した本発明のビール風味発酵アルコール飲料について説明したのと同様に、ホップ(ホップの加工品を含む)、その他の添加物、未発芽の麦類等を原料として用いることができる。
[ビール風味発酵アルコール飲料においてコクおよびスムースさを向上する方法]
本発明の別の態様によれば、ビール風味発酵アルコール飲料において、コクおよびスムースさを向上する方法(以下、「本発明の方法」ともいう。)が提供される。本発明の方法は、ビール風味発酵飲料におけるβ-ユーデスモールおよびネロールの濃度が所定の範囲に調整する工程を含むものである。ビール風味発酵アルコール飲料におけるβ-ユーデスモールおよびネロールの濃度調整の具体的手段は特に限定されるものではなく、例えば、ビール風味発酵アルコール飲料の原料および/または中間物へのβ-ユーデスモールおよび/またはネロールの添加、β-ユーデスモールおよび/またはネロールを含有する原料の使用量の増減、β-ユーデスモールおよび/またはネロールを最終製品内に生成する原料の使用量の増減、酵母による発酵によってβ-ユーデスモールおよび/またはネロールに変換される物質の濃度調整等が挙げられる。
本発明の別の態様によれば、ビール風味発酵アルコール飲料において、コクおよびスムースさを向上する方法(以下、「本発明の方法」ともいう。)が提供される。本発明の方法は、ビール風味発酵飲料におけるβ-ユーデスモールおよびネロールの濃度が所定の範囲に調整する工程を含むものである。ビール風味発酵アルコール飲料におけるβ-ユーデスモールおよびネロールの濃度調整の具体的手段は特に限定されるものではなく、例えば、ビール風味発酵アルコール飲料の原料および/または中間物へのβ-ユーデスモールおよび/またはネロールの添加、β-ユーデスモールおよび/またはネロールを含有する原料の使用量の増減、β-ユーデスモールおよび/またはネロールを最終製品内に生成する原料の使用量の増減、酵母による発酵によってβ-ユーデスモールおよび/またはネロールに変換される物質の濃度調整等が挙げられる。
本発明の方法において、ビール風味発酵アルコール飲料中のβ-ユーデスモールの濃度が0.15ppb以上、好ましくは0.2ppb以上に調整され、ビール風味発酵アルコール飲料中のネロールの濃度が0.8ppb以上、好ましくは1.0ppb以上に調整される。
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1:ビール風味発酵アルコール飲料におけるβ-ユーデスモール濃度およびネロール濃度とコクやスムースさとの関係
本実施例では、試験醸造したビールにβ-ユーデスモールおよびネロールを添加して、これらを様々な濃度で含有する試飲サンプルを調製し、官能評価を行って、ビール風味発酵アルコール飲料におけるβ-ユーデスモールおよびネロールの濃度と、良質なコクやスムースさならびに香りおよび味のバランスとの関係を調べた。
本実施例では、試験醸造したビールにβ-ユーデスモールおよびネロールを添加して、これらを様々な濃度で含有する試飲サンプルを調製し、官能評価を行って、ビール風味発酵アルコール飲料におけるβ-ユーデスモールおよびネロールの濃度と、良質なコクやスムースさならびに香りおよび味のバランスとの関係を調べた。
(1)試飲サンプルの調製
以下の手順に従って、ビール風味発酵アルコール飲料の試飲サンプルを調製した。
本実施例のビール風味発酵アルコール飲料の製造においては、主原料として大麦麦芽を使用した(麦芽使用比率60%)。糖化に際してはグルコアミラーゼを主体とした酵素製剤を用い、糖化の温度および時間を調整し、濾過することで麦汁を得た。得られた麦汁にホップと資化性糖を主体として含む液糖とを添加し、100℃で煮沸した。次いで、麦汁を静置して凝固したタンパク質(トリューブ)を分離した後、冷却して発酵前液を得た。得られた発酵前液に下面発酵酵母を添加し、主発酵および後発酵を行い発酵液を得た。得られた発酵液を低温で貯蔵して発酵を停止させ、濾過することにより、清澄なビール風味発酵アルコール飲料を得た。
以下の手順に従って、ビール風味発酵アルコール飲料の試飲サンプルを調製した。
本実施例のビール風味発酵アルコール飲料の製造においては、主原料として大麦麦芽を使用した(麦芽使用比率60%)。糖化に際してはグルコアミラーゼを主体とした酵素製剤を用い、糖化の温度および時間を調整し、濾過することで麦汁を得た。得られた麦汁にホップと資化性糖を主体として含む液糖とを添加し、100℃で煮沸した。次いで、麦汁を静置して凝固したタンパク質(トリューブ)を分離した後、冷却して発酵前液を得た。得られた発酵前液に下面発酵酵母を添加し、主発酵および後発酵を行い発酵液を得た。得られた発酵液を低温で貯蔵して発酵を停止させ、濾過することにより、清澄なビール風味発酵アルコール飲料を得た。
得られたビール風味発酵アルコール飲料の糖質の濃度が0.4g/100mLとなるようにビール風味発酵アルコール飲料を水で希釈してベース飲料を得た。次いで、アルコールの濃度がそれぞれ3体積%、4体積%および6体積%となるように、得られたベース飲料に酒類原料用アルコール(第一アルコール株式会社製、アルコール濃度95%)を添加した。さらに、β-ユーデスモールの濃度がそれぞれ0.1ppb、0.2ppb、4ppbおよび5ppbとなるようにβ-ユーデスモールを添加し、ネロールの濃度がそれぞれ1ppb、15ppbおよび60ppbとなるようにネロールを添加して試験区1~19の各試飲サンプルを調製した。なお、実施例における各飲料中のアルコール、糖質、β-ユーデスモールおよびネロールの濃度は、それぞれ以下の方法に従って測定した。
実施例における各飲料中のアルコールの濃度は、日本国国税庁が定める「BCOJビール分析法 8.3.6 アルコライザー法」に従って測定した。
実施例における各飲料中の糖質の濃度は、日本国消費者庁が定める「食品表示基準について(平成27年3月30日 消食表第139号)別添 栄養成分等の分析方法等」に基づいて、測定対象となる飲料の質量から、水分、たんぱく質、脂質、灰分、および食物繊維のそれぞれの質量を除くことにより測定した。
実施例における各飲料中のβ-ユーデスモールおよびネロールの濃度の測定は、下記の条件によるGC/MS分析により行った。具体的には、飲料中の成分をC18固相カラムで抽出し、ジクロロメタン溶出画分を分析用試料として用いた。定量は内部標準法によって行い、内部標準物質にはボルネオール(Borneol)を用い、分析用試料中25ppbになるよう添加した。
(2)試飲サンプルの官能評価
上記(1)で得られた試飲サンプルについて、訓練された5名のパネルによる官能評価を行った。官能評価の評価項目は、「コク」、「スムースさ」ならびに「香りおよび味のバランス」の3項目とした。以下にそれぞれの具体的な評価基準を示す。
a.コク。1(弱く感じられる)~3(感じられる)~5(強く感じられる)の5段階のスコアで評価。
b.スムースさ。1(感じられない)~3(感じられる)~5(より感じられる)の5段階のスコアで評価。
ここで、スムースさは、スコアが高いほど、雑味・渋味・収斂味を感じる程度が低く、よりスムースであると感じることを示す。
c.香りおよび味のバランス。1(バランスが崩れて飲み難い)~3(バランスがほどよい)~5(バランスがすごく良い)の5段階のスコアで評価。
上記(1)で得られた試飲サンプルについて、訓練された5名のパネルによる官能評価を行った。官能評価の評価項目は、「コク」、「スムースさ」ならびに「香りおよび味のバランス」の3項目とした。以下にそれぞれの具体的な評価基準を示す。
a.コク。1(弱く感じられる)~3(感じられる)~5(強く感じられる)の5段階のスコアで評価。
b.スムースさ。1(感じられない)~3(感じられる)~5(より感じられる)の5段階のスコアで評価。
ここで、スムースさは、スコアが高いほど、雑味・渋味・収斂味を感じる程度が低く、よりスムースであると感じることを示す。
c.香りおよび味のバランス。1(バランスが崩れて飲み難い)~3(バランスがほどよい)~5(バランスがすごく良い)の5段階のスコアで評価。
コク、スムースさならびに香りおよび味のバランスの評価では、試験区1をそれぞれスコア3.0として評価した。
表2に示される結果から、試験区7~15および17~19において官能評価結果が良好であった。これらの試験区では、コク、スムースが増強されていた。さらに、上記試験区において香りと味のバランスが良好であった。
試験区7~15および17~19の成分濃度と、他の試験区の成分濃度との比較から、ビール風味発酵アルコール飲料中のβ-ユーデスモール濃度は、0.2ppb以上、好ましくは0.2~5ppb、より好ましくは0.2~4ppbとするとよいことが分かる。また、本発明のビール風味発酵アルコール飲料中のネロール濃度は、1ppb以上、好ましくは1~60ppb、より好ましくは1~15ppbとするとよいことが分かる。また、本発明のビール風味発酵アルコール飲料中のアルコール濃度は、4体積%以上、好ましくは4~6体積%とするとよいことが分かる。
Claims (9)
- 飲料中のβ-ユーデスモールの濃度が0.15ppb以上であり、飲料中のネロールの濃度が0.8ppb以上である、ビール風味発酵アルコール飲料。
- 飲料中の糖質の濃度が0.5g/100mL以下である、請求項1に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
- 麦芽使用比率が50質量%以上100質量%以下である、請求項1または2に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
- アルコール濃度が3体積%超である、請求項1~3のいずれか一項に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
- ビール風味発酵アルコール飲料を製造する方法であって、飲料中のβ-ユーデスモールの濃度が0.15ppb以上に調整され、飲料中のネロールの濃度が0.8ppb以上に調整される、方法。
- 飲料中の糖質の濃度が0.5g/100mL以下に調整される、請求項5に記載の方法。
- 麦芽使用比率が50質量%以上100質量%以下である、請求項5または6に記載の方法。
- 飲料中のアルコール濃度が3体積%超に調整される、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
- ビール風味発酵アルコール飲料において、コクおよびスムースさを向上する方法であって、飲料中のβ-ユーデスモールの濃度が0.15ppb以上に調整され、飲料中のネロールの濃度が0.8ppb以上に調整される、方法。
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