JP2019117730A - 燃料電池セルおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の燃料電池セルにおいては、ゴムガスケットとセパレータとの間には、第一接着層が配置され、ゴムガスケットと電解質膜との間には、ゴムガスケット側から順にシランカップリング剤層と、第一接着層とは異なる第二接着層と、が配置される。
ゴムガスケットは、電解質膜およびセパレータの両方に接着され電解質膜の周縁部を封止する。ゴムガスケットは、ゴムまたは熱可塑性エラストマー(ゴム成分)を含むゴム組成物から製造される。このうち、ゴムとしては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などが挙げられる。ゴム組成物は、ゴム成分の他に、架橋剤、架橋促進剤、加工助剤、軟化剤、補強材などを含んでいてもよい。
セパレータの材質、形状などは特に限定されない。一例として、ステンレス鋼、チタンなどの金属製で、矩形薄板状のセパレータが挙げられる。
電解質膜としては、全フッ素系スルホン酸膜、全フッ素系ホスホン酸膜、全フッ素系カルボン酸膜、炭化水素系膜などの高分子膜が挙げられる。電解質膜は、矩形薄膜状を呈しており、その両面に各々配置されるアノード触媒層およびカソード触媒層と共に、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を構成する。アノード触媒層およびカソード触媒層は、例えば、白金を担持したカーボン粒子を含む。
第一接着層は、ゴムガスケットとセパレータとの間に配置される。第一接着層は、第一接着剤が硬化して形成された層である。第一接着剤は、ゴムガスケットとセパレータとを接着できれば、特に限定されない。例えば、ポリオレフィン系接着剤、塩素ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、塩化ビニル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、ポリエステル系接着剤、フェノール系接着剤、シリコーン系接着剤などが挙げられる。なかでも、加熱により溶融し、接着対象部材との密着性を高めることができるという観点から、第一接着剤として、熱可塑性樹脂系接着剤を用いることが望ましい。接着性をより向上させるためには、酸変性された熱可塑性樹脂系接着剤を用いることが望ましい。以上より、第一接着層は、熱可塑性樹脂系接着剤からなる態様、さらには酸変性された熱可塑性樹脂系接着剤からなる態様が好適である。
第二接着層は、ゴムガスケットと電解質膜との間の電解質膜側に配置される。第二接着層は、第一接着剤とは異なる第二接着剤が硬化して形成された層である。第二接着剤は、電解質膜の材質に応じて適宜選択すればよく、イオン成分や金属成分が含まれていないものが望ましい。
シランカップリング剤層は、ゴムガスケットと電解質膜との間のゴムガスケット側に配置される。シランカップリング剤層は、ゴムガスケットに対する接着力を向上させる役割を果たす。
図1に、本発明の燃料電池セルの一実施形態の断面図を示す。図1に示すように、燃料電池セル1は、電極部材20と、セパレータ30a、30bと、ゴムガスケット40a、40bと、第一接着層50と、シランカップリング剤層51と、第二接着層52と、を備えている。
本発明の燃料電池セルの製造方法は、セパレータ接着工程と、電解質膜接着工程と、を有する。ここで、セパレータ接着工程と電解質膜接着工程とは、順不同であり、どちらを先に行っても、両工程を同時に行ってもよい。以下、各工程を説明する。
本工程は、ゴムガスケットとセパレータとを第一接着剤により接着する工程である。ゴムガスケット、セパレータ、第一接着剤については、本発明の燃料電池セルの実施形態において述べたとおりである。第一接着剤は、ゴムガスケットおよびセパレータの少なくとも一方の接着面に配置すればよい。第一接着剤が液状の場合には、スプレー、ディスペンサーなどで塗布すればよい。第一接着剤がフィルム状などの固体の場合には、そのまま配置すればよい。ゴムガスケットとセパレータとの間に第一接着剤を介在させた状態で、所定の温度下および必要に応じて加圧して、接着させればよい。
本工程は、ゴムガスケットと電解質膜とを、シランカップリング剤をゴムガスケット側に配置して、シランカップリング剤、および第一接着剤とは異なる第二接着剤により接着する工程である。ゴムガスケット、電解質膜、シランカップリング剤、および第二接着剤については、本発明の燃料電池セルの実施形態において述べたとおりである。電解質膜と接する第二接着層を柔軟にするという観点から、第二接着剤の弾性率は、第一接着剤の弾性率よりも小さいことが望ましい。
上述したように、ゴムガスケットを熱架橋により製造する場合に生じる種々の問題を解消するためには、ゴムガスケットを、活性エネルギー線の照射により製造することが望ましい。例えば、本発明の燃料電池セルの製造方法を、セパレータ接着工程および電解質膜接着工程の前に、活性エネルギー線を照射することにより未架橋ゴム部材を架橋してゴムガスケットを製造するゴムガスケット製造工程を有するように構成することができる。
本発明の燃料電池セルの製造方法におけるセパレータ接着工程に従ってテストピースを製造した。まず、EPDM100質量部、カーボンブラック50質量部、パラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製「ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW380」)20質量部からなるゴム組成物を押出成形して、シート状の未架橋ゴム部材(厚さ1mm)を製造した。次に、未架橋ゴム部材に電子線を照射して(吸収線量200kGy)、架橋ゴムシートを製造した。続いて、架橋ゴムシートの一面に接着剤A(無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂フィルム(三井化学(株)製「アドマー(登録商標)NF518」、厚さ0.05mm)を載置した。それから、チタン製の薄板(厚さ0.1mm)を接着剤Aの上に重ねて、積層体を製造した。製造した積層体を、温度180℃に保持された一対の金属板で挟持して、面圧1MPaで加圧しながら10秒間保持した。その後、室温下で一日放置した。このようにして、架橋ゴムシートとチタン製の薄板とが接着されたテストピースを製造した。テストピースにおける接着面の大きさは、幅5mm、長さ40mmである。本実施例において、チタン製の薄板はセパレータに相当する。よって、以下においては、便宜上、チタン製の薄板をセパレータと称す。接着剤Aは第一接着剤の概念に含まれる。表1に、テストピースの構成を示す。
[実施例1]
本発明の燃料電池セルの製造方法における電解質膜接着工程に従ってテストピースを製造した。まず、セパレータが接着されたテストピースを製造した時に用いた架橋ゴムシートを準備した。次に、架橋ゴムシートの一面にシランカップリング剤を塗布し、さらにその上にシランカップリング剤以外の接着剤を塗布して乾燥させた。続いて、電解質膜(全フッ素系スルホン酸膜、デュポン社製「Nafion」(登録商標)、厚さ20μm)を接着剤の上に重ねて、積層体を製造した。製造した積層体を、温度25℃に保持された一対の金属板で挟持して、面圧1MPaで加圧しながら10秒間保持した。その後、室温下で一日放置した。このようにして、架橋ゴムシートと電解質膜とが接着されたテストピースを製造した。テストピースにおける接着面の大きさは、幅10mm、長さ40mmである。本実施例で使用した後述の接着剤Bは、第二接着剤の概念に含まれる。
接着剤を全く使用しないで積層体を製造した点以外は、実施例1と同様にしてテストピースを製造した。
シランカップリング剤および接着剤のうちいずれか一方のみを使用して積層体を製造した点以外は、実施例1と同様にしてテストピースを製造した。
シランカップリング剤および接着剤のうちいずれか一方のみを使用して積層体を製造した点、および金属板の温度(接着温度)を150℃に変更した点以外は、実施例1と同様にしてテストピースを製造した。
シランカップリング剤a:ロードファーイースト社製「ケムロック(登録商標)607」。
接着剤B:変性シリコーン樹脂系接着剤(セメダイン(株)製「スーパーX No.8008」)。
接着剤A、Bの弾性率を、動的粘弾性測定装置((株)ユービーエム製「Rheogel−E4000F」)を用いて測定した。測定には、幅5mm、長さ30mmの平板状の試験片を用いた。測定は、試験片を上下のホルダーで挟み、下側のホルダーを周波数5Hzにて上下に振動させて行った。振幅は0.005mm、チャック間距離は20mmとした。表1および表2に、弾性率の測定結果をまとめて示す。
各テストピースについて、JIS K 6256−2:2013に規定される90°剥離試験を行い、架橋ゴムシートに対するセパレータまたは電解質膜の接着性を評価した。
接着力指数=(各テストピースの剥離強さ/比較例4のテストピースの剥離強さ)×100 ・・・(I)
<総合評価の方法>
電解質膜が接着されたテストピースについて、接着性の評価が良好、かつ使用した接着剤(第二接着層)の弾性率が接着剤A(セパレータを接着した接着剤、第一接着層)の弾性率よりも小さい場合を非常に適する(先の表2中、◎印で示す)、接着性の評価が不良である場合を適さない(同表中、×印で示す)、と総合的に評価した。表2に、総合評価をまとめて示す。
表1に示すように、セパレータの接着性は良好であった。また、表2に示すように、シランカップリング剤とそれ以外の接着剤とを併用した実施例1のテストピースにおいては、電解質膜の接着性は良好であった。一方、接着剤を用いないか、シランカップリング剤およびそれ以外の接着剤のうちの一方しか用いなかった比較例1〜5のテストピースにおいては、電解質膜の接着性は不良であった。接着力の基準とした比較例4のテストピースにおいては、接着温度を150℃と高温にしたため、シランカップリング剤のみでも所望の剥離強さを得ることができた。しかし、接着温度が高温であったため、電解質膜に劣化が見られた。このため、接着性は不良となった。また、比較例5のテストピースにおいては、接着温度を高温にしても剥離強さが小さく、さらには電解質膜に劣化も見られた。
Claims (10)
- 電解質膜と、セパレータと、該電解質膜および該セパレータの両方に接着され該電解質膜の周縁部を封止するゴムガスケットと、を備える燃料電池セルであって、
該ゴムガスケットと該セパレータとの間には、第一接着層が配置され、
該ゴムガスケットと該電解質膜との間には、該ゴムガスケット側から順にシランカップリング剤層と、該第一接着層とは異なる第二接着層と、が配置されることを特徴とする燃料電池セル。 - 前記第二接着層の弾性率は、前記第一接着層の弾性率よりも小さい請求項1に記載の燃料電池セル。
- 前記第一接着層は、熱可塑性樹脂系接着剤からなる請求項1または請求項2に記載の燃料電池セル。
- 前記第二接着層は、シリコーン樹脂系接着剤からなる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の燃料電池セル。
- 前記ゴムガスケットは、活性エネルギー線の照射によりゴム組成物が架橋した架橋物である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の燃料電池セル。
- 電解質膜と、セパレータと、該電解質膜および該セパレータの両方に接着され該電解質膜の周縁部を封止するゴムガスケットと、を備える燃料電池セルの製造方法であって、
該ゴムガスケットと該セパレータとを第一接着剤により接着するセパレータ接着工程と、
該ゴムガスケットと該電解質膜とを、シランカップリング剤を該ゴムガスケット側に配置して、該シランカップリング剤、および該第一接着剤とは異なる第二接着剤により接着する電解質膜接着工程と、
を有することを特徴とする燃料電池セルの製造方法。 - 前記第二接着剤の弾性率は、前記第一接着剤の弾性率よりも小さい請求項6に記載の燃料電池セルの製造方法。
- 前記電解質膜接着工程においては、前記ゴムガスケットと前記電解質膜とを加熱しないで接着する請求項6または請求項7に記載の燃料電池セルの製造方法。
- 前記電解質膜接着工程においては、前記ゴムガスケットに前記シランカップリング剤を塗布し、該シランカップリング剤の表面に前記第二接着剤を塗布した後、前記電解質膜を重ねて接着する請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の燃料電池セルの製造方法。
- 前記セパレータ接着工程および前記電解質膜接着工程の前に、活性エネルギー線を照射することにより未架橋ゴム部材を架橋して前記ゴムガスケットを製造するゴムガスケット製造工程を有する請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の燃料電池セルの製造方法。
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