JP2019116691A - 中空繊維 - Google Patents

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【課題】保温性、膨らみ感、軽量性、優れた黒発色性をあわせもつ糸、及びこの糸から作られる布帛を提供すること。【解決手段】壁の平均厚みが0.2μm〜15.0μmであり、中空率が10%〜80%であり、顔料を1〜5重量%含有する、ポリエステル系又はポリアミド系の中空繊維とする。【選択図】図2

Description

本発明は、保温性、膨らみ感、軽量性、優れた発色性をあわせもつ糸、及びこの糸から作られる布帛に関する。
近年、着用時の動きやすさ等の観点で、保温性、膨らみ感等の衣類に必要な特性を保持しつつ、軽さを追求した衣服の開発が盛んである。この目的のために、さまざまな機能性繊維が開発されてきた。
軽量性を向上させるために、中空断面を有する繊維(以下、中空繊維と称する)が開発されている。中空繊維は、繊維質量あたりの見かけ体積が大きいため軽量であり、空気を内包するため保温性が高い。さらに、中空繊維の中には、より柔らかく、風合いの良い繊維として、略C型の断面形状を有する繊維(以下、「略C型断面繊維」と称する)が開発された(特許文献1)。略C型断面繊維は、断面形状が略円形の一般的な中空繊維よりも曲げ剛性が低く、風合いが柔らかい。略C型断面繊維は、例えば一旦芯成分と鞘成分とを有する芯鞘型複合繊維を紡糸し、その後アルカリ溶液中で芯成分を溶出除去することにより断面形状が略C型となる。この繊維は、仮撚加工や撚糸加工及び製編織、染色加工工程での物理的圧力が加えられても各単繊維の異形断面形状を維持することができ、軽量で膨らみ感があり、さらに保温性も優れ、柔らかい。
一方、種々繊維の中で、ポリエステル繊維は、強度、耐熱性、寸法安定性などの衣類に必要な特性が優れており、汎用性が高いため、ポリエステル繊維を主原料とする機能性繊維が数多く開発されている。しかし、ポリエステル繊維は、一般的に、染色性があまりよくない。さらに、繊維表面が平滑であるため、表面反射率が高く、表面反射光により繊維が白っぽく見えてしまい、深い色や鮮明な色が得られにくい。そのため、さまざまな色の衣類を製造したいという要求に応えるには、上述のような衣料に必要な優れた特性を保持しつつ、ポリエステル繊維の発色性を高める必要がある。特に、デニム、ユニフォーム等の厚地用途では、軽量性と優れた発色性をあわせもつことが必要とされるが、深みのある黒色などを発色させるのは容易ではなく、黒などの発色性が高いポリエステル繊維の要求は非常に高い。
ポリエステル繊維を黒色に染色する方法としては、カーボンブラック微粒子をポリエステル繊維に練り込んで黒原着糸を製造する方法が知られている。具体的には芯鞘構造を有するポリエステル繊維の芯構造にのみカーボンブラックを練り込む方法が一般的に知られており、例えば、芯成分として顔料を含むポリエステル、鞘成分としてナイロンで構成した芯鞘型複合繊維を、前記鞘成分を溶解又は分解して除去した後、分散染料で染色することを特徴とする黒発色ポリエステル系繊維布帛の製造方法が開示されている(特許文献2)。
また、カーボンブラックの練り込みに加えて、ポリエステル繊維の表面反射率を下げて発色性を高める手段を組み合わせた方法も知られている(特許文献3)。この文献には、カーボンブラックを含有するポリエステルマルチフィラメントAを芯成分として含み、コロイダルシリカ微粒子を含有するポリエステルマルチフィラメントBを鞘成分として含み、芯成分と鞘成分の両方の繊維表面に凹部を有する混繊糸から作られる織編物が、優れた黒発色性を有することが示されている。
また、カーボンブラックを含有する芯成分Aと、鞘成分Bとからなる分繊用黒色原着ポリエステルマルチフィラメントも知られている(特許文献4)。芯成分にのみカーボンブラックを含有することで、分繊工程での工程通過性が良好で、仮撚り、分繊工程でのガイド疵や摩耗、整経工程での筬摩耗が少なく、黒色度に優れた分繊用黒色原着ポリエステルマルチフィラメントが得られるということである。
さらに、繊維が細くなるにつれて繊維の曲げ剛性が顕著に小さくなるため、柔らかいポリエステルの極細繊維を得る試みの中で、繊維形成性ポリマーを島成分とし、前記島成分よりも易溶解性のポリマーを海成分とする海島型複合繊維において、島成分にのみカーボンブラックを練り込み、海成分を溶解除去することも行われている(特許文献5)。
特開2014−227612号公報 特許第3726373号公報 特開2010−138497号公報 特開2008−163487号公報 特開2008−88562号公報
以上のように、ポリエステル繊維を黒色に染色する方法としては種々の方法が知られている。
しかし、ポリエステル繊維は、繊維の柔らかさを高めるために、アルカリ等を用いた減量加工を行うことが一般的である。上述の黒原着糸に減量加工を行った場合、糸から溶出したカーボンブラックが加工液に混ざり、加工機内部に付着するため、加工機の頻繁なメンテナンスが必要となり、他の繊維を汚染する可能性も高まる。また、カーボンブラックが加工液に混ざるのを防ぐ観点から、繊維表面に露出する鞘成分にはカーボンブラックが存在しないような工夫がなされることもあるが、これでは結局繊維全体として十分な黒発色性が得られない。さらに、上述の特許文献1〜4に記載の繊維は、芯成分にカーボンブラックを含有する芯鞘構造を有する中実繊維であるため、膨らみ感や軽量性は得られない。特許文献5に記載の繊維も、繊維を細くしても繊維質量あたりの見かけ体積を大きくすることができないため、十分な軽量性は得られない。そして、繊維が細くなるほど繊維の表面積が大きくなるので、ポリエステル繊維の高い表面反射率が問題となり、繊維が白っぽく見えてしまう傾向が高い。
以上のように、ポリエステル繊維にカーボンブラックを練り込んだ複合繊維は種々開示されているが、十分な発色性が達成されているとはいえない。また、発色性を向上させようとすると、膨らみ感、軽量性が要求を満たさなくなる等、衣類に必要な特性を保持しつつ、発色性を向上させる試みは、未だ十分とはいえない。さらに、生産効率の点でも十分とはいえない。
そのため、本発明の目的は、保温性、膨らみ感、軽量感を保持しつつ、優れた発色性をあわせもつポリエステル系繊維及びこの繊維から作られる布帛を提供することである。また、本願発明者らは、上述のポリエステル系繊維の開発時に得られた知見から、保温性、膨らみ感、軽量感を保持しつつ、優れた発色性をあわせもつ他の繊維(例えば、ポリアミド系繊維)及びこの繊維から作られる布帛を提供することも目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、以下のいずれかの構成を採用する。
(1) 壁の平均厚みが0.2μm〜15.0μmであり、中空率が10%〜80%であり、顔料を1〜5重量%含有する、ポリエステル系又はポリアミド系の中空繊維。
(2) 前記顔料の平均粒子径が0.5μm以下である、前記(1)に記載の中空繊維。
(3) 実質的に略C型断面繊維である、前記(1)又は(2)に記載の中空繊維。
(4) 中空率が50%〜80%であり、ポリエステル系である、前記(3)に記載の中空繊維。
(5) 単糸繊度が0.1〜50デシテックスである、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の中空繊維。
(6) 仮撚糸である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の中空繊維。
(7) 前記(1)〜(6)のいずれかに記載の中空繊維と、弾性繊維とで構成された複合糸。
(8) 前記弾性繊維が、前記複合糸中に1〜70質量%含まれている、前記(8)に記載の複合糸。
(9) 前記(1)〜(6)のいずれかに記載の中空繊維及び前記(7)又は(8)に記載の複合糸の少なくとも1種を用いて作られた布帛。
(10)前記(9)の布帛をさらに染色して作られた布帛。
本発明の中空繊維は、一般的な中実繊維(内部に空洞がない繊維)と比べ、繊維質量あたりの見かけ体積が大きいため軽量であり、空気を内包するため保温性が高く、曲げ剛性が低く、風合いが良い。また、中空繊維に顔料を含有せしめるので、少ない顔料含有量、具体的には1〜5重量%という少量の顔料で、糸の特性に悪影響を及ぼさずに発色性を高めることができる。
また、断面が略C型である場合には、断面が略円形の中空繊維よりも曲げ剛性が低くなり、ソフトな風合いが得られる。さらに溶出法で製造する場合には、芯成分溶出前にその芯成分の一部が外表面に露出するため、略円形断面の中空繊維を製造するよりも芯成分の溶出がさらに容易であり、鞘成分の溶出が抑えられる。その結果、鞘成分からのカーボンブラックの溶出も抑えられ、加工機の汚染を低減することができる。
以上のように、本発明によれば、保温性、膨らみ感、軽量感と、優れた発色性をあわせもつ繊維が得られる。
図1は、本発明の一実施形態にかかる中空繊維の製造途中の顕微鏡写真であり、芯成分溶出前の略C型断面繊維の断面を示す(倍率2000倍)。 図2は、本発明の一実施形態にかかる中空繊維の顕微鏡写真であり、芯成分溶出後の略C型断面繊維の断面を示す(倍率2000倍)。 図3は、本発明の一実施形態にかかる中空繊維から作られたデニム地の表側の写真である(A:実施例3、B:比較例3)。 図4は、本発明の一実施形態にかかる中空繊維から作られたデニム地の裏側の写真である(A:実施例3、B:比較例3)。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(1.定義)
本発明において、「中空繊維」とは、繊維軸方向に連続した空洞が繊維内部に存在する繊維を指す。中空繊維の壁表面に開口部がなく断面形状が実質的に略円形(変形して楕円形などに見えるものを含む)の繊維のほか、後述する略C型断面繊維も含め、繊維軸方向に連続した何らかの形状の空洞がある繊維は、すべて中空繊維に含まれる。1つの繊維内に複数個の空洞が存在していてもよい。
本発明において、「略C型断面繊維」とは、繊維軸方向に連続して中空繊維の壁の一部が開口しており、断面形状が実質的に略C型(変形して略V型、略U型に見えるものを含む)の糸を指す(例えば、図2に示すような断面形状)。なお、後述する溶出法において芯成分を溶出する前の繊維を「略C型断面複合繊維」と呼び、芯成分を溶出した後の繊維を「略C型断面繊維」と呼ぶ。
本発明において、「中空率[%]」とは、中空繊維の質量を、該中空繊維と同じ見かけ体積を有する中実繊維の質量で割り算し、100を掛け算した値を言う。例えば、芯成分と鞘成分を有する糸から中空繊維を得る場合、芯成分の質量を芯成分と鞘成分の合計質量で割り算し、100を掛け算した値をいう。中空率が高いほど、繊維が占める見かけ体積あたりの質量が小さくなるため、軽量性が高い。中空率の具体的な計算方法は、実施例の「1−1.中空繊維又は複合糸の評価方法(2)」に記載する。
顔料の平均粒子径は、各粒子の長軸径を測定し、その算出平均値を採用する。なお、測定にあたっては、[中空繊維の融点+20℃]に加熱したプレパラートに中空糸0.1gを載せ、スライドガラスで挟みフィルム状に広げ、倍率6000倍で撮影して、確認できる顔料のストラクチャーについて最も長い長径を測定する。1試料から任意に20個測定し、20個の算出平均値を算出する。この際、撮影した写真は粒径測定しやすいサイズに拡大してもよい。
(2.中空繊維)
本発明の中空繊維は、繊維の平均厚みが0.2μm〜15.0μmであり、中空率が10%〜80%であり、カーボンブラックなどの顔料を1〜5重量%含有する。黒色顔料として使用されるカーボンブラックの例としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等、一般的に市販されているカーボンブラックが挙げられる。なお、カーボンブラックに代えて、繊維に使用される一般的な他の黒色顔料を使用してもよい。また、用途に応じて、黒色以外の顔料(例えば、赤色、黄色、青色、緑色の顔料等)を使用してもよい。
本発明の中空繊維は、所望の中空形状を形成するように設計された紡糸口金を用い、紡糸、延伸により中空繊維を製造する方法(以下、直接中空形成法と称する)、芯成分と鞘成分とを有する繊維の芯成分を溶出し、所望の中空形状を形成する方法(以下、溶出法と称する)等、一般的な方法によって作られる。溶出法の方が、中空率を高めることが容易であり、膨らみ感と軽量性が優れた糸が得られるため、好ましくは、本発明の中空繊維は、溶出法によって作られる。
溶出法では、鞘成分に比べ芯成分が特定の溶媒に溶解しやすいという特性を利用し、芯成分と鞘成分の溶出速度を調整し、実質的に芯成分のみを溶出するようにする。そのため、鞘成分のみに顔料を含有させておけば、顔料溶出を防ぐことができ、加工機の汚染も低減することができる。また、顔料の使用量を低減しつつも高い発色性を発現することができ、糸の特性に悪影響を及ぼすこともない。溶出に用いるアルカリ溶液は、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液である。
そして、中空繊維の中でも略C型断面繊維を溶出法によって得る場合、製造工程上芯成分の一部が露出することになるため、断面形状が略円形の一般的な中空繊維を製造する場合と比較して、芯成分の溶出が容易である。従って、本発明の中空繊維は、溶出法によって得ることが好ましく、断面積が略C型である略C型断面繊維であることが好ましい。その結果、芯成分溶出時の鞘成分の溶出がさらに抑えられ、鞘成分に含まれるカーボンブラックなどの顔料溶出も抑えられ、加工機の汚染を防ぐことができる。
中空繊維の成分としては、ポリエステル系またはポリアミド系樹脂である。特に、上述した溶出法によって得る場合、中空繊維の芯成分は、鞘成分よりも溶出液に溶解しやすいものであればよい。好ましくは、芯成分は、ポリエステルを主成分として含むものである。
溶出法により作られる中空繊維(特に、略C型断面繊維)では、芯成分溶出時の鞘成分の溶出を抑えることが、カーボンブラックなどの顔料溶出を抑えるために重要であるため、芯成分と鞘成分の溶出速度に差がある方が望ましい。溶出液としてアルカリ溶液を使用する場合、例えば、5−スルホイソフタル酸金属塩又は/及びポリエチレングリコールを共重合成分として用いたポリエステルが芯成分として好適に用いられる。より好ましくは、5−スルホイソフタル酸金属塩とポリエチレングリコールをともに共重合成分として用いたポリエステルが芯成分として用いられる。5−スルホイソフタル酸金属塩は、好ましくはナトリウム塩である。ポリエステルは、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートである。
共重合する5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩とポリエチレングリコールの量は、芯成分全体の質量を基準として、2成分合計で10質量%〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは、12質量%〜20質量%である。10質量%より少ないと、アルカリ溶液による溶出が不十分となる場合がある。一方、30質量%より多いと、製糸安定性が悪くなる場合がある。
また、芯成分のポリエステルには、アルカリ溶液による溶出性と製糸安定性を妨げない範囲で、アジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸等のオキシカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体等が共重合されていてもよい。
一方、最終的に中空繊維を構成することになる鞘成分は、芯成分よりも溶出液に溶解しにくいものであればよい。芯成分と鞘成分の溶出速度の関係は、上に記載した通りである。より高い保温性、膨らみ感、軽量感を有する繊維を得るために、鞘成分は、ポリエステル又はポリアミドを主成分として含むことが好ましく、さらには、ポリエステルを主成分として含むことが好ましい。
鞘成分に用いられるポリマーは、用途に応じて、アルカリ溶液への溶解性、風合い、染色性等の種々の因子に基づいて選択することができる。
鞘成分として選択されるポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリトリメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルが挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートが用いられる。
本発明において、芯成分よりもアルカリ溶液による溶出性が低くなる範囲であれば、鞘成分のポリエステルにも上述の5−スルホイソフタル酸金属塩やポリエチレングリコール又は上述のオキシカルボン酸等が共重合されていてもよい。
また、鞘成分のポリエステルにも、芯成分よりもアルカリ溶液による溶出性が低くなる範囲で、アジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸等のオキシカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体等が共重合されていてもよい。
鞘成分として使用可能なポリアミドの具体例としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン56、ナイロン11、又は芳香族ポリアミド等、さらにはこれらの共重合ポリアミドが挙げられる。ビニル成分を混合し、吸湿性、接触冷感性を発現させる改質ポリアミドも好ましく用いられる。鞘成分がポリアミド系ポリマーである場合、溶出液が鞘成分に浸透しやすいため、鞘成分がポリエステル系ポリマーである場合と比較して、芯成分の溶出が容易である。その結果、芯成分溶出時の鞘成分の溶出がさらに抑えられ、鞘成分に含まれるカーボンブラックの溶出も抑えられ、加工機を汚さない。
本発明の中空繊維は、壁の平均厚みが0.2μm〜15.0μm、好ましくは、0.3μm〜10.0μm、さらに好ましくは、0.35μm〜5.0μmである。壁の平均厚みが0.2μmに満たないものは、強力が不足し、また、直接中空形成法では一般的に作るのが困難であり、一方溶出法では作成することが可能であっても、溶出減量での制御が困難である等の問題が生じる。逆に、壁の平均厚みが15.0μmを超えるものは、軽量感に乏しく、風合いが硬くなる。壁の平均厚みが上記範囲内であることで、機械的強度、軽量感、風合いに優れが繊維となる。特に、略C型断面繊維とする場合、一般的な略円形断面の中空繊維よりも高い中空率を達成しやすいため、壁の平均厚みをかなり薄くすることができ、優れた軽量感、風合いが得られる。
また、中空繊維は、繊維質量あたりの見かけ体積が大きいため軽量であり、空気を内包するため保温性が高いが、本発明の中空繊維は、中空率が10〜80%、好ましくは15〜70%である。中空率が80%を超えると、膨らみ感、軽量性、保温性が高くなるものの機械的強度が低下する。一方、10%を下回ると、機械的強度が高くなるが、膨らみ感、軽量性、保温性が低下する。具体的な中空率の値は、所望する膨らみ感、軽量性、保温性の観点から、また、かかる繊維を用いて作られる編織物の機械強度等を考慮して設定される。
本発明の中空繊維は、溶出法によって作られる場合、略C型断面としやすく、また高い中空率を達成しやすい。略C型断面繊維は、略円形断面の中空繊維と比較して高い中空率が得られやすく、さらに優れた膨らみ感、軽量性を有し、曲げ剛性が低いため、風合いが柔らかい。略C型断面繊維の場合、中空率は、好ましくは50%〜80%であり、さらに好ましくは55〜70%である。
中空繊維に含まれるカーボンブラックなど顔料の量は、繊維の合計重量に対して1〜5重量%、さらに好ましくは、1.2重量%〜3重量%である。顔料の含有量が多いほど、中空繊維の発色性が高くなるが、含有量が5重量%を超えると、中空繊維の性質を悪化させるおそれがあるうえに、本発明においてはこのような少量の顔料で十分な発色性を発現することができるので、含有量をそれほど多くする必要がない。含有量が1重量%より少ないと、中空繊維に十分な発色性が付与されない。
繊維に含まれるカーボンブラックなど顔料の平均粒径は、好ましくは、0.5μm以下(より好ましくは0.01〜0.03μm)である。平均粒径は、顔料を電子顕微鏡で観察した際の球状粒子の長径の平均値である。一般的に、粒径が小さいほど繊維における発色性が高くなるが、凝集力が強くなり、分散させるのが困難となる。
特に顔料としてカーボンブラックを使用する場合、カーボンブラックは粒子が凝集し、上述の平均粒径よりも粒径が大きな二次粒子を形成しやすい。生産加工機にカーボンブラックが放出されると、紡糸パック内のフィルターを詰まらせ、濾過圧が上昇し、パックライフが短くなって生産性が低下しやすくなる。従って、生産過程でカーボンブラックの溶出を抑えるように、製造方法を選択し、また、組成や処理温度、処理時間等を調整することが重要であるが、略C型断面繊維を溶出法により製造するのであれば、生産過程で鞘成分のみならず芯成分の一部も露出しているため、略円形断面の中空繊維と比較して、芯成分の溶出が容易である。また、鞘成分よりも芯成分の溶解速度が早く優先的に芯成分が溶出するので、芯成分溶出時の鞘成分の溶出を抑制することもできる。その結果、鞘成分に含まれるカーボンブラックの溶出も抑えられ、パックライフが長くなる。
溶出法により本発明の中空繊維を製造する場合、鞘成分に顔料を含有させる方法は、高濃度にカーボンブラックを含有するマスターバッチをあらかじめ作成し、それを、カーボンブラックを含有しない鞘成分の中に混合する方法や、顔料そのものを鞘成分に直接加える方法がある。組成の制御が容易であり、カーボンブラックの分散性が良好であることから、前者の方法が好ましく用いられる。マスターバッチ中のカーボンブラックの含有量は、好ましくは、10〜30重量%である。10重量%未満では、最終的な含有量との差が小さすぎ、マスターバッチを使用するメリットが得られにくい。30重量%を超えると、カーボンブラックの凝集が起こり、分散性が悪くなるおそれがある。
本発明の中空繊維の単糸繊度は、0.1〜50デシテックスであることが好ましい。更に好ましくは0.1〜25デシテックスである。0.1デシテックス未満のものは紡糸が困難となる場合がある。50デシテックスを超えるものは風合いが硬くなる傾向がある。
本発明の中空繊維は、好ましくは、仮撚加工された仮撚糸である。仮撚加工を行うことで、最終的に製造される布帛のカサ高感、膨らみ感が増す。仮撚温度によって、得られる糸の性質が異なり、種々の用途に適した糸が得られる。例えば、一般的な仮撚温度(例えば、ポリエステルでは180℃〜220℃、ポリアミドでは160℃〜190℃)で仮撚加工した糸は、捲縮が大きく、カサ高いため、ボリューム感のある厚地布帛が得られやすい。また、ポリエステルフィラメント糸、ポリアミドフィラメント糸をもっと低温(例えば、ポリエステルフィラメント糸では150〜160℃、ポリアミドフィラメント糸では130℃〜140℃)で仮撚加工すると、捲縮は小さくなるものの、滑らかさが増し、絹様のタッチが得られるので、中厚地用糸として特に好ましい。また、膨らみ感と滑らかさを併せ持つ汎用的な糸を製造するには、ポリエステルフィラメント糸では、180℃〜220℃で仮撚加工した後、160℃〜200℃でセットするとよい。ポリアミドフィラメント糸では、160℃〜190℃で仮撚加工した後、160℃〜180℃でセットするとよい。
本発明の中空繊維を、さらに分散染料によって染色してもよい。用いられる分散染料は、本発明の中空繊維を染色できるものであれば特に制限はない。分散染料は、黒色染料であってもよく、赤色、青色等の染料であってもよい。黒色染料によって染色した場合、より深い黒発色性が得られる。赤色、青色等の染料によって染色した場合、原色では出せない色を有する糸が得られる。また、中空繊維から作られた布帛を分散染料によって染色してもよく、深い黒色の布帛を製造したり、シャンブレー等の独特の味わいを有する織物を製造したりするときなどに有用である。
(3.弾性繊維)
本発明は、本発明の中空繊維と弾性繊維とで構成された複合糸も提供する。本発明の複合糸に使用する弾性繊維は、弾性を有する繊維であれば特に限定されないが、具体的には、ポリウレタン系弾性繊維、ポリエーテルエステル系弾性繊維、及びポリエステル系バイメタル複合繊維(ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチルテレフタレート等)や高捲縮仮撚糸等が挙げられる。好ましくは、本発明の弾性繊維は、ポリウレタン系弾性繊維である。
弾性繊維を混用した複合糸を使用することで、滑らかさに加え、優れたストレッチ性、伸長回復性を有する布帛が得られ、着用しやすさ、着用時のフィット感等好ましい特性が得られる。
(4.複合糸)
本発明の複合糸は、上述の中空繊維と弾性繊維とで構成される。中空繊維と弾性繊維とは、混繊加工、合撚加工又はカバーリング加工などにより交絡して混用されるが、中でもストレッチ性の均一性とコスト面からエアー混繊加工によって混用することが好ましい。また、エアー混繊加工とカバーリング加工による場合、弾性繊維を2.0〜4.0倍で延伸しながら加工すると、加工糸の芯部に弾性繊維が配置されてストレッチ性、伸長回復性が効率よく発揮できることから、特に好ましい。
本発明の複合糸は、弾性繊維の周囲に中空繊維がループ状にゆるやかに巻き付いた構造を有し、ループ高さが大きいことを特徴とする。「ループ高さ」とは、ループ状の中空繊維が、複合糸の中心部からどの程度離れているかの指標であり、ループ高さが大きいほど、複合糸が占める見かけ体積あたりの糸の質量が小さくなり、複合糸の軽量性及びカサ高性が高まる。複合糸のループ高さは、例えば、それぞれの糸をデジタルマイクロスコープ(例えば、株式会社キーエンス製VHX−1000)で拡大し、画像を得る。複合糸の中心部にある弾性繊維の位置を0とし、弾性繊維から垂直に各ループの一番大きな部分を測定することによって測定される。
本発明の複合糸は、ループ高さが300〜5000μmであり、好ましくは、500〜4500μmであり、非常に大きなループ高さを有する。本発明では、複合糸中の中空繊維のループ高さは、エアー混繊加工の場合には1000μm〜5000μm、合撚加工によって製造した場合には、300μm〜3000μm、カバーリング加工の場合には700μm〜2000μmであり、ループ高さの大きな中空繊維を製造したい場合には、エアー混繊加工が好ましい。また、ループ高さは、中空繊維と弾性繊維とを複合した後、種々の条件(例えば、温度、緊張率など)を変えた処理を施すことによって制御することができ、上に列挙したループ高さより大きなもの、小さなものを後加工により作ることもできる。ループ高さが大きいほど、弾性繊維と中空繊維との間に多くの空気を含み、複合糸全体としての膨らみが大きくなる。
弾性繊維は、布帛のストレッチ性、伸長回復性の点から、中空繊維と弾性繊維の合計質量(すなわち複合糸の質量)を基準として、1質量%〜70質量%含有されていることが好ましい。さらには2質量%〜50質量%、さらには5質量%〜30質量%含まれていることが好ましい。1質量%未満の場合は、ストレッチ性、伸長回復性が小さくなり、また、70質量%を超える場合には、布帛の締め付け感が強くなり過ぎる場合がある。
本発明の複合糸は、総繊度が10デシテックス以上500デシテックス以下であることが好ましい。総繊度が10デシテックス未満のものは、製造が困難な場合があり、一方、総繊度が500デシテックスを超えるものは、衣料用途として厚くなりすぎる傾向がある。用途によって、最適な総繊度がある。例えば、超薄地の羽衣のような布帛は、10〜50デシテックス、婦人用一般薄地の布帛、スポーツ用薄地は、50〜120デシテックス、中程度の厚地の布帛、ジャケット、パンツ地は、120〜200デシテックス、厚地織物、外衣、コート、重衣(例えば、柔道着、剣道着等)は、200〜500デシテックスのものが最適である。
(5.中空繊維の芯成分を溶出させる方法)
本発明の中空繊維は、上述したように溶出法によって製造することが好適であるが、中空繊維の芯成分は、一般的な方法によって除去することができ、例えば、アルカリ溶液を用いて溶出される。溶出に用いるアルカリ溶液は、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液が好ましい。芯成分の方が鞘成分よりも例えばアルカリ溶液に溶解しやすいという性質を利用して、芯成分を除去する。糸の状態で芯成分を溶出させる方法としては、従来の技術である糸染設備を利用し、アルカリ溶液で溶出する方法がある。具体的には、チーズの形状で処理するチーズ染色機、又はカセ形状で処理するカセ染色機、マフ染色機、スター染色機を用い、溶出を行う。溶出の均一性、糸の解舒性から、チーズ染色機を用いることが特に好ましい。
本発明の中空繊維を略C型断面繊維とする場合、溶出前の略C型断面複合繊維において鞘成分は、図1に示すように、完全な中空構造ではなく、C型形状等を有したものとなり、繊維横断面において芯成分の一部が前記鞘成分の開口部から繊維表面に露出している形態となる。そのため、略円形断面の中空繊維を製造する場合と比較して、アルカリ溶液が芯成分に浸透しやすく、比較的穏和な条件で溶出しやすく、芯成分の溶け残りが起こりにくい。溶出条件は、芯成分の組成、処理に使用する装置等によって変わるが、使用するアルカリ溶液の好ましい濃度は、例えば、0.5〜40%である。好ましい処理温度は、例えば、80℃〜120℃である。この範囲内で芯成分を除去することにより、芯成分を均一に効率的に溶出させることができ、同時に、芯成分溶出時の鞘成分の溶出が抑えられ、鞘成分に含まれる顔料の溶出も抑えられ、加工機の汚染を低減できるので好ましい。
なお、図1は、芯成分溶出前の略C型断面複合繊維の断面を示す顕微鏡写真、また図2は、芯成分溶出後の略C型断面繊維の断面を示す顕微鏡写真である。図中の黒点は、カーボンブラックを示す。図2に示すように、芯成分が溶出され、略C型断面繊維が得られる。
溶出法によって中空繊維を製造する場合、芯成分を溶出させる方法としては、代表的には、中空繊維の状態で溶出させる方法と、複合糸又は布帛の状態にしてから溶出させる方法があり、以下の4種類に分類される。
1.中空繊維の状態(すなわち、弾性繊維との複合糸を製造しない状態)で芯成分を溶出させる(以下、「糸溶出法」と称する)。
2.中空繊維を弾性繊維に混繊、合撚又はカバーリングさせて複合糸を製造した後、糸の状態で中空繊維の芯成分を溶出させる(以下、「先混用後溶出法」と称する)。
3.中空繊維の芯成分を溶出させた後、弾性繊維と混繊又は合撚又はカバーリングし、複合糸を製造する(以下、「先溶出後混用法」と称する)。
4.中空繊維を弾性繊維に混繊又は合撚又はカバーリングして複合糸を製造し、続いて製編織して布帛とした後、芯成分を溶出させる(以下、「製編織後溶出法」と称する)。
(6.上述の溶出法によって得られる複合糸及び布帛の性質)
同じ組成の中空繊維であっても、芯成分の除去方法を変えることにより、種々の用途に適した様々な特性を有する複合糸及び布帛が得られる。なお、以下において「布帛」とは、織物、編物、不織布等の生地をいう。織物の例としては、平織、綾織(斜文織ともいう)、朱子織、二重織等の織物がある。編物の例としては、丸編、経編、横編等の編物がある。
(6−1.先混用後溶出法によって得られる複合糸、布帛の性質)
本発明の複合糸は、中央部に弾性繊維が存在し、弾性繊維の周囲に、本発明の中空繊維が交絡しており、大きなループ形状が形成されている。先混用後溶出法では、中空繊維と弾性繊維とを混用した後に中空繊維の芯成分を除去するため、弾性繊維によって中空繊維が伸びきらない状態で保持され、芯成分を除去した後も中空部分の形状が保持されやすい。実際に、この方法で溶出させると、中空繊維の捲縮がきれいに残り、中空繊維同士の間、弾性繊維と中空繊維との間に空気を多く含む。また、細かい捲縮が存在するため、中空繊維のループがつぶれにくいと考えられる。
また、先混用後溶出法によって得られた複合糸から作られる布帛は、上述の複合糸の特徴から、非常に軽く、優れた保温性を有し、膨らみが大きいため、特に、軽くて暖かい秋冬向けの衣料として優れた特性を有する。
(6−2.先溶出後混用法によって得られる複合糸、布帛の性質)
先溶出後混用法では、中空繊維の芯成分を溶出させた後、弾性繊維と混用する。中央部に弾性繊維が存在し、弾性繊維の周囲に、本発明の中空繊維が交絡しており、大きなループ形状が形成さるが、中空繊維は、比較的滑らかな外観を有しており、捲縮はそれほど大きくない。
そのため、先溶出後混用法によって得られた複合糸から作られる布帛は、先混用後溶出法によって得られた複合糸から作られる布帛と比較して、肌触りが滑らかであり、通気性がよいと考えられ、特に、軽くてさらさらした春夏向けの衣料として優れた特性を有する。
(6−3.製編織後溶出法によって得られる布帛の性質)
糸の状態で中空繊維の芯成分を除去する場合と比較して、製編織後溶出法によって得られる布帛では、中空繊維のループが比較的小さく、均一になる。そのため、得られる布帛は、非常に均一な保温性、膨らみ感、ストレッチ性を有し、寸法安定性が高い。
(7.布帛)
本発明の複合糸を用いた布帛としては、織物、編物として好適に用いられる。
織物は、伸長率が5%以上、伸長回復率が80%以上であることが好ましい。伸長率が5%以上であれば、身体の動きに追随できるため好ましい。着用時の動きやすさとフィット性から、伸長率が5%〜40%であることが特に好ましい。本発明の織物の伸長回復率は80〜95%の範囲であることが好ましい。この範囲ではフィット感、着用快適性に優れる。また、型崩れが少なく形態保持性にも優れる。80%未満では回復が劣る場合がある。また、95%を超える物は一般的には製造できない。
編物は、伸長率が90%以上、伸長回復率が80%以上であることが好ましい。着用時の動きやすさとフィット性から、伸長率は100%〜200%が特に好ましい。本発明の編物の伸長回復率は、織物の場合と同様の理由で、80〜95%の範囲であることが好ましい。
さらに、本発明の布帛は、布帛の形態に製編織された後に染色されてもよい。
本発明の布帛は、起毛処理が施されてもよい。起毛処理は、例えば、針布起毛機、バフ起毛機など一般的な起毛のための機械を用いて行うことができる。一般的に、針布起毛機を用いると、細かく密で長い毛羽が得られ、バフ起毛機を用いると、短く粗い毛羽が得られる。理論に束縛されるものではないが、起毛することによって、略C型断面繊維の鞘成分が細かく切断され、割繊したり、クラックが入ったりすることで、従来にはない細かい特徴のある毛羽が得られると考えられる。布帛の裏面(人体に触れる側)を起毛すると、肌との摩擦が少なくなり、滑らかな質感が得られ、着用することで暖かく感じる。布帛の表面(外気側)を起毛すると、光沢、見栄え、手触りなどが良くなる。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
(評価方法)
(1.中空繊維、複合糸、布帛の分析)
本発明の方法によって作成した略C型断面繊維、複合糸及び布帛は、以下の方法によって分析した。
(1−1.中空繊維又は複合糸の評価方法)
(1)厚み(μm)
中空繊維の単糸を切断し、走査型顕微鏡を用い、倍率2000倍で糸断面を撮影した。得られた顕微鏡写真を用い、中空繊維の壁の厚み(単位:μm)を実測した。1本の糸について繊維断面の任意の10箇所を選んで測定した(n=10)。この測定を10本の繊維について行い、測定値を平均した値を中空繊維の壁の厚み(μm)とした。厚みが小さいほど、糸は軽く、ソフトである。
(2)中空率(%)
上記(1)で得られた顕微鏡写真を拡大し、紙にコピーした。次いで、中空部を含めてC型断面を輪郭部分で切り落とし、質量(S;単位g)を測定した。さらに、中空部を輪郭部分で切り落とし、中空部の質量(S;単位g)を測定する。10個のC型断面についてS、Sをそれぞれ測定した。以下の式で中空率を求め、その算術平均値を採用した。なお、C型断面の輪郭は、C字の外周とその外周にある2つの端部を直線で結んで輪郭とし、中空部の輪郭は、C字の内周とその内周にある2つの端部を直線で結んで輪郭とした。
中空率(%)=S(g)/S(g)×100
(3)糸の伸度、強度:引っ張り試験
2010年版のJIS L1013の8.5「引張強さ及び伸び率」の8.5.1「標準時試験」(JIS法)に従って測定した
それぞれの糸を初荷重0.5gで、引張試験機でつかみ、引張試験を行う。糸が切断するまでに糸に加えた力(cN)と糸のストローク(ひずみ)の関係をグラフにし、糸切断時の強力(cN)と伸度(%)を得た(n=10の平均値として)。糸の強度を、1デシテックスあたりの強度(cN/dtex)として表した。
(4)顔料の平均粒径(μm)
[中空繊維の融点+20℃]に加熱したプレパラートに中空糸0.1gを載せ、スライドガラスで挟んでフィルム状に広げ、光学顕微鏡を用いて倍率6000倍で撮影して、確認できる顔料のストラクチャーについて最も長い長径を測定した。1試料から任意に20個測定し、20個の算出平均値を算出した。
(5)顔料の含有量(質量%)
TG−DTA(ナノテクノロジー社製 熱重量測定装置SII TG/DTA 6200)、中空繊維の試料1.4mgを用いて、温度範囲:室温〜900℃、昇温速度:100℃/min、大気流量 20ml/分の条件で中空繊維の重量変化を計測し、650〜900℃の領域で減量した比率から算出した。測定は5回行い、平均値を顔料の含有量とした。
(1−2.布帛の評価方法)
作成した布帛を、以下の方法によって評価した。
(1)黒発色性
黒発色性は、スガ試験機(株)社製カラーメーター CC-iSによって測定した明度(L値)によって表した。L値が小さいほど、黒発色性が高く、L値が大きいほど、黒発色性が低い。布帛の表面、裏面それぞれについて、3箇所ずつL値を測定し、それぞれの平均値として表した。
(2)布帛の軽さ:目付(g/m
織物の軽さは、2010年版のJIS L1096の8.3.2に記載のA法(JIS法)に従って測定した織物の目付(g/m)によって表した。値が小さいほど、軽い。
(3)布帛の厚さ:厚さ(mm)
2010年版のJIS L1096の8.4のA法(JIS法)に従って測定した(一定時間:10秒間、一定圧力:23.5kPa)。
(4)布帛の膨らみ感:カサ高度(cm/g)
カサ高度(m/g)は、厚さ(mm)を目付(g/m)で除し、1000を掛けた値とした。
(5)布帛の滑らかさ:表面粗さ SMD値
評価機器:KES−FB4表面試験機(カトーテック(株)製)を用い、織物の裏面の表面粗さSMD値(μm)を測定した。織物の場合、裏面の経糸方向(タテ)と緯糸方向(ヨコ)をそれぞれ3ヶ所測定し、その平均値を求めた。編物の場合、編物のウェール方向とコース方向をそれぞれ5ヶ所測定し、その平均値を求めた。値が小さいほど、布帛に凹凸が少なく、良好である。
(6)布帛のソフトさ:曲げ剛性 B値および2HB値
評価機器:KES−FB2純曲げ試験機(カトーテック(株)製)を用い、織物の場合には、織物裏面の経糸方向と緯糸方向に曲げた時の織物の平均の曲げ剛性B値(cN・cm/cm)および曲げヒステリシス2HB値(cN・cm/cm)を測定した(経、緯それぞれN=3)。編物の場合には、編物のウェール方向とコース方向に曲げた時の平均の曲げ剛性B値(cN・cm/cm)および曲げヒステリシス2HB値(cN・cm/cm)を測定した(それぞれN=5)。B値は小さいほど剛性は低く、ソフトな風合いであることを意味し、2HB値は小さい程曲げの回復性が高く、反発力のある風合いであることを意味する。
(7)布帛の伸長率
2010年版のJIS L1096の8.14.1項、A法(ストリップ法)に従って評価した。織物の場合、経方向と緯方向それぞれ3回測定し、平均値を算出した。編物の場合、ウェール方向及びコース方向に5回測定し、平均値を算出した。値が大きいほど、伸びが大きく良好である。
(8)布帛の伸長回復率
織物の場合:
2010年版のJIS L1096の8.15.1項、A法のbの「繰り返し定率伸長時伸長弾性率」(5回繰り返し)に従って、織物の緯糸方向又は緯糸方向を測定し評価した。値が高いほど、ストレッチ後の回復性が良好である。
編物の場合:
2010年版のJIS L1096の8.16.2項、D法の「繰り返し定伸長法」に従って、編物のウェール方向及びコース方向にそれぞれ5枚測定し、荷重−伸び曲線を描いた。値が高いほど、ストレッチ後の回復性が良好である。
(実施例1 略C型断面繊維の調製)
2軸混練機中、ポリエチレンテレフタラートに含有量が20重量%となるようにカーボンブラックを混練し、30μmカットのフィルターを通しつつ吐出させ、マスターバッチを製造した。得られたマスターバッチと、カーボンブラックを含有しないポリエチレンテレフタラートとを1:9の重量比でブレンドし、これを鞘成分として用い、芯成分として、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩4.8モル%及びポリエチレングリコール10.6質量%を共重合成分として含むポリエチレンテレフタレートを用い、芯成分/鞘成分の質量比率が60/40になるように、鞘成分側がC字型となる芯鞘断面用C型口金ノズル(36ホール)から紡糸温度290℃で吐出させ、紡速3000m/分で紡糸し、繊維断面形状が略C型の「部分配向複合繊維」として、総繊度140デシテックス、36フィラメントの糸条を一旦巻き取った。
続いて、得られた部分配向複合繊維を、延伸仮撚機を用いて、熱セット温度165℃、延伸倍率1.7倍、加工速度600m/分で仮撚加工をして、芯/鞘質量比率が60/40、総繊度84デシテックス、36フィラメントの「略C型断面複合繊維(未溶出)」を得た。
その後、この略C型断面複合繊維を一旦、ソフトなチーズ形状に巻き返し、糸染設備であるチーズ染色機に入れ、2.5%水酸化ナトリウム水溶液を用いて100℃で40分間処理した。このように、芯成分を完全に除去し、中空率が60%の「略C型断面繊維(溶出済)」を得た。総繊度は246デシテックス、単糸繊度が0.93デシテックスであり、略C型断面繊維の壁の厚みは1.73μmであった。得られた略C型断面繊維は、きわめて軽く、ソフトで布帛に広汎に用いられる好適な複合糸であった。
(比較例1 カーボンブラックを含有しない略C型断面繊維の調製)
鞘成分にカーボンブラックを含有しない以外は、実施例1と同じ手順に従って、略C型断面繊維(溶出済)を調製した。
(糸の評価)
実施例1、比較例1で得られた略C型断面繊維(溶出済)を用い、上述の「1−1.中空繊維又は複合糸の評価方法」に基づき評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1の略C型断面繊維は、比較例1のカーボンブラックを含有しない略C型断面繊維と比較し、糸の伸度及び強度がほぼ同等であり、カーボンブラックを含有しても略C型断面繊維の特性に悪影響を与えていないことがわかる。また、実施例1の略C型断面繊維の溶出速度も、比較例1の略C型断面繊維の溶出速度と同様であり、どちらも芯成分がほぼ完全に溶出されていた。
(実施例2 複合糸の調製−先混繊後溶出法)
(1)略C型断面繊維(未溶出)とポリウレタン弾性繊維との混繊糸の調製
実施例1の途中で得られた略C型断面複合繊維(未溶出)を6本引き揃え(総繊度504デシテックス)、44デシテックスのポリウレタン弾性繊維「ライクラ」(東レオペロンテックス(株)製)を3.3倍延伸しながら、エアーで交絡させ、混繊した。得られたポリエステル/ポリウレタン弾性繊維の混繊複合糸は、総繊度が548デシテックスであった。
(2)略C型断面繊維の芯成分の除去
その後、この複合糸を一旦、ソフトなチーズ形状に巻き返し、糸染設備であるチーズ染色機に入れ、2.5%水酸化ナトリウム水溶液を用いて100℃で40分間処理した。このようにして、芯成分を完全に除去し、中空率が60%の略C型断面繊維(溶出済)を含む実施例2の複合糸を得た。総繊度は246デシテックス、単糸繊度が0.93デシテックスであり、中空繊維の壁の厚みは1.73μmであった。得られた複合糸は、きわめて軽く、ソフトで布帛に広汎に用いられる好適な複合糸であった。
(比較例2 カーボンブラックを含有しない複合糸の調製)
鞘成分にカーボンブラックを含有しない以外は、実施例2と同じ手順に従って、比較例2の複合糸を調製した。
(実施例3 デニム地の作成)
(1)製織
経糸にインディゴ染色した綿の9番単糸を用い、これを糊付け、整経し、これに実施例2で得られた複合糸を緯糸として打ち込み、生機織物にした。織物の組織は3/1の綾組織であり、また、生機幅175cm、経糸密度:68本/2.54cm、緯糸密度:45本/2.54cmであった。
(2)仕上げ加工
次いでこの織物を拡布状に連続で糊抜き精練加工を行い、サンフォライズ加工し、180℃でセットした。黒のスレン染料を20g/lの濃度でパディングをし、その後染料の固着化を行う為、180℃でベーキングを行った。更にこの織物を40℃、10分ワッシャーで洗いを行い(1wash加工)、最終仕上げした。
(比較例3 デニム地の作成)
緯糸に比較例2で得られた複合糸を用いた以外は、実施例3と同じ手順でデニム生地を作成した。
表2に、実施例3及び比較例3のデニム地の黒発色性の結果を示す(評価方法は「1−2.布帛の評価方法」を参照)。
また、図3に、実施例3及び比較例3のデニム地の表側の写真を示し(A:実施例3、B:比較例3)、図4に、実施例3及び比較例3のデニム地の裏側の写真を示す(A:実施例3、B:比較例3)。
以上のように、本発明の中空繊維によれば、従来技術では得られなかった、優れた発色性を有するデニム地が得られた。
(比較例4 デニム地の作成)
緯糸に丸型断面の同等の繊度の糸を使用し、実施例3と同じ手順でデニム生地を作成した。ただし、生機幅175cm、経糸密度:70本/2.54cm、緯糸密度:48本/2.54cmであった。
表3に、実施例3及び比較例4のデニム地でのソフトさ、軽さの比較結果を示す。(評価方法は「1−2.布帛の評価方法」を参照)。
以上のように、本発明の複合糸を用いると、従来技術では得られなかった、優れた黒発色性を有しながら、軽さ及びソフトさに優れる生地を得ることができる。
(実施例4 製編織後溶出法を用いたパンツ地の作成)
(1)略C型断面繊維(未溶出)とポリウレタン弾性繊維との混繊糸の調製
実施例1の途中で得られた略C型断面複合繊維(未溶出)を6本引き揃え(総繊度504デシテックス)、22デシテックスのポリウレタン弾性繊維「ライクラ」(東レオペロンテックス(株)製)を3.3倍延伸しながら、エアーで交絡させ、混繊した。
(2)製織
経糸に実施例1の途中で得られた略C型断面複合繊維(未溶出)を用い、緯糸に上述の(1)の混繊複合糸を用い、エアー織機を用いて生機織物にした。織物の組織は2/1の綾組織であり、また、生機幅159cm、経糸密度:178本/2.54cm、緯糸密度:100本/2.54cm、目付が148.2g/mであった。
(3)仕上げ加工
次いでこの織物を拡布状に連続で糊抜き精練加工を行い、180℃でセットした。その後、液流染色機中、2.0%水酸化ナトリウム水溶液を用い、105℃で35分間処理し、中空繊維の芯成分を完全に除去する溶出減量加工を行った。次いで、この織物を、0.5%owfの青色分散染料を用い、130℃で染色した。次いで、160℃でセットし、最終仕上げした。
得られた織物は、幅が153cm、経密度185本/2.54cm、緯密度105本/2.54cm、中空繊維部分の減量率は60.2%であった。また、得られた織物は、目付が59.2g/m、厚さ0.32mm、カサ高度が5.41m/g、ストレッチ率(ヨコ)が38%、伸長回復率が90.2%であった。風合いはソフトできわめて軽く、また滑らかな高級感溢れる青色のツイル織物であった。
(比較例5 パンツ地の作成)
経糸に丸断面のポリエチレンテレフタレートフィラメント(84デシテックス、36フィラメント)を用い、緯糸に丸断面のポリエチレンテレフタレートフィラメント(84デシテックス、36フィラメント)とポリウレタン弾性繊維(44デシテックス)との複合糸を用いた以外は、実施例4と同様の方法で生機織物にした。生機織物を作成した後に溶出減量加工をせずに、実施例4に従って染色し、最終仕上げした。
得られた織物は、幅が153cm、経密度185本/2.54cm、緯密度105本/2.54cmであった。また、得られた織物は、目付が153.9g/m、厚さ0.29mm、カサ高度が1.88m/g、ストレッチ率(ヨコ)が26.2%、伸長回復率が81.3%であった。ストレッチ率及び伸長回復率は優れているが、実施例4と比較し、風合いは硬く、軽さや滑らかさ、カサ高度に特徴がなく、平凡な織物であった。
表4に、実施例4及び比較例5のデニム地の青色発色性の結果を示す(評価方法は「1−2.布帛の評価方法」を参照)。
(実施例5 ウール混織物)
実施例1、実施例2の製法に従って、中空率が60%の溶出型中空繊維(溶出済)を含む複合糸を得た。ただし、溶出後の繊度は、202デシテックス−216フィラメント+ウレタン44デシテックスであった。この中空繊維の溶出減量率は60.3%であった。
経糸に52番のウールを用い、緯糸に上述の複合糸を用い、平組織の生機織物を得た。次いでこの織物を拡布状に連続で糊抜き精練加工を行い、180℃でセットした。その後、この織物を、グレーの酸性染料とグレーの分散染料を用い、105℃で染色した。次いで、セミデカ加工(表面の糸を蒸気でプレスする加工)し、仕上げた。
得られた織物の風合いはソフトで、膨らみ感があり、滑らかできわめて軽かった。また、ストレッチ(ヨコ)率は28.3%、伸長回復率は88.3%であり、機能性と高級感が溢れるグレーの平織物が得られた。
(比較例6 ウール混織物)
実施例5の複合糸の代わりに、実施例1の途中で得られた略C型断面複合繊維(未溶出)を緯糸に用いた以外は実施例5と同じ手順を行い、平組織を有する生機織物を得た。
その後、液流染色機を用いて溶出工程を行おうとしたが、アルカリ液によってウールサイドが糸切れを起こし、加工することができなかった。また、溶出不良が発生した。
(実施例6 ニット生地の作成)
実施例1の途中で得られた略C型断面複合繊維(未溶出)を1本(総繊度84デシテックス、36フィラメント)と、22デシテックスのポリウレタン弾性繊維「ライクラ」(東レオペロンテックス(株)製)を3.3倍延伸しながら合撚し、ポリエステル/ポリウレタン弾性繊維の混繊複合糸を得た。その後、この混繊複合糸を一旦、ソフトなチーズ形状に巻き返した。その後、糸染設備であるチーズ染色機に入れ、2.0%水酸化ナトリウム水溶液を用い、上述のようにして得た溶出型中空繊維を100℃で45分間処理し、芯成分を完全に除去し、中空率が60%の略C型断面繊維(溶出済)を含む複合糸を得た。
この複合糸を用い、釜径34インチ、ゲージ数32ゲージで編成し、天竺組織を得た。編成時には、複合糸に対し、編み張力2.2gをかけて編物を作成した。得られた生成は、幅が154cm、目付は78g/mであった。この生成を常法に従って精練し、180℃でセットし、次いで、青色分散染料を用い、130℃で染色し、仕上げ処理した。仕上げ処理後の編物は、幅が150cm、目付は65g/m、厚さ0.25mmであった。
得られた編物は、カサ高度が3.85m/g、ストレッチ率(ヨコ方向)125.4%、伸長回復率(ヨコ方向)が89.3%であった。得られた編物は、軽く(目付は65g/m)、風合いはソフトであり、かつ滑らかな高級感溢れる青色の天竺編物であった。
(比較例7 ニット生地の作成)
実施例5の中空率が60%の略C型断面繊維(溶出済)を含む複合糸の代わりに、丸断面のポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(84デシテックス、36フィラメント)と、22デシテックスのポリウレタン弾性繊維「ライクラ」(東レオペロンテックス(株)製)を3.3倍延伸しながら合撚し、複合糸を得た。
この複合糸を用い、実施例6と同じ手順で青色の天竺編物を得た。得られた生成は、幅が154cm、目付は195g/mであった。この生成を常法に従って精練し、180℃でセットし、次いで、青色分散染料を用い、130℃で染色し、仕上げ処理した。仕上げ処理後の編物は、幅が150cm、目付は162g/m、厚さ0.35mmであった。
得られた編物は、カサ高度が2.16m/g、ストレッチ率(ヨコ方向)83.2%、伸長回復率(ヨコ方向)が62.3%であった。得られた編物は、軽量感がなく、風合いは硬く、ザラザラした風合いで平凡な天竺編物であった。
表5に、実施例6及び比較例7の天竺編物の青色発色性の結果を示す(評価方法は「1−2.布帛の評価方法」を参照)。
(実施例7 起毛加工したデニム地)
実施例3(1)で得られたデニム地の生機織物を、実施例3(2)に従って精練、サンフォライズ、セットした。次いで、この生機織物を起毛加工した。針布起毛機を用い、織物の裏面を3回起毛した。起毛加工後、実施例3(2)に従ってワンウォッシャー加工し、仕上げた。ストレッチ率(ヨコ)31.4%、伸長回復率:89.2%であった。仕上製品は軽く、ソフトな色合いであり、裏面の毛羽は細かく、高密度であり、暖かいものであった。秋冬用途として好適なデニムが得られた。
(比較例8 デニム地の作成)
原料である熱可塑性樹脂から直接溶融紡糸された略C型断面繊維(不溶出)を3本合わせ、44デシテックスのポリウレタン弾性繊維「ライクラ」を3.3倍延伸しながらエアーで交絡させて混繊し、総繊度を246デシテックスとした。
経糸にインディゴ染色した綿の9番単糸を用い、これを糊付け、整経し、これに得られた混繊糸を緯糸として打ち込み、生機織物にした。織物の組織は3/1の綾組織であり、生機幅175cm、経糸密度:68本/2.54cm、緯糸密度:47本/2.54cmであった。
以上のように、本発明の複合糸を用いると、従来技術では得られなかった、嵩高感、反発性に優れる生地を得ることができる。比較例8の製造方法では紡糸や仮撚り等の高次加工時に中空部がつぶれやすいのに対し、実施例3では高次加工後に溶出し、C型断面繊維にすることができる為、嵩高性と反発性に優れる生地を得ることができる。

Claims (10)

  1. 壁の平均厚みが0.2μm〜15.0μmであり、中空率が10%〜80%であり、顔料を1〜5重量%含有する、ポリエステル系又はポリアミド系の中空繊維。
  2. 前記顔料の平均粒子径が0.5μm以下である、請求項1に記載の中空繊維。
  3. 実質的に略C型断面繊維である、請求項1又は2に記載の中空繊維。
  4. 中空率が50%〜80%であり、ポリエステル系である、請求項3に記載の中空繊維。
  5. 単糸繊度が0.1〜50デシテックスである、請求項1〜4のいずれかに記載の中空繊維。
  6. 仮撚糸である、請求項1〜5のいずれかに記載の中空繊維。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の中空繊維と、弾性繊維とで構成された複合糸。
  8. 前記弾性繊維が、前記複合糸中に1〜70質量%含まれている、請求項7に記載の複合糸。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の中空繊維及び請求項7又は8に記載の複合糸の少なくとも1種を用いて作られた布帛。
  10. 請求項9の布帛をさらに染色して作られた布帛。
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