JP2019116577A - 筆記具用水性インキ組成物、およびそれを用いた筆記具 - Google Patents

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Abstract

【課題】分散安定性に優れ、良好な筆跡が得ることができる筆記具用水性インキ組成物および、それを用いた筆記具の提供。【解決手段】スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と、着色剤と、アルキル硫酸塩と、水と、を含んでなり、pH値が6〜10である筆記具用水性インキ組成物。スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と着色剤との組み合わせを着色剤によって着色されたスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子とすることもできる。これらのインキ組成物は各種筆記具に用いることができる。【選択図】なし

Description

本発明は、筆記具用水性インキ組成物、およびそれを用いた筆記具に関するものである。
近年、筆記具用水性インキ組成物には、高い耐水性や耐光性が望まれており、それら特性を向上させるために顔料を用いたインキ組成物が提案されている。
しかしながら、顔料はインキ組成物の主溶媒である水に不溶なため、均一に分散させて安定な状態にさせておかなければ、凝集、沈降が起こり易く、インキ組成物の発色性が低下したり、ペン先からのインキ吐出量が低下して線とびやかすれが生じたり、さらには筆記不能になるなど、筆記具用水性インキ組成物として十分な性能を得ることができなくなる場合がある。
そこで、顔料の分散性を改良するため、インキ組成物中に各種分散剤を添加したインキ組成物が多数提案されている。
例えば、特許文献1には、N−ビニルピロリドンあるいはその誘導体とアルケン化合物を共重合して得られる高分子化合物を分散剤として含んでなるインキ組成物が、特許文献2には、カルボキシル基含有化合物のアルカリ塩を分散剤として含んでなるインキ組成物が提案されている。
しかしながら、これらの分散剤は分散性改良効果を発揮するものの十分とは言えないことがある。この結果、分散剤の添加量が少ないと、線とびやかすれが十分に解決できないことがあり、良好な分散効果を得ることを目的に多量の分散剤を添加すると、インキ組成物の粘度が過度に高くなってしまい、書き味が劣ってしまったり、経時保存後にはインキ組成物の成分が凝集、分離が生じてしまうことがあった。このため、これらの分散剤を用いる場合にはさらなる改良の余地があった。
また、近年、多彩な色彩を表現できるように、インキ組成物にはカラーバリエーションが望まれている。そのようなニーズに応えるためには異なる種類の顔料を揃えることが必要となり、さらにそれぞれの顔料について、その分散安定性を調整するためには大きな労力が必要となる。そこで、そのような負荷を低減するため、顔料や染料で樹脂粒子を着色させた着色済樹脂粒子を用いたインキ組成物が提案されている。このようなインキ組成物には、顔料に変えて着色樹脂材料を用いたものとなる。着色済樹脂粒子は、樹脂粒子に対して着色剤で着色したものであるので、従来用いられていた顔料と比較して比重が小さく、また分散剤の選定に当たっては、樹脂粒子の種類が同じであれば同様の分散剤を用いることができるので分散剤の選定を軽減できるという利点がある。しかしながら、本発明者らの検討によれば、このような着色済樹脂粒子は、(i)着色時に樹脂粒子同士が凝集してしまう、(ii)所望の色に均一に着色することが困難である、また、(iii)インキ組成物に用いた際、インキ組成物調製時には良好な分散安定性を示しているものの経時後、凝集沈降などが生じてしまう、などの問題がおこることがあり、改良の余地があった。
特開平8−176488号公報 特開2004−018675号公報
本発明は、分散安定性に優れ、良好な筆跡が得られる筆記具用水性インキ組成物を提供するものであり、さらに、それを用いた筆記具を提供するものである。
本発明の第一の態様による筆記具用水性インキ組成物は、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と、着色剤と、アルキル硫酸塩と、水と、を含んでなり、pH値が6〜10であるものであることを特徴とするものである。
本発明の第二の態様による筆記具用水性インキ組成物は、着色剤によって着色されたスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と、アルキル硫酸塩と、水と、を含んでなり、pH値が6〜10であるものであることを特徴とするものである。
また、本発明による筆記具は、前記のいずれかのインキ組成物を収容してなることを特徴とするものである。
本発明によれば、発色良好で、線とびやかすれが改善された良好な筆跡が得られるなど筆記性能に優れた筆記具用水性インキ組成物および、それを用いた筆記具を提供することができる。さらに、本発明によるインキ組成物は、調製直後の分散安定性だけでなく、経時後の分散安定性にも優れている。そして、このようなインキ組成物を透明なインキ収容体に収容した際には、インキ収容体からインキ組成物の色がムラなく視認されるので、品質的に優れる。また、様々な着色を施した着色済樹脂粒子を用いて、様々なカラーバリエーションを備えた筆記具群を実現することができる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準であり、含有率とは、インキ組成物の質量を基準としたときの構成成分の質量%である。
<筆記具用水性インキ組成物>
本発明の第一の態様による筆記具用水性インキ組成物(以下、インキ組成物ということがある)は、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と、着色剤と、アルキル硫酸塩と、水と、を含んでなり、pH値が6〜10であるものである。
また、本発明の第二の態様による筆記具用水性インキ組成物は、着色剤によって着色されたスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と、アルキル硫酸塩と、水と、を含んでなり、pH値が6〜10であるものである。
第一のインキ組成物は、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と、着色剤との組み合わせを用い、第二のインキ組成物は着色剤によって着色されたスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子を用いるという点で異なるが、その他については基本的に同一である。
以下、これらのインキ組成物について詳細に説明する。
<スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子>
本発明による第一のインキ組成物は、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子を含んでなる。この樹脂粒子は、着色前は無色であるが、そのままインキ組成物に配合すると、インキ組成物に白色性をもたらす着色効果がある。また、本発明者らの検討によれば、着色剤と組み合わせて用いた場合には、着色剤とともにインキ組成物の色彩を調整する、着色助剤としての機能を有していることがわかった。この結果、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子はインキ組成物に優れた発色性をもたらす。
スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子は、スチレンとアクリロニトリルを単量体として共重合させて得られる樹脂粒子である。スチレンとアクリロニトリルの配合比は特に限定されないが、一般的にはスチレン10〜90モル%、アクリロニトリル90〜10モル%の割合で配合させる。なお、スチレンおよびアクリロニトリル以外の単量体を、本発明の効果を損なわない範囲で組み合わせることができる。
本発明におけるスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子は、従来公知の任意の方法で得ることができるが、インキ組成物の発色性、分散安定性、さらに、ペン先からのインキ吐出性を考慮すると、均一な粒子が得られやすい、スチレンとアクリロニトリルとの乳化重合により得られる樹脂粒子であることが好ましく、さらには、予め水などの分散媒に分散された状態のスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子分散体として用いることが好ましい。前記スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子分散体は、市販品を用いることも可能である。
また、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子の大きさは特に限定されないが、分散性を維持し、また筆記具に使用したときの線とびやカスレを防ぐためには、粒子径が小さいことが好ましく、高い発色性を得るためには平均粒子径が大きいことが好ましい。このような観点から、体積基準平均粒子径は0.05〜10μmであることが好ましい。
本発明のインキ組成物における、前記スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましい。前記スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子の含有率が上記数値範囲内であれば、インキ組成物に良好な発色性をもたらすと同時に、良好な経時安定性をもたらすことができる。
また、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子を主成分とする着色剤を用いた場合、群青や酸化鉄などの無機顔料や、フタロシアニンブルーやキナクリドンレッドなどの有機顔料を用いた場合と同等な発色を達成するためには、より多量の着色剤が必要になるのが一般的である。このため本発明によるインキ組成物において、すぐれた発色性を達成するためには、前記スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、5〜35質量%であることがさらに好ましく、15〜25質量%であることが特に好ましい。
<着色剤>
本発明の第一のインキ組成物における着色剤は、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子とともにインキ組成物の色彩を調整するものである。この着色剤は、インキ組成物中で独立して色彩に寄与する他、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子との組み合わせによって調整された発色をしたり、インキ組成物中でスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子に吸着または浸透して、着色された粒子を形成することもある。
このような着色剤としては、任意の染料または顔料が用いられ、特に制限されるものではない。
前記染料としては、特に制限されるものではないが、例えば、酸性染料、塩基性染料、直接染料、分散染料、油溶性染料、反応性染料、含金染料、食用色素及び各種造塩タイプ染料等が挙げられる。
前記顔料としては、特に制限されるものではなく、例えば、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、さらには、アルミ顔料、パール顔料、マイクロカプセル顔料等が挙げられる。尚、顔料は予め、顔料分散剤を用いて媒体に分散された水分散顔料製品などを用いてもよい。
尚、前記染料として具体的には、C.I.アシッドレッド18、C.I.アシッドレッド51、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド87、C.I.アシッドレッド92、C.I.アシッドレッド289、C.I.アシッドオレンジ10、C.I.アシッドイエロー3、C.I.アシッドイエロー7、C.I.アシッドイエロー23、C.I.アシッドイエロー42、C.I.アシッドグリーン3、C.I.アシッドグリーン16、C.I.アシッドブルー1、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー22、C.I.アシッドブルー90、C.I.アシッドブルー239、C.I.アシッドブルー248、C.I.アシッドバオレット15、C.I.アシッドバイオレット49、C.I.アシッドブラック1、C.I.アシッドブラック2などの酸性染料、C.I.ベーシックレッド1:1、C.I.ベーシックイエロー28、C.I.ベーイエロー40、C.I.ベーシックオレンジ2、C.I.ベーシックオレンジ14、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックブルー7、C.I.ベーシックブルー9、C.I.ベーシックブルー26、C.I.ベーシックバイオレット15、C.I.ベーシックバイオレット11:1、C.I.ベーシックバイオレット1、C.I.ベーシックバイオレット3、C.I.ベーシックバイオレット10、などの塩基性染料、C.I.ダイレクトレッド28、C.I.ダイレクトイエロー44、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー87、C.I.ダイレクトバイオレット51、C.I.ダイレクトブラック19などの直接染料、C.I.ディスパースイエロー82、C.I.ディスパースイエロー3、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド191、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースバイオレット57などの分散染料、C.I.フードイエロー3、C.I.フードブラック2などの食用色素などが挙げられる。
さらに、後述の通り、前記アルキル硫酸塩は、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子が着色剤で着色される際にも効果的に働き、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子の凝集を抑制し、均一にムラなく着色させ、インキ組成物の分散安定性と発色性をさらに向上させる効果を有するが、このアルキル硫酸塩の効果を考慮すると、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子を着色させる染料としては、塩基性染料を用いることが好ましい。
さらに、塩基性染料の中でも、キサンテン系、トリアリール骨格の塩基性染料、アゾ骨格の塩基性染料が好ましい。
本発明のインキ組成物における着色剤の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることが好ましい。特に、本発明においては前述の通り、前記着色剤はスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子を着色することに用いられることが好ましく、この場合の着色剤の含有率は、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子への着色性を考慮すると、インキ組成物の総質量を基準として0.1〜2質量%であることが好ましく、0.3〜1質量%であることがより好ましい。
<着色剤によって着色されたスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子>
本発明による第二のインキ組成物は、着色剤によって着色されたスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子(以下、単に着色済樹脂粒子ということがある)を含んでなる。この着色済樹脂粒子は、前記したスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子が、前記した着色剤によって着色されたものであることが好ましい。このような着色済樹脂粒子を用いることで、インキ組成物の発色性をさらに向上することができる。これは、前記スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子は、透明度が高いので、着色剤により所望の色に着色することができ、多彩な色彩を表現できる発色性に優れた着色済樹脂粒子とすることができるためである。また、着色済樹脂粒子を用いた場合、着色剤とスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子をそれぞれ個別に用いる場合に比べて、アルキル硫酸塩の分散効果が効率良く得られ、分散安定性に優れたインキ組成物を得ることができる。このため、第一のインキ組成物におけるスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と着色剤の組み合わせに変えて、着色済樹脂粒子を用いることが好ましい。
また、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子は耐アルカリ性、耐酸性、耐熱性に優れており、それを原料として得られる着色済樹脂粒子は、添加剤などの各種成分を含むインキ組成物中においても安定に存在しやすく、また、熱環境にも影響を受け難い。よって、その着色済樹脂粒子を用いることで、発色性、経時安定性にも優れたインキ組成物を得ることができる。
なお、着色済樹脂粒子に対して、さらに着色剤を組み合わせることもできる。すなわち、着色済樹脂粒子の色彩をさらに強めるために、着色済樹脂粒子の調製にもちいた着色剤を、さらにインキ組成物に添加することもできる。また、色彩の調整などを目的として、異なる色彩を有する着色剤を組み合わせることができる。また、着色済樹脂粒子に対して、未着色のスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子を組み合わせることもできる。
着色済樹脂粒子の含有率は、第一のインキ組成物におけるスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と着色剤との総計に準じる。もし、着色済樹脂粒子に、着色剤やスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子を組み合わせる場合には、それらも考慮した総計が、第一のインキ組成物におけるスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と着色剤との総計に準じる。
<アルキル硫酸塩>
本発明によるインキ組成物に用いられるアルキル硫酸塩は、アルキル硫酸、またはアルキル硫酸を塩基で中和した塩である。本発明においては、アルキル硫酸も便宜的にアルキル硫酸塩のひとつとする。本発明によるインキ組成物において、前記アルキル硫酸塩は分散剤として働き、主溶媒である水に不溶な状態で存在し得る成分を均一に分散させることができる。前記アルキル硫酸塩は、特に、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子に対し、優れた分散効果を発揮する。
さらに本発明者らは鋭意検討した結果、アルキル硫酸塩の分散効果は、着色前のスチレンーアクリロニトリル樹脂粒子だけでなく着色時、さらに着色されたスチレンーアクリロニトリル樹脂粒子まで、一連のスチレンーアクリロニトリル樹脂粒子に効果を発揮し、優れたスチレンーアクリロニトリル着色済樹脂粒子が得られること、また、得られた該着色済樹脂粒子をインキ組成物に用いることで、更に、分散安定性、発色性、また筆記性能に優れたインキ組成物とすることができることがわかった。
本発明者らの検討によれば、アルキル硫酸塩はスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子が着色剤で着色される際に効果的に働く。特に、着色前のスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子の凝集を抑制し、さらには、得られる着色済樹脂粒子の凝集を抑制し、インキ組成物に優れた分散安定性をもたらすことができるという効果があることがわかった。従来、粒子の分散に一般的に用いられていたポリオキシアルキレンアリールエーテルのような分散剤では、補助成分を用いないと十分な分散効果が得られなかったが、本発明において用いられるアルキル硫酸塩は、単独で十分な分散効果を発揮することができる。さらに、アルキル硫酸塩はスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子を着色剤でムラなく均一に着色させる効果も有しているため、得られた着色済樹脂粒子を用いたインキ組成物は、発色性に優れたものとなることもわかった。よって、本発明においては、アルキル硫酸塩を、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子の着色および分散に用いることは、極めて効果的であり、インキ組成物に良好な発色性、分散安定性をもたらすことができる。
前記アルキル硫酸塩に含まれるアルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、または環状アルキル基のいずれでも構わない。また、そのアルキル基を構成する炭素数も特に限定されない。しかしながら、インキ組成物の分散安定性、得られる筆跡の発色性の向上を考慮すると、アルキル硫酸塩がもつアルキル基が、直鎖アルキル基または分岐アルキル基であり、また炭素数6〜20であることが好ましい。より好ましくは、炭素数8〜18であることが好ましく、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子の分散性を特に考慮すると、炭素数10〜14であることがさらに好ましい。特には、本発明において、アルキル硫酸塩がもつアルキル基は、炭素数12であることが好ましく、特には、前記アルキル硫酸塩は、ラウリル硫酸塩であることが最も好ましい。
また、前記アルキル硫酸を中和する塩基としては、ナトリウム、カリウムのようなアルカリ金属の水酸化物、マグネシウムやカルシウムのようなアルカリ土類金属の水酸化物、およびアンモニアなどの無機塩基、また、アミン類、アニリン類等の有機塩基を用いることができる。これらのうち、有機塩基を用いることが好ましい。これは、無機塩基と比較して、有機塩基で中和させたアルキル硫酸塩の方が、予め着色されたスチレン−アクリロニトリル着色済樹脂粒子に対する分散効果が高く、分散安定性に優れたインキ組成物を得ることができるためであり、また、無機塩基と比較して、有機塩基で中和させたアルキル硫酸塩の方がインキ組成物中に金属由来の析出物が発生しにくい傾向にあり、インキ組成物の経時安定性を維持しやすいためでもある。
さらには、前記有機塩基類の中でも、アミン類を用いることが好ましい。アミン類としては、アルキルアミン、アルカノールアミン、複素環アミンなどが挙げられるが、中でもアルカノールアミンを用いることがより好ましい。前記アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンなどが挙げられるが、これらのうち、経時安定性を考慮すると、トリエタノールアミンを用いることが、特に好ましい。
よって、本発明において、特に好ましく用いられるアルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸塩であり、さらには、ラウリル硫酸トリエタノールアミンである。
ただし、本発明においては、上記のようなアルキル硫酸塩を1種又は2種以上の混合物として使用しても構わない。
本発明のインキ組成物における、前記アルキル硫酸塩の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましい。前記アルキル硫酸塩の含有率が0.01質量%以上であれば、前記アルキル硫酸塩の分散剤としての効果を得ることができ、インキ組成物の優れた分散安定性を得ることができ、10質量%以下であれば、アルキル硫酸塩がもつ起泡性の特徴から生じるインキ組成物中の残留気泡を防ぎ、さらにアルキル硫酸塩由来の析出物の発生を抑制することができる。さらに、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子を着色させる際、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子との凝集を抑制し、均一に着色させることを考慮すると、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.3〜3質量%であることが特に好ましい。
なお、本発明によるインキ組成物は、アルキル硫酸塩以外の分散剤を含んでいてもよい。このような分散剤は任意に選択することができる。ただし、本発明においては従来の分散剤よりも優れた特性をアルキル硫酸塩を用いることによって達成していることから、その含有率は低いことが好ましい。例えば、従来インキ組成物に配合する分散剤として、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアリールエーテルが用いられていたが、このような従来の分散剤の含有率が、インキ組成物の総質量を基準として、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることが特に好ましく、含有率がゼロであることが最も好ましい。昨今、ポリオキシアルキレンアリールエーテルは、添加量が少ない方が安全性が高い傾向にあることがわかってきたため、本発明によるインキ組成物はより高い安全性をも実現していることとなる。なお、本発明において、含有率がゼロであるとは、各種測定装置によって検出できない、検出限界以下であることを意味する。
<リン酸エステル系界面活性剤>
また、本発明のインキ組成物は、リン酸エステル系界面活性剤を含んでなることが好ましい。この界面活性剤は、インキ組成物の分散性などを改良する効果の他、インキ組成物をボールペンに用いる場合、潤滑剤としても作用する。潤滑剤は、ボールペンが有するボールとボールペンチップの間の潤滑性を向上して、ボールの回転をスムーズにすることで、ボール座の摩耗を抑制し、書き味を向上するものである。本発明において用いられる、リン酸基を有するリン酸エステル系界面活性剤は、リン酸基は金属に吸着しやすい性質にあることから、潤滑性を向上させ、ボール座の摩耗抑制や書き味を向上させやすい。このため、本発明のインキ組成物をボールペンに適用する場合に、特に優れた書き味を実現できる。しかしながら、この界面活性剤は、潤滑性だけでは無く、分散性の改良にも寄与しているため、インキ組成物をボールペン以外の筆記具に利用する場合にも有効に作用する。
さらには、リン酸エステル系界面活性剤は表面張力を調整する効果も併せ持つ。このため、特に後述するくし溝状のインキ流量調節部材を備え、これを介在させ、インキ組成物をペン先に供給するような供給機構を有する筆記具において、前記インキ流量調節部材に対して優れた濡れ性を呈するので好ましい。したがって、本発明によるインキ組成物は、くし溝状のインキ流量調節部材を有する万年筆およびマーカー、サインペン、ボールペン等にも好ましく用いられる。
前記リン酸エステル系界面活性剤としては、直鎖アルコール系、スチレン化フェノール系、ノニルフェノール系、オクチルフェノール系等のリン酸エステル系界面活性剤が挙げられるが、中でも、直鎖アルコール系、スチレン化フェノール系のリン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい。
本発明においてリン酸エステル系界面活性剤は、HLB値が5〜15であることが好ましく、8〜14であることがより好ましく、10〜13であることが特に好ましい。また、本発明においてリン酸エステル系界面活性剤が有するアルキル基またはアルキルアリル基の炭素数が6〜30であることが好ましく、8〜18であることがより好ましく、10〜14であることが特に好ましい。これは、特定のHLB値または炭素数をもつ直鎖系のリン酸エステル系界面活性剤は、アルキル硫酸塩とともに分散効果を相乗的に改良し、同時に潤滑効果をもたらすことができるためである。
なお、本発明においてHLB値リン酸エステル系界面活性剤のHLB値とはリン酸エステル系界面活性剤の原料非イオン性界面活性剤のHLB値を意味するものであり、一般式として、HLB=7+11.7log(Mw/Mo)、(Mw;親水基の分子量、Mo;親油基の分子量)から求めることができる。
なお、リン酸エステル系界面活性剤の具体例としては、プライサーフシリーズ(第一工業製薬株式会社)などが挙げられ、直鎖アルコール系のリン酸エステル系界面活性剤としては、プライサーフA212C、同A208B、同A213B、同A208F、同A215C、同A219B、同A208Nが挙げられ、スチレン化フェノール系のリン酸エステル系界面活性剤としては、プライサーフALが挙げられ、ノニルフェノール系としては、プライサーフ207H、同A212E、同A217Eが挙げられ、オクチルフェノール系としては、プライサーフA210Gが挙げられる。
前記リン酸エステル系界面活性剤の含有率は、添加する場合には、インキ組成物の総質量を基準として0.1〜2.0質量%が好ましく、0.5〜1.5質量%であることがより好ましい。なお、本発明によるインキ組成物は、界面活性剤または潤滑剤としてリン酸エステル系界面活性剤以外の材料を用いることもできる。このような材料としては、リン酸エステル系界面活性剤以外の界面活性剤や脂肪酸が挙げられる。
前記脂肪酸の具体例としては、リノール酸やオレイン酸が挙げられ、具体例としては、OSソープ、NSソープ、FR−14、FR−25(花王株式会社)等が挙げられる。
<水>
水としては、特に制限なく、例えば、イオン交換水、蒸留水、および水道水などの慣用の水を用いることができる。
<その他の添加剤>
本発明によるインキ組成物は、必要に応じて任意の添加剤を含むことができる。用いることができる添加剤について説明すると以下の通りである。
本発明のインキ組成物は、水溶性有機溶剤をさらに用いることが好ましい。
インキが樹脂粒子や顔料などの主溶媒である水に不溶な状態で存在し得る成分を含んでなる場合、そのインキを内包する筆記具のペン先などで水が蒸発し、インキが乾燥固化してインキ流路などが詰まってしまうことがある。このような現象が起きると、後から追従されるインキによりこの詰まりを解消することは難しく、その筆記具はインキの残量はあるものの、再び筆記できなくなることがある。このため、耐ドライアップ性能を向上させることが好ましい。本発明においては、インキ組成物に水溶性有機溶剤を添加することで、耐ドライアップ性能を向上させることができるため、水溶性有機溶剤の使用が好ましい。用いることができる水溶性有機溶剤は、多価アルコール類、グリコールエーテル類などが挙げられるが、それらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類を選択して用いることが好ましい。これらの溶剤は、インキ組成物の分散安定性に大きく影響を及ぼすことなく、多価アルコール類の吸湿効果をインキ組成物に付与することができ、耐ドライアップ性能を向上できるためである。
また、前述の通り、本発明においては、着色剤と、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と、アルキル硫酸塩と、水と、を含んでなる筆記具用着色済樹脂粒子分散体を予め調製することが好ましいが、前記筆記具用着色済樹脂粒子分散体の調整時に、予め前記水溶性有機溶剤を含んでなることは水溶性有機溶剤による分散楳の比重調整や着色済樹脂粒子表面の濡れ性改善により沈降防止や分散安定性の向上が期待できるため効果的である。
また、本発明のインキ組成物はデキストリンを含んでなることが好ましい。
前述の通り、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子や顔料などの主溶媒である水に不溶な状態で存在し得る成分を含んでなる場合、例えばボールペンのチップ先端における耐ドライアップ性能の向上も考慮する必要がある。前記デキストリンは、ペン先に被膜を形成してその被膜によってインキ中の溶媒の蒸発を防ぐ効果を持つ。このため、デキストリンを用いることは、耐ドライアップ性能に優れたインキ組成物を得ることができるため効果的である。特に、良好な発色性を得られやすくするために、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子の含有率が高い場合は、インキ中の総固形分含有率も高くなり、チップ先端における耐ドライアップ性能が低下する傾向にあるため、デキストリンを用いることが好ましい。そして、デキストリンは、適度な湿潤効果をもつことから分散助剤として働き、アルキル硫酸塩との組み合わせによって、分散性を向上させやすくする作用も有することから、アルキル硫酸塩とデキストリンを組み合わせることは効果的である。尚、デキストリンは、数個のα−グルコースが、グリコシド結合によって重合した物質の総称で、食物繊維の一種であり、デンプンの加水分解などにより得られる。
前記デキストリンの質量平均分子量については、5000〜120000であることが好ましい。120000以上であると、ペン先に形成される被膜が硬く、ドライアップ時の書き出しにおいて、筆跡がカスレやすくなる傾向がある。一方、5000未満だと、経時的な分散安定性を向上させる程度の粘度変化を与えにくく、さらにデキストリンの吸湿性が高くなりやすく、ペン先に生ずる被膜が柔らかく、ペン先で安定して維持しにくく、インキ中の溶媒の蒸発が抑制しにくい傾向にある。上記効果の向上をさらに考慮すると、質量平均分子量が、20000〜100000であるデキストリンを用いることが好ましい。なお、本発明において質量平均分子量とは、ポリスチレンを基準としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたものである。
前記デキストリンの含有率は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜5質量%が好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、耐ドライアップ性能の向上効果が十分得られない傾向にあり、5質量%を越えると、インキ中で溶解しづらい傾向があるためである。よりインキ中の溶解安定性を考慮すれば、0.1〜3質量%が好ましく、より耐ドライアップ性能の向上を考慮すれば、1〜3質量%が最も好ましい。
また、本発明においては、樹脂粒子(スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子を除く)を含んでなることが好ましい。
本発明に用いられるアルキル硫酸塩は、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子以外の樹脂粒子の分散安定性にも優れている。このため、インキ漏れ抑制や書き味向上など多様な目的で樹脂粒子を添加した場合においても、本発明のインキ組成物は優れた分散安定性を維持することができる。このため、本発明において、さらに樹脂粒子(スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子を除く)を含んでなることは、インキ組成物の分散安定性を損なうことなく、各種樹脂粒子により得られる所望な性能をさらに得ることができるため、効果的である。
前記樹脂粒子としては、オレフィン系樹脂粒子、アクリル系樹脂粒子、ウレタン系樹脂粒子、スチレン−ブタジエン系樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子、酢酸ビニル系樹脂粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子などが挙げられる。
アルキル硫酸塩と、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と、着色剤とを含んでなる本発明のインキ組成物は、分散安定性に特に優れているため、インキ流動性が高くなり、ペン先からインキ漏れが生じる可能性が高い傾向にある。このため、本発明においては、ペン先インキ漏れ抑制効果の高い、オレフィン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子の樹脂粒子を用いることが好ましい。
また、本発明のインキ組成物は、pH調整を含んでいてもよい。
pH調整剤としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基性無機化合物、酢酸ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの塩基性有機化合物、乳酸およびクエン酸などが挙げられるが、本発明において、アルキル硫酸塩との相性、さらにインキ組成物の経時安定性を考慮すれば、塩基性有機化合物を用いることが好ましく、より考慮すれば、弱塩基性であるトリエタノールアミンを用いることが好ましい。これらのpH調整剤は単独又は2種以上混合して使用してもかまわない。
また、本発明のインキ組成物は、インキ粘度調整剤をさらに含んでなることが好ましい。本発明のインキ組成物をボールペンに用いる場合には、前記インキ粘度調整剤としては、剪断減粘性付与剤を用いることが好ましい。これは、剪断減粘性付与剤を用いることで、インキ組成物は、前記アルキル硫酸塩により得られる、均一で良好な分散状態を維持しやすく、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子や顔料などの沈降を防ぐことができ、良好なインキ吐出性をもたらし、にじみなどなく、発色良好な筆跡を得ることができるためである。
前記剪断減粘性付与剤としては、架橋型アクリル酸重合体や、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、グアーガム、ローカストビーンガム、λ−カラギーナン、セルロース誘導体、ダイユータンガムなどの多糖類や、会合型増粘剤が挙げられる。これらのうち、前記多糖類を用いることが好ましく、さらには、サクシノグリカンを用いることが好ましい。
これらの剪断減粘性付与剤は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
尚、本発明において、インキ粘度調整剤をさらに含んでなる場合、本発明のインキ組成物のインキ粘度は、20℃環境下、剪断速度1.92sec−1で、500〜5000mPa・sであることが好ましく、インキ粘度が上記数値範囲内であれば、分散安定性に優れ、良好なインキ吐出性有し、にじみなどない良好な筆跡を得ることができる。特に、着色剤で着色されたスチレン−アクリロニトリル着色済樹脂粒子の分散性、インキ組成物のペン先からの良好なインキ吐出性を考慮すると、インキ粘度は1000〜3000mPa・sであることがより好ましい。
また、本発明のインキ組成物は、さらにインキ物性や機能を向上させる目的で、防錆剤、防腐剤、キレート剤、保湿剤、浸透剤、潤滑剤などの添加剤を含んでいてもよい。
防錆剤としては、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、サポニン、またはジアルキルチオ尿素などが挙げられる。
防腐剤としては、フェノール、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
保湿剤としては、前記多価アルコール溶剤の他に、尿素、またはソルビット、また、トリメチルグリシン、トリエチルグリシン、トリプロピルグリシンなどのN,N,N−トリアルキルアミノ酸などがあげられる。
さらには、浸透剤、表面張力調整剤として各種界面活性剤を含んでもいてもよく、ノニオン系、アニオン系、カチオン系界面活性剤などが挙げられる。また、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤なども挙げられる。
また、本発明によるインキ組成物は、インキ組成物中に存在する金属を封鎖するためのキレート剤を含むことができる。このようなキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)及びそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩又はアミン塩などが挙げられる。ここで、例えばボールペンや万年筆などの筆記具においては、インキ組成物が金属に接触するため、インキ組成物中に金属成分が溶出することがある。このような金属イオンは、インキ組成物の安定性を阻害すると考えられ、従来のインキ組成物は一般にキレート剤を含んでいた。しかし、本発明者らがさらに鋭意検討した結果、特定の材料を含む本発明によるインキ組成物は、キレート剤の添加量を一定以下とすることで、インキ組成物の経時安定性が特に優れることを見出した。さらに特定のリン酸エステルを用いた場合には、本発明のインキ組成物はキレート剤を含まないでも、金属イオンによる安定性の劣化が認められないという特徴がある。すなわち、本発明によるインキ組成物は、インキ組成物が金属に接触する機会の多いボールペンや万年筆などに用いられた場合でも高い安定性を有する。このため、本発明によるインキ組成物のキレート剤の含有率は、インキ組成物の総質量を基準として0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、0.02質量%以下であることがより好ましく、含有率がゼロであることが最も好ましい。
なお、本発明によるインキ組成物は、アルキル硫酸塩、リン酸エステル系界面活性剤などの酸性基含有物質を含む。このような酸性基含有物質には、他にエチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤も包含される。本発明によるインキ組成物は、そのような酸性基含有物質を特定の範囲内で含有していることが、インキ経時安定性を改良する効果があるため、より好ましい。具体的には、アルキル硫酸塩と、リン酸エステル系界面活性剤と、酸性基を含むキレート剤の総含有率が、インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜10質量%が好ましく、さらに0.1〜3質量%であることが好ましい。また、リン酸エステル系界面活性剤に対する、酸性基含有キレート剤の配合比が、質量基準で0以上0.05未満であることが好ましい。
また、本発明において、アルキル硫酸塩とリン酸エステル系界面活性剤の合計配合量に対する、酸性基含有キレート剤の配合量の比が低いほうが、インキ組成物を筆記具に用いたときの線とびやカスレが少なくなる傾向にあり好ましい。具体的には、(酸性基含有キレート剤の配合量)/[(アルキル硫酸塩の配合量)+(リン酸エステル系界面活性剤の配合量)]が0.025以下であることが好ましく、0.005以下であることがより好ましく、ゼロであることが最も好ましい。
酸性基含有物質の総含有率と、リン酸エステル系界面活性剤に対する、酸性基含有キレート剤の配合比が上記数値範囲内であれば、インキ組成物は特に良好な安定性を呈し、そのインキ組成物を用いることによって良好な筆跡が得られるので、より好ましい。
また、酸性基含有物質の総含有率と、アルキル硫酸塩とリン酸エステル系界面活性剤の合計配合量に対する、酸性基含有キレート剤の配合量の比が上記数値範囲内であれば、インキ組成物は特に良好な安定性を呈することから、そのインキ組成物を用いることによって良好な筆跡が得られるため、最も好ましい。
<インキ組成物のpH値>
本発明によるインキ組成物のpHは6〜10である。これは、pH値が6未満の酸性側に近づくと、インキ組成物の経時安定性が劣化することがあり、また、本発明のインキ組成物をボールペンや万年筆などに用いた場合にはインキ組成物が接触する金属部材の腐食がおこりやすく、また、pH値が10を超えて強アルカリ側に近づくと、インキ組成物の褪色や変色が起きやすい傾向があり、良好な筆跡が得られ難いためである。また、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子が着色剤で着色され、スチレン−アクリロニトリル着色済樹脂粒子として用いられる場合、インキ組成物の経時安定性や、発色良好で線とびやかすれなどが改善された良好な筆跡が得られるなど筆記性の向上を特に考慮すると、pH値は7〜9であることが好ましい。なお、本発明において、pH値は、IM−40S型pHメーターを用いて、20℃にて測定した値を示すものである。
<インキ組成物の製造方法>
尚、本発明による第一のインキ組成物の調製方法は、特に限定されるものではないが、着色剤と、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と、アルキル硫酸塩と、水と、必要に応じてその他の成分を添加して、インキ組成物とすることが好ましい。このとき、混合順序は特に限定されない。
本発明による第一のインキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
特に第二のインキ組成物は、予め、着色剤と、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と、アルキル硫酸塩と、水と、を配合して分散させることにより、着色済樹脂粒子分散体を調製し、さらに、必要に応じてリン酸エステル系界面活性剤やその他の成分を混合し、製造することができる。安定状態のスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子に他成分を順次添加することで分散安定性を保ちつつインキ組成物を得ることができ、該インキ組成物の分散安定性はより向上し、筆跡の発色性、ペン先からのインキ吐出性をも向上させることができるため、効果的である。このような方法によれば、インキ組成物の分散安定性および筆跡の発色性をさらに向上させることができるため好ましい。ここで用いられるスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子は、乳化重合により得られたものであることが好ましい。また、着色は、常圧下、60〜90℃で行うことが好ましい。
なお、着色済樹脂粒子分散体を形成するとき、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子、着色剤、アルキル硫酸塩の配合量はそれぞれ、着色済樹脂粒子分散体の総質量を基準として、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子は20〜60質量%、着色剤は0.1〜5質量%、アルキル硫酸塩は0.1〜5質量%であることが好ましい。
<<筆記具>>
本発明の筆記具用水性インキ組成物を充填する筆記具の構造、形状は特に限定されるものではなく、従来より汎用なものが適用でき繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップまたはボールペンチップなどをペン先としたマーキングペンやボールペン、金属製のペン先を用いた万年筆などの各種筆記具に用いることができる。
また、本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具としては、インキ組成物を直に充填する構成のものであってもよく、インキ組成物を充填することのできる、インキ収容体またはインキ吸蔵体を備えるものであってもよい。また、前記インキ収容体またはインキ吸蔵体が、筆記具本体に着脱自在に交換可能な構造をもつインキカートリッジ式筆記具であってもよい。
また、本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具は、ペン先を覆うキャップを備えたキャップ式筆記具や、ノック式、回転式およびスライド式などの軸筒内にペン先を収容可能な出没式ボールペンが挙げられる。
また、本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具の供給機構についても特に限定されるものではなく、例えば、(機構1)繊維束などからなるインキ誘導芯をインキ流量調節部材として備え、インキ組成物をペン先に供給する機構、(機構2)くし溝状のインキ流量調節部材を備え、これを介在させ、インキ組成物をペン先に供給する機構、(機構3)弁機構によるインキ流量調節部材を備え、インキ組成物をペン先に供給する機構、および(機構4)インキ流量調節部材なしに直接、インキ組成物をペン先に供給する機構などを挙げることができる。
本発明の筆記具用水性インキ組成物をボールペンに充填した場合のボールペンの仕様について検討したところ、水性ボールペンの100mあたりのインキ消費量をA(mg)、前記ボール径をB(mm)とした場合、150≦A/B≦500の関係とすることが好ましく、250≦A/B≦450の関係とすることが好ましい。これは、上記範囲とすることで、ボール径に対して、適正なインキ消費量とすることで、インキ流動性を良好とし、筆跡カスレなどを抑制することで、良好な筆跡が得られやすいためである。
なお、インキ消費量については、20℃、筆記用紙JIS P3201筆記用紙上に筆記角度65°、筆記荷重100gの条件にて、筆記速度4m/分の速度で、試験サンプル5本を用いて、らせん筆記試験を行い、その100mあたりのインキ消費量の平均値を、100mあたりのインキ消費量と定義する。また、ボール径については、特に限定されないが、一般に0.1〜2.0(mm)程度のボールを用いる。
また、ボールペンチップの仕様については、ボールペンチップ中のボールの縦軸方向の移動可能量(クリアランス)を、20〜50μmとするのが好ましく、30〜45μmとするのが好ましい。これは、上記範囲であれば、インキ吐出量を適切に調整し、筆跡のカスレなどを抑制することで、良好な筆跡が得られやすいためであり、さらにクリアランスが上記範囲内であれば、前記の比A/Bも調整しやすい。
ボールペンチップのボールの縦軸方向への移動可能量(クリアランス)とは、ボールがボールペンチップ本体の縦軸方向への移動可能な距離を示す。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
下記の配合組成および方法により実施例1の水性ボールペン用インキ組成物を得た。
・スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子(平均粒子径0.4μm) 20質量%
・アルキル硫酸塩(ラウリル硫酸トリエタノールアミン) 1.0質量%
・着色剤 0.5質量%
(顔料:ピグメントブルー15:3)
・デキストリン 1.0質量%
・インキ粘度調整剤 0.4質量%
(剪断減粘性付与剤、サクシノグリカン)
・潤滑剤 1.0質量%
(リン酸エステル系界面活性剤(プライサーフA215C、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、HLB値:11.5))
・防錆剤 0.5質量%
(ベンゾトリアゾール)
・防腐剤 0.1質量%
(1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン)
・pH調整剤 2.25質量%
(トリエタノールアミン)
・水溶性有機溶剤 14.0質量%
(エチレングリコール)
・水溶性有機溶剤 4.0質量%
(グリセリン)
・水 残部
上記のインキ粘度調製剤以外の各成分をマグネットホットスターラーで加温撹拌などして、ベースインキを作製した。その後、上記作製したベースインキを加温しながら、インキ粘度調整剤(剪断減粘性付与剤)を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで充分に混合撹拌した後、濾紙を用いて濾過を行い、インキ組成物を得た。さらに、IM−40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、20℃におけるインキ組成物のpH値を測定した結果、pH値は8.0であった。
<<着色済樹脂粒子分散体の調整>
表1に示す通りに原料を配合して、着色済樹脂粒子分散体1〜8を調整した。
例えば、着色済樹脂粒子分散体1は以下の通りに調製した。アルキル硫酸塩と、着色剤と、防腐剤と、水溶性有機溶剤と、pH調整剤と、水とを均一に混合させて得られた混合溶解液を、スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子に対し、常温下、25℃で撹拌しながら添加させ、均一な混合液とした。その後、徐々に昇温させ、90℃2時間攪拌してスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子を着色させ、着色済樹脂粒子分散体1を作製した。
<<水性ボールペン用インキ組成物の作製>>
上記で得られた着色済樹脂粒子分散体1〜8を用いて、表2に示す通りに原料を配合して実施例2〜19、比較例1〜4のインキ組成物を作製した。
例えば実施例2のインキ組成物は、以下の通りに調製した。着色済樹脂粒子分散体1と、デキストリン、潤滑剤と、防錆剤と、防腐剤と、pH調整剤と、水溶性有機溶剤と、水と、をマグネットホットスターラーで加温撹拌などして、ベースインキを作製した。
その後、上記作製したベースインキを加温しながら、インキ粘度調整剤(剪断減粘性付与剤)を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで充分に混合撹拌した後、濾紙を用いて濾過を行い、インキ組成物を得た。さらに、IM−40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、20℃におけるインキ組成物のpH値を測定した結果、pH値は8.3であった。また、得られたインキ組成物の粘度をE型回転粘度計(機種:DV−II+Pro、ローター:CPE−42、ブルックフィールド社製)により、20℃環境下にて剪断速度1.92sec−1(回転数0.5rpm)の条件にてインキ粘度を測定したところ、1520mPa・sであった。
なお、IM−40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、20℃におけるインキ組成物のpH値を測定した結果、実施例5は7.8、実施例9は8.2、実施例16は、8.1、実施例19は8.4であり、実施例1〜19のインキ組成物はすべてpH6〜10の範囲内であった。
<分散安定性試験>
実施例1〜実施例19、比較例1〜比較例4のインキ組成物を直径15mmの密開閉ガラス試験管に入れて、50℃、30日間放置し、該インキ組成物の状態を光学顕微鏡を用いて観察した。
A:凝集体が確認されず、均一に分散されている良好な状態。
B:凝集体がわずかに確認されたが、実用上問題のないレベルであった。
C:凝集体が確認され、実用上懸念の残るレベルの分散状態であった。
D:凝集体の沈降が見られた。
<<試験用ボールペンの作製>>
実施例1〜実施例19、比較例1〜比較例4のインキ組成物(1.0g)を、直径0.7mmの超硬合金製ボールを回転自在に抱持したボールペンチップ(ボールの縦軸方向の移動量(クリアランス)30μm)を先端に有するインキ収容体の内部に充填させたレフィルを作製し、このレフィルを(株)パイロットコーポレーション製のゲルインキボールペン(商品名:G−2)に装着し、ボールペンを得た。
得られたボールペンを試験用ボールペンとし、以下の試験および評価を行った。
<筆記性能試験>
筆記可能であることを確認した試験用ボールペンを用いて、手書きで、試験用紙(JIS P3201、筆記用紙A)に螺旋状の丸を連続筆記し、得られた筆跡の状況を目視にて確認し、下記評価基準で筆記性能を評価した。結果は表2にまとめたとおりであった。
A+:筆跡は発色良好で線とびやカスレなどない、良好な筆跡が得られた。
A:筆跡に線とびやカスレが極わずかに確認されたが、発色良好な筆跡が得られた。
B:筆跡に線とびやカスレがわずかに確認されたが、発色良好な筆跡が得られた。
C:筆跡に線とびやカスレが確認されたが、実用上問題のないレベルであった。
D:筆跡に線とびやカスレが多数確認されたり、良好な筆跡が得られなかったり、筆記不能となるものも見られた。
<経時安定性試験>
筆記性能試験に用いた試験用ボールペンを、ペン先を下にした状態で、50℃、80日間放置した後、手書きで、試験用紙(JIS P3201、筆記用紙A)に螺旋状の丸を連続筆記し、得られた筆跡の状況を目視にて確認し、下記評価基準で筆記性能を評価した。結果は表2にまとめたとおりであった。
A+:筆跡は発色良好で線とびやカスレなどない、良好な筆跡が得られた。
A:筆跡に線とびやカスレが極わずかに確認されたが、発色良好な筆跡が得られた。
B:筆跡に線とびやカスレがわずかに確認されたが、発色良好な筆跡が得られた。
C:筆跡に線とびやカスレが確認されたが、実用上問題のないレベルであった。
D:筆跡に線とびやカスレが多数確認されたり、良好な筆跡が得られなかったり、筆記不能となるものも見られた。
Figure 2019116577
Figure 2019116577
Figure 2019116577
Figure 2019116577
(1) サンデックシリーズ、三和澱粉工業株式会社製、
(2) サンデックシリーズ、三和澱粉工業株式会社製、
(3)三晶株式会社製、
(4) プライサーフA215C、第一工業製薬株式会社製、 ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、HLB値:11.5
(5) プライサーフAL、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、HLB値:5
(6) プライサーフA208F、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステル、HLB値:8.7
(7) プライサーフA208N、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンアルキル(C12,13)エーテルリン酸エステル、HLB値:7
(8)エポスターM05、株式会社日本触媒製、平均粒子径5μm
表2の結果より、実施例1〜実施例19のインキ組成物は、分散安定性、筆記性能、経時安定性において、良好レベルのものであった。
一方、表2より、比較例1〜比較例2のインキ組成物は、アルキル硫酸塩を用いていないことから、比較例3および比較例4は、pH値が6〜10の範囲外であったことから、分散安定性、筆記性能、経時安定性において、すべてを満足するインキ組成物ではなかった。なお、経時安定性については、キレート剤であるEDTAの含有率が減少すればするほど良好であった。
さらに、試験用ボールペンの軸筒部分に40gの重りを付け、ボールペンチップを吐出させて下向きにし、ボールペンチップのボールがボールペン用陳列ケースの底部に当接させた状態を保ち、20℃、65%RHの環境下に1日放置し、ボールペンチップ先端からのインキ漏れ量を測定してインキ漏れ試験を行ったところ、樹脂粒子(スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子を除く)を含んでなる実施例17のインキ組成物を用いたボールペンは、樹脂粒子(スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子を除く)を含んでいないインキ組成物を用いたボールペンに比べ、インキ漏れ量は少なく、実施例17のインキ組成物を用いたボールペンは、分散安定性、筆記性能、経時安定性に優れ、さらにはペン先からのインキ漏れをも抑制できる優れたボールペンであることがわかった。
さらに、試験用ボールペンのペン先を大気に晒した状態で、50℃、全乾の条件下で1日放置した後、試験用紙に文字(文字の大きさは縦横8mm)を連続筆記し、筆跡が認識できる程度に復帰するまでの文字数を数えたところ、デキストリンを含んでなる実施例1〜18のインキ組成物を用いたボールペンはデキストリンを含んでいない実施例19のインキ組成物を用いたボールペンに比べ、復帰するまでの文字数が少なく、耐ドライアップ性能が優れる傾向にあった。
<実施例20>
下記の配合組成および方法により実施例1のインキ組成物を得た。
・着色済樹脂粒子分散体1 45.0質量%
・浸透剤 1.0質量%
(ニッコールPBC−34)
・防腐剤 0.1質量%
(1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン)
・水溶性有機溶剤 20.0質量%
(グリセリン)
・水 残部
着色済樹脂粒子分散体1と、浸透剤と、防腐剤と、水溶性有機溶剤を添加し、プロペラ撹拌により混合してインキ組成物を得た。得られたインキ組成物をIM−40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、20℃におけるインキ組成物のpH値を測定した結果、pH値は8.3であった。
<比較例5>
実施例20の配合組成のうち、着色済樹脂粒子分散体1を着色済樹脂粒子分散体8に変更した以外は、実施例20と同じ方法で比較例5のインキ組成物を得た。得られたインキ組成物をIM−40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、20℃におけるインキ組成物のpH値を測定した結果、pH値は8.1であった。
得られた実施例20と比較例5のインキ組成物を、直径15mmの密開閉ガラス試験管に入れて、50℃、30日間放置した後、該インキ組成物の状態を光学顕微鏡を用いて観察したところ、実施例20のインキ組成物は、比較例5のインキ組成物に比べ、均一に分散されている状態であった。
また、実施例20と比較例5のインキ組成物を、ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体内に含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒内に収容し、ホルダーを介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ(チゼル型)を接続状態に組み立て、キャップを装着してマーキングペンを得た。
得られたマーキングペンを試験用筆記具(マーキングペン)とし、手書きにて螺旋状の丸を連続筆記し、得られた筆跡の状況を確認したところ、実施例20のインキ組成物を用いた試験用筆記具(マーキングペン)により得られた筆跡は、比較例5のインキ組成物を用いた試験用筆記具(マーキングペン)により得られた筆跡に比べ、線とびやカスレが少なく、発色良好なものであった。また、試験用筆記具(マーキングペン)を、ペン先を下にした状態で、50℃ 、30日間放置した後、手書きで、試験用紙(JIS P3201、筆記用紙A)に螺旋状の丸を連続筆記し、得られた筆跡の状況を目視にて確認したところ、実施例20のインキ組成物を用いた試験用筆記具(マーキングペン)により得られた筆跡は、比較例5のインキ組成物を用いた試験用筆記具(マーキングペン)により得られた筆跡に比べ、線とびやカスレが少なく、良好なものであった。
以上より、本発明によるインキ組成物は、分散安定性に優れており、インキ組成物中の成分が沈降、凝集することなく、均一に分散され、かすれや線とびなどなく発色良好な筆跡をもたらすなど、筆記性能にも優れ、さらに、経時安定性にも優れ、種々な色彩の筆記具に応用しやすいものであることが確認され、さらには、前記インキ組成物を用いた筆記具は、筆記具として優れたものであることがわかった。
本発明のインキ組成物は、水性ボールペン等の筆記具に用いることができ、該インキ組成物が収容されてなる筆記具は、優れた特性をもたらすことができるものである。

Claims (9)

  1. スチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と、着色剤と、アルキル硫酸塩と、水と、を含んでなる筆記具用水性インキ組成物であって、前記インキ組成物のpH値が6〜10であることを特徴とする、インキ組成物。
  2. 前記アルキル硫酸塩のアルキル基の炭素数が6〜20である、請求項1に記載のインキ組成物。
  3. キレート剤を含まないか、または組成物の総質量を基準として、0.5質量%以下のキレート剤を含んでなる、請求項1または2に記載のインキ組成物。
  4. ポリオキシアルキレンアリールエーテルを含まないか、または組成物の総質量を基準として、0.5質量%以下のポリオキシアルキレンアリールエーテルを含んでなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインキ組成物。
  5. デキストリンをさらに含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインキ組成物。
  6. リン酸エステル系界面活性剤をさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインキ組成物。
  7. 着色剤によって着色されたスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子と、アルキル硫酸塩と、水と、を含んでなる筆記具用水性インキ組成物であって、前記インキ組成物のpH値が6〜10であることを特徴とする、インキ組成物。
  8. 前記着色剤または前記着色剤とは異なる別の着色剤をさらに含んでなる、請求項7に記載のインキ組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のインキ組成物を収容してなることを特徴とする、筆記具。
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