JP2019113053A - ポンプシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】可変容量型オイルポンプの駆動による油圧振動を低減できるオイルポンプシステムを提供する。【解決手段】ロータ12と、筒状体13と、ケーシング1と、容量変更機構Aと、を有するポンプ100と、電磁弁Vと、吐出ポート3から吐出されるオイルの吐出圧を検出する検出部15と、電磁弁Vに印加する電流値を制御する制御部16と、を備え、制御部16は、吐出ポート3から吐出されるオイルの目標油圧を変化させたとき、検出部15で検出された吐出圧に基づいて油圧振動が発生しているか否かを判定する油圧振動判定部16aを有し、制御部16は、油圧振動判定部16aで油圧振動が発生していると判定されたとき、電磁弁Vの開度を小さくして吐出圧を増加させるように電流値を変更する。【選択図】図1

Description

本発明は、吐出ポートから吐出されるオイルを用いてポンプ容量を変更する可変容量型オイルポンプを備えたポンプシステムに関する。
特許文献1〜2には、オイルポンプの駆動により電磁弁を介して車両の自動変速機に作動油を供給するポンプシステムが開示されている。この種のオイルポンプシステムでは、作動油に混入した気泡や電磁弁の駆動によって作動油の油圧振動が発生することがある。
特許文献1には、作動油の油圧振動により自動変速機に供給される油圧が目標油圧を下回る場合に、目標油圧を増加させて自動変速機に供給される必要油圧を確保する技術が開示されている。特許文献1に記載の制御方法は、油圧センサにより検出した油圧検出値に基づいて、複数の油圧振動の波形のうち周期の最も長い波形群の最大振幅値から油圧補正量を決定するものである。
特許文献2には、過去の作動油の油圧振動の発生状況に基づき、エンジン稼動期間における油圧振動の発生状況を予測して駆動周波数を設定することにより、油圧振動を許容範囲内に収める技術が開示されている。特許文献2に記載の制御方法は、前回のエンジンの稼動期間における油圧振動レベルを判定し、該油圧振動レベルが高いほど電磁弁のパルス駆動周波数を高い値に設定するものである。
特開2012−219947号公報 特開2016−114228号公報
しかしながら、特許文献1の技術は、自動変速機に供給される必要油圧を確保するものであり、油圧振動を低減する技術ではない。また、特許文献2の技術は、電磁弁のパルス駆動周波数を高い値に設定することで油圧振動を低減するものであるが、オイルポンプから吐出されるオイルを用いてポンプ容量を変更する可変容量型オイルポンプを想定したものではない。
そこで、可変容量型オイルポンプの駆動による油圧振動を低減できるオイルポンプシステムが望まれている。
ポンプシステムの特徴構成は、エンジンから伝達される回転力により第一軸芯を中心に回転するロータと、前記ロータの外周側との間にポンプ室を形成し、前記第一軸芯に対して偏芯した第二軸芯を有する筒状体と、前記ポンプ室に連通する吸引ポートと吐出ポートとを有し、前記ロータおよび前記筒状体を収容するケーシングと、前記吐出ポートから吐出されたオイルにより前記第二軸芯を前記第一軸芯に対して公転させてポンプ容量を変更させる容量変更機構と、を有するポンプと、前記吐出ポートと前記容量変更機構とを接続する流路に配置され、前記吐出ポートから吐出されたオイルの前記容量変更機構への供給量を調節する電磁弁と、前記吐出ポートから吐出されるオイルの吐出圧を検出する検出部と、前記電磁弁に印加する電流値を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記吐出ポートから吐出されるオイルの目標油圧を変化させたとき、前記検出部で検出された前記吐出圧に基づいて油圧振動が発生しているか否かを判定する油圧振動判定部を有し、前記制御部は、前記油圧振動判定部で油圧振動が発生していると判定されたとき、前記電磁弁の開度を小さくして前記吐出圧を増加させるように前記電流値を変更する点にある。
ポンプが吐出ポートから吐出されたオイルによりポンプ容量を変更させる容量変更機構を備えている場合であって、油路が長い、あるいは気泡率が高い場合等には、オイルの目標油圧を変化させることにより油圧振動が生じたときに容量変更機構の作動が不安定になり、ポンプの油圧振動が助長されて騒音や振動が発生する可能性がある。
そこで、本構成は、吐出ポートから吐出されるオイルの目標油圧を変化させたときに、油圧振動判定部で油圧振動が発生していると判定された場合、電磁弁の開度を小さくして吐出圧を増加させている。その結果、吐出ポートからの大きな吐出圧により振動が徐々に減殺され、最終的に油圧振動を無くすことができる。しかも、電磁弁の開度を小さくして油圧振動しているオイルの容量変動機構に対する供給量を低下させているので、容量変動機構の作動の安定化を図ることができる。このように、可変容量型オイルポンプの駆動による油圧振動を低減できるオイルポンプシステムを提供できた。
他の特徴構成は、前記油圧振動判定部は、前記目標油圧に基づいて演算された、前記吐出ポートから吐出される理想油圧が、前記目標油圧を基準とした所定範囲内に入ったとき、油圧振動が発生しているか否かの判定を開始する点にある。
本構成のように、判定の開始タイミングを、演算される理想油圧が目標油圧を基準とした所定範囲内に入ったときに設定することで、判定精度を高めることができる。
他の特徴構成は、前記油圧振動判定部は、前記油圧振動の振幅および前記振幅の減衰度の少なくとも一方に基づいて、油圧振動が発生しているか否かの判定を行う点にある。
油圧振動が大きくなるほど油圧振動(吐出圧)の振幅が大きくなる。また、油圧振動の振幅の減衰度(1周期目の波形における片振幅の絶対値から2周期目の波形における片振幅の絶対値を減算した値など)が小さいほど油圧振動が継続する。そこで、本構成のように、油圧振動の振幅および振幅の減衰度の少なくとも一方に基づいて、油圧振動が発生しているか否かの判定を行えば、判定精度を高めることができる。
他の特徴構成は、前記制御部は、前記油圧振動の振幅が所定振幅値より小さくなったとき、前記目標油圧となるように前記電磁弁の開度を大きくして前記吐出圧を減少させる点にある。
本構成では、油圧振動(吐出圧)の振幅が所定振幅値より小さくなれば油圧振動が収束したと判定し、電磁弁の開度を大きくして目標油圧に復帰させる制御を実行する。これにより、油圧振動を低減しながら、最適な油圧にコントロールすることができる。
他の特徴構成は、前記電磁弁は、印加される前記電流値が大きくなるほど開度が大きくなるように構成されており、前記制御部は、前記油圧振動の振幅が前記所定振幅値より小さくなったときに前記電磁弁に印加されている第一電流値よりも所定電流値だけ大きい第二電流値を記憶し、当該第二電流値を超えないように前記電磁弁に印加される前記電流値を制御する点にある。
本構成では、油圧振動が収束したときに電磁弁に印加する電流値を第一電流値とし、この第一電流値よりも所定電流値だけ大きい第二電流値を記憶している。つまり、油圧振動が確実に収束する第一電流値よりも大きい第二電流値を制限電流値として徐々に学習し、油圧振動を低減しつつ、ポンプ容量のエネルギー効率の向上を達成することができる。
吐出圧が最大状態におけるオイルポンプの断面図である。 吐出圧が最小状態におけるオイルポンプの断面図である。 ポンプシステムの制御フロー図である。 油圧振動を判定する際の概念図である。 油圧振動を判定する際の概念図である。 油圧復帰作動を示す概念図である。 別実施形態に係るオイルポンプの断面図である。
以下に、本発明に係るポンプシステムの実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、吐出圧を変更可能な可変容量型のオイルポンプ100を備えたポンプシステムを一例として説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
〔基本構成〕
本実施形態に係るオイルポンプシステムは、図1に示すように、オイルポンプ100と、吐出圧検出部15(検出部の一例)と、電磁弁Vと、制御部16と、備えている。特に、制御部16はオイルポンプ100の容量を変更する種々の処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
オイルポンプ100は、車両のエンジンEのメインギャラリに対して潤滑油を供給すると共に、エンジンEに備えられた油圧機器(弁開閉時期制御装置、ピストンジェット、自動変速機等)に対して作動油を供給するように、エンジンEで駆動される可変容量型のトロコイドポンプで構成されている(潤滑油と作動油との総称をオイルとする)。このオイルポンプ100から吐出されたオイルは、オイルフィルタ55を介して異物が除去された後、一部がメインギャラリや油圧機器に供給される。また、一部のオイルが後述する圧力室4に供給される場合もある。
オイルポンプ100は、インナーロータ12(ロータの一例)と、アウターロータ13(筒状体の一例)と、ケーシング1と、容量変更機構Aとを備えている。
インナーロータ12は、駆動回転軸芯X(第一軸芯)を中心にしてエンジンEから伝達される回転力により駆動軸11と一体的に回転する。アウターロータ13は、駆動回転軸芯Xに対して偏芯した従動回転軸芯Y(第二軸芯)を中心に回転する。インナーロータ12の外周側とアウターロータ13の内周側との間には、ポンプ室24が形成されている。インナーロータ12およびアウターロータ13は、ケーシング1の内部に収容されている。ケーシング1の壁部1Aには、オイルを吸引する吸引ポート2と、オイルを吐出する吐出ポート3とが形成されており、これら吸引ポート2および吐出ポート3がポンプ室24に連通している。また、容量変更機構Aは、吐出ポート3から吐出されるオイルにより、アウターロータ13をインナーロータ12に対して駆動回転軸芯Xの周りで公転移動させることでポンプ容量を変化させる。
インナーロータ12は、ケーシング1の壁部1Aを貫通する駆動軸11に支持され、複数の外歯12Aを有した環状に形成されている。アウターロータ13は、後述する調整リング14の内周側に支持され、インナーロータ12の外歯12Aに噛み合う複数の内歯13Aを有した環状に形成されている。
インナーロータ12の外歯12Aは、トロコイド曲線に従う歯面形状に成形されている。アウターロータ13の内歯13Aは、インナーロータ12の外歯12Aの歯数より1つ多い歯数に設定され、アウターロータ13が回転した際に、インナーロータ12の外歯12Aに接触する歯面形状に成形されている。なお、インナーロータ12の外歯12Aやアウターロータ13の内歯13Aをサイクロイド曲線に従う歯面形状に成形しても良く、特に限定されない。
この構成からインナーロータ12が矢印Fで示す方向に駆動回転することにより、吸引ポート2から外歯12Aと内歯13Aとの間のポンプ室24にオイルを導入し、オイルを加圧して吐出ポート3から送り出す。エンジン回転数(エンジンEの回転速度)が増大するほどインナーロータ12の回転数が大きくなり、吐出ポート3から吐出される油量(油圧)が増大する。
容量変更機構Aは、圧力室4と、制御油路Cと、調整リング14と、コイルスプリングSとを有している。
圧力室4は、ケーシング1の内部のうちケーシング1と調整リング14との間に形成され、アウターロータ13を公転させるオイルが供給される空間である。制御油路Cは、吐出ポート3と圧力室4とを連通させるように、一端が吐出ポート3に接続され、他端が圧力室4に接続されており、吐出ポート3から吐出されたオイルを圧力室4に供給する流路となっている。
調整リング14は、アウターロータ13を内挿状態で回転自在に支持するように従動回転軸芯Yと同軸芯の内周面を有するリング状に成形されている。この調整リング14の外周には外方に突出する操作部21が一体的に形成されており、コイルスプリングSが圧力室4内のオイルの圧力(制御圧)に対抗して操作部21を付勢している。コイルスプリングSは、操作部21を基準にして圧力室4と反対側の低圧空間LPに配置されており、調整リング14をアウターロータ13と共にポンプ容量増大方向(吐出圧増大方向)に変位させる付勢力を有している。一方、電磁弁Vで変換された制御圧が制御油路Cを介して操作部21に作用することにより、該制御圧がコイルスプリングSの付勢力に対抗して、調整リング14をアウターロータ13と共にポンプ容量減少方向(吐出圧減少方向)に変位させる。
調整リング14の外周のうち、コイルスプリングSが配置された部位に吸引ポート2に連通する低圧空間LPが形成され、径方向で低圧空間LPと反対側に吐出ポート3と連通する加圧空間HPが形成されている。圧力室4の両側壁には、調整リング14の外周とケーシング1の内面との間に一対のシールベーン23が備えられ、一対のシールベーン23によって低圧空間LPおよび加圧空間HPと圧力室4とが分離されている。
また、オイルポンプ100は、調整リング14の移動をガイドするガイド部Gを備えている。このガイド部Gは、調整リング14の外周部に備えた2つのガイドピン25と、このガイドピン25が係入するように調整リング14の壁面に形成された2つのガイド溝26とを有している。2つのガイド溝26は、駆動回転軸芯Xを中心にしてアウターロータ13の従動回転軸芯Yを公転させるように調整リング14をガイドする形状に形成されている。
吐出圧検出部15は、吐出ポート3から吐出されたオイルの圧力(実油圧)を検出する。吐出圧検出部15は、オイルの圧力を検出する圧力センサにより構成される。吐出ポート3から吐出されたオイルとは、吐出ポート3から吐出直後のオイルや、上述の弁開閉時期制御装置等の油圧機器やメインギャラリに供給されたオイルが相当する。本実施形態では、吐出圧検出部15は、油圧機器やメインギャラリに供給されるオイルの圧力を検出する。以下では、「吐出ポート3から吐出されたオイルの圧力」を「吐出圧」として説明する。吐出圧検出部15による検出結果は、後述する制御部16に伝達される。
電磁弁Vは、制御油路Cの経路上に配置されており、制御油路Cが形成されたハウジングに収容されている。本実施形態における電磁弁Vは、制御部9からの信号を受けて、印加される電流値が大きくなるほど開度が大きくなるように構成されている。なお、電磁弁Vは、通電によって発生する駆動力によりスプール(不図示)を移動させて開度が変更する公知の構成であるので、詳細な説明を省略する。
制御部16は、吐出ポート3から吐出されるオイルの圧力が所期の要求油圧になるように操作部21に入力される駆動力を制御する。吐出ポート3から吐出されるオイルの油圧、すなわち吐出圧は、上述の吐出圧検出部15の検出結果として伝達される。所期の要求油圧は、本実施形態では、エンジンEの回転数に応じて予め設定されている。エンジンEの回転数に応じて、油圧機器が必要な油圧が異なるからである。このような要求油圧は、エンジン回転数と要求油圧との関係を規定するマップとして制御部16に予め記憶しておくと好適である。制御部16には、エンジンEから現在のエンジンEの回転数を示す回転数情報も伝達される。
制御部16は、ECU(エンジンコントロールユニット)等で構成され、吐出圧検出部15の検出結果が、現在のエンジンEの回転数に応じて設定された要求油圧と一致するように、電磁弁Vに印加する電流値を制御して、調整リング14に作用する駆動力をフィードバック制御により制御する。
制御の具体例として、高圧制御モードと、低圧制御モードと、が設定されている。高圧制御モードでは、電磁弁Vに印加する電流値を減少させるモードであり、電磁弁Vの開度を小さくすることで、圧力室4に対して加圧空間HPからのオイルの流入を阻止し、かつ、圧力室4を大気開放する。低圧制御モードでは、電磁弁Vに印加する電流を増加させるモードであり、電磁弁Vの開度を大きくすることで、加圧空間HPからのオイルを制御油路Cを介して圧力室4に流入させ、操作部21に油圧を作用させる。
制御部16で高圧制御モードに設定することにより、オイルポンプ100からのオイルの吐出量(吐出圧)を増加させる作動を実現し、制御部16で低圧制御モードに設定することにより、オイルポンプ100からのオイルの吐出量(吐出圧)を減少させる作動を実現する。これにより、条件に基づいて過剰な量のオイルを吐出することや、過剰に吐出圧を上昇させて、エンジンEの燃費を悪化させる不都合を抑制する。
以上の構成を備えることにより、インナーロータ12とアウターロータ13とを図1の状態にしたり、図2の状態にしたりすることが可能となる。すなわち、図1の状態であれば、電磁弁Vに印加される電流値がゼロの高圧制御モードであり、駆動軸11が駆動回転することにより、吸引ポート2からオイルが吸引され、吐出ポート3からオイルが排出される。
これに対して、図2の状態であれば、電磁弁Vに印加される電流値が最大の低圧制御モードであり、従動回転軸芯Yが駆動回転軸芯X周りで公転する運動が行われると同時に、調整リング14も従動回転軸芯Y周りで自転する。この時にはアウターロータ13も調整リング14と共に移動し、インナーロータ12の外歯12Aにアウターロータ13の内歯13Aが噛み合った状態で従動回転軸芯Yが駆動回転軸芯X周りで公転する。
その結果、正圧作用領域と負圧作用領域とが駆動回転軸芯X周りで移動し、負圧作用領域から吸引ポート2に作用する負圧が低下し、正圧作用領域から吐出ポート3に作用する正圧も低下する。この結果、このオイルポンプ100によるオイルの吐出量(吐出圧)が減少する。
このように、吐出ポート3から吐出されたオイルによりポンプ容量を変更させる容量変更機構Aを備えている場合、オイルの目標油圧を変化させることにより油圧振動が生じたときに操作部21の作動が不安定になり、オイルポンプ100の油圧振動が助長されて騒音や振動が発生する可能性がある。特に、本実施形態のように圧力室4に吐出圧を作用させてポンプ容量を変更させる場合、目標油圧を変更するときに、吐出ポート3からの吐出圧の波形と圧力室4に作用する吐出圧の波形との間で位相差が生じ、この位相差によって油圧が変動して油圧振動が発生することがある。また、制御油路Cの油路が長い場合や、オイルに混入した気泡によって圧力室4に作用する圧力伝播が遅れることにより、目標油圧を変更するときに該位相差が生じて油圧振動が発生することがある。
そこで、本実施形態に係る制御部16は、吐出ポート3から吐出されるオイルの目標油圧を変化させたとき、吐出圧検出部15で検出された吐出圧に基づいて油圧振動が発生しているか否かを判定する油圧振動判定部16aを有している。そして、制御部16は、油圧振動判定部16aで油圧振動が発生していると判定されたとき、電磁弁Vの開度を小さくして吐出ポート3からの吐出圧を増加させるように電磁弁Vに印加する電流値を低下させる。その結果、吐出ポート3からの大きな吐出圧により油圧振動が徐々に減殺され、最終的に油圧振動を無くすことができる。しかも、電磁弁Vの開度を小さくして油圧振動しているオイルの操作部21に対する供給量を低下させているので、操作部21の作動の安定化を図ることができる。詳細な制御方法については、以下に詳述する。
〔制御方法〕
図3〜図7には、本実施形態に係るポンプシステムの制御例が示されている。まず、エンジンEが始動した後、オイルポンプ100の目標油圧が変更されたか否かが判定される(♯11)。オイルポンプ100の目標油圧が変更された場合(♯11Yes判定)、予め制御部16に記憶された理想応答モデルに目標油圧が入力され、時間を横軸、理想油圧を縦軸とした理想油圧曲線を算出する(♯12)。ここで、理想油圧とは、目標油圧が変更された時点から変更された目標油圧に到達するまで、所定の理想応答モデルに基づいて演算される時間ごとの吐出圧のことである。
そして、図4に示すように、理想油圧が目標油圧を基準とした所定範囲内に入ったとき(♯13Yes判定)、油圧振動判定部16aは油圧振動の判定を開始する。そして、油圧振動判定部16aは、油圧振動波形の変曲点P1〜P5を抽出し、変曲点が所定個数(本実施形態では5個)以上となったか否かを判定する(♯14,♯15)。変曲点の所定個数を5個に設定した理由は、後述する減衰度を算出するための2周期分の波形が抽出できるからである。なお、所定個数を6個以上に設定しても良く、特に限定されない。
次いで、変曲点が所定個数以上抽出されたとき、油圧振動判定部16aは、油圧振動の波形における最大振幅H1が第一所定値以上か否かを判定する(♯16、図5参照)。該振幅が第一所定値未満である場合、吐出圧は目標油圧に近似されるので、油圧振動なしと判定する(♯16Nо判定,♯19)。一方、該振幅が第一所定値以上である場合、油圧振動判定部16aは、該振幅の減衰度が第二所定値以下か否かを判定する(♯16Yes判定,♯17、図5参照)。ここで、減衰度とは、1周期目の油圧振動の波形における最大振幅H1の絶対値から2周期目の油圧振動の波形における最大振幅H2の絶対値を減算した値である。なお、減衰度を、1周期目の油圧振動の最大波高αから2周期目の油圧振動の最大波高βを減算した値としても良く、特に限定されない。また、本実施形態においては、1周期目の油圧振動の波形における最大振幅H1が第一所定値以上か否かを判定したが、検知精度を考慮して、2周期目の油圧振動の波形における最大振幅H2が第一所定値以上か否かを判定しても良い。
♯17の判定の結果、減衰度が第二所定値より大きい場合、油圧振動が収束する見込みが大きいため、油圧振動なしと判定する(♯17Nо判定,♯19)。一方、減衰度が第二所定値以下である場合、油圧振動判定部16aは、油圧振動の波形の周波数(t3−t1、t5−t3)がエンジンE回転数の変動周期(周波数)と一致するか否かを判定する(♯17Yes判定,♯18、図4〜図5参照)。油圧振動の波形の周波数がエンジンE回転数の変動周期と一致する場合、該振動はエンジンEの回転数の変動に起因するものであるため、油圧振動なしと判定する(♯18Yes判定,♯19)。一方、油圧振動の波形の周波数がエンジンE回転数の変動周期と一致しない場合、油圧振動ありと判定する(♯18Nо判定,♯20)。
本実施形態における油圧振動判定部16aは、(1)油圧振動の波形における最大振幅H1が第一所定値以上、(2)油圧振動の波形における減衰度が第二所定値以下、(3)油圧振動の波形の周波数がエンジンE回転数の変動周期と一致しない、の3条件を全て満足する場合に油圧振動ありと判定する。これに代えて、油圧振動判定部16aは、(1)〜(3)の何れか1条件を満足する場合に油圧振動ありと判定しても良いし、(1)〜(3)の何れか2条件を満足する場合に油圧振動ありと判定しても良い。
油圧振動判定部16aが油圧振動ありと判定したとき、制御部16は電磁弁Vに印加する電流値を減少させて電磁弁Vの開度を小さくする(♯20〜♯21)。その結果、吐出ポート3からのオイルの吐出圧が増加して油圧振動を低減させることができる(図6参照)。次いで、油圧振動判定部16aは、油圧振動の波形における振幅の絶対値が第三所定値(所定振幅値)より小さくなったか否かを判定する(♯22)。油圧振動の波形における振幅の絶対値が第三所定値(所定振幅値)以上の場合は、引き続き、制御部16は電磁弁Vに印加する電流値を減少させる(♯22Nо判定,♯21)。一方、油圧振動の波形における振幅の絶対値が第三所定値より小さくなったとき、制御部16はそのとき電磁弁Vに印加されている第一電流値(条件を満たした第一電流値)から所定電流値だけ大きい第二電流値を記憶する(♯22Yes判定,♯23、図6参照)。この第二電流値は、目標油圧に到達するために電磁弁Vに印加する第三電流値よりも小さい。そして、油圧振動の波形における振幅の絶対値が第三所定値より小さくなったときには油圧振動がほぼ無くなったと判断し、制御部16は、目標油圧となるように電磁弁Vに印加する電流値を増加させて電磁弁Vの開度を大きくする(♯24、図6参照)。その結果、吐出ポート3からの吐出圧を減少させてエンジンEの燃費を悪化させる不都合を抑制する。
次いで、油圧振動判定部16aは、電磁弁Vに印加する電流値が第二電流値以下であるか否かを判定する(♯25)。電磁弁Vに印加する電流値が第二電流値以下である場合は、引き続き、制御部16は、目標油圧となるように電磁弁Vに印加する電流値を増加させてさせる(♯25Yes判定,♯24)。電磁弁Vに印加する電流値が第二電流値より大きくなったときは、電磁弁Vに印加する電流値を増加させずに維持する(♯25Nо判定,♯26、図6参照)。これによって、吐出ポート3からの吐出圧は、油圧振動が発生する圧力まで低下することがない。このように、油圧振動が確実に収束する第一電流値よりも大きい第二電流値を、目標油圧に到達するために電磁弁Vに印加する第三電流値よりも小さい制限電流値として徐々に学習し、油圧振動を低減しつつ、ポンプ容量のエネルギー効率の向上を達成することができる。
[別実施形態]
上述した実施形態では、オイルポンプ100をトロコイドポンプで構成したが、図7に示すようなベーンポンプで構成しても良い。なお、上述した実施形態と同様の構成については同じ符号を用いており、詳細な説明を省略する。
本実施形態のオイルポンプ100Aは、可変容量型のベーン式オイルポンプで構成されている。このオイルポンプは、径方向に突出引退可能な複数の可動ベーン5を有するロータ19と、可動ベーン5との摺動により当該可動ベーン5の突出量を変更するカムリング18(筒状体の一例)とを備えている。
ロータ19は、回転軸芯X周りで駆動軸11と一体に駆動回転される円筒状の外周筒部19aを同芯状に有している。外周筒部19aの内周側には、各可動ベーン5の基端側を支持する支持リング17が装着されている。
各可動ベーン5は、外周筒部19aに対してロータ19の径方向に摺動移動自在に装着されると共に外周筒部19aの内周側に装着した支持リング17に基端側が支持され、ロータ19の回転に伴う遠心力でロータ19の外周側に向けて突出移動する。カムリング18は、可動ベーン5の先端部分が摺動する内周面を有する円筒状に形成されている。
ポンプ室24は、外周筒部19aの外周側とカムリング18の内周側との間に形成され、可動ベーン5によって周方向で複数のポンプ室24aに区画されている。ロータ19を矢印Fで示す方向に駆動回転させることにより、ポンプ室24aの容積が増大するに伴って吸引ポート2からオイルをポンプ室24aに導入し、ポンプ室24aの容積が減少するに伴ってポンプ室24aのオイルを吐出ポート3から送り出す。
容量変更機構Aは、圧力室4と、制御油路Cと、カムリング18と、コイルスプリングSとを有している。つまり、上述した実施形態に係る調整リング14に代えて、筒状体を構成するカムリング18の操作部18aに制御圧を作用させることによってポンプ容量を変更調整する。その他の構成および作動形態は、上述した実施形態と同様であるのでその説明は省略する。
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態では、第一電流値よりも所定電流値だけ大きい第二電流値を制限電流値として電磁弁Vに印加する電流値を設定したが、制限電流値を設けなくても良い。
(2)上述した電磁弁Vは、印加される電流値が大きくなるほど開度が大きくなるように構成したが、印加される電流値が大きくなるほど開度が小さくなるように構成しても良い。
(3)上述した実施形態では、理想油圧が目標油圧を基準とした所定範囲内に入ったとき、油圧振動判定部16aは油圧振動の判定を開始したが、目標油圧が変更された時点から所定時間経過後に油圧振動の判定を開始しても良い。この所定時間は、目標油圧と実油圧とに基づいてマップ化されているのが好適である。
本発明は、エンジンで駆動される可変容量型のオイルポンプを備えたポンプシステムに利用可能である。
1 ケーシング
2 吸引ポート
3 吐出ポート
12 インナーロータ(ロータ)
13 アウターロータ(筒状体)
15 吐出圧検出部(検出部)
16 制御部
16a 油圧振動判定部
100 オイルポンプ
A 容量変更機構
C 制御油路(流路)
E エンジン
V 電磁弁
X 駆動回転軸芯(第一軸芯)
Y 従動回転軸芯(第二軸芯)

Claims (5)

  1. エンジンから伝達される回転力により第一軸芯を中心に回転するロータと、
    前記ロータの外周側との間にポンプ室を形成し、前記第一軸芯に対して偏芯した第二軸芯を有する筒状体と、
    前記ポンプ室に連通する吸引ポートと吐出ポートとを有し、前記ロータおよび前記筒状体を収容するケーシングと、
    前記吐出ポートから吐出されたオイルにより前記第二軸芯を前記第一軸芯に対して公転させてポンプ容量を変更させる容量変更機構と、を有するポンプと、
    前記吐出ポートと前記容量変更機構とを接続する流路に配置され、前記吐出ポートから吐出されたオイルの前記容量変更機構への供給量を調節する電磁弁と、
    前記吐出ポートから吐出されるオイルの吐出圧を検出する検出部と、
    前記電磁弁に印加する電流値を制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記吐出ポートから吐出されるオイルの目標油圧を変化させたとき、前記検出部で検出された前記吐出圧に基づいて油圧振動が発生しているか否かを判定する油圧振動判定部を有し、
    前記制御部は、前記油圧振動判定部で油圧振動が発生していると判定されたとき、前記電磁弁の開度を小さくして前記吐出圧を増加させるように前記電流値を変更するポンプシステム。
  2. 前記油圧振動判定部は、前記目標油圧に基づいて演算された、前記吐出ポートから吐出される理想油圧が、前記目標油圧を基準とした所定範囲内に入ったとき、油圧振動が発生しているか否かの判定を開始する請求項1に記載のポンプシステム。
  3. 前記油圧振動判定部は、前記油圧振動の振幅および前記振幅の減衰度の少なくとも一方に基づいて、油圧振動が発生しているか否かの判定を行う請求項1又は2に記載のポンプシステム。
  4. 前記制御部は、前記油圧振動の振幅が所定振幅値より小さくなったとき、前記目標油圧となるように前記電磁弁の開度を大きくして前記吐出圧を減少させる請求項1から3のいずれか一項に記載のポンプシステム。
  5. 前記電磁弁は、印加される前記電流値が大きくなるほど開度が大きくなるように構成されており、
    前記制御部は、前記油圧振動の振幅が前記所定振幅値より小さくなったときに前記電磁弁に印加されている第一電流値よりも所定電流値だけ大きい第二電流値を記憶し、当該第二電流値を超えないように前記電磁弁に印加される前記電流値を制御する請求項4に記載のポンプシステム。
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