JP2019112737A - 開口部を有するシート状物およびその製造方法 - Google Patents

開口部を有するシート状物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】開口部を有するシート状物であっても、車両内装材用途として十分な耐摩耗性を有するシート状物およびその製造方法を提供する。【解決手段】繊維質基材2と、繊維質基材の片面に積層されたポリウレタン樹脂からなる内層3および最外層4と、を備え、表面11に複数の開口部5を有するシート状物1,1Aであって、最外層4が無孔質であり、最外層4の熱溶融温度が内層3の軟化温度よりも高く、且つ、開口部5は、最外層4が開口中心に向かって落ち込むように傾斜してなる開口周縁部51を含む、シート状物である。【選択図】 図1

Description

本発明の実施形態は、開口部を有するシート状物およびその製造方法に関する。詳細には、一実施形態として、車両内装材用途に用いても十分な耐摩耗性が得られる、開口部を有するシート状物およびその製造方法に関する。
従来、合成皮革や天然皮革などは、その表面が樹脂層に覆われていることから、車両内装材用途、特には、座面に用いられる場合には、長時間着座した際の発汗により、蒸れやべたつきが生じるという課題がある。
この課題に対し、一般的に、孔開け加工(例えば、特許文献1)により皮革類に開口部を形成し、皮革類の透湿度を向上させることにより、蒸れやべたつきを解決しようと試みている。車両内装材用途の合成皮革や天然皮革において、蒸れやべたつきを解決するのに必要な透湿度は2000g/m・hと考えられている。しかしながら、これを満たす合成皮革や天然皮革は、車両内装材用途として十分な耐摩耗性が得られず、蒸れやべたつきの解消と強度の両立ができないという課題がある。また、開口部周辺に孔開け加工によるバリが発生し、表面触感が悪いという課題もある。
このような問題を解決すべく、特許文献2、3では、繊維質基体の片面に、連通多孔質ポリウレタン層を形成し、該表面に開放孔を形成した後、該閉塞孔を完全に閉塞しないように仕上げポリウレタン皮膜で開放孔の孔壁を覆うことで、面平滑性、防汚性、耐摩耗性を改良した銀付調人工皮革とその製造方法を開示している。しかしながら、特許文献2、3に開示された製造方法は、孔開け加工と、仕上げポリウレタン皮膜の形成を別々に行うものであるため工程負荷がかかるという課題がある。また、開放孔の孔壁を覆う仕上げポリウレタン皮膜の形成は、グラビアロールを用い、ポリウレタン混合液の粘度調整、塗布量調整によって制御するものであり、再現性に劣るという課題がある。
特開平11−209800号公報 特開平8−041786号公報 特許第3117996号公報
本発明の実施形態は、開口部を有するシート状物であっても、例えば車両内装材用途として十分な耐摩耗性を有するシート状物およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係るシート状物は、繊維質基材と、前記繊維質基材の片面に積層されたポリウレタン樹脂からなる内層および最外層と、を備え、表面に複数の開口部を有するシート状物である。前記最外層は無孔質である。前記最外層の熱溶融温度は前記内層の軟化温度よりも高い。前記開口部は、前記最外層が開口中心に向かって傾斜してなる開口周縁部を含む。
また、本発明の実施形態に係るシート状物の製造方法は、繊維質基材と、前記繊維質基材の片面に積層されたポリウレタン樹脂からなる内層および最外層と、を備えるシート状物に、針エンボス加工によって複数の開口部を形成する、開口部を有するシート状物の製造方法である。前記最外層が無孔質であり、且つ、前記最外層の熱溶融温度が針エンボス加工温度よりも高く、且つ、前記針エンボス加工温度が前記内層の軟化温度よりも高い。
本実施形態によれば、開口部を有するシート状物であっても、例えば車両内装材用途として十分な耐摩耗性を有するシート状物およびその製造方法を提供することができる。
一実施形態に係るシート状物の断面模式図である。 他の実施形態に係るシート状物の断面模式図である。
本実施形態に係るシート状物は、繊維質基材の片面に、最外層と内層の2層からなるポリウレタン樹脂層が積層され、且つ、表面に複数の開口部を有するシート状物である。
図1は、一実施形態に係るシート状物1の断面構造を摸式的に示したものである。シート状物1では、繊維質基材2の表面に、内層3および最外層4が設けられており、シート状物1の表面(オモテ面)11には、通気性を向上するための複数の開口部5が設けられている。開口部5は、内層3および最外層4を貫通して設けられている。
図2は、他の実施形態に係るシート状物1Aの断面構造を模式的に示したものである。シート状物1Aでは、内層3は表皮層31と接着層32とからなり、繊維質基材2上に、接着層32を介して表皮層31および最外層4がこの順に積層されている。また、この例では、開口部5は、最外層4とともに、内層3である表皮層31および接着層32を貫通して設けられている。
本実施形態において、繊維質基材としては、例えば、織物、編物、不織布などの布帛や、天然皮革(床革含む)を用いることができる。また、布帛に、公知の無溶剤系、溶剤系または水系の高分子化合物、例えば、ポリウレタン樹脂やその共重合体を主成分とする液を塗布または含浸し、乾式凝固または湿式凝固にて固化させたものを用いることができる。布帛において、繊維の素材は特に限定されるものではなく、例えば、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維などを挙げることができ、これらを2種以上組み合わせてもよい。なかでも強度の観点から合成繊維が好ましく、ポリエステル繊維がより好ましい。
また、繊維質基材は、染料または顔料により着色されたものであってもよい。着色に用いられる染料や顔料は特に限定されない。
本実施形態に係るシート状物は、上述の繊維質基材表面に、第1の樹脂層として、ポリウレタン樹脂からなる内層が、第2の樹脂層として、無孔質のポリウレタン樹脂からなる最外層が積層されてなるものである。
内層は、繊維質基材上に形成されるポリウレタン樹脂からなる層であり、1層構造には限られず、2層又は3層以上であってもよい。例えば、内層を設ける際にポリウレタンの接着剤を使用する場合、接着剤により形成される接着層も内層の一部を構成する。より詳細には、図1に示すように表皮層としての内層3を繊維質基材2に直接積層してもよいが、図2に示すように接着層32を介して表皮層31を繊維質基材2に積層してもよい。接着層を介することにより、直接積層した場合に起こり得る、内層を構成するポリウレタン樹脂の繊維質基材への過度の浸み込みを抑制することができる。そのため、触感や風合いを損なうことを防ぐことができる。
内層を構成するポリウレタン樹脂は特に限定されるものではなく、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂などを挙げることができる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐摩耗性および耐光堅牢性の観点から、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。また、ポリウレタン樹脂の形態は、無溶剤系、ホットメルト系、溶剤系、水系などを問わず、さらには、一液型、二液硬化型を問わず使用可能であり、具体的用途に応じて適宜選択することができる。
内層を構成するポリウレタン樹脂には、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、ウレタン化触媒、シランカップリング剤、充填剤、チクソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、染料、顔料、難燃剤、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、不活性気体、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤、艶消し剤、触感向上剤、スリップ改良剤、架橋剤、増粘剤、レベリング剤などの任意成分を、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
なお、内層の一部として接着層を設ける場合、接着剤としては、上記の内層に用いられるポリウレタン樹脂と同様の樹脂を用いることができる。また、ポリウレタンの組成は、例えば表皮層と接着層とで同一であっても、異なっていてもよい。
内層の軟化温度は、140〜200℃であることが好ましく、より好ましくは150〜170℃である。内層の軟化温度が140℃以上であることにより、耐熱性に優れるシート状物となる。内層の軟化温度が200℃以下であることにより、針エンボス加工性に優れる。なお、内層として複数の樹脂層を設ける場合、内層の軟化温度とは、当該複数の樹脂層の全ての軟化温度を意味する。
内層の軟化温度は以下の方法により求めることができる。すなわち、内層のみを単体で、シート状物での内層の厚みと同等の厚みを持つフィルムとして作製する。得られたフィルムを7mm四方に裁断し、これを熱機械的分析装置(EXSTAR TMA−SS6100、株式会社日立ハイテクサイエンス製)により、JIS K−7196「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」に従い、針侵入法(荷重:0.1N、針の径:φ1mm、昇温速度:5℃/分)を用いて、プローブの変位開始温度を測定する。フィルムを10枚作製し、それぞれの変位開始温度を測定し、これらの平均値を算出することで軟化温度を求めることができる。内層が複数の樹脂層からなる場合、それぞれの樹脂層についてフィルムを作製し、軟化温度を測定する。
内層の厚さは、特に限定されず、例えば5〜400μmでもよく、20〜250μmでもよく、100〜200μmでもよい。内層の厚さが5μm以上であることにより、均一な樹脂層を形成しやすくなり、部分的に内層が欠落することがないため、耐摩耗性を向上させることができる。内層の厚さが400μm以下であることにより、風合いが粗硬になることを防ぐことができる。内層が複数の樹脂層からなる場合、内層の厚さは複数の樹脂層の厚さの合計である。例えば、接着層を設ける場合、接着層の厚さをも含めた値を内層の厚さとする。
内層の厚さは以下の方法により求めることができる。すなわち、シート状物の垂直断面をマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、デジタルHFマイクロスコープVH−8000)で100倍に拡大して観察し、内層の厚さを測定する。内層の厚さは任意の5カ所について測定し、これらの平均値を算出することで求める。
内層は多孔質であることが好ましい。多孔質であることにより、針エンボス加工性を良好なものとすることができる。内層を多孔質とする方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、機械的な撹拌による物理的発泡、発泡剤添加による化学的発泡、または、中空微粒子の添加による孔形成が挙げられる。あるいはまた、ポリウレタン樹脂の湿式コーティングによる孔形成や、ポリウレタン樹脂の湿気硬化反応による孔形成などが挙げられる。内層が複数の樹脂層からなる場合、全ての樹脂層が多孔質であることが好ましい。
本実施形態に係るシート状物は、繊維質基材の一方の面に積層された内層の表面に、第2の樹脂層として、無孔質のポリウレタン樹脂からなる最外層が積層されたものである。図1および図2に示すように、最外層4は、シート状物1,1Aの表面11をなす樹脂層であり、シート状物に意匠性を付与したり、耐摩耗性、耐熱性、耐久性を向上させたりする目的で、内層の表面に形成される。そのため、最外層は無孔質層とする。
最外層の形成に用いられるポリウレタン樹脂は特に限定されるものでなく、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂などを挙げることができ、これらを1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐摩耗性および耐光堅牢性の点からポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。また、ポリウレタン樹脂の形態は、無溶剤系、ホットメルト系、溶剤系、水系を問わず、さらには、一液型、二液硬化型を問わず使用可能であり、具体的用途に応じて適宜選択することができる。
最外層のポリウレタン樹脂には、必要に応じて、本実施形態の効果を妨げずポリウレタン樹脂の物性を損なわない範囲内で、ウレタン化触媒、シランカップリング剤、充填剤、チクソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、染料、顔料、難燃剤、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、結晶水含有化合物、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤、艶消し剤、触感向上剤、スリップ改良剤、架橋剤、増粘剤、レベリング剤などの任意成分を、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
最外層の熱溶融温度は、180〜240℃であることが好ましく、より好ましくは200〜220℃である。熱溶融温度が180℃以上であることにより、針エンボス加工時に最外層が溶融して開口部にバリが生じることを防ぐことができる。熱溶融温度が240℃以下であることにより、風合いが粗硬になることを防ぐことができる。
また、最外層の熱溶融温度は、上述の内層の軟化温度に比べて高温である。最外層の熱溶融温度は、内層の軟化温度に対して、10〜100℃高いことが好ましく、15〜50℃高いことがより好ましい。これにより、針エンボス加工時に、内層が軟化して形成した開口部に、最外層は溶融することなく押し込まれることとなり、開口周縁部の最外層が、開口中心に向かって傾斜する。そのため、開口部にバリが生じることがなく、よって、耐摩耗性、表面触感の良好な開口部を有するシート状物とすることができる。
最外層の熱溶融温度は以下の方法により求めることができる。すなわち、最外層のみを単体で、シート状物での最外層の厚みと同等の厚みを持つフィルムとして作製する。得られた樹脂層のフィルムを7mm四方に裁断し、これを示差走査熱量計(EXSTAR DSC6200、株式会社日立ハイテクサイエンス製)により、JIS K−7121「プラスチックの転移温度測定方法」に従い、加熱速度10℃/分にて昇温した時の融解ピークを測定する。フィルムを10枚作製し、それぞれの融解ピークの温度を測定し、これらの平均値を算出することで熱溶融温度を求めることができる。
最外層は、通常、内層よりも薄い層である。最外層の厚さ(非開口部における最外層の厚さ)は、特に限定されず、例えば3〜50μmでもよく、5〜40μmでもよく、10〜40μmでもよい。最外層の厚さが3μm以上であることにより、均一な樹脂層を形成することができ、部分的に最外層が欠落することがないため、耐摩耗性が損なわれることを防ぐことができる。最外層の厚さが50μm以下であることにより、風合いが粗硬になることを防ぐことができる。
最外層の厚さは以下の方法により求めることができる。すなわち、シート状物の垂直断面をマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、デジタルHFマイクロスコープVH−8000)で100倍に拡大して観察し、最外層の厚さを測定する。最外層の厚さは任意の5カ所について測定し、これらの平均値を算出することで求める。
次に、本実施形態に係るシート状物の製造方法について説明する。該製造方法は、繊維質基材の片面に、少なくとも最外層と内層の2層からなるポリウレタン樹脂層を積層してなるシート状物に、針エンボス加工によって複数の開口部を形成する方法であり、前記最外層が無孔質であり、且つ、最外層の熱溶融温度>針エンボス加工温度>内層の軟化温度の関係を満たす方法である。
最外層の熱溶融温度>針エンボス加工温度>内層の軟化温度の関係を満たすことにより、針エンボス加工により開口部が形成される際に、最外層は針エンボス加工により溶融することなく開口部に押し込まれる。これにより、開口周縁部で最外層が開口中心に向かって傾斜することとなる。これにより、開口部にバリが生じることがないため、開口部を有しているにもかかわらず、耐摩耗性、表面触感が良好なシート状物となる。また、針エンボス加工工程のみで、このような開口部を形成することができるため、工程負荷が軽減される。
一実施形態に係る製造方法は、
(1)最外層用樹脂液を離型性基材上に塗布して、ポリウレタン樹脂からなる最外層を形成する工程、
(2)最外層上に内層用樹脂液を塗布して、ポリウレタン樹脂からなる内層を形成する工程、
(3)内層と繊維質基材とを貼り合わせる工程、
(4)離型性基材を剥離する工程、および、
(5)針エンボス加工により、開口部を形成する工程、
を含むものである。
まず、離型性基材上に最外層用樹脂液を塗布して、ポリウレタン樹脂からなる最外層を形成する。
離型性基材としては、特に限定されるものでなく、ポリウレタン樹脂に対して離型性を有する基材、あるいは離型処理を施した基材であればよく、例えば、離型紙、離型処理布、撥水処理布、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂などからなるオレフィンシートまたはフィルム、フッ素樹脂シートまたはフィルム、離型紙付きプラスチックフィルムなどを用いることができる。離型性基材は凹凸模様を有していてもよく、このような離型性基材を用いることにより、シート状物の表面に意匠性を付与することができる。
離型性基材上に最外層用樹脂液を塗布する方法としては、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、リバースロールコーター、スプレーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、コンマコーターなどの装置を用いた方法を挙げることができる。なかでも均一な薄膜層の形成が可能であるという点で、リバースロールコーター、ナイフコーター、コンマコーターによる塗布が好ましい。
最外層用樹脂液の塗布厚は、前記最外層の厚さに応じて適宜設定すればよく、特に限定されず、例えば15〜250μmでもよく、25〜200μmでもよい。最外層用樹脂液の塗布厚をこの範囲に設定することにより、上記の例えば3〜50μmの厚さを有する最外層を形成することができる。
最外層を離型性基材に塗布した後、必要により熱処理を行う。熱処理は、最外層用樹脂液中の溶媒を蒸発させ、樹脂を乾燥させるとともに、熱処理によって架橋反応を起こす架橋剤を用いる場合や、二液硬化型の樹脂を用いる場合にあっては、反応を促進し、十分な強度を有する皮膜を形成するために行われる。
熱処理温度は特に限定されるものではなく、任意で用いられる添加剤に応じて適宜設定することができ、例えば50〜150℃でもよく、60〜120℃でもよい。熱処理温度が50℃以上であることにより、熱処理に時間がかかって工程負荷が大きくなったり、樹脂の架橋が不十分となって耐摩耗性が不良となったりすることを防ぐことができる。熱処理温度が150℃以下であることにより、シート状物の風合いが粗硬になることを防ぐことができる。また、熱処理時間も特に限定されず、例えば2〜20分間でもよく、2〜10分間でもよい。熱処理時間が2分間以上であることにより、樹脂の架橋が不十分となることを防ぐことができる。熱処理時間が20分間以下であることにより、加工速度が遅くなることを防ぐことができる。
次いで、最外層上に内層用樹脂液を塗布して、ポリウレタン樹脂からなる内層を形成する。
最外層上に内層用樹脂液を塗布する方法としては、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、リバースロールコーター、スプレーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、コンマコーターなどの装置を用いた方法を挙げることができる。なかでも均一な薄膜層の形成が可能であるという点で、リバースロールコーター、ナイフコーター、コンマコーターによる塗布が好ましい。
内層用樹脂液の塗布厚は、前記内層の厚さに応じて適宜設定すればよく、特に限定されず、例えば20〜250μmでもよく、100〜200μmでもよい。内層用樹脂液の塗布厚をこの範囲に設定することにより、上記の例えば5〜400μmの厚さを有する内層を形成することができる。
内層用樹脂液を離型性基材に塗布した後、必要により熱処理を行う。熱処理は、内層用樹脂液中の溶媒を蒸発させ、樹脂を乾燥させるとともに、熱処理によって架橋反応を起こす架橋剤を用いる場合や、二液硬化型の樹脂を用いる場合にあっては、反応を促進し、十分な強度を有する皮膜を形成するために行われる。
熱処理温度は特に限定されるものではなく、任意で用いられる添加剤に応じて適宜設定することができ、例えば50〜150℃でもよく、60〜130℃でもよい。熱処理温度が50℃以上であることにより、熱処理に時間がかかったり、樹脂の架橋が不十分となったりすることを防ぐことができる。熱処理温度が150℃以下であることにより、シート状物の風合いが粗硬になることを防ぐことができる。また、熱処理時間も特に限定されず、例えば2〜20分間でもよく、2〜10分間でもよい。熱処理時間が2分間以上であることにより、樹脂の架橋が不十分となることを防ぐことができる。熱処理時間が20分間以下であることにより、加工速度が遅くなることを防ぐことができる。
次いで、内層と繊維質基材とを貼り合わせる。貼り合わせに際しては、上述のように、接着層を介してもいいし、直接積層してもよい。接着層を設ける場合、例えば内層の一部を構成する表皮層上に接着剤を塗布してから繊維質基材に貼り合わせればよい。
接着剤を塗布する方法は、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、リバースロールコーター、スプレーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、コンマコーターなどの装置を用いた方法を挙げることができる。
次いで、最外層から離型性基材を剥離する。離型性基材を剥離することで、最外層と内層と繊維質基材との積層体(以後、単に、積層体ともいう。)が得られる。
なお、内層として接着層以外の樹脂層を複数形成する場合には、最外層上に内層として第1の樹脂層を形成した後、接着剤を塗布する前に、該第1の樹脂層の表面にさらにポリウレタン樹脂組成物を塗布して形成する方法を採用することができる。塗布する方法および塗布後の熱処理については、上述の内層の形成と同様の方法が採用できる。
なお、最外層と内層と繊維質基材との積層体を製造するための方法は、従来公知のポリウレタン合成皮革と同様の製造方法を採用することができ、上記方法に限定されるものではない。従来公知のポリウレタン合成皮革の製造方法としては、例えば、(1)離型性基材上に内層用樹脂液を塗布して内層を形成する、(2)内層と繊維質基材とを貼り合わせる、(3)離型性基材を剥離する、(4)最外層用樹脂液を内層上に塗布して最外層を形成する方法が挙げられる。
最後に、上記積層体に針エンボス加工を施す。本実施形態において、針エンボス加工は、最外層の表面側から施す。すなわち、加熱した針エンボス型を最外層の表面側から積層体に押圧する。これにより、積層体、即ちシート状物の表面に複数の開口部が形成される。針エンボス装置は、複数の針を有するロールと平坦面を有するロールとを備える針エンボス装置、互いの凹凸模様が対向部において重なり合うように製造された一対のエンボスロールを備えるエンボス装置、あるいはまた、エンボスロールではなくエンボス板を備えるエンボス装置など、公知の針エンボス装置を制限なく用いることができる。
針エンボス加工温度(すなわち、加熱押圧時の積層体の熱処理温度に相当する。以後、針エンボス型の加熱温度ともいう。)は、内層の軟化温度よりも高く設定する。針エンボス型の加熱温度と内層の軟化温度との差は、50℃以下であることが好ましく、より好ましくは40℃以下である。この差は、例えば10℃以上でもよい。針エンボス型の加熱温度が内層の軟化温度よりも高い温度であると、針エンボス加工により開口を容易に形成することができる。
また、針エンボス加工温度は、最外層の熱溶融温度よりも低く設定する。最外層の熱溶融温度と針エンボス型の加熱温度の差は、10℃以上であることが好ましく、より好ましくは20℃以上である。この差は、例えば50℃以下でもよく、30℃以下でもよい。針エンボス型の加熱温度が最外層の熱溶融温度よりも低い温度であると、開口部の開口周縁部はその内壁が無孔質のポリウレタン樹脂からなる最外層で覆われることになり、得られるシート状物の耐摩耗性、表面触感を良好なものとすることができる。
加熱した針エンボス型を積層体に押圧する時間は、針エンボス型の形状によって適宜設定すればよい。ロール状エンボス型を備えるエンボス装置の場合、押圧時間(加工速度)は例えば0.5〜20m/分でもよく、1〜10m/分でもよい。また、平板状エンボス型を備えるエンボス装置の場合、押圧時間は例えば30〜120秒でもよく、50〜90秒でもよい。押圧時間が下限値以上(加工速度が上限値以下)であることにより、針エンボス加工により開口を容易に形成することができる。押圧時間が上限値以下(加工速度が下限値以上)であることにより、開口部にバリが生じ表面触感が損なわれたり、風合いが粗硬になったりすることを防ぐことができる。
また、針エンボス型と受けロール(受け板)とのクリアランスは、積層体からポリウレタン樹脂層の厚み(内層と最外層の厚みの和)の1〜1.5倍を引いた数値で管理することが好ましい。クリアランスをこの範囲で管理することにより、ポリウレタン樹脂層にのみ開口部が形成され、得られるシート状物の強度が損なわれることを防ぐことができる。
なお、押圧時の圧力や、積層体の導入張力など諸条件については、所望の開口部が得られるように適宜設定すればよい。ここで、導入張力とは、積層体をエンボス装置に導布する際の張力のことである。
かくして、本実施形態に係るシート状物が得られる。
本実施形態に係るシート状物は、表面に複数の開口部を有する。開口部は、上記の針エンボス加工により形成されるものである。図1および図2に示すように、開口部5は、最外層4の表面から最外層4と内層3(図2の例では表皮層31および接着層32)を貫通して設けられている。開口部は、少なくとも最外層と内層を貫通して設けられることが好ましく、最外層の表面から繊維質基材の裏面まで貫通するように形成することも可能であるが、耐摩耗性の観点から、繊維質基材の裏面には貫通させないことが好ましく、より好ましくは最外層と内層からなる樹脂層のみを貫通し、繊維質基材には達しないことである。
図1および図2に示すように、開口部5は、最外層4が開口中心に向かって落ち込むように傾斜してなる開口周縁部51を有して形成されている。これにより、得られるシート状物の耐摩耗性、表面触感が良好なものとなる。詳細には、図1に示すように、開口部5は、最外層4を貫通する貫通部52と、その周りの開口周縁部51とを備え、開口周縁部において最外層4が開口中心に向かって下方にテーパ状に傾斜している。すなわち、開口周縁部51は、最外層4がテーパ状に傾斜してなるテーパ状部を備える。なお、この例では、内層3は開口部5において最外層4により被覆されており、内層3は開口部5の内壁として露出していない。
図2に示す例でも同様に、開口部5は、最外層4を貫通する貫通部52の周りに、最外層4が開口中心に向かって下方に傾斜してなるテーパ状の開口周縁部51を有している。なお、図2の例では、開口部5は更に接着層32を貫通して設けられており、表皮層31は最外層4により被覆されているものの、接着層32は、最外層4により被覆されておらず、開口部5の底部において内壁として露出している。
開口周縁部の開き角度は、45〜60度であることが好ましく、より好ましくは50〜55度である。ここで、開口周縁部の開き角度とは、図1および図2に示すように、テーパ状をなす開口周縁部51のテーパ角度θである。開口周縁部の開き角度が45度以上であることにより、耐摩耗性、表面触感が良好なものとなり、また、この開き角度が60度以下であることにより、意匠性が良好なものとなる。
開口周縁部の開き角度は、以下のように求めることができる。すなわち、シート状物の垂直断面をマイクロスコープ(デジタルHFマイクロスコープVH−8000、キーエンス株式会社製)で100倍に拡大して観察し、開口周縁部の開き角度を測定する。なお、開き角度は任意の5カ所について測定し、これらの平均値を算出することで求める。
開口部の形状は特に限定されず、例えば円、三角、四角などの幾何学模様から意匠性を考慮して選択することができる。強度の観点から、円形が好ましい。また、開口部の大きさは0.001〜0.197mm(開口部が円形である場合、50〜500μmの平均孔径に該当)が好ましく、より好ましくは0.002〜0.008mm(開口部が円形である場合、55〜100μmの平均孔径に該当)である。開口部の大きさが0.001mm以上であることにより、シート状物の透湿度を高めることができ、長時間着座した場合に蒸れやべたつきを抑える効果を高めることができる。開口部の大きさが0.197mm以下であることにより、シート状物の強度および耐摩耗性の低下を抑えることができる。なお、開口部の形状が真円以外の場合は、開口部の長径を孔径とする。
ここで、開口部の大きさは、図1および図2に示すように、シート状物1,1Aの表面11における開口部5の面積であり、開口部の形状が円形の場合、符号Dを孔径として算出される面積である。
シート状物の表面における開口部の占める割合である開口率は0.2%以上であることが好ましく、より好ましくは0.2〜10%であり、さらに好ましくは0.4〜5%である。開口率が0.2%以上であることにより、車両内装材として十分な透湿度が得られる。一方、開口率が10%以下であることにより、強度および耐摩耗性の観点で優れる。ここで、開口率は、シート状物の表面を平面的にみたときの開口部を含む当該表面の全面積に対する、当該表面内に存在する複数の開口部の総面積の比率である。
また、開口部の分布状態(平均密度、即ち、シート状物の表面の単位面積に占める開口部の個数)は、500000〜999500個/mが好ましく、より好ましくは600000〜900000個/mである。平均密度が500000個/m以上であることにより、シート状物の透湿度を高めることができ、長時間着座した場合の蒸れやべたつきを抑える効果を高めることができる。平均密度が999500個/m以下であることにより、シート状物の強度および耐摩耗性の低下を抑えることができる。
このような開口部を有するシート状物は、透湿度が2000g/m・h以上であることが好ましい。透湿度は、より好ましくは2500g/m・h以上である。
上述のように構成することにより、本実施形態によれば、透湿度が2000g/m・h以上となるように開口部を設けたものでありながら、車両内装材用途として十分な耐摩耗性をもつシート状物を提供することができる。
以下、実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の「部」は質量基準であるものとする。また、得られたシート状物の評価は、以下の方法に従い行った。
[透湿度]
JIS L1099 A−1法に準拠して測定した。測定値が2000g/m・h以上であれば、シート状物として十分な透湿度であるといえ、数値が大きいほど透湿度が高いことを示す。
[耐摩耗性]
幅70mm、長さ300mmの大きさの試験片をタテ、ヨコ各方向からそれぞれ1枚採取し、裏面に幅70mm、長さ300mm、厚み10mmの大きさのウレタンフォームを添えた。ウレタンフォームの下面中央に直径4.5mmのワイヤーを設置した状態で、平面摩耗試験機T−TYPE(株式会社大栄科学精器製作所製)に固定し、綿布(JIS L3102:綿帆布No.6)をかぶせた摩擦子がワイヤー上をワイヤーと平行に往復動するように、該摩擦子に荷重19.6Nをかけて摩耗試験を行った。摩擦子は試験片の表面上140mmの間を60往復/分の速さで3000回往復摩耗させた。試験片を下記の基準に従って判定した。△以上で合格である。
(判定基準)
○:樹脂層に亀裂、破れがない
△:樹脂層に亀裂が発生した
×:樹脂層に破れが発生した
[表面触感]
パネラーによる触感による官能評価を行い、下記の基準に従って判定した。△以上で合格である。
(判定基準)
○:全面において、滑らかな触感である
△:開口部において、やや滑らかさに欠ける触感である(バリの存在をやや感じる)
×:開口部において、滑らかさに欠ける触感である(バリの存在を感じる)
[耐熱性]
幅100mm、長さ100mmの大きさの試験片を1枚採取した。広口試薬瓶(共栓付250mL瓶、硬質ガラス製)の中に、試験片を試薬瓶の側面に沿わせて入れ、110℃に調整された乾燥機内に400時間静置して熱処理した。熱処理後、試薬瓶を乾燥機から取り出し室温まで冷却した後、試薬片を試薬瓶から取り出した。試験片を下記の基準に従って判定した。△以上で合格である。
(判定基準)
○:変化なし
△:ややシボ流れがみられる
×:明らかにシボ流れがみられる
[実施例1]
処方1(最外層用樹脂組成物)
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂 100部
(クリスボンNY−328、大日本インキ化学工業株式会社製)
ジメチルホルムアミド(DMF) 40部
カーボンブラック顔料 15部
(DIALAC BLACK L−1770S、大日本インキ化学工業株式会社製)
架橋剤 2部
(バーノックDN950、大日本インキ化学工業株式会社製)
調製方法
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂にカーボンブラック顔料、架橋剤を添加し撹拌、分散させた。次いで、ジメチルホルムアミドを加え、粘度を2000mPa・s(B型粘度計、ローター:No.3、10rpm、23℃)に調整して、最外層用樹脂組成物を調製した。
処方2(内層用樹脂組成物)
製造例1のウレタンポリオールプレポリマー 100部
ウレタン硬化剤 5部
(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)
カーボンブラック顔料 2部
(ポリトンブラック、大日本インキ化学工業株式会社製)
アミン系ウレタン化触媒 1部
(TOYOCAT−DT、TOSOH株式会社製)
当量比(ウレタン硬化剤のイソシアネート基/製造例1のウレタンポリオールプレポリマーの水酸基)は1.2であった。
調製方法
60℃に加熱溶融した製造例1のウレタンポリオールプレポリマーに、カーボンブラック顔料、アミン系ウレタン化触媒を添加し撹拌、分散させた。次いで、40℃に加熱溶融したウレタン硬化剤を添加し撹拌して、内層用樹脂組成物を調製した。なお調製後、直ちに、塗布操作に供した。
[製造例1]ウレタンポリオールプレポリマー
60℃に保温した1Lの4ツ口フラスコに、数平均分子量2000のポリエステルポリオール(クラレポリオールP2010、株式会社クラレ製)を80部、数平均分子量2000のポリカーボネートポリオール(クラレポリオールC2090、株式会社クラレ製)を50部、数平均分子量1000のポリエーテルポリオール(PTMG1000、三洋化成工業株式会社製)を10部入れて撹拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を15部入れてイソシアネート基が無くなるまで80℃にて撹拌し、ウレタンポリオールプレポリマーを得た。このとき、当量比(各ポリオールの水酸基の和/MDIのイソシアネート基)は1.25であった。また得られたウレタンポリオールプレポリマーの軟化温度は40℃、数平均分子量は17000であった。
上述の処方1に従い調製した最外層用樹脂組成物を、シボ調の凹凸模様を有する離型紙(R−51、リンテック株式会社製)に、コンマコーターにて厚さが200μmになるようにシート状に塗布し、乾燥機にて100℃で2分間熱処理して、最外層を形成した。最外層の厚さは40μm、熱溶融温度は204℃であった。
上述の処方2に従い調製した内層用樹脂組成物を、離型紙上に形成された最外層表面に、コンマコーターにて厚さが140μmとなるようにシート状に塗布し、乾燥機にて120℃で2分間熱処理後、該内層用樹脂組成物が粘稠性を有する状態のうちにポリエステルトリコット布に貼り合わせ、マングルにて5kg/mの荷重で圧締し、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で1日間エージング処理した後、離型紙を剥離して、最外層と内層と繊維質基材との積層体を得た。内層の厚さは150μm、軟化温度は176℃であった。
得られた積層体を、針エンボス装置(電気加熱式テストエンボス・カレンダー機、由利ロール株式会社製)で、加工温度:190℃、加工速度:5m/分、クリアランス:0.8mmにて、最外層側より針エンボス加工を施し、実施例1のシート状物を得た。得られたシート状物は、厚みが約1mmであり、最外層は無孔質層で、内層は多孔質層であった。また、表面に針エンボス加工による複数の開口部が最外層と内層を貫通して設けられ、各開口部は、最外層が開口中心に向かって落ち込むように傾斜してなる開口周縁部を持つものであった。開口部の大きさは0.008mm(孔径は100μm)、開口周縁部の開き角度は50度であり、開口部の分布状態(平均密度)は900000個/m、開口率0.79%であった。また、シート状物の透湿度、耐摩耗性、表面触感および耐熱性を評価したところ、透湿度は3000g/m・h、耐摩耗性の評価は○、表面触感の評価は○、耐熱性の評価は○であった。
[実施例2]
処方2の当量比を1.05とした以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
[実施例3]
処方2の当量比を1.1とした以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
[実施例4]
処方2の当量比を1.25とした以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
[実施例5]
処方1の架橋剤を5部、処方2の当量比を1.3とし、針エンボス加工温度を220℃とした以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
[実施例6]
処方1の架橋剤を6部、処方2の当量比を1.4とし、針エンボス加工温度を240℃とした以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
[実施例7]
処方2の当量比を1.07とした以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
[実施例8]
処方2の当量比を1.21とした以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
[実施例9]
処方2の当量比を1.28とした以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
[比較例1]
処方2の当量比を1.35、内層の厚さを170μm、針エンボス加工温度を240℃とした以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
[比較例2]
処方1の架橋剤を0部、処方2の当量比を1.3、内層の厚さを170μm、針エンボス加工温度を240℃とした以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
[比較例3]
最外層用樹脂組成物を機械発泡により1.2倍に発泡させた以外は、実施例1と同様にしてシート状物を得た。
Figure 2019112737
表1に示すように、実施例1〜9であると、透湿度が高いものでありながら、開口部にバリが発生しておらず、表面触感に優れるとともに、車両内装材用途として十分な耐摩耗性を有するものであった。なお、実施例6では、加工温度を高く設定する必要があり、加工性が劣っていた。
これに対し、比較例1では、最外層の熱溶融温度と内層の軟化温度が同じであり、内層を軟化させるためにこれよりも高い針エンボス加工温度としたため、最外層が溶融してバリが発生しており、表面触感および耐摩耗性に劣っていた。比較例2についても同様であった。比較例3は、最外層が多孔質層であったため、耐摩耗性および表面触感に劣っていた。
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
本実施形態に係るシート状物は、例えば、自動車用シート、天井材、ダッシュボード、ドア内張材、およびハンドルなどの自動車用内装材をはじめとした車両内装材、壁材等の建造物の内装材、ソファ、椅子などのインテリア資材、衣料、鞄、靴などの各種用途に用いることができる。
1,1A…シート状物、11…表面、2…繊維質基材、3…内層、31…表皮層、32…接着層、4…最外層、5…開口部、51…開口周縁部、52…貫通部

Claims (7)

  1. 繊維質基材と、前記繊維質基材の片面に積層されたポリウレタン樹脂からなる内層および最外層と、を備え、表面に複数の開口部を有するシート状物であって、
    前記最外層が無孔質であり、前記最外層の熱溶融温度が前記内層の軟化温度よりも高く、且つ、前記開口部は、前記最外層が開口中心に向かって傾斜してなる開口周縁部を含む、シート状物。
  2. 前記最外層の熱溶融温度が180〜240℃である、請求項1に記載のシート状物。
  3. 前記内層の軟化温度が140〜200℃である、請求項1または2に記載のシート状物。
  4. 前記開口周縁部の開き角度が45〜60度である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート状物。
  5. 前記開口部の大きさは0.001〜0.197mmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート状物。
  6. 前記開口部が、前記最外層と前記内層とを貫通して設けられ、シート状物の表面における開口部の占める割合である開口率が0.2%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート状物。
  7. 繊維質基材と、前記繊維質基材の片面に積層されたポリウレタン樹脂からなる内層および最外層と、を備えるシート状物に、針エンボス加工によって複数の開口部を形成する、開口部を有するシート状物の製造方法であって、
    前記最外層が無孔質であり、且つ、前記最外層の熱溶融温度が針エンボス加工温度よりも高く、且つ、前記針エンボス加工温度が前記内層の軟化温度よりも高い、シート状物の製造方法。
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