JP2019111732A - インクジェットヘッド、インクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents

インクジェットヘッド、インクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】より安定してインクを吐出することができるインクジェットヘッド、インクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの製造方法を提供する。【解決手段】インクジェットヘッド(1)は、圧電体の壁面の変形に応じて内部に貯留されたインクの圧力を変動させる圧力室(121)と、上記壁面に電圧を印加するための電極(123)と、を有する圧力室部材(12)と、圧力室に連通するインク流路(201)と、電極に電気的に接続されている配線(202)と、を有する配線形成部材(20)と、を備え、圧力室部材の第1接着面(S1)と、配線形成部材の第2接着面(S2)とが接着剤(50)により接着されており、第1接着面及び第2接着面の少なくとも一方は、凹凸形状を有し、当該凹凸形状により、第1接着面及び第2接着面の上記少なくとも一方に沿って接着剤が流れ込む空間(SP)が設けられている。【選択図】図6

Description

本発明は、インクジェットヘッド、インクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの製造方法に関する。
従来、インクジェットヘッドに設けられたノズルからインクを吐出させて画像などを形成するインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置のインクジェットヘッドとしては、変形に応じて内部に貯留されたインクの圧力を変動させる圧力室が設けられた圧力室部材を有し、圧力室内のインクの圧力の変動に応じて圧力室に連通するノズルからインクを吐出させるものがある。圧力室部材としては、圧力室の壁面をなす圧電体と、当該壁面に設けられた電極とを有し、電極に印加された電圧に応じて圧力室の壁面を変形させることで圧力室内のインクの圧力を変動させるものが知られている(例えば、特許文献1、2)。
このような圧力室部材を有するインクジェットヘッドでは、上記の電極に電気的に接続される配線が設けられた配線形成部材が、圧力室部材のうちノズルとの接続がなされる側とは反対側に接続される。また、この配線形成部材には、圧力室に連通するインク流路が設けられており、当該インク流路を介して圧力室にインクが供給される。
圧力室部材に配線形成部材を接続させる方法としては、圧力室部材及び配線形成部材の少なくとも一方の表面に流動性を有する状態の接着剤を塗布して、圧力室部材と配線形成部材とを接着剤を介して所定の圧力で圧着し、その後接着剤を硬化させることで接着する方法が広く用いられている。
特許第4983582号公報 特許第4622359号公報
しかしながら、上記従来の方法では、圧力室部材と配線形成部材とを圧着する際に接着剤が圧力室やインク流路に流入しやすい。接着剤が圧力室やインク流路に流入すると、インクの流動が妨げられたり、圧力室内のインクに所望の圧力を印加できなくなったりするため、ノズルから安定してインクを吐出することができなくなるという課題がある。
この発明の目的は、より安定してインクを吐出することができるインクジェットヘッド、インクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1に記載のインクジェットヘッドの発明は、
インクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドであって、
圧電体の壁面の変形に応じて内部に貯留されたインクの圧力を変動させる圧力室と、前記壁面に電圧を印加するための電極と、を有し、前記圧力室が前記ノズルに連通している圧力室部材と、
前記圧力室に連通するインク流路と、前記電極に電気的に接続されている配線と、を有する配線形成部材と、
を備え、
前記圧力室部材のうち前記圧力室の開口部が設けられている第1接着面と、前記配線形成部材のうち前記インク流路の開口部が設けられている第2接着面とが接着剤により接着されており、
前記第1接着面及び前記第2接着面の少なくとも一方は、凹凸形状を有し、当該凹凸形状により、前記接着剤が流れ込む空間が設けられている。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記電極の表面の一部は、前記第1接着面の一部をなしており、
前記配線の表面の一部は、前記第2接着面の一部をなしており、
前記電極と前記配線とは、前記接着剤に含まれている導電性部材により電気的に接続されており、
前記凹凸形状における凹部は、前記電極の表面のうち前記接着剤を介して前記配線と対向している部分、及び前記配線の表面のうち前記接着剤を介して前記電極と対向している部分の少なくとも一方に設けられている。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記圧力室部材は、前記圧力室が設けられ表面に前記電極が形成されている第1基材を有し、
前記配線形成部材は、前記インク流路が設けられ表面に前記配線が形成されている第2基材を有し、
前記凹凸形状における凹部は、前記第1基材の表面及び前記第2基材の表面の少なくとも一方に設けられている。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記第1接着面及び前記第2接着面の少なくとも一方に、前記凹凸形状における凹部が互いに分離した状態で複数設けられている。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記凹凸形状における凹部は、前記第1接着面における前記圧力室の開口部を囲む領域に設けられている。
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記凹凸形状における凹部は、前記第2接着面における前記インク流路の開口部を囲む領域に設けられている。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記凹凸形状における凹部の内壁面の少なくとも一部は、当該凹部が設けられている部材の表面のうち当該凹部に隣接する部分よりも、流動性を有する状態の前記接着剤に対する濡れ性が小さい。
また、上記目的を達成するため、請求項8に記載のインクジェット記録装置の発明は、
請求項1から7のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを備える。
また、上記目的を達成するため、請求項9に記載のインクジェットヘッドの製造方法の発明は、
インクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドの製造方法であって、
圧電体の壁面の変形に応じて内部に貯留されたインクの圧力を変動させる圧力室と、前記壁面に電圧を印加するための電極と、を有し、前記圧力室が前記ノズルに連通する圧力室部材を製造する圧力室部材製造工程、
インクが通るインク流路と、配線と、を有する配線形成部材を製造する配線形成部材製造工程、
前記インク流路が前記圧力室に連通し、かつ前記配線が前記電極に電気的に接続されるように、前記圧力室のうち前記圧力室の開口部が設けられている第1接着面と、前記配線形成部材のうち前記インク流路の開口部が設けられている第2接着面とを接着剤により接着する接着工程、
を含み、
前記圧力室部材製造工程及び前記配線形成部材製造工程では、前記接着工程において前記接着剤が流れ込む空間が設けられるように、前記第1接着面及び前記第2接着面の少なくとも一方に凹凸形状を形成する。
本発明に従うと、より安定してインクを吐出することができるという効果がある。
インクジェット記録装置の概略構成を示す図である。 ヘッドユニットの内部構成を示す斜視図である。 インクジェットヘッドの主要部の分解斜視図である。 圧力室基板の拡大平面図である。 配線基板の拡大平面図である。 ヘッドチップ及び配線基板の断面図である。 図6のうち凹部の近傍範囲を拡大して示す断面図である。 インクジェットヘッドの製造処理を示すフローチャートである。 配線基板製造処理を示すフローチャートである。 配線基板製造処理を説明する模式断面図である。 圧力室基板製造処理を示すフローチャートである。 圧力室基板製造処理を説明する模式断面図である。 変形例に係るヘッドチップ及び配線基板の断面図である。 変形例に係るヘッドチップ及び配線基板の他の例を示す断面図である。
以下、本発明のインクジェットヘッド、インクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの製造方法に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態であるインクジェット記録装置100の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置100は、搬送部80と、ヘッドユニット90などを備える。
搬送部80は、図1のX方向に延びる回転軸を中心に回転する2本の搬送ローラー81、82により内側が支持された輪状の搬送ベルト83を備える。搬送部80は、搬送ベルト83の搬送面上に記録媒体Mが載置された状態で搬送ローラー81が図示略の搬送モーターの動作に応じて回転して搬送ベルト83が周回移動することで記録媒体Mを搬送ベルト83の移動方向(搬送方向;図1のY方向)に搬送する。
記録媒体Mは、一定の寸法に裁断された枚葉紙とすることができる。記録媒体Mは、図示略の給紙装置により搬送ベルト83上に供給され、ヘッドユニット90からインクが吐出されて画像が記録された後に搬送ベルト83から所定の排紙部に排出される。なお、記録媒体Mとしては、ロール紙が用いられてもよい。また、記録媒体Mとしては、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛又はシート状の樹脂等、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
ヘッドユニット90は、搬送部80により搬送される記録媒体Mに対して画像データに基づいて適切なタイミングでインクを吐出して画像を記録する。本実施形態のインクジェット記録装置100では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット90が記録媒体Mの搬送方向上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。なお、ヘッドユニット90の数は3つ以下又は5つ以上であってもよい。
図2は、ヘッドユニット90の内部構成を示す斜視図である。
ヘッドユニット90は、保持基板91と、保持基板91を貫通する開口に篏合した状態で固定部材92により保持基板91に固定された複数の(ここでは6つの)インクジェットヘッド1とを有する。インクジェットヘッド1は、外装部材40の内部に主要な構成要素が収容された構成を有している。また、インクジェットヘッド1は、ノズルの開口部が設けられたノズル開口面が保持基板91の開口から下方に向けて露出した状態で保持基板91に固定されている。
インクジェットヘッド1では、インクを吐出する複数のノズル111(図3)が記録媒体Mの搬送方向と交差する方向(本実施形態では搬送方向と直交する幅方向、すなわちX方向)に配列されている。また、各インクジェットヘッド1では、X方向に一次元配列されたノズル111からなるノズル列が2列設けられており、当該複数のノズル列は、ノズルの位置が互いにX方向にずれる位置関係で設けられている。なお、ノズル列の数は2列に限られず、1列又は3列以上であっても良い。
また、インクジェットヘッド1には、インクジェットヘッド1内に供給されるインクが流入するインレット41と、インクジェットヘッド1から排出されるインクが流出するアウトレット42とが設けられている。
各ヘッドユニット90における6つのインクジェットヘッド1は、ノズルのX方向についての配置範囲が、搬送ベルト83上の記録媒体Mのうち画像が記録可能な領域のX方向についての幅をカバーするように千鳥格子状に配置されている。このようにインクジェットヘッド1が配置されたインクジェット記録装置100では、ヘッドユニット90を固定した状態でインクジェットヘッド1から画像データに応じた適切なタイミングでインクを吐出することで、搬送される記録媒体M上に画像を記録することができる。すなわち、インクジェット記録装置100は、シングルパス方式で画像を記録する。
次に、インクジェットヘッド1の構成について説明する。
図3は、インクジェットヘッド1の主要部の分解斜視図である。
図3では、インクジェットヘッド1の構成部材のうち、外装部材40の内部に収容されている主要な構成部材が示されている。具体的には、図3では、ノズル基板11及び圧力室基板12(圧力室部材)を有するヘッドチップ10と、ヘッドチップ10に接着された配線基板20(配線形成部材)と、配線基板20に電気的に接続されたFPC30(Flexible Printed Circuit)とが示されている。図3では、ノズル開口面が上方となるように、すなわち図2とは上下が反転されるように各部材が描かれている。以下では、各基板の−Z方向側の面を上面、+Z方向側の面を下面とも記す。
ヘッドチップ10は、X方向に長尺な直方体形状の部材であり、ノズル111が設けられたノズル基板11と、ノズル111に連通する圧力室121が設けられた圧力室基板12とが積層された構造を有している。
ノズル基板11は、厚さ方向(Z方向)に貫通する孔であるノズル111が千鳥格子状の配置で2列設けられているシリコン基板である。ノズル基板11の厚さは、例えば数十μmから数百μm程度とされる。
なお、ノズル111の内壁面は、Z方向に垂直な断面積が、インク吐出側の開口部に近いほど小さくなるようなテーパー形状を有していても良い。また、ノズル基板11は、ポリイミド等の樹脂や、金属などにより構成されていても良い。
圧力室基板12は、セラミックスの圧電体(電圧の印加に応じて変形する部材)からなる基材120(第1基材)を有している。具体的には、圧力室基板12は、直方体形状の板状の圧電体からなる基材120を加工することで基材120に圧力室121を設け、圧力室121の壁面等に金属の電極123(図4)を形成することで製造された基板である。圧力室基板12の上面及び下面の形状は、ノズル基板11の上面及び下面の形状とほぼ同一である。
ここで、セラミックスは、無機物を焼結して得られた材料である。このようなセラミックスからなる圧電体の例としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛などが挙げられる。本実施形態の圧力室基板12では、PZTからなる基材120が用いられている。
圧力室121は、基材120のうちZ方向から見てノズル111と重なる位置に各々設けられた、基材120をZ方向に貫通する孔である。したがって、圧力室基板12では、複数の圧力室121がX方向に沿って2つの列をなすように千鳥格子状に配列されている。圧力室121は、X−Y平面に沿った断面がY方向に長い矩形をなしている。各圧力室121には、配線基板20に設けられたインク流路201を介してインクが供給される。
図4は、圧力室基板12の拡大平面図である。図4(a)は、圧力室基板12の基材120うち圧力室121の開口部が設けられた下面(以下、圧力室開口面と記す)を図3の下方から(+Z方向側から)見た平面図である。また、図4(b)は、図4(a)の圧力室121の近傍部分をさらに拡大して示した平面図である。
図4(a)に示されるように、各圧力室121は、X方向に隣り合う圧力室121との間が圧電体の隔壁122により仕切られている。また、各圧力室121の隔壁122の内壁面から、圧力室開口面のうち圧力室121の開口部の周辺領域にかけて、金属の電極123が設けられている。詳しくは、電極123は、圧力室121の内壁面に設けられた駆動電極1231(図6)と、駆動電極1231に接続された状態で圧力室開口面上に設けられた接続電極1232とからなる。駆動電極1231は、圧力室121の4面の内壁側面のうち、+Y方向側の端面を除く3面に設けられている。なお、圧力室121の4面の内壁側面すべてに駆動電極1231が設けられていても良い。
図4(a)では、電極123のうち接続電極1232が描かれている。接続電極1232は、圧力室開口面のうち圧力室121の開口部から−Y方向に延びる部分と、圧力室121の開口部に沿って当該開口部を囲む部分とからなる。接続電極1232は、図3に示される配線基板20の配線202、及びFPC30の接続配線31を介して外部の駆動回路に電気的に接続される。
圧力室基板12を構成する基材120及び電極123のうち、配線基板20側に露出している最表面(図4(a)に表されている面)を、以下では第1接着面S1と記す。すなわち、第1接着面S1は、基材120の表面と、電極123のうち接続電極1232の表面とからなり、圧力室121の開口部が設けられている面である。
圧力室基板12では、接続電極1232を介して駆動電極1231に印加された駆動信号に応じて隔壁122がシェアモード型の変位を繰り返すことで、圧力室121内のインクの圧力が変動する。この圧力の変動に応じて、圧力室121内のインクがノズル111から吐出される。
なお、図4(a)におけるX方向について一つ置きの圧力室121の形成位置に、圧力室121に代えて、インクが供給されない空気室を設けても良い。このような構成とすることで、一の圧力室121に隣接する隔壁122が変形した際に、他の圧力室121に当該変形の影響が及ばないようにすることができる。
また、図4(b)に示されるように、電極123の接続電極1232のうち圧力室121の開口部に隣接する部分の表面には、圧力室121の開口部を囲む矩形の枠状の領域に溝状の凹部Raが設けられている。
図3に示されるように、配線基板20は、接着剤を介してヘッドチップ10の下面に接着されている。配線基板20は、平板上の基材200(第2基材)と、基材200の表面に設けられた配線202とからなる。基材200は、ヘッドチップ10との接着領域を確保する観点からヘッドチップ10(圧力室基板12)よりも上面及び下面の面積が大きくなっている。基材200としては、例えばガラス、セラミックス、シリコン、プラスチックなどを用いることができる。
配線基板20の基材200には、Z方向から見て圧力室基板12の複数の圧力室121と重なる位置に複数のインク流路201が設けられている。各インク流路201は、圧力室121と同様に、X−Y平面に沿った断面がY方向に長い矩形をなしている。また、インク流路201の断面は、圧力室121の断面よりも僅かに大きくなっている。また、基材200の上面には、複数のインク流路201の各々の端部から配線基板20の端部に向かって−Y方向に延びる複数の配線202が設けられている。
配線基板20の下面には、図示しないインクマニホールド(共通インク室)が接続されており、当該インクマニホールドからインク流路201にインクが供給される。
また、配線基板20と圧力室基板12とが積層された積層基板の表面、及びインク流路201や圧力室121の内壁面には、図示しない保護膜が設けられている。これにより、インク流路201や圧力室121がインクにより浸食されたり、配線基板20や圧力室基板12の表面に付着したインクがインク流路201や圧力室121に侵入してインクの漏れが生じたりする不具合の発生が抑制される。保護膜としては、特には限られないが、例えばポリパラキシリレンといった有機保護膜や、Zr、Ta、Hf、Si等を含む無機酸化物又は無機窒化物からなる無機保護膜を用いることができる。
配線基板20のうち配線202が設けられている端部には、FPC30が、例えばACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電フィルム)を介して接続される。この接続により、配線基板20の複数の配線202と、FPC30上の複数の接続配線31とが、一対一で対応するようにそれぞれ電気的に接続される。
図5は、配線基板20の拡大平面図である。図5(a)は、配線基板20の基材200の上面のうちインク流路201の周辺部分を図3の上方から(−Z方向側から)見た平面図である。また、図5(b)は、図5(a)のインク流路201の近傍部分をさらに拡大して示した平面図である。
図5(a)に示されるように、配線基板20の上面では、配線202が、複数のインク流路201の各々の開口部から−Y方向に延びるように設けられている。配線202は、配線基板20と圧力室基板12とを貼り合わせたときに、その一部が圧力室基板12の接続電極1232と対向するような位置に設けられている。
配線基板20を構成する基材200及び配線202のうち、圧力室基板12側に露出している最表面(図5(a)に表されている面)を、以下では第2接着面S2と記す。すなわち、第2接着面S2は、基材200の表面と、配線202の表面とからなり、インク流路201の開口部が設けられている面である。
また、図5(b)に示されるように、配線202のうち圧力室121の開口部に隣接する部分の表面には、圧力室121の開口部に沿ってX方向に延びる領域に溝状の凹部Rbが設けられている。
以下では、凹部Ra及び凹部Rbを互いに区別しない場合には、凹部Rと記す。
図6は、ヘッドチップ10及び配線基板20の断面図である。図6(a)は、図4及び図5におけるA−A線での断面図であり、図6(b)は、図4及び図5におけるB−B線での断面図である。
図6(a)及び図6(b)に示されるように、ヘッドチップ10の圧力室基板12と配線基板20とは、導電性粒子51(導電性部材)を含む接着剤50を介して接着されている。圧力室基板12と配線基板20とは、圧力室基板12又は配線基板20に液状の接着剤を塗布した上で圧力室基板12と配線基板20とを所定の圧力で圧着し、その後接着剤を硬化させることで接着される。
接着剤50としては、特には限らないが、エポキシ樹脂を用いたものを用いることができる。また、接着剤50としては、流動性を有する状態から加熱することで硬化する熱硬化性樹脂を用いることができる。ただし、紫外線により硬化する紫外線硬化性樹脂等、所定のエネルギーの照射により硬化する他の樹脂を用いても良い。
Z方向から見て圧力室基板12の電極123(接続電極1232)と配線基板20の配線202とが重なる範囲では、接続電極1232と配線202との間に導電性粒子51が挟持された状態となっており、この導電性粒子51により接続電極1232と配線202とが電気的に接続されている。また、接続電極1232と配線202との間では、接着時の圧着の圧力によって、導電性粒子51が元の形状から所定の割合だけ押し潰された状態となっており、接続電極1232と配線202との間の距離は、当該割合に応じて定まるようになっている。また、このように定まる接続電極1232と配線202との間の距離に応じて、圧力室基板12と配線基板20との間の接着剤50が充填される充填領域の体積が定まる。接続電極1232と配線202とを接着する場合には、この接着剤50の充填領域の体積に応じた量の接着剤50を用いることで、接着剤50が多すぎて圧力室121の内部に流入したり、接着剤50が不足して圧力室基板12と配線基板20との間に空隙が生じたりする不具合の発生が抑制される。
しかしながら、接着剤50の量や圧着実施形態の圧力には、ばらつきが生じ得る。接着剤50の量や圧着時の圧力がばらつきにより所定の上限値を超えると、接着剤50の充填領域に対して、塗布される接着剤50の量が多くなるため、圧力室基板12と配線基板20とを接着剤50を介して圧着する際に接着剤50が圧力室121内に流入してしまう。
接着剤50が圧力室121内に流入した状態で硬化すると、インクの流動経路の少なくとも一部が塞がれてしまうため、インクがノズル111に供給がされにくくなったり、供給できなくなったりする。また、圧電体の隔壁122の変位量が小さくなり、圧力室121内のインクの圧力を所望の範囲で変動させることができなくなる。この結果、隔壁122がインクを押し出す力が弱くなり、インク吐出速度が低下する不具合が生じる。また、接着剤50が圧力室121に流れ込んで硬化することで圧力室の体積(チャネル体積)が変化して、AL(Acoustic Length)が変化してしまい、所望のインク吐出速度が得られなくなる。ここで、ALは、圧力室121の音響的共振周期の1/2である。
これに対し、本実施形態のヘッドチップ10では、図6(a)及び図6(b)に示されるように、第1接着面S1は、凹部Raが設けられていることで凹凸形状を有しており、当該凹凸形状により、第1接着面S1に沿って接着剤50が流れ込む空間SP(凹部Ra)が設けられている。また、第2接着面S2は、凹部Rbが設けられていることで凹凸形状を有しており、当該凹凸形状により、第2接着面S2に沿って接着剤50が流れ込む空間SP(凹部Rb)が設けられている。すなわち、接着剤50の量が所定値より多かったり、圧着時の圧力が所定値より大きくなったりした場合においても、圧力室121やインク流路201に流れ込もうとする余剰の接着剤50が空間SP(凹部Raや凹部Rbの内部)に導かれるようになっている。よって、凹部Ra及び凹部Rbは、接着剤50の圧力室121への流入を抑制する効果を奏する。特に、圧力室121の開口部を囲む領域に凹部Raが設けられていることで、圧力室121及びインク流路201への任意の方向からの接着剤50の流入を抑制することができる。
また、配線202の表面のうち接着剤50を介して電極123の表面と対向している部分に凹部Rbが設けられていることで、電極123と配線202との接着面の面積を増大させて接着力を増大させることができ、電極123と配線202との間の断線を生じにくくすることができる。
図7は、図6のうち凹部Ra及び凹部Rbの近傍範囲を拡大して示す断面図である。
図7に示されるように、電極123のうち接続電極1232は、基材120の表面に設けられた下層接続電極1232aと、下層接続電極1232a上に設けられた上層接続電極1232bとが積層された構成を有している。このうち下層接続電極1232aは、Z方向から見た接続電極1232の形成領域全体に設けられており、上層接続電極1232bは、下層接続電極1232aの形成領域から凹部Raの形成領域を除いた領域に設けられている。すなわち、凹部Raは、下層接続電極1232a上の一部の領域に上層接続電極1232bを設けることで形成されている。したがって、凹部Raの内壁面のうち底面は下層接続電極1232aからなり、側面は上層接続電極1232bからなる。
また、下層接続電極1232aの表面は、上層接続電極1232bの表面よりも、流動性を有する状態の接着剤50に対する濡れ性が小さくなっている。したがって、凹部Raの内壁面の少なくとも一部(ここでは、下層接続電極1232aの表面が露出した凹部Raの底面)では、凹部Raに隣接する上層接続電極1232bの表面よりも、流動性を有する状態の接着剤50が濡れ広がりにくくなっている。このため、圧力室基板12と配線基板20とを圧着する際に上層接続電極1232b上から凹部Raに流入した接着剤50は、凹部Raの内部では濡れ広がりにくく、凹部Raにおいて堰き止められやすくなる。これにより、接着剤50が圧力室121やインク流路201に流入する不具合の発生がより確実に抑制される。
例えば、下層接続電極1232aにAu、上層接続電極1232bにAlやTiを用いることで、このような濡れ性の大小関係を実現することができる。ただし、下層接続電極1232a及び上層接続電極1232bの材料はこれに限られない。
配線202も、電極123と同様に二層構造を有している。すなわち、配線202は、基材200の表面に設けられた下層配線202aと、下層配線202a上に設けられた上層配線202bとが積層された構成を有している。このうち下層配線202aは、Z方向から見た配線202の形成領域全体に設けられており、上層配線202bは、下層配線202aの形成領域から凹部Rbの形成領域を除いた領域に設けられている。すなわち、凹部Rbは、下層配線202a上の一部の領域に上層配線202bを設けることで形成されている。したがって、凹部Rbの内壁面のうち底面は下層配線202aからなり、側面は上層配線202bからなる。
また、下層配線202aの表面は、上層配線202bの表面よりも、流動性を有する状態の接着剤50に対する濡れ性が小さくなっている。例えば、下層配線202aにAu、上層配線202bにAlやTiを用いることで、このような濡れ性の大小関係を実現することができる。ただし、下層配線202a及び上層配線202bの材料はこれに限られない。
なお、下層接続電極1232a及び上層接続電極1232bの材料の組み合わせや、下層配線202a及び上層配線202bの材料の組み合わせは、これらの部材の基材120及び基材200上における密着性を確保する観点から選択しても良い。例えば、上層接続電極1232bや上層配線202bとして、電気伝導率の大きいAuを用い、下層接続電極1232aや下層配線202aとして、Auとの密着性が基材120や基材200よりも高いTiやCrを用いても良い。このように、下層接続電極1232aや下層配線202aを中間層として用いることで、基材120や基材200に対して直接密着させにくいAuを、接続電極1232や配線202の表面に設けることができる。
上述した凹部Ra及び凹部Rbは、第1接着面S1、第2接着面S2におけるどのような位置に設けられていても、余剰の接着剤50の体積が凹部Ra及び凹部Rbの体積に相当していれば、余剰の接着剤50を内部に導いて圧力室121やインク流路201の内部への接着剤50の流入を抑制する効果が得られる。
ただし、凹部Raは、圧力室121の開口部の近傍範囲に設けられることが望ましく、凹部Rbは、インク流路201の開口部の近傍範囲に設けられることが望ましい。このような位置に凹部Raや凹部Rbを設けることで、圧力室121の開口部やインク流路201の開口部に可能な限り近い位置まで接着剤50を流動させつつ、余剰の接着剤50を凹部Ra及び凹部Rb内に導くことができる。これにより、接着面積を可能な限り大きく確保しつつ、圧力室121やインク流路201への接着剤50の流入を抑制することができる。
次に、インクジェットヘッド1の製造方法及び当該製造方法に係る製造処理について説明する。
図8は、インクジェットヘッド1の製造処理を示すフローチャートである。
インクジェットヘッド1の製造処理では、まず、後述する配線基板製造処理を実行して配線基板20を製造し(ステップS101:配線形成部材製造工程)、また後述する圧力室基板製造処理を実行して圧力室基板12を製造する(ステップS102:圧力室部材製造工程)。なお、配線基板製造処理及び圧力室基板製造処理の実行順序は前後しても良く、また並行して実行しても良い。
次に、圧力室基板12と配線基板20とを接着剤50を用いて接着する(ステップS103:接着工程)。ここでは、圧力室基板12の第1接着面S1及び配線基板20の第2接着面S2の少なくとも一方に、流動性を有し導電性粒子51を含む接着剤50を塗布し、圧力室基板12と配線基板20とを所定の圧力で圧着する。圧着と並行して、又は圧着後に、圧力室基板12及び配線基板20を加熱して接着剤50を硬化させる。
次に、圧力室基板12及び配線基板20の表面及び圧力室121やインク流路201の内壁面に、保護膜を形成する(ステップS104)。このステップでは、蒸着法、CVD又はスパッタリング法といった公知の薄膜形成法を用いることができる。
次に、圧力室基板12に、予め製造したノズル基板11を接着剤により接着する(ステップS105)。その後、ノズル基板11、圧力室基板12及び配線基板20を含む各構成部材を外装部材40の内部に組み込んでインクジェットヘッドが完成する。
図9は、配線基板製造処理を示すフローチャートである。
また、図10は、配線基板製造処理を説明する模式断面図である。
配線基板製造処理では、まずインク流路201が設けられた基材200上に、下層配線202aの材料の層を、公知の薄膜形成技術により形成する(ステップS201、図10(a))。
次に、下層配線202aの材料の層に重ねてレジスト層61を形成し(ステップS202、図10(b))、凹部Rbの形成領域にのみレジスト層61が残るようにレジスト層61をフォトリソグラフィーによりパターニングする(ステップS203、図10(c))。
次に、上層配線202bの材料の層を、公知の薄膜形成技術により重ねて形成し(ステップS204、図10(d))、レジスト層61を剥離(リフトオフ)する(ステップS205、図10(e))。これにより、下層配線202a及び上層配線202bの材料の層に凹部Rbを含む凹凸形状が形成される。
次に、レジスト層62を重ねて形成し(ステップS206、図10(f))、配線202の形成領域にのみレジスト層62が残るようにレジスト層62をフォトリソグラフィーによりパターニングする(ステップS207、図10(g))。
次に、レジスト層62をマスクとして用いて、下層配線202a及び上層配線202bの材料の層をエッチングして除去し(ステップS208、図10(h))、レジスト層62を剥離することで(ステップS209、図10(i))、配線基板20が製造される。
図11は、圧力室基板製造処理を示すフローチャートである。
また、図12は、圧力室基板製造処理を説明する模式断面図である。
圧力室基板製造処理では、まず基材120に設けられた圧力室121の内壁面に駆動電極1231を形成し、続いて基材120上にレジスト層63を形成する(ステップS301、図12(a))。
次に、接続電極1232の形成領域を除いた領域にのみレジスト層63が残るようにレジスト層63をフォトリソグラフィーによりパターニングする(ステップS302、図12(b))。
次に、下層接続電極1232aの材料の層を、公知の薄膜形成技術により重ねて形成し(ステップS303、図12(c))、レジスト層63を剥離(リフトオフ)する(ステップS304、図12(d))。これにより、接続電極1232の形成領域に下層接続電極1232aが形成される。
次に、レジスト層64を重ねて形成し(ステップS305、図12(e))、上層接続電極1232bの形成領域を除いた領域にのみレジスト層64が残るようにレジスト層64をフォトリソグラフィーによりパターニングする(ステップS306、図12(f))。
次に、上層接続電極1232bの材料の層を、公知の薄膜形成技術により重ねて形成し(ステップS307、図12(g))、レジスト層64を剥離(リフトオフ)する(ステップS308、図12(h))。これにより、凹部Raを含む凹凸形状が第1接着面S1に形成された圧力室基板12が製造される。
(変形例)
続いて上記実施形態の変形例について説明する。本変形例は、凹部Ra、Rbの形状や形成位置が上記実施形態と異なる。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
図13は、本変形例に係るヘッドチップ10及び配線基板20の断面図である。
図13の圧力室基板12では、接続電極1232における圧力室121の開口部を囲む矩形の枠状の領域に設けられた凹部Ra1は、圧力室121に隣接する(圧力室121に向かって開放されている)切り欠きである。このような凹部Ra1によっても、余剰の接着剤50が当該凹部Ra1に流れ込むことで、接着剤50が圧力室121の内部に流入するのを抑制することができる。
また、図13の配線基板20では、配線202が、上記実施形態における配線202の配置範囲に加えて、インク流路201の開口部の周囲を囲む領域にも設けられている。また、配線202のインク流路201の開口部の周囲を囲む領域には、当該インク流路201の開口部を囲む矩形の枠状の領域に凹部Rb1が設けられている。これにより、配線基板20側においても、インク流路201への任意の方向からの接着剤50の流入を抑制することができる。また、図13の凹部Rb1は、凹部Ra1と同様に、インク流路201に隣接する(インク流路201に向かって開放されている)切り欠きとなっている。なお、凹部Rb1は、インク流路201に隣接しない位置に設けられていても良い。
また、図13では、接続電極1232の表面に、互いに分離した状態の(繋がっていない)複数の凹部R(凹部Ra1及び凹部Ra2)が設けられている。また、配線202の表面に、互いに分離した状態の複数の凹部R(凹部Rb1及び凹部Rb2)が設けられている。ここで、凹部Ra2及び凹部Rb2の各々の平面視での形状は、特には限られないが、例えば矩形、円形、ライン状の形状などとすることができる。また、接続電極1232及び配線202の一方に複数の凹部Rが設けられていても良い。
また、図13では、電極123の表面のうち接着剤50を介して配線202の表面と対向している部分に凹部Ra2が設けられ、配線202の表面のうち接着剤50を介して電極123の表面と対向している部分に凹部Rbが設けられている。このような構成によれば、電極123と配線202との接着面積を増加させて接着力を増大させることができ、この結果、電極123と配線202との断線を生じにくくすることができる。
このように、図13では、圧力室基板12の第1接着面S1は、凹部Ra1及び凹部Ra2が設けられていることで凹凸形状を有しており、当該凹凸形状により、第1接着面S1に沿って接着剤50が流れ込む空間SP(凹部Ra1及び凹部Ra2)が設けられている。また、配線基板20の第2接着面S2は、凹部Rb1及び凹部Rb2が設けられていることで凹凸形状を有しており、当該凹凸形状により、第2接着面S2に沿って接着剤50が流れ込む空間SP(凹部Rb1及び凹部Rb2)が設けられている。
図14は、本変形例に係るヘッドチップ10及び配線基板20の他の例を示す断面図である。
図14では、接続電極1232が圧力室121の開口部を囲むように設けられておらず、例えば当該開口部の一辺のみに沿って設けられている。よって、接続電極1232の凹部Ra4も、圧力室121の開口部の一辺のみに沿って設けられている。このように、凹部は必ずしも圧力室121の開口部を囲むように設けられていなくても良い。
また、図14では、圧力室基板12の基材120における接着剤50と接する表面に、エッチング等により複数の凹部Ra3が設けられている。また、配線基板20の基材200における接着剤50と接する表面に、エッチング等により複数の凹部Rb3が設けられている。このように、凹部Rは必ずしも接続電極1232上や配線202上に設けられていなくても良く、基材120や基材200に直接設けられていても良い。なお、基材120及び基材200の一方のみに凹部Rが設けられていても良い。
また、図14では、基材120の表面に設けられた下地凹部に重ねて接続電極1232が設けられることで、接続電極1232の表面に凹部Ra4が形成されている。また、基材200の表面に設けられた下地凹部に重ねて配線202が設けられることで、配線202の表面に凹部Rb4が形成されている。このように、凹部Rは、基材120や基材200の表面形状が接続電極1232や配線202の表面形状に反映されることで形成されたものであっても良い。
このように、図14では、圧力室基板12の第1接着面S1は、凹部Ra3及び凹部Ra4が設けられていることで凹凸形状を有しており、当該凹凸形状により、第1接着面S1に沿って接着剤50が流れ込む空間SP(凹部Ra3及び凹部Ra4)が設けられている。また、配線基板20の第2接着面S2は、凹部Rb3及び凹部Rb4が設けられており、当該凹凸形状により、第2接着面S2に沿って接着剤50が流れ込む空間SP(凹部Rb3及び凹部Rb4)が設けられている。
以上のように、本実施形態に係るインクジェットヘッド1は、インクを吐出するノズル111を有するインクジェットヘッド1であって、圧電体の壁面の変形に応じて内部に貯留されたインクの圧力を変動させる圧力室121と、上記壁面に電圧を印加するための電極123と、を有し、圧力室121がノズル111に連通している圧力室基板12と、圧力室121に連通するインク流路201と、電極123に電気的に接続されている配線202と、を有する配線基板20と、を備え、圧力室基板12のうち圧力室121の開口部が設けられている第1接着面S1と、配線基板20のうちインク流路201の開口部が設けられている第2接着面S2とが接着剤50により接着されており、第1接着面S1及び第2接着面S2の少なくとも一方は、凹凸形状を有し、当該凹凸形状により、接着剤50が流れ込む空間SPが設けられている。
このような構成によれば、接着剤50を介して圧力室基板12と配線基板20とを圧着して接着する際に、接着剤50の量が所定値より多かったり、圧着時の圧力が所定値より大きくなったりした場合において、圧力室121やインク流路201に流れ込もうとする余剰の接着剤50を、凹凸形状がなす空間SP(凹部R内)に導くことができる。これにより、空間SPが設けられていない場合と比較して、接着剤50が圧力室121及びインク流路201に流入する不具合の発生を抑制することができる。この結果、ノズル111に供給されるインクの流動が妨げられたり、圧力室121内のインクに所望の圧力を印加できなくなったりする不具合の発生を抑制することができ、ノズル111からより安定してインクを吐出することができる。
また、電極123の表面の一部は、第1接着面S1の一部をなしており、配線202の表面の一部は、第2接着面S2の一部をなしており、電極123と配線202とは、接着剤に含まれている導電性粒子51により電気的に接続されており、上記凹凸形状における凹部Rは、電極123の表面のうち接着剤50を介して配線202と対向している部分、及び配線202の表面のうち接着剤50を介して電極123と対向している部分の少なくとも一方に設けられている。これにより、電極123と配線202との接着面の面積を増大させて接着力を増大させることができ、電極123と配線202との間の断線を生じにくくすることができる。また、電極123と配線202とが対向する領域では、基材120と基材200とが対向する領域よりも接着剤50が流動可能な間隔(Z方向の幅)が狭く、接着剤50が押し流されやすい。このため、このような領域に凹部Rが設けられていることで、押し流された接着剤50を効果的に凹部Rに流入させて堰き止めることができ、圧力室121及びインク流路201に接着剤50が流入する不具合の発生をより確実に抑制することができる。
また、圧力室基板12は、圧力室121が設けられ表面に電極123が形成されている基材120を有し、配線基板20は、インク流路201が設けられ表面に配線202が形成されている基材200を有し、凹部Rは、基材120の表面及び基材200の表面の少なくとも一方に設けられている。これにより、導電性粒子51を介した電極123と配線202との電気的な接続がなされる領域を狭めることなく第1接着面S1、第2接着面S2に凹部Rを設けて、圧力室121及びインク流路201へのインクの流入を抑制することができる。
また、上記変形例のインクジェットヘッド1では、第1接着面S1及び第2接着面S2の少なくとも一方に凹部Rが互いに分離した状態で複数設けられている。このような構成によれば、より確実に圧力室121及びインク流路201へのインクの流入を抑制することができる。
また、凹部Raは、第1接着面S1における圧力室121の開口部を囲む領域に設けられている。これにより、圧力室121及びインク流路201への任意の方向からの接着剤50の流入を抑制することができる。
また、上記変形例のインクジェットヘッド1では、凹部Rbは、第2接着面S2におけるインク流路201の開口部を囲む領域に設けられている。このような構成によっても、圧力室121及びインク流路201への任意の方向からの接着剤50の流入を抑制することができる。
また、凹部Rの内壁面の少なくとも一部は、当該凹部Rが設けられている部材の表面のうち当該凹部Rに隣接する部分よりも、流動性を有する状態の接着剤50に対する濡れ性が小さい。これにより、圧力室基板12と配線基板20とを圧着する際に接着剤50が凹部Rの内部で濡れ広がりにくくなるように、すなわち凹部Rにおいて堰き止められやすくなるようにすることができる。この結果、接着剤50が圧力室121やインク流路201に流入する不具合の発生をより確実に抑制することができる。
また、上記実施形態のインクジェット記録装置100は、上記のインクジェットヘッドを備えるため、圧力室121及びインク流路201へのインクの流入に起因するインク吐出不良の発生を抑制することができる。
また、上記実施形態のインクジェットヘッドの製造方法は、圧電体の壁面の変形に応じて内部に貯留されたインクの圧力を変動させる圧力室121と、上記壁面に電圧を印加するための電極123と、を有し、圧力室121がノズル111に連通する圧力室基板12を製造する圧力室部材製造工程、インクが通るインク流路201と、配線202と、を有する配線基板20を製造する配線形成部材製造、インク流路201が圧力室121に連通し、かつ配線202が電極123に電気的に接続されるように、圧力室121の第1接着面S1と、配線基板20の第2接着面S2とを接着剤により接着する接着工程、を含み、圧力室部材製造工程及び配線形成部材製造工程では、接着工程において接着剤50が流れ込む空間SPが設けられるように、第1接着面S1及び第2接着面S2の少なくとも一方に凹凸形状を形成する。このような方法によれば、接着工程において、接着剤50の量が所定値より多かったり、圧着時の圧力が所定値より大きくなったりした場合において、圧力室121やインク流路201に流れ込もうとする余剰の接着剤50を、凹凸形状がなす空間SP(凹部R内)に導くことができる。これにより、空間SPが設けられていない場合と比較して、接着剤50が圧力室121及びインク流路201に流入する不具合の発生を抑制することができる。この結果、ノズル111に供給されるインクの流動が妨げられたり、圧力室121内のインクに所望の圧力を印加できなくなったりする不具合の発生を抑制することができ、ノズルからより安定してインクを吐出することができる。
なお、本発明は、上記実施形態及び各変形例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記各実施形態及び変形例では、圧力室基板12の第1接着面S1及び配線基板20の第2接着面S2の双方に凹部Rを設ける例を用いて説明したが、これに限られず、第1接着面S1及び第2接着面S2のいずれか一方にのみ凹部Rを設けても良い。
また、凹部Rの形状として、内壁面の断面が、XY平面に平行な底面と、XY平面に垂直な側吐出面とを有するものを例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、凹部Rは、内壁面の断面が曲線をなしていても良いし、凹部Rの縁からの距離が大きくなるほど断面積が小さくなるような形状で設けられていても良い。
また、接続電極1232や配線202に凹部Rを設ける方法は、上記実施形態及び変形例のような、下層及び上層からなる2層の電極や配線のうち上層の一部を欠損させる方法に限られない。例えば、単層の電極や配線の表面をエッチング等により加工することで凹部Rを形成しても良い。
また、上記各実施形態及び変形例では、第1接着面S1及び第2接着面S2を構成する部材(接続電極1232、配線202、基材120、基材200)に凹部Rを設けることで第1接着面S1及び第2接着面S2に凹凸形状を形成する例を用いて説明したが、これに限られない。例えば、第1接着面S1及び第2接着面S2を構成する部材に凸部を設けることで、相対的に凹部を形作って凹凸形状を形成しても良い。このような構成によっても、第1接着面S1や第2接着面S2が有する凹凸形状により、接着剤50が流れ込む空間SPを設けて、接着剤50が圧力室121及びインク流路201に流入する不具合の発生を抑制することができる。
このように、本明細書における「凹部」には、上記各実施形態及び変形例の凹部Rのように局所的に形成された窪みの他、局所的に形成された凸部の周りの、当該凸部に対して表面の高さが相対的に低い領域が含まれる。
また、接続電極1232と配線202との電気的な接続は、導電性粒子51に代えて、導電性を有する他の部材により行っても良い。
また、上記各実施形態及び変形例では、搬送ベルト83を備える搬送部80により記録媒体Mを搬送する例を用いて説明したが、これに限定する趣旨ではなく、搬送部80は、例えば回転する搬送ドラムの外周面上で記録媒体Mを保持して搬送するものであっても良い。
また、上記各実施形態及び各変形例では、シングルパス形式のインクジェット記録装置100を例に挙げて説明したが、インクジェットヘッド1を走査させながら画像の記録を行うインクジェット記録装置に本発明を適用しても良い。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
1 インクジェットヘッド
10 ヘッドチップ
11 ノズル基板
111 ノズル
12 圧力室基板
120 基材
121 圧力室
122 隔壁
123 電極
1231 駆動電極
1232 接続電極
1232a 下層接続電極
1232b 上層接続電極
20 配線基板
200 基材
201 インク流路
202 配線
202a 下層配線
202b 上層配線
30 FPC
31 接続配線
40 外装部材
41 インレット
42 アウトレット
50 接着剤
51 導電性粒子
61〜64 レジスト層
80 搬送部
90 ヘッドユニット
91 保持基板
92 固定部材
100 インクジェット記録装置
M 記録媒体
R、Ra、Ra1−Ra4、Rb、Rb1−Rb4 凹部
S1 第1接着面
S2 第2接着面
SP 空間

Claims (9)

  1. インクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドであって、
    圧電体の壁面の変形に応じて内部に貯留されたインクの圧力を変動させる圧力室と、前記壁面に電圧を印加するための電極と、を有し、前記圧力室が前記ノズルに連通している圧力室部材と、
    前記圧力室に連通するインク流路と、前記電極に電気的に接続されている配線と、を有する配線形成部材と、
    を備え、
    前記圧力室部材のうち前記圧力室の開口部が設けられている第1接着面と、前記配線形成部材のうち前記インク流路の開口部が設けられている第2接着面とが接着剤により接着されており、
    前記第1接着面及び前記第2接着面の少なくとも一方は、凹凸形状を有し、当該凹凸形状により、前記接着剤が流れ込む空間が設けられているインクジェットヘッド。
  2. 前記電極の表面の一部は、前記第1接着面の一部をなしており、
    前記配線の表面の一部は、前記第2接着面の一部をなしており、
    前記電極と前記配線とは、前記接着剤に含まれている導電性部材により電気的に接続されており、
    前記凹凸形状における凹部は、前記電極の表面のうち前記接着剤を介して前記配線と対向している部分、及び前記配線の表面のうち前記接着剤を介して前記電極と対向している部分の少なくとも一方に設けられている請求項1に記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記圧力室部材は、前記圧力室が設けられ表面に前記電極が形成されている第1基材を有し、
    前記配線形成部材は、前記インク流路が設けられ表面に前記配線が形成されている第2基材を有し、
    前記凹凸形状における凹部は、前記第1基材の表面及び前記第2基材の表面の少なくとも一方に設けられている請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド。
  4. 前記第1接着面及び前記第2接着面の少なくとも一方に、前記凹凸形状における凹部が互いに分離した状態で複数設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
  5. 前記凹凸形状における凹部は、前記第1接着面における前記圧力室の開口部を囲む領域に設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
  6. 前記凹凸形状における凹部は、前記第2接着面における前記インク流路の開口部を囲む領域に設けられている請求項1から5のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
  7. 前記凹凸形状における凹部の内壁面の少なくとも一部は、当該凹部が設けられている部材の表面のうち当該凹部に隣接する部分よりも、流動性を有する状態の前記接着剤に対する濡れ性が小さい請求項1から6のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
  8. 請求項1から7のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置。
  9. インクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドの製造方法であって、
    圧電体の壁面の変形に応じて内部に貯留されたインクの圧力を変動させる圧力室と、前記壁面に電圧を印加するための電極と、を有し、前記圧力室が前記ノズルに連通する圧力室部材を製造する圧力室部材製造工程、
    インクが通るインク流路と、配線と、を有する配線形成部材を製造する配線形成部材製造工程、
    前記インク流路が前記圧力室に連通し、かつ前記配線が前記電極に電気的に接続されるように、前記圧力室のうち前記圧力室の開口部が設けられている第1接着面と、前記配線形成部材のうち前記インク流路の開口部が設けられている第2接着面とを接着剤により接着する接着工程、
    を含み、
    前記圧力室部材製造工程及び前記配線形成部材製造工程では、前記接着工程において前記接着剤が流れ込む空間が設けられるように、前記第1接着面及び前記第2接着面の少なくとも一方に凹凸形状を形成するインクジェットヘッドの製造方法。
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