JP2019110842A - 塩味増強剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】食塩の代替として使用できる塩味増強剤の提供。【解決手段】乳の発酵処理により発酵物を作製し、前記発酵物に対して殺菌処理を行わずに乳たんぱく分解酵素処理を行って酵素処理物を作製し、前記酵素処理物に塩化カリウムを5〜20w%混合した混合物を作製した後、前記混合物を殺菌処理することにより得られる塩味増強剤。【選択図】図1

Description

本発明は、食塩の代替として使用できる塩味増強剤に関する。
高齢化社会を迎えた現代において、社会福祉事業においても高齢者の介護事業が大きな経済的規模を占める傾向が強まってきた。このような介護事業において、高齢者に提供する食事は、介護を受ける側にとって日常生活を充実させるための重要な要素となっており、提供される食事が高齢者の嗜好に合ったものであるだけでなく、高齢者の健康維持が考慮されたものであることが求められている。
特に、塩味は料理を口にしたときの満足感が得られる代表的な味であり、塩味が足りない飲食品は、味に物足りなさを感じさせる。料理に塩味を与える最も基本的な手段としては、塩化ナトリウムを主成分とする食塩を、塩味を増強させる調味料として料理に添加することである。
特開昭63−141561号公報
一方、塩分を多く摂り過ぎると高血圧を引き起こすなど様々な疾患の要因となることは広く知られている。しかし、このような健康に対するリスクが知られていながら、塩味の濃い味付けを好む者も多い。特に、高齢化社会においては、塩味の濃い飲食品を長年摂取し続けることで前記のような疾患を患う確率も高くなる。従って、減塩効果を備えつつ満足感が得られる塩味を有する飲食品を提供できる塩味増強剤が介護事業においても強く求められていた。
このような要望に対して、乳ミネラルを含む濃縮物を食塩の代わりに用いて減塩食品を製造することも検討されたが、このような方法ではコク味を補填することは可能であっても食塩によって感じられる塩味の代替には不十分であった。
そこで、上記課題を解決する手段として本発明に係る塩味増強剤は、以下の通りである。
〔1〕 発酵乳を乳たんぱく分解酵素処理してなる酵素処理物、及び塩化カリウムを含有する塩味増強剤。
〔2〕 前記発酵乳は発酵処理後に殺菌処理されていないものであることを特徴とする〔1〕に記載の塩味増強剤。
〔3〕 前記塩化カリウムが5w%〜20w%含まれてなる〔1〕又は〔2〕に記載の塩味増強剤。
〔4〕 〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の塩味増強剤が含まれてなる飲食品。
〔5〕 乳の発酵処理により発酵物を作製し、
前記発酵物に対して殺菌処理を行わずに乳たんぱく分解酵素処理を行って酵素処理物を作製し、
前記酵素処理物に塩化カリウムを混合した混合物を作製した後、
前記混合物を殺菌処理する
ことを特徴とする塩味増強剤の製造方法。
〔6〕 前記塩化カリウムが5w%〜20w%の濃度となるように混合されてなる
ことを特徴とする〔5〕に記載の塩味増強剤の製造方法。
本発明によれば、食塩によって得られる鋭く刺すような塩味を再現できる塩味増強剤を実現することができる。
塩味増強剤A中のアミノ酸比率をアミノ酸ごとに示すグラフである。 塩味増強剤B中のアミノ酸比率をアミノ酸ごとに示すグラフである。 塩味増強剤C中のアミノ酸比率をアミノ酸ごとに示すグラフである。 比較例9中のアミノ酸比率をアミノ酸ごとに示すグラフである。
乳としては、例えば牛乳、山羊乳等の獣乳の生乳、これら獣乳の脱脂乳、粉乳、若しくは脱脂粉乳からの還元乳、或いは豆乳、アーモンド乳、ココナッツミルク等の植物乳の各種乳蛋白含有物を用いることができる。特に、乳酸発酵を行った後の処理が容易であること、管理が容易であること等から脱脂乳、若しくは脱脂粉乳が好ましい。
本発明に係る発酵乳は、乳を発酵させたものであり、発酵は乳酸菌を用いることが好ましい。乳酸菌は、乳を乳酸発酵できるものであれば特に限定されないが、例えばラクトバチルス属またはストレプトコッカス属に属する微生物を用いることができる。ラクトバチルス属に属する細菌としては、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)などが挙げられ、ストレプトコッカス属に属する細菌としては、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)が挙げられる。これらから選ばれる一種または二種以上を使用することができる。
乳に対する乳酸菌による発酵処理の発酵条件は、乳酸菌によって適宜選択することができるが、培養温度35〜41℃の温度条件において、22〜24時間の培養時間として発酵乳とすることが好ましい。発酵乳の反応終点は、pH3.70±0.30とし、目標酸度は33.4mlであることが好ましい。
本発明においては、発酵処理によって発酵乳を形成した後、当該発酵乳に対して殺菌処理をせずに酵素処理を行うことが好ましい。これは、発酵乳に対する殺菌処理を行わないことで酵素処理がより効率的に行われ、塩味増強剤に適したアミノ酸の産生が実現できたからである。例えば、発酵乳に対して酵素処理前に加熱による殺菌処理を行うと、乳たんぱくの凝集が発生していたため、この乳たんぱくの凝集がアミノ酸の塩味増強剤に適したアミノ酸の産生を阻害していたと推測される。
酵素処理の条件は、酵素によって適宜選択することが可能であるが、43〜47℃の反応温度条件において、16〜24時間の反応時間であることが好ましい。反応終点は、ホルモール法を用いた場合の滴定量が12.0ml以上であることとした。
酵素としては、乳たんぱく分解酵素を用いる。具体的にはプロテアーゼを用いることが好ましい。使用できるプロテアーゼとしては、例えば、プロテアーゼA「アマノ」SD、プロテアーゼM「アマノ」SD、プロテアーゼP「アマノ」3SD、ウマミザイムG、ペプチダーゼR、ニューラーゼ(登録商標)F、プロザイム、プロレザー(登録商標)FGーF、プロテアックス(登録商標)、プロチンSD―NY10、サモアーゼ(登録商標)PC10F、パパインW―40(以上、天野エンザイム社製);スミチーム(登録商標)AP、LP、MP、ACP−G、FP−G、LPL−G(以上、新日本化学工業社製);デナプシン2P、デナチーム(登録商標)AP、XPー415、食品用精製パパイン(以上、ナガセケムテックス社製);オリエンターゼ(登録商標)AY、10NL、90N、20A、ONS、テトラーゼ(登録商標)S、ヌクレイシン(登録商標)(以上、エイチビィアイ社製);モルシン(登録商標)F、PD酵素、IP酵素、AO−プロテアーゼ(以上、キッコーマンバイオケミファ社製);サカナーゼ(科研製薬社製);プロテアーゼYPーSS、パンチダーゼ(登録商標)NPー2、P、アロアーゼ(登録商標)APー10(以上、ヤクルト薬品工業社製);Flavourzyme(登録商標)、プロタメックス、ニュートラーゼ、アルカラーゼ(以上、ノボザイムズ社製);コクラーゼ(登録商標)SS、P(以上、三菱化学フーズ社製);VERON(登録商標)PS、W、COROLASE(登録商標)PNーL、N、7089(以上、ABEnzymes社製);エンチロンNBS(洛東化成工業社製);プロテックス7L、プロテックス14L(以上、ダニスコジャパン社製);アクチナーゼ(登録商標)AS(科研ファルマ社製);その他動物由来のペプシン、トリプシンなども挙げることができる。前記プロテアーゼは1種もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
発酵乳を酵素処理した酵素処理物と混合する塩化カリウムは、完成する塩味増強剤100重量%に対して5〜20重量%であることが好ましい。この範囲であれば、塩味増強剤中への沈殿の発生を10重量%以内に抑えることができるからである。より好ましくは10〜20重量%であり、さらに好ましくは15〜20重量%である。
酵素処理物と塩化カリウムとの混合物は、90℃で1分、またはこれと同等条件での殺菌処理を行って、塩味増強剤とすることが好ましい。酵素処理物と塩化カリウムとを混合した後に殺菌処理を行うことによって、塩化カリウムを混合する前の酵素処理物に対して殺菌処理を行うよりも塩味増強剤中の乳たんぱくの凝集による沈殿物の発生を効果的に抑制することができ、分散安定性を向上させることができる。
作成された塩味増強剤は、容器に充填されて冷蔵庫等において冷却された状態で保存することができる。
1.塩味増強剤の製造方法
塩味増強剤の製造に使用される乳酸菌スタータの調整例を以下に示す。
1−1.乳酸菌スタータ(1)の調整例
水適量に対して、脱脂粉乳9%を加え、その後ラクトバチルス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)を0.02%接種して全体として100重量%とし、37℃で20時間培養させた発酵物を乳酸菌スタータとした。
1−2.乳酸菌スタータ(2)の調整例
水適量に対して、脱脂粉乳9%を加え、その後ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)を0.02%接種して全体として100重量%とし、37℃で20時間培養させた発酵物を乳酸菌スタータとした。
1−3.塩味増強剤の製造方法
以下の塩味増強剤製造工程に従って、実施例1となる塩味増強剤の製造を行った。以下の塩味増強剤製造工程中において「重量%」で示される各要素の量は、製造される塩味増強剤を100重量%として算出されたものである。
〔発酵乳の作製工程〕
水655.3gに脱脂粉乳159.7gを混合し、97±2℃で15秒間プレート殺菌した後、120メッシュでろ過を行い原料液の作製を行った。
前記原料液に、乳酸菌スタータ(1)4.1g及び乳酸菌スタータ(2)4.1gを接種し、攪拌しながら培養温度37℃で23時間培養を行い、発酵乳aを作製した。発酵乳aのpHは3.74、酸度は3.03%であった。
〔発酵乳の均質化処理工程〕
作製した発酵乳aを塩味増強剤の82.32重量%となるように取り、0.05重量%の消泡剤(信越化学工業株式会社 KM−72F)を加えて、攪拌しながらホモジナイザーを用いて150kgf/cmとなるように均質化した。その後、約10℃に冷却して一晩静置させた。
〔酵素処理工程〕
その後、発酵乳aに0.42重量%のスミチームFP−G、0.42重量%のスミチームLPL−G及び0.835重量%の水を添加し、45℃で18時間酵素処理を行った。ホルモール法によって滴定量12.0ml以上であることを確認した後、1.0重量%の水を混合して液状の酵素処理物を作製した。
〔塩化カリウム混合工程〕
さらに、前記酵素処理物に15.0重量%の塩化カリウムを混合して塩化カリウム混合液を調製し、ホモジナイザーを用いて150kgf/cmとなるように均質化した。均質化された塩化カリウム混合液に対して90℃で1分の殺菌処理を行って塩味増強剤を完成させた。当該塩味増強剤を以下において塩味増強剤Aという。
2.塩味増強剤を食品へ添加したときの呈味の官能評価
2−1.官能評価用試料の作製方法
官能評価用試料として、塩味増強剤Aを、下の表1〜4に示す処方に従って4種の食品に添加して作製した実施例1〜4と、塩味増強剤Aに代えて塩化カリウムを各食品に添加して作製した比較例1〜4と、同じく塩味増強剤Aに代えて食塩を各食品に添加して作製した比較例5〜8とを作製した。なお、前記1−3.塩味増強剤の製造方法で製造した塩味増強剤A全体に対する固形分の重量割合は約20重量%であったため、表1〜4における塩味増強剤Aの添加量を5.0gとし、塩化カリウム1.0g、及び食塩1.0gと固形分量が同等となるようにした。ここで、表1においてはレトルトカレー(ハチ食品株式会社製 メガ盛りカレー 中辛)をブランクに用いた。また、表2においてはミネストローネ(株式会社明治製 完熟トマトのミネストローネ)をブランクに用いた。また、表3においてはホワイトソース(ハインツ日本株式会社製 ホワイトソース)に牛乳を混合したものをブランクに用いた。また、表4においては味噌(米みそ 淡色辛みそ)を水で溶いた味噌汁をブランクに用いた。
Figure 2019110842
Figure 2019110842
Figure 2019110842
Figure 2019110842
前記食品ごとに、訓練したパネラー10人が各表に示した処方で作製したブランクに対して感じた呈味を基準評価点3.0として、作製した実施例1〜4、及び比較例1〜8から感じた呈味の評価を点数化して評価点とした。
呈味の評価項目は、塩味の強さ、味の濃厚さ、味のバランス、及び美味しさとした。それぞれの評価項目についてブランクから得られる評価を3点とし、各パネラーがこれを基準として1点〜5点の評価点を付け、項目ごとの評価点の平均値を表5〜表8に示した。
塩味の強さ、及び味の濃厚さについての点数に対する評価内容は以下のとおりである。
5点:非常に強い
4点:強い
3点:普通
2点:弱い
1点:非常に弱い
味のバランス、及び美味しさについての点数に対する評価内容は以下のとおりである。特に、味のバランスは塩味のボディ感の高さを評価した。
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:悪い
1点:非常に悪い
2−2.レトルトカレーに対する官能評価結果
表5には、表1に示す実施例1、比較例1、及び比較例5に対する官能評価結果を示す。
Figure 2019110842
表5に示すように、実施例1と比較例1とを塩味の強さにおいて比較したところ、実施例1は比較例1より良好な結果であった。これにより、塩味増強剤Aは食塩代替素材として使用できる結果が得られた。また、実施例1の食品から得られる味の濃厚さが比較例1よりも高く、また、比較例2よりも僅かに0.1高かった。この結果から、比較例5では塩味が際立ち、味のバランス、及び美味しさにおいて標準の評価点3.0を下回る結果となったのに対して、実施例1においては味のバランス、美味しさにおいても比較例1及び比較例5よりも良好であった。このため、特にレトルトカレーにおいては食塩よりも素材として相性が良いと考えている。
2−3.ミネストローネに対する官能評価結果
表6には、表2に示す実施例2、比較例2、及び比較例6に対する官能評価結果を示す。
Figure 2019110842
表6に示すように、実施例2と比較例2とを塩味の強さにおいて比較したところ、実施例2は塩化カリウムより良好な結果であった。これにより、実施例2は食塩代替素材として使用できる結果が得られた。また、味のバランス、美味しさにおいては比較例2及び比較例6と同等以上であった。これは、トマト由来の酸味と実施例2の発酵乳由来の酸味の相性が良かったものと考えている。
2−4.ホワイトソースに対する官能評価結果
表7には、表3に示す実施例3、比較例3、及び比較例7に対する官能評価結果を示す。
Figure 2019110842
表7に示すように、実施例3と比較例3とを塩味の強さにおいて比較したところ、実施例3は比較例3より良好な結果であった。これにより、実施例3は食塩代替素材として使用できる結果が得られた。
2−5.味噌汁に対する官能評価結果
表8には、表4に示す実施例4、比較例4、及び比較例8に対する官能評価結果を示す。
Figure 2019110842
表8に示すように、実施例4と比較例4とを塩味の強さにおいて比較したところ、実施例4は比較例4より良好な結果であった。これにより、実施例4は食塩代替素材として使用できる結果が得られた。
2−6.塩味増強剤Aの食塩代替品としての評価
〔塩味の強さについて〕
前記表5〜表8より、塩味増強剤Aは、いずれの食品においても塩味の強さが塩化カリウムよりも強く、食塩に近い塩味の強さを有する結果が得られた。これにより、塩味の強さにおいて、塩味増強剤Aは塩化カリウムよりも食塩代替素材として適していることが分かった。
〔塩味を感じる時間長さについて〕
上記表5〜表8に表れた結果に加えて、食塩のみを添加した食品(比較例5〜8)からは、食品を口に入れた直後のごく短時間の間強い塩味を感じるが、塩化カリウムのみを添加した食品(比較例1〜4)からは、食塩よりも長時間の間だらだらと塩味が感じられ、食塩とは異なる呈味が感じられた。この塩化カリウムによる呈味の傾向が食塩とは異なる異味として感じる大きな要因と考えられる。
一方、塩味増強剤Aを添加した食品(実施例1〜4)からは、食塩のみを添加した食品と同じく、食品を口に入れた直後のごく短時間の間強い塩味を感じた。そのため、塩味増強剤Aを食品に添加した場合、塩味を感じる時間も食塩と近く、塩味を感じる時間長さにおいても塩味増強剤Aは塩化カリウムよりも食塩代替素材として適していることが分かった。
その結果、塩味増強剤Aは、塩化カリウム単独よりも塩味の強さ、及び塩味を感じる時間において食塩により近く、食塩代替素材としてより適していることが分かった。また塩味において、塩味増強剤Aから得られる呈味は、塩味において食塩に対する異味が感じられず、食塩と同等の塩味であるとのコメントがパネラーから得られた。
その結果、塩味増強剤Aは、塩化カリウム単独よりも塩味の強さ、及び塩味を感じる時間において食塩により近く、食塩代替素材としてより適していることが分かった。また塩味において、塩味増強剤Aから得られる呈味は、塩味において食塩に対する異味が感じられず、食塩と同等の塩味であるとのコメントがパネラーから得られた。
2−7.塩味増強剤Aの総合評価
さらに、表5〜表8の結果から、食品によってばらつきは生じるものの、塩味増強剤Aを添加した実施例1〜4からは全ての項目において平均で評価点3.0以上の評価点が得られた。塩化カリウムのみを添加した比較例及び食塩を添加した比較例については、いずれかの食品において味のバランス又は美味しさの項目において平均3.0を下回る評価点が生じていた。この結果から、塩味増強剤Aは、食塩代替素材として塩化カリウムよりも優れているだけでなく、発酵乳を酵素処理した酵素処理物との混合によって、食品の種類を選ばずコク味を損なわない、又は向上させる効果を有することが分かった。
従って、塩味増強剤Aは、食塩と同等の塩味を有すると共に、旨味調味料としての機能を備える塩味増強剤であるといえる。
3.アミノ酸含有量分析
3−1.アミノ酸含有量分析試料の作製方法
下の表9に示す配合で調整した酵素処理前比較品及び塩味増強剤中に含まれるアミノ酸含有量分析を行った。塩味増強剤Bは、上記1−3.塩味増強剤の製造方法における酵素処理において、スミチームLPL−Gに代えてスミチームACP−Gを用いてスミチームFP−Gと共に処理を行ったものである。また、塩味増強剤Cは、上記1−3.塩味増強剤の製造方法における酵素処理において、スミチームFP−G及びスミチームLPL−Gに代えて、スミチームFP−Gと同等の機能を備えるプロテアーゼであるプロテアーゼM「アマノ」SD(天野エンザイム社製)を用いて処理を行ったものである。なお、塩味増強剤Cの「酵素処理工程」においては、添加する水の量割合を0.42重量%分増量して処理をおこなった。
〔比較例9の作製〕
さらに、比較例9の酵素未処理品は以下の手順に従って作成した。上記1−3.塩味増強剤の製造方法の「発酵乳の作製工程」において発酵乳aと同じ組成割合で作製した発酵乳を、840.00g取り、0.05gの消泡剤(信越化学工業株式会社 KM−72F)を加えて、攪拌しながらホモジナイザーを用いて150kgf/cmとなるように均質化した後、約10℃に冷却して一晩静置させた。さらに、150.0gの塩化カリウム及び9.95gの水を混合して塩化カリウム混合液を調製し、ホモジナイザーを用いて150kgf/cmとなるように均質化した。均質化された塩化カリウム混合液に対して90℃で1分の殺菌処理を行って比較例9を作製した。
Figure 2019110842
3−2.アミノ酸含有量分析条件
アミノ酸含有量分析の分析手順は以下のとおりである。
(1)除タンパクのため乳清250uLにアセトニトリル750uLを添加し、遠心分離を行った。
(2)遠心後、上清400uLを取り、減圧化で乾固した。
(3)0.05%ギ酸水100uLを加えて再溶解したものを試料原液とした。
(4)試料原液及び10倍希釈試料をAccQ・Tag Ultra試薬キット(Waters社製)を用いて誘導体化し、LC−MS(液体クロマトグラフ質量分析計)に供した。
分析条件を表10に示す。
Figure 2019110842
3−3.アミノ酸含有量評価結果
得られたアミノ酸含有量分析結果を表11及び図1〜図4に示す。
Figure 2019110842
図4は、表11における比較例9中に含まれるアミノ酸比率をアミノ酸ごとに横軸に列挙してグラフに示したものである。図4によれば、乳酸菌による発酵のみなされた比較例9中には甘味成分のアラニン及び旨味成分のグルタミン酸が多く含まれるが、苦味成分に関わるアミノ酸比率が低かった。そのため、例えば味噌汁における味噌を所定量より少なくし、その分発酵乳を添加して塩味を補完しようと試みた結果、3%の酸度により酸味を感じることはできるが、塩味の増強効果は得られなかった。
図1〜図3は、塩味増強剤A〜Cのアミノ酸比率をアミノ酸ごとに列挙してグラフに示したものである。いずれについても苦味成分であるリジン(Lys)とロイシン(Leu)の比率の上昇がみられた。
一方、甘味成分であるアラニン(Ala)のアミノ酸比率は比較例9に比べて大きく低下した。また、旨味成分であるグルタミン酸(Glu)のアミノ酸比率は大きく低下しておらず、塩味増強剤A〜C中に含まれるアミノ酸中において15%以上の割合を維持していた。
塩味増強剤B、及び塩味増強剤Cを上記呈味評価に用いた食品に添加し、呈味を評価すると、いずれも塩味増強剤Aと同じく、塩化カリウム単独を添加した比較例1〜4よりも強い塩味と短時間の塩味を感じる時間長さの特性を示した。さらに、味のバランス、及び美味しさについても塩味増強剤Aと同様の傾向を示した。従って、発酵乳を乳たんぱく分解酵素処理してなる酵素処理物と塩化カリウムとを混合した塩味増強剤は、塩化カリウムよりも優れた食塩代替素材であり、また、旨味調味料としての機能を備えることがわかった。
すなわち、発酵乳に乳たんぱく分解酵素処理をおこなったことにより、リジン、ロイシン等の特定のアミノ酸を多く含む酵素処理物を実現することができた。これらの苦味成分となるアミノ酸を多く含むことによって、塩化カリウムのだらだらと長い時間塩味を感じる異味感を短時間に短縮させ、さらに塩味の増強効果を発揮したと考えられる。
また、塩味増強剤A〜Cは、グルタミン酸の比率の低下を抑えると共に、多様なアミノ酸を含むことから、塩味増強剤を添加することによる味のバランス、及び食品の美味しさの低下を抑え、旨味調味料としての機能を有すると考えられる。
4.分散安定性試験
次に、塩味増強剤中に混合される塩化カリウムの量を変化させたときの沈殿物量の変化を測定する分散安定性試験により塩味増強剤の分散安定性を検討した。
4−1.分散安定性試験試料の作製方法
分散安定性試験には、上記1−3.塩味増強剤の製造方法において調製した酵素処理物に対して、塩化カリウムの重量割合を次の表12に示すようにそれぞれ変化させた試料を使用した。ここで、酵素処理物:塩化カリウム=95:5としたものを塩味増強剤D、同じく90:10としたものを塩味増強剤E、同じく85:15としたものを塩味増強剤A、同じく80:20としたものを塩味増強剤Fとした。
なお、塩味増強剤A、及び塩味増強剤D〜Fは、いずれも塩化カリウム混合したのち、ホモジナイザーを用いて150kgf/cmとなるように均質化した。均質化された塩化カリウム混合液に対して90℃で1分の殺菌処理を行ったが、当該殺菌処理の直後においては沈殿は見られなかった。
4−2.分散安定性試験方法及び試験結果
分散安定性試験は、試料をねじ口試験管に10g量りとり、遠心1500Gにおいて15分間遠心分離処理を行った後、沈殿物の重量を測定した。また、試料は各2本ずつ用意し、沈殿物重量の平均を取った。得られた沈殿物重量の試料10gに対する割合(%(w/w))を沈殿量として表12に示した。なお参考として、試料である塩味増強剤A、及び塩味増強剤D〜Fに用いた発酵乳aを、前記分散安定性試験と同一の処理で乳たんぱく質を沈殿させ、得られた沈殿量を表12に示す。
Figure 2019110842
表12より、塩味増強剤Dの沈殿量は9.861%であり、塩化カリウムの混合割合が5重量%以上であれば発酵乳に由来する乳たんぱく質の沈殿量を10%以下に抑制することができた。また、塩味増強剤Eの沈殿量は8.623%であり、塩化カリウムの混合割合を10重量%以上とすることで沈殿量が確実に10%より少なくなるように抑制することができた。
一方、塩味増強剤Eの沈殿量は1.232%であり、発酵乳に由来する乳たんぱく質の沈殿が良好に抑制されることが分かった。ここで、塩味増強剤Eを約5℃で冷蔵保存すると、約1週間で塩化カリウムに由来する結晶体の析出が確認された。さらに、塩化カリウムの混合割合を20重量%より多くして作製した塩味増強剤を冷蔵保存すると、1週間以内に前記結晶体の析出が確認された。そのため、塩味増強剤を、結晶体を析出させずに冷蔵保存するためには、塩化カリウムの混合割合を20重量%以下とすることが望ましい。
塩味増強剤Aの沈殿量は1.163%であり、最も沈殿量が少なく、また、約5℃での冷蔵保存における前記結晶体の析出が少なくとも5ヶ月間見られなかったことから、最も沈殿物及び結晶体析出の観点から品質を良好に保つことができた。以上の結果より、塩味増強剤中に混合される塩化カリウムは15重量%〜20重量%が好ましい。

Claims (6)

  1. 発酵乳を乳たんぱく分解酵素処理してなる酵素処理物、及び塩化カリウムを含有する塩味増強剤。
  2. 前記発酵乳は発酵処理後に殺菌処理されていないものであることを特徴とする請求項1に記載の塩味増強剤。
  3. 前記塩化カリウムが5w%〜20w%含まれてなる請求項1又は2に記載の塩味増強剤。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の塩味増強剤が含まれてなる飲食品。
  5. 乳の発酵処理により発酵物を作製し、
    前記発酵物に対して殺菌処理を行わずに乳たんぱく分解酵素処理を行って酵素処理物を作製し、
    前記酵素処理物に塩化カリウムを混合した混合物を作製した後、
    前記混合物を殺菌処理する
    ことを特徴とする塩味増強剤の製造方法。
  6. 前記塩化カリウムが5w%〜20w%の濃度となるように混合されてなる
    ことを特徴とする請求項5に記載の塩味増強剤の製造方法。
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