以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子に用いる負極を例示する図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線に沿う断面図である。図1を参照すると、負極10は、負極用電極基体11と、負極用電極基体11上に形成された負極合材層12と、負極合材層12上に形成された絶縁層13とを有する構造である。負極10の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状等が挙げられる。
負極10において、絶縁層13は、負極合材層12の上面及び側面を被覆するように形成された多孔質体である。絶縁層13は、内部に互いに連通する多数の空孔を有してもよい。絶縁層13は、負極合材層12の上面及び側面を直接被覆する平坦部13aと、平坦部13aの上面から部分的に突起する突起部13bとを有している。平坦部13aと突起部13bとは同一材料により一体に形成されており、平坦部13aと突起部13bにより、負極合材層12上に膜厚に薄い部分と厚い部分がある凹凸構造が形成されている。
絶縁層13において、平坦部13aの厚さ(負極合材層12の上面から平坦部13aの上面までの厚さ)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.5〜5μm程度とすることができる。又、突起部13bの厚さ(負極合材層12の上面から突起部13bの上面までの厚さ)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2〜10μm程度とすることができる。
突起部13bは、平坦部13aの上面に規則的なパターンとして形成されていることが好ましい。突起部13bは、例えば、ドット状のパターンに形成することができる。この場合、突起部13bの平面形状(負極用電極基体11の上面の法線方向から視た形状)は、例えば円形とすることができるが、楕円形、矩形、多角形等の任意の形状として構わない。
突起部13bの平面形状が円形である場合、突起部13bの径(1つのドットの径)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、20〜100μm程度とすることができる。
なお、図1では、絶縁層13が負極合材層12の上面及び側面を被覆するように形成されているが、絶縁層13は負極合材層12の上面を被覆し側面を露出するように形成されてもよい。
又、絶縁層13は、膜厚に薄い部分と厚い部分がある凹凸構造を有していれば、突起部13bは任意のパターンとして構わない。すなわち、突起部13bはドット状のパターンに代えて格子状のパターンとしてもよいし、その他の任意のパターンとしてもよい。
又、絶縁層13の少なくとも一部が負極合材層12の内部に存在し、負極合材層12を構成する活物質の表面に一体化されてもよい。特に、負極合材層12の表面が粗い場合に、このような状態になる場合がある。ここで、一体化とは、下層上に上層として単にフィルム形状等の部材を積層した状態ではなく、上層の一部が下層に入り込み、界面が明確でない状態で上層を構成する物質の表面と下層を構成する物質の表面とが結着している状態である。後述の絶縁層14、絶縁層23、及び絶縁層24についても同様である。
図2は、第1の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子に用いる正極を例示する断面図である。図2を参照すると、正極20Xは、正極用電極基体21と、正極用電極基体21上に形成された正極合材層22とを有する構造である。正極20Xは、正極合材層22上に形成された絶縁層を有していない。正極20Xの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状等が挙げられる。
図3は、第1の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子に用いる電極素子を例示する断面図である。図3を参照すると、電極素子40は、負極15の両側にセパレータ30を介して正極25Xが積層された構造である。又、両側の正極25Xの更に外側に、非水電解液蓄電素子を形成したときに外装52と絶縁するためのセパレータ30が設けられている。負極用電極基体11には負極引き出し線41が接続されている。正極用電極基体21には正極引き出し線42が接続されている。
負極15は、負極用電極基体11の両側に負極合材層12と絶縁層13が形成された点が負極10(図1参照)と相違し、その他の点は負極10と同様である。正極25Xは、正極用電極基体21の両側に正極合材層22が形成された点が正極20X(図2参照)と相違し、その他の点は正極20Xと同様である。
なお、電極素子40において、負極15と正極25Xの積層数は任意に決定することができる。すなわち、図3では、1つの負極15と2つの正極25Xの合計3層を図示しているが、これには限定されず、更に多くの負極15及び正極25Xを積層することができる。その際、負極15の個数と正極25Xの個数が同一であってもよい。
図4は、第1の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子を例示する断面図である。図4を参照すると、非水電解液蓄電素子1は、電極素子40に非水電解液を注入して電解質層51を形成し、外装52で封止した構造である。非水電解液蓄電素子1において、負極引き出し線41及び正極引き出し線42は、外装52の外部に引き出されている。非水電解液蓄電素子1は、必要に応じてその他の部材を有してもよい。非水電解液蓄電素子1としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非水電解液二次電池、非水電解液キャパシタ等が挙げられる。
非水電解液蓄電素子1の形状については、特に制限はなく、一般的に採用されている各種形状の中から、その用途に応じて適宜選択することができる。例えば、ラミネートタイプ、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。
以下、非水電解液蓄電素子1について詳説する。なお、負極と正極とを総称して電極、負極用電極基体と正極用電極基体とを総称して電極基体、負極合材層と正極合材層とを総称して電極合材層と称する場合がある。
<電極>
<<電極基体>>
負極用電極基体11の材質としては、導電性材料で形成されたものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅等が挙げられる。これらの中でも、ステンレススチール、銅が特に好ましい。
負極用電極基体11の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。負極用電極基体11の大きさとしては、非水電解液蓄電素子1に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
正極用電極基体21の材質としては、導電性材料で形成されたものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅、チタン、タンタル等が挙げられる。これらの中でも、ステンレススチール、アルミニウムが特に好ましい。
正極用電極基体21の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。正極用電極基体21の大きさとしては、非水電解液蓄電素子1に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<<電極合材層>>
負極合材層12及び正極合材層22は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活物質(負極活物質又は正極活物質)を少なくとも含み、必要に応じてバインダ(結着剤)、増粘剤、導電剤等を含んでもよい。
負極合材層12の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、負極合材層12の平均厚みは10μm以上450μm以下が好ましく、20μm以上100μm以下がより好ましい。負極合材層12の平均厚みが10μm未満であると、エネルギー密度が低下することがあり、450μmを超えるとサイクル特性が悪化してしまうことがある。
負極合材層12に含まれる負極活物質としては、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。負極合材層12に含まれる負極活物質としては、例えば、炭素質材料を用いることができる。炭素質材料としては、例えば、コークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物、非晶質カーボン等が挙げられる。これらの中でも、人造グラファイト、天然グラファイト、非晶質カーボンが特に好ましい。
正極合材層22の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、正極合材層22の平均厚みで10μm以上300μm以下が好ましく、40μm以上150μm以下がより好ましい。正極合材層22の平均厚みが20μm未満であると、エネルギー密度が低下することがあり、300μmを超えると負荷特性が悪化してしまうことがある。
正極合材層22に含まれる正極活物質としては、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。正極合材層22に含まれる正極活物質としては、例えば、アルカリ金属含有遷移金属化合物を用いることができる。
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、例えば、LiNiXCoYMnZO2(x+y+z=1)であるリチウムNi複合酸化物、LiXMeY(PO4)Z(0.5≦x≦4、Me=遷移金属、0.5≦y≦2.5、0.5≦x≦3.5)を基本骨格とするリチウムリン酸系材料等を用いることができる。
LiNiXCoYMnZO2(x+y+z=1)であるリチウムNi複合酸化物としては、例えば、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.2Mn0O2等が挙げられる。
LiXMeY(PO4)Z(0.5≦x≦4、Me=遷移金属、0.5≦y≦2.5、0.5≦x≦3.5)を基本骨格とするリチウムリン酸系材料としては、例えば、リン酸バナジウムリチウム(Li3V2(PO4)3)、オリビン鉄(LiFePO4)、オリビンマンガン(LiMnPO4)、オリビンコバルト(LiCoPO4)、オリビンニッケル(LiNiPO4)、オリビンバナジウム(LiVOPO4)、及びこれらを基本骨格とし、異種元素をドープした類似化合物等が挙げられる。
負極又は正極の結着剤には、例えば、PVDF、PTFE、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース等が使用可能である。
又、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。又、これらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。
電極合材層に含ませる導電剤には、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体、グラフェン誘導体等の有機導電性材料等が用いられる。
燃料電池での活物質は一般に、カソード電極やアノード電極の触媒として、白金、ルテニウム或いは白金合金等の金属微粒子をカーボン等の触媒担体に担持させたものを用いる。触媒担体の表面に触媒粒子を担持させるには、例えば触媒担体を水中に懸濁させ、触媒粒子の前駆体(例えば、塩化白金酸、ジニトロジアミノ白金、塩化第二白金、塩化第一白金、ビスアセチルアセトナート白金、ジクロロジアンミン白金、ジクロロテトラミン白金、硫酸第二白金塩化ルテニウム酸、塩化イリジウム酸、塩化ロジウム酸、塩化第二鉄、塩化コバルト、塩化クロム、塩化金、硝酸銀、硝酸ロジウム、塩化パラジウム、硝酸ニッケル、硫酸鉄、塩化銅等の合金成分を含むもの等)を添加し、懸濁液中に溶解させアルカリを加え金属の水酸化物を生成させると共に、触媒担体表面に担持させた触媒担体を得る。かかる触媒担体を電極基体上に塗布し、水素雰囲気下等で還元させることで、表面に触媒粒子(活物質)が塗布された電極合材層を得る。
太陽電池等の場合、活物質は、酸化タングステン粉末や酸化チタン粉末のほかSnO2、ZnO、ZrO2、Nb2O5、CeO2、SiO2、Al2O3といった酸化物半導体層が挙げられ、半導体層には、色素が担持させられており、例えば、ルテニウム・トリス型の遷移金属錯体、ルテニウム−ビス型の遷移金属錯体、オスミウム−トリス型の遷移金属錯体、オスミウム−ビス型の遷移金属錯体、ルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体、フタロシアニン及びポルフィリン、有機−無機のペロブスカイト結晶等の化合物を挙げることができる。
<<絶縁層>>
絶縁層13は、下地層上にインクジェット法等により絶縁層作製用のインクを塗布し、塗布したインクを乾燥させることで形成できる。
多孔質体である絶縁層13は、絶縁性を有する粒子と、絶縁性を有する粒子同士を結着させる樹脂とを含むことができる。絶縁性を有する粒子としては、例えば、無機材料(無機物)や有機材料(有機物)が挙げられる。以下、具体的な例について説明する。
第1の例として、絶縁層13は、絶縁性を有する無機材料が分散している液体からなる絶縁層作製用のインクを用いて形成することができる。絶縁性を有する無機材料としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、その他の金属微粒子が挙げられる。金属酸化物として、Al2O3(アルミナ)、TiO2、BaTiO3、ZrO2等が好ましい。
金属窒化物として、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が好ましい。その他の金属微粒子として、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性のイオン結晶微粒子、或いはベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト等の鉱物資源由来物質又はそれらの人造物等が好ましい。
又、絶縁性を有する無機材料として、ガラスセラミック粉末が挙げられる。ガラスセラミック粉末は、ZnO−MgO−Al2O3−SiO2系の結晶化ガラスを用いた結晶化ガラスセラミック、BaO−Al2O3−SiO2系セラミック粉末やAl2O3−CaO−SiO2−MgO−B2O3系セラミック粉末等を用いた非ガラス系セラミックが好ましい。
これらの無機材料の粒径は、10μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
以上の無機材料を溶媒に分散させ、絶縁層作製用のインクとする。溶媒は、分散させる無機材料に適した溶媒を選定する。具体的には、水、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒を用いることができる。
無機材料を溶液に分散させる際に、結着材料を添加する。結着材料は、無機材料を絶縁層として保持させるため、無機材料の微粒子間を固着する機能を有する。結着材料として、アクリル系樹脂、スチレンブタジエン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂等のバインダー樹脂、或いはカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の吸着基を有する樹脂を用いることができる。
絶縁層作製用のインクを調合するときに、ホモジナイザーを用いて分散させても良い。ホモジナイザーは、高速回転せん断攪拌方式、高圧噴射分散方式、超音波分散方式、媒体攪拌ミル方式等を用いることができる。
絶縁層作製用のインクを調合するときに、必要に応じて分散材、界面活性剤等の添加剤を用いても良い。分散材、界面活性剤として、メガファック(DIC株式会社)、マリアリム(日油株式会社)、エスリーム(日油株式会社)、ソルスパース(Lubrizol)、ポリフロー(共栄社化学株式会社)等を用いることができる。その他の添加剤として、粘度を調整するための増粘材であるプロピレングリコール、エチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ターピネオール、ジヒドロターピネオール等を用いることができる。
第2の例として、絶縁層13は、絶縁性を有する有機材料が分散している液体からなる絶縁層作製用のインクを用いて形成することができる。
絶縁性を有する有機材料としては、例えば、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の絶縁性を有する樹脂の微粒子が好ましい。アクリル樹脂としてPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等、フッ素樹脂としてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等が好ましい。これらの有機材料の粒径は、10μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
以上の有機材料を溶媒に分散させ、絶縁層作製用のインクとする。溶媒は、分散させる有機材料に適した溶媒を選定する。具体的には、水、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒を用いることができる。
有機材料を溶液に分散させる際に、結着材料を添加する。結着材料は、有機材料が絶縁層として保持させるため、有機材料の微粒子間を固着する機能を有する。結着材料として、アクリル系樹脂、スチレンブタジエン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂等のバインダー樹脂、或いはカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の吸着基を有する樹脂を用いることができる。
絶縁層作製用のインクを調合するときに、ホモジナイザーを用いて分散させても良い。ホモジナイザーは、高速回転せん断攪拌方式、高圧噴射分散方式、超音波分散方式、媒体攪拌ミル方式等を用いることができる。
絶縁層作製用のインクを調合するときに、必要に応じて分散材、界面活性剤等の添加剤を用いても良い。分散材、界面活性剤として、メガファック(DIC株式会社)、マリアリム(日油株式会社)、エスリーム(日油株式会社)、ソルスパース(Lubrizol)、ポリフロー(共栄社化学株式会社)等を用いることができる。その他の添加剤として、粘度を調整するための増粘材であるプロピレングリコール、エチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ターピネオール、ジヒドロターピネオール等を用いることができる。
第3の例として、絶縁層13は、電離放射線又は赤外線による重合開始剤と、重合性化合物とを含有する前駆体と、を液体に溶解した絶縁層作製用のインクを用いて形成することができる。
絶縁層13を形成するための樹脂は、特に限定されず、電離放射線や赤外線(熱)の照射によって架橋性の構造体形成が可能である樹脂であれば何でもよいが、例えば、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル、エン-チオール反応を活用した樹脂が挙げられる。これらの中でも特に、反応性の高さからラジカル重合を利用して容易に構造体を形成可能なアクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂が生産性の観点から好ましい。
上記樹脂は、熱や電離放射線によって硬化できる機能として、重合性モノマーと、熱や電離放射線によってラジカル又は酸を発生する化合物を混合した混合物を調液することで得ることができる。又、重合誘起相分離により絶縁層13を形成するためには、上記混合物に、予めポロジェンを混合させたインクの作製により達成できる。
ラジカル重合型のモノマーとしては、例えば特開平08−82925号公報に開示されたようなアクリル系化合物が、モノマーとして好適に用いられる。例えば、ミルセン,カレン,オシメン,ピネン,リモネン,カンフェン,テルピノレン,トリシクレン,テルピネン,フェンチェン,フェランドレン,シルベストレン,サビネン,ジペンテン、ボルネン、イソプレゴール、カルボン、等の不飽和結合を有するテルペンの2重結合をエポキシ化し、アクリル酸又はメタクリル酸を付加させたエステル化合物が挙げられる。
或いは、シトロネロール,ピノカンフェオール,ゲラニオール,フェンチルアルコール,ネロール,ボルネオール,リナロール,メントール,テルピネオール,ツイルアルコール,シトロネラール,ヨノン,イロン,シネロール,シトラール,ピノール,シクロシトラール,カルボメントン,アスカリドール,サフラナール,ピペリトール,メンテンモノオール,ジヒドロカルボン,カルベオール,スクラレオール,マノール,ヒノキオール,フェルギノール,トタロール,スギオール、ファルネソール,パチュリアルコール,ネロリドール,カロトール,カジノール,ランセオール,オイデスモール,フィトール,等のテルペン由来アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸のエステル化合物、更にはシトロネロル酸,ヒノキ酸,サンタル酸,エステル側鎖にメントン,カルボタナセトン,フェランドラール,ピメリテノン,ペリルアルデヒド,ツヨン,カロン,ダゲトン,ショウノウ,ビサボレン,サンタレン,ジンギベレン,カリオフィレン,クルクメン,セドレン,カジネン,ロンギホレン,セスキベニヘン,セドロール,グアヨール,ケッソグリコール,シペロン,エレモフィロン,ゼルンボン,カンホレン,ポドカルプレン,ミレン,フィロクラデン,トタレン,ケトマノイルオキシド,マノイルオキシド,アビエチン酸,ピマル酸,ネオアビエチン酸,レボピマル酸,イソ−d−ピマル酸,アガテンジカルボン酸,ルベニン酸,カロチノイド、ペラリアルデヒド、ピペリトン、アスカリドール、ピメン、フェンケン、セスキテルペン類、ジテルペン類、トリテルペン類等の骨格をエステル側鎖に有するアクリレート又はメタクリレート化合物が挙げられる。
光重合開始剤としては、光ラジカル発生剤を用いることができる。例えば、商品名イルガキュアーやダロキュアで知られるミヒラーケトンやベンゾフェノンのような光ラジカル重合開始剤、より具体的な化合物としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン誘導体、例えばα−ヒドロキシ−もしくは、α−アミノセトフェノン、4−アロイル−1,3−ジオキソラン、ベンジルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp'−ジクロロベンゾフェン、pp'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルフォーメート、ゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインn−プロピル等のベンゾインアルキルエ−テルやエステル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンモノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド又はチタノセン、フルオレセン、アントラキノン、チオキサントン又はキサントン、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物又はジハロメチル化合物、活性エステル化合物、有機ホウ素化合物、等が好適に使用される。
更に、ビスアジド化合物のような光架橋型ラジカル発生剤を同時に含有させても構わない。又、熱のみで重合させる場合は通常の光ラジカル発生剤であるA(AIBN)等の通常の熱重合開始剤を使用することができる。
一方、光照射により酸を発生する光酸発生剤と、酸の存在下で重合する少なくとも1種のモノマーとで混合物を調整しても同様の機能を達成することができる。このような液体インクに光を照射すると、光酸発生剤が酸を発生し、この酸は重合性化合物の架橋反応の触媒として機能する。
又、発生した酸はインク層内で拡散する。しかも、酸の拡散及び酸を触媒とした架橋反応は、加熱することにより加速可能であり、この架橋反応はラジカル重合とは異なって、酸素の存在によって阻害されることがない。得られる樹脂層は、ラジカル重合系の場合と比較して密着性にも優れる。
酸の存在下で架橋する重合性化合物は、エポキシ基、オキセタン基、オキソラン基等のような環状エーテル基を有する化合物、上述した置換基を側鎖に有するアクリル又はビニル化合物、カーボネート系化合物、低分子量のメラミン化合物、ビニルエーテル類やビニルカルバゾール類、スチレン誘導体、アルファ−メチルスチレン誘導体、ビニルアルコールとアクリル、メタクリル等のエステル化合物をはじめとするビニルアルコールエステル類等、カチオン重合可能なビニル結合を有するモノマー類を併せて使用することが挙げられる。
光照射により酸を発生する光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩、ジアゾニウム塩、キノンジアジド化合物、有機ハロゲン化物、芳香族スルフォネート化合物、バイスルフォン化合物、スルフォニル化合物、スルフォネート化合物、スルフォニウム化合物、スルファミド化合物、ヨードニウム化合物、スルフォニルジアゾメタン化合物、及びそれらの混合物等を使用することができる。
中でも光酸発生剤としては、オニウム塩を使用することが望ましい。使用可能なオニウム塩としては、例えば、フルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、ヘキサフルオロヒ素酸アニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン、パラトルエンスルホネートアニオン、及びパラニトロトルエンスルホネートアニオンを対イオンとするジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、及びスルホニウム塩を挙げることができる。又、光酸発生剤は、ハロゲン化トリアジン化合物でも使用できる。
光酸発生剤は、場合によって、増感色素を更に含んでいてもよい。増感色素としては、例えば、アクリジン化合物、ベンゾフラビン類、ペリレン、アントラセン、及びレーザ色素類等が挙げられる。
ポロジェンは、硬化後の多孔質の絶縁層中に形成される空孔を形成するために混合される。ポロジェンとしては、前記重合性モノマー及び熱や電離放射線によってラジカル又は酸を発生する化合物を溶解可能であり、かつ、前記重合性モノマー及び熱や電離放射線によってラジカル又は酸を発生する化合物が重合していく過程で、相分離を生じさせることが可能な液状物質ならば全て用いることができる。
ポロジェンとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール類、γブチロラクトン、炭酸プロピレン等エステル類、NNジメチルアセトアミド等のアミド類等を挙げることができる。
又、テトラデカン酸メチル、デカン酸メチル、ミリスチン酸メチル、テトラデカン等の比較的分子量の大きな液状物質もポロジェンとして機能する傾向がある。中でも特に、エチレングリコール類は高沸点のものも多く存在する。相分離機構は形成される構造体が、ポロジェンの濃度に大きく依存する。そのため、上記液状物質を使用すれば、安定した多孔質の絶縁層の形成が可能となる。又、ポロジェンは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<セパレータ>
セパレータ30は、負極と正極との短絡を防ぐために負極と正極との間に設けられている。セパレータ30は、イオン透過性を有し、かつ電子伝導性を持たない絶縁層である。セパレータ30の材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて 適宜選択することができる。
セパレータ30の材質としては、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙等の紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリプロピレンメルトフロー不織布等のポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、ポリエチレン系微多孔膜、ポリプロピレン系微多孔膜等が挙げられる。これらの中でも、非水電解液を保持する観点から、気孔率が50%以上のものが好ましい。
セパレータ30の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましい。セパレータ30の平均厚みが3μm以上であれば、負極と正極とを確実に短絡防止できる。又、セパレータ30の平均厚みが50μm以下であれば、負極と正極とが離れ過ぎることによる負極と正極との間の電気抵抗の増加を防止できる。
セパレータ30の平均厚みが5μm以上であれば、負極と正極とをより確実に短絡防止できる。又、セパレータ30の平均厚みが30μm以下であれば、負極と正極とが離れ過ぎることによる負極と正極との間の電気抵抗の増加をいっそう防止できる。
セパレータ30の形状としては、例えば、シート状等が挙げられる。セパレータ30の大きさとしては、蓄電素子に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。セパレータ30の構造は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
<電解質層>
電解質層51を構成する非水電解液は、非水溶媒及び電解質塩を含有する電解液である。非水溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非プロトン性有機溶媒が好適である。非プロトン性有機溶媒としては、鎖状カーボネート、環状カーボネート等のカーボネート系有機溶媒が用いられる。鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、メチルプロピオネート(MP)等が挙げられる。
環状カーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等が挙げられる。環状カーボネートとしてエチレンカーボネート(EC)と、鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネート(DMC)とを組み合わせた混合溶媒を用いる場合には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合割合は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、非水溶媒としては、必要に応じて、環状エステル、鎖状エステル等のエステル系有機溶媒、環状エーテル、鎖状エーテル等のエーテル系有機溶媒等を用いることができる。
環状エステルとしては、例えば、γ−ブチロラクトン(γBL)、2−メチル−γ−ブチロラクトン、アセチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等が挙げられる。
鎖状エステルとしては、例えば、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル(酢酸メチル(MA)、酢酸エチル等)、ギ酸アルキルエステル(ギ酸メチル(MF)、ギ酸エチル等)等が挙げられる。
環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、アルキル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソラン等が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、例えば、1,2−ジメトシキエタン(DME)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
電解質塩としては、リチウム塩を用いることができる。リチウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、塩化リチウム(LiCl)、ホウ弗化リチウム(LiBF4)、六弗化砒素リチウム (LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチムビストリフルオロメチルスルホニルイミド(LiN(C2F5SO2)2)、リチウムビスファーフルオロエチルスルホニルイミド(LiN(CF2F5SO2)2)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭素電極中へのアニオンの吸蔵量の大きさの観点から、LiPF6が特に好ましい。
電解質塩の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非水溶媒中に、0.7mol/L以上4mol/L以下が好ましく、1.0mol/L以上3mol/L以下がより好ましく、蓄電素子の容量と出力の両立の点から、1.0mol/L以上2.5mol/L以下がより好ましい。
<非水電解液蓄電素子の製造方法>
図5は、絶縁層の塗布装置について説明する図である。塗布装置100は、送り出しローラ110と、搬送ローラ150及び160と、巻き取りローラ210とを有しており、ロール状の電極基体上に多孔質の絶縁層を形成することができる。
送り出しローラ110と搬送ローラ150及び160との間には、インクジェットヘッド120、UVランプ130、及び加熱ヒータ140が配置されている。又、搬送ローラ150及び160と巻き取りローラ210との間には、インクジェットヘッド220、UVランプ230、及び加熱ヒータ240が配置されている。
塗布装置100は、活物質の位置を検出し、検出した活物質の位置に合わせて絶縁層を形成する機構を有していても良い。
以下、図5及び他の図を参照しながら、非水電解液蓄電素子1の製造方法について説明する。
−負極及び正極の作製−
まず、図6(a)から図6(c)に示す工程では、図4に示す負極15を作製する。具体的には、まず、図6(a)に示すように、負極用電極基体11を準備する。負極用電極基体11の材料等については前述の通りである。
次に、図6(b)に示すように、負極用電極基体11上に負極合材層12を形成する。具体的には、例えば、グラファイト粒子等の負極活物質と、セルロース等の増粘剤を、アクリル樹脂等をバインダーとして水中に均一に分散して負極活物質分散体を作製する。そして、作製した負極活物質分散体を負極用電極基体11上に塗布し、得られた塗膜を乾燥させ、例えば約100kNの力でプレスすることで、負極合材層12を作製することができる。
次に、図6(c)に示すように、負極合材層12上に絶縁層13を形成する。絶縁層13は、負極合材層12上にインクを供給し、乾燥等させることで形成できる。絶縁層13の形成に使用するインクの粘度は、5〜40mPa・sの範囲が好ましく、10〜25mPa・sの範囲がより好ましい。上記の粘度になるように、インクに更に粘度を調整するための増粘材を添加しても良い。増粘材としては、カルボキシメチルセルロース等を用いることができる。
インクの表面張力は、20〜50mN/mの範囲が好ましく、35〜45mN/mの範囲がより好ましい。上記の表面張力になるように、インクに更に界面活性剤を添加しても良い。界面活性剤として、メガファック(DIC株式会社製)等を用いることができる。
絶縁層13を形成する工程は、絶縁層13の前駆体溶液をインクジェットで塗布する工程を含むことができる。絶縁層13をインクジェットで形成する場合、まず、負極合材層12が形成された負極用電極基体11をロール状にし、負極合材層12を上側に向けて、図5に示す塗布装置100(インクジェット装置)の送り出しローラ110と巻き取りローラ210との間にセットする。そして、インクジェットヘッド120と220に、例えば同じインクを供給する。
次に、負極合材層12が形成された負極用電極基体11を搬送ローラ150及び160で搬送しながら、インクジェットヘッド120でヘッドを加熱しないで負極合材層12の上面全面にインクを塗布して平坦部13aを形成する。次に、インクジェットヘッド220でヘッドを加熱しないで平坦部13aの上面に例えばドット状のパターンにインクを塗布して突起部13bを形成する。そして、紫外線硬化性インクの場合にはUVランプ230でインクの硬化を行い、熱硬化性インクの場合には加熱ヒータ240でインクの乾燥を行う。これにより、平坦部13aと、平坦部13aの上面から部分的に突起する突起部13bとを有する絶縁層13が作製される。なお、平坦部13aは、負極合材層12の上面のみを被覆するように形成してもよいし、負極合材層12の上面及び側面を被覆するように形成してもよい。
次に、図6(b)及び図6(c)と同様にして負極用電極基体11の反対側にも負極合材層12及び絶縁層13を形成することで、負極15が完成する。なお、図6(b)の工程で負極用電極基体11の両側に負極合材層12を形成し、図6(c)の工程で負極合材層12の両側に絶縁層13を積層形成してもよい。
なお、絶縁層13は、インクジェットの他にダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、スプレー等を用いて形成してもよい。ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーターの方式は負極合材層12に接触或いは近接して塗布するため、絶縁層13を均一に塗布するためには負極合材層12の平面性が求められる。
又、スプレーは非接触で塗布することができるが、薄い絶縁層13を形成することが難しい。薄い絶縁層13を形成するためには、インクジェット以外の方法は適していない。インクジェットは、負極合材層12に対し非接触でインクを塗布するため、負極合材層12の平面性の影響を受けない。又、液滴サイズや液滴個数を制御することにより、薄い絶縁層13を形成するのに適している。
次に、図7(a)及び図7(b)に示す工程では、図4に示す正極25Xを作製する。具体的には、まず、図7(a)に示すように、正極用電極基体21を準備する。正極用電極基体21の材料等については前述の通りである。
次に、図7(b)に示すように、正極用電極基体21上に正極合材層22を形成する。具体的には、例えば、ニッケル、コバルト、アルミの混合粒子等の正極活物質と、ケッチェンブラック等の導電助剤と、ポリフッ化ビニリデン等のバインダー樹脂を、N−メチルピロリドン等の溶媒中に均一に分散して、正極活物質分散体を作製する。そして、作製した正極活物質分散体を正極用電極基体21に塗布し、得られた塗膜を乾燥させ、例えば約100kNの力でプレスすることで、正極合材層22を作製することができる。
次に、図7(b)と同様にして正極用電極基体21の反対側にも正極合材層22を形成することで、正極25Xが完成する。
−電極素子、非水電解液蓄電素子の作製−
次に、電極素子及び非水電解液蓄電素子を作製する。まず、図8に示すように、負極15の一方の側の絶縁層13と正極25Xの正極合材層22とが、ポリプロピレン製の微多孔膜等からなるセパレータ30を介して対向するように、かつ、負極15の他方の側の絶縁層13と正極25Xの正極合材層22とが、ポリプロピレン製の微多孔膜等からなるセパレータ30を介して対向するように配置する。
次に、負極用電極基体11に負極引き出し線41を溶接等により接合し、正極用電極基体21に正極引き出し線42を溶接等により接合することで、図3に示す電極素子40を作製することができる。次に、電極素子40に非水電解液を注入して電解質層51を形成し、外装52で封止することで、図4に示す非水電解液蓄電素子1を作製することができる。
なお、前述のように、電極素子40において、負極15と正極25Xの積層数は任意に決定することができる。すなわち、図8では、1つの負極15と2つの正極25Xの合計3層を図示しているが、これには限定されず、更に多くの負極15及び正極25Xを積層することができる。
このように、本実施の形態に係る非水電解液蓄電素子1に用いる負極15において、絶縁層13は、負極合材層12の上面全面を覆う平坦部13aと、平坦部13a上に部分的に形成された突起部13bとを有している。すなわち、絶縁層13は、膜厚に薄い部分(平坦部13aのみの部分)と厚い部分(平坦部13a及び突起部13bの部分)がある凹凸構造を有している。
負極15は、負極合材層12の上面が絶縁層13から露出する部分がなく、かつ、絶縁層13が膜厚の厚い部分を有しているため、耐絶縁性及び耐熱性に優れている。その結果、負極15を用いた非水電解液蓄電素子1では、例えば、正負極間で内部短絡が発生した場合や、釘のような鋭利な形状の突起物が突き刺さった場合等に、非水電解液蓄電素子1の発熱を抑制することが可能となり、安全性に優れた非水電解液蓄電素子1を実現できる。
又、負極15は、絶縁層13が膜厚の薄い部分を有しているため、良好なイオン透過性を確保することができる。その結果、負極15を用いることで、高容量及び高特性の非水電解液蓄電素子1を実現できる。
すなわち、イオン透過性と耐絶縁性及び耐熱性に優れた負極15を用いることで、高容量及び高特性で安全性に優れた非水電解液蓄電素子1を実現できる。
又、負極15において、絶縁層13の凹凸構造をインクジェット方式を用いて形成することにより、微細な凹凸構造を有する多孔質の絶縁層13を容易に形成することができる。
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは構造が異なる非水電解液蓄電素子の例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図9は、第2の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子に用いる負極を例示する図であり、図9(a)は平面図、図9(b)は図9(a)のB−B線に沿う断面図である。図9を参照すると、負極10Aは、絶縁層13が絶縁層14に置換された点が、負極10(図1参照)と相違する。
負極10Aにおいて、絶縁層14は、負極合材層12の上面及び側面を被覆するように形成されている。絶縁層14は、負極合材層12の上面及び側面を直接被覆する平坦部14aと、平坦部14aの上面から部分的に突起する突起部14bとを有している。平坦部14aと突起部14bとは異なる材料により形成されており、平坦部14aと突起部14bにより、負極合材層12上に膜厚に薄い部分と厚い部分がある凹凸構造が形成されている。
平坦部14aの厚さは、例えば、平坦部13aの厚さと同様とすることができる。又、突起部14bの形状や厚さ、パターンは、例えば、突起部13bの形状や厚さ、パターンと同様とすることができる。又、図9では、絶縁層14が負極合材層12の上面及び側面を被覆するように形成されているが、絶縁層14は負極合材層12の上面を被覆し側面を露出するように形成されてもよい。
絶縁層14は、インクジェットヘッド120とインクジェットヘッド220に異なるインクを供給し、絶縁層13と同様に図5に示す塗布装置100を用いて形成することができる。絶縁層14の材料は、絶縁層13の材料として例示した材料の中から適宜選択することができる。
具体的には、例えば、負極合材層12が形成された負極用電極基体11を図5に示す塗布装置100の搬送ローラ150及び160で搬送しながら、インクジェットヘッド120でヘッドを加熱しないで負極合材層12の上面全面にインクを塗布して平坦部14aを形成する。そして、紫外線硬化性インクの場合にはUVランプ130でインクの硬化を行い、熱硬化性インクの場合には加熱ヒータ140でインクの乾燥を行う。
次に、インクジェットヘッド220でヘッドを加熱しないで平坦部14aの上面に例えばドット状のパターンにインクを塗布して突起部14bを形成する。そして、紫外線硬化性インクの場合にはUVランプ230でインクの硬化を行い、熱硬化性インクの場合には加熱ヒータ240でインクの乾燥を行う。
これにより、平坦部14aと、平坦部14aの上面から部分的に突起する突起部14bとを有する絶縁層14が作製される。なお、平坦部14aは、負極合材層12の上面のみを被覆するように形成してもよいし、負極合材層12の上面及び側面を被覆するように形成してもよい。
図10は、第2の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子を例示する断面図である。図10を参照すると、非水電解液蓄電素子1Aは、電極素子40Aに非水電解液を注入して電解質層51を形成し、外装52で封止した構造である。非水電解液蓄電素子1Aにおいて、負極引き出し線41及び正極引き出し線42は、外装52の外部に引き出されている。非水電解液蓄電素子1Aは、必要に応じてその他の部材を有してもよい。非水電解液蓄電素子1Aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非水電解液二次電池、非水電解液キャパシタ等が挙げられる。
非水電解液蓄電素子1Aにおいて、電極素子40Aは、電極素子40(図3参照)において負極15が負極15Aに置換されたものである。負極15Aは、負極用電極基体11の両側に負極合材層12と絶縁層14が形成された点が負極10A(図9参照)と相違し、その他の点は負極10Aと同様である。
なお、電極素子40Aにおいて、負極15Aと正極25Xの積層数は任意に決定することができる。すなわち、図10では、1つの負極15Aと2つの正極25Xの合計3層を図示しているが、これには限定されず、更に多くの負極15A及び正極25Xを積層することができる。その際、負極15Aの個数と正極25Xの個数が同一であってもよい。
絶縁層14において、平坦部14a及び突起部14bは、何れも絶縁特性及びイオン透過性に優れていることが必要であるが、平坦部14a及び突起部14bを一体化せずに2層に分けることにより、平坦部14a及び突起部14bの各々に対し絶縁特性及びイオン透過性を最適値に設計することができる。その結果、平坦部14a及び突起部14bのトータルとして絶縁特性及びイオン透過性の2つの特性を同時に向上させることが可能となる。
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態では、第1の実施の形態とは構造が異なる非水電解液蓄電素子の他の例を示す。なお、第3の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図11は、第3の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子に用いる正極を例示する図であり、図11(a)は平面図、図11(b)は図11(a)のC−C線に沿う断面図である。図11を参照すると、正極20は、絶縁層23を有する点が、正極20X(図2参照)と相違する。
正極20において、絶縁層23は、正極合材層22の上面及び側面を被覆するように形成された多孔質体である。絶縁層23は、内部に互いに連通する多数の空孔を有してもよい。絶縁層23は、正極合材層22の上面及び側面を直接被覆する平坦部23aと、平坦部23aの上面から部分的に突起する突起部23bとを有している。平坦部23aと突起部23bとは同一材料により一体に形成されており、平坦部23aと突起部23bにより、正極合材層22上に膜厚に薄い部分と厚い部分がある凹凸構造が形成されている。
平坦部23aの厚さは、例えば、平坦部13aの厚さと同様とすることができる。又、突起部23bの形状や厚さ、パターンは、例えば、突起部13bの形状や厚さ、パターンと同様とすることができる。又、図11では、絶縁層23が正極合材層22の上面及び側面を被覆するように形成されているが、絶縁層23は正極合材層22の上面を被覆し側面を露出するように形成されてもよい。
絶縁層23は、インクジェットヘッド120とインクジェットヘッド220に同じインクを供給し、絶縁層13と同様に図5に示す塗布装置100を用いて形成することができる。絶縁層23の材料は、絶縁層13の材料として例示した材料の中から適宜選択することができる。
使用するインクの粘度は、5〜40mPa・sの範囲が好ましく、10〜25mPa・sの範囲がより好ましい。上記の粘度になるように、インクに更に粘度を調整するための増粘材を添加しても良い。増粘材としては、カルボキシメチルセルロース等を用いることができる。
インクの表面張力は、20〜50mN/mの範囲が好ましく、35〜45mN/mの範囲がより好ましい。上記の表面張力になるように、インクに更に界面活性剤を添加しても良い。界面活性剤として、メガファック(DIC株式会社製)等を用いることができる。
なお、絶縁層23は、例えば、後述のインク4、6、7、8、9、10、11、又は12のような、溶媒が有機溶剤であるインクを用いて形成することが好ましい。水系のインクを用いた場合、正極合材層22の材料に用いるアルカリ金属含有遷移金属化合物のアルカリ金属成分が、水へ溶解し、析出が発生するおそれがあるためである。
なお、絶縁層23は、インクジェットの他にダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、スプレー等を用いて形成してもよい。ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーターの方式は正極合材層22に接触或いは近接して塗布するため、絶縁層23を均一に塗布するためには正極合材層22の平面性が求められる。
又、スプレーは非接触で塗布することができるが、薄い絶縁層23を形成することが難しい。薄い絶縁層23を形成するためには、インクジェット以外の方法は適していない。インクジェットは、正極合材層22に対し非接触でインクを塗布するため、正極合材層22の平面性の影響を受けない。又、液滴サイズや液滴個数を制御することにより、薄い絶縁層23を形成するのに適している。
図12は、第3の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子を例示する断面図である。図12を参照すると、非水電解液蓄電素子1Bは、電極素子40Bに非水電解液を注入して電解質層51を形成し、外装52で封止した構造である。非水電解液蓄電素子1Bにおいて、負極引き出し線41及び正極引き出し線42は、外装52の外部に引き出されている。非水電解液蓄電素子1Bは、必要に応じてその他の部材を有してもよい。非水電解液蓄電素子1Bとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非水電解液二次電池、非水電解液キャパシタ等が挙げられる。
非水電解液蓄電素子1Bにおいて、電極素子40Bは、電極素子40(図3参照)において正極25Xが正極25に置換されたものである。正極25は、正極用電極基体21の両側に正極合材層22と絶縁層23が形成された点が正極20(図11参照)と相違し、その他の点は正極20と同様である。
なお、電極素子40Bにおいて、負極15と正極25の積層数は任意に決定することができる。すなわち、図12では、1つの負極15と2つの正極25の合計3層を図示しているが、これには限定されず、更に多くの負極15及び正極25を積層することができる。その際、負極15の個数と正極25の個数が同一であってもよい。
非水電解液蓄電素子1Bでは、負極15の負極合材層12上に平坦部13a及び突起部13bを有する絶縁層13を形成し、正極25の正極合材層22上に平坦部23a及び突起部23bを有する絶縁層23を形成している。これにより、イオン透過性を維持しつつ、耐絶縁性及び耐熱性を更に向上することができる。
〈第4の実施の形態〉
第4の実施の形態では、第1の実施の形態とは構造が異なる非水電解液蓄電素子の更に他の例を示す。なお、第4の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図13は、第4の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子に用いる正極を例示する図であり、図13(a)は平面図、図13(b)は図13(a)のD−D線に沿う断面図である。図13を参照すると、正極20Aは、絶縁層23が絶縁層24に置換された点が、正極20(図11参照)と相違する。
正極20Aにおいて、絶縁層24は、正極合材層22の上面及び側面を被覆するように形成されている。絶縁層24は、正極合材層22の上面及び側面を直接被覆する平坦部24aと、平坦部24aの上面から部分的に突起する突起部24bとを有している。平坦部24aと突起部24bとは異なる材料により形成されており、平坦部24aと突起部24bにより、正極合材層22上に膜厚に薄い部分と厚い部分がある凹凸構造が形成されている。
平坦部24aの厚さは、例えば、平坦部13aの厚さと同様とすることができる。又、突起部24bの形状や厚さ、パターンは、例えば、突起部13bの形状や厚さ、パターンと同様とすることができる。又、図13では、絶縁層24が正極合材層22の上面及び側面を被覆するように形成されているが、絶縁層24は正極合材層22の上面を被覆し側面を露出するように形成されてもよい。
絶縁層24は、インクジェットヘッド120とインクジェットヘッド220に異なるインクを供給し、絶縁層14と同様に図5に示す塗布装置100を用いて形成することができる。絶縁層24の材料は、絶縁層13の材料として例示した材料の中から適宜選択することができる。
図14は、第4の実施の形態に係る非水電解液蓄電素子を例示する断面図である。図40を参照すると、非水電解液蓄電素子1Cは、電極素子40Cに非水電解液を注入して電解質層51を形成し、外装52で封止した構造である。非水電解液蓄電素子1Cにおいて、負極引き出し線41及び正極引き出し線42は、外装52の外部に引き出されている。非水電解液蓄電素子1Cは、必要に応じてその他の部材を有してもよい。非水電解液蓄電素子1Cとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非水電解液二次電池、非水電解液キャパシタ等が挙げられる。
非水電解液蓄電素子1Cにおいて、電極素子40Cは、電極素子40(図3参照)において負極15が負極15Aに置換され、正極25Xが正極25Aに置換され、負極15Aと正極25Aとがセパレータ30を介さずに直接接するように積層されたたものである。正極25Aは、正極用電極基体21の両側に正極合材層22と絶縁層24が形成された点が正極20A(図13参照)と相違し、その他の点は正極20Aと同様である。
なお、電極素子40Cにおいて、負極15Aと正極25Aの積層数は任意に決定することができる。すなわち、図14では、1つの負極15Aと2つの正極25Aの合計3層を図示しているが、これには限定されず、更に多くの負極15A及び正極25Aを積層することができる。その際、負極15Aの個数と正極25Aの個数が同一であってもよい。
絶縁層24において、平坦部24a及び突起部24bは、何れも絶縁特性及びイオン透過性に優れていることが必要であるが、平坦部24a及び突起部24bを一体化せずに2層に分けることにより、平坦部24a及び突起部24bの各々に対し絶縁特性及びイオン透過性を最適値に設計することができる。その結果、平坦部24a及び突起部24bのトータルとして絶縁特性及びイオン透過性の2つの特性を同時に向上させることが可能となる。
負極15Aと正極25Aは、例えば、負極15Aの絶縁層14の突起部14bと、正極25Aの絶縁層24の突起部24bとを同一パターンに形成し、突起部14bと突起部24bとが接するように積層することができる。或いは、負極15Aと正極25Aは、負極15Aの絶縁層14の突起部14bと、正極25Aの絶縁層24の突起部24bとを周期の異なるパターンに形成し、負極15Aの凹凸構造と正極25Aの凹凸構造とが嵌合しないように積層してもよい。
これらにより、平坦部14aと平坦部24aとの間に隙間を形成し、電解液を保持する構成にすることができる。
このように、負極15Aの絶縁層14と正極25Aの絶縁層24とが直接接するように積層することで、絶縁層14及び24がセパレータとして機能するため、セパレータ30(図4参照)を省略することができる。これにより、電極素子40Cの製造コストを低減することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて非水電解液蓄電素子等について更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
まず、以下のインク1〜12を作製した。
(インク1)
無機材料としてCIKナノテック株式会社製のアルミナであるNanoTek Al2O3、結着材料として日本ゼオン株式会社製のアクリル系バインダーAZ9129を用いた。NanoTek Al2O3の1次粒径は34nmである。NanoTek Al2O3:20重量部、AZ9129:0.3重量部、水:49.7重量部をホモジナイザーで分散する。ホモジナイザーには、リックス株式会社製のG−smasherを用いる。ホモジナイザーで分散処理後にイソプロピルグリコール:30重量部を添加する。以上により、中心粒径が約65nmの絶縁層作製用のインク1を得た。
(インク2)
無機材料として住友化学株式会社製のアルミナであるAA−05、結着材料として日本ゼオン株式会社製のアクリル系バインダーAZ9129、分散材として日油株式会社製のマリアリムHKM−50Aを用いた。AA−05の1次粒径は0.53μmで、球状のアルミナ粒子である。AA−05:64重量部、HKM−50A:1重量部、水:35重量部を、ビーズミル分散装置で分散させ、アルミナ濃度が大きいプレ分散液を作製する。ビーズミル分散装置には、アシザワ・ファインテック(株)製のLMZ015を用いる。
次に、必要な絶縁層の膜厚に応じて、プレ分散液をプロピレングリコールと水で希釈を行ない、AZ9129を添加し、超音波ホモジナイザーで分散しインクを作製する。超音波ホモジナイザーには、株式会社日本精機製作所製のUS−600ATを用いる。このとき、インク中のアルミナAA−05の濃度が15〜35wt%、AZ9129の濃度が0.2〜0.5wt%、プロピレングリコールの濃度が40〜65wt%の範囲になるように、プレ分散液、AZ9129、プロピレングリコール、水の混合量を決定する。以上により、平均粒径が約0.40μmの絶縁層作製用のインク2を得た。
(インク3)
無機材料として住友化学株式会社製のアルミナであるAKP−3000、結着材料及び分散材として日油株式会社製のマリアリムHKM−50Aを用いた。AKP−3000の1次粒径は0.70μmで、異形状のアルミナ粒子である。AKP−3000:64重量部、HKM−50A:1.5重量部、水:34.5重量部を、ビーズミル分散装置で分散させ、アルミナ濃度が大きいプレ分散液を作製する。ビーズミル分散装置には、アシザワ・ファインテック(株)製のLMZ015を用いる。
次に、必要な絶縁層の膜厚に応じて、プレ分散液をプロピレングリコールと水で希釈を行ない、超音波ホモジナイザーで分散しインクを作製する。超音波ホモジナイザーには、株式会社日本精機製作所製のUS−600ATを用いる。このとき、インク中のアルミナAKP−3000の濃度が15〜35wt%、プロピレングリコールの濃度が40〜65wt%の範囲になるように、プレ分散液、プロピレングリコール、水の混合量を決定する。以上により、平均粒径が約0.50μmの絶縁層作製用のインク3を得た。
(インク4)
無機材料として住友化学株式会社製のアルミナであるAA−05、結着材料として株式会社クレハ製のポリフッ化ビニリデン系バインダー#9100、分散材として日油株式会社製のマリアリムSC−1015Fを用いた。AA−05の1次粒径は0.53μmで、球状のアルミナ粒子である。予めバインダー#9100:1.5重量部、ジメチルスルホキシド:98.5重量部となるようにバインダー#9100を溶解させ、バインダー溶解液を作製する。
次に、AA−05:40重量部、SC−1015F:0.4重量部及びジメチルスルホキシド:59.6重量部の溶液を、ビーズミル分散装置で分散させ、アルミナ濃度が大きいプレ分散液を作製する。ビーズミル分散装置には、アシザワ・ファインテック(株)製のLMZ015を用いる。
次に、必要な絶縁層の膜厚に応じて、プレ分散液をN−メチル−2−ピロリドンとプロピレングリコールで希釈を行い、バインダー溶液を添加し、超音波ホモジナイザーで分散しインクを作製する。超音波ホモジナイザーには、株式会社日本精機製作所製のUS−600ATを用いる。このとき、インク中のアルミナAA−05の濃度が15〜20wt%、#9100の濃度が0.2〜0.35wt%、ジメチルスルホキシドの濃度が40〜55wt%、N−メチル−2−ピロリドンの濃度が10〜20wt%、プロピレングリコールの濃度が15〜25wt%の範囲になるように、プレ分散液、バインダー溶液、N−メチル−2−ピロリドン、プロピレングリコールの混合量を決定する。以上により、平均粒径が約0.40μmの絶縁層作製用のインク4を得た。
(インク5)
無機材料として住友化学株式会社のアルミナであるAKP−3000、結着材料及び分散材として日油株式会社製のマリアリムHKM−50Aを用いた。AKP−3000の1次粒径は0.70μmで、異形状のアルミナ粒子である。AKP−3000:40重量部、HKM−50A:1.3重両部、N−メチル−2−ピロリドン:58.7重量部の溶液を、ビーズミル分散装置で分散させ、アルミナ濃度が大きいプレ分散液を作製する。ビーズミル分散装置には、アシザワ・ファインテック(株)製のLMZ015を用いる。
次に、必要な絶縁層の膜厚に応じて、プレ分散液をプロピレングリコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテルで希釈を行い、超音波ホモジナイザーで分散しインクを作製する。超音波ホモジナイザーには、株式会社日本精機製作所製のUS−600ATを用いる。このとき、インク中のアルミナAKP−3000の濃度が15〜20wt%、プロピレングリコールの濃度が30〜40wt%、プロピレングリコールモノプロピルエーテルの濃度が15〜25wtの範囲になるように、プレ分散液、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテルの混合量を決定する。以上により、平均粒径が約0.50μmの絶縁層作製用のインク5を得た。
(インク6)
無機材料として株式会社日本触媒製のシリカであるシーホスターKE−Eシリーズ、結着材料として日本ゼオン株式会社製のアクリル系バインダーAZ9129を用いた。シーホスターKE−Eシリーズの1次粒径が1.5μmのものを用いた。又、シーホスターKE−Eシリーズは、エチレングリコールにシリカが20wt%分散した状態の溶液である。AZ9129:0.225重量部、水:24.775重量部となる溶液とシーホスターKE−E:75重量部となる溶液をスターラーで攪拌する。以上により、シリカが約15wt%、平均粒径が約1.7μmの絶縁層作製用のインク6を得た。
(インク7)
樹脂材料として積水化成品工業株式会社製のPMMAであるBMSA−18GN、結着材料として日本ゼオン株式会社製のアクリル系バインダーAZ9129を用いた。BMSA−18GNの1次粒径は0.804μmである。BMSA−18GN:20重量部、AZ9129:0.5重量部、メチルエチルケトン:30重量部、イソプロピルグリコール:49.5重量部、を超音波ホモジナイザーで分散する。超音波ホモジナイザーには、株式会社日本精機製作所製のUS−600ATを用いる。以上により、平均粒径が約0.75μmの絶縁層作製用のインク7を得た。
(インク8)
樹脂材料として積水化成品工業株式会社製のPMMAであるBMSA−18GN、結着材料として日本ゼオン株式会社製のアクリル系バインダーAZ9129を用いた。BMSA−18GNの1次粒径は0.804μmである。BMSA−18GN:20重量部、AZ9129:0.5重量部、酢酸ブチル:30重量部、イソプロピルグリコール:49.5重量部、を超音波ホモジナイザーで分散する。超音波ホモジナイザーには、株式会社日本精機製作所製のUS−600ATを用いる。以上により、平均粒径が約0.65μmの絶縁層作製用のインク8を得た。
(インク9)
樹脂材料として三菱鉛筆株式会社製のPTFE分散液であるNPT-N8、結着材料として株式会社クレハ製のポリフッ化ビニリデン系バインダー#9100を用いた。NPT-N8の1次粒径が0.3μmである。又、NPT-N8は、N−メチル−2−ピロリドンにPTFEが40wt%分散した状態の溶液である。予め、バインダー#9100:0.3重量部、N−メチル−2−ピロリドン:10重量部 となるようにバインダー#9100を溶解させておく。このバインダー溶液とNPT−N8:50重量部を攪拌させ、十分混合させてからジメチルスルホキシド:20重量部、エチレングリコール:19.7重量部を添加し、攪拌させて分散を行う。以上により、PTFEが約20wt%、平均粒径が約0.5μmの絶縁層作製用のインク9を得た。
(インク10)
重合性化合物としてラジカル重合性モノマーであるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルニクス株式会社):49質量部、光重合開始剤としてIrgacure184(BASF製):1質量部、前記重合性化合物及び光重合開始剤を溶解及び相分離する溶液としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル:50質量部、以上を攪拌・混合して絶縁層作製用のインク10を得た。
(インク11)
重合性化合物としてラジカル重合性モノマーであるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルニクス株式会社):49質量部、熱重合開始剤としてAIBN(和光純薬工業製):1質量部、前記重合性化合物及び熱重合開始剤を溶解及び相分離する溶液としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル:50質量部、以上を攪拌・混合して絶縁層作製用のインク11を得た。
(インク12)
重合性化合物としてラジカル重合性モノマーであるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルニクス株式会社):29質量部、熱重合開始剤としてAIBN(和光純薬工業製):1質量部、前記重合性化合物及び熱重合開始剤を溶解及び相分離する溶液としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル:70質量部、以上を攪拌・混合して絶縁層作製用のインク12を得た。
[実施例1]
上記の実施の形態で説明した方法により、非水電解液蓄電素子1B(図12参照)に用いる負極15及び正極25、並びに非水電解液蓄電素子1及び1A(図4、図10参照)に用いる正極25Xを作製した。
絶縁層13及び23は、塗布装置100として株式会社リコー製の産業用インクジェットMH5420を用いて形成した。この際、負極15として、図15に示すように活物質及び絶縁層の材料並びにインク組成を変えて5種類のサンプル(負極15(1)〜負極15(5))を作製した。又、正極25として、図15に示すように活物質及び絶縁層の材料並びにインク組成を変えて4種類のサンプル(正極25(1)〜正極25(4))を作製した。又、正極25Xとして、図15に示すように絶縁層を形成していない正極25X(1)を作製した。
負極15(1)〜負極15(5)の突起部13b及び正極25(1)〜正極25(4)の突起部23bは、ドット状のパターンとした。ドットは、300×300dpiの間隔で吐出し、1ドットの径は約50μmで形成した。
特に負極15(1)の作製手順の詳細を説明する。負極合材層12上にアルミナAK−3000の濃度が15wt%のインク3aと35wt%のインク3bを用いて絶縁層を形成する。インク3aの詳細は、アルミナAKP−3000の濃度が15wt%、分散剤HKM−50Aの濃度が0.34wt%、プロピレングリコールの濃度が60wt%、残りが水である。又、インク3bの詳細は、アルミナAKP−3000の濃度が35wt%、分散剤HKM−50Aの濃度が0.79wt%、プロピレングリコールの濃度が50wt%、残りが水である。最初に、インク3aで、液滴サイズが7pL、解像度が600×1200dpiで吐出を行ない、膜厚が約1μmの均一膜を形成し平坦部とする。次に、この均一膜上にインク3bで液滴サイズが21pL、解像度が300×300dpiで吐出を行い、高さ約5μmのドット状のパターンを形成し、突起部とする。
上記負極15(1)においては、平坦部の厚さが約1μmであるが、解像度を変えることで厚みを変えることが可能である。例えば、解像度を600×2400dpiで吐出を行うと、膜厚が約2μmの均一な平坦部となる。
又、上記負極15(1)においては、突起部の厚さが約5μmであるが、液滴サイズを変えることで厚みを変えることが可能である。例えば、液滴サイズを35pLで吐出を行うと、突起部の厚みが約8μmのドット状のパターンとなる。
又、平坦部及び突起部の厚さは、インクのアルミナ濃度を調整することで変えることが可能となる。
本実施例において、凹凸構造を2段階に分離して形成しているが、負極を作製する方法は上記に限定されるものではない。インクジェットのヘッドを複数直列に配置し、均一膜部分とドット部分を連続して吐出し、凹凸構造を形成してもよい。
なお、負極15(1)〜負極15(5)において、活物質であるカーボンは水の影響をあまり受けないので、絶縁層を形成するために使用するインクは水系、溶剤系のどちらでも良い。又、正極25(1)〜正極25(4)において、活物質であるNCA(リチウム−ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物)は水の影響を受けるため、絶縁層を形成するために使用するインクは溶剤系のものが好ましい。
絶縁層13及び23を形成後、電極引き出し部分を残し、電極合材層及び絶縁層の部分が11cm角となる形状にプレスで打ち抜きを行い、負極15及び正極25、並びに正極25Xを完成させた。
[実施例2]
上記の実施の形態で説明した方法により、非水電解液蓄電素子1C(図14参照)に用いる負極15A及び正極25Aを作製した。
絶縁層14及び24は、塗布装置100として株式会社リコー製の産業用インクジェットMH5420を用いて形成した。この際、負極15Aとして、図16に示すように活物質及び絶縁層(平坦部及び突起部)の材料並びにインク組成を変えて2種類のサンプル(負極15A(1)、負極15A(2))を作製した。又、正極25Aとして、図16に示すように活物質及び絶縁層(平坦部及び突起部)の材料並びにインク組成を変えて2種類のサンプル(正極25A(1)、正極25A(2))を作製した。
負極15A(1)及び15A(2)の突起部14b並びに正極25A(1)及び25A(2)の突起部24bは、ドット状のパターンとした。ドットは、300×300dpiの間隔で吐出し、1ドットの径は約50μmで形成した。
負極15A(1)の作製手順の詳細を説明する。負極合材層12上にアルミナAKP−3000の濃度が15wt%のインク3aと、インク10を用いて絶縁層を形成する。インク3aの詳細は、アルミナAKP−3000の濃度が15wt%、分散剤HKM−50Aの濃度が0.34wt%、プロピレングリコールの濃度が60wt%、残りが水である。最初に、インク3aで、液滴サイズが7pL、解像度が600×2400dpiで吐出を行ない、膜厚が約2μmの均一膜を形成し平坦部とする。次に、この均一膜上にインク10で液滴サイズが12pL、解像度が300×300dpiで吐出を行い、紫外線を照射及び乾燥を行い、高さ10μmのドット状のパターンを形成し、突起部とする。
次に負極15A(2)の作製手順の詳細を説明する。負極合材層12上にアルミナAK−3000の濃度が15wt%のインク3aと、アルミナAA−05の濃度が35wt%のインク2aを用いて絶縁層を形成する。インク3aの詳細は、アルミナAKP−3000の濃度が15wt%、分散剤HKM−50Aの濃度が0.34wt%、プロピレングリコールの濃度が60wt%、残りが水である。又、インク2aの詳細は、アルミナAA−05の濃度が35wt%、分散剤HKM−50Aの濃度が0.55wt%、バインダーAZ9129の濃度が0.5wt%、プロピレングリコール40の濃度がwt%、残りが水である。最初に、インク3aで、液滴サイズが7pL、解像度が600×1200dpiで吐出を行ない、膜厚が約1μmの均一膜を形成し平坦部とする。次に、この均一膜上にインク2aで液滴サイズが35pL、解像度が300×300dpiで吐出を行い、高さ8μmのドット状のパターンを形成し、突起部とする。
次に正極25A(1)の作製手順の詳細を説明する。正極合材層22上にアルミナAKP−3000の濃度が18wt%のインク5aと、インク10を用いて絶縁層を形成する。インク5aの詳細は、アルミナAKP−3000の濃度が18wt%、分散剤HKM−50Aの濃度が0.3wt%、N−メチル−2−ピロリドンの濃度が26.4wt%、プロピレングリコールの濃度が35wt%、プロピレングリコールモノプロピルエーテルの濃度が20.3wt%である。最初に、インク5aで、液滴サイズが7pL、解像度が600×2400dpiで吐出を行ない、膜厚が約2μmの均一膜を形成し平坦部とする。次に、この均一膜上にインク10で液滴サイズが21pL、解像度が300×300dpiで吐出を行い、紫外線を照射及び乾燥を行い、高さ10μmのドット状のパターンを形成し、突起部とする。
次に正極25A(2)の作製手順の詳細を説明する。正極合材層22上にアルミナAK−3000の濃度が18wt%のインク5aと、アルミナAA−05の濃度が35wt%のインク2aを用いて絶縁層を形成する。インク5aの詳細は、アルミナAKP−3000の濃度が18wt%、分散剤HKM−50Aの濃度が0.3wt%、N−メチル−2−ピロリドンの濃度が26.4wt%、プロピレングリコールの濃度が35wt%、プロピレングリコールモノプロピルエーテルの濃度が20.3wt%である。又、インク2aの詳細は、アルミナAA−05の濃度が35wt%、分散剤HKM−50Aの濃度が0.55wt%、バインダーAZ9129の濃度が0.5wt%、プロピレングリコール40の濃度がwt%、残りが水である。最初に、インク5aで、液滴サイズが7pL、解像度が600×1200dpiで吐出を行ない、膜厚が約1μmの均一膜を形成し平坦部とする。次に、この均一膜上にインク2aで液滴サイズが35pL、解像度が300×300dpiで吐出を行い、高さ8μmのドット状のパターンを形成し、突起部とする。
負極15A(1)、負極15A(2)、正極25A(1)及び正極25A(2)において、平坦部の厚さを吐出時の解像度を調整することで変えることが可能である。又、突起部の厚さを吐出時の液滴サイズを調整することで変えることが可能である。更に、平坦部及び突起部の厚さをインクのアルミナ濃度を調整することで変えることが可能となる。
なお、負極15A(1)及び15A(2)において、活物質であるカーボンは水の影響をあまり受けないので、絶縁層を形成するために使用するインクは水系、溶剤系のどちらでも良い。又、正極25A(1)及び25A(2)において、活物質であるNCA(リチウム−ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物)は水の影響を受けるため、活物質と接触する絶縁層を形成するために使用するインクは溶剤系のものが好ましい。
絶縁層14及び24を形成後、電極引き出し部分を残し、電極合材層及び絶縁層の部分が11cm角となる形状にプレスで打ち抜きを行い、負極15A及び正極25Aを完成させた。
なお、負極15A(2)及び正極25A(2)において、平坦部はアルミナ粒子AKP−3000であり、粒径が大きく形状が異形状のため空へき部分が形成され、イオン透過性をより確保することができる。突起部はアルミナ粒子AA−05であり、形状が球形のため最密充填構造で形成され空へき部分が少なく密度が高いため、耐絶縁性及び耐熱性をより確保することができる。但し、平坦部や突起部の厚みは設計項目であり、活物質の種類や非水電解液蓄電素子の形態等に応じて適宜選択することができる。
[実施例3]
図15及び図16の電極を組み合わせて、非水電解液蓄電素子1(図4参照)、非水電解液蓄電素子1A(図10参照)、非水電解液蓄電素子1B(図12参照)、及び非水電解液蓄電素子1C(図14参照)を作製した。
具体的には、負極の引き出し線と正極の引き出し線とが重ならない状態にして、正極と負極を合わせて10層積層した。その後、ラミネートシールにより袋状の外装52を形成し、非水電解液として、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)とホウフッ化リチウム(LiBF4)を電解質として有するエチレンカーボネート電解液を外装52内に注入して電解質層51を形成し、注液部分を封止して、各々の非水電解液蓄電素子を作製した。
なお、非水電解液蓄電素子1、1A、及び1Bでは、負極と正極との間に、ポリプロピレン微多孔/ポリエチレン微多孔からなる複合材料の厚さ15μmのセパレータ30を挟んだ。又、非水電解液蓄電素子1Cでは、セパレータを挟まずに負極と正極とを直接積層した。
非水電解液蓄電素子1、1A、1B、及び1Cにおける負極と正極の組合せと、負極と正極の絶縁層の突起部の厚さ/平坦部の厚さを図17にまとめた。
又、図17の非水電解液蓄電素子に加えて、比較例として、カーボン上にアルミナのドットを形成した負極と、NCAのみの正極を10層積層した非水電解液蓄電素子を作製した(非水電解液蓄電素子1Xとする)。非水電解液蓄電素子1Xにおいて、電極の大きさ、セパレータの材質、電解液の種類等の条件は、図17の非水電解液蓄電素子と同様である。なお、非水電解液蓄電素子1Xにおいて、アルミナのドットは、インク3bを用いて300×300dpiの間隔、ドット径を約50μm、ドットの厚みを約5μmとし、負極15と同様の構造に作製した。インク3bは、負極15(1)を作製したインクと同じインクである。
図17の非水電解液蓄電素子及び非水電解液蓄電素子1Xについて、釘刺し試験を実施した。図17の非水電解液蓄電素子及び非水電解液蓄電素子1Xの各々のサンプル20個を満充電状態(SOC(State Of Charge:充電率)100%)とし、φ4.5mmの釘を各素子に刺し、釘部分の温度測定を行った。そして、釘部分の温度が160℃以上となる素子の個数を評価した。図18に釘刺し試験の結果を示す。
図18に示すように、釘刺し試験において、非水電解液蓄電素子1Xは14/20個で160℃以上になった。一方、図17に示す何れの非水電解液蓄電素子の場合も、160℃以上になった個数は、非水電解液蓄電素子1Xの場合よりも少なかった。
比較例に係る非水電解液蓄電素子1Xでは、負極合材層の上面に部分的に突起部が形成されているが、負極合材層の上面全面を覆う部分(絶縁層13の平坦部13a等に相当する部分)が形成されていない。すなわち、負極合材層の一部は絶縁層で覆われていない。そのため、正負極間の短絡時の発熱が抑制できず、160℃以上となる個数が多くなったと考えられる。
これに対して、図17の非水電解液蓄電素子では、負極合材層の上面全面を覆う平坦部及び/又は正極合材層の上面全面を覆う平坦部を有していることから、正負極間の短絡時の発熱が抑制され、非水電解液蓄電素子1Xと比べて160℃以上となる個数が少なくなったと考えられる。特に、非水電解液蓄電素子1Bでは、負極合材層上及び正極合材層上の両方に平坦部及び突起部を有する絶縁層を形成し、更にセパレータ30を有しているので、発熱量が特に抑制され、160℃以上となる個数が大幅に少なくなっている。
次に、図17の非水電解液蓄電素子及び非水電解液蓄電素子1Xについて、電池初期特性を比較した。図17の非水電解液蓄電素子及び非水電解液蓄電素子1Xの何れの場合も、1C(1時間で放電しきれる電流値)でSOC100%に充電したときの容量に変化がなかった。又、図17の非水電解液蓄電素子及び非水電解液蓄電素子1Xの何れの場合も、SOC10〜90%における、出力密度及び入力密度に変化がなかった。
このように、図17の非水電解液蓄電素子は比較例に係る非水電解液蓄電素子1Xと同等な電池初期特性を有しており、負極合材層及び/又は正極合材層の全体を絶縁層で覆うことによる電池初期特性の低下は見られなかった。すなわち、負極合材層上及び正極合材層上の少なくとも一方に平坦部及び突起部を有する絶縁層を形成することによる弊害はないといえる。
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。